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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1326413
審判番号 不服2015-15369  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-18 
確定日 2017-03-23 
事件の表示 特願2010-244709「ポリエステル樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日出願公開、特開2012- 97163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年10月29日を出願日とする特許出願であって、平成26年5月2日付けで拒絶理由が通知され、同年7月7日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年9月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月17日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成27年5月19日付けで前記平成26年11月17日付けの手続補正は却下されると同時に拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたが、同年9月15日付けで前置報告がなされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年8月18日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
本件手続補正の内容は、特許請求の範囲の記載を補正するものであって、平成26年7月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載について、本件手続補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「【請求項1】
ポリエステル樹脂を溶融押出して成形された樹脂フィルムであって、
前記ポリエステル樹脂が、
バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするポリエステルを50?95質量%含んでなる、バイオマスポリエステルと、
石化燃料由来のポリエステル樹脂および多孔性シリカを含んでなるポリエステルマスターバッチと、
を含んでなる、樹脂フィルム。」を、
「【請求項1】
ポリエステル樹脂を溶融押出して成形された樹脂フィルムであって、
前記ポリエステル樹脂が、
バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするポリエステルを50?95質量%含んでなる、バイオマスポリエステルと、
石化燃料由来のポリエステル樹脂および多孔性シリカを含んでなるポリエステルマスターバッチと、
を含んでなり、
前記樹脂フィルムの延伸倍率が5倍以下である、樹脂フィルム。」とする補正を含むものである。

2.本件手続補正の新規事項の追加について
本件手続補正により、本件手続補正後の請求項1に「前記樹脂フィルムの延伸倍率が5倍以下である」との補正事項(以下「補正事項1」という。)が追加された。

(1)補正事項1について
上記補正事項1は、樹脂フィルムの延伸倍率が5倍以下とすることを特定するものであり、延伸方向については、特段の限定がなされていない点を考慮すれば、ここでの延伸倍率は、下記の3-1.に記載の理由により、不明確であるものの、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、「延伸倍率」が、「横延伸の延伸倍率」を意味する旨の記載はなく、また、「横延伸の延伸倍率」を意味するという技術常識は存在しないから、「横延伸の延伸倍率」であると一義的に解することはできず、縦方向及び横方向における延伸の延伸倍率の双方を包含する概念であると解される。
そこで、上記補正事項1について検討すると、当初明細書等には、横延伸に関しては、「横延伸は、通常、50?100℃の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。」(段落【0045】)との記載がある一方、縦延伸に関しては、「また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。」(段落【0044】)との記載はあるものの、少なくとも、縦延伸の延伸倍率に関しては、4.2倍より大きく、5.0倍以下とする点は、当初明細書等には記載されていないし、この点は当初明細書等から自明な事項であるともいえない。
したがって、上記補正事項1により補正された請求項1の記載は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものではない。

(2)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「(3)(i)今般の補正」において、上記補正は、補正却下後の請求項1に、当初明細書の段落[0045]の記載を根拠に、樹脂倍率が5倍以下の延伸倍率で延伸されたものであることの限定を加えたものであり、当初明細書の範囲内において行われたものである旨を主張している。
しかしながら、審判請求人が補正の根拠と主張している発明の詳細な説明の段落[0045]には、横延伸の延伸倍率が2.5倍以上5.0倍以下が好ましい旨の記載があるものの、延伸方向を限定しない延伸倍率を5倍以下とする記載はない。
また、請求項1の記載の「延伸倍率」の用語を、「横延伸の延伸倍率」と解する余地について、(1)審判請求人は、請求項1の記載を「横延伸の延伸倍率」とすることで、5倍以下である延伸倍率の方向が、横方向を意味することを容易に特定できるにもかかわらず、かかる特定を請求項1において行わずに、あえて「延伸倍率」という用語を用いていること、(2)審判請求人は、審判請求書やその他の提出書類において、「延伸倍率」が、「横延伸の延伸倍率」であると定義される旨の明確な主張を一切行っていないことを参酌すると、請求項1における「延伸倍率」は、「横延伸の延伸倍率」であると一義的に解することはできない。
よって、審判請求人の上記主張は、採用できない。

