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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1326425
審判番号 不服2016-6179  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-26 
確定日 2017-03-23 
事件の表示 特願2012-227850「リソース管理プログラム、リソース管理方法、及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日出願公開、特開2014- 81709〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成24年10月15日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 6月 4日 :出願審査請求書の提出
平成27年10月23日付け :拒絶理由の通知
平成27年12月28日 :意見書,手続補正書の提出
平成28年 1月21日付け :拒絶査定
平成28年 4月26日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成28年 6月30日 :前置報告


第2 平成28年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成28年4月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成28年4月26日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成27年12月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至5の記載

「 【請求項1】
コンピュータに,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定し,
前記不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定し,
特定された他のコンピュータに前記リソースの解放を要求し,
要求に応じて解放されたリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,
処理を実行させるリソース管理プログラム。
【請求項2】
前記特定する処理は,前記リソースを共用する複数のコンピュータのリソースの確保数の合計値が,前記リソースの上限数に達している場合であって,前記コンピュータにおいて前記不使用リソースが無い場合に,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定する請求項1記載のリソース管理プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータと前記リソースを共用する他のコンピュータからの前記リソースの解放の要求に応じ,前記コンピュータが確保済みのリソースのうちの不使用リソースを解放する処理を前記コンピュータに実行させる請求項1又は2記載のリソース管理プログラム。
【請求項4】
コンピュータが,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定し,
前記不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定し,
特定された他のコンピュータに前記リソースの解放を要求し,
要求に応じて解放されたリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,
処理を実行するリソース管理方法。
【請求項5】
情報処理装置であって,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数の情報処理装置それぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記情報処理装置における不使用リソースの有無を判定する判定部と,
前記不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他の情報処理装置を特定する特定部と,
特定された他の情報処理装置に前記リソースの解放を要求する要求部と,
要求に応じて解放されたリソースを使用する際に用いられる情報を取得する取得部とを有する情報処理装置。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を,

「 【請求項1】
コンピュータに,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定し,
前記不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定し,
特定された他のコンピュータに前記リソースの解放を要求し,
前記解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,
処理を実行させるリソース管理プログラム。
【請求項2】
前記特定する処理は,前記リソースを共用する複数のコンピュータのリソースの確保数の合計値が,前記リソースの上限数に達している場合であって,前記コンピュータにおいて前記不使用リソースが無い場合に,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定する請求項1記載のリソース管理プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータと前記リソースを共用する他のコンピュータからの前記リソースの解放の要求に応じ,前記コンピュータが確保済みのリソースのうちの不使用リソースを解放する処理を前記コンピュータに実行させる請求項1又は2記載のリソース管理プログラム。
【請求項4】
コンピュータが,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定し,
前記不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定し,
特定された他のコンピュータに前記リソースの解放を要求し,
前記解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,
処理を実行するリソース管理方法。
【請求項5】
情報処理装置であって,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数の情報処理装置それぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記情報処理装置における不使用リソースの有無を判定する判定部と,
前記不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他の情報処理装置を特定する特定部と,
特定された他の情報処理装置に前記リソースの解放を要求する要求部と,
前記解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する取得部とを有する情報処理装置。」
(当審注:下線は,請求人が付与したものである。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
また,本件補正は,特別な技術的特徴を変更(シフト補正)をしようとするものではなく,特許法第17条の2第4項の規定に適合している。


2 目的要件

本件補正は上記「1 補正の内容」のとおり,本件審判の請求と同時にする補正であり,特許請求の範囲について補正をしようとするものであるから,本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正前の請求項と補正後の請求項とを比較すると,補正後の請求項1乃至5はそれぞれ,補正前の請求項1乃至5に対応することは明らかである。

(2)よって,本件補正は,下記の補正事項1,2よりなるものである。

<補正事項1>
補正前の請求項1,4の
「要求に応じて解放されたリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,」との記載を,
補正後の請求項1,4の
「前記解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,」との記載に変更する補正。

<補正事項2>
補正前の請求項5の
「要求に応じて解放されたリソースを使用する際に用いられる情報を取得する取得部」との記載を,
補正後の請求項5の
「前記解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する取得部」との記載に変更する補正。

(3)補正事項1,2について

補正事項1は,発明特定事項である「リソースを使用する際に用いられる情報を取得する」に,「解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかの」との限定を加えることを目的とするものであり,
また,補正事項2は,発明特定事項である「リソースを使用する際に用いられる情報を取得する取得部」に,「解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかの」との限定を加えることを目的とするものであり,本件補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

(4)したがって,上記補正事項1,2は限定的減縮を目的とするものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえることから,特許法第17条の2第5項の規定に適合するものである。


