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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1326564
審判番号 不服2016-14507  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-28 
確定日 2017-04-24 
事件の表示 特願2013-541948「フレキシブル基板上に電気構成要素を組み立てる方法および装置、ならびに電気構成要素とフレキシブル基板との組立体」拒絶査定不服審判事件〔2012年 6月 7日国際公開、WO2012/074405、平成25年12月26日国内公表、特表2013-546188、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年12月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年12月3日、欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成27年9月24日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年5月24日付け(発送日:同年5月30日)で拒絶査定がされ、これに対し、同年9月28日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年9月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という)の適否
1 補正の内容
(1) 請求項1について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「電気接点(31)を含む構成要素(30)を基板(10)と組み立てる方法であって、
前記基板の第1の主平面(11)上に前記構成要素(30)を配置するステップと、
マシンビジョンのステップを適用して前記電気接点の位置を推定するステップと、
導電性材料またはその前駆物質を堆積させるステップと、
を含む方法において、
前記導電性材料またはその前駆物質が、前記構成要素が画定する前記基板のエリアの上に、前記エリアを水平に越えて延在する1つまたは複数の層として堆積させられることを特徴とし、
前記電気接点の前記推定された位置に基づいて区切りラインを計算するステップと、
前記区切りラインに沿って前記層から局所的に材料を除去して少なくとも1つのスリットを前記層に形成することによって、前記層を互いに絶縁されたエリア(32d)に区切るステップと、
をさらに特徴とし、
前記少なくとも1つのスリットは、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する方法。」(下線は請求人が付与。以下同様。)
とする補正(以下「補正事項1」という)を含んでいる。

(2) 請求項5について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項5を、
「電気接点(31)を有する構成要素(30)を基板(10)と組み立てる装置であって、
前記基板の第1の主平面(11)上に前記構成要素(30)を配置する第1の設備(B1)と、
マシンビジョンのステップを適用して前記電気接点の位置を推定する第2の設備(C1、C2)と、
導電性材料またはその前駆物質を堆積させる第3の設備(F)と、
を含む装置において、
前記第3の設備(F)が、前記構成要素が画定する前記基板のエリアの上に、前記エリアを水平に越えて延在する1つまたは複数の層として前記導電性材料またはその前駆物質を堆積させるように配列されることを特徴とし、
前記電気接点の前記推定された位置に基づいて区切りラインを計算する第4の設備(H)と、
前記区切りラインに沿って前記層から局所的に材料を除去して少なくとも1つのスリットを前記層に形成することによって、前記層を互いに絶縁されたエリア(32d)に区切る第5の設備と、
をさらに特徴とし、
前記少なくとも1つのスリットは、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する装置。」
とする補正(以下「補正事項2」という)を含んでいる。

(3) 明細書の段落【0057】について
本件補正は、明細書の段落【0057】を、
「図4に示す装置は、基板を供給設備Aから、キャビティを形成するための設備B2に沿って導く誘導ロールE1、E2と、構成要素30を配置する設備B1と、構成要素30を登録するカメラC1と、基板10に穴をあけるレーザDと、導電性層32を堆積させるスクリーン印刷設備Fと、堆積層32を硬化させる硬化設備Gと、区切りパターンの区切りラインに沿って前記層32から局所的に材料を除去することによって、層を互いに絶縁されたエリアに区切るパターン形成設備と、を有する。」
とする補正(以下「補正事項3」という)を含んでいる。

