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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1326231
審判番号 不服2015-19611  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-30 
確定日 2017-03-15 
事件の表示 特願2013-513240号「複数種類の不溶性材料物体を含む飲料または食料生成物調製用組成物」拒絶査定不服審判事件〔2011年(平成23年)12月 8日国際公開,WO2011/153064,平成25年 9月 5日国内公表,特表2013-534414号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2011年(平成23年)5月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年6月1日(GB)グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)を国際出願日とする出願であって,平成27年6月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年10月30日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。



第2 平成27年10月30日にされた手続補正の却下の決定

1 結論

平成27年10月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。


2 理由

(1) 補正の概要

本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1である

「液体を加えることによって飲料または食料生成物を調製するための組成物を収容したパッケージであって、前記飲料または食料生成物がその中で調製されるチャンバであって、該チャンバに液体を加えるための入口と、該調製された生成物を吐出するための出口を有するチャンバを備えるパッケージにおいて、前記組成物は1種類または複数種類の飲料または食料原料と、前記液体と前記組成物の間の相互作用に所定の影響を与える少なくとも1種類の調製助剤を含み、前記調製助剤は、実質的に不溶性且つ不浸透性の材料から形成される複数の物体を含み、前記物体の直径は0.1mm?200mmの範囲であることを特徴とするパッケージ。」を,

「液体を加えることによって飲料または食料生成物を調製するための組成物を収容したパッケージであって、前記飲料または食料生成物がその中で調製されるチャンバであって、該チャンバに液体を加えるための入口と、該調製された生成物を吐出するための出口を有するチャンバを備えるパッケージにおいて、前記組成物は1種類または複数種類の飲料または食料原料と、前記液体と前記組成物の間の相互作用に、前記液体中の前記原料の撹拌を促進することである所定の影響を与える少なくとも1種類の調製助剤を含み、前記調製助剤は、実質的に不溶性且つ不浸透性の材料から形成される複数の物体を含み、前記物体の直径は0.1mm?200mmの範囲であることを特徴とするパッケージ。」と補正することを含むものである。


(2) 補正の目的

上記補正は,本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である,「調製助剤」が「前記液体と前記組成物の間の相互作用に」与える「所定の影響」について,「前記液体中の前記原料の撹拌を促進することである」と限定する補正であって,本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。


(3)引用例

原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に頒布された刊行物である特表2007-535332号公報(以下「引用例」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

ア 「【背景技術】
【0002】
空気に対して不透過性である個々のパッケージ内に飲料調製原料をシールすることが、これまで提案されてきた。例えば、挽いたコーヒーを圧縮して収納するカートリッジやカプセルは、一般に「エスプレッソ」機械と呼ばれる特定のコーヒー調製機械で使用するものとして知られている。こうした調製機械を用いたコーヒーの製造では、コーヒーカートリッジが煎出チャンバ内に配置され、湯がこのカートリッジを比較的高い圧力で通過することにより、挽かれたコーヒーから薫り高いコーヒー成分が抽出されて、コーヒー飲料を生成する。通常、こうした機械は、6×10^(5)Paを超える圧力で動作する。このタイプの調製機械は、これに含まれる水ポンプおよびシールなどのコンポーネントが高圧に耐えられるものでなければならないため、今まで比較的高価であった。」

イ 「【0023】
また、本発明は、1種類または複数種類の飲料原料を収納し、実質的に空気および水分に対して不透過性である材料で形成されたカートリッジであって、該カートリッジが水媒体をそのカートリッジ内に導入するための入口
と、前記1種類または複数種類の飲料原料から生成された飲料を吐出するための出口とを具え、前記カートリッジが外側部材と、該外側部材に挿入される内側部分と、前記飲料の噴流を生成するための手段とを具え、該噴流生成手段が前記入口を前記出口に接続させるための飲料流路にアパーチャを有しており、前記アパーチャが前記内側部材および前記外側部材間の界面によって画成されていることを特徴とするカートリッジを提供する。」

