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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1326204
審判番号 不服2016-278  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-07 
確定日 2017-04-04 
事件の表示 特願2014- 88178「放射線変換装置および放射変換装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-216651、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月22日(パリ条約による優先権主張 2013年4月24日 米国)の出願であって、平成27年2月20日付けで拒絶理由が通知され、同年6月3日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年9月1日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、これに対して、平成28年1月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、その後、当審において同年12月12日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、平成29年1月27日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成29年1月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第1の導電型の第1の補償区域と前記第1の補償区域同士を互いに分離するベース部とを含む半導体部分を含む放射線変換装置であって、
前記第1の補償区域は柱構造に配置され、各柱構造は前記第1の補償区域の少なくとも2つを含み、前記半導体部分の主面に対し垂直方向に延び、
前記ベース部は隣り合う前記柱構造同士の間に第2の相補導電型の第2の補償区域を含み、
前記柱構造は縞状であり、前記主面に対して第1の横方向に延び、
前記放射線変換装置は前記主面と直接接触して配置された第1の電極構造をさらに含み、
前記第1の電極構造は前記第1の横方向と交差する第2の横方向に走る複数のストリップを含み、
前記半導体部分は第1の導電型の第1のコンタクト領域を含み、
前記第1のコンタクト領域は前記第1の電極構造にオーム接触を与える平均正味不純物濃度を有し、
前記第1のコンタクト領域は前記割り当てられた柱構造の第1の補償区域のうちの1つと前記第1の電極構造とに直接接触する、放射線変換装置。」

第3 原査定の拒絶理由について
1 原査定の拒絶理由の概要
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:米国特許第7612344号明細書



刊行物1には、第1ベース領域11と第2ベース領域21とが形成されたエピタキシャル層120、第1接続電極13と第2接続電極23、などを有する放射線検出器が開示されており(図6など)、また、また、その製法として、各エピタキシャル層にドーパントを注入し、熱処理を行うことも記載されている(図2など)。
してみれば、請求項1-22は刊行物1に対して新規性ないし進歩性はない。

2 原査定の拒絶理由の判断
(1)刊行物1の記載事項
ア 刊行物1には次の事項が記載されている。
(下線は、下記「イ 刊行物1に記載された発明の認定(図6に記載された実施例を基に認定した発明)」、及び「第4」の「2」の「(1)」の「ア 刊行物Aに記載された発明の認定(図8に記載された実施例を基に認定した発明)」のいずれかの発明で引用した記載に付したものである。)

a「SUMMARY
One embodiment provides a method for producing a radiation detector including a semiconductor body with a first base zone of a first conduction type and with at least one second base zone which is arranged in the first base zone, extends in a vertical direction of the semiconductor body and is doped complementarily to the first base zone. Semiconductor zones of a second conduction type are produced, which is complementary to the first conduction type, in epitaxial layers such that the complementarily doped semiconductor zones are adjacent to one another in a vertical direction and thus form the second base zone.」(第1欄第20?32行)
(当審訳)
「要約
一実施例として、第1導電型の第1ベースゾーンと、第1ベースゾーン中に配置され、垂直方向に延伸され、第1ベースゾーンと相補的になるようにドープされる少なくとも1つの第2ゾーンとを備えた半導体本体を含む放射線検出装置の製造方法を示す。第2導電型の半導体、それは、第1導電型と反対の型であるが、当該反対の型にドープされた半導体ゾーンが相互に垂直方向に接続して第2ベースゾーンを形成するようにエピタキシャル層状に形成される。」

b「Referring to FIG. 5 , which illustrates a lateral cross section through the epitaxial layer stack 120 in the sectional plane A-A for a further example, the second base zone 21 may also be realized in such a way that it has several strip-type or plate-type base zone sections arranged at a distance from one another in a lateral direction. Referring to the explanations with regard to FIGS. 2 and 3 , such strip-type base zone sections are produced by virtue of the implantation mask 200 including strip-type cutouts 201 arranged at a distance from one another in a lateral direction.」(第6欄第30-39行)
(当審訳)
「図5は、A-A断面におけるエピキシャル層120の水平面図を示す。第2ベースゾーン21は、水平方向に互いに離れた位置で筋状型に、又は平板型に形成されている。図2,3を用いて説明すると、このような筋状型のベースゾーンは、水平方向に互いに離れた位置に配置された筋状型の切り抜き201を備えたマスク200を用いて垂直方向に形成されたものである。」