3 独立特許要件

以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とする上記補正事項1,2を含むものである。そこで,限定的減縮を目的として補正された補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記平成28年4月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 コンピュータに,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定し,
前記不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定し,
特定された他のコンピュータに前記リソースの解放を要求し,
前記解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,
処理を実行させるリソース管理プログラム。」

(2)引用例

(2-1)引用例1に記載されている技術的事項および引用発明

ア 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成27年10月23日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2010-277581号公報(平成22年12月9日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0109】
(第3実施形態,リソースとして,CPU資源,ネットワーク資源を割り当てる)
以下,本発明の第3実施形態として,CPU資源,ネットワーク資源を管理する場合を説明する。これらの資源の管理の場合も,第1実施形態に示したメモリ資源の管理,および,第2実施形態に示したディスク資源の管理と同様に行うことができる。
【0110】
第3実施形態においては,第1実施形態および第2実施形態で示した図1,図10などのレイヤモデルで示される構成上で実施される。ハイパーバイザ部81では,物理CPU処理部43,および,物理ネットワーク処理部46を含む。
物理CPU処理部43は,物理計算機9のCPU91を制御することにより,CPU資源を管理し,仮想計算機82が使用する仮想CPUに対する資源の割当,および,解放を実行する。
物理ネットワーク処理部46は,物理計算機9の通信装置94を制御することにより,ネットワーク資源を管理し,仮想計算機82が使用する仮想ネットワークに対する資源の割当,および,解放を実行する。」

B 「【0111】
図17は,第3実施形態における各処理部(アプリケーション部20と,割当処理部10,物理CPU処理部43,および,物理ネットワーク処理部46)の詳細を示す構成図である。
【0112】
割当処理部10は,資源管理用のテーブルとして,CPU資源の割当量を管理するCPU管理テーブル17,および,ネットワーク資源の割当量を管理するネットワーク管理テーブル18を含む。なお,資源管理用のテーブルとして,第1実施形態ではメモリ割当管理テーブル14を有し,あるいは,第2実施形態ではディスク領域管理テーブル15を有することは,既に説明した。
…(中略)…
【0114】
物理ネットワーク処理部46は,物理ネットワーク管理部47と,物理ネットワーク状況通知部48を備える。
物理ネットワーク管理部47は,通信装置94から所定のネットワーク資源を仮想計算機82が認識する仮想ネットワークとして割り当てる。また,物理ネットワーク管理部47は,アプリケーションからの要求に応じて,割り当てるネットワーク資源を追加,あるいは,削減する。なお,ここでは,ネットワーク資源の割当管理の単位をネットワークカードの数として管理するが,ネットワークの使用帯域など別の指標を用いてもよい。
物理ネットワーク状況通知部48は,物理ネットワーク管理部47,状況通知受信部12からの要求に応じて,または,要求が無くても能動的に,物理計算機9の状態(通信装置94の使用状況など)を,状況通知受信部12に通知する。」

C 「【0115】
図18は,図17で示したCPU管理テーブル17の詳細を示す構成図である。
CPU管理テーブル17は,実行中のアプリケーションを識別するためのアプリID151と,そのアプリIDで示されるアプリケーションが使用中のプロセッサ数である使用数152,アプリIDで示されるアプリケーションに割当済みのプロセッサ数である割当済数153を含む。
【0116】
図19は,図17で示したネットワーク管理テーブル18の詳細を示す構成図である。
ネットワーク管理テーブル18は,実行中のアプリケーションを識別するためのアプリID154と,そのアプリIDで示されるアプリケーションが使用中のネットワーク装置数である使用数155,アプリIDで示されるアプリケーションに割当済みのネットワーク装置数である割当済数156を含む。」

