• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63H
管理番号 1326598
審判番号 不服2015-21711  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-07 
確定日 2017-04-24 
事件の表示 特願2012-219947「相互連結可能で変形可能な玩具構成要素」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 69017、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月2日に出願された特許法第36条の2第1項の規定による特許出願であって、原審において平成26年10月28日付け、及び平成27年6月3日付けで手続補正書が提出され、同年8月4日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 同月7日。)がされ、これに対して、同年12月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成28年9月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対する3通の期間延長請求書が提出された後、延長が認められた期間内の平成29年3月6日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願の発明
本願の請求項1ないし14に係る発明(以下「本願発明1ないし14」という。)は、平成29年3月6日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりのものである。
「【請求項1】
1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素と相互連結可能な変形可能な玩具構成要素であって;
前記変形可能な玩具構成要素は、少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面および複数の可動取付け型の部材を含み;
前記変形可能な玩具構成要素は、前記可動取付け型の部材の1つまたは2つ以上を操作すると、収縮状態と、1つまたは2つ以上の拡張状態との間で変形可能であるとともに、前記変形可能な玩具構成要素は、収縮状態において相互連結可能な標準的な構成ブロックの形態であり、前記1つまたは2つ以上の拡張状態の内の少なくとも1つの状態においてトイフィギュアの形態であって、
前記少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面の各々は、前記変形可能な玩具構成要素が前記収縮状態および前記1つまたは2つ以上の拡張状態の内の少なくとも1つの状態である場合に、前記1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素の少なくとも1つの第二の表面と解除可能に相互連結可能であり、前記1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素は、相互連結可能な標準的な構成ブロックを含み、
前記少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面と前記少なくとも1つの相互連結可能な第二の表面は、スタッドと、滑り摩擦嵌めでスタッドに解除可能に結合するように成形された凹部とから、それぞれ独立に選択されるそれぞれ1つ以上の、一定の相互間隔をあけて設けられる一定の寸法のカップリングコネクタを有し、各スタッドは、別の玩具構成要素上の1つ以上の規則的に配列した相補的凹部と解除可能に結合するように適合されており、各凹部は、別の玩具構成要素上の1つ以上の規則的に配列した相補的スタッドと解除可能に結合するように適合されており、
前記玩具構成要素の収縮状態において、前記少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面が1つ以上のスタッドを有するが凹部は有さない相互連結可能な第一のスタッド面、および、1つ以上の凹部を有するがスタッドを有さない相互連結可能な第一の凹部面を含み、相互連結可能な第一のスタッド面は相互連結可能な第一の凹部面と平行で反対向きに存在するものである、前記変形可能な玩具構成要素。」

なお、本願発明2ないし14の概要は以下のとおりである。

本願発明2ないし6は、本願発明1を引用し、これを更に減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明1ないし6の少なくとも1つの「変形可能な玩具構成要素」を含む、「複数の相互連結可能な玩具構成要素を含む、キット」の発明である。
本願発明8は、本願発明1ないし6に対応する製造方法の発明であり、本願発明9ないし11は、本願発明8を引用し、これを更に減縮した発明である。
本願発明12は、本願発明1ないし6のいずれか1つの「変形可能な玩具構成要素」を組み立てるためのキットの発明であり、本願発明13は、本願発明12を引用し、これを更に減縮した発明である。
本願発明14は、基本的な発明特定事項を本願発明1と同じくしており、本願発明1が「少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面」を含むのに対して、本願発明14は「少なくとも1つの相互連結可能な第一の表面」を含むとした発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開昭61-159981号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(以下の下線は、いずれも審決で付した。)
「(課題を解決するための手段)
上記課題を解決するための手段として、この発明は、複数の下記要件を備えるブロック要素から成ることを特徴とする。
(イ)ブロック要素はロボット形状を有し、かつ脚部を胴体部に対し略180度折曲げ自在に軸受させていること。
(ロ)ブロック要素は折曲げ状態において全体がキューブ状に形成されること。
(ハ)ブロック要素は上記キューブ形状においてその六面に嵌合用凹部及び凸部が形成されていること。」(第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第8行)
「(実施例)
以下、図面によってこの発明の実施例について説明する。
図において、符号Aは組み替えブロック玩具を構成するブロック要素を示す。ブロック要素Aは・・・通常の形態においてロボット形状を成し、胴体部10の上部に頭部20を設け、さらに左右両側に腕部30、30、下