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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B61L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B61L
管理番号 1326208
審判番号 不服2014-24109  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-27 
確定日 2017-03-15 
事件の表示 特願2013-105696「列車または軌道データベースを増強して走行を最適化する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-189202〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007年9月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年12月8日、米国:2007年1月11日、米国)を国際出願日とする特願2009-540344号の一部を平成25年5月20日に新たな出願としたものであって、平成26年7月25日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成26年7月29日)、これに対し、平成26年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により平成28年1月26日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年2月2日)、これに対し、平成28年4月25日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.特許請求の範囲
平成28年4月25日付手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
1つ以上のプロセッサを利用して、データベースに格納された第1の軌道区画情報を利用して、軌道に沿って第1の列車の走行のための第1の走行計画を生成するステップであって、前記第1の軌道区画情報は前記走行中に沿って移動する軌道区画の1つ以上の物理的特徴を表し、前記第1の走行計画は、前記第1の列車が前記軌道に沿って移動する間に前記第1の列車による燃料消費および生成排出量の少なくとも1つを低減するために、前記第1の列車に対する1つ以上の運行基準にしたがって前記第1の列車の運行設定を指定する、ステップと、
1つ以上のプロセッサを利用して、前記第1の列車が前記第1の走行計画にしたがって前記軌道を移動している間に、前記第1の列車の実際の運行条件を監視するステップと、
1つ以上のプロセッサを利用して、前記軌道に沿った1つ以上の位置における前記第1の列車の前記実際の運行条件と、前記1つ以上の位置における前記第1の列車の1つ以上の推定された運行条件との不一致を識別するステップであって、前記1つ以上の推定された運行条件は前記第1の運行計画の生成に使用された前記第1の軌道区画情報から決定される、ステップと、
1つ以上のプロセッサを利用して、前記データベースに格納された前記第1の軌道区画情報を、識別された前記不一致に応じて更新された軌道区画情報に修正するステップであって、前記第1の軌道区画情報は、前記不一致に関する情報によって修正される、ステップと、
1つ以上のプロセッサを利用して、前記更新された軌道区画情報を利用して、前記第1の列車および前記軌道に沿って移動する追加の列車のうちのすくなくとも1つに対する1つ以上の追加の走行計画を生成するステップと、
を含み、
前記第1の列車の運行設定は、前記軌道に沿った時間または距離の少なくとも1つと、前記第1の列車に対して指定されたスロットル設定、制動設定および動力設定のうちの少なくとも1つとの関係を含み、
前記第1の列車の前記実際の運行条件は、前記第1の列車の実際の位置、速度、加速度および慣性のうちの少なくとも1つである、
方法。
【請求項2】
前記第1の走行計画および前記1つ以上の追加の走行計画が、前記第1の列車に搭載された前記1つ以上のプロセッサを利用して生成および改定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の軌道区画情報および前記更新された軌道区画情報を格納する前記データベースは、前記第1の列車以外かつ前記追加の列車以外の場所に配設されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の走行計画または前記1つ以上の追加の走行計画の前記運行設定が、前記軌道に沿った時間および距離のうちの少なくとも1つと、前記第1の列車または前記追加の列車に対する速度との関係を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1つ以上のプロセッサを利用して、経路に沿って移動する第1の列車の走行のための第1の走行計画を生成するステップであって、前記第1の走行計画は前記経路に沿った距離および時間のうちの少なくとも1つの関数として表される前記第1の列車の運行設定を指定し、前記第1の運行計画はデータベースに格納され前記データベースから取得された前記経路の1つ以上の物理的特徴を利用して生成される、ステップと、
1つ以上のプロセッサを利用して、前記経路に沿った1つ以上の位置における前記第1の列車の実際の運行条件と、対応する1つ以上の位置における前記第1の列車の推定された運行条件とを比較して、前記実際の運行条件と前記推定された運行条件との不一致を識別するステップであって、前記1つ以上の推定された運行条件は前記第1の運行計画の生成に使用された前記経路の前記1つ以上の物理的特徴から決定される、ステップと、
1つ以上のプロセッサを利用して、前記不一致に関する情報を利用して、識別された前記不一致に応じて、前記データベースに格納された前記経路の前記物理的特徴のうちの少なくとも1つに関する情報を改定するステップであって、前記経路の前記物理的特徴のうちの少なくとも1つは、前記第1の列車および前記経路に沿って移動する1つ以上の追加の列車のうちのすくなくとも1つに対する1つ以上の追加の走行計画を生成するために利用可能な、ステップと、
を含み、
前記第1の列車の運行設定は、前記経路に沿った時間または距離の少なくとも1つの関数として表された、前記第1の列車に対して指定されたスロットル設定、制動設定および動力設定のうちの少なくとも1つであり、
前記第1の列車の前記実際の運行条件は、前記第1の列車の実際の位置、速度、加速度および慣性のうちの少なくとも1つである、、
方法。
【請求項6】
前記経路の前記1つ以上の物理的特徴に関する情報を格納するデータベースが、前記第1の列車以外かつ前記追加の列車以外の場所に配設されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の運行計画の生成および識別された前記不一致に応じた改定に利用される、前記経路の前記1つ以上の物理的特徴が、前記経路の高度情報を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記不一致が、前記経路に沿ったある位置における前記第1の列車の実際の速度変化率と、前記経路に沿った前記位置における前記第1の列車の推定された速度変化率とを比較することにより、識別され、前記推定された速度変化率は前記位置における前記経路の前記勾配情報から計算される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記不一致が、前記経路に沿ったある位置における前記第1の列車の実際の慣性と、前記経路に沿った前記位置における前記第1の列車の推定された慣性とを比較することにより、識別され、前記推定された慣性は前記位置における前記経路の前記勾配情報から計算される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記実際の運行条件と前記推定された運行条件との前記不一致を、それぞれの追加の運行条件にしたがって前記経路に沿って移動する他の列車の追加の運行条件を利用して確認するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。」


