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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B64C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B64C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B64C
管理番号 1326371
審判番号 不服2015-18737  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-16 
確定日 2017-04-04 
事件の表示 特願2012-244567号「航空宇宙機ヨー発生システムおよび関連方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月11日出願公開、特開2013- 63769号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年6月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年6月21日 米国)を国際出願日とする特願2008-518185号の一部を平成24年11月6日に新たな特許出願としたものであって、同年12月4日に手続補正書及び上申書が提出され、平成25年11月26日付けで拒絶理由が通知され、平成26年6月2日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月22日付けで拒絶理由(最後の拒絶理由)が通知され、平成27年1月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月8日付けで拒絶査定がされ、同年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年11月25日に手続補正書(方式)が提出され、その後、当審において平成28年7月28日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年12月2日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年12月15日付けで拒絶理由(最後の拒絶理由。以下「当審拒絶理由2」という。)が通知され、平成29年1月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許を受けようとする発明は、平成29年1月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1及び2」ということがある。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
第1の部分(112)と第2の部分(114)とを備えた胴体(110)とヨー発生システム(100)とを有する宇宙航空機 (101)であって、該ヨー発生システム(100)は
可動な制御表面(142)であって、収納されたとき、略水平面に広がり、該宇宙航空機(101)が流れ場(F)に位置したとき該制御表面(142)は偏向位置に可動であり、該位置では該制御表面(142)が該胴体(110)に隣接した流れパターンを発生するように位置し、該胴体(110)の第1の部分(112)と該胴体(110)の第2の部分(114)との間で、該流れパターンが圧力差(P1)を発生するように位置し、第1と第2の部分(112、114)とは該圧力差(P1)が該宇宙航空機(101)上にヨーモーメント(Ym1)を生成するように位置した宇宙航空機 (101)において、
該制御表面(142)が第1の制御表面(142a)を含み、
該システムはさらに、第2の制御表面(142b)を有し、収納されたとき、略水平面に広がり、第1と第2の制御表面(142a、142b)が該胴体(110)に対して少なくとも略対称に位置し、第1の制御表面(142a)が該偏向位置に置かれたとき、第2の制御表面(142b)が選択された位置に位置づけ可能であり、
第1のウィングセクション(120a)が該胴体(110)に結合され、第1の制御表面(142a)が第1のウィングセクション(120a)に結合され、
第2のウィングセクション(120b)が第1のウィングセクション(120a)とはほぼ反対に該胴体(110)に結合され、第2の制御表面(142b)が第2のウィングセクション(120b)に結合され、
第1の制御表面(142a)の該偏向位置において、かつ第2の制御表面(142b)の該選択された位置において、
第1の制御表面(142a)は、いくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させ、圧力差(P1)を発生するように流れパターンを生成するように位置づけられ、前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって3分の1内に位置したスポイラであり、該スポイラの制御によってのみ、該流れパターン、該圧力差(P1)及び該ヨーモーメント(Ym1)が生成されることを特徴とする、宇宙航空機。

【請求項2】
ヨー発生方法であって、該方法は、
宇宙航空機(101)の胴体(110)に隣接して、可動な制御表面(142)を位置づけることであって、該胴体(110)は、第1の部分(112)と第2の部分(114)とを有し、
該可動な制御表面(142)は収納されたとき、略水平面に広がり、偏向された位置に可動であり、該偏向された位置において該制御表面(142)が、該宇宙航空機(101)が流れ場(F)に位置したとき流れパターンを発生するように位置し、該流れパターンは該胴体(110)の第1の部分(112)と該胴体(110)の第2の部分(114)との間で、圧力差(P1)を発生するように位置づけられており、該胴体(110)の第1と第2の部分(112、114)は該圧力差(P1)が該宇宙航空機(101)の上にヨーモーメント(Ym1)を生成するように位置した、該可動な制御表面(142)を位置づけることを含んでおり、
-該可動な制御表面(142)は、第1と第2の制御表面(142a、142b)を含み、該第1と第2の制御表面(142a、142b)が、該胴体(110)に対して水平面内に、少なくとも略対称に位置し、第1の制御表面(142a)が該偏向位置に置かれたとき、第2の制御表面(142b)が選択された位置に位置づけ可能であり、該方法はさらに、
-第1の制御表面(142a)を第1のウィングセクション(120a)に結合することと、第1のウィングセクション(120a)を該胴体(110)に結合することと、
第2のウィングセクション(120b)を該胴体(110)に該胴体(110)に対して第1のウィングセクション(120a)のほぼ反対に結合することと、第2の制御表面(142b)を第2のウィングセクション(120b)に結合することとを含み、
-該偏向位置において、該制御表面(142)が該胴体(110)の第1の部分(112)と該胴体(110)の第2の部分(114)との間で、圧力差(P1)を発生するように位置した流れパターンを生成し、該宇宙航空機(101)の上にヨーモーメント(Ym1)を生成するように位置づけられることは、第1の制御表面(142a)がいくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させるように位置づけられることを含み、前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及びの第2ウイングセクションの先端に向かって3分の1内に位置したスポイラであり、該スポイラの制御によってのみ、該流れパターン、該圧力差(P1)及び該ヨーモーメント(Ym1)が生成されることを特徴とした、方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
[理由1]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由3]この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物等
引用文献1: 米国特許第5375793号明細書
引用文献2: 米国特許第6491261号明細書

[理由1について]
請求項1及び2の「胴体(110;810)に連結された…制御表面」との記載と「制御表面…が…ウィングセクション…に結合され」との記載は整合していない。
[理由2、3について]
引用文献1(第3欄第40?45行、図1等参照)、引用文献2(要約、全図等参照)には、スポイラによりヨーモーメントを生成することが記載されている。スポイラは略水平に広がっている。
一方のスポイラを立ち上げることにより、流れが加速する領域や減速する領域が生じるものと認められるし、これにより、機体の左右で圧力差が生じるものと認められる。