D 「【0118】
以上の構成による物理計算機9上のアプリケーション部20と割当処理部10を含むアプリケーションにおける資源の割当処理,および,資源の解放処理について説明する。
【0119】
資源の解放処理おいては,あるアプリケーションが使用する資源が不足する場合,もしくは,物理計算機9上の空き資源が不足する場合において,同一の物理計算機9上で動作する別のアプリケーションに対して空き資源の解放要求を通知する。
【0120】
アプリケーションが使用する資源の不足は,CPU管理テーブル17の使用数152が割当済数153に対する所定の割合を上回る場合に不足すると判定できる。同様に,ネットワーク資源においては,ネットワーク管理テーブル18の使用数155が割当済数156に対する所定の割合を上回る場合に不足すると判定できる。
【0121】
資源の解放共有を受けたアプリケーションでは,通知を受けた資源の種別に応じて,CPU管理テーブル17,もしくは,ネットワーク管理テーブル18を参照し,割当済みであるが,未使用である資源(例えば,CPU資源の場合,割当済数153から使用数152を引いた数)のうち,所定の個数のプロセッサ,もしくは,ネットワーク装置の割当の解除要求を,物理CPU管理部44,もしくは,物理ネットワーク管理部47に対して,送信することにより,アプリケーションが動作している仮想計算機82から解除し,ハイパーバイザ部81が管理する未使用の資源とする。
【0122】
次に,資源の割当処理では,アプリケーションで新たな資源の確保が必要になった場合に,資源種別に応じて,物理CPU管理部44,もしくは,物理ネットワーク管理部47に対して必要な資源の割当を要求し,アプリケーションが稼動する仮想計算機82に対して必要となる資源の追加を行う。なお,資源の割当処理においては,物理CPU管理部44もしくは,物理ネットワーク管理部47からの資源の割当に失敗した場合,つまり,物理計算機9に空き資源がない場合は,その場で,他のアプリケーションに対して,資源の解放要求を送信してもよい。」

E 「【0123】
以上説明した第3実施形態によれば,割当処理部10は,仮想計算機82に割り当てられているが使用されていないCPU資源の仮想計算機82への割当を解除するように能動的に制御することで,物理CPU処理部43が割り当て可能なCPU資源の容量を増やすことができる。
【0124】
そして,物理CPU管理部44は,空き領域を他のアプリケーションが実行されている仮想計算機82へ再割当することで,CPU資源の有効利用が可能となる。つまり,ある分割されているCPU資源の空き容量を,仮想計算機82上で動作するアプリケーションからCPU資源の割当を制御することにより,別のCPU資源を管理するシステムへ融通することで,CPU資源を有効活用できる。また,ネットワーク資源に対しても同様の方式により,有効活用することができる。」

イ ここで,引用例1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの段落【0109】の「以下,本発明の第3実施形態として,CPU資源,ネットワーク資源を管理する場合を説明する。」との記載,段落【0110】の「物理ネットワーク処理部46は,物理計算機9の通信装置94を制御することにより,ネットワーク資源を管理し,仮想計算機82が使用する仮想ネットワークに対する資源の割当,および,解放を実行する。」との記載,上記Eの段落【0124】の「そして,物理CPU管理部44は,空き領域を他のアプリケーションが実行されている仮想計算機82へ再割当することで,CPU資源の有効利用が可能となる。 …(中略)… また,ネットワーク資源に対しても同様の方式により,有効活用することができる。」との記載からすると,異なるアプリケーションが仮想計算機上で動作し,複数の仮想計算機が仮想計算機システムを構成することは明らかであるから,異なるアプリケーションが複数の仮想計算機上で動作する仮想計算機システムおいて,ネットワーク資源を管理することが読み取れる。
また,上記Dの段落【0118】の「以上の構成による物理計算機9上のアプリケーション部20と割当処理部10を含むアプリケーションにおける資源の割当処理,および,資源の解放処理について説明する。」との記載からすると,資源の割当処理,および,資源の解放処理は,プログラムによってアプリケーションが動作する各「仮想計算機」に実行させることが読み取れるから,引用例1には,
“異なるアプリケーションが複数の仮想計算機上で動作する仮想計算機システムにおいて,
各仮想計算機に”,“資源の割当処理,および,解放処理を実行させるプログラム。”
が記載されていると解される。

(イ)上記Bの段落【0112】の「割当処理部10は,資源管理用のテーブルとして,CPU資源の割当量を管理するCPU管理テーブル17,および,ネットワーク資源の割当量を管理するネットワーク管理テーブル18を含む。」との記載,上記Cの段落【0116】の「図19は,図17で示したネットワーク管理テーブル18の詳細を示す構成図である。ネットワーク管理テーブル18は,実行中のアプリケーションを識別するためのアプリID154と,そのアプリIDで示されるアプリケーションが使用中のネットワーク装置数である使用数155,アプリIDで示されるアプリケーションに割当済みのネットワーク装置数である割当済数156を含む。」との記載からすると,「割当処理部」の「ネットワーク管理テーブル」を用いて,アプリID,使用数,割当済数を含む「ネットワーク資源の割当量」を管理することが読み取れる。
また,上記Eの段落【0123】の「以上説明した第3実施形態によれば,割当処理部10は,仮想計算機82に割り当てられているが使用されていないCPU資源の仮想計算機82への割当を解除するように能動的に制御することで,物理CPU処理部43が割り当て可能なCPU資源の容量を増やすことができる。」との記載からすると,「仮想計算機」に「割当処理部」を備えることが読み取れることから,引用例1には,
“各仮想計算機”が,“割当処理部のネットワーク管理テーブルを用いて,実行中のアプリケーションを識別するためのアプリIDと,そのアプリIDで示されるアプリケーションが使用中のネットワーク装置数である使用数,アプリIDで示されるアプリケーションに割当済みのネットワーク装置数である割当済数を含むネットワーク資源の割当量を管理”すること
が記載されていると解される。