(3)小活
以上のとおりであって、本件手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

3.独立特許要件について
仮に、本件手続補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたもので、かつ、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとした場合、本件手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる、独立特許要件)を満足するか否かについて、以下に検討する。

3-1.明確性(特許法第36条第6項第2号)について
(1)「延伸倍率」について
請求項1には、「樹脂フィルムの延伸倍率が5倍以下である」との記載がある。
また、延伸倍率に関し、発明の詳細な説明には、「また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合には、ポリエステルフィルムの厚み班が大きくなり良好なフィルムを得ることができない。」(段落【0044】)、「横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。2.5倍未満の場合にはフィルムの厚み班が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、5.0倍を超える場合には製膜中に破断が発生しやすくなる。」(段落【0045】)との記載がある。
しかしながら、請求項1の記載における「延伸倍率」とは、本願の発明の詳細な説明の記載や技術常識等を参酌しても、「縦延伸」の倍率を意味するのか、「横延伸」の倍率を意味するのか、それとも二軸延伸の場合の「縦」×「横」の総合的な延伸倍率を指すのかが特定できず多義的に解されるから、発明の範囲が不明確である。

(2)小活
したがって、本件手続補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

3-2.進歩性(特許法第29条第2項)について
(1)補正発明について
補正発明は、本件手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記第2 1.に記載のとおりの以下のものと認める。

「【請求項1】
ポリエステル樹脂を溶融押出して成形された樹脂フィルムであって、
前記ポリエステル樹脂が、
バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするポリエステルを50?95質量%含んでなる、バイオマスポリエステルと、
石化燃料由来のポリエステル樹脂および多孔性シリカを含んでなるポリエステルマスターバッチと、
を含んでなり、
前記樹脂フィルムの延伸倍率が5倍以下である、樹脂フィルム。」

(2)刊行物及び刊行物の記載について
本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開2006/115226号(以下、「刊行物1」という(原審における拒絶査定での引用文献3)。)には、以下の記載がされている(下線は当審によるものを含む。)。

(2-1)「請求の範囲
[1] 主たる繰り返し単位がジカルボン酸単位及びジオール単位であるポリエステルにおいて、該ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであって、該ポリエステル中の酸末端量が50当量/トン以下であることを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステル。
・・・
[15] 請求項1?9及び14のいずれか1項に記載のポリエステル99.9?0.1重量%に対して熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、または多糖類を0.1?99.9重量%配合したことを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物。
・・・
[17] 請求項15に記載のポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形体。」(請求の範囲)

