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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
管理番号 1325907
異議申立番号 異議2016-700361  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-27 
確定日 2016-11-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第5801148号発明「透明積層体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5801148号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 手続の経緯
特許第5801148号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成13年5月28日にした特願2001-158592の一部を平成23年9月5日に新たな特許出願としたものであって、平成27年9月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1?2に係る特許について、特許異議申立人東亞合成株式会社により特許異議の申立てがなされ、当審において平成28年6月10日付けで取消理由を通知し、平成28年8月5日付けで意見書が提出されたものである。
第2 本件発明
本件発明1?3は、各々、5801148号の請求項1?3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
板材としてガラス板と合成樹脂板を少なくとも2枚、紫外線硬化可能な粘着剤層(但し、A)オレフィンと極性モノマーのフィルム形成コポリマー、B)光重合性アクリルモノマー及びC)アクリル基の光重合用光開始剤からなり、光に対して透過性であると同時に成分A)及びB)の間に部分的に非相溶性を示す組成物から形成されるものを除く。)を少なくとも1層以上有する、紫外線硬化前の両面粘着シートで貼り合せた後、前記板材側から紫外線照射して、前記粘着剤層を下記(c)及び(d)の粘弾性特性を有するように紫外線硬化させることを特徴とする透明積層体の製造方法。
(c) 測定温度20℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率G’(1Hz)が1×10^(4)?1×10^(6)Pa(パスカル)。
(d) 基準温度20℃、周波数10^(-7)Hzでの貯蔵弾性率G’(10^(-7)Hz)が1×10^(4)Pa以上。
【請求項2】
前記板材に前記紫外線硬化可能な粘着剤層(但し、A)オレフィンと極性モノマーのフィルム形成コポリマー、B)光重合性アクリルモノマー及びC)アクリル基の光重合用光開始剤からなり、光に対して透過性であると同時に成分A)及びB)の間に部分的に非相溶性を示す組成物から形成されるものを除く。)を少なくとも1層以上有する、紫外線硬化前の両面粘着シートを貼り合わせた後、紫外線硬化前の状態で、該粘着剤層が下記(a)及び(b)の粘弾性特性を有する請求項1に記載の透明積層体の製造方法。
(a) 測定温度20℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率G’(1Hz)が5×10^(3)?5×10^(5)Pa(パスカル)。
(b) 基準温度20℃、周波数10^(-7)Hzでの貯蔵弾性率G’(10^(-7)Hz)が5×10^(1)?5×10^(3)Pa。
【請求項3】
前記粘着剤層はα,β不飽和カルボン酸を含有した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とし、前記不飽和カルボン酸と反応する有機官能基含有(メタ)アクリレートモノマー、光重合開始剤及び金属化合物が添加されている請求項1又は請求項2に記載の透明積層体の製造方法。」
第3 取消理由の概要
当審において、本件発明1に係る特許に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
1.本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであったから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2.本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、取り消すべきものである。

特許第5801148号の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
・請求項1
・甲第1号証?甲第4号証(各々、異議申立人提出の甲第1号証?甲第4号証)
特許異議申立書14頁6行?19頁5行に記載のとおりである。
ここで、甲1発明は、甲第1号証の段落【0025】実施例3である。
引 用 文 献 等 一 覧
甲第1号証:特開平11-140398号公報
甲第2号証:特開平10-279900号公報
甲第3号証:特開平7-307912号公報
甲第4号証:実験成績証明書(平成28年4月11日付け東亞合成株式会社作成)
第4 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証の1には、次の記載がある。(なお、下線は、異議申立人が付したものである。「・・・」は、具体的な記載の省略を表す。下線及び「・・・」は、以下の(2)?(4)についても同様である。)
ア (甲1-1):
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 粘着剤と放射線硬化型樹脂を含有する粘着剤層から成り、その放射線硬化型樹脂の含有割合が固形分比で粘着剤100重量部に対し2.5?25重量部であることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】 粘着剤層が、放射線照射前の動的貯蔵弾性率G_(1)’が1×10^(4)?1×10^(6)dyn/cm^(2)であり、かつ該動的貯蔵弾性率G_(1)’に対する放射線照射後の動的貯蔵弾性率G_(2)’の比(G_(2)’/G_(1)’)が1.5?20である特性を有する請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の粘着シートを被着体の粗面に貼合し、放射線を照射することを特徴とする粘着シートの貼合方法。」