3.拒絶の理由
平成28年1月26日付の当審の拒絶の理由で以下の事項を通知した。
「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、請求項1に、「第1の軌道区画情報」との訳語があるが、どの様な情報であるのか不明[軌道区画とはどの様な意味か。軌道と軌道区画の違いは何か。軌道区画情報は具体的にどの様な情報であるのか。軌道区画情報をどの様にして収集するのか(仮に勾配が該当するとすれば、勾配は鉄道会社が正確な値を有しており、一々測定するようなものではない。他の軌道に関する情報も同様である。)。軌道情報(【0136】)とあるが、違いは何か。第1の軌道区画情報があるから、第2の軌道区画情報もあるのか。]である。請求項6も同様である。

更に、請求項1において、「軌道に沿って第1の列車の走行のための第1の走行計画を生成するステップ」との訳語があるが、第1の列車とはどの様な列車でどの様にして決定するのか不明(軌道上には多くの列車が存在するが、どの様な基準に基づいてどの列車を第1の列車と選定するのか。軌道上に存在しなくても第1の列車となり得るのか。)であり、第1の走行計画とは列車に対しどの様な事項を指示する計画であるのか不明(具体的にどの様な計画か。プロセッサを利用するから、第1の走行計画と第1の軌道区画情報の間には何らかの関数(演算式)があるはずであるが、何ら開示が無い。)であり、第1の走行計画はどの時点で決定するのか不明[第1の軌道区画情報はどの時点で第1の列車は取得するのか。「図12に、軌道区画に沿った走行の実行中に列車を操作する例示的ステップのフローチャートを示す。」(【0148】)とあるから、走行計画は列車運行中に策定されることとなるが、何故出発前に策定しないのか。]であり、通信手段を有していないが、生成した第1の走行計画を何故第1の列車を含めた軌道上の列車に送信しないのか不明である。請求項6も同様である。