(2-2)「技術分野
[0001] 本発明は、ジオール単位およびジカルボン酸単位を構成単位とするバイオマス資源由来ポリエステルならびにその製造方法に関する。
背景技術
[0002]現代社会において、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材など幅広い用途で、紙、プラスチック、アルミ箔等が用いられている。特にプラスチックは強度、耐水性、成形性、透明性、コスト等において優れており、袋や容器として、多くの用途で使用されている。現在これらの用途に使用されているプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等がある。しかしながら、上記プラスチックからなる成形品は、自然環境下においては生分解又は加水分解されないか、又は分解速度が極めて遅いために、使用後埋設処理された場合は土中に残存したり、投棄された場合は景観を損ねたりすることがある。また、焼却処理された場合でも、有害なガスを発生したり、焼却炉を傷めたりするなどの問題がある。
[0003]そこで上述の問題を解決する手段として、土中又は水中の微生物によって炭酸ガスと水に分解される生分解性を有する材料についての研究が数多くなされてきた。生分解性材料の代表例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペートといった脂肪族ポリエステル樹脂やポリブチレンアジペートテレフタレートといった芳香族-脂肪族共重合ポリエステル系樹脂が挙げられる。
・・・
[0005]ところで、このようなポリエステルは、現在、化石燃料資源由来の原料を重縮合することにより製造されているが、近年の化石燃料資源枯渇への危惧や大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境問題の背景から、バイオマス資源からこれらのポリマーの原料を誘導する手法に注目が注がれている。これらの手法は、この資源が再生可能な資源である為、カーボンニュートラルの観点から今後特に重要なプロセスになると予想されている。
[0006]
・・・
また、バイオマス資源由来ポリエステルの製造方法が開示されている(特許文献2)。
・・・
特許文献2:特開2005-139287号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0007]上述したような不純物を多く含有するバイオマス資源由来のジカルボン酸やジオールは、通常、更に精製処理により不純物量を低減させた上で用いられるが、本発明者らは、そのような精製処理を経たジカルボン酸やジオールにおいても、なおバイオマス資源に含まれる窒素元素の他、微生物や酵素由来の窒素元素や精製工程で使用されるアンモニア等の窒素元素、硫黄元素、無機酸や有機酸、金属カチオン等が含まれる為、このようなバイオマス資源由来のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分を原料として用いると、得られたポリエステルは耐加水分解性等の特性が悪く、保存時のポリマーの加水分解が顕著となり、成形加工が困難になるという問題がある知見を得た。また、特許文献2に開示されているポリエステルは、ポリエステル中に含まれる窒素原子含量が44ppmと多い理由から、ポリエステル中のカルボン酸末端量が高く安定性に乏しい、成形時に異物が発生しやすい等の特徴を示すという問題点も本発明者の研究により明らかとなった。
[0008]そこで、本発明は、バイオマス資源由来のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分を原料として用いる場合において、顕著な加水分解を抑える事が可能になった特定の酸末端量を含有したバイオマス資源由来ポリエステルを提供することにある。
課題を解決するための手段
[0009]本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、バイオマス資源由来のジカルボン酸及び/又はジオールを原料として用いた場合、ポリエステル中の水分によるポリエステルの加水分解が、原料に含まれる不純物により著しく促進され、貯蔵後のポリエステルの引っ張り伸び等の機械特性が著しく低下するという知見を得た。そこで、ポリエステルを貯蔵する際に、ポリエステル中の特定の不純物量を低減させてポリエステル中の酸末端量が50当量/トン以下とした後に貯蔵するとこれらの問題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。」(段落[0001]?[0009])

(2-3)「発明の効果
[0013]本発明によれば、バイオマス資源由来のジカルボン酸及び/又はジオールをポリエステルの原料として用いる場合において、不純物により促進される加水分解を抑え、引っ張り伸び等の機械特性劣化を低減することができるポリエステルを提供することができる。また、この手法の開発は、環境問題、化石燃料資源の枯渇問題等の解決に大きく貢献し、実用的な物性を有する樹脂を提供することができる。特に、現在の大気圏の地球環境下で植生した天然材料から発酵等の手法により入手した、いわゆるジオール単位またはジカルボン酸単位をポリエステルのモノマーとして使用するために、原料が非常に安価に入手できる。植物原料生産が各地に分散して多様化できるので、原料供給が非常に安定していること、および大気圏の地球環境下において為されるために、二酸化炭素の吸収および放出の物質収支の較差が比較的均衡している。しかも環境に非常に優しい、安全なポリエステルと認識できる。このような本発明のポリエステルは、材料の物性、構造および機能において評価できるばかりでなく、化石燃料由来のポリエステルには全く期待できない、リサイクルを含めた循環型社会の実現性を潜在的に保有する利点を有する。これは、従来型の化石燃料依存型の指向とは異なる、あらたな視点のポリエステル製造プロセスを提供するものであるから、新たな第2ステージのプラスチックという、全く新たな視点から、プラスチック材料の利用および発展に著しく寄与するものである。本発明のポリエステルは、土壌投棄をやめて仮に焼却処分しても、有害物、悪臭を発生することが少ない。」(段落[0013])