ウ 「【0041】
カートリッジの特別な応用例として、粘稠液すなわちゲルの形態の液体原料に用いられることがわかる。一応用例では、液状のチョコレート原料がカートリッジ1に収納され、これは、周囲温度にて粘性が1700?3900mPa、0℃にて5000?10000mPaであり、屈折性の固形分
(refractive solids)が67ブリックス度±3である。別の応用例では、カートリッジ1内には液体コーヒーが収納され、これは、周囲温度にて粘性が70?2000mPa、0℃にて80?5000mPaであり、全固形分量が40?70%である。
【0042】
粘稠液すなわちゲルのような可溶性飲料原料を用いる場合、原料が水媒体と完全に混合しないことが特に問題となる。特に、そのような製品を収納するカートリッジにおいては、原料の局所的な溶解に起因して、カートリッジの入口と出口とを結ぶチャネルが速やかに生成されてしまうことがある。そしてチャネルは残りの水媒体に対して比較的低抵抗の流路を形成し、区画内にある残りの未溶解の粘性の高い原料を通るのではなく、チャネルに沿って流れやすくしてしまう。本発明のカートリッジは主としてこの問題を解決するものであり、水媒体を区画内で強制的に再循環させることによって、原料の大部分を溶解させるだけでなく、区画内に乱流を生成して残りの原料の混合を促進するよう作用させるとともに、入口アパーチャと出口アパーチャとを結ぶ低抵抗の流路の生成および維持を阻止するものである。」

エ 「【0068】
本発明のカートリッジには、飲料製品の精製に好適な1種または複数種の飲料原料が収納される。飲料としては、例えばコーヒー、ティー、チョコレートまたはミルクを含む乳を原料とする飲料が挙げられる。飲料原料としては、粉末状のもの、挽いたもの、リーフベースのもの、または液体のものとすることができる。飲料原料は不溶性のものでも、可溶性のものでもよい。焙煎し、挽いたコーヒー、リーフティ、粉末チョコレートおよびスープ、液体ミルクベースの飲料および濃縮果汁が例として挙げられる。」

オ 「【0081】
図11に示すように、本発明のカートリッジ1は主に、外側部材2と、内側部材3と、ラミネート5とを含む。外側部材2と、内側部材3と、ラミネート5とを組み合わせると、1種類または複数種類の飲料原料を収納するための内部120と、入口121と、出口122と、入口121から出口122までをつないで内部120を貫通する飲料流路とを有するカートリッジ1が形成される。入口121と出口122とは、当初はラミネート5でシールされているが、使用時に、そのラミネート5を穿孔または切断することにより開口される。飲料流路は、以下で説明するように、外側部材2と、内側部材3と、ラミネート5との間の空間的相互関係により画定される。この他にも、以下でさらに説明するように、フィルタ4などのコンポーネントを任意にカートリッジ1に含めることができる。
【0082】
次に予備知識として説明する第1の型式のカートリッジ1を、図1から図11に示す。第1の型式のカートリッジ1は、焙煎して挽いたコーヒーやリーフティなどの濾過生成物の供給に使用するように特に設計されたものである。しかし、この型式のカートリッジ1および、以下で説明する他の型式
を、ココア、コーヒー、茶、甘味料類、強壮剤類、調味料類、アルコール飲料類、調味乳、果汁類、スカッシュ類、ソース類、およびデザート類などの他の生成物に使用することも可能である。
【0083】
図5からわかるように、カートリッジ1の全体形状は、その直径が高さより大幅に大きい略円形またはディスク形状である。長軸Xは、図1に示すように、外側部材の中心を通っている。通常、外側部材2の直径全体は74.5mm±6mmであり、高さ全体は16mm±3mmである。通常、このカートリッジ1の容積は30.2ml±20%である。
【0084】
外側部材2は主に、湾曲した環状壁13を有するボール形状のシェル10と、閉じた頂部11と、開いた底部12とを含む。閉じた頂部11から開いた底部12にかけて環状壁13が広がっているため、外側部材2の直径は、その頂部11にて、底部12の直径に比較して小さくなっている。環状壁13と閉じた底部11とが共に、内部34を有する容器を画成している。
【0085】
中空で内側向きの円柱状延出部18が、長軸Xを中心として閉じた頂部11に設けられている。図2でさらによくわかるように、円柱状延出部18
は、第1、第2および第3の部分19、20および21を有する階段状プロファイルを含む。第1の部分19は、直円柱状である。第2の部分20は、裁頭円錐形状であり、内側に先細りになっている。第3の部分21は、もう1つの直円柱であり、下方面31により閉じられている。第1、第2および第3の部分19、20および21の直径は、円柱状延出部18の頂部11から閉じた下方面31にかけて、円柱状延出部18の直径が狭まるように、段階的に小さくなっている。略水平な肩32が、第2の部分20と第3の部分21との間の結合部分にて円柱状延出部18に形成されている。
【0086】
外向きに延出する肩33が、底部12に向けて外側部材2に形成されている。この外向きに延出する肩33が、環状壁13と同軸である副次的壁15を形成し、これにより、副次的壁15と環状壁13との間にマニホールド16を形成する環状トラックを画成するようになっている。マニホールド16は、外側部材2の周囲をめぐって通っている。一連のスロット17が、環状壁13にマニホールド16と同じ高さで設けられており、これにより、マニホールド16と外側部材2の内部34との間が気体および液体連通した状態となる。図3に示すように、スロット17は、環状壁13に形成された垂直スリットを含む。20から40本のスリットを設ける。図示した実施形態では、37本のスロット17が、ほぼ等間隔でマニホールド16の周囲に設けられている。スロット17を、好ましくは、1.4から1.8mmの長さとする。通常、各スロットの長さは、外側部材2の高さ全体の10%である
1.6mmである。各スロットの幅は、0.25から0.35mmである。通常、各スロットの幅は0.3mmである。スロット17の幅を十分に狭くして、保管時、使用時のいずれかに飲料原料がマニホールド16内に通過してしまわないようにする。
【0087】
入口チャンバ26を、外側部材2の周囲にて外側部材2内に形成する。図5で最もよくわかるように、円柱状壁部27が設けられており、これが外側部材2の内部34に入口チャンバ26を画成し、同時に入口チャンバ26を外側部材2の内部34から仕切っている。この円柱状壁部27は、長軸Xに垂直な1平面上に形成された閉じた上方面28と、外側部材2の底部12と同平面上にある開いた下方端部29とを有する。入口チャンバ26は、図1に示すように、2本のスロット30を介してマニホールド16と連通する。別法として、1から4本のスロットを用いて、マニホールド16と入口チャンバ26との間を連通させてもよい。」