2 原査定の理由の判断
2-1 理由1について
上記「第2」のとおり、請求項1及び2において、「胴体(110;810)に連結された…制御表面」との記載は補正により削除されたから、当該理由1によっては、本願を拒絶することはできない。

2-2 理由2及び3について
(1) 刊行物等の記載事項
ア 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。なお、摘示の後に付した翻訳文は、合議体が作成したものである。
(1a) 「DESCRIPTION OF THE INVENTION
The present invention proposes a process for the automatic control of the control surfaces of an aircraft for the low speed compensation of a lateral path deviation, characterized in that beyond a given deflection threshold of the rudder, a deflection, proportional to the exceeding of the threshold of the wing surfaces of one of the two wings is controlled, said wing being that on the side of the deflected rudder, so as to supply a drag supplement to said wing and therefore yaw torque to the aircraft.
It is therefore possible to control a deflection of at least one aileron of the wing on the side of the deflected rudder. Advantageously, if said wing has two ailerons, a differential deflection of the ailerons of the wing in question is controlled, one being deflected downwards and the other upwards, so as to minimize the roll torque.
Advantageously, it is also possible to upwardly deflect at least one spoiler on the wing on the side of the deflected rudder by a quantity such that the roll torque created by all the deflected control surfaces is minimized. In general terms, it is possible to control any wing surface, whose deflection can vary the drag difference between the two wings in the desired sense.」(第1欄第51行?第2欄第10行)
「発明の説明
本発明は航空機に取り付けられた制御表面の自動制御に適した横方向経路逸脱の低速補償工程を提案しており、その特徴は、所与の方向舵偏向の閾値を超えて、両主翼のうち一方の翼面の閾値の超過に比例する偏向が制御され、偏向した方向舵の側にある主翼が当該主翼に追加の抗力を提供し、それによって機体にヨートルクが提供されることを特徴としている。
従って、偏向した方向舵側の主翼に取り付けられた少なくとも一つのエルロンの偏差を制御することが可能である。有利には、主翼がエルロンを二つ有している場合、ロールトルクを最小限にするよう一方は上方に偏向し、もう一方は下方に偏向するようエルロンの偏向差が制御される。
さらに有利には、全制御表面が生成するロールトルクが最小となるように、偏向した方向舵側の主翼上のスポイラーのうち少なくとも一つを、上方に偏向することも可能である。一般論として、偏差によって二つの主翼の抗力差にばらつきが生まれるような翼面を、望ましい向きに制御することが可能である。」

(1b) 「BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS
FIG. 1 illustrates the position of an aircraft control surfaces.」(第2欄第30行?同欄第32行)
「図の簡単な説明
図1は航空機に取り付けられた制御表面の位置を示す。」

(1c) 「GENERAL PRINCIPLES
The movements of an aircraft in flight are obtained by the manipulation of a certain number of mobile or control surfaces, which are themselves controlled by the flying or piloting members made available to the pilot, namely a joy-stick (pitch or roll axes) and pedals (or rudder bar for the yaw axis).
As shown in FIG. 1, in the case of aircraft 10 of the airbus type, these are:
1. On the wing surface, where the control surfaces are most numerous:
a series of slats 11 at the front,
a series of flaps 12 at the rear, opened out on take-off and landing to bring about a hyperlift,
a series of spoilers 13 (on the wing upper surface), with three relatively different and/or complimentary functions having a symmetrical movement like an airbrake in flight or a tilter when taxying on landing, or asymmetrical assisting the ailerons,
two ailerons 14 per wing, for a differential deflection between the left and right wings, the internal ailerons being effective throughout the flight and being assisted by the external ailerons at low speed.」(第2欄第42行?同欄第64行)
「一般的原則
飛行中の機体は一定数の可動装置もしくは制御表面によって動作がなされるが、ジョイスティック(ピッチもしくはロール軸)やペダル(もしくはヨー軸専用の方向舵バー)などを飛行士もしくは操縦士が操作することで制御される。
図1にて示されるように、エアバス型の航空機10の態様は以下のとおりである。
1.制御表面が最も取り付けられている主翼表面において、
その前縁にはスラット11が並列しており、
後縁にはフラップ12が並列していて、離発着時に高揚力を増大させるために開口し、(主翼上面に並列している)スポイラー13は飛行中の空力ブレーキや、あるいは着陸して地上走行する際に機首を下げる操作のように左右対称に動作し、もしくはエルロンを補助しながら左右非対称的に動作するなど比較的それぞれ異なる機能および/あるいは相補的な機能を有しており、
二つのエルロン14は左右の主翼の偏向差を制御するために各主翼に取り付けられており、内側エルロンは飛行中に終始作動しており、また低速飛行中には外側エルロンが補助している。」

(1d) 「When each wing is provided with two ailerons 14, as shown in FIG. 1, one is deflected upwards and the other downwards, so as to minimize the roll torque. In the same way, for increasing the yaw torque, one or more spoilers 13 can be deflected upwards on said same wing by a quantity such that the roll torque created by all the deflected surfaces (ailerons, control surfaces, spoilers) is minimized.」(第3欄第37行?同欄第44行)
「図1にて図示されるように各主翼にエルロン14が二つ設けられている場合、一方が上方に、またもう一方が下方に偏向することでロールトルクを最小限にする。同様に、ヨートルクを増大させるため、一つあるいは複数のスポイラー13は、偏向した全ての表面(エルロン、制御表面、スポイラー)によって発生したロールトルクが最小となるよう、前記主翼上で上方に偏向することも可能である。」

(1f) 引用文献1のFIG.1には以下の図が記載されている。


イ 引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a) 「SUMMARY OF THE INVENTION
It is therefore a primary object of the present invention to provide a wing mounted yaw control device overcoming the limitations and disadvantages of the prior art.
It is another object of the present invention to provide a wing mounted yaw control device that provides effective yaw moment to a tailless aircraft in flight.
It is yet another object of the present invention to provide a wing mounted yaw control device requiring relatively low actuation forces during operation.
These and other objects of the invention will become apparent as the description of the representative embodiments proceeds.
In accordance with the foregoing principles and objects of the present invention, a wing mounted yaw control device is provided to impart yaw motion to an aircraft in flight. The wing mounted yaw control device of the present invention has particular utility on tailless aircraft in order to compensate for the loss of the vertical rudder found on conventional aircraft.
The wing mounted yaw control device of the present invention includes a deployable spoiler hingedly mounted on the upper surface of the aircraft wing. A deployable deflector is hingedly mounted on the lower surface of the aircraft wing. A deployment mechanism is mounted within the wing and is provided to effect the simultaneous deployment of the spoiler and deflector. The spoiler and deflector, when deployed, impart a net drag force to the wing. This, in turn, causes a yaw moment to be imparted to the aircraft due to the unbalanced drag force on the one wing, causing the aircraft to move in the yaw direction. The degree to which the spoiler and deflector are deployed corresponds with the degree of yaw moment imparted to the aircraft. Thus, gradual turns can be readily effected by selective partial deployment of the spoiler and deflector. Moreover, it can be appreciated that the wing mounted yaw control device of the present invention can also provide an effective speed brake when deployed on both wings simultaneously.」(第1欄第58行?第2欄第34行)
「本発明の概要
従って本発明の第一目標は先行技術の制限や欠点を克服するヨー制御装置を搭載した主翼を提供することである。
本発明の別の目的は、飛行中の無尾翼機が効果的なヨー・モーメントをもたらすヨー制御装置を搭載した主翼を備えていることである。
本発明のさらに別の目的は、その操作中において比較的低い作動力が要求されるヨー制御装置を搭載した主翼を提供することである。
このような本発明の目的や他の目的は、本発明の代表的な形態を説明することによって明らかとなるであろう。
本発明が開示する前述の原則および目的に従い、ヨー制御を搭載した主翼は飛行中にヨー・モーメントが付与されるように設けられる。従来の航空機にみられた垂直尾翼を補償すべく、ヨー制御装置を搭載した本発明の主翼は無尾翼機において特定の用途を有している。
ヨー制御装置を搭載した本発明の主翼には、機体の主翼の上面に実装された展開型スポイラーが組込まれている。展開型ディフレクターは機体の主翼の下面にヒンジ式に実装されている。展開型機構は主翼の内部に搭載されており、スポイラーおよびディフレクターの同時展開を行うように備えられている。スポイラーおよびディフレクターが展開されると、二つを合わせた抗力が主翼に付与される。次に、これを受けて一方の主翼に負荷される抗力に偏りが生じるため、ヨー・モーメントが機体に付与され、機体がヨー方向へ進行できるようになる。スポイラーおよびディフレクターが展開される度合いは機体に付与されるヨー・モーメントの量に対応する。従って、スポイラーおよびディフレクターを選択的に部分展開することで容易に緩旋回することができる。さらに、ヨー制御装置を搭載した本発明の主翼が両翼において同時展開される際には効果的なスピードブレーキが実現されることも理解できる。」

(2b) 「BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWING
The accompanying drawing incorporated in and forming a part of the specification, illustrates several aspects of the present invention and together with the description serves to explain the principles of the invention. In the drawing:
FIG. 1 is a perspective view of the wing mounted yaw control device of the present invention mounted upon a tailless aircraft;」(第2欄第56行?同欄第63行)
「図の簡単な説明
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の幾つかの実施態様を図示しており、説明とともに本発明の原理を説明するに役立つ。図面において、
図1はヨー制御装置を搭載した無尾翼機における主翼の斜視図である。」

(2c) 「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Reference is made to FIG. 1 showing the wing mounted yaw control device 10 of the present invention. As shown, the yaw control device 10 includes a deployable spoiler 12 and a deployable deflector 14. The spoiler 12 and deflector 14 are hingedly mounted on the upper and lower surfaces of a wing 18 of an aircraft 16, respectively. The deflector 14 is deployed in an opposite manner to the spoiler 12. As shown, the spoiler 12 directs the flow of air away from the wing 18, whereas the deflector 14 directs the flow of air into the wing 18.
For the sake of clarity, the yaw control device 10 will be shown and described with respect to a single wing 18 , but it should be appreciated that the yaw control device 10 is identically mounted on both wings 18 of the aircraft 16 in order to effect aircraft control during flight.
The spoiler 12 and deflector 14 can be made out of any material currently in use for aircraft control devices, such as aluminum or carbon graphite. …The spoiler 12 and deflector 14 would be flush with the wing surface 18 when they are not deployed. 」(第3欄第18行?同欄第47行)
「本発明の詳細な説明
ヨー制御装置10を搭載した本発明の主翼を示した図1を参照する。表示のように、ヨー制御装置10には展開型スポイラー12と展開型ディフレクター14が含まれている。スポイラー12およびディフレクター14は、機体16の主翼18の上面および下面にヒンジ式に実装される。ディフレクター14はスポイラー12とは逆に展開される。表示のように、スポイラー12は気流を主翼18から阻害し、その一方でディフレクター14が気流を主翼18に導いている。
見やすいようにヨー制御装置10が一方の主翼に関連して示されているが、ヨー制御装置10は機体16の両翼18に全く同様にして搭載されていることを理解するべきである。
スポイラー12とディフレクター14は、現在航空機の制御装置で用いられているアルミニウムや炭素繊維のような、どのような材料であってもよい。…スポイラー12とディフレクター14は、非展開時において主翼表面18と面一である。」

