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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C25D
管理番号 1326234
審判番号 不服2016-264  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-07 
確定日 2017-03-15 
事件の表示 特願2013-548262「凝縮器付処理ユニット及びそれを用いた全自動グラビア製版処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日国際公開、WO2013/084929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年12月5日(優先権主張 平成23(2011)年12月7日)を国際出願日とする出願であって、平成27年7月6日付けで拒絶理由が通知され、同年9月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年1月7日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1-4に係る発明は、平成27年9月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項2ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1には次のとおり記載されている。

「【請求項1】
被製版ロールに対して一連の処理を行い製版ロールとする全自動グラビア製版処理システムに用いられる凝縮器付処理ユニットであり、
処理槽と、
前記処理槽内にグラビアシリンダを保持するためのチャック手段と、
前記処理槽の一部に設けられた吸気のための吸気口と、
前記処理槽の一部に接続された排気のための排気口と、
前記処理槽と前記排気口との間に設けられた凝縮器と、
前記排気のうち、前記凝縮器によって液化された処理液を前記処理槽に戻すための処理液戻し管と、を含み、
前記凝縮器が、前記処理液戻し管及び前記排気口と直接的に接続されてなることを特徴とする凝縮器付処理ユニット。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-193551号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、グラビア製版工場と題して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、全製版工程を完全自動化でき、各装置の処理能力(処理時間)のアンバランスを解消でき、被製版ロールの搬送時間を短縮化でき、自動倉庫を必要としないで工場を省スペース化でき、夜間に無人操業が可能であり操業開始時に処理済みのロールを短時間で取り出すことができる,グラビア製版工場に関する。」

(1b)「【0009】クレーン走行ゾーンBには、ロボット走行ゾーンAに近い方から順に、ロール受渡し用のカセット型ロールチャック装置用載置台20と、現像装置16と、腐食装置17と、レジスト剥離装置18と、クロムメッキ装置19と、脱脂装置14と、銅メッキ装置15と、待機用の六台のカセット型ロールチャック装置用載置台20が設置され、また天井にスタッカクレーン13が設置されている。従って、脱脂装置14と銅メッキ装置15が隣接し、また現像装置16と腐食装置17とレジスト剥離装置18とクロムメッキ装置19の順に並んでいる。これは、製版工程に合わせた配列とすることによりスタッカクレーン13がカセット型ロールチャック装置12を移送する道程を最短距離として時間短縮を図るためである。
【0010】図3に示すように、スタッカクレーン13はカセット型ロールチャック装置12を吊り上げて搬送し得る構成である。カセット型ロールチャック装置12は、一対のチャックコーン12a,12bにより水平方向にした被製版ロールRの両端のチャック孔をチャックし、一対の防水キャップ12c,12dによりチャックコーン12a,12bの外側を隠蔽して被製版ロールRの両端のチャック孔を防水し、装置フレームの両側の端板12e,12eが処理装置に載置されたときに駆動側のチャックコーン12aが処理装置に供えている回転駆動源と接続され被製版ロールRを回転しうるようになっている。スタッカクレーン13の走行方向と走行形産業用ロボット7の走行方向と一致している。また、カセット型ロールチャック装置12は、装置フレームの端板12e,12eがメッキ装置15,19に載置されたときには一対のチャックコーン12a,12bの基部が通電ブラシの上に載置されメッキ電流が通電されるようになっている。
【0011】図3?図6に示すように、処理装置14?19は、前記カセット型ロールチャック装置12の装置フレームの両側の端板を湾部に受け入れてカセット型ロールチャック装置12を載置した状態となり、この状態で被製版ロールRに対して脱脂処理、銅メッキ処理、現像処理、腐食処理、レジスト剥離処理、又はクロムメッキ処理ができる構成である。・・・」

(1c)「【0013】図4、図5に示すように、脱脂装置14は、脱脂タンク14aと受け皿兼蓋14bと水洗ノズル14cと希硫酸噴射ノズル14dとバラード液噴射ノズル14eを備えていて、(図では1本のノズル管に符号14c,14d,14eを共通して付してある)脱脂-水洗-中和-水洗-バラード処理-水洗を行うようになっている。詳述すると、図4に示すように、カセット型ロールチャック装置12が載置すると、カセット型ロールチャック装置12の駆動側のチャックコーン14aと直結しているスプロケットが脱脂装置14の側の駆動系に係合し、脱脂タンク14aが上昇し、カセット型ロールチャック装置12にチャックされた被製版ロールRがタンク内の脱脂液に浸漬して回転し脱脂が行われる。・・・
・・・
【0014】現像装置16と腐食装置17とレジスト剥離装置18は、図4、図5に示す脱脂装置14とほぼ同一の構成であり、 ・・・
・・・
【0015】図6に示すように、銅メッキ装置15は、上部タンク15aと下部タンク15bと水洗ノズル15cを有し、スタッカクレーン13によりカセット型ロールチャック装置12を載置して該カセット型ロールチャック装置12によりチャックされた被製版ロールRを上部タンク15aに位置させると下部タンク15b内のメッキ液がポンプにより上部タンク15a内に給送して被製版ロールRをメッキ液で浸漬し被製版ロールRを回転してメッキ電流を流してメッキを行い、メッキ終了後は、ドレン用弁が開いて上部タンク内のメッキ液が下部タンク15b内に流下しすると水洗ノズルが水洗を行う構成である。クロムメッキ装置19も、銅メッキ装置15と同様の構成である。」

上記(1a)、(1b)によれば、全製版工程を完全自動化したグラビア製版工場において、被製版ロールRを、脱脂装置14-銅メッキ装置15-現像装置16-腐食装置17-レジスト剥離装置18-クロムメッキ装置19に搬送し、一連の処理をすることにより製版ロールとすることが記載されている。
そして、上記「脱脂装置14-銅メッキ装置15-現像装置16-腐食装置17-レジスト剥離装置18-クロムメッキ装置19」は、全体として被製版ロールに対する製版処理システムを構成しているといえる。
また、(1c)によれば、各装置はタンクを有し、該タンク内に被製版ロールRを保持するためのロールチャック装置12を有するものである。

よって、引用刊行物1には、「被製版ロールに対して一連の処理を行い製版ロールとする全自動グラビア製版処理システムに用いられる銅メッキ装置、腐食装置、クロムメッキ装置であり、
タンクと、
前記タンク内に被製版ロールを保持するためのロールチャック装置を含む、銅メッキ装置、腐食装置、クロムメッキ装置」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-66193号(実開昭60-179302号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物2」という。)には、ウエツト処理装置と題して、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)「[技術分野]
本考案は、混合処理液を加熱して使用するウエツト処理装置に於いて、安定した剥離又はエツチング処理ができるようにしたウエツト処理装置に関するものである。」(明細書1頁[技術分野]の欄)

(2b)「[考案の目的]
本考案の目的は、混合処理液を加熱して使用するウエツト処理装置に於いて、液の劣化を防止し、有毒臭の装置外への流出を防止した装置を提供することにある。」(明細書2頁[考案の目的]の欄)

(2c)「第1図はデイツプ式ウエツト処理の場合の例を示す。
第1図において、本考案の処理槽1に接続された排気ダクト4を上向き姿勢に立ち上らせ、その立ち上り部分に液化還流装置6を装着し、該装置6で液化された処理液を帰還させるドレーン配管9を処理層1に接続する。また第1図、第2図に示すように、処理槽1の上部開口部に液化還流装置10を設置したものである。図中、7,8,11a,11bは冷却水の給排パイプである。
ダクト4で引かれた蒸気は液化還流装置6で冷却、液化され、処理槽1へドレーン配管9を通って戻る。一方、ダクト4に引かれなかった蒸気は処理槽上の液化還流装置10により冷却、液化されて処理槽1へ戻る。」(明細書3頁2行ないし16行)

(2d)「第3図は本考案の他の実施例を示すもので、スプレー式ウエツト処理の場合の実施例を示す。本実施例では処理液14を収容した恒温槽13(処理槽)の上方に位置するエツチング室12に液化還流装置10としてスプレー15を設置したものである。他の構成は第1図の実施例と同様である。ダクト4で引かれた蒸気は液化還流装置6で冷却、液化され、恒温槽13に配管9を通って戻る。一方、排気ダクト4により引かれない蒸気はスプレー15からの冷却水により冷却、液化されて恒温槽13に還流される。」(明細書3頁17行ないし4頁7行)

(2e)「尚、両実施例とも処理槽(恒温槽13、エツチング室12を含む)が密閉されていないので、液化還流装置10を設けたが、密閉されている場合には液化還流装置6のみを設ければよい。」(明細書4頁8行ないし11行)

上記(2a)-(2e)において、次の事項が明らかである。
・エッチング処理等のウエット処理装置において、処理槽には排気ダクトが接続され、その排気ダクトの先端部には排気口と呼べる排気の出口が存在する。
そして、処理槽が密閉されていない場合には、上部開口部が存在し、その開口部が吸気のための吸気口となり、密閉されている場合には、排気ダクトの存在とともに、処理槽のいずれかの箇所に開口部を要し、吸気口が存在する。
・エッチング処理等のウエット処理においては、処理液の蒸気ないしはミストが発生し、このミストが、排気とともに排気ダクトによって引かれ、処理槽と排気口との間に設けられた液化還流装置によって液化され、それにより、液の劣化や有毒臭の装置外への流出を防止する。

したがって、引用刊行物2には、「処理槽と、前記処理槽の一部に設けられた吸気のための吸気口と、前記処理槽の一部に接続された排気のための排気口と、前記処理槽と前記排気口との間に設けられた液化還流装置と、前記排気のうち、前記液化還流装置によって液化された処理液を前記処理槽に戻すためのドレーン配管と、を含み、
前記液化還流装置が、前記ドレーン配管及び前記排気口と直接的に接続されてなる液化還流装置付エッチング等ウエット処理装置。」が記載され、これにより、液の劣化や有毒臭の装置外への流出を防止することが記載されている。

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「被製版ロール」、「銅メッキ装置、腐食装置、クロムメッキ装置」、「タンク」、「ロールチャック装置」は、本願発明における「グラビアシリンダー」、「処理ユニット」、「処理槽」、「チャック手段」に相当する。

よって、両者は、「被製版ロールに対して一連の処理を行い製版ロールとする全自動グラビア製版処理システムに用いられる処理ユニットであり、処理槽と、前記処理槽内にグラビアシリンダを保持するためのチャック手段と、を含む処理ユニット。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明の処理ユニットが、「凝縮器付処理ユニットであり、処理槽と、前記処理槽内にグラビアシリンダを保持するためのチャック手段と、前記処理槽の一部に設けられた吸気のための吸気口と、前記処理槽の一部に接続された排気のための排気口と、
前記処理槽と前記排気口との間に設けられた凝縮器と、前記排気のうち、前記凝縮器によって液化された処理液を前記処理槽に戻すための処理液戻し管と、を含み、前記凝縮器が、前記処理液戻し管及び前記排気口と直接的に接続されてなる凝縮器付処理ユニット」であるのに対して、引用発明のものは、それが明らかではない点。

上記相違点について検討する。
引用刊行物2に記載されたエッチング等ウエット処理装置における「液化還流装置」、「ドレーン配管」、「エッチング等ウエット処理装置」は、本願発明の「凝縮器」、「処理液戻し管」、「処理ユニット」にそれぞれ相当するものであり、引用刊行物2には、「処理槽と、前記処理槽の一部に設けられた吸気のための吸気口と、前記処理槽の一部に接続された排気のための排気口と、前記処理槽と前記排気口との間に設けられた凝縮器と、前記排気のうち、前記凝縮器によって液化された処理液を前記処理槽に戻すための処理液戻し管と、を含み、前記凝縮器が、前記処理液戻し管及び前記排気口と直接的に接続されてなる凝縮器付処理ユニット」が開示されているといえる。
ここで、エッチング装置、メッキ装置のような処理液を使用する処理装置においては、処理液のミストが発生し、これがそのまま外部に排出される場合には、コスト面で損失となるとともに、ミスト自体が有害であると環境面においても問題となるところ、ミストを回収して再利用することは周知の課題である。
例えば、特開2004-111439号公報には、ウエハエッジのエッチングに関するが(段落【0001】)、エッチング後のエッチング液のガス(ミスト)や廃液を回収して(段落【0015】)、エッチング液の無駄をなくすもの(段落【0019】)が記載され、特開昭56-102599号公報には、電気メッキに関するが(2頁左上欄)、メッキ操作の進行につれてメッキ液から発せられるミストを回収できれば、再使用できる(2頁左下欄)として、ミストを分離してメッキタンク内へ戻すもの(請求の範囲の請求項1)が記載されている。
また、引用刊行物2に記載される処理装置(処理ユニット)は、ミストを外部に排出しないことにより、有毒臭の装置外への流出等を防止し得るものである。
そうすると、引用発明における腐食装置、銅メッキ装置、クロムメッキ装置においても、同様の課題があることは当然に予想されることであり、それを解決すべく、これらの装置に対して上記引用刊行物2に記載される技術を適用し、当該相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることと認める。
そして、本願発明による効果も、当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明と引用刊行物2の記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-19 
結審通知日 2017-01-20 
審決日 2017-02-01 
出願番号 特願2013-548262(P2013-548262)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 向井 佑印出 亮太  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 松本 要
鈴木 正紀
発明の名称 凝縮器付処理ユニット及びそれを用いた全自動グラビア製版処理システム  
代理人 石原 詔二  
代理人 石原 進介  

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