カ 「【0102】
図11で最もよくわかるように、外側部材2および内側部材3を互いに接合すると、環状フランジ41の下方かつ円柱状漏斗40の外側に、内部120内の孔空間130ができ、これが濾過チャンバとなる。この濾過チャンバ130と環状フレーム41上方の通路57とを、濾紙4が隔てる。
【0103】
濾過チャンバ130には1種類または複数種類の飲料原料200が収納される。1種類または複数種類の飲料原料は、濾過チャンバ130内に包装される。濾過式飲料の場合、この原料は通常、焙煎して挽いたコーヒーまたはリーフティである。濾過チャンバ130内の飲料原料の包装密度は、所望に応じて変更可能である。通常、濾過式コーヒー生成物の場合、この濾過チャンバは、通常5から14mm厚さの濾過床に5.0から10.2グラムの焙煎して挽いたコーヒーを収納する。付加的に、内部120に球体などの1種類または複数種類の物体を入れて、その中で自由に移動できるようになし、飲料を注ぐ時点で乱流を起こし、その飲料原料の沈殿物を砕いて混合しやすくするようにしてもよい。
【0104】
次に、外方に延在するフランジ35の下面にラミネート5を接合するためにラミネート5の周囲に溶接部126を形成することにより、ラミネート5を外側部材2に取付ける。溶接部126を、ラミネート5を入口チャンバ26の円柱状壁部27の下方縁部に対してシールするように延在させる。さらに、この溶接部125を、ラミネート5と円柱状漏斗40の外側チューブ42の下方縁部との間に形成し、内側部材3が外側部材2とラミネート5との間に架かるようにする。このラミネート5が、濾過チャンバ130の下方壁となり、かつ入口チャンバ26および円柱状漏斗40をシールする。ただ
し、ラミネート5と注ぎ口43の下方縁部との間には、供給前に小さな隙間123ができるようになっている。ラミネート5の材料特性に応じて、熱および超音波溶接など、様々な溶接方法が使用可能である。
【0105】
有利なことに、外側部材2とラミネート5との間に内側部材3がある。この内側部材3を、ポリプロピレンなどの比較的硬い材料で形成する。これにより、内側部材3は、カートリッジ1が圧縮されてもラミネート5と外側部材2との間のスペースを保つように作用する荷重受け部材(load-bearing member)となる。使用時、カートリッジ1の受ける圧縮荷重を130?280Nとすると好ましい。圧縮荷重はカートリッジが挿入される飲料調製機械に作用する。しかしカートリッジおよび機械の配置によっては、力の下限は50Nを超えるものとされ得る。圧縮力は、カートリッジが内部加圧下で破損することを防ぐ作用をすると同時に、内側部材3および外側部材2を互いに寄せる役割を果たす。これにより、確実に、カートリッジ1内の通路およびアパーチャの内側寸法は固定され、カートリッジ1が加圧されても変化しなくなる。
【0106】
このカートリッジ1を使用するには、まず、これを飲料調製機内に挿入
し、入口121および出口122を飲料調製機の穿孔部材により開放する。穿孔部材はラミネート5を穿孔して折り返す。加圧された水媒体(通常は
水)を、0.1から2.0バールの圧力でカートリッジ1に入れて、入口121から入口チャンバ26内へ通す。ここから、水はスロット30を通過してマニホールド16を回り、複数のスロット17を介してカートリッジ1の濾過チャンバ130内に入る。この水は、濾過チャンバ130を介して径方向内側に押し入れられ、そこに収納されている飲料原料200と混ざり合
う。この水は同時に、その飲料原料内を通って上側に押し上げられる。水がこのように飲料原料内を通過することで形成された飲料は、フィルタ4および濾過アパーチャ55を通過して、環状フレーム41上方に位置する通路57内に入る。フィルタ4がスポーク53にシールされ、リム51が外側部材2に溶接されており、他の出口がまったくない状態であるため、この飲料すべてが確実にフィルタ4を通過する。
【0107】
次に、この飲料はウェブ54間に形成された径方向通路57に沿って下向きに流動し、開口56を通過して円柱状漏斗40内に入る。続いて、チャネル50に沿って支持ウェブ47間を通過し、注ぎ口43から下の出口44に落ち、これにより、この飲料はカップなどの容器内に注がれる。」