(2d) 「As shown in FIG. 6, the spoiler 12 and deflector 14 are hingedly mounted upon first and second surfaces of the wing 18 via hinges 22 and 24 respectively. During operation, the spoiler 12 and deflector 14 are positionable from the null position shown in FIG. 6 to the fully deployed position as shown in FIGS. 3 and 7. A deployment mechanism 20 is provided to selectively effect the desired deployment of the spoiler 12 and the deflector 14. The deployment mechanism 20 operates to deploy the spoiler 12 and deflector 14 -simultaneously.」(第4欄第3行?同欄第12行)
「図6にて示されるように、スポイラー12およびディフレクター14はそれぞれヒンジ22およびヒンジ24を介して主翼18の第一翼面、また第二翼面上に実装される。作動している間、スポイラー12およびディフレクター14は図6にて示されるヌル位置から、図3および図7にて示される全展開位置までの間の任意の位置を取ることができる。展開機構20はスポイラー12およびディフレクター14の望ましい展開を選択的に行うように設けられている。展開機構20はスポイラー12およびディフレクター14が同時に展開するように作動する。」

(2e) 「Another advantage of the yaw control device 10 of the present invention is that the roll forces (vector R in FIG. 2) exerted upon the aircraft wing 18 by the spoiler 12 and deflector 14 also balance each other out. More specifically, the force of the wind exerted upon the spoiler 12 creates a negative lift force. The force of the wind exerted upon the deflector 14 creates a positive lift force. The overall net effect is cancellation of the two roll forces, enabling aircraft yaw without the addition of undesirable roll.」(第4欄第54行?同欄第62行)
「本発明によるヨー制御装置10の別の利点は、スポイラー12およびディフレクター14によって機体の主翼18に作用するロール力(図2のベクトルR)もまた互いに相殺し合うということである。より詳細には、スポイラー12に作用する風力がマイナスの揚力を生む。ディフレクター14に作用する風力はプラスの揚力を生み出す。全体的な正味の効果は二つの圧延力の相殺であり、不適切なロール力を加えることなく機体がヨーイングできるようにする。」

(2f) 「In summary, numerous benefits have been described from utilizing the principles of the present invention. The yaw control device 10 of the present invention provides effective yaw moment to an aircraft in flight through selective, simultaneous deployment of the spoiler 12 and deflector 14 into the airstream. This causes a drag force to be exerted on a wing, thereby imparting the desired yaw moment to an aircraft in flight. The yaw control device 10 additionally provides for an effective speed brake for the aircraft 16 by simply deploying the yaw control device 10 on both wings simultaneously.」(第5欄第21行?同欄第31行)
「要約すると、本発明の原則を用いることによる多くの利益が説明されてきた。本発明によるヨー制御装置10は、スポイラー12およびディフレクター14を気流へ同時展開することで、飛行中の機体に効果的なヨー・モーメントをもたらす。これによって抗力が主翼に作用し、従って飛行中の機体に所望のヨー・モーメントを付与する。さらにヨー制御装置10は、両翼にヨー制御装置10を同時展開するだけで、機体16に効果的なスピードブレーキをもたらす。」

(2g) 引用文献2のFig.1、Fig.6及びFig.7には以下の図が記載されている。


(2)刊行物等に記載された発明
ア 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、
(ア) 航空機10に関し(摘示(1c))、
(イ) 偏向した方向舵の側にある主翼が当該主翼に追加の抗力を提供し、それによって機体にヨートルクが提供されること(摘示(1a))、
(ウ) 全制御表面が生成するロールトルクが最小となるように、主翼上のスポイラーのうち少なくとも一つを、上方に偏向することが可能であること(摘示(1a))、
(エ) スポイラー13は主翼上面に並列していること(摘示(1c))、
(オ) スポイラー13はエルロンを補助しながら左右非対称的に動作すること(摘示(1c))、
(カ) ヨートルクを増大させるため、一つあるいは複数のスポイラー13は、偏向した全ての表面(エルロン、制御表面、スポイラー)によって発生したロールトルクが最小となるよう、前記主翼上で上方に偏向することも可能であること(摘示(1d))、
が記載されている。
また、引用文献1において、
(キ) 摘示(1f)より、航空機10は、胴体を有すること、
(ク) 摘示(1f)より、胴体の両側に主翼18、18が設けられており、主翼主翼18、18のそれぞれにはスポイラー13が設けられていること、
(ケ) 摘示(1f)及び技術常識からみて、スポイラー13は収納時において、主翼18の上面と同一面をなすものであること、
が明らかである。

これらのことから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「偏向した方向舵の側にある主翼が当該主翼に追加の抗力を提供し、それによって機体にヨートルクが提供され、
全制御表面が生成するロールトルクが最小となるように、主翼上のスポイラーのうち少なくとも一つを、上方に偏向することが可能である航空機10であって、
航空機10は、胴体を有し、
胴体の両側に主翼18、18が設けられており、主翼18、18のそれぞれにはスポイラー13が設けられ、
スポイラー13は主翼上面に並列しており、
スポイラー13は収納時において、主翼18の上面と同一面をなし、
スポイラー13はエルロンを補助しながら左右非対称的に動作するものであって、
ヨートルクを増大させるため、一つあるいは複数のスポイラー13は、偏向した全ての表面(エルロン、制御表面、スポイラー)によって発生したロールトルクが最小となるよう、前記主翼上で上方に偏向することも可能である、
航空機10。」

イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2には、
(ア) ヨー・モーメントをもたらすヨー制御装置を搭載した主翼を備えた無尾翼機に関し(摘示(2a))、
(イ)
a 機体16の両翼18に、ヨー制御装置10が搭載されていること(摘示(2c))、
b ヨー制御装置10には展開型スポイラー12と展開型ディフレクター14が含まれること(摘示(2c))、
c スポイラー12およびディフレクター14は、機体16の主翼18の上面および下面に実装されること(摘示(2c))、
d スポイラー12およびディフレクター14は図6にて示されるヌル位置から全展開位置の間の任意の位置を取ることができること(摘示(2d))、
e スポイラー12とディフレクター14は、非展開時において主翼表面18と面一であること(摘示(2c))、
(ウ)
a スポイラー12は気流を主翼18から阻害し(摘示(2c))、マイナスの揚力を生むこと(摘示(2e))、
b スポイラー12およびディフレクター14を展開することで、飛行中の機体にヨー・モーメントをもたらすこと(摘示(2f))、
c スポイラーおよびディフレクターが展開されると、一方の主翼に負荷される抗力に偏りが生じるため、ヨー・モーメントが機体に付与されること(摘示(2a))、
が記載されている。
また、引用文献2において、
(エ) 摘示(2g)のFig.1より、
a 機体16は胴体を有し、その両側に主翼18を備えること、
b 上記「(イ)c」において、スポイラー12が主翼18の上面に実装され、ディフレクター14が主翼18の下面に実装されていること、
(オ) 上記「(イ)e」、摘示(2g)のFig.1及びFig.6より、上記「(イ)d」のスポイラー12のヌル位置は、主翼18の上面と同じ面であり、当該上面は、略水平面であること、
(カ) 技術常識に照らして、上記「(ウ)c」において、「一方の主翼に負荷される抗力に偏りが生じる」のは、一方の主翼18のスポイラー12およびディフレクター14の展開位置と、他方の主翼18のスポイラー12およびディフレクター14の展開位置とが異なるときであること、
が明らかである。

これらのことから、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ヨー・モーメントをもたらすヨー制御装置を搭載した主翼を備えた無尾翼機であって、
機体16は胴体を有し、その両側に主翼18を備え、
両側の主翼18には、ヨー制御装置10が搭載され、
ヨー制御装置10にはスポイラー12とディフレクター14が含まれ、
スポイラー12が主翼18の上面に実装され、ディフレクター14が主翼18の下面に実装され、
スポイラー12およびディフレクター14はヌル位置から全展開位置の間の任意の位置を取ることができ、
スポイラー12のヌル位置は、主翼18の上面と同じ面であり、当該上面は、略水平面であり、
スポイラー12は気流を主翼18から阻害し、マイナスの揚力を生むものであり、
一方の主翼18のスポイラー12およびディフレクター14の展開位置と、他方の主翼18のスポイラー12およびディフレクター14の展開位置とが異なるとき、一方の主翼に負荷される抗力に偏りが生じるため、ヨー・モーメントが機体に付与される、
無尾翼機。」

(3)対比・判断
ア 引用発明1を主引用例とした場合
(ア) 本願発明1と引用発明1を対比する。
a 引用発明1の「航空機10」及び「機体」は「宇宙航空機 (101)」に相当し、以下同様に、「胴体」は「胴体(110)」に、「スポイラー13」は「可動な制御表面(142)」及び「スポイラ」に、「主翼18、18」は「第1のウィングセクション(120a)」及び「第2のウィングセクション(120b)」に、「ヨートルク」は「ヨーモーメント(Ym1)」に相当する。
b
(a) 本願発明1の「胴体(110)」の「第1の部分(112)と第2の部分(114)」は、本願明細書の【0013】の「第1のウィングセクション120aは胴体110の第1の側面111に隣接して位置し、第2のウィングセクション120bは胴体110の第2の側面113に隣接して位置する。」との記載によれば、少なくとも、第1及び第2のウィングセクションに隣接した胴体の側面を含むものであるところ、引用発明1の「胴体」も、主翼18に隣接した側面を有するものといえる(摘示(2f))。
(b) そうすると、引用発明1の「航空機10は、胴体を有」することは、本願発明1の「第1の部分(112)と第2の部分(114)とを備えた胴体(110)」を「有する」ことに相当する。
c 引用発明1の「胴体の両側に主翼18、18が設けられており、主翼18、18のそれぞれにはスポイラー13が設けられ」ることは、
(a) 本願発明1の「第1のウィングセクション(120a)が該胴体(110)に結合され、第1の制御表面(142a)が第1のウィングセクション(120a)に結合され、第2のウィングセクション(120b)が第1のウィングセクション(120a)とはほぼ反対に該胴体(110)に結合され、第2の制御表面(142b)が第2のウィングセクション(120b)に結合され」ること、及び、「該制御表面(142)が第1の制御表面(142a)を含み、該システムはさらに、第2の制御表面(142b)を有する」ことに相当し、
(b) また、航空機が一般に左右対称な形状を有すること、及び、引用文献1の記載全体からも航空機が非対称な形状であることが伺えないことに照らして、本願発明1の「第1と第2の制御表面(142a、142b)が該胴体(110)に対して少なくとも略対称に位置」することに相当し、
(c) さらに、本願発明1の「前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって3分の1内に位置したスポイラであ」ることと、「前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって所定の位置に位置したスポイラであ」る限度で一致する。
d 技術常識に照らして、引用発明1の「主翼18、18」の上面はほぼ水平面をなすといえるから、引用発明1の「スポイラー13は収納時において、主翼18の上面と同一面をな」すことは、本願発明1の「可動な制御表面(142)」及び「第2の制御表面(142b)」が「収納されたとき、略水平面に広が」ることに相当する。
e 引用発明1の「スポイラー13はエルロンを補助しながら左右非対称的に動作するものであ」ることは、本願発明1の「該宇宙航空機(101)が流れ場(F)に位置したとき該制御表面(142)は偏向位置に可動であ」ること、及び、「第1の制御表面(142a)が該偏向位置に置かれたとき、第2の制御表面(142b)が選択された位置に位置づけ可能であ」ることに相当する。
f 引用発明1の「ヨートルクを増大させるため、一つあるいは複数のスポイラー13は、偏向した全ての表面(エルロン、制御表面、スポイラー)によって発生したロールトルクが最小となるよう、前記主翼上で上方に偏向することも可能である」との事項に関し、
(a) 引用発明1においては「ヨートルクを増大させるため」に「一つあるいは複数のスポイラー13は、」「偏向する」のであるから、引用発明1の「一つあるいは複数のスポイラー13」は本願発明1の「ヨー発生システム(100)」「を有する」ことに相当する。
(b) また、上記事項は、本願発明1の「第1の制御表面(142a)の該偏向位置において、かつ第2の制御表面(142b)の該選択された位置において、第1の制御表面(142a)は、いくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させ、圧力差(P1)を発生するように流れパターンを生成するように位置づけられ」、「該スポイラの制御によってのみ、該流れパターン、該圧力差(P1)及び該ヨーモーメント(Ym1)が生成される」ことと、「第1の制御表面(142a)の該偏向位置において、かつ第2の制御表面(142b)の該選択された位置において」、「該ヨーモーメント(Ym1)が生成される」限度で一致する。