2 補正の適否
(1) 補正事項1について
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「層を互いに絶縁されたエリア(32d)に区切るステップ」について、補正前に「材料を除去することによって」とあったものを、「材料を除去して少なくとも1つのスリットを前記層に形成することによって」に限定し、
請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する」ものについて、補正前に「各区切りライン」とあったものを、「前記少なくとも1つのスリット」に限定するものであって、
補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 刊行物の記載事項
(ア) 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2010/071426号(以下「引用文献1」という)には、「フレキシブル電子製品およびその製造方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア-1) 「According to the third step of the method the position of the at least one electrical terminal 31 is estimated, e.g. with a computer vision system comprising a camera H and a data processing system I.
・・・(中略)・・・
Also it is possible to directly observe the position of the at least one electrical terminal 31 via the foil 10.」(8ページ15行?25行)
「方法の第3のステップによれば、例えば、カメラHおよびデータ処理システムIを含むコンピュータビジョンシステムを用いて、少なくとも1つの電気端子31の位置が推定される。本ステップS3を実行するにはいくつかの選択肢がありうる。例えば、コンピュータビジョンシステムH、Iは部品30の位置および配向を判定すればよく、その位置および配向が分かれば、電気端子31の位置も分かる。箔10が不透明である場合は、部品30の位置および配向は第1の主面から観測されればよい。箔10が透明である場合は、部品30の位置および配向は箔10の第1の主面11からまたは箔の第2の主面12からのいずれかから観測されればよい。同様に、箔10を介して少なくとも1つの電気端子31の位置を直接、観測することも可能である。」(段落【0023】)(「」内は翻訳文。翻訳文は、引用文献1に対応する国内公表である特表2012-512541号公報を用いた。以下同様。)

(ア-2) 「In the embodiment of the method described above, manufacturing of the flexible electronic product is strongly facilitated by the presence of the adhesive layer 13, as the adhesive layer adheres the component 30 immediately after placement. The adhesive layer 13 further serves to adhere the foils 50, 60.」(11ページ22行?25行)
「上述の方法の実施形態では、接着層13の存在によってフレキシブル電子製品の製造が大変容易になる。なぜなら、接着層が、装着の直後に部品30を接着させるからである。接着層13は箔50、60を接着させる役目をさらに果たす。」(段落【0034】)

(ア-3) 「Figures 8A,B to Figure 11A,B show an alternative embodiment of a method according to the invention. Parts therein corresponding to those of Figure 1-7 have a reference number that is 100 higher.
・・・(中略)・・・
In this case, the electrical interconnect is formed by a conversion from conductive to non-conductive within two conversion zones encapsulating the conductive adhesive between two non-conductive parts of the adhesive, providing an electrical interconnect between the corresponding terminals.」(11ページ28行?13ページ28行)
「図8A、Bないし図11A、Bは本発明による方法の代替実施形態を示す。その中の、図1?図7のものに対応する部分は、100大きい参照符号を有する。
図8A、図8Bに示されるステップS11では、フレキシブル箔110に互いに対向する第1の主面111および第2の主面112が設けられる。
図9A、図9Bに示されるステップS12では、箔110の主面111において接着剤124が提供される。
図10A、図10Bに示されるステップS13では、フレキシブル箔110の第1の主面111に部品130が装着される。部品は、第2の主面112の方を向く少なくとも1つの電気端子131を有する。図示の実施形態では、部品は複数の端子131を有する。
それに続き、上述されたとおりの方法によって少なくとも1つの電気端子131の位置が推定される。
図11A、図11Bに示されるステップS14では、少なくとも1つの電気端子131への導電路125Aが適応的に形成される。それとともに推定位置が用いられる。導電路125Aは、接着剤124の変換ゾーン125内の導電性特性を変換することによって形成される。変換ゾーンの位置および/または配向は推定位置によって決まる。
図11Bに示されるように、これは、高密度に配置される比較的多数の出力を有する部品の組み立てに特に関連がある。本発明は、高密度に配置されるが不正確に位置決めされるこれらの電気端子131と、コーサーな画定される導電性構造の一部であればよい、箔110におけるさらなる端子125Cとの間の信頼性の高い接続部を可能にする。
図11Cは、部品130のこのような端子131と箔における端子125Cとの間に形成される接続部125Aの細部を示す。
接着剤の種類に応じて、接着剤の導電性特性の変換は種々の機構によって実現されることができる。これらの機構のいくつかの例が以下に示される。
1つの種類の接着剤の例では、導電性粒子を含む、いわゆる非導電性の異方性導電性接着剤(Anisotropic Conductive Adhesive、ACA)が、粒子のパーコレーション閾値を超え、導電性構造を生じさせるまで加圧される。
別の種類の接着剤では、熱分解が起こる。熱分解は、熱の影響下における接着剤の、とりわけ導電性材料、例えば導電性炭素材料、への分解を生じさせる。この種の接着剤は非導電性有機熱可塑性接着剤類および非導電性有機接着剤類の群から選択されることができる。
導電性粒子および光触媒を含むさらに別の種類の接着剤には、光または他の電磁放射線が当てられる。導電性粒子は絶縁シェル内に埋め込まれている。光吸収が絶縁シェルを破壊させ、接着剤の、非導電性から導電性への変換を生じさせる。この機構は熱の影響下でも起こり、その場合は、熱が非導電性シェルを破壊させる。
同様に、上述の接着剤の種類の組み合わせも可能である。
考えられる接着剤の1つとして、エマソンXE3103WLV等方性導電性接着剤、76重量%の銀含有量を有するエポキシ接着剤、が挙げられる。1つの実施形態では、箔110の表面全体が変換可能接着剤124によって被覆される。しかし、コストを節減するために、高価な変換可能接着剤は端子131の上およびその周囲にのみ提供されることができ、一方、他のエリアでは、より安価な非変換可能接着剤が提供されることができる。このようにして、特別なI/O領域が、個々の接点の高分解度(ファインピッチ)のアレイが画定されるサブ構造を作り出せばよい。
1つの実施形態では、接着剤124は非導電性であり、接着剤の導電性特性は非導電性から導電性に変換される。図9A、図9B、図10A、図10B、図11A、図11Bでは、導電性変換部品が導電性端子125Bおよび125Cの間の水路状の変換ゾーン125A内で変換され、対応する端子同士間の電気的相互接続部を提供する一実施形態が示されている。図11Cにおいてより詳細に示されるように、導電性端子125Bは部品130の少なくとも1つの電気端子131の向かい側に配置される。
別の実施形態では、導電性接着剤は導電性から非導電性に変換される。この場合、電気的相互接続部は2つの変換ゾーン内における導電性から非導電性への変換によって形成され、接着剤の2つの非導電性部分の間に導電性接着剤を密閉し、対応する端子同士間の電気的相互接続部を提供する。」(段落【0036】?【0051】)