イ (甲1-2):
「【0002】
【従来の技術】従来、被着体の粗面に粘着シートを貼合すると、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤が入り込まず、空気が微細な凹部の奥に残されて封入され、被着体の性能を低下させることがあった。例えば、プロジェクションテレビジョンのスクリーンは、スクリーンを構成するアクリル板などの基板の表面に、映像を映し出すレンチキュラーシートが貼合されている構造になっているが、そのレンチキュラーシートは、表面が細かな凹凸状の粗面になっており、そのレンチキュラーシートの粗面とスクリーン基板を貼り合わせるために従来の粘着シートを用いると、空気が微細な凹部の奥に残されて封入され、映像を鮮明に映し出すことができないという欠点があった。また、粗面へのラミネート適性を向上させるため、分子量を下げた粘着剤を使用すると、十分な耐熱性が得られず、発泡、浮き、膨れなどを発生するという欠点があった。一方、従来の粘着シートの代わりに感熱性接着剤から成るシートを用いて、レンチキュラーシートの粗面とスクリーン基板を貼り合わせると、耐熱性が劣るという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、被着体の粗面に貼合される際に、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤を入り込ませて、空気の封入を防ぐことができ、放射線照射後は、耐熱性にも優れる粘着シートを提供することを目的とする。」
ウ (甲1-3):
「【0006】
【発明の実施の形態】本発明において、粘着剤層は、粘着剤と放射線硬化型樹脂を含有する。粘着剤の具体例としては、例えば天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、ポリビニルエーテル樹脂系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤などが挙げられる。本発明の粘着シートをプロジェクションテレビジョンのスクリーン用のレンチキュラーシートの粗面に適用する場合は、スクリーン基板の殆どがメチルメタクリレート樹脂で構成されているので、アクリル樹脂系粘着剤が好ましい。
【0007】アクリル樹脂系粘着剤の具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステルなどの粘着性能のある低Tg重合体を与えるモノマーの単独重合体若しくはこれらの2種以上の共重合体などが挙げられ、好ましくは上記モノマーの2種以上の共重合体である。
【0008】また、上記アクリル樹脂系重合体には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニル基含有化合物の接着性能や凝集力能のある高Tg重合体を与えるコモノマーの1種以上を共重合させることができる。コモノマーの含有割合は、40重量%以下が好ましく、特に30重量%以下が好ましい。
【0009】さらに、上記アクリル樹脂系重合体には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド、アリルアルコールなどのヒドロキシル基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの三級アミノ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミドなどのN-置換アミド基含有モノマー、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマーなどの官能基含有モノマーの1種または2種以上を共重合させることができる。官能基含有モノマーの含有割合は、20重量%以下が好ましく、特に10重量%以下が好ましい。
【0010】上記アクリル樹脂系粘着剤の特に好ましいものとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸及びアクリル酸-2-エチルヘキシルの共重合体、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸の共重合体が挙げられる。
【0011】放射線硬化型樹脂は、紫外線、レーザー光線、α線、β線、γ線、X線、電子線などの放射線を照射することにより硬化する樹脂であれば特に制限ないが、紫外線または電子線の照射により硬化する樹脂が好ましく、特に紫外線の照射により硬化する樹脂が好ましい。このような放射線硬化型樹脂の具体例としては、放射線硬化性アクリル系モノマーまたはオリゴマーが好ましい。放射線硬化性アクリル系モノマー及びオリゴマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられ、これらは1種単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0012】さらに、上記放射線硬化性アクリル系モノマーまたはオリゴマーは、アクリロイル基を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含むものが好ましく、アクリロイル基を2以上有するものがより好ましい。アクリロイル基を2以上含むことにより、網目構造の形成が十分に行われ、粘着剤の凝集性がさらに向上し、良好な粘着剤層が得られる。
【0013】放射線硬化型樹脂として、上記放射線硬化型樹脂の他に反応性希釈剤を併用することが好ましい。反応性希釈剤としては、例えば、N-ビニルピロリドン、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、好ましくは、N-ビニルピロリドンである。
・・・
【0015】本発明における粘着剤層は、放射線照射前の動的貯蔵弾性率G_(1)’が1×10^(4)?1×10^(6)dyn/cm^(2)、特に好ましくは1×10^(5)?1×10^(6)dyn/cm^(2)であり、かつ該動的貯蔵弾性率G_(1)’に対する放射線照射後の動的貯蔵弾性率G_(2)’の比(G_(2)’/G_(1)’)が1.5?20、特に好ましくは1.7?10である特性を有することが好ましい。上記放射線照射前の動的貯蔵弾性率G_(1)’及び放射線照射後の動的貯蔵弾性率G^(2)’の測定条件は、25℃、周波数ω=10rad/sec、歪み=5%である。