更に、請求項1において、「前記第1の軌道区画情報は前記走行中に沿って移動する前記軌道の1つ以上の物理的特徴を表し、前記第1の走行計画は、前記第1の列車が前記軌道に沿って移動する間に前記第1の列車による燃料消費および生成排出量の少なくとも1つを低減するために、前記第1の列車に対する1つ以上の運行基準にしたがって前記第1の列車の運行設定を指定する、ステップ」との訳語があるが、「軌道の1つ以上の物理的特徴」とはどの様な特徴であるのか何等記載が無く不明(軌道の物理的特徴とは、レール・枕木に関することのみの意味か。例えば、住宅地域を通過する軌道について、当該住宅地通過中は騒音問題から低速走行を要求される場合、低速走行は物理的特徴か否か。低速走行が含まれるとすると、レール・枕木に関すること以外も含まれるから、車窓から海が見える等も物理的特徴となるが、景観が走行計画に何故必要となるのか。)であり、1つ以上とあるから複数も含まれるが、この場合、複数の物理的特徴を第1の走行計画を求めるためにどの様に用いるのか不明(複数の物理的特徴に、優先順位を付けたり、重み付けをしなければ、演算できないが、何ら開示が無い。)であり、又、「前記第1の列車が前記軌道に沿って移動する間に前記第1の列車による燃料消費および生成排出量の少なくとも1つを低減する」は、低減はどの様な値に対する低減であるのか不明であり、軌道に沿って移動する間のどの時点での低減を目指すものか何ら開示が無く不明(第1の列車の運行区間全ての間の燃料消費および生成排出量のトータルを低減するのか、運行区間全ての間常に燃料消費および生成排出量を低減するのか、運行区間の一瞬でも良いから燃料消費および生成排出量を低減するのか、それ以外か。)であり、少なくとも1つとあるから、両方でも良いこととなるが、両方を具体的にどの様に低減するのか不明であり、又、「第1の列車に対する1つ以上の運行基準」とあるが、運行基準とは運行に関しどの様なことを決めた基準であるのか不明であり、1つ以上とあるから複数も含まれるが、この場合、複数の運行基準を第1の走行計画を求めるためにどの様に用いるのか不明(複数の運行基準に、優先順位を付けたり、重み付けをしなければ、演算できないが、何ら開示が無い。)であり、第1の列車に対するとあるから、第1の列車以外の列車に対する運行基準があるものと考えるが、第1の列車に対する運行基準とどの様な点が異なるのか不明であり、又、「運行設定」とあるが、どの様な定義であるのか不明(具体的にどの様な設定か。走行計画と何が異なるのか。)である。

更に、請求項1において、「運行条件」との訳語があるが、どの様な定義であるのか不明(具体的に何を監視しているのか。運行設定との差異は何か。)であり、「実際の運行条件を監視」との訳語があるが、運行条件をどの様にして検出するのか何ら開示が無く不明である。請求項6も同様である。

更に、請求項1において、「前記軌道に沿った1つ以上の位置における前記第1の列車の前記実際の運行条件と、前記1つ以上の位置における前記第1の列車の1つ以上の推定された運行条件との不一致を識別するステップであって、前記1つ以上の推定された運行条件は前記第1の運行計画の生成に使用された前記第1の軌道区画情報から決定される、ステップ」との訳語があるが、推定された運行条件とはどの様な運行条件であって、どの様に推定するのか全く不明であり、推定された運行条件は第1の軌道区画情報からどの様に決定するのか不明(プロセッサを利用するから、推定された運行条件と第1の軌道区画情報の間には何らかの関数(演算式)があるはずであるが、何ら開示が無い。)であり、不一致は運行条件が色々あるうちの1つでも一致しなければ不一致とするのか否か不明であり、不一致と判断するのは、1つの位置における第1の列車の実際の運行条件と推定された運行条件が不一致の場合か、複数の位置における不一致を判断した後に不一致を識別するのか、それ以外か不明である。請求項6も同様である。

更に、請求項1において、「前記データベースに格納された前記第1の軌道区画情報を、識別された前記不一致に応じて更新された軌道区画情報に修正するステップであって、前記第1の軌道区画情報は、前記不一致に関する情報によって修正される、ステップ」との訳語があるが、「識別された前記不一致に応じて更新された軌道区画情報」、「前記不一致に関する情報によって修正」は、単に「応じて」、「よって」では、どの様に更新・修正を行うのか全く不明(プロセッサを利用するから、第1の軌道区画情報と不一致に関する情報の間には何らかの関数(演算式)があるはずであるが、何ら開示が無い。) であり、第1の軌道区画情報は単にデータベースに格納されているだけであるから、複数の列車が当該データベースを利用する場合もあり、複数の列車が更新しようとする軌道区画情報が1つの事象に対しそれぞれ異なった場合、どの情報を採用するのか不明である。請求項6も同様である。