(ア-4) Figure10Aを参酌すると、変換可能接着剤124が、フレキシブル箔110の第1の主面111に、部品130より広い範囲にわたって提供されていることが看取される。

以上のことから、引用文献1には、補正発明1の記載ぶりに則って整理すると、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「電気端子131を含む部品130をフレキシブル箔110と接続するフレキシブル電子製品の製造方法であって、
前記フレキシブル箔110の第1の主面111上に前記部品130を装着するステップS13と、
カメラHおよびデータ処理システムIを含むコンピュータビジョンシステムを用いて前記電気端子131の位置を推定することと、
フレキシブル箔110の第1の主面111に、光または他の電磁放射線が当てられることにより導電性から非導電性に変換される変換可能接着剤が提供されるステップS12と、
を含む方法において、
前記変換可能接着剤が、前記フレキシブル箔110の第1の主面111に、部品130より広い範囲にわたって提供されており、
前記電気端子131の前記推定された位置に基づいて変換ゾーン125の位置/または配向を決めることと、
前記変換ゾーン125の導電性特性を変換する部分内の変換可能接着剤の導電特性を導電性から非導電性に変換するステップS14と、
を有する方法。」

(イ) 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭54-45574号公報(以下「引用文献2」という)には、「集積回路の接続方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(イ-1) 「本発明の集積回路の接続方法においては、まず第2図に示す如く基板2の凹部23に集積回路チップ1を嵌合する。この例においては集積回路チップ1の上面12は基板2の底面22と略同一の高さとなり又、集積回路チップ1の電極11の上面と外部リード21の上面も略同一の高さとなっているが必ずしもこのように構成する必要はない。
次に集積回路チップ1を含む該集積回路チップ1が嵌合された基板2の底面22にエポキシ樹脂あるいはテフロン樹脂等の絶縁材を流し込み第3図に示す如く絶縁層3を形成する。集積回路チップ1の上面12あるいは基板2の底面22がレーザービームの照射により障害を受けてはいけない場合は更に酸化シリコン等の緩衝層を設ける必要があるが、絶縁層3あるいは緩衝層はその上面に集積回路チップ1の電極11及び外部リード21の少くとも上面が露出できる厚さ以下でなければならない。
次に上述の如く構成され、電極11及び外部リード21の上面が絶縁層3上に露出した集積回路チップ1と基板2に対して、前記絶縁層3上の前記電極11及び外部リード21を含む面上にスパッタリングあるいは蒸着等の方法により第4図に示す如く導電体層4を形成する。該導電体層4は6個の電極11と6個の外部リード21とを共通に電気的に接続するが、この接続は機械的にも極めて安定なものである。
次に上述の如く、全ての電極11と全ての外部リード21とが1個の導電体層4により共通に接続された集積回路チップ1及び基板2において、導電体層4の絶縁分離を必要とする部分にレーザービームを照射し、第5図に示す如く導電体層4の該部分を除去すれば残りの導電体層4で必要とする導電路が形成され、該導電路により集積回路チップ1の電極11のそれぞれと外部リード21のそれぞれとが電気的に接続される。」(2ページ左上欄9行?左下欄6行)