(ウ)上記Dの段落【0122】の「次に,資源の割当処理では,アプリケーションで新たな資源の確保が必要になった場合に,資源種別に応じて,物理CPU管理部44,もしくは,物理ネットワーク管理部47に対して必要な資源の割当を要求し,アプリケーションが稼動する仮想計算機82に対して必要となる資源の追加を行う。」との記載,上記Bの段落【0114】の「物理ネットワーク管理部47は,通信装置94から所定のネットワーク資源を仮想計算機82が認識する仮想ネットワークとして割り当てる。また,物理ネットワーク管理部47は,アプリケーションからの要求に応じて,割り当てるネットワーク資源を追加,あるいは,削減する。なお,ここでは,ネットワーク資源の割当管理の単位をネットワークカードの数として管理するが,ネットワークの使用帯域など別の指標を用いてもよい。」との記載からすると,資源の割当処理として,各「仮想計算機」が「物理ネットワーク管理部」に対して「ネットワーク資源」の割当を要求する態様が読み取れるから,引用例1には,
“各仮想計算機”が,“割当処理部の資源の割当処理では,アプリケーションで新たな資源の確保が必要になった場合に,資源種別に応じて,物理ネットワーク管理部に対して必要な資源の割当を要求し,アプリケーションが稼動する仮想計算機のアプリケーションに対して必要となる資源の追加を行”うこと
が記載されていると解される。

(エ)上記Dの段落【0122】の「なお,資源の割当処理においては,物理CPU管理部44もしくは,物理ネットワーク管理部47からの資源の割当に失敗した場合,つまり,物理計算機9に空き資源がない場合は,その場で,他のアプリケーションに対して,資源の解放要求を送信してもよい。」との記載,上記Dの段落【0119】の「資源の解放処理おいては,あるアプリケーションが使用する資源が不足する場合,もしくは,物理計算機9上の空き資源が不足する場合において,同一の物理計算機9上で動作する別のアプリケーションに対して空き資源の解放要求を通知する。」との記載からすると,物理ネットワーク管理部からの資源の割当に失敗した場合,つまり,物理計算機に空き資源がない場合は,別のアプリケーションに対して資源の解放を要求し,資源の解放処理が実行されることが読み取れるから,引用例1には,
“各仮想計算機”が,“割当処理部の資源の解放処理では,物理ネットワーク管理部からの資源の割当に失敗した場合,つまり,物理計算機に空き資源がない場合は別のアプリケーションに対して資源の解放を要求”すること
が記載されていると解される。

(オ)上記Dの段落【0121】の「資源の解放共有を受けたアプリケーションでは,通知を受けた資源の種別に応じて,CPU管理テーブル17,もしくは,ネットワーク管理テーブル18を参照し,割当済みであるが,未使用である資源(例えば,CPU資源の場合,割当済数153から使用数152を引いた数)のうち,所定の個数のプロセッサ,もしくは,ネットワーク装置の割当の解除要求を,物理CPU管理部44,もしくは,物理ネットワーク管理部47に対して,送信することにより,アプリケーションが動作している仮想計算機82から解除し,ハイパーバイザ部81が管理する未使用の資源とする。」との記載,上記Eの段落【0124】の「そして,物理CPU管理部44は,空き領域を他のアプリケーションが実行されている仮想計算機82へ再割当することで,CPU資源の有効利用が可能となる。」との記載からすると,仮想計算機のアプリケーションに対して再割り当てを行う空き領域は,資源の解放要求を受けた別のアプリケーションの通知があった種別の未使用の資源であることは明らかであるから,引用例1には,
“資源の解放要求を受けた別のアプリケーションでは,通知を受けた資源の種別に応じて,未使用の資源の割り当てを解除し,割当処理部は解放要求した仮想計算機のアプリケーションに対して,通知があった種別の未使用の資源の再割り当てを行う”こと
が記載されていると解される。