更に、請求項1において、「前記更新された軌道区画情報を利用して、前記第1の列車および前記軌道に沿って移動する追加の列車のうちのすくなくとも1つに対する1つ以上の追加の走行計画を生成するステップ」との訳語があるが、軌道に沿って移動する追加の列車とはどの様な列車であるのか定義が不明(軌道上にあれば移動場所に無関係に全て含まれるのか。この場合の軌道の範囲は何処までか。)であり、第1の列車の不一致の情報に基づいて、第1の列車以外の列車の走行計画を何故決定できるのか不明(追加の列車も第1の列車となり得、且つ生成するのはあくまで追加の走行計画であるので、追加の列車も独自に走行計画を策定しているが、どちらが作成した走行計画を採用するのか。追加の列車による更新された軌道区画情報を利用して第1の列車の走行計画に追加の走行計画がされないのか。されないとすれば何故か。されるとすればどちらの走行計画を採用するのか。)であり、追加の走行計画を策定しても既に第1の走行計画があり、どちらを優先するのか不明(追加とは、後から増し加えることである。)であり、第1の列車は不一致の原因となる運行条件を監視した場所を既に通過しているにもかかわらず、何故追加の走行計画が必要なのか不明であり、追加の走行計画は生成するだけで何処にも送信していないが何故利用しないのか不明である。請求項6も同様である。

更に、請求項1において、「前記第1の列車の運行設定は、前記軌道に沿った時間または距離の少なくとも1つの関数として表された、前記第1の列車に対して指定されたスロットル設定、制動設定および動力設定のうちの少なくとも1つであり」との訳語があるが、単に関数とあるだけでどの様な演算を行うのか全く不明であり、少なくとも1つとあるから複数も含まれるが、この場合、どの様な関数となるのか全く不明である。請求項6も同様である。

更に、請求項1において、「前記第1の列車の前記実際の運行条件は、前記第1の列車の実際のスロットル設定、制動設定および動力設定のうちの少なくとも1つである」との訳語があるが、列車が軌道上を走行する場合、実際の運行条件(スロットル設定、制動設定および動力設定)が、ある特定の場所(1つの場所)で常に同じということはあり得ず、列車がある特定の場所(1つの場所)を通過する度に第1の軌道区画情報を修正することとなるが、何故この様なことを行うのか不明(なお、運行条件の正誤は判断していない。)である。請求項6も同様である。

更に、請求項2において、「前記第1の走行計画および前記1つ以上の追加の走行計画が、前記第1の列車に搭載された前記1つ以上のプロセッサを利用して生成および改定される」との訳語があるが、追加の列車の追加ではない走行計画は何処でどの様に作成するのか不明である。

更に、請求項3において、「前記第1の軌道区画情報および前記更新された軌道区画情報を格納する前記データベースは、前記第1の列車および前記追加の列車の車外に配設されている」との訳語があるが、「および」とあるから、第1の列車と追加の列車が共にデータベースを有していることを意味するのか否か不明(何れか一方を意味するとすれば、送信手段が無いにもかかわらず、どの様にしてデータベースのデータを利用するのか。)であり、車外とは例えば列車の屋根の上等の意味か否か不明である。

更に、請求項4において、「前記第1の走行計画または前記1つ以上の追加の走行計画の前記運行設定が、前記軌道に沿った時間および距離のうちの少なくとも1つの関数として表された、前記第1の列車または前記追加の列車に対する速度を含む」との訳語があるが、単に関数とあるだけでどの様な演算を行うのか全く不明であり、少なくとも1つとあるから複数も含まれるが、この場合、どの様な関数となるのか全く不明である。