(イ-2) 第5図(イ)を参照すると、導電体層4の除去した部分は、一定の幅ではなく、集積回路チップ1から離れるにつれて幅が広くなっていることが看取される。

イ 対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「電気端子131」は、補正発明1の「電気接点(31)」に相当する。
以下同様に、「部品130」は、「構成要素(30)」に、
「フレキシブル箔110」は、「基板(10)」に、
「電気端子131を含む部品130をフレキシブル箔110と接続するフレキシブル電子製品の製造方法」は、「電気接点(31)を含む構成要素(30)を基板(10)と組み立てる方法」に、
「第1の主面111」は、「第1の主平面(11)」に、
「フレキシブル箔110の第1の主面111上に前記部品130を装着するステップS13」は、「基板の第1の主平面(11)上に前記構成要素(30)を配置するステップ」に、
「カメラHおよびデータ処理システムIを含むコンピュータビジョンシステムを用い」ることは、「マシンビジョンのステップを適用」することに、
「電気端子131の位置を推定すること」は、「電気接点(31)の位置を推定するステップ」に、
「光または他の電磁放射線が当てられることにより導電性から非導電性に変換される変換可能接着剤」は、「導電性材料またはその前駆物質」に、
「フレキシブル箔110の第1の主面111に、光または他の電磁放射線が当てられることにより導電性から非導電性に変換される変換可能接着剤が提供されるステップS12」は、「導電性材料またはその前駆物質を堆積させるステップ」に、
「変換ゾーン125の導電性特性を変換する部分」は、「区切りライン」に、
「前記電気端子131の前記推定された位置に基づいて変換ゾーン125の位置/または配向を決めること」は、「前記電気接点の前記推定された位置に基づいて区切りラインを計算するステップ」に、
「前記変換ゾーン125の導電性特性を変換する部分内の変換可能接着剤124の導電特性を導電性から非導電性に変換するステップS14」は、「前記区切りラインに沿って」、「前記層を互いに絶縁されたエリア(32d)に区切るステップ」に、それぞれ相当する。

引用発明では、「前記変換可能接着剤124が、前記フレキシブル箔110の第1の主面111に、部品130より広い範囲にわたって提供されて」いるから、引用発明は、「導電性材料またはその前駆物質が、前記構成要素が画定する前記基板のエリアの上に、前記エリアを水平に越えて延在する1つまたは複数の層として堆積させられ」ているといえる。

以上のことから、補正発明1と引用発明とは次の点で一致する。
「電気接点を含む構成要素を基板と組み立てる方法であって、
前記基板の第1の主平面上に前記構成要素を配置するステップと、
マシンビジョンのステップを適用して前記電気接点の位置を推定するステップと、
導電性材料またはその前駆物質を堆積させるステップと、
を含む方法において、
前記導電性材料またはその前駆物質が、前記構成要素が画定する前記基板のエリアの上に、前記エリアを水平に越えて延在する1つまたは複数の層として堆積させられ、
前記電気接点の前記推定された位置に基づいて区切りラインを計算するステップと、
前記区切りラインに沿って、前記層を互いに絶縁されたエリアに区切るステップと、
を有する方法。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
層を互いに絶縁されたエリアに区切ることに関して、補正発明1では、「層から局所的に材料を除去して少なくとも1つのスリットを前記層に形成することによって」区切り、「前記少なくとも1つのスリットは、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する」のに対して、
引用発明では、材料を除去してスリットを形成するものではない点。