(2-4)「[0015]以下、本発明につき詳細に説明する。
<ポリエステル>
本発明の対象とするポリエステルは、ジカルボン酸単位およびジオール単位を必須成分とする。なお、本発明においてジカルボン酸単位およびジオール単位を構成するジカルボン酸及びジオールは、少なくともいずれかがバイオマス資源から誘導されたものであることが好ましい。
・ジカルボン酸単位
ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸又はそれらの混合物、若しくは、芳香族ジカルボン酸又はそれらの混合物、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好ましい。本発明でいう主成分とは、全ジカルボン酸単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を示す。
[0016]芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。この内、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。本件明細書に開示の芳香族ジカルボン酸を使用した場合にも、例えばジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールのポリエステルのように任意の芳香族ジカルボン酸を使用することにより所望の芳香族ポリエステルが製造できる。」(段落[0015]、[0016])

(2-5)「[0038]
・・・
(2)ジオール単位
本発明においてジオール単位とは、芳香族ジオール及び/又は脂肪族ジオールから誘導されるものであり、公知の化合物を用いることができるが、脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。
[0039]脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中では、より融点の高いポリマーが得られる理由から偶数のジオール又はそれらの混合物が好ましい。
脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。」(段落[0038]、[0039])

(2-6)「[0043]本発明において、これらのジオールは、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。
・・・」(段落[0043])

(2-7)「[0096]また、ポリエステルの製造工程の途中、又は製造されたポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤あるいは着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加してもよい。着色顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料等を使用することができる。また、炭酸カルシウムやシリカなどの改質剤も使用することができる。」(段落[0096])

(2-8)「[0127]<ポリエステル組成物>
上述の方法で得られた脂肪族ポリエステルは、従来公知の各種の樹脂とブレンド(混練)することにより、ポリエステル組成物が得られる。このような樹脂としては、従来公知の各種の汎用の熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂を用いることができ、好ましくは生分解性高分子や汎用の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらを単独で用いても、2種類以上ブレンドして用いてもよい。各種樹脂はバイオマス資源から得られる樹脂であってもよい。
本発明の脂肪族ポリエステルは公知の各種の樹脂とブレンド(混練)により、任意の広範囲の特性を保有するポリエステル組成物とすることができる。例えば、ブレンド比によりその物性値は大きく変動するため特には限定されないが、後述するポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とをブレンドさせた系では、引張強度30?60Mpa、極限伸び3?400%、引張弾性率500?3000Mpa、引張降伏点強度30?50Mpa、曲げ強度30?100Mpa、曲げ弾性率600?4000Mpa、衝撃試験強度5?20kJ/m2程度というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。同様に、軟質系の芳香族系ポリエステルとのブレンド系では、引張強度30?70Mpa、極限伸び400?800%、引張降伏点強度10?30Mpaというような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。更には、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS、PET、ポリスチレン等の汎用樹脂との組み合わせにより密度が1?1.4g/cm3、融点は150?270℃、引張強度30?80Mpa、極限伸び100?600%、ガラス転移点-85?150℃というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリエステル原料や各種樹脂の種類、ブレンド量比や成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。
本発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する汎用の熱可塑性樹脂としては、後述の石油由来のポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドの汎用の熱可塑性樹脂を任意に選択できる。この場合には、バイオマス由来のポリエステルとの相溶性を考慮する必要がある。さらに、本発明のバイオマス由来のポリエステルの性質を適正に維持するためには、配合量も重要になる。通常は、バイオマス由来のポリエステルが99.9?20重量%であり、汎用の可塑性樹脂が0.1?80重量%程度のブレンドが可能である。しかし、バイオマス由来のポリエステルの生分解性の特性などを維持することを目的とする場合には、汎用の熱可塑性樹脂のブレンド量を50?1重量%、目的にもよるが、好ましくは30?3重量%程度とすると生分解性特性を維持しながら所定の物性が得られる。」(段落[0127])

(2-9)「[0139]本発明に係るポリエステルおよびその組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法に供することが出来る。例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押し出し成形や共押し出し成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、シート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形[真空成形、圧空成形]、塑性加工)、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法、等)等が挙げられる。
また、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種合目的的二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
[0140]
このような成形法により、単層フィルム、多層フィルム、延伸フィルム、収縮フィルム、ラミネートフィルム、単層シート、多層シート、延伸シート、パイプ、電線/ケーブル、モノフィラメント、マルチフィラメント、各種不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、延伸テープやバンド、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体などの各種成形品が得られる。また得られる成形品は、ショッピングバッグ、ゴミ袋、農業用フィルム等の各種フィルム、化粧品容器、洗剤容器、食品容器、漂白剤容器等の各種容器類、釣り糸、漁網、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、緩衝材、医療材料、電気機器材料、家電筐体、自動車材料などの用途への使用が期待される。」(段落[0139]、[0140])

(3)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、バイオマス資源由来のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分を原料として用いる場合において、顕著な加水分解を抑える事が可能になった特定の酸末端量を含有したバイオマス資源由来ポリエステルを提供すること(摘示(2-2))を解決しようとする課題として、
「主たる繰り返し単位がジカルボン酸単位及びジオール単位であるポリエステルにおいて、該ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであって、該ポリエステル中の酸末端量が50当量/トン以下であることを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステル99.9?0.1重量%に対して熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、または多糖類を0.1?99.9重量%配合したことを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形体。」(摘示(2-1)の請求項17)の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(4)対比・判断
(4-1)補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とは、 「ポリエステル樹脂を成形した成形体であって、ジオール単位及びジカルボン酸単位とするポリエステルを含んでなるバイオマスポリエステルを含んでなる成形体」の点で一致し、次の相違点1?4で相違する。

○相違点1:補正発明では、バイオマスポリエステルに含まれるポリエステルが、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするポリエステルであるのに対し、引用発明では、ジオール単位がエチレングリコールであると特定されてはおらず、かつ、ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであるものの、ジオール単位がバイオマス由来で、ジカルボン酸単位が化石燃料由来であるとは特定されていない点。

○相違点2:補正発明では、バイオマスポリエステルに含まれるポリエステルは、50?95質量%含んでなるのに対し、引用発明のバイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物は、バイオマス資源由来ポリエステルを99.9?0.1重量%の割合で配合しており、両者の配合割合の数値範囲が重複してはいるものの、異なる点。

○相違点3:補正発明では、ポリエステル樹脂が、石化燃料由来のポリエステル樹脂および多孔性シリカを含んでなるポリエステルマスターバッチを含んでなるのに対し、引用発明では、石化燃料由来のポリエステル樹脂および多孔性シリカを含んでなるポリエステルマスターバッチを含むことは特定されていない点。

○相違点4:補正発明では、成形体が溶融押出して成形された樹脂フィルムであり、樹脂フィルムの延伸倍率が5倍以下であるのに対し、引用発明では、成形体が、溶融押出して成形された樹脂フィルムであることや、その延伸倍率を5倍以下とすることは特定されていない点。

(4-2-1)相違点1についての検討
上記相違点1について検討する。
刊行物1には、「本発明においてジオール単位とは、芳香族ジオール及び/又は脂肪族ジオールから誘導されるものであり、公知の化合物を用いることができるが、脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。・・・脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール・・・が挙げられる。」(上記摘示(2-5))と、使用するジオール単位の具体例として、エチレングリコールが記載されている。
そして、刊行物1にジオール単位として用いることのできる物質として例示されたものの中から、目的とする用途や物性に応じて、使用する物質を選択して決定することは、当業者が適宜行い得る通常の創作能力の発揮にすぎないことから、引用発明において、上記摘示の記載に基づいて、ジオール単位としてエチレングリコールを選択して用いることは、当業者が容易に想到することができたものである。
また、引用発明は、ポリエステルの原料であるジカルボン酸単位及びジオール単位の少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものとするものであり、具体的にどちらの単位をバイオマス資源由来のものとするかは、ポリエステル樹脂の具体的な用途や、具体的にジオール単位又はジカルボン酸単位として使用する物質の、バイオマス資源由来のものの入手容易性等を勘案し、当業者が適宜選択すべき技術的事項にすぎない。
また、本願出願時において、大気中の二酸化炭素の増加等の環境問題に対する対策等のために、ポリエステル樹脂として、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位として、化石燃料由来であるテレフタル酸等のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステルを用いる技術は、当業者にとって周知のものであり(国際公開第2009/072462号の請求の範囲、実施例及び段落[0003]、特開2009-91694号公報の特許請求の範囲、実施例、段落【0007】、【0008】、【0014】。)、さらに、刊行物1には、引用発明においてジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸として、テレフタル酸等が例示されており(摘示(2-4))、ジオール成分として、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい旨の記載がある(摘示(2-6)ことから、引用発明において、上記摘示や上記周知技術に基づいて、ポリエステルの原料であるジオール単位として、バイオマス由来のエチレングリコールを用い、ジカルボン酸単位として、化石燃料由来のテレフタル酸等のジカルボン酸を用いることは、当業者が容易に想到することができたものである。
そして、引用発明においても、不純物により促進される加水分解を抑え、引っ張り伸び等の機械特性劣化を低減することができるポリエステル樹脂を提供し、また、実用的な物性を有する樹脂を提供することができる(摘示(2-3))という効果を有するものであり、補正発明に係る効果は、引用発明から予測される範囲のものにすぎない。

(4-2-2)相違点2についての検討
次に、上記相違点2について検討する。
引用発明のバイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物は、バイオマス資源由来ポリエステルを99.9?0.1重量%の割合で配合し、熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、または多糖類を0.1?99.9重量%配合しており、補正発明で特定される、バイオマスポリエステルに含まれるポリエステルが50?95重量%という数値範囲と重複するものである。また、刊行物1には、引用発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する汎用の熱可塑性樹脂のブレンド量の好ましい範囲として、30?3重量%程度とすることが記載されている(摘示(2-8))ことから、引用発明において、バイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物に含まれるバイオマス資源由来ポリエステルの配合割合をどの程度にするのかは、刊行物1の上記摘示の記載を考慮しつつ、得ようとする製品の用途や物性等に応じて、99.9?0.1重量%という数値範囲の中から、当業者が適宜選択することのできる技術的事項にすぎず、引用発明において、バイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物に含まれるバイオマス資源由来ポリエステルの配合量を、50?95質量%の数値範囲で含むようにすることは、当業者が容易に想到することができたものであり、また、これにより、補正発明が格段の効果を奏するものともいえない。

(4-2-3)相違点3についての検討
次に、上記相違点3について検討する。
刊行物1には、ポリエステルの製造工程の途中、又は製造されたポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を使用できる点が記載され、添加剤として、シリカが例示されている(摘示(2-7))。
そして、ポリエステル樹脂に使用されるシリカとして、多孔性シリカは、本願出願時において、周知のものである(特開2003-82199号公報の請求項1、実施例、段落【0001】?【0003】、【0011】、【0051】、特開平11-322973号公報の特許請求の範囲、実施例、特開2010-238912号公報の請求項1及び3、段落【0040】)。
また、シリカをポリエステルに配合するにあたり、予めシリカをポリエステルに混合したポリエステルマスターバッチを作製した後、当該マスターバッチをポリエステルに混合する技術は、本願出願時において、周知の技術的事項にすぎず(特開2003-82199号公報の段落【0024】、【0025】、【0040】、【0041】、【0047】、【0048】、特開2010-238912号公報の特許請求の範囲、段落【0067】、【0068】、実施例1、特開平11-227139号公報の段落【0043】、【0044】、特開平9-157439号公報の段落【0025】、特開平8-113729号公報の段落【0011】。)、またその際に、マスターバッチに配合されるポリエステル樹脂として、通常用いられる化石燃料由来のポリエステル樹脂を用いることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから、引用発明におけるポリエステル樹脂に、化石燃料由来のポリエステル樹脂および多孔性シリカを含んでなるポリエステルマスターバッチを含ませることは、当業者が容易に想到することができたものである。また、これにより、補正発明が格段の効果を奏するものともいえない。