更に、請求項6において、「前記第1の走行計画は前記経路に沿った距離および時間のうちの少なくとも1つの関数として表される前記第1の列車の運行設定を指定し、前記第1の運行計画はデータベースに格納され前記データベースから取得された前記経路の1つ以上の物理的特徴を利用して生成される、ステップ」との訳語があるが、「経路の1つ以上の物理的特徴」とはどの様な特徴であるのか何等記載が無く不明(経路の物理的特徴とは、レール・枕木に関することのみの意味か。例えば、住宅地域を通過する軌道について、当該住宅地通過中は騒音問題から低速走行を要求される場合、低速走行は物理的特徴か否か。低速走行が含まれるとすると、レール・枕木に関すること以外も含まれるから、車窓から海が見える等も物理的特徴となるが、走行計画に何故必要となるのか。)であり、1つ以上とあるから複数も含まれるが、この場合、複数の物理的特徴を第1の走行計画を求めるためにどの様に用いるのか不明(複数の物理的特徴に、優先順位を付けたり、重み付けをしなければ、演算できないが、何ら開示が無い。)であり、また、運行基準を用いていないが何故不要であるのか不明であり、又、「運行設定」とあるが、どの様な定義であるのか不明(具体的にどの様な設定か。走行計画と何が異なるのか。)である。

更に、請求項6には、「軌道」と「経路」が記載されているが、両者はどの様な定義で何が異なるのか不明である。

更に、請求項6において、「前記データベースに格納された前記経路の前記物理的特徴のうちの少なくとも1つを改定するステップ」との訳語があるが、物理的特徴が何故改定できるのか不明(請求項7を参照すると、物理的特徴は固定のものであって改定できるとは考えられない。)である。

更に、請求項7において、「前記経路の前記1つ以上の物理的特徴が、前記第1の列車および前記追加の列車の車外に配設されている」との訳語があるが、物理的特徴が何故車外に配設できるのか不明であり、車外とは例えば列車の屋根の上等の意味か否か不明である。

更に、請求項10、11において、不一致を速度変化率・慣性から判断しているが、列車が経路上を走行する場合、速度変化率、慣性が、ある特定の位置(ある位置)で常に同じということはあり得ず、列車がある特定の位置(ある位置)を通過する度に物理的特徴を修正することとなるが、何故この様なことを行うのか不明である。

更に、請求項12は、日本語として意味が不明のため、どの様なステップであるのか不明である。」


4.拒絶の理由に対する当審の判断
(1)請求項1に、「第1の軌道区画情報」とあるが、どの様な情報であるのか定義が不明である。例えば、軌道区画情報は走行計画を作成するために用いるものであり、そのための軌道区画がどの様なものか定義が不明[軌道区画は全ての列車に共通して用いることができる普遍的なものであるのか否か不明。仮に、第1の列車のためだけの区画であるとしても、どの様な理論に基づいて分割するのか(第1の列車の走行区間を半分に分割しても軌道区間であるが、10m毎としても駆動区間である。走行区間を半分に分割した場合、細かく分割した場合、走行計画をどの様に作成するのか何ら開示が無い。)不明。]であり、軌道区画情報とは具体的にどの様な情報であって、軌道区画情報である場合とない場合の境界が何ら示されていないため不明であり、軌道区画情報をどの様にして収集するのか何ら開示が無く不明であり、【0136】には「軌道情報」とあるが、軌道区画情報との違いは何か不明であり、第1の軌道区画情報があるから、第2、第3の軌道区画があるのか否か不明であり、仮にある場合はどの様な差異があるのか不明である。請求項5も同様である。