ウ 判断
上記相違点について検討する。
引用文献2(「ア(イ)」を参照)には、電極11及び外部リード21を含む面上に、スパッタリングあるいは蒸着等の方法により導電体層4を形成し、該導電体層4の絶縁分離を必要とする部分にレーザービームを照射し、該部分を除去し、残りの導電体層4で導電路を形成すること、及び導電体層4の除去した部分は、一定の幅ではなく、集積回路チップ1から離れるにつれて幅が広くなっていることが記載されている(以下「引用文献2に記載された事項」という)。

ところで、引用発明(特に、引用文献1のFigure10Aを参照。)では、フレキシブル箔110の第1の主面111に変換可能接着剤が提供され、該変換可能接着剤を介してフレキシブル箔110の第1の主面111上に部品130を装着しているから、該変換可能接着剤が部品130を接着する機能を備えていることは、引用発明において必須の構成といえる。
そして、引用発明において、変換可能接着剤に換えて、引用文献2に記載された事項のスパッタリングあるいは蒸着等の方法により形成された導電体層を適用した場合には、当該導電体層がフレキシブル箔110と部品130との間に存在することになり、フレキシブル箔110の第1の主面111上に部品130を接着できるとはいえないから、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用することを妨げる阻害要因がある。
また、仮に引用発明に引用文献2に記載された事項を適用し、変換可能接着剤に換えて設けた導電体層の、絶縁分離を必要とする部分にレーザービームを照射し、該部分を除去したとしても、引用文献2に記載された事項では、導電体層の除去した部分は、一定の幅ではなく、集積回路チップ1から離れるにつれて幅が広くなっているから、「前記少なくとも1つのスリットは、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する」ことまでは、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

したがって、補正発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2) 補正事項2について
本件補正の補正事項2は、請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「層を互いに絶縁されたエリア(32d)に区切る第5の設備」について、補正前に「層から局所的に材料を除去することによって」とあったものを、「層から局所的に材料を除去して少なくとも1つのスリットを前記層に形成することによって」に限定し、
請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する」ものについて、補正前に「各区切りライン」とあったものを、「前記少なくとも1つのスリット」に限定するものであって、
補正前の請求項5に記載された発明と補正後の請求項5に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項5に記載された発明(以下「補正発明5」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

補正発明5は、方法の発明である補正発明1を、「装置」という物の発明としたものであって、「前記区切りラインに沿って前記層から局所的に材料を除去して少なくとも1つのスリットを前記層に形成することによって、前記層を互いに絶縁されたエリア(32d)に区切る第5の設備」及び「前記少なくとも1つのスリットは、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する」との構成を備えているから、前記相違点に係る補正発明1の構成に対応する構成を備えるものである。
すると、補正発明5は、補正発明1と同様に、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、本件補正の補正事項2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(3) 補正事項3について
本件補正の補正事項3は、補正前の明細書の段落【0057】に、「図4に示す装置は、供給設備Aから基板を設備B2に沿ってガイドしてキャビティを形成するため誘導ロールE1、E2と、 ・・・(以下略)」 とあったものを、「図4に示す装置は、基板を供給設備Aから、キャビティを形成するための設備B2に沿って導く誘導ロールE1、E2と、 ・・・(以下略)」とするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するところはない。