キ 上記ア?カに記載の事項を総合すると,引用例には,次の発明(以下
「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「1種類または複数種類の飲料原料を収納するための内部120と,水媒体を導入するための入口121と,生成された飲料を吐出するための出口122と,入口121から出口122までをつないで内部120を貫通する飲料流路とを有するカートリッジ1であって,内部120内の孔空間である濾過チャンバ130に1種類または複数種類の飲料原料200が収納され,内部120に球体などの1種類または複数種類の物体を入れて,その中で自由に移動できるようになし,飲料を注ぐ時点で乱流を起こし,その飲料原料の沈殿物を砕いて混合しやすくし,水媒体が濾過チャンバ130に収納されている飲料原料内を通過することで飲料を形成するカートリッジ1」


(4)対比

ア 本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と,引用発明とを対比すると,引用発明の「水媒体」,「導入する」,「入口121」,「生成された飲料」,「出口122」,「カートリッジ1」,「濾過チャンバ130」,「球体などの」「物体」は,本願補正発明の「液体」,「加える」,「入口」,「調製された生成物」,「出口」,「パッケージ」,「チャンバ」,「調製助剤」にそれぞれ相当する。
また,本願明細書【0003】の記載「スープ、カスタード等の食料生成物を選択できるようにすることが可能となる。」を考慮すれば,引用発明の「飲料」は,その原料である「飲料原料」の例として「粉末」「スープ」が挙げられていること(前記(3)エ)からして,本願補正発明の「飲料または食料生成物」に相当し,引用発明の「飲料原料」は,「飲料または食料原料」に相当する。さらに,引用発明の「水媒体が濾過チャンバ130に収納されている飲料原料内を通過することで飲料を形成する」は,本願補正発明の「飲料または食料生成物がその(チャンバの)中で調製される」に相当する。
そして,引用発明の「飲料原料」と「球体などの」「物体」を合わせたものは,本願補正発明の「組成物」に相当し,引用発明の「球体などの」「物体」は,それを「複数種類」「入れ」る場合には,少なくとも複数あることとなるから,本願補正発明の「調製助剤は」「複数の物体を含み」に相当する。
また,引用発明の「自由に移動できるようになし,飲料を注ぐ時点で乱流を起こし,その飲料原料の沈殿物を砕いて混合しやすくし」は,「飲料を注ぐ時点」がすなわち「水媒体」と「飲料原料200」の間で相互作用が行なわれる際を意味すること,及び「飲料原料の沈殿物」が「飲料原料」の一種であり,それを「砕いて混合しやすく」することが撹拌することにつながることから,本願補正発明の「前記液体と前記組成物の間の相互作用に,前記液体中の前記原料の撹拌を促進することである所定の影響を与える」に相当する。

イ 一致点
したがって,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致している。
「液体を加えることによって飲料または食料生成物を調製するための組成物を収容したパッケージであって,前記飲料または食料生成物がその中で調製されるチャンバであって,該チャンバに液体を加えるための入口と,該調製された生成物を吐出するための出口を有するチャンバを備えるパッケージにおいて,前記組成物は1種類または複数種類の飲料または食料原料と,前記液体と前記組成物の間の相互作用に,前記液体中の前記原料の撹拌を促進することである所定の影響を与える少なくとも1種類の調製助剤を含み,前記調製助剤は,複数の物体を含むパッケージ。」

ウ 相違点
そして,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で相違している。

本願補正発明では,調製助剤が,「実質的に不溶性且つ不浸透性の材料から形成される」「直径0.1mm?200mmの範囲」の物体を含むのに対し,引用発明では,「球体などの」「物体」のそのような性質や直径について何ら特定がない点(以下「相違点」という。)


(5)判断

ア 相違点についての検討

引用発明における「球体などの」「物体」は,「飲料を注ぐ時点で乱流を起こし、その飲料原料の沈殿物を砕いて混合しやすくする」ものとされており(前記(3)カの【0103】),具体的にいかなる材料及びサイズのものを用いるかは,「球体などの」「物体」の果たす上記のような役割・作用を念頭に入れつつ,当業者が適宜選択し得る事項である。
そして,「球体などの」「物体」を可溶性のものとすると,その溶解した部分は上記役割・作用を果たさなくなることが明らかであることから,不溶性の物体とすることが通常の選択であるといえる。浸透性の観点からも,上記役割・作用にかんがみて,あえて浸透性のものとする必要は特にないことから,不浸透性の材料を選択することも適宜なし得たことである。
さらに,「球体などの」「物体」のサイズについても,上記役割・作用に照らして,当業者は実験等から好適な値を求めることができるのであって,その結果,サイズを「直径0.1mm?200mmの範囲」という広範な範囲内に設定することは,通常のことである。
なお,引用例においては,引用発明の「カートリッジ1」のサイズの一例として「74.5mm±6mm」が挙げられている(前記(3)オの【0083】)。そうすると,その「カートリッジ1」に収納する「球体などの」「物体」の直径の上限を,200mmよりも小さく設定することは,当然である。
また,引用例には,引用発明の「入口チャンバ26」と「濾過チャンバ130」が,「スロット30」,「マニホールド16」及び「スロット17」を介して連通している旨の記載がある(前記(3)カの【0106】)。また,「スロット17」のサイズの一例として,「各スロットの幅は、0.25から0.35mmである」なる説明がなされている(前記(3)オの【0086】)。ここで,引用発明の「球体などの物体」の直径の下限を,「スロット17」の幅より大きくしようとすることは,該物体を保管時等に「マニホールド16内に通過してしまわないようにする」観点から,当業者が通常の創作能力に基づいてなし得ることである。
したがって,引用発明において,相違点に係る本願補正発明の構成を採用することは,当業者が容易になし得た設計事項である。

イ 本願補正発明の奏する効果について
本願補正発明の全体構成によって奏される作用効果についてみても,引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものである。

ウ まとめ
したがって,本願補正発明は,引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


(6)小括

以上のとおり,本願補正発明は,本願優先日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?20に係る発明は,平成27年4月30日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものである。そして,その請求項1に係る発明は,前記第2 2(1)に示した,本件補正前の請求項1のとおりのもの(以下「本願発明」という。)であると認める。

2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1,及びその記載事項は,上記第2 2(3)に記載した引用例,及びその記載事項のとおりである。

3 対比・判断

本願発明は,本願補正発明の,「調製助剤」が「前記液体と前記組成物の間の相互作用に」与える「所定の影響」について,「前記液体中の前記原料の撹拌を促進することである」との限定事項を除いたものである。そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらなる限定を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2 2(5)に記載したとおり,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり,本願発明は,本願優先日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることはできない。

よって,本願は,その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

したがって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-12 
結審通知日 2016-10-18 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2013-513240(P2013-513240)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名和 大輔小石 真弓  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 窪田 治彦
結城 健太郎
発明の名称 複数種類の不溶性材料物体を含む飲料または食料生成物調製用組成物  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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