ウ 以上,(ア)乃至(オ)で示した事項から,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「異なるアプリケーションが複数の仮想計算機上で動作する仮想計算機システムにおいて,
各仮想計算機に,
割当処理部のネットワーク管理テーブルを用いて,実行中のアプリケーションを識別するためのアプリIDと,そのアプリIDで示されるアプリケーションが使用中のネットワーク装置数である使用数,アプリIDで示されるアプリケーションに割当済みのネットワーク装置数である割当済数を含むネットワーク資源の割当量を管理し,
前記割当処理部の資源の割当処理では,アプリケーションで新たな資源の確保が必要になった場合に,資源種別に応じて,物理ネットワーク管理部に対して必要な資源の割当を要求し,アプリケーションが稼動する仮想計算機のアプリケーションに対して必要となる資源の追加を行い,
前記割当処理部の資源の解放処理では,前記物理ネットワーク管理部からの資源の割当に失敗した場合,つまり,物理計算機に空き資源がない場合は別のアプリケーションに対して資源の解放を要求し,
資源の解放要求を受けた別のアプリケーションでは,通知を受けた資源の種別に応じて,未使用の資源の割り当てを解除し,前記割当処理部は解放要求した仮想計算機のアプリケーションに対して,通知があった種別の未使用の資源の再割り当てを行う,
資源の割当処理,および,解放処理を実行させるプログラム。」


(2-2)引用例2に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の平成28年1月21日付けの拒絶査定において引用された,特開2007-4403号公報(平成19年1月11日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0082】
図21に,上記業務管理装置X(獲得側)における資源獲得決定処理に関する通信内容およびDB更新内容を示す。ここで示す実行例は,資源管理装置AとBから,1台ずつのコンピュータについての資源提供状況通知を受け取り,資源管理装置Aが提供する資源の獲得を決定した場合に相当する。この場合,資源管理装置Aが提供する資源については,ステップS404の分岐でステップS405に進み,資源管理装置Bが提供する資源については,ステップS404の分岐でステップS409に進むことになる。
【0083】
図21は,以下の各部分からなる。
a) 資源提供状況通知(資源管理装置A→業務管理装置X):hostA3の再配分が可能であることを示す通知である。この通知は,業務管理装置Xが発行した資源提供要求のリクエストIDと,資源管理装置Aによって選択された資源のリソースIDとを含む。
b) 資源提供状況通知(資源管理装置B→業務管理装置X):hostB3の再配分が可能であることを示す通知である。
…(後略)…」

(2-3)引用例3に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の平成28年1月21日付けの拒絶査定において引用された,特開2000-69087号公報(平成12年3月3日出願公開,以下,「引用例3」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0025】このように,ブロードキャストした後の状態でルータ1がBチャンネル111,112を使用したルータ1のリソース管理テーブル13の状態を次の[表3]に示す。同じく,ルータ2がBチャンネル2111,212を使用したルータ2のリソース管理テーブル23の状態を次の[表4]に示す。
…(中略)…
【0028】通常のルータ1では,これ以上通信帯域を上げることは不可能だが,ルータ2のリソースを借りることによって,可能にする。まず,[表3]においてルータ1はリソース管理テーブル13を参照し,Bチャンネル211がルータ2から借用可能と判断する。その後,ルータ1はルータ2にBチャンネル211の「リソース獲得要求」をコミュニケーション・チャンネル3を通して送る。
【0029】この要求を受けたルータ2はリソース管理テーブル23がら借用可能と判断し,ルータ1に「許可」を返す(ステップA9)。「許可」を受け取ったルータ1はリソース管理テーブル13のBチャンネル211を使用中とする。ルータ1がルータ2から借用しているBチャンネル211が不必要になったときは,ルータ1は「リソース開放要求」をルータ2に送信して,リソース管理テーブル13のBチャンネル211の状態を未使用に変える。また,この要求を受けたルータ2はリソース管理テーブル23のBチャンネル211を未使用に変更する(ステップA11)。」

(2-4)参考文献4に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2005-4350号公報(平成17年1月6日出願公開,以下,「参考文献4」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H 「【0019】
また,アプリケーション4は,ファンクションの使用リソースが全て開放されたときに,その旨を知らせてもらうための開放通知要求を,リソースマネージャ1に対して送ることができる。リソース開放通知要求にかかるファンクションは複数同時に指定でき,同時に指定された全てのファンクションの使用するリソースが全て開放された時に,リソースマネージャ1は上記開放通知要求を行ったアプリケーション4に対して上記開放通知を発行する。上述の開放通知要求を送る場合,アプリケーション4は,開放通知を要求するファンクション名,開放待ちの優先度,通知待ちの時間,アクセスハンドル,プロセスIDの各情報を,リソースマネージャ1に対して指定する。なお,リソースマネージャ1が開放通知をアプリケーション4に送信するのは,指定された全てのファンクションの使用リソースが全て開放された時となる。また,通知待ち時間内にリソースが開放されない場合,リソースマネージャ1は,開放通知タイムアウト通知をアプリケーション4に送信する。リソースの開放待ちの解除は,その開放通知要求を行ったアプリケーション4が,リソースマネージャ1に対してリソース取得時に用いたアクセスハンドルとプロセスIDを指定することにより行う。つまり,当該リソースの開放待ちの解除は,リソース開放待ちのアプリケーション4以外からは行うことができない。」