3 むすび
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?9に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明1」?「本願発明9」という)。
「【請求項1】
電気接点(31)を含む構成要素(30)を基板(10)と組み立てる方法であって、
前記基板の第1の主平面(11)上に前記構成要素(30)を配置するステップと、
マシンビジョンのステップを適用して前記電気接点の位置を推定するステップと、
導電性材料またはその前駆物質を堆積させるステップと、
を含む方法において、
前記導電性材料またはその前駆物質が、前記構成要素が画定する前記基板のエリアの上に、前記エリアを水平に越えて延在する1つまたは複数の層として堆積させられることを特徴とし、
前記電気接点の前記推定された位置に基づいて区切りラインを計算するステップと、
前記区切りラインに沿って前記層から局所的に材料を除去して少なくとも1つのスリットを前記層に形成することによって、前記層を互いに絶縁されたエリア(32d)に区切るステップと、
をさらに特徴とし、
前記少なくとも1つのスリットは、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する方法。
【請求項2】
前記構成要素(30)の前記電気接点(31)の1つまたは複数が、前記基板から外の方を向いており、かつ前記1つまたは複数の層の1つが、前記基板(10)の前記第1の主平面(11)に堆積させられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構成要素(30)の前記電気接点(31)の1つまたは複数が、前記基板の方を向いており、
前記方法は、前記基板の方を向いている前記構成要素(30)の前記電気接点(31)の1つまたは複数が前記基板の第2の主平面(12)で露出されるように、前記基板に穴(18)をあける追加のステップを含み、かつ前記1つまたは複数の層の1つが、前記第2の主平面(12)に堆積させられる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板(10)の前記穴(18)が、前記基板の前記第1の主平面(11)から前記第2の主平面(12)の方向で外に向かうようにテーパ付けされる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
電気接点(31)を有する構成要素(30)を基板(10)と組み立てる装置であって、
前記基板の第1の主平面(11)上に前記構成要素(30)を配置する第1の設備(B1)と、
マシンビジョンのステップを適用して前記電気接点の位置を推定する第2の設備(C1、C2)と、
導電性材料またはその前駆物質を堆積させる第3の設備(F)と、
を含む装置において、
前記第3の設備(F)が、前記構成要素が画定する前記基板のエリアの上に、前記エリアを水平に越えて延在する1つまたは複数の層として前記導電性材料またはその前駆物質を堆積させるように配列されることを特徴とし、
前記電気接点の前記推定された位置に基づいて区切りラインを計算する第4の設備(H)と、
前記区切りラインに沿って前記層から局所的に材料を除去して少なくとも1つのスリットを前記層に形成することによって、前記層を互いに絶縁されたエリア(32d)に区切る第5の設備と、
をさらに特徴とし、
前記少なくとも1つのスリットは、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する装置。
【請求項6】
前記構成要素(30)を受けるために、前記基板(10)中にキャビティ(14)を形成する設備(B2)をさらに含む請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記基板の第2の主平面で前記構成要素の電気接点を露出させる穴を形成するように、前記基板に穴あけする設備をさらに含む請求項5に記載の装置。
【請求項8】
電気接点(31)を有する電子構成要素(30)とフレキシブル基板(10)との組立体であって、導電性材料またはその前駆物質を含む組立体において、
前記電子構成要素が画定する前記フレキシブル基板のエリアの上に、前記エリアを水平に越えて延在する1つまたは複数の層として前記導電性材料またはその前駆物質を含み、
前記層が、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する前記層における少なくとも1つのスリットによって、互いに絶縁されたエリア(32d)に区切られることを特徴とする組立体。
【請求項9】
前記スリットの前記長さ/幅の比が少なくとも20である請求項8に記載の組立体。」

そして、本願発明1(補正発明1)及び本願発明5(補正発明5)は、上記「第2 2」のとおり、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明2?本願発明4は、本願発明1を直接又は間接的に引用し、本願発明1を更に限定した発明であるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明6及び本願発明7は、本願発明5を引用し、本願発明5を更に限定した発明であるから、本願発明5と同様に、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明8は、方法の発明である本願発明1を、「組立体」という物の発明としたものであって、「層が、長さに比べて少なくともその1/10より小さい実質的に一定の幅を有する前記層における少なくとも1つのスリットによって、互いに絶縁されたエリア(32d)に区切られること」との構成を備えているから、前記相違点に係る補正発明1の構成に対応する構成を備えるものである。
すると、本願発明8は、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明9は、本願発明8を引用し、本願発明8を更に限定した発明であるから、本願発明8と同様に、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-07 
出願番号 特願2013-541948(P2013-541948)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 中川 隆司
小関 峰夫
発明の名称 フレキシブル基板上に電気構成要素を組み立てる方法および装置、ならびに電気構成要素とフレキシブル基板との組立体  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  

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