(4-2-4)相違点4についての検討
さらに、上記相違点4について検討する。
刊行物1には、「本発明に係るポリエステルおよびその組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法に供することが出来る」旨の記載があり、その例示として、「押し出し成形や共押し出し成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、・・・)・・・固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形・・・)等が挙げられ、このような成形法により、単層フィルム、多層フィルム、延伸フィルム等の各種成形品が得られることが記載されている(摘示(2-9))。
また、フィルムを延伸する際の延伸倍率は、フィルムの機能を損なわない、典型的にはフィルムが破断することがないように、当業者がその数値範囲を適宜好適化することのできる技術的事項であるし、ポリエステル樹脂の延伸フィルムの延伸倍率として、5倍以下とすることは、周知の技術的事項にすぎない(特開2003-82199号公報の段落【0027】、【0048】、特開2010-238912号公報の段落【0047】、【0048】、実施例1、特開平11-322973号公報の段落【0030】、【0041】、国際公開第2008/149869号の第17頁第7?11行、特開2005-212248号公報の段落【0043】、【0046】、特開2003-182010号公報の段落【0031】)。
そうすると、刊行物1の上記摘示及び上記周知の技術的事項に基づいて、引用発明の成形品を、溶融押出された延伸フィルムとし、その延伸倍率を5倍以下とすることは、当業者が容易に想到することができたものであり、また、これにより、補正発明が格段の効果を奏するものともいえない。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「(3)(ii)補正後の本願発明と引用発明との対比」において、引用文献3(本審決中の刊行物1)には、延伸フィルムを得る際にどのような延伸倍率とすべきかについては何ら教示されておらず、延伸倍率を5倍以下とすることによって均一な膜厚を維持しながら製膜中での樹脂フィルムの破断を抑制できることについては何ら教示も示唆もない旨を主張している。
しかしながら、前記(4-2-4)の相違点4についての検討で既に検討したように、刊行物1の摘示(2-9)の記載及び周知技術から、引用発明の成形品を、溶融押出された延伸フィルムとし、その延伸倍率を5倍以下とすることは、当業者が容易に想到することができたものであって、さらに、補正発明の効果も、引用発明及び周知技術から予測される範囲のものにすぎない。
したがって、上記審判請求人の上記主張は採用できない。

以上を総合すると、上記相違点にかかわらず、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

(6)小活
よって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.補正の却下の決定のむすび
上記[理由]2.のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
また仮に、本件手続補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたもので、かつ、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったとしても、上記[理由]3.のとおり、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するものでもある。
したがって、本件手続補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
上記のように、平成27年8月18日付けの手続補正は却下された。
本願の請求項に係る発明は、平成26年7月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年7月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリエステル樹脂を溶融押出して成形された樹脂フィルムであって、
前記ポリエステル樹脂が、
バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするポリエステルを50?95質量%含んでなる、バイオマスポリエステルと、
石化燃料由来のポリエステル樹脂および多孔性シリカを含んでなるポリエステルマスターバッチと、
を含んでなる、樹脂フィルム。」

第4 原査定の拒絶の理由の概要
これに対して、原審において拒絶査定の理由とされた平成26年9月12日付けで通知された拒絶理由の概要は、本願発明は、刊行物1(国際公開第2006/115226号)に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものを含むものである。
第5 当審の判断
刊行物1には、前記第2 3-2(2)に記載した事項及び第2 3-2(3)に記載の発明が記載されている。
そして、前記第2 3-2(1)に記載した補正発明は、本願発明を限定的に減縮をしたものであるから、本願発明は前記補正発明を含むことは明らかである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定的に減縮を行った補正発明が、前記第2 3-2(4)及び(6)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-23 
結審通知日 2017-01-24 
審決日 2017-02-08 
出願番号 特願2010-244709(P2010-244709)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08G)
P 1 8・ 561- Z (C08G)
P 1 8・ 121- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小森 勇  
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 堀 洋樹
大島 祥吾
発明の名称 ポリエステル樹脂組成物  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 永井 浩之  
代理人 浅野 真理  

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