(イ) 以上によれば、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「第1の部分と第2の部分とを備えた胴体とヨー発生システムとを有する宇宙航空機であって、該ヨー発生システムは
可動な制御表面であって、収納されたとき、略水平面に広がり、該宇宙航空機が流れ場に位置したとき該制御表面は偏向位置に可動であり、
該制御表面が第1の制御表面を含み、
該システムはさらに、第2の制御表面を有し、収納されたとき、略水平面に広がり、第1と第2の制御表面が該胴体に対して少なくとも略対称に位置し、第1の制御表面が該偏向位置に置かれたとき、第2の制御表面が選択された位置に位置づけ可能であり、
第1のウィングセクションが該胴体に結合され、第1の制御表面が第1のウィングセクションに結合され、
第2のウィングセクションが第1のウィングセクションとはほぼ反対に該胴体に結合され、第2の制御表面が第2のウィングセクションに結合され、
第1の制御表面の該偏向位置において、かつ第2の制御表面の該選択された位置において、
前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって所定の位置に位置したスポイラであり、
ヨーモーメントが生成されることを特徴とする、宇宙航空機。」

[相違点1]
スポイラ(第1及び第2の制御表面)の位置に関し、本願発明1においては、「胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって3分の1内に位置」したものであるのに対し、引用発明1においては、そのように特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1では、可動な制御表面(142)は、「該制御表面(142)が該胴体(110)に隣接した流れパターンを発生するように位置し、該胴体(110)の第1の部分(112)と該胴体(110)の第2の部分(114)との間で、該流れパターンが圧力差(P1)を発生するように位置」するものであって、また、第1の制御表面(142a)の該偏向位置において、かつ第2の制御表面(142b)の該選択された位置において、「第1の制御表面(142a)は、いくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させ、圧力差(P1)を発生するように流れパターンを生成するように位置づけられ」、「該スポイラの制御によってのみ、該流れパターン、該圧力差(P1)及び該ヨーモーメント(Ym1)が生成される」ものであって、さらに、第1と第2の部分とは、「該圧力差(P1)が該宇宙航空機(101)上にヨーモーメント(Ym1)を生成するように位置した」ものであるのに対し、引用発明1のスポイラー13と、主翼18に隣接した胴体の側面(上記「(ア)b」参照)とは、そのように特定されたものではない点。

(ウ) 判断
a 理由2に関し、本願発明1と引用発明1の間には、上記のとおり相違点1及び2が存在するから、本願発明1は引用文献1に記載された発明(引用発明1)ではない。
b 理由3に関し、事案に鑑み、相違点2について判断する。
引用発明1の航空機10は、スポイラー13の偏向によって「主翼に追加の抗力を提供し、それによって機体にヨートルクが提供され」るものであるから、そのヨートルクは主翼上に生じる抗力の差に起因するものといえる。そして、胴体に圧力差を生じさせて当該圧力差によってヨーモーメントを生成させることは引用文献1には記載も示唆もされていない。
また、相違点2に係る本願発明1の事項は、以下で検討するように引用文献2にも記載も示唆もされていない。よって、引用発明1、引用文献1に記載の事項及び引用文献2に記載の事項に基いて相違点2に係る本願発明1の事項に想到することは当業者が容易になし得ることではない。

(エ) まとめ
以上より、本願発明1は、引用文献1に記載された発明(引用発明1)ではないし、また、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明1、引用文献1に記載の事項及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない。

イ 引用発明2を主引用例とした場合
(ア) 本願発明1と引用発明2を対比する。
a 引用発明2の「無尾翼機」及び「機体16」は本願発明1の「宇宙航空機 (101)」に相当し、以下同様に、「ヨー・モーメントをもたらすヨー制御装置」は「ヨー発生システム(100)」に、「胴体」は「胴体(110)」に、「スポイラー12」は「可動な制御表面(142)」及び「スポイラ」に、「ヌル位置から全展開位置の間の任意の位置」は「偏向位置」に、「ヨー・モーメント」は「ヨーモーメント(Ym1)」に、「一方の主翼18」は「第1のウィングセクション(120a)」に、「他方の主翼18」は「第2のウィングセクション(120b)」に相当する。
b
(a) 上記「ア(ア)b(a)」で検討したのと同様に、引用発明2の「胴体」も、主翼18に隣接した側面を有するものといえる(摘示(2g)Fig.1)。そうすると、引用発明2の「機体16は胴体を有」することは、本願発明1の「胴体(110)」が「第1の部分(112)と第2の部分(114)」「を有する」ことに相当する。
(b) そうすると、引用発明2の「ヨー・モーメントをもたらすヨー制御装置を搭載した主翼を備えた無尾翼機であって、機体16は胴体を有」することは、本願発明1の「第1の部分(112)と第2の部分(114)とを備えた胴体(110)とヨー発生システム(100)とを有する宇宙航空機 (101)であ」ることに相当する。
c 引用発明2の「機体16は胴体を有し、その両側に主翼18を備え、両側の主翼18には、ヨー制御装置10が搭載され、ヨー制御装置10にはスポイラー12とディフレクター14が含まれ」ることは、
(a) 本願発明1の「第1のウィングセクション(120a)が該胴体(110)に結合され、第1の制御表面(142a)が第1のウィングセクション(120a)に結合され、第2のウィングセクション(120b)が第1のウィングセクション(120a)とはほぼ反対に該胴体(110)に結合され、第2の制御表面(142b)が第2のウィングセクション(120b)に結合され」ることに相当し、
(b) また、航空機が一般に左右対称な形状を有すること、及び、引用文献2の記載全体からも無尾翼機が非対称な形状であることが伺えないことに照らして、本願発明1の「第1と第2の制御表面(142a、142b)が該胴体(110)に対して少なくとも略対称に位置」することに相当し、
(c) さらに、本願発明1の「前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって3分の1内に位置したスポイラであ」ることと、「前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって所定の位置に位置したスポイラであ」る限度で一致する。
d
(a) 引用発明2の「スポイラー12のヌル位置は、主翼18の上面と同じ面であり、当該上面は、略水平面であ」ることは、本願発明1の「可動な制御表面(142)であって、収納されたとき、略水平面に広が」ることに相当する。
(b) 引用発明2において、スポイラー12はヨー制御装置10をなすものであって、当該ヨー制御装置10は「両側の主翼18に」「搭載され」ているから、引用発明2の「ヨー制御装置10にはスポイラー12」「が含まれ」ることは、本願発明1の「制御表面(142)が第1の制御表面(142a)を含み、該システムはさらに、第2の制御表面(142b)を有」することに相当し、また、引用発明2の上記「(a)」の事項は、本願発明1の「第2の制御表面(142b)を有し、収納されたとき、略水平面に広が」ることにも相当する。
e 引用発明2において、「一方の主翼18のスポイラー12およびディフレクター14の展開位置と、他方の主翼18のスポイラー12およびディフレクター14の展開位置とが異なる」ことは、本願発明1の「宇宙航空機(101)が流れ場(F)に位置したとき該制御表面(142)は偏向位置に可動であ」ること、及び、「第1の制御表面(142a)が該偏向位置に置かれたとき、第2の制御表面(142b)が選択された位置に位置づけ可能であ」ることに相当する。
f 引用発明2の「スポイラー12は気流を主翼18から阻害し、マイナスの揚力を生むものであり、一方の主翼18のスポイラー12およびディフレクター14の展開位置と、他方の主翼18のスポイラー12およびディフレクター14の展開位置とが異なるとき、一方の主翼に負荷される抗力に偏りが生じるため、ヨー・モーメントが機体に付与される」ことは、本願発明1の「第1の制御表面(142a)の該偏向位置において、かつ第2の制御表面(142b)の該選択された位置において、第1の制御表面(142a)は、いくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させ、圧力差(P1)を発生するように流れパターンを生成するように位置づけられ、」「該スポイラの制御によってのみ、該流れパターン、該圧力差(P1)及び該ヨーモーメント(Ym1)が生成される」ことと、「第1の制御表面(142a)の該偏向位置において、かつ第2の制御表面(142b)の該選択された位置において」、「該ヨーモーメント(Ym1)が生成される」限度で一致する。

(イ) 以上によれば、本願発明1と引用発明2との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「第1の部分と第2の部分とを備えた胴体とヨー発生システムとを有する宇宙航空機であって、該ヨー発生システムは
可動な制御表面であって、収納されたとき、略水平面に広がり、該宇宙航空機が流れ場に位置したとき該制御表面は偏向位置に可動であり、
該制御表面が第1の制御表面を含み、
該システムはさらに、第2の制御表面を有し、収納されたとき、略水平面に広がり、第1と第2の制御表面が該胴体に対して少なくとも略対称に位置し、第1の制御表面が該偏向位置に置かれたとき、第2の制御表面が選択された位置に位置づけ可能であり、
第1のウィングセクションが該胴体に結合され、第1の制御表面が第1のウィングセクションに結合され、
第2のウィングセクションが第1のウィングセクションとはほぼ反対に該胴体に結合され、第2の制御表面が第2のウィングセクションに結合され、
第1の制御表面の該偏向位置において、かつ第2の制御表面の該選択された位置において、
前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって所定の位置に位置したスポイラであり、
ヨーモーメントが生成されることを特徴とする、宇宙航空機。」

[相違点3]
スポイラ(第1及び第2の制御表面)の位置に関し、本願発明1においては、「胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって3分の1内に位置」したものであるのに対し、引用発明2においては、そのように特定されていない点。

[相違点4]
本願発明1では、可動な制御表面(142)は、「該制御表面(142)が該胴体(110)に隣接した流れパターンを発生するように位置し、該胴体(110)の第1の部分(112)と該胴体(110)の第2の部分(114)との間で、該流れパターンが圧力差(P1)を発生するように位置」するものであって、また、第1の制御表面(142a)の該偏向位置において、かつ第2の制御表面(142b)の該選択された位置において、「第1の制御表面(142a)は、いくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させ、圧力差(P1)を発生するように流れパターンを生成するように位置づけられ」、「該スポイラの制御によってのみ、該流れパターン、該圧力差(P1)及び該ヨーモーメント(Ym1)が生成される」ものであって、さらに、第1と第2の部分とは、「該圧力差(P1)が該宇宙航空機(101)上にヨーモーメント(Ym1)を生成するように位置した」ものであるのに対し、引用発明2のスポイラー12と、主翼18に隣接した胴体の側面(上記「(ア)b」参照)とは、そのように特定されたものではない点。