J 「【0031】
ハンドル管理部8からアプリケーション4へは,リソースハンドルデータ,メッセージ種別データ,要因データが送られる。要因データは,要求の失敗及び開放要求通知の開放要求発生要因のデータがある。メッセージ種別データは,取得結果OKの通知メッセージ,取得結果NG通知メッセージ,開放要求通知メッセージ,開放通知メッセージ,開放通知待ちタイムアウト通知メッセージ,開放異常通知メッセージがある。取得結果OK通知メッセージはリソースの取得に成功したことを示す取得要求許可のメッセージであり,取得結果NG通知メッセージはリソースの取得に失敗したことを示す取得NGのメッセージである。開放要求通知メッセージはハンドルの開放実施の要求のメッセージ,開放通知メッセージは指定リソースが全て開放されたことを示すメッセージ,開放通知待ちタイムアウト通知メッセージは開放通知待ち時間を経過してもリソースが開放されなかったことを通知するメッセージである。開放異常通知メッセージは取得要求で発生した開放通知に対する開放要求がタイムアウトしたことを通知するメッセージであり,取得要求アプリケーションと開放要求アプリケーションの双方に通知される。」


(3)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「仮想計算機」は,複数が稼働して,ネットワーク資源を含む物理計算機上の「資源」の割当処理,解放処理を行うことから,「資源」を共用するといえる。
そうすると,引用発明の「仮想計算機」は本件補正発明の「コンピュータ」に相当し,引用発明の「資源」は本件補正発明の「リソース」に相当するといえる。

(イ)引用発明では,「割当処理部」の「ネットワーク管理テーブル」を用いて,「実行中のアプリケーションを識別するためのアプリIDと,そのアプリIDで示されるアプリケーションが使用中のネットワーク装置数である使用数,アプリIDで示されるアプリケーションに割当済みのネットワーク装置数である割当済数を含むネットワーク資源の割当量を管理」するところ,「アプリケーション」は要求に応じて実行する処理であることは明らかであり,「ネットワーク装置」は「アプリケーション」に対して割り当てられる「資源」であると解されるから,引用発明の「アプリケーション」,「ネットワーク装置」,「割当済みのネットワーク装置」はそれぞれ,本件補正発明の「要求に応じて実行する処理」,「リソース」,「確保済みのリソース」に相当するといえる。
また,引用発明では,「ネットワーク管理テーブル」により,「割当済みのネットワーク装置数」および実際に使用中の「ネットワーク装置」の数を把握可能とすることから,実質的に不使用のリソースに係る情報の参照が可能であるといえ,さらに,「割当済みのネットワーク装置数」と「使用中のネットワーク装置数」との差から,不使用のネットワーク装置の有無が確認可能であることは明らかであるから,「ネットワーク管理テーブル」を用いて,「仮想計算機」における不使用リソースの有無を確認可能としているといえる。
そうすると,引用発明の「割当処理部のネットワーク管理テーブルを用いて,実行中のアプリケーションを識別するためのアプリIDと,そのアプリIDで示されるアプリケーションが使用中のネットワーク装置数である使用数,アプリIDで示されるアプリケーションに割当済みのネットワーク装置数である割当済数を含むネットワーク資源の割当量を管理」することと,
本件補正発明の「要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定」することは,後記する点で相違するものの,
“要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの使用中又は不使用リソースに係る情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を確認可能”とする点で共通するといえる。