(2)請求項1に、「軌道に沿って第1の列車の走行のための第1の走行計画を生成するステップ」とあるが、軌道上には多くの列車が存在し、どの様な基準に基づいてどの列車を第1の列車と決定するのか不明であり、第1の列車は軌道上に存在しなくても第1の列車となり得るのか否か不明であり、又、第1の走行計画とは列車に対し具体的にどの様な事項を指示する計画であるのか不明であり、プロセッサを利用するから、第1の走行計画と第1の軌道区画情報の間には何らかの関数(演算式)があるはずであるが、何ら開示が無く不明であり、又、第1の軌道区画情報はどの時点で第1の列車は取得するのか不明であり、したがって第1の軌道区画情報に基づく第1の走行計画はどの時点で決定するのか不明であり、「図12に、軌道区画に沿った走行の実行中に列車を操作する例示的ステップのフローチャートを示す。」(【0148】)とあるから、第1の走行計画は列車運行中に策定されることとなるが、出発時から計画策定時までは無計画で走行することとなり、何故出発前に策定しないのか不明であり、又、走行計画は単に生成しているだけであり、しかも通信手段を有していないが、生成した第1の走行計画を参照しなければ列車の運行に障害が発生するものと考えられ、何故第1の列車を含めた軌道上の列車に第1の走行計画を送信しないのか不明である。請求項5も同様である。

(3)請求項1に、「前記第1の軌道区画情報は前記走行中に沿って移動する軌道区画の1つ以上の物理的特徴を表し、前記第1の走行計画は、前記第1の列車が前記軌道に沿って移動する間に前記第1の列車による燃料消費および生成排出量の少なくとも1つを低減するために、前記第1の列車に対する1つ以上の運行基準にしたがって前記第1の列車の運行設定を指定する、ステップ」とあるが、「物理的特徴」とはどの様な特徴であるのか何等記載が無く不明であるから、「軌道区画の1つ以上の物理的特徴」とはどの様なものか不明(「軌道」とは、線路構造物の総称であるから、軌道区画の物理的特徴とは、レール・枕木に関することのみを意味するのか不明。例えば、住宅地域を通過する軌道区画について、当該住宅地通過中は騒音問題から低速走行を要求される場合、低速走行は人為的取り決めであるが物理的特徴か否か不明。仮に、低速走行が含まれるとすると、レール・枕木に関すること以外も含まれるから、車窓から海が見える等も物理的特徴となるが、景観が燃料消費低減のための走行計画に何故必要となるのか不明であり、軌道区画の物理的特徴が何を何処まで含むのか特定できず不明。)であり、1つ以上とあるから複数も含まれるが、この場合、複数の物理的特徴を第1の走行計画を求めるためにどの様に用いるのか不明(複数の物理的特徴に、優先順位を付けたり、重み付けをしなければ、プロセッサが演算できないが、何ら開示が無い。)であり、又、「前記第1の列車が前記軌道に沿って移動する間に前記第1の列車による燃料消費および生成排出量の少なくとも1つを低減する」とあるが、低減とは相対的な記載であるから、どの様な値に対するどの程度の低減であるのか不明であり、軌道に沿って移動する間のどの時点での低減を目指すものか何ら開示が無く不明(第1の列車の運行区間全ての間の燃料消費および生成排出量のトータルを低減するのか、運行区間全ての間常に燃料消費および生成排出量を低減するのか、運行区間の一瞬でも良いから燃料消費および生成排出量を低減するのか、それ以外か特定できず不明。)であり、少なくとも1つとあるから、両方でも良いこととなるが、両方を具体的にどの様に低減するのか不明であり、又、「第1の列車に対する1つ以上の運行基準」とあるが、運行基準とは運行に関しどの様なことを決めた基準であるのか不明であり、1つ以上とあるから複数でも良いこととなるが、この場合、複数の運行基準を第1の走行計画を求めるためにどの様に用いるのか不明(複数の運行基準に、優先順位を付けたり、重み付けをしなければ、プロセッサが演算できないが、何ら開示が無い。)であり、第1の列車に対するとあるから、第1の列車以外の列車に対する運行基準があるものと考えるが、第1の列車に対する運行基準とどの様な点が異なるのか不明であり、又、「前記第1の列車の運行設定を指定」とあるが、運行設定とはどの様な定義であるのか不明であり、走行計画と何が異なるのか何ら開示が無く不明である。請求項5も同様である。

(4)請求項1に、「運行条件」とあり、「第1の列車の実際の位置、速度、加速度および慣性のうちの少なくとも1つである」とあるが、運行設定と何がどの様に異なるのか何ら開示が無く不明であり、「実際の運行条件を監視」とあるが、例えば慣性を逐次どの様にして検出するのか何ら開示が無く不明である。請求項5も同様である。

(5)請求項1に、「前記軌道に沿った1つ以上の位置における前記第1の列車の前記実際の運行条件と、前記1つ以上の位置における前記第1の列車の1つ以上の推定された運行条件との不一致を識別するステップであって、前記1つ以上の推定された運行条件は前記第1の運行計画の生成に使用された前記第1の軌道区画情報から決定される、ステップ」とあるが、推定された運行条件とはどの様な運行条件であって、どの様に推定するのか全く不明であり、推定された運行条件は第1の軌道区画情報からどの様に決定するのか不明(プロセッサを利用するから、推定された運行条件と第1の軌道区画情報の間には何らかの関数(演算式)があるはずであるが、何ら開示が無く不明。)であり、又、運行条件が実際の位置、速度、加速度および慣性であるとして、例えば位置が10cmずれても位置の不一致であるが、これを不一致と識別するのか否か不明であり、仮に不一致と識別しないのであれば、どの程度ずれると不一致と識別するのか何ら開示が無く不明であり、又、運行条件が複数の場合、当該運行条件のうちの1つでも一致しなければ不一致と識別するのか否か不明であり、不一致と識別するのは、1つの位置における第1の列車の実際の運行条件と推定された運行条件が不一致の場合か、複数の位置において不一致を判断した後に不一致を識別するのか、それ以外か不明であり、仮に複数の位置において不一致を識別する場合、1つの位置で条件A一致、条件B不一致、別の位置で条件A不一致、条件B一致、更に別の場所で条件A一致、条件B不一致の場合、一致、不一致をどの様に識別するのか不明であり、しかも識別の対象となる複数の位置をどの様に決定するのか不明である。請求項5も同様である。

(6)請求項1に、「前記データベースに格納された前記第1の軌道区画情報を、識別された前記不一致に応じて更新された軌道区画情報に修正するステップであって、前記第1の軌道区画情報は、前記不一致に関する情報によって修正される、ステップ」とあるが、「識別された前記不一致に応じて更新された軌道区画情報に修正」、「前記不一致に関する情報によって修正」は、単に「応じて」、「よって」としか記載がなく、どの様に更新・修正を行うのか全く不明(プロセッサを利用するから、第1の軌道区画情報と不一致に関する情報の間には何らかの関数(演算式)があるはずであるが、何ら開示が無い。) であり、不一致と識別されるのは第1の列車の運行条件であり、当該不一致に基づいて更新されるのは、軌道区画の物理的特徴を表す第1の軌道区画情報となるが、運行条件が不一致であるからといって軌道区画の物理的特徴が変化するものではなく、何故この様な更新を行うのか不明であり、又、第1の軌道区画情報は単にデータベースに格納されているだけであるから、複数の列車が当該データベースを利用する場合もあり、複数の列車が更新しようとする第1の軌道区画情報が1つの事象に対しそれぞれ異なった場合、どの情報を採用するのか不明である。請求項5も同様である。

(7)請求項1に、「前記更新された軌道区画情報を利用して、前記第1の列車および前記軌道に沿って移動する追加の列車のうちのすくなくとも1つに対する1つ以上の追加の走行計画を生成するステップ」とあるが、軌道に沿って移動する追加の列車とはどの様な列車であるのか定義が不明(軌道上にあれば移動場所に無関係に全ての列車が含まれるのか否か不明。この場合の軌道の範囲は何処までか不明。)であり、第1の列車の不一致の情報に基づいて、第1の列車以外の列車の走行計画を何故決定できるのか不明(追加の列車も走行計画は必要であって第1の列車となり得、且つ生成するのはあくまで追加の走行計画であるので、追加の列車も独自に走行計画を策定しているが、第1の列車と追加の列車のどちらが作成した走行計画を採用するのか不明。追加の列車による更新された軌道区画情報を利用して第1の列車の走行計画に追加の走行計画がされないのか否か不明。追加されないとすれば何故か理由が不明。追加されるとすればどちらの走行計画を採用するのか不明。)であり、追加とは、後から増し加えることであるから、追加の走行計画を策定しても既に第1の走行計画があり、どちらの走行計画を優先するのか不明であり、第1の列車は不一致の原因となる運行条件を監視した場所を既に通過しているにもかかわらず、何故追加の走行計画が必要なのか不明(第1の軌道区画情報を更新するだけで足りるのではないか)であり、追加の走行計画は生成するだけで何処にも送信していないが何故他で利用しないのか不明である。請求項5も同様である。

(8)請求項1に、「前記第1の列車の運行設定は、前記軌道に沿った時間または距離の少なくとも1つと、前記第1の列車に対して指定されたスロットル設定、制動設定および動力設定のうちの少なくとも1つとの関係を含み」とあるが、単に関係とあるだけでどの様に関係するのか何ら開示が無く不明(プロセッサを利用するから、関係には何らかの関数(演算式)があるはずであるが、何ら開示が無く不明。)であり、少なくとも1つとあるから複数も含まれるが、この場合、どの様な関係(関数)となるのか何ら開示が無く不明であり、1つだけの場合(例えば、時間と制動設定のみ。)、何故運行設定ができるのか不明であり、含みとあるから、他の要素も第1の列車の運行設定に含まれることとなるが、具体的にどの様な要素が含まれるのか不明である。請求項5も同様である。

(9)請求項1に、「前記第1の列車の前記実際の運行条件は、前記第1の列車の実際の位置、速度、加速度および慣性のうちの少なくとも1つである」とあるが、列車が軌道上を走行する場合、特定の1つの位置において、速度、加速度が常に同じということはあり得ず、列車が1つの位置を通過する度に運行条件の不一致に基づいて第1の軌道区画情報を修正することとなるが、何故この様なことを行うのか不明である。請求項5も同様である。

(10)請求項2に、「前記第1の走行計画および前記1つ以上の追加の走行計画が、前記第1の列車に搭載された前記1つ以上のプロセッサを利用して生成および改定される」とあるが、引用する請求項1に記載された追加の列車の追加ではない走行計画は何処でどの様に作成するのか何ら開示が無く不明である。

(11)請求項3に、「前記第1の軌道区画情報および前記更新された軌道区画情報を格納する前記データベースは、前記第1の列車以外かつ前記追加の列車以外の場所に配設されている」とあるが、第1の列車以外かつ追加の列車以外の場所にあるにもかかわらず、何ら通信手段を有しておらず、どの様にしてデータベースを利用するのか不明である。

(12)請求項4において、「前記第1の走行計画または前記1つ以上の追加の走行計画の前記運行設定が、前記軌道に沿った時間および距離のうちの少なくとも1つと、前記第1の列車または前記追加の列車に対する速度との関係を含む」とあるが、単に関係とあるだけでどの様に関係するのか何ら開示が無く不明(プロセッサを利用するから、関係には何らかの関数(演算式)があるはずであるが、何ら開示が無く不明。)であり、第1の走行計画の運行設定に追加の列車に対する速度を用いるものが含まれるが、何故第1の列車に対する速度を用いないのか不明であり、少なくとも1つとあるから複数も含まれるが、この場合、どの様な関数となるのか全く不明である。

(13)請求項8、9において、不一致を速度変化率・慣性から判断しているが、列車が経路上を走行する場合、速度変化率、慣性が、ある特定の位置(ある位置)で常に同じということはあり得ず、列車がある特定の位置(ある位置)を通過する度に物理的特徴を修正することとなるが、何故この様なことを行うのか不明である。

(14)請求項10に、「前記実際の運行条件と前記推定された運行条件との前記不一致を、それぞれの追加の運行条件にしたがって前記経路に沿って移動する他の列車の追加の運行条件を利用して確認するステップ」とあるが、どの様にすれば不一致を他の列車の追加の運行条件を利用して確認することができるのか何ら開示が無く不明である。

(15)したがって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1-10に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、又、請求項1-10の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、請求項1-10の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


5.むすび
したがって、請求項1-10の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-04 
結審通知日 2016-10-11 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2013-105696(P2013-105696)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (B61L)
P 1 8・ 537- WZ (B61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 列車または軌道データベースを増強して走行を最適化する方法  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  

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