c「FIG. 6 illustrates a vertical cross section through a radiation detector in accordance with one embodiment, the radiation detector including first and second base zones 11 , 21 produced on the basis of the method explained above. Apart from the first base zone 11 of the first conduction type, which is formed at least partly by the basic doping of the epitaxial layers, and the second base zone 21 extending in a vertical direction of the semiconductor body 100 , this radiation detector has a first connection electrode 13 for applying an electrical potential to the first base zone 11 and a second connection electrode 23 for applying an electrical potential to the second base zone 21 .」(第6欄第45-56行)
(当審訳)
「 図6に、上述の方法で製造された第1及び第2ベースゾーン11,21を含む放射線検出器である、一実施例どおりの放射線検出器の垂直方向断面図を示す。少なくとも部分的にエピタキシャル層のドーピングによって形成された第1導電型の第1ベースゾーン11と、半導体本体100の垂直方向に延伸された第2ベースゾーン21の他に、この放射線検出装置は、第1ベースゾーン11に接続して潜在的な電力を引き出す電極13と、 第2ベースゾーン21に接続して潜在的な電力を引き出す電極23を有する。」

d「The second connection electrode 23 is arranged in the region of the front side 101 of the semiconductor body 100 and is connected to the second base zone 21 via a second connection zone of the second conduction type. In this case, the second connection zone 22 may be doped more highly than the second base zone 21 and serves for the low-impedance connection of the second connection electrode 23 to the second base zone 21 . The second connection zone 22 , with regard to its extent in a lateral direction, may be restricted to those regions in which the second base zone is arranged. In a manner not illustrated more specifically, however, the second connection zone 22 may also extend over regions of the first base zone 11 and in this case, in addition to the pn junction between the first and second base zones 11 , 21 , form a pn junction between the first base zone 11 and the second connection zone 22 .」(第7欄第24-38行)
(当審訳)
「第2接続電極23は、半導体本体100の表面側101のゾーンに配置され、第2導電型の第2接続ゾーン22を介して第2ベースゾーン21に接続される。この場合、第2接続ゾーン22は、第2ベースゾーン21よりも高濃度にドープされ、第2接続電極23を第2ベースゾーン21に対して低抵抗に接続する。第2接続ゾーン22は、側面方向の延びに関して、第2ベースゾーンが配置される範囲に限られる。具体的には図示されていないが、第2接続ゾーン22は、第1ベースゾーン11の領域にも延び、この場合、第1及び第2ベースゾーン11,21のpn接合に加え、第1ベースゾーン11と第2接続ゾーン22のpn接合をも形成している。」

e「During the operation of the radiation detector, an electrical voltage is applied between the first and second base zones 11 , 21 via the connection electrodes 13 , 23 , the voltage being chosen such that a pn junction present between the first and second base zones 11 , 21 is reverse-biased.」(第7欄第61-65行)
(当審訳)
「放射線検出器の作動中、接続電極13,23介して第1,2ゾーン11,21に電圧がかけられる。その電圧は、第1,2ベースゾーン11,21間に表れるpn接合に対して逆バイスをかけるように設定された電圧である。」