(ウ)引用発明では,「割当処理部の資源の割当処理では,アプリケーションで新たな資源の確保が必要になった場合に,資源種別に応じて,物理ネットワーク管理部に対して必要な資源の割当を要求し,アプリケーションが稼動する仮想計算機のアプリケーションに対して必要となる資源の追加を行い,前記割当処理部の資源の解放処理では,前記物理ネットワーク管理部からの資源の割当に失敗した場合,つまり,物理計算機に空き資源がない場合は別のアプリケーションに対して資源の解放を要求」するところ,物理計算機に空き資源がない場合とは,アプリケーションに割り当てられた不使用の資源が無い場合に他ならないこと,解放を要求する資源は,他のアプリケーションに割り当てられた資源であることは自明であるから,引用発明では,仮想計算機のアプリケーションで新たな資源の確保が必要になった場合には,まずは物理計算機の空き資源から必要となる資源の追加の割り当てを行い,割り当てられた不使用の資源が無い場合には,他のアプリケーションに割り当てられた資源の解放を要求するとみることができる。
そうすると,引用発明の「前記割当処理部の資源の解放処理では,前記物理ネットワーク管理部からの資源の割当に失敗した場合,つまり,物理計算機に空き資源がない場合は別のアプリケーションに対して資源の解放を要求」することと,
本件補正発明の「不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定し,特定された他のコンピュータに前記リソースの解放を要求」することは,後記する点で相違するものの,
“不使用リソースが無い場合に,他のコンピュータに前記リソースの解放を要求”する点で共通するといえる。

(エ)引用発明では,「資源の解放要求を受けた別のアプリケーションでは,通知を受けた資源の種別に応じて,未使用の資源の割り当てを解除し,前記割当処理部は解放要求した仮想計算機のアプリケーションに対して,通知があった種別の未使用の資源の再割り当てを行う」ところ,解放要求した仮想計算機のアプリケーションに対して再割り当てされる資源は,要求時に通知した「資源の種別」情報を伴うものであることは自明であり,“リソースに係る情報”とみることができる。
一方,本件補正発明では,「解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する」ところ,本願明細書の段落【0037】の「リソースの払い出しとは,確保済みのリソースの使用を許可することをいう。例えば,リソースの払い出しでは,当該リソースを使用するために必要な識別子(以下,「リソースID」という。)等が払い出し要求元に返却される。」との記載からすると,「リソースを使用する際に用いられる情報」は,リソースIDのような識別子が含まれると解され,上位概念では“リソースに係る情報”であるといえる。
そうすると,引用発明の「資源の解放要求を受けた別のアプリケーションでは,通知を受けた資源の種別に応じて,未使用の資源の割り当てを解除し,前記割当処理部は解放要求した仮想計算機のアプリケーションに対して,通知があった種別の未使用の資源の再割り当てを行う」ことと,
本件補正発明の「解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する」ことは,後記する点で相違するものの,
“解放の要求後に解放されたいずれかのリソースに係る情報を取得する”点で共通するといえる。

(オ)引用発明の「資源の割当処理,および,解放処理を実行させるプログラム」はリソースを管理するためのプログラムであるから,本件補正発明の「リソース管理プログラム」に対応するといえる。

イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>

「 コンピュータに,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの使用中又は不使用リソースに係る情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を確認可能とし,
不使用リソースが無い場合に,他のコンピュータに前記リソースの解放を要求し,
解放の要求後に解放されたいずれかのリソースに係る情報を取得する,
処理を実行させるリソース管理プログラム。」

<相違点1>

不使用リソースの判定に関し,本件補正発明では,「複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定」するのに対して,引用発明では,「アプリケーションが使用中のネットワーク装置数である使用数」,「割当済みのネットワーク装置数である割当済数を含むネットワーク資源の割当量を管理」するものの,「確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報」を参照することは特定されておらず,「コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定」することについて明記されていない点。

<相違点2>

不使用リソースを確保する他のコンピュータの特定に関し,本件補正発明では,「不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定し,特定された他のコンピュータに前記リソースの解放を要求」するのに対して,引用発明では,不使用リソースが無い場合に,他のコンピュータにリソース(資源)の解放を要求するものの,「不使用リソースの有無を示す情報」を参照して特定した他のコンピュータに対して要求することについて明記されていない点。

<相違点3>

解放の要求後に取得するリソースに係る情報に関し,本件補正発明では,「解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する」のに対して,引用発明では,解放の要求後に解放されたリソース(資源)に係る情報を取得するものの,解放要求後の待機時間,所定時間内に解放された「リソースを使用する際に用いられる情報」を取得することについては特定されていない点。


(4)当審の判断

上記相違点1乃至3について検討する。

ア 相違点1について

引用発明では,「ネットワーク管理テーブル」により,「割当済みのネットワーク装置数」および実際に使用中の「ネットワーク装置」の数を把握可能とし,「割当済みのネットワーク装置数」と「使用中のネットワーク装置数」との差から,「仮想計算機」における不使用リソースの有無を確認可能としているといえる。
また,不使用リソースの確認をする場合に,「割当済みのネットワーク装置数」と「使用中のネットワーク装置数」との差から,不使用リソースの有無を確認可能とするか,不使用リソースの有無を直接示す情報を別に参照可能として,当該情報に基づき不使用リソースの有無を判定可能とするかは,当業者が必要に応じて選択可能な設計的事項である。
そうすると,引用発明において,割当済みのネットワーク装置数と使用中のネットワーク装置数との差から,仮想計算機における不使用リソースの有無を確認することに代えて,複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照可能として,コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定すること,すなわち,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

