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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1326372 |
審判番号 | 不服2016-10311 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-07 |
確定日 | 2017-04-04 |
事件の表示 | 特願2014-512818「対象のあいまい性の除去及び修正」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日国際公開、WO2012/166173、平成26年 7月24日国内公表、特表2014-517975、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年(平成23年)10月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年(平成23年)5月27日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成27年9月25日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年12月24日付けで手続補正がなされたが、平成28年3月1日付けで拒絶査定がなされた。これを不服として平成28年7月7日に本件審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年7月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 1.補正却下の決定の結論 平成28年7月7日付けの手続補正を却下する。 2.補正却下の決定の理由 (1)補正の内容 平成28年7月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに補正する補正事項を含む。 [本件補正後の請求項1] ディスプレイ上に表示された画面内のいずれかの項目に対する選択をアプリケーションを介して受け取るステップと、 前記画面において前記選択に関連するターゲット点を定めるステップと、 前記ターゲット点に関連する幾何学形状を定めるステップと、 複数の項目が前記幾何学形状の境界内に含まれていることに応答して、対象のあいまい性の除去を実行するステップであって、該対象のあいまい性の除去は、 前記ターゲット点の前記画面上の位置において表示されている前記複数の項目のうちの1つに関連する視覚的な印を表示するステップと、 ユーザによって指定される項目に関連する入力を受け取るステップと、 前記入力から前記画面における前記選択の移動が検出される場合に、該移動に従って前記ターゲット点を移動させ、該移動されたターゲット点が依然として前記幾何学形状の境界内にあるかどうかを判定するステップと、 前記移動されたターゲット点が前記幾何学形状の境界内にない場合に、前記対象のあいまい性の除去を終了し、前記移動されたターゲット点の前記画面上の位置において表示されている項目を最終の選択として定め、該最終の選択に関連した動作が実行され得るようにするステップと を有するステップと を有する方法。 (2)本件補正の適否の判断 本件補正後の請求項1に記載された事項の内、「前記移動されたターゲット点が前記幾何学形状の境界内にない場合に、前記対象のあいまい性の除去を終了し、前記移動されたターゲット点の前記画面上の位置において表示されている項目を最終の選択として定め、該最終の選択に関連した動作が実行され得るようにするステップ」は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、「翻訳文等」という)に記載されていない。 当該ステップの前半部分の「前記移動されたターゲット点が前記幾何学形状の境界内にない場合に、前記対象のあいまい性の除去を終了し、」に関しては、明細書の翻訳文に次のように記載されている。 「【0003】 種々の実施形態は、対象のあいまい性の除去及び修正を可能にする。1又はそれ以上の実施形態において、対象のあいまい性の除去は、ユーザによって選択された1又はそれ以上の対象のあいまいさをなくそうと試みられるエントリモードと、対象のあいまい性の除去を終了するイグジットモードとを含む。エントリモードは、限定されない例として、複数の対象の取得、選択レイテンシー、複数の対象の取得と選択レイテンシーとの組み合わせ、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。イグジットモードは、限定されない例として、定義されている幾何図形的外形の外への対象選択メカニズムの移動、対象選択メカニズムの移動の速度、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。」 「【0007】 種々の実施形態は、対象のあいまい性の除去及び修正を可能にする。1又はそれ以上の実施形態において、対象のあいまい性の除去は、ユーザによって選択された1又はそれ以上の対象のあいまいさをなくそうと試みられるエントリモードと、対象のあいまい性の除去を終了するイグジットモードとを含む。エントリモードは、限定されない例として、複数の対象の取得、選択レイテンシー、複数の対象の取得と選択レイテンシーとの組み合わせ、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。例えば、複数の対象は、例えば、ユーザの指がタッチスクリーン環境において2又はそれ以上の対象と重なり合う場合に、取得され得る。