【0016】上記粘着剤層には、必要に応じて、放射線開始剤、粘着付与剤、充填剤、軟化剤、ワックス、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、シランカップリング剤などを配合することができる。放射線開始剤としては、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインイソプロピルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチルフェニル-プロパン-1-オンなどの紫外線開始剤などが挙げられる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。充填剤としては、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤などが挙げられる。ワックスとしては、天然系、鉱物系、ポリエチレン系、パラフィン系が挙げられる。酸化防止剤としては、アニリド系、フェノール系、ホスファイト系、チオエステル系などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などが挙げられ、架橋剤としては、エポキシ系、イソシアナート系、金属キレート系、メラミン系、アジリジン系などが挙げられる。シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。本発明の粘着剤層の厚みは、粘着シートを貼合する被着体の粗面の凹凸の深さと同程度以上の厚みが好ましい。粘着剤層の厚みは、通常、10?200μmであればよく、特に20?100μmが好ましい。
【0017】本発明の粘着シートは、その片面または両面を剥離シートで覆うことができる。剥離シートは、少なくとも片面が剥離性を有する支持基材からなり、通常は支持基材に剥離処理を施したものである。支持基材としては、例えば紙、合成紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。紙としては、例えばグラシン紙、ポリエチレンラミネート紙などが挙げられ、プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチックのフイルムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。剥離シートは、本発明の粘着シートが被着体の粗面に貼合され、剥離シートの上から放射線を照射する場合は、放射線を透過するものであることが必要である。
・・・
【0019】本発明の粘着シートは、種々の粗面を有する被着体の粗面に貼合できる。被着体の粗面の凹凸の深さは、特に制限ないが、凹凸の深さが30μm以上であっても、本発明の粘着シートを適用できる。粗面を有する被着体の具体例としては、例えば、プロジェクションテレビジョンのスクリーン基板の表面に貼合するレンチキュラーシート、エンボス加工されたシート、厚膜印刷されたシート、電子回路を施されたシート、などが挙げられる。本発明の粘着シートの被着体の粗面への貼合は、常温?120℃で行うことができる。また、貼合時には、加圧することが好ましく、加圧手段としては、例えば一対のロール間に粘着シートを被着体に積層した積層物を通す方法などが挙げられる。
【0020】本発明の粘着シートは、被着体の粗面へ貼合され、放射線を照射された後も十分な粘着性を維持することができる。放射線の照射量は、特に制限ないが、紫外線照射の場合、通常0.05?5Jであればよいが、好ましくは0.1?2Jである。また、電子線照射の場合、通常0.01?100KGyであればよいが、好ましくは0.1?50KGyである。本発明の粘着シートは、粘着剤層の片面を被着体の粗面に貼合し、該粘着剤層の他面を他の被着体に貼合するために用いることができる。
【0021】本発明の粘着シートは、プロジェクションテレビジョンのスクリーン基板の表面に貼合するレンチキュラーシートの粗面に好適に使用できる。本発明の粘着シートをレンチキュラーシートの粗面に貼合する一具体例を図面に基づいて説明する。本発明の粘着シートは、例えば図1に示すような断面図を有するものが挙げられ、粘着シートの両面には、剥離シート2が被覆されている。この剥離シート2のいずれか一方を取り除き、図2に示すように粘着剤層1の表面をレンチキュラーシート3の粗面に貼合し、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤組成物を入れ、空気を封入しないようにする。続いて、放射線を照射し粘着剤層1を架橋させる。放射線の照射は、レンチキュラーシート3の表面側から行ってもよいし、剥離シート2の表面側から行ってもよい。放射線の照射を剥離シート2の表面側から行う場合には、剥離シート2を除去した後、放射線照射を行ってもよい。その後、剥離シート2が残っている場合はその剥離シート2を除去し、粘着剤層1の表面をプロジェクションテレビジョンのスクリーン基板の表面に貼合し、プロジェクションテレビジョンのスクリーンを完成する。なお、放射線の照射は、粘着剤層1の片面をレンチキュラーシート3の粗面に貼合し、その粘着剤層1の他面をプロジェクションテレビジョンのスクリーン基板の表面に貼合した後に、行ってもよい。放射線の照射量を少なくする観点からは、放射線の照射は、粘着剤層1の表面をレンチキュラーシート3の粗面に貼合した後、プロジェクションテレビジョンのスクリーン基板の表面に貼合する前に、行うことが好ましい。


エ (甲1-4):
「【0022】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。実施例に使用した粘着剤及び放射線硬化型樹脂を以下に示す。
(1)アクリル系粘着剤A:アクリル酸ブチル/アクリル酸メチル/アクリル酸/アクリル酸-2-エチルヘキシルを重量比で78.5/16.5/4.5/0.5の割合で含有する共重合体、重量平均分子量=700,000
(2)アクリル系粘着剤B:・・・
(3)放射線硬化型樹脂組成物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ペンタエリスリトールトリアクリレート/N-ビニル-ピロリドンを重量比で40/30/15の組成割合で含む組成物に、紫外線開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を全組成物の15重量%になるように含有させたUV硬化型樹脂組成物
【0023】実施例1
・・・
【0025】実施例3
アクリル系粘着剤A100重量部(固形分)に対し、放射線硬化型樹脂組成物14重量部(固形分)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)のキレート系架橋剤を0.15重量部(固形分)混合した粘着剤組成物を、厚さ38μmの透明なポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの剥離シートの剥離面に、粘着剤層の厚みが80μmになるように塗布し、さらにその粘着剤層の表面を厚さ38μmの透明なポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの剥離シートで被覆して、粘着シートを作成した。
【0026】実施例4
・・・
【0031】比較例4
実施例1において、放射線硬化型樹脂組成物の混合量を30重量部(固形分)にした以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作成した。上記実施例及び比較例の粘着シートについて、下記の試験を行い、その結果を表1及び表2に示した。
(1)粗面へのラミネート適性:レンチキュラーシートの粗面(微細凹凸部の深さ:50μm)上に粘着シートの片面の剥離シートを除去し、粘着剤層面を載せながら、一対のロール間に送り込み、室温にて加圧し、粘着シートとレンチキュラーシートを貼合した。貼合された粘着シートとレンチキュラーシートの貼合状態を観察し、下記の基準に基づいて評価した。
○:空気の封入がなかった。
×:空気の封入があった。
【0032】(2)アクリル板に対する粘着力
実施例1?4および比較例1?4では、UV照射前の粘着シートと0.2JのUV光を照射したUV照射後の粘着シートをそれぞれアクリル板(厚み:3mm)に貼合し、30分後にその粘着力を測定した。実施例5では、UV照射に変えて電子線20KGyの照射を行い、同様にして粘着力を測定した。
(3)動的貯蔵弾性率
実施例1?4および比較例1?4では、UV照射前の動的貯蔵弾性率G_(1)’及び0.2JのUV光を照射したUV照射後の動的貯蔵弾性率G_(2)’を、測定条件を25℃、周波数ω=10rad/sec、歪み=5%として測定し、その比(G_(2)’/G_(1)’)を求めた。実施例5では、UV照射に変えて電子線20KGyの照射を行い、同様にして比(G_(2)’/G_(1)’)を測定した。
(4)耐熱性
実施例1?4および比較例1?4では、貼合された粘着シートとレンチキュラーシート(粗面の微細凹凸部の深さ:50μm)にUV照射し(UV光の照射量:0.2J)、UV照射後の粘着シートとレンチキュラーシートの積層物を70℃の恒温槽に1週間入れた後、取り出してその積層物の状態を観察し、下記の基準に基づいて評価した。実施例5では、UV照射に変えて電子線20KGyの照射を行い、同様にして粘着力を測定した。
○:外観上、発泡、浮き、膨れ無し。
×:外観上、発泡、浮き、膨れ有り。」
オ (甲1-5):
「【0033】
【表1】

(審決注;上記表1中、「放射線照射前G_(2)’」とあるのは、「放射線照射後G_(2)’」の誤記と認められる。)」
カ (甲1-6):
「【0035】
【発明の効果】本発明の粘着シートは、被着体の粗面に貼合される際に、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤を入り込ませて、空気の封入を防ぐことができ、放射線照射後は、耐熱性にも優れている。」
(2)甲第1号証に記載された発明
前記(1)の記載事項、特にアの特許請求の範囲の記載のほか、イの段落【0002】の「例えば、プロジェクションテレビジョンのスクリーンは、スクリーンを構成するアクリル板などの基板の表面に、映像を映し出すレンチキュラーシートが貼合されている構造になっているが、そのレンチキュラーシートは、表面が細かな凹凸状の粗面になっており、そのレンチキュラーシートの粗面とスクリーン基板を貼り合わせるために従来の粘着シートを用いると、空気が微細な凹部の奥に残されて封入され、映像を鮮明に映し出すことができないという欠点があった。」、段落【0003】の「本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、被着体の粗面に貼合される際に、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤を入り込ませて、空気の封入を防ぐことができ、放射線照射後は、耐熱性にも優れる粘着シートを提供することを目的とする。」との記載、ウの段落【0017】の「本発明の粘着シートは、その片面または両面を剥離シートで覆うことができる。」、段落【0020】の「放射線の照射量は、特に制限ないが、紫外線照射の場合、通常0.05?5Jであればよいが、好ましくは0.1?2Jである。」、段落【0021】の「本発明の粘着シートをレンチキュラーシートの粗面に貼合する一具体例を図面に基づいて説明する。本発明の粘着シートは、例えば図1に示すような断面図を有するものが挙げられ、粘着シートの両面には、剥離シート2が被覆されている。この剥離シート2のいずれか一方を取り除き、図2に示すように粘着剤層1の表面をレンチキュラーシート3の粗面に貼合し、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤組成物を入れ、空気を封入しないようにする。・・・なお、放射線の照射は、粘着剤層1の片面をレンチキュラーシート3の粗面に貼合し、その粘着剤層1の他面をプロジェクションテレビジョンのスクリーン基板の表面に貼合した後に、行ってもよい。」との記載、エの段落【0025】の実施例3の動的貯蔵弾性率が「放射線照射後G_(2)’」である旨の記載によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているということができる。
<甲1発明>:
「2つの被着体であるスクリーン基板とレンチキュラーシートを両面粘着シートで貼合することを介して積層体とした後に、被着体の表面側から紫外線を照射する、プロジェクションテレビジョンのスクリーンの製造方法であって、当該両面粘着シートが、アクリル系粘着剤A100重量部(固形分)に対し、放射線硬化型樹脂組成物14重量部(固形分)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)のキレート系架橋剤を0.15重量部(固形分)混合した粘着剤組成物から形成されたものであり、当該積層体における両面粘着シートからなる層は、紫外線照射前の動的貯蔵弾性率G_(1)’が4.53×10^(5)dyn/cm^(2)であり、かつ紫外線照射後の動的貯蔵弾性率G_(2)’が46.9×10^(5)dyn/cm^(2)である特性を有する方法」
(2)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、次の記載がある。
ア (甲2-1):
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材と、粘着剤層を有する粘着シートにおいて、前記粘着剤層が主成分として粘着剤成分と硬化性成分とを含むことを特徴とする粘着シート。
・・・
【請求項5】 前記粘着剤成分は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする請求項1ないし4のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】 前記硬化性成分は放射線硬化性を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】 前記硬化性成分はアクリル系モノマーまたはオリゴマーを含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】 前記アクリル系モノマーまたはオリゴマーはアクリロイル基を有する反応性モノマーまたはオリゴマーである請求項7に記載の粘着シート。」
イ (甲2-2):
「【0007】(1) 基材と、粘着剤層を有する粘着シートにおいて、前記粘着剤層が主成分として粘着剤成分と硬化性成分とを含むことを特徴とする粘着シート。
・・・
【0011】(5) 前記粘着剤成分は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の粘着シート。
【0012】(6) 前記硬化性成分は放射線硬化性を有するものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の粘着シート。
【0013】(7) 前記硬化性成分はアクリル系モノマーまたはオリゴマーを含むものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の粘着シート。
【0014】(8) 前記アクリル系モノマーまたはオリゴマーはアクリロイル基を有する反応性モノマーまたはオリゴマーである上記(7)に記載の粘着シート。」
ウ (甲2-3):
「【0020】このような基材フィルム3としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン(PP)、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド等の樹脂で構成されたものが挙げられるが、なかでもPETフィルムが好ましい。
・・・
【0027】粘着剤成分としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等いずれのものでもよいが、中でもアクリル系粘着剤が特に好ましい。これにより、粘着剤層5の耐候性を良好に維持することができる。
【0028】このような粘着剤成分の1つとして挙げられるアクリル系粘着剤としては、粘着性を与える低Tgの主モノマー、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマー、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー(モノエチレン性不飽和モノマー)等から成るものが用いられる。
【0029】主モノマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらのものを1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0030】コモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル基含有化合物が挙げられる。
【0031】官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ-ト、N-メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等のヒドロキシル基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド等のN-置換アミド基含有モノマー、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマーが挙げられる。
・・・
【0035】以上のような粘着剤は、架橋型、非架橋型のいずれのものも使用できる。架橋型の場合、エポキシ系化合物、イソシアナート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等の各種架橋剤を用いる方法等が挙げられ、これらは、それぞれの有する官能基により適宜選択される。
・・・
【0038】このような放射線硬化性成分としては、特に限定されないが、例えばアクリル系モノマーまたはオリゴマーを有するものが好ましい。これにより耐候性の優れた粘着剤層を形成することができる。
【0039】このような放射線硬化性のアクリル系モノマーまたは/およびオリゴマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】さらに、上記アクリル系モノマーまたはオリゴマーは、アクリロイル基を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含むものが好ましく、アクリロイル基を2以上有するものがより好ましい。アクリロイル基を2以上含むことにより、網目構造の形成が十分に行われ、粘着剤の凝集性がさらに向上し、良好な粘着剤層が得られる。
・・・
【0044】また、放射線硬化性成分を紫外線照射等により硬化させる場合、重合開始剤を添加してもよく、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o-ベンゾイル安息香酸メチル-p-ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ジメチルベンジルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-イソプロピル-2-メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p-クロルベンゾフェノン、p-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2-クロルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α-アシルオキシムエステル等が挙げられる。
・・・
【0055】また、本発明の粘着シート1(離型シート6を除く)は、特に用途は限定されないが、光透過性を必要とする場合は実質的に透明または半透明であることが好ましい。これにより、例えば光学機器のディスプレイや車窓等に貼着しても視認性が損なわれない。」
エ (甲2-4):
「【0057】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0058】(実施例1)
1.粘着シートの作製
反射防止薄膜(AR層)を積層したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材のAR層の反対側の面に、下記[2]の各成分を混合し調製した粘着剤溶液からなる粘着剤層を形成した。
【0059】次いで、該粘着剤層に離型シートを貼着して、図1に示す構造の粘着シートを作製した。
【0060】各層の成分および構成は、以下の通りである。
[1]基材(AR-PETフィルム)
基材フィルム:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:188μm)
AR層:4層構造(ITO/SiO_(2)/TiO_(2)/SiO_(2)の各薄層をスパッタリングにより積層)
(合計厚さ:0.2μm)
【0061】[2]粘着剤層
粘着剤成分:アクリル酸エステル系共重合体;100重量部(Mw=60万)
アクリル酸ブチル;95量部、アクリル酸;5重量部、
硬化性成分:トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー;5重量部
添加剤:
(光重合開始剤)1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;0.6重量部
(架橋剤)トリメチロールプロパントリレンジイソシアナート;1重量部
厚さ:25μm
【0062】[3]離型シート
基材:透明ポリエステルフィルム(片面にシリコーン処理したもの)
(SP PET38、リンテック社製)
厚さ:38μm
得られた粘着シートに、離型シート面側から紫外線を照射し、その後、常温で1週間エージングし、粘着シートを得た。
・・・
【0073】2.耐ブリスター性試験上記実施例1?6および比較例1?5で得られた各粘着シートを曲面ガラス板に貼付し、フェードメータによる耐久条件に投入して膨れの発現状態を目視で観察した。なお、フェードメータによる試験条件は、JIS B 7751に従って行った。」
オ (甲2-5):
「【0079】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の粘着シートは、粘着剤層が強固で凝集力に富むので、例えば、基材に薄膜が設けられているような気体透過性が低いものであっても、粘着シートの基材等から発生するガスによる膨れ防止(耐ブリスター)効果が十分に発揮される。
【0080】また、本発明の粘着シートは粘着性にも優れるため、被着体に対する優れた接着性を有し、貼付後も経時的な劣化等がない。特に、被着体が例えば、ブラウン管のような曲面であっても、曲面への追従性に優れ、優れた接着性を発揮する。」
(3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、次の記載がある。
ア (甲3-1):
「【0002】
【従来の技術】通常のテレビに比較して表示画面が大きく、大型表示が可能な装置として、背面投射型のプロジェクションテレビが知られている。背面投射型のプロジェクションテレビでは、赤(R)、緑(G)、青(B)用の投射ブラウン管(CRT)からそれぞれ映像光を出射し、その映像光を表示画面スクリーンに入射させ、その入射面に対して背面側のスクリーンに映し出された画像を映像として表示する。
【0003】以前は、このようなプロジェクションテレビにおいて、表示画面スクリーンは、一般に複層のレンズスクリーンで構成してある。たとえばCRTからの光を集光する光入射側に設けられたフレネルレンズスクリーンと、フレネルレンズスクリーンで集光された光を左右に振り分ける光出射側(視認側)に設けられたレンチキュラーレンズスクリーンとで表示画面スクリーンは構成される。ここで、レンチキュラーレンズスクリーンは、フレネルレンズスクリーンからの光を左右に振り分けるための凹凸部をその表裏面に有する。
【0004】ところが、このようにレンチキュラーレンズスクリーンが、特に光出射側において凹凸部を有するために、光出射側において画質がざらついた感じになるという問題があった。このような問題を解決するために、近年では、図7(A)に示すように、レンチキュラーレンズスクリーン22に対して光射出側に、ガラスやプラスチックを材料とする前面板24をさらに設け、CRT表示に近似した画質を得ていた。この前面板24は、レンチキュラーレンズスクリーン22とフレネルレンズスクリーン20と共に、プロジェクションテレビの表示部に対し、それらの外縁をテープあるいはその他の取付具で貼り付けることで、プロジェクションテレビに固定されている。」
イ (甲3-2):


」(【図7】)
(4)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、次の記載がある。
ア (甲4-1):
「5.実験方法及び結果
1)組成物の調整
・・・
2)G’(c)及びG’(d)の測定
本件特許明細書の段落番号[0029]?[0032]の記載に従い、両面粘着シート及び動的粘弾性測定用の試験体を製造した。
前記で得られた実施例3の組成物を、2枚の離型フィルム[・・・]に塗工・乾燥させ、厚み0.5mmのシート状の両面粘着シートを得た。これを試験体1という。
その後、市販のフロート板ガラス(厚さ3mm)とポリカーボネート板(厚さ2mm)の間に、離型フィルムを剥がさずに前記両面粘着シートを挟み、ローラー圧着後、高圧水銀ランプ[・・・]の紫外線照射装置を用いて、積層体のガラス側より160w/cm、コンベアスピード5m/分の条件で照射させて組成物の硬化物を得た。
得られた積層体から、フロート板ガラスとポリカーボネート板を取り外し、さらに離型フィルムを剥がして試験体2とした。
・・・
試験体1について、貯蔵弾性率をJIS K7244-4に準じて測定(周波数1Hz、昇温速度2℃/分、歪み量:3%)し、ずりモードにおける20℃でのG’〔G’(a)〕及び180℃でのG’〔G’(b)〕を測定した。
次に、試験体2について、同様の方法で、ずりモードにおける20℃でのG’〔G’(c)〕及び180℃でのG’〔G’(d)〕を測定した。」
第5 対比・判断
(1)本件発明1と甲1発明との対比
ア 本件発明1と甲1発明は、いずれも、2つの被着体を紫外線硬化前の両面粘着シートで貼り合わせた後、一方の被着体を通じて紫外線を照射して、紫外線硬化させる積層体の製造方法であるところ、甲1発明の「スクリーン基板」は、本件発明1の「合成樹脂板」に相当し、甲1発明の「アクリル系粘着剤A100重量部(固形分)に対し、放射線硬化型樹脂組成物14重量部(固形分)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)のキレート系架橋剤を0.15重量部(固形分)混合した粘着剤組成物から形成された」両面粘着シートは、本件発明1の「紫外線硬化可能な粘着剤層(但し、A)オレフィンと極性モノマーのフィルム形成コポリマー、B)光重合性アクリルモノマー及びC)アクリル基の光重合用光開始剤からなり、光に対して透過性であると同時に成分A)及びB)の間に部分的に非相溶性を示す組成物から形成されるものを除く。)を少なくとも1層以上有する、紫外線硬化前の両面粘着シート」に相当し、甲1発明の「紫外線照射前の」「当該積層体における両面粘着シートからなる層」は、本件発明1の「紫外線硬化可能な粘着剤層」に相当することは明らかであるから、両発明の一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>:
「板材としての合成樹脂板ともう一つの被着体、紫外線硬化可能な粘着剤層を1層有する、紫外線硬化前の両面粘着シートで貼り合わせた後、前記板材側から紫外線照射して、前記粘着剤層を特定の粘弾性特性を有するように紫外線硬化させる積層体の製造方法」
<相違点>:
(相違点1)もう一つの被着体が、甲1発明ではレンチキュラーシートであり、積層体がプロジェクションテレビジョンのスクリーンであるのに対して、本件発明1では、もう一つの被着体がガラス板であり、積層体が透明積層体である点
(相違点2)粘着剤層の粘弾性特性に関し、甲1発明は、紫外線照射後の硬化した粘着剤層の粘弾性特性として、「動的貯蔵弾性率G_(2)’が46.9×10^(5)dyn/cm^(2)であること」を特定するのに対して、本件発明1は、紫外線照射後の硬化した粘着剤層の粘弾性特性として、「(c)測定温度20℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率G’(1Hz)が1×10^(4)?1×10^(6)Pa(パスカル)。 (d)基準温度20℃、周波数10^(-7)Hzでの貯蔵弾性率G’(10^(-7)Hz)が1×10^(4)Pa以上。」と特定する点
(2)前記(1)<相違点>の判断
ア 前記(1)によれば、本件発明1は、甲1発明と対比して、前記(1)<相違点>を有するから、直ちに同一であるということはできない。したがって、仮に、取消理由1のとおりに、本件発明1が甲1発明と同一であるというためには、前記(1)<相違点>に係る構成は、甲第1号証に明示的には記載されていないが、甲1発明に内在する構成であり、前記(1)<相違点>が実質的な相違点ではないことを証明することができることを要する。
イ そこで、本件においては、まず、取消理由1のとおりに、前記(1)<相違点>の(相違点2)の、紫外線照射後の硬化した粘着剤層の粘弾性特性、すなわち、前記(c)及び(d)の貯蔵弾性率G’に関して、「甲第4号証を参酌することで、甲第1号証には(c)及び(d)の貯蔵弾性率G’が記載されている」といえるのか否か、その成立性を検討する。
ウ 前記第4(4)アによれば、甲第4号証に記載された実験は、(i)紫外線照射条件として「160w/cm」で照射した、(ii)「厚み0.5mmのシート状の両面粘着シート」を得た、(iii)甲第4号証に記載された実験では、「ずりモードにおける20℃でのG’〔G’(a)〕及び180℃でのG’〔G’(b)〕を測定した」ものであるが、これらの点につき、甲1発明は、(i)前記第4(1)エの段落【0032】のとおり、「0.2JのUV光を照射」したものであり、(ii)前記第4(1)エの段落【0025】のとおり、「粘着剤層の厚みが80μmになるように塗布し」て「粘着シートを作成した」ものであり、(iii)「ずりモード」との特定はなく、また、180℃での貯蔵弾性率G’〔G’(b)〕を求めて周波数10^(-7)Hzでの貯蔵弾性率G’(10^(-7)Hz)に代えるのではなく、周波数10^(-7)Hzでの貯蔵弾性率G’(10^(-7)Hz)を直接的に求めているから、甲第4号証に記載された実験は、これらの点において実験条件が異なり、直ちに甲1発明の追試実験に相当するということができない。
エ したがって、甲第4号証をもって、前記(1)<相違点>の(相違点2)に係る構成が甲1発明に内在する構成であり、前記(1)<相違点>が実質的な相違点ではないとは直ちにいうことができない。
オ 次に、前記(1)<相違点>の(相違点1)を検討する。
前記第4(1)アから明らかなように、レンチキュラーシートは、表面が細かな凹凸状の粗面になっており、そのレンチキュラーシートの粗面とスクリーン基板を貼り合わせる際に、空気が微細な凹部の奥に残されて封入され、映像を鮮明に映し出すことができないという欠点があったところ、甲1発明は、被着体の粗面に貼合される際に、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤を入り込ませて、空気の封入を防ぐことができ、放射線照射後は、耐熱性にも優れる粘着シートを提供することを目的とするものであると認められる。
一方、本件発明1は、本件明細書の【発明の詳細な説明】の段落【0001】の記載「本発明は、自動車、鉄道車両、船舶、航空機、建築、機械装置等の窓あるいは液晶表示、プラズマディスプレイ、タッチパネル等のディスプレイ表示用に用いられる透明積層体を、オートクレーブによる高温・高圧処理を必要とせず、室温で製造することが可能な粘着剤層を使用した透明積層体の製造方法に関するものである。」からも明らかなように、自動車、建築、機械装置等の窓あるいは液晶、タッチパネル等のディスプレイ表示用に用いられる透明積層体を、オートクレーブによる高温・高圧処理を必要とせず、室温で製造することが可能な粘着剤層を使用した透明積層体の製造方法に関するものであり、透明なガラス板と透明な合成樹脂板とが透明な粘着剤層を介して積層・硬化されてなる透明積層体を製造する方法の発明であると認められる。
したがって、甲1発明は、そもそも本件発明1とは、その技術分野が異なり、製造方法の目的物が異なり、解決しようとする課題が異なるものであるから、前記(1)<相違点>の(相違点1)に係る構成が、甲1発明に内在する構成であるとはいうことができない。
そして、上記のとおり、「レンチキュラーシートは、表面が細かな凹凸状の粗面になっており、そのレンチキュラーシートの粗面とスクリーン基板を貼り合わせる際に、空気が微細な凹部の奥に残されて封入され、映像を鮮明に映し出すことができないという欠点があったところ、甲1発明は、被着体の粗面に貼合される際に、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤を入り込ませて、空気の封入を防ぐことができ、放射線照射後は、耐熱性にも優れる粘着シートを提供することを目的とするもの」であるから、当然のことながら、甲第1号証の記載を精査しても、もう一つの被着体が、仮に、レンチキュラーシートに特定されるものではないとしても、その表面が細かな凹凸状の粗面になっているものを超えて、ガラス板であるとする構成を導く契機はなく、その製造方法の目的物を、プロジェクションテレビジョンのスクリーンから、窓や表示用等の透明積層体に変更するべき契機もない。
カ また、甲第2号証?甲第4号証をみても、甲第1号証に接した当業者において、前記前記(1)<相違点>の(相違点1)に係る構成を導き得る契機はない。
キ したがって、前記(1)<相違点>の(相違点1)に係る構成が、甲第1号証に接した当業者において容易になし得るものであるということはできない。
ク 最後に、前記(1)<相違点>の(相違点2)に係る構成について、容易想到性を検討する。
紫外線照射後の硬化した粘着剤層の粘弾性特性に関し、本件明細書の【発明の詳細な説明】の段落【0028】には、「粘着剤層2が紫外線硬化前の前記粘弾性特性の状態のままでは、凝集力が十分でなく、実用上の使用環境(高温・多湿、低温から高温のサイクル等)下で、積層体の板がずれたり、あるいは積層面内で気泡が発生する問題がある。しかし、室温で板材を積層した後、粘着剤層2を紫外線硬化させてその粘弾性特性を前記(c),(d)の条件を満足する状態とすることにより、実用上の使用環境に耐えうる凝集力を付与できる。その結果、透明積層板としての合わせガラス8は実用上の使用環境における耐久性を確保できる。」との記載がある。これによれば、前記(1)<相違点>の(相違点2)に係る構成は、透明積層体としての合わせガラスにおける実用上の耐久性を確保するものであるということができる。
これに対して、甲1発明は、前記オのとおり、被着体の粗面に貼合される際に、粗面の微細な凹部の奥まで粘着剤を入り込ませて、空気の封入を防ぐことができ、放射線照射後は、耐熱性にも優れる粘着シートを提供することを目的とするものであると認められ、そもそも本件発明1とは、その技術分野が異なり、製造方法の目的物が異なり、解決しようとする課題が異なるものであるから、当然のことながら、甲第1号証の記載を精査しても、透明積層体としての合わせガラスにおける実用上の耐久性を確保する手段としての前記(1)<相違点>の(相違点2)に係る構成を導き得る契機はない。
ケ 前記アないしクを総合すれば、相違点1と相違点2はそれぞれに実質的な相違点であり、それらの少なくとも1つがあることをもって、本件発明1が甲1発明と同一であるということはできないし、また、いずれの相違点も、甲第1号証に接した当業者において容易に導くことができるものであるということもできない。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであったということはできないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないものであったということもできない。
(3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明2は、実施例3の実験成績証明書に関する甲第4号証を踏まえれば、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、取り消すべきものであると主張する。
しかし、実施例3の実験成績証明書に関する甲第4号証をもってしても、甲1発明が本件発明2の紫外線硬化前の貯蔵弾性率G’(10^(-7)Hz)を満たすものであるとはいえないことが明らかであり、特許異議申立人も認めるところである(特許異議申立書20頁1?11行)。
しかも、そもそも、甲第4号証に記載された実験は、前記(2)ウのとおり、その実験条件が本件明細書に記載された条件と同一ではないから、その結果の数値を直ちに採用することができないものである。
したがって、本件発明2が実質的に甲第1号証に記載されているとは到底いうことができない。
よって、かかる主張は理由がない。
第6 むすび
前記第5のとおりであるから、前記取消理由によっては、請求項1?2に係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-10-31 
出願番号 特願2011-193065(P2011-193065)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (C03C)
P 1 652・ 121- YAA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山崎 直也  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 萩原 周治
板谷 一弘
登録日 2015-09-04 
登録番号 特許第5801148号(P5801148)
権利者 三菱樹脂株式会社
発明の名称 透明積層体の製造方法  
代理人 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所  

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