引用発明では,「仮想計算機」の「アプリケーション」は,「物理計算機に空き資源がない場合は別のアプリケーションに対して資源の解放を要求」するところ,当該「アプリケーション」に割り当てられたリソース(資源)に不使用リソースが無い場合に,他のアプリケーションにリソースの解放を要求するといえる。
また,引用発明では,「割当処理部のネットワーク管理テーブル」において,「実行中のアプリケーション」に対応して「割当済みのネットワーク装置数」と「使用中のネットワーク装置数」が記録されているが,引用例1の段落【0116】,図19の記載からすると,「ネットワーク管理テーブル」は,複数の「実行中のアプリケーション」の不使用リソースに係る情報を一括して管理する態様を含むと解される。
そして,他のアプリケーションにリソースの解放を要求する場合に,他のアプリケーションの不使用リソースに係る情報を管理するネットワーク管理テーブルを参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定してから要求する程度のことは,当業者にとって設計的事項に過ぎない。
そうすると,引用発明において,適宜,ネットワーク管理テーブルで不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定可能とし,アプリケーションに割り当てられたリソースの中に不使用リソースが無い場合に,特定された他のコンピュータにリソースの解放を要求すること,すなわち,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について

引用発明では,「仮想計算機」の「アプリケーション」は,解放の要求後に解放されたリソース(資源)に係る情報を取得するところ,アプリケーション間のリソース管理に関し,解放を要求したアプリケーションの通知待ち時間を指定し,通知待ち時間内にリソースが解放されない場合には解放待ちを解除する旨の技術は,例えば,参考文献4(上記H,Jを参照)に記載されるように,本願出願前には当該技術分野の周知技術であった。
そして,通知待ち時間内にリソースが解放されない場合に,アプリケーションのリソース解放待ちを解除することは,解放の要求後に所定時間待機することに他ならず,アプリケーションが資源の解放を要求する引用発明において,上記周知技術を適用することに阻害要因も認められない。
また,解放の要求後に取得するリソース(資源)に係る情報について,例えば,引用例2(上記Fを参照)には,コンピュータ間で提供するリソースのリソースIDを通知すること,また,引用例3(上記Gを参照)には,リソース番号で管理されるリソースをコンピュータ間で要求,借用することが記載されるように,コンピュータ間でのリソース管理に関し,解放されたリソースをコンピュータがリソースIDで把握することは,当該技術分野の常套手段であり,引用発明において,解放の要求後に取得する解放されたリソースに係る情報を適宜,リソースを使用する際に用いられる情報とすることも設計的事項に過ぎない。
そうすると,引用発明において上記周知技術を適用し,適宜,解放の要求後に所定時間待機した後で,所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得すること,すなわち,上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

エ 小括

上記で検討したごとく,相違点1乃至3に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,上記引用発明及び,引用例2,3,参考文献1に記載の当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。


4 補正却下の決定のむすび

上記「3 独立特許要件」で指摘したとおり,補正後の請求項1に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成28年4月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,補正後の請求項1に対応する補正前の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年12月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「 コンピュータに,
要求に応じて実行する処理において使用するリソースを共用する複数のコンピュータそれぞれの,確保済みのリソースのうちの不使用リソースの有無を示す情報を参照して,前記コンピュータにおける不使用リソースの有無を判定し,
前記不使用リソースが無い場合に,前記情報を参照して,不使用リソースを確保している他のコンピュータを特定し,
特定された他のコンピュータに前記リソースの解放を要求し,
要求に応じて解放されたリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,
処理を実行させるリソース管理プログラム。」

2 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された,引用発明は,前記「第2 平成28年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は,前記「第2 平成28年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明の発明特定事項である「前記解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に解放されたいずれかのリソースを使用する際に用いられる情報を取得する,」から「前記解放の要求後に所定時間待機した後で,前記所定時間内に」および「いずれかの」との限定事項を削除したものである。

そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,前記「第2 平成28年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」乃至「(4)当審の判断」に記載したとおり,引用発明及び,引用例2,3に記載の当該技術分野の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-20 
結審通知日 2017-01-04 
審決日 2017-02-07 
出願番号 特願2012-227850(P2012-227850)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 宏一  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 須田 勝巳
辻本 泰隆
発明の名称 リソース管理プログラム、リソース管理方法、及び情報処理装置  
代理人 加藤 隆夫  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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