(ウ) 判断
a 理由2に関し、本願発明1と引用発明2の間には、上記のとおり相違点3及び4が存在するから、本願発明1は引用文献2に記載された発明(引用発明2)ではない。
b 理由3に関し、事案に鑑み、相違点4について判断する。
引用発明2においては、「スポイラー12は気流を主翼18から阻害し、マイナスの揚力を生む」ことによって、「一方の主翼に負荷される抗力に偏りが生じるため、ヨー・モーメントが機体に付与される」ものであるから、そのヨー・モーメントは主翼上に生じる抗力の差に起因するものである。そして、胴体に圧力差を生じさせて当該圧力差によってヨーモーメントを生成させることは引用文献2には記載も示唆もされていない。
また、相違点4に係る本願発明1の事項は、先に検討したように引用文献1にも記載も示唆もされていない。よって、引用発明2、引用文献1に記載の事項及び引用文献2に記載の事項に基いて相違点4に係る本願発明1の事項に想到することは当業者が容易になし得ることではない。

(エ) まとめ
以上より、本願発明1は、引用文献2に記載された発明(引用発明2)ではないし、また、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明2、引用文献1に記載の事項及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない。

(4) 小括
ア 以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載された発明(引用発明1)ではないし、引用文献2に記載された発明(引用発明2)でもない。また、本願発明1は、引用発明1、引用発明2、引用文献1に記載の事項及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない。
イ 本願発明2は、実質的に本願発明1を方法の発明としたものであるから、上記「(3)」で検討したのと同様に、引用文献1に記載された発明(引用発明1)ではないし、引用文献2に記載された発明(引用発明2)でもない。また、本願発明2は、引用発明1、引用発明2、引用文献1に記載の事項及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない。
ウ よって原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1) 当審拒絶理由1について
[理由A]この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由B]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。



ア 理由Aについて
請求項1及び2の「第1の制御表面(142a、842a)」が「いくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させ、圧力差(P1)を発生するように流れパターンを生成する」との記載に関し、
(ア) 明細書及び図面の記載が不明確であることにより、上記記載の具体的態様を技術常識に照らしても理解することができない。
(イ) 図4等に記載される「流れ線」は、胴体よりもむしろ垂直尾翼(流れ体102)に対して圧力差を発生させているようにも看取されるところ、胴体単体で(垂直尾翼の影響がない場合でも)圧力差が発生することについては発明の詳細な説明に記載されていないし、技術常識に照らしても理解することができない。
(ウ) 技術常識に鑑みれば、胴体から一定距離以上離れた流れ場の変化は、胴体に影響を及ぼさないものと認められるが、請求項1及び2においては「第1の制御表面」の胴体からの距離は特定されていないところ、上記記載に関して、胴体からの距離に無関係に流れパターン等を生成できることの合理的な理由は発明の詳細な説明には記載されていないし、技術常識に照らしても理解することができない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及び2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

イ 理由Bについて
(ア) 請求項1について
a 「移動可能な制御表面」との記載は、例えば制御表面がウィングセクション上でその設置位置が移動するもののようにも解されるから、当該記載の意味が不明確である。
b 「該宇宙航空機が(101;801)が流れ場(F)に」は誤記と認められる。
c 「第2の可動な制御表面」と「第2の制御表面」との記載が整合しておらず、同じものを指すものかどうか不明確である。
d 「第2の翼部分」と「第2のウィングセクション」との記載が整合しておらず、同じものを指すものかどうか不明確である。
e 「第1の制御表面(142a、842a)が第1のウィングセクション(120a;820)に結合され」との記載、及び、「第2の制御表面(142b、842b)が第2の翼部分(120b;820)に結合され」との記載に関し、請求項1のそれぞれの発明特定事項に付された数字のうち、800番台のものは図8及び9に係るものであるが、図8及び9のものは「制御表面」が「ウィングセクション(第2の翼部分)」に「結合」されたものでないから、当該番号の存在によって、上記記載の意味が不明確なものとなっている(請求項の記載から800番台の数字をすべて削除することも一案である)。
(イ) 請求項2について
a 「ヨー発生システム(100、800)を作る方法」との記載は、製造方法を意味するように解されるから、その意味が不明確な記載である。
b
(a) 「移動可能である制御表面(142;842)」との記載は上記「(ア)a」と、
(b) 「該宇宙航空機が(101;801)が流れ場(F)に」との記載は上記「(ア)b」と、
(c) 「第1(第2)の可動制御表面」、「第1(第2)の制御表面」との記載は上記「(ア)c」と、
(d) 「第1の可動制御表面(142a、842a)を第1のウィングセクション(120a;820)に結合する」との記載、及び、「第2の可動制御表面(142b、842b)を第2のウィングセクション(120b;820)に結合する」との記載は上記「(ア)e」と、
それぞれ同様の理由により当該記載の意味が不明確である。
よって、請求項1及び2に係る発明は明確でない。

(2) 当審拒絶理由2について
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。



請求項2の「移動可能である制御表面(142)を位置づけることを含んでおり」との記載は、他の記載(例えば「可動な制御表面(142)」との記載)と整合したものでないから、当該記載の意味が不明確である。

2 当審拒絶理由1及び2の判断
平成29年1月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2によって、当審拒絶理由1及び2は解消した。
そうすると、もはや、当審拒絶理由1及び2によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由1及び2によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2012-244567(P2012-244567)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (B64C)
P 1 8・ 537- WY (B64C)
P 1 8・ 121- WY (B64C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北村 亮畔津 圭介  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 小原 一郎
一ノ瀬 覚
発明の名称 航空宇宙機ヨー発生システムおよび関連方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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