f「FIG. 8 illustrates a cross section through a radiation detector in accordance with a further example. This radiation detector differs from the radiation detectors explained above in that the second base zone 21 is produced such that it is adjacent to the semiconductor substrate 110 . In this radiation detector, the semiconductor substrate 110 has a doping concentration of the second conduction type and forms the second connection zone 22 in this radiation detector. In this component, the connection electrode applied to the rear side 102 of the semiconductor body forms the second connection electrode 23 . In this component, contact is made with the first base zone 11 by a first connection electrode 12 applied to the front side 101 . In order to reduce a contact resistance between the first connection electrode 12 and the second base zone 11 , a more highly doped first connection zone 12 is provided, which is produced, for example, by implantation of dopant atoms. In the radiation detector illustrated in FIG. 8 , the second base zone 21 is produced using the method explained with reference to FIGS. 2 and 3 . The fact of the second base zone 21 being adjacent to the second connection zone 22 formed by the semiconductor substrate 110 is facilitated in this method by virtue of the fact that, during the thermal process, dopant atoms from the highly doped semiconductor substrate 110 indiffuse into the epitaxial layer 121 deposited first.」(第10欄第54行-第11欄第11行)
(当審訳)
「図8は放射線検出器の別の実施例の断面図を示す。この放射線検出器は、第2ベースゾーン21が半導体基板110に接して形成されている点で上述の実施例と異なる。この放射線検出器においては、半導体基板110は、第2接続タイプのドーピング濃度を有し、この放射線検出器の第2接続ゾーン22を形成する。この構成要素においては、半導体基板本体の裏面側102に取り付けられた接続電極が、第2接続電極23となる。この構成要素では、第1ベースゾーン11が表面側101の取り付けられた接続電極13と接続される。接続電極13と第2ベースゾーン11との接続抵抗を減らすために、例えばドーパント原子の添加によって形成される、より高濃度の接続ゾーン12が設けられる。図8に示された放射線検出器においては、第2ベースゾーン21は、第2,3図を用いて説明された方法で形成される。半導体基板110によって形成された第2接続ゾーン22に第2ベースゾーン21を隣接させることは、熱的形成過程において高濃度ドープ半導体基板110のドーパント原子が、最初に載置されたエピキシャル層121に拡散するという利点により、この方法で促進される。」

g「図1B


h「図5


i「図6


j「図8



イ 刊行物1に記載された発明の認定(図6に記載された実施例を基に認定した発明)
上記「ア」のi(図6)に記載された実施例に着目すると、図6から第2ベースゾーン21が垂直方向に連続した柱構造に形成されていることが見て取れる。
また、上記「ア」のdに「第2接続ゾーン22は、側面方向の延びに関して、第2ベースゾーンが配置される範囲に限られる。」と記載されているところ、図6から、第2接続電極23についても、側面方向の延びに関して、第2接続ゾーン22及び第2ベースゾーンが配置される範囲に限られていることが見て取れる。
そうすると、図5及び図6の記載も参酌すると、刊行物1には、
「第1導電型の第1ベースゾーン11と、第1ベースゾーン中に配置され、垂直方向に延伸され、第1ベースゾーン11と相補的になるようにドープされる少なくとも1つの第2ゾーン21と
第1ベースゾーン11に接続して潜在的な電力を引き出す電極13と、 第2ベースゾーン21に接続して潜在的な電力を引き出す電極23を有する放射線検出装置であって、
第2接続電極23は、半導体本体100の表面側101のゾーンに配置され、第2導電型の第2接続ゾーン22を介して第2ベースゾーン21に接続され、
第2接続ゾーン22は、第2ベースゾーン21よりも高濃度にドープされ、第2接続電極23を第2ベースゾーン21に対して低抵抗に接続し、
第2ベースゾーン21は、垂直方向に連続した柱構造に形成され、
また、第2ベースゾーン21は、水平方向に互いに離れた位置で筋状型に形成され、
第2接続電極23は、側面方向の延びに関して、第2ベースゾーン21が配置される範囲に限られる放射線検出装置。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

(2)本願発明と引用発明1との対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、両者は、
(ア)一致点
「第1の導電型の第1の補償区域と前記第1の補償区域同士を互いに分離するベース部とを含む半導体部分を含む放射線変換装置であって、
前記第1の補償区域は柱構造に配置され、各柱構造は前記第1の補償区域の少なくとも2つを含み、前記半導体部分の主面に対し垂直方向に延び、
前記ベース部は隣り合う前記柱構造同士の間に第2の相補導電型の第2の補償区域を含み、
前記柱構造は縞状であり、前記主面に対して第1の横方向に延び、
前記放射線変換装置は前記主面と直接接触して配置された第1の電極構造をさらに含み、
前記半導体部分は第1の導電型の第1のコンタクト領域を含み、
前記第1のコンタクト領域は前記第1の電極構造にオーム接触を与える平均正味不純物濃度を有し、
前記第1のコンタクト領域は前記割り当てられた柱構造の第1の補償区域のうちの1つと前記第1の電極構造とに直接接触する、放射線変換装置。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する、
(イ)相違点
「第1の電極構造」が、本願発明においては「第1の横方向と交差する第2の横方向に走る複数のストリップを含む」のに対して、引用発明1においては、「第2接続電極23」は、「側面方向の延びに関して、第2ベースゾーン21が配置される範囲に限られ」るものであって、第2ベースゾーン21の筋状型の方向(本願発明の「第1の横方向」)と「交差する(第2の横)方向に走るストリップを含む」ものではない点。

イ 判断
上記の相違点について検討する。
PN接合の半導体に生じた電気を効率よく利用するためには、電極は、PN接合の半導体の一方とできるだけ大きな接触面積で接触すべきであることが当業者にとって技術常識である。その観点からは、引用発明1においては、第2接続電極23は、第2節ゾーン22とともに、第2ベースゾーン21の上面に沿ったストリップ、すなわち、第2ベースゾーン21の筋状型の方向に走るストリップとすべきであるといえる。
これに対して、第2接続電極23を「第2ベースゾーン21の筋状型の方向(本願発明の「第1の横方向」)」と「交差する(第2の横)方向に走るストリップを含む」とすることには動機付けが認められない。
したがって、引用発明1において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用して、本願発明を導出することが当業者にとって容易に想到し得ることであるということはできない。

ウ 小活
以上のとおりであり、上記相違点が生じることから、本願発明が引用発明1でないことは明らかであり、また、上記のとおり、本願発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、請求項2ないし10に係る発明は、本願発明の構成要件を全て含みさらに限定した発明であるから、本願発明と同様に、引用発明1でないことは明らかであり、また、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし10に係る発明は、引用発明1ではなく、また、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
すなわち、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物A:米国特許第7612344号明細書
(当審注:原査定の拒絶理由で引用した刊行物1と同じものである。刊行物Aに記載された事項については、上記「第3」の「2」の「(1)」の「ア」の記載参照。)

(2)請求項1を引用する請求項8,9に係る発明における「第1電極構造」は「第1の横方向と交差する第2の横方向に走る複数のストリップ」及び「第1の横方向と平行に走る複数のストリップ」の両者を含むものが特定されることになるが、そのようなものは、発明の詳細な説明に記載されていない。よって、本願は特許法第36条第6項第1号の規定に違反している。

2 当審拒絶理由の判断
(1)理由(1)について
ア 刊行物Aに記載された発明の認定(図8に記載された実施例を基に認定した発明)
上記「第3」の「2」の「(1)」の「ア」のj(図8)に記載された実施例に着目すると、図8から第2ベースゾーン21が垂直方向に連続した柱構造に形成されていることが見て取れる。
また、当該図8の実施例においても、第2ベースゾーン21が筋状型(strip-type)であるもの(gの図5の記載参照)も想定され得るものと認められる。
そして、第1接続ゾーン12と第2ベースゾーン21との間には第1ベースゾーン11が介在している。
そうすると、図8の記載も参酌すると、刊行物Aには、
「第1導電型の第1ベースゾーン11と、第1ベースゾーン中に配置され、垂直方向に延伸され、第1ベースゾーン11と相補的になるようにドープされる少なくとも1つの第2ゾーン21とを備えた半導体本体を含む放射線検出装置において、
第2ベースゾーン21は、垂直方向に連続した柱構造に形成され、
また、第2ベースゾーン21は、水平方向に互いに離れた位置で筋状型に形成され、
また、第2ベースゾーン21は、半導体基板110に接して形成され、
半導体基板110は、第2接続タイプのドーピング濃度を有して第2接続ゾーン22を形成し、
第1接続電極13が、接続抵抗を減らすための、より高いドーピング濃度の第1接続ゾーン12の上面に取り付けられて第2ベースゾーン11上に設けられ、
第2接続電極23が半導体基板110の裏面側102に取り付けられ、
また、第1接続ゾーン12と第2ベースゾーン21との間には第1ベースゾーン11が介在している放射線検出装置。」
の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。

イ 本願発明と引用発明Aとの対比・判断
(ア)対比
本願発明と引用発明Aとを対比すると、両者は、
a 一致点
「第1の導電型の第1の補償区域と前記第1の補償区域同士を互いに分離するベース部とを含む半導体部分を含む放射線変換装置であって、
前記第1の補償区域は柱構造に配置され、各柱構造は前記第1の補償区域の少なくとも2つを含み、前記半導体部分の主面に対し垂直方向に延び、
前記ベース部は隣り合う前記柱構造同士の間に第2の相補導電型の第2の補償区域を含み、
前記柱構造は縞状であり、前記主面に対して第1の横方向に延び、
前記放射線変換装置は前記主面と直接接触して配置された第1の電極構造をさらに含み、
前記半導体部分は第1の導電型の第1のコンタクト領域を含み、
前記第1のコンタクト領域は前記第1の電極構造にオーム接触を与える平均正味不純物濃度を有し、
前記第1のコンタクト領域はと前記第1の電極構造とに直接接触する、放射線変換装置。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する、
b 相違点
(a)相違点1
「第1の電極構造」が、本願発明においては「第1の横方向と交差する第2の横方向に走る複数のストリップを含む」のに対して、引用発明Aにおいては「第1接続電極13」について、その点の特定がない点。
(b)相違点2
本願発明においては、「第1のコンタクト領域」が「割り当てられた柱構造の第1の補償区域のうちの1つ」と「直接接触する」のに対して、引用発明Aにおいては、「第1接続ゾーン12(本願発明の「第1のコンタクト領域」)」と「第2ベースゾーン21(本願発明の「柱構造の第1の補償区域」)」との間には第1ベースゾーン11(本願発明の「第2の相補導電型の第2の補償区域」)が介在している点。

(イ)判断
事案に鑑み相違点2について検討する。
引用発明Aにおいては、「第2ベースゾーン21」が、第2接続タイプのドーピング濃度を有して第2接続ゾーン22を形成した「半導体基板110」に接して形成され、「半導体基板110」の裏面側102に「第2接続電極23」が取り付けられ、また、「第1接続電極13」が、接続抵抗を減らすための、より高いドーピング濃度の「第1接続ゾーン12」の上面に取り付けられてているのだから、「第1接続ゾーン12」と「第2ベースゾーン21」とを直接接触させると、「第1接続電極13」と「第2接続電極23」が、第1ベースゾーンを介在せずに短絡してしまい、放射線変換装置としての機能を損なうことは明らかである。
すなわち、引用発明Aにおいて、上記相違点2に係る本願発明の構成(「第1接続ゾーン12(本願発明の「第1のコンタクト領域」)」と「第2ベースゾーン21(本願発明の「柱構造の第1の補償区域」)」とを直接接触させる構成)を採用することには、阻害要因があるといえる。
したがって、引用発明Aにおいて、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用して、本願発明を導出することが当業者にとって容易に想到し得ることであるということはできない。

(ウ)小活
以上のとおりであり、本願発明は、引用発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、請求項2ないし10に係る発明は、本願発明の構成要件を全て含みさらに限定した発明であるから、本願発明と同様に、引用発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
すなわち、当審の拒絶理由の理由(1)によっては、本願を拒絶することはできない。

(2)理由(2)について
当審拒絶理由の通知後、本願の特許請求項の範囲は、平成29年1月27日付けの手続補正により、本願の請求項1ないし10に係る発明に補正され、当審の拒絶理由の理由(2)は解消された。

第5 結論
以上のとおりであり、原査定の拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶する理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-17 
出願番号 特願2014-88178(P2014-88178)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 濱田 聖司  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
森 竜介
発明の名称 放射線変換装置および放射変換装置の製造方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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