選択レイテンシーは、例えば、ユーザの指が1又はそれ以上のタッチ選択対象の上に(例えば、2秒以上)長居する場合に、起こることができる。 【0008】 イグジットモードは、限定されない例として、定義されている幾何図形的外形の外への対象選択メカニズムの移動、対象選択メカニズムの移動の速度、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。」 「【0018】 対象あいまい性除去モジュール106は、対象のあいまい性の除去及び修正を可能にするために利用され得る。1又はそれ以上の実施形態において、対象のあいまい性の除去は、ユーザによって選択された1又はそれ以上の対象のあいまいさをなくそうと試みられるエントリモードと、対象のあいまい性の除去を終了するイグジットモードとを含む。エントリモードは、限定されない例として、複数の対象の取得、選択レイテンシー、複数の対象の取得と選択レイテンシーとの組み合わせ、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。イグジットモードは、限定されない例として、定義されている幾何図形的外形の外への対象選択メカニズムの移動、対象選択メカニズムの移動の速度、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。1又はそれ以上の実施形態において、対象のあいまい性の除去の技術は、いつ対象のあいまい性の除去を開始し且つ対象のあいまい性の除去を終了すべきかを定義するために、幾何図形的外形に基づくアプローチを利用する。」 「【0027】 [対象のあいまい性の除去] 上述されたように、種々の実施形態は、対象のあいまい性の除去及び修正を可能にする。1又はそれ以上の実施形態において、対象のあいまい性の除去は、ユーザによって選択された1又はそれ以上の対象のあいまいさをなくそうと試みられるエントリモードと、対象のあいまい性の除去を終了するイグジットモードとを含む。エントリモードは、限定されない例として、複数の対象の取得、選択レイテンシー、複数の対象の取得と選択レイテンシーとの組み合わせ、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。例えば、複数の対象は、例えば、ユーザの指がタッチスクリーン環境において2又はそれ以上の対象と重なり合う場合に、取得され得る。選択レイテンシーは、例えば、ユーザの指が1又はそれ以上のタッチ選択対象の上に(例えば、2秒以上)長居する場合に、起こることができる。イグジットモードは、限定されない例として、定義されている幾何図形的外形の外への対象選択メカニズムの移動、対象選択メカニズムの移動の速度、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。」 「【0051】 このとき、ユーザが指を動かしたとすると、相応して、ターゲット点1004は、幾何学形状1006の境界外の位置へ動かされる。これは、項目の4行目において図式的に表されている。1又はそれ以上の実施形態において、これが起こる場合に、下にある項目に対する項目選択は終了され得る。ここでの前提は、ユーザが指をその最初の位置から十分遠くに動かす場合に、ユーザの指の下にある項目は、選択されることを目的としない。」 「【0054】 ステップ1112は、タッチ選択入力の移動を検出する。これは、例えば、もともと位置していた位置に対するユーザの指の移動を検出することによって、行われ得る。これが起こる場合に、最初に定められたターゲット点も指とともに移動する。ステップ1114は、ターゲット点が形状の境界内にあるかどうかを確かめる。ターゲット点が形状の境界内にある場合は、ステップ1116は対象のあいまい性の除去を開始する。その場合に、方法は、ステップ1112へ戻ることができ、あるいは、ユーザが特定の選択を行うことに応答して終了することができる。他方で、ターゲット点が形状の境界内にない場合は、ステップ1118は対象のあいまい性の除去を終了する。 【0055】 1又はそれ以上の実施形態において、対象のあいまい性の除去が、形状の境界外へのターゲット点の移動のために終了される場合に、パニング機能が、ユーザが表示コンテンツをパンすることを可能にするよう有効にされ得る。」 「【0064】 [結び] 種々の実施形態は、対象のあいまい性の除去及び修正を可能にする。1又はそれ以上の実施形態において、対象のあいまい性の除去は、ユーザによって選択された1又はそれ以上の対象のあいまいさをなくそうと試みられるエントリモードと、対象のあいまい性の除去を終了するイグジットモードとを含む。エントリモードは、限定されない例として、複数の対象の取得、選択レイテンシー、複数の対象の取得と選択レイテンシーとの組み合わせ、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。イグジットモードは、限定されない例として、定義されている幾何図形的外形の外への対象選択メカニズムの移動、対象選択メカニズムの移動の速度、等を含む多種多様な方法において、トリガされ得る。」 これらの段落には、ターゲット点が幾何学形状の境界外に移動する場合に対象のあいまい性の除去を終了することは記載されているが、そのときに、「前記移動されたターゲット点の前記画面上の位置において表示されている項目を最終の選択として定め、該最終の選択に関連した動作が実行され得るようにする」ことは全く記載されていない。 段落【0055】には、「対象のあいまい性の除去が・・・終了される場合に、パニング機能が、ユーザが表示コンテンツをパンすることを可能にするよう有効にされ得る」と記載されているが、この記載は、請求項1に記載の「前記移動されたターゲット点の前記画面上の位置において表示されている項目を最終の選択として定め、該最終の選択に関連した動作が実行され得るようにする」ことを意味するものではない。 また、【0051】には、「ユーザが指を動かしたとすると、・・・ターゲット点1004は、幾何学形状1006の境界外の位置へ動かされる。・・・これが起こる場合に、下にある項目に対する項目選択は終了され得る。ここでの前提は、ユーザが指をその最初の位置から十分遠くに動かす場合に、ユーザの指の下にある項目は、選択されることを目的としない。」と、境界外では項目の選択をしないこと、すなわち、請求項1の「項目を最終の選択として定め」との記載とは逆の内容が記載されている。 したがって、上記補正事項は、翻訳文等に記載されていないから、本件補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 原査定の概要 原査定(平成28年3月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-11に係る発明は、特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が引用文献1(国際公開第2009/044770号)に記載された発明及び引用文献2(特開2007-334025号公報)に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 本願発明について 1.本願発明1 上述のとおり平成28年7月7日付けの手続補正は却下されるので、本願の請求項1-11に係る発明は、平成27年12月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は、次のとおりのものである。 [本願発明1] 「ディスプレイ上に表示された画面内のいずれかの項目に対する選択をアプリケーションを介して受け取るステップと、 前記画面において前記選択に関連するターゲット点を定めるステップと、 前記ターゲット点に関連する幾何学形状を定めるステップと、 複数の項目が前記幾何学形状の境界内に含まれていることに応答して、対象のあいまい性の除去を実行するステップであって、該対象のあいまい性の除去は、 前記複数の項目のうちの1つに関連する視覚的な印を表示するステップと、 ユーザによって指定される項目に関連する入力を受け取るステップと、 前記ユーザによって指定される項目に関連する前記入力を受け取ったことに応答して、前記選択に関連した動作を実行するステップと を有するステップと、 前記画面における前記選択の移動を検出することに応答して、該移動に従って前記ターゲット点を移動させ、該ターゲット点が依然として前記幾何学形状の境界内にある場合は前記対象のあいまい性の除去を続け、前記ターゲット点がもはや前記幾何学形状の境界内にない場合は前記対象のあいまい性の除去を終了するステップと を有する方法。」 2.引用文献の記載事項 (1)引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用した引用文献1には、図面とともに次の技術事項が記載されている。なお、下線は、特に注目した箇所を示すために当審で付したものである。 「[0040] 以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。 [0041] まず、本実施の形態の構成について説明する。 [0042] 図1は、通話機能、データ通信機能、および、マークアップ言語文書の表示処理を行うWebブラウザ機能を備えた端末装置の一例としての携帯端末100の概略構成を示したブロック図である。この携帯端末100は、筐体10内に、スピーカ11、タッチパネルの機能を備えた表示デバイス15、マイク16、操作ボタン17?19を内蔵した、いわゆるスマートフォンと呼ばれる多機能の携帯電話端末である。ハードウェアのキーボードやテンキー等は備えておらず、文字入力が必要な場合には表示デバイス15の表示画面上にソフトウェアキーボード(図示せず)を表示してタッチ入力を行うことができる。 [0043] 図2は、携帯端末100の概略の内部構成を示すブロック図である。携帯端末100は、制御部101、信号処理部102、画像処理部103、表示部104、マイク105、スピーカ106、入力部107、通信部108、RTC(Real Time Clock)部109、記憶部110を備える。 [0044] 制御部101はCPUを含み、プログラム制御により装置全体の制御を司る。 [0045] 信号処理部102は、制御部101の制御下で、マイク105(図1の16に対応)からの音声入力をデジタル化して制御部101へ受け渡したり、制御部101からの音声出力データ(本実施の形態における操作音を含む)をアナログ化してスピーカ106(図1の11に対応)へ出力したり、画像処理部103と信号を授受したりする各種の信号処理を行う部位である。 [0046] 画像処理部103は、信号処理部102からの表示データを受け取り、表示部104に表示させる機能を有する。画像処理部103はグラフィック処理をサポートする表示LSIにより構成することができる。 [0047] 表示部104は、図1に示した、液晶ディスプレイ(LCD)、有機EL等の表示デバイス15を含み、ユーザに対して文字、図形、画像等の情報を表示する。特に本実施の形態では、HTML等のマークアップ言語で記述された文書であるWebページを表示する。Webページの表示情報は、通常、文字、図形、画像を含みうるが、本明細書ではそれら全体を単に表示画像または画像ともいう。 [0048] 入力部107は、図1に示した操作ボタン17?19の他、タッチパネル(タッチ入力部)を含み、指によるユーザからの指示操作やデータの入力を受け、制御部101へ受け渡す機能を有する。本実施の形態では、タッチパネルの入力範囲は表示部104の表示画面の全面に亘っている。但し、全面に亘る必要は必ずしもなく、表示画面上の一部の領域のみタッチパネルがカバーするものであってもよい。 [0049] 通信部108は、通話やデータ通信を行うための部位であり、アンテナ(図示せず)を介して基地局との間で電波による無線インタフェース経由で通信を行う。インターネットへの接続は、この通信部108を介して行うことができるが、図示しない他の通信部(例えば無線LAN通信部)を介して行ってもよい。 [0050] RTC部109は日時情報の出力機能およびタイマー機能を有する。 [0051] 記憶部110はROM111およびRAM113を含む。この他、ハードディスク装置等、他の記憶装置を含んでもよい。ROM111は制御部101のCPUが実行する各種プログラムや必要なデータを格納する不揮発性メモリであり、再書き込み可能な領域を含む。RAM113はCPUのための作業用領域やデータの一時記憶領域を提供するメモリである。本実施の形態におけるWebページのデータ等はこのRAM113に格納される。 [0052] 上記の他、図示しないが、ハードウェアキーボード、GPS(Global Positioning System)受信部、Bluetooth(登録商標)通信部、無線LAN通信部、カメラ撮影部、TV受信部、等を備えてもよい。 [0053] 図3は、図2に示した携帯端末100の主要な機能を示す機能ブロック図である。 [0054] 制御部101により実現される機能として、タッチ位置座標処理部131、ブラウザ処理部132、リンク有効領域関連処理部133、スクロール処理部134、メニュー処理部135を備える。 [0055] タッチ位置座標処理部131は、タッチパネルに対してユーザがタッチしたこと、および、その位置(タッチ位置)の座標を検出する機能部である。好ましくは、同時にタッチ状態にある複数のタッチ位置の検出、および、1つのタッチ位置のタッチ面積も検出できる型のものである。但し、これらの追加的な機能は本実施の形態の主要な特徴においては必須のものではない。タッチ位置座標処理部131は、入力部113に対するユーザのタッチ操作に応じて検出されたタッチ位置座標等の情報をブラウザ処理部132、リンク有効領域関連処理部133、スクロール処理部134およびメニュー処理部135へ与える。また、記憶部110に少なくとも最新のタッチ位置および過去の変化のデータを履歴データとして保存する。 [0056] ブラウザ処理部132は、記憶部110からマークアップ言語で記述された文書データを受けてこれを解析し、表示画面に表示する表示データを生成する機能部であり、所定のタグ(例えばアンカータグ)で記述されるリンク設定箇所の確認およびリンク設定箇所へのタッチに基づくリンク先への移行の機能を含む。 [0057] リンク有効領域関連処理部133は、リンク有効領域に関連した処理として、タッチ位置座標処理部131の出力に応じて、所定の条件下で、リンク有効領域の設定、表示および消去等の処理を行う部位である。この処理には、後述する初期位置(マーク)の設定、表示および消去の処理、さらには後述するリンク情報表示領域の表示および消去も含まれる。 [0058] スクロール処理部134は、タッチ位置座標処理部131の出力に応じて、所定の条件下でブラウザ画面内の表示画像全体を移動させる(すなわちスクロールさせる)処理を行う。 [0059] メニュー処理部135は、本実施の形態の追加的な特徴として、リンク有効領域と組み合わせて複数のメニュー項目を表示し、ユーザの選択に供する処理を行う部位である。 [0060] 以下、具体的な表示画面例を示しながら、本実施の形態の主要な動作例および付加的な動作例や変形例について順次説明する。 [0061] 図4は、図1に示した携帯端末100の表示デバイス15の表示画面300の表示例を示している。この表示画面300において、上辺部の横長帯状の領域310は、携帯電話の電波の受信強度、時刻、電池残量等の表示を行うエリアである。その下の横長帯状の領域320と、さらにその下の主要領域330がブラウザ画面である。少なくともブラウザ画面の全体がタッチパネル領域となっている。 [0062] 領域320は、主要領域330に現在表示されているWebページのタイトルを表示するタイトル表示領域321と、操作領域322とを含んでいる。この例では操作領域322にはこの位置をタッチすると、操作領域322が領域320内で拡大され、そこに他の操作用ボタン等(図示せず)が表示されるようになっている。 [0063] 主要領域330には、例えばPC用のWebサイトにアクセスして得られるような、画面からはみ出す大きなサイズのWebページの一部(左上部分)を表示した例を示している。図のWebページの左側の「製品概要」「OS」「Browser」「サービス」「ダウンロード」等の各文字列、および中央から右下の「Platform」「Browser」「サービス」「ip…」等の各文字列にはそれぞれリンクが設定されているものとする。図中に四角マーク(□)で示す各図形にもリンクが設定されていてもよい。このようなリンクの設定された文字や図形等の位置に有効なタッチが行われると、そのリンク設定箇所のリンク先への移行が行われ、現在のWebページに代えて、リンク先のWebページが表示される。 [0064] 図5は、本実施の形態における主要な動作例の説明図である。この図の画面300aは図4に示したものと同じである。今、画面300aに対してユーザが指350で、画面左上部のリンク設定箇所「Browser」にタッチして、その内容を示す画面へ移行しようとしたとする。このとき、タッチ位置を含む所定範囲を定めるリンク有効領域360が表示される。本明細書における「リンク有効領域」とは、タッチされた位置を含む所定範囲を定めるリンク有効領域内でのみリンクの選択を許容するためのものである。リンク有効領域を表示するのは、タッチパネルへのタッチが行われたとき、リンク有効領域をユーザが識別できるようにするためである。この例では、リンク有効領域360の表示例として、タッチ位置を中心とした予め定めた半径の円を表示するようにしている。 [0065] リンク有効領域360の具体的な表示形態としては、この円内を強調する表示形態としてもよい。円内の強調表示としては、円内の高輝度(ハイライト)表示、円外の低輝度表示、円内の反転表示、円内の色変化表示、等が考えられる。また、リンク有効領域360の形状は円形としたが、円形に限るものではなく、例えば、楕円形、四角形、五角形以上の多角形、等が考えられる。リンク有効領域360のサイズは、予め定めた固定サイズでもよいが、後述するように所定の条件下で可変としてもよい。あるいは、ユーザが初期設定において複数のサイズから選択できるようにしてもよい。 [0066] 指350のタッチにより指示されていると判断されたリンクについてはそのリンク情報が、リンク情報表示領域340内に表示される。これにより、タッチした文字列が指で隠れて認識しづらいような場合でも、タッチしたリンクが所望のものかどうかを容易に確認することができる。 [0067] この例ではリンク情報表示領域340は固定位置(図の例では主要領域330の上辺部)に一時的にウィンドウとして表示するものである。リンク情報表示領域340の位置はこの位置に限るものではない。タッチ位置の近傍位置等、リンク情報表示領域340の位置はダイナミックに変化するものであってもよい。 [0068] 図の例では、制御部により、指350のタッチ位置が「Browser」の上隣のリンク設定箇所「OS」に属すると判断され、リンク情報表示領域340内には「OS」が表示されている。 [0069] この状態で、ユーザは、このリンクが目的のリンクではないと判断し、画面300bに示すように、指350をタッチしたまま下側にずらしていく。次のリンク設定箇所にタッチ位置が移動したとき、リンク情報表示領域340内に文字列「Browser」が表示される。そこで、ユーザは目的のリンクが指示できたと判断して指350を画面から離す。このタッチ離脱を契機としてリンクの選択が完了し、直前までタッチ状態にあった当該リンクのリンク先への移行が行われる。図6にリンク先の画面300cの例を示す。この画面300cでは、タイトル表示領域321の表示が「Browser」に変わっている。主要領域330の左上部の文字列群は画面300aと同じであるが、現在選択されているリンクが太文字で表示されている。このようにブラウザ画面をフレームと呼ばれる複数の領域に分割すれば、フレーム毎の表示切り替えが可能となるが、本発明においてフレーム表示は必須の要素ではない。 [0070] 次に、タッチによるスクロール操作の方法について説明する。 [0071] 今、ユーザは図7の画面300aにおいて画面右側に隠れたWebページ部分を見るために画像を左側へスクロールさせたい、と考えたとする。このとき、先の例と同様、指350のタッチ時にリンク有効領域360が表示される。この状態から、ユーザが、タッチ状態を維持したままリンク有効領域360内からその外側へ指350を移動させる。このような操作はマウスのクリックボタンを押したままカーソルを移動する「ドラッグ」と呼ばれる操作に類似している。画面300dでは、リンク有効領域360を超える位置まで指350を右側方向へ移動させた例を示している。このとき、最初のタッチ位置に初期位置を表す所定のマークである初期位置マーク370が表示される。「最初のタッチ位置」とは、ある時点でタッチパネルへのタッチが行われたとき、そのときのタッチ位置を示し、そのタッチ状態を継続してタッチ位置が変化していったときのタッチ位置を排除する趣旨である。 [0072] 初期位置マーク370としては、ここでは比較的小さな丸印を示しているが、その形状や色等は特に限定するものではない。ここで留意すべきは、初期位置マーク370は物理的な表示画面の座標系に対する座標で定められ、画像が移動しても移動しないことである。本実施の形態では、タッチ位置がリンク有効領域360の外側へ出た時点でリンク有効領域360の表示は消去される。但し、この消去は必須ではなく、表示したままの形態も考えられる。 [0073] スクロール指示操作の際、初期位置からタッチの移動先位置へ延びる移動ベクトル380が想定される。この移動ベクトル380は便宜上想定されるものであって、画面上に表示されるものではない。本実施の形態では、移動ベクトル380の長さ(すなわち初期位置からタッチの移動先位置までの距離)に応じてスクロール速度が決定され、スクロール方向390は移動ベクトル380と逆向きの方向となる。このスクロール方向390も便宜上示したもので、実際に表示される必要はない。画面300dはスクロールにより画像が右から左に流れているが、その様子は図示省略している。 [0074] スクロールが継続している最中に指350がタッチパネルから離されたとき、図8の画面300eに示すように、スクロールが停止する。すなわち、ユーザはスクロールを開始したあと、所望のWebページ部分が画面に現れた時点で指350を離せばよい。所望のWebページ部分が遠い場合には指の位置を初期位置(マーク370)から遠く離してスクロール速度を大きくし、所望のWebページ部分が近づいたとき指の位置を初期位置に近づけ(但しリンク有効領域外で)スクロール速度を小さくするような使用方法が可能である。 [0075] なお、Webページの表示画像が移動してその端が表示画面内に現れた時点で、タッチ状態にかかわらず、それ以上のスクロールは停止する。スクロールの方向は水平方向に限るものではなく、垂直方向または斜め方向であってもよい。」 「[0088] 以下、上述した各種の処理を実現するための処理手順例をフローチャートにより説明する。 [0089] 図13は、本実施の形態における基本的な処理のフローチャートを示している。この処理は、リンク選択処理と、それ以外の処理との切替を行うための処理である。まず、ブラウザ画面上にタッチがあったとき(S11、Yes)、そのタッチ位置の座標を初期位置として記憶する(S12)。ついで、リンク有効領域関連処理部133(図3)により、リンク有効領域関連処理を行う(S13)。この具体的な内部処理については後述する。そこで、タッチ状態のままタッチ位置の変化を周期的に検出する(S14)。現タッチ位置がリンク有効領域外へ出たかどうかを判定する(S15)。リンク有効領域内に止まっている場合には、リンク選択処理を行う(S16)。リンク有効領域外へ出た場合には、リンク選択処理以外の処理を実行する(S17)。ステップS16,S17のいずれにおいても、その実行後は、実行結果に応じて、ステップS11またはS14へ戻る。いずれの処理もその詳細例については後述する。なお、フローチャートの表記の便宜上、タッチ位置の検出を図13のフローの中の1ステップ(S14)として示したが、実際には図13の処理とは独立に並行して、周期的にタッチ位置の検出を行うことができる。 [0090] 図14(a)(b)は、それぞれ、図13に示したステップS13に対応する代替可能なリンク有効領域関連処理(1)(2)を示したフローチャートである。 [0091] 図14(a)のリンク有効領域関連処理(1)では、まず、初期位置に基づいてリンク有効領域を設定する(S21)。具体的にはリンク有効領域の中心位置を当該初期位置に一致させて、リンク有効領域の表示情報を生成する。ついで、そのリンク有効領域を表示する(S22)。」 「[0096] 図16は、図13に示したステップS15(当審注:「S16」の誤記)の詳細な処理例を示したフローチャートである。この処理ではまず、現タッチ位置がリンク設定箇所に該当するかどうかをチェックする(S61)。該当する場合には、リンク情報表示領域340(図5等)にテキストで当該リンク情報を表示する(S62)。該当しない場合には、図13のステップS14へ戻る。ステップS62に続いて、タッチ離脱があるかをチェックする(S63)。タッチ離脱がなければ、ステップS14へ戻る。タッチ離脱があったときには、リンク有効領域の表示を消去する(S64)。さらに当該リンク先への移動を行う(S65)。その後、ステップS11へ戻る。なお、リンク先への移動によりブラウザ画面全体が書き替えられる場合にはステップS64は省略してもよい。 [0097] 図17は、図13に示したステップS16(当審注:「S17」の誤記)の処理例としてのスクロール処理(1)のフローチャートを示している。この処理は上述した第1のスクロール操作に相当する。」 以上の記載の内、特に下線部を参照すると、次のことがいえる。 ・引用文献1の[図13]には、実施の形態における基本的な処理のフローチャートが記載されており、このフローチャートの処理は、複数のステップを有する「方法」の発明と捉えることができる。 ・該方法は、明細書の段落[0089][図13]の記載によれば、ブラウザ画面上のタッチを検出するステップS11を有し、また、段落[0047][0061][0063][0064][図5]の記載によれば、上記タッチは、液晶ディスプレイのブラウザ画面に表示されたWebページ上の、それぞれリンクが設定されている各文字列へのタッチを含むものである。 したがって、該方法は、液晶ディスプレイのブラウザ画面に表示されたWebページ上の、それぞれリンクが設定されている各文字列へのタッチを検出するステップを有する。 ・該方法は、明細書の段落[0089][図13]の記載によれば、検出したタッチ位置の座標を初期位置として記憶するステップS12を有する。 ・該方法は、明細書の段落[0089][0091][0064][図14(a)][図5]の記載によれば、前記初期位置を中心とした円をリンク有効領域として設定するステップS21を有する。 ・該方法は、明細書の段落[0089][0069][0071][図13][図5][図7]の記載によれば、タッチ状態のままタッチ位置の変化を周期的に検出するステップS14、現タッチ位置がリンク有効領域外へ出たかどうかを判定するステップS15を有する。 ・該方法は、明細書の段落[0069][0089][0096][図5][図13][図16]の記載によれば、現タッチ位置がリンク有効領域外へ出ていない場合に、現タッチ位置がリンク設定箇所に該当する場合には、リンク情報表示領域に当該リンク情報を表示するステップS62を有する。 ・該方法は、明細書の段落[0069][0089][図5][図6][図16]の記載によれば、タッチ離脱があるかをチェックするステップを有する。 ・該方法は、明細書の段落[0069][0089][図5][図6][図16]の記載によれば、タッチ離脱がなければ、前記タッチ位置の変化を周期的に検出するステップに戻り、タッチ離脱があったときは、当該リンク先への移動を行うステップを有する。 ・該方法は、明細書の段落[0069][0089][図5][図6][図16]の記載によれば、現タッチ位置がリンク有効領域外へ出た場合に、スクロール処理を行うステップを有する。 そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているといえる。 [引用発明] 「液晶ディスプレイのブラウザ画面に表示されたWebページ上の、それぞれリンクが設定されている各文字列へのタッチを検出するステップと、 検出したタッチ位置の座標を初期位置として記憶するステップと、 前記初期位置を中心とした円をリンク有効領域として設定するステップと、 タッチ状態のままタッチ位置の変化を周期的に検出するステップと、 現タッチ位置がリンク有効領域外へ出たかどうかを判定するステップと、 現タッチ位置がリンク有効領域外へ出ていない場合に、現タッチ位置がリンク設定箇所に該当する場合には、リンク情報表示領域にリンク情報を表示するステップと、 タッチ離脱があるかをチェックするステップと、 タッチ離脱がなければ、前記タッチ位置の変化を周期的に検出するステップに戻り、タッチ離脱があったときは、当該リンク先への移動を行うステップと、 現タッチ位置がリンク有効領域外へ出た場合に、スクロール処理を行うステップと、 を有する方法。 (2)引用文献2 原査定の拒絶の理由で引用した引用文献2には、図面とともに次の技術事項が記載されている。なお、下線は、特に注目した箇所を示すために当審で付したものである。 「【0018】 更に、本複写機では、ハードキーであるヘルプキー11によらず、タッチパネル8のみへの操作によって、ヘルプ情報を表示させることを可能にしている。図4は、ヘルプ情報呼出操作受付の流れを示すフローチャートである。操作者がタッチパネル8に触れると、操作表示部2は、制御部7に、タッチパネル8における操作者が触れた位置の座標情報を出力し、制御部7は、タッチパネル8への入力が行われたことを認識する(ステップS1)。続いて制御部7は、タイマーをセットする(ステップS2)。そして、所定時間が経過する前に、操作者によって前回と同一の操作ボタンA?Fの表示領域への再入力があれば(ステップS3のYes)、制御部7は、操作表示部2から入力された最後の座標情報に合致する操作ボタンA?Fに対応するヘルプ情報を、操作表示部2を制御してタッチパネル8に表示させる(ステップS4)。また、操作者によるタッチパネル8の同一箇所への再入力がないまま(ステップS3のNo)、所定時間が経過すれば(ステップS5のYes)、操作表示部2から入力された最後の座標情報に合致する操作ボタンA?Fに対応する操作内容を操作者から受け付けたとする(ステップS6)。 ここで、上記所定時間は、例えば1秒未満とし、操作者が、操作ボタンA?Fをダブルクリックした場合に、制御部7は、操作表示部2を制御してヘルプ情報をタッチパネル8に表示させるとする。 【0019】 図5及び図6は、タッチパネル8の表示内容のヘルプ情報を表示中の例を示す模式図である。この図に示すように、制御部7は、ヘルプ情報を表示するにあたっては、操作表示部2から入力された最後の座標情報に合致する操作ボタンA?Fを、タッチパネル8の端へ移動し、その操作ボタンA?Fを表示している領域以外の領域に、ヘルプ情報を表示させるようにする。そして、操作者が、タッチパネル8のヘルプ情報を表示している領域に触れると、操作表示部2は、タッチパネル8における操作者が触れた位置の座標情報を制御部7に出力する。制御部7は、操作表示部2から入力された座標情報に基づいて、操作者がヘルプ情報を表示している領域に触れたことを認識し、ヘルプ情報を消去し、元の表示状態(図3に示す状態)に戻す。 【0020】 上記実施形態によれば、操作者が操作中のタッチパネル8における操作ボタンA?Fが、操作者のダブルクリックによって、ヘルプ情報を表示させる操作キーとなるので、タッチパネル8の操作中にヘルプ情報を表示させる場合にタッチパネル8上から他に視線を移すことなく、操作者が疑問をもって注視している部分への操作者の視点を変えさせることなく据え置いたままで、ヘルプ情報を表示させる操作を受け付けることができ、即ち、ヘルプ情報の表示に関する操作性を向上させることができる。 【0021】 なお、本実施形態では、ダブルクリックを特殊操作とし、操作者が操作ボタンA?Fをダブルクリックした場合にヘルプ情報を表示するとしているが、実施にあたっては、別の特殊操作としてもよく、例えば、操作者が操作ボタンA?Fを長押しした場合にヘルプ情報を表示するようにしてもよい。 また、実施にあたっては、タッチパネル8に、同時に複数のヘルプ情報を表示させてもよい。その場合には、各ヘルプ情報に、見出し又は番号を付記することにより、何に関するヘルプ情報であるのかを操作者に判り易くする。」 以上の記載、特に、上記下線部の記載によれば、引用文献2には、「操作者がタッチパネルの操作ボタンを長押しした場合にヘルプ情報を表示する技術」が記載されている。 3.対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「それぞれリンクが設定されている各文字列へのタッチ」は、本願発明1の「項目に対する選択」に相当し、「ブラウザ」は「アプリケーション」といえるから、引用発明の「液晶ディスプレイのブラウザ画面に表示されたWebページ上の、それぞれリンクが設定されている各文字列へのタッチを検出するステップ」は、本願発明1の「ディスプレイ上に表示された画面内のいずれかの項目に対する選択をアプリケーションを介して受け取るステップ」に相当する。 引用発明の「検出したタッチ位置の座標を初期位置として記憶するステップ」は、本願発明1の「前記画面において前記選択に関連するターゲット点を定めるステップ」に相当する。 引用発明の「前記初期位置を中心とした円をリンク有効領域として設定するステップ」は、本願発明1の「前記ターゲット点に関連する幾何学形状を定めるステップ」に相当する。 引用発明の「現タッチ位置がリンク有効領域外へ出ていない場合に、現タッチ位置がリンク設定箇所に該当する場合には、リンク情報表示領域に当該リンク情報を表示するステップ」(以下、「Aステップ」とする)は、本願発明1の「前記複数の項目のうちの1つに関連する視覚的な印を表示するステップ」に相当する。 引用発明において、「現タッチ位置がリンク設定箇所に該当する場合に」、「リンク情報表示領域に当該リンク情報」が表示され、「タッチ離脱があるかをチェックするステップ」でタッチ離脱があるとされること(以下、「Bステップ」とする)は、タッチ離脱により表示されたリンク情報のリンク先への移動をユーザが指示することを意味するから、本願発明1の「ユーザによって指定される項目に関連する入力を受け取るステップ」に相当する。 引用発明の「タッチ離脱があったときは、当該リンク先への移動を行う」こと(以下、「Cステップ」とする)は、本願発明1の「前記ユーザによって指定される項目に関連する前記入力を受け取ったことに応答して、前記選択に関連した動作を実行するステップ」に相当する。 引用発明の上記「Aステップ」、「Bステップ」、「Cステップ」は、タッチ離脱をするまで、現タッチ位置に対するリンク情報を表示するものであって、「これにより、タッチした文字列が指で隠れて認識しづらいような場合でも、タッチしたリンクが所望のものかどうかを容易に確認することができる」(引用文献の段落[0066])ようにするためのものであるから、本願発明1の「対象のあいまい性の除去」に相当する。 引用発明は、「タッチ離脱がなければ、前記タッチ位置の変化を周期的に検出するステップに戻」るものであり、このことは、タッチ離脱をするまで、上記「Aステップ」、「Bステップ」、「Cステップ」を続けることを意味し、本願発明1の「前記画面における前記選択の移動を検出することに応答して、該移動に従って前記ターゲット点を移動させ、該ターゲット点が依然として前記幾何学形状の境界内にある場合は前記対象のあいまい性の除去を続け」ることに相当するものである。 引用発明の「現タッチ位置がリンク有効領域外へ出た場合に、スクロール処理を行うステップ」は、スクロール処理ではリンク情報表示領域は表示されない([図7][図8]を参照)から、本願発明1の「前記ターゲット点がもはや前記幾何学形状の境界内にない場合は前記対象のあいまい性の除去を終了するステップ」に相当する。 よって、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) ディスプレイ上に表示された画面内のいずれかの項目に対する選択をアプリケーションを介して受け取るステップと、 前記画面において前記選択に関連するターゲット点を定めるステップと、 前記ターゲット点に関連する幾何学形状を定めるステップと、 対象のあいまい性の除去を実行するステップであって、該対象のあいまい性の除去は、 前記複数の項目のうちの1つに関連する視覚的な印を表示するステップと、 ユーザによって指定される項目に関連する入力を受け取るステップと、 前記ユーザによって指定される項目に関連する前記入力を受け取ったことに応答して、前記選択に関連した動作を実行するステップと を有するステップと、 前記画面における前記選択の移動を検出することに応答して、該移動に従って前記ターゲット点を移動させ、該ターゲット点が依然として前記幾何学形状の境界内にある場合は前記対象のあいまい性の除去を続け、前記ターゲット点がもはや前記幾何学形状の境界内にない場合は前記対象のあいまい性の除去を終了するステップと を有する方法。 (相違点) 「対象のあいまい性の除去を実行するステップ」が、本願発明1では、「複数の項目が前記幾何学形状の境界内に含まれていることに応答して、」実行されるのに対し、引用発明は、「複数の項目が前記幾何学形状の境界内に含まれていることに応答して、」実行されるものではない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 引用発明では、「対象のあいまい性の除去」(特に、「リンク情報」の表示)は、現タッチ位置がリンク設定箇所に該当する場合になされるものであって、本願発明1の「幾何学形状」に相当する、リンク有効領域として設定した円の内に、それぞれリンクが設定されている各文字列(本願発明1の「項目」に相当)が複数含まれていることに応答して実行されるものではなく、また、本願発明1のように、「複数の項目が前記幾何学形状の境界内に含まれていることに応答して、対象のあいまい性の除去を実行する」ことを示唆する記載は、引用文献1、引用文献2にはない。 したがって、引用発明において、「対象のあいまい性の除去を実行するステップ」を、「複数の項目が前記幾何学形状の境界内に含まれていることに応答して」実行するものとすることが当業者に容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本願発明1は引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 また、本願の請求項7に係る発明、及び、請求項1、7を引用する請求項2-6、8-11に係る発明は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1-11に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-03-21 |
出願番号 | 特願2014-512818(P2014-512818) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 海江田 章裕、上嶋 裕樹、萩島 豪 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 新川 圭二 |
発明の名称 | 対象のあいまい性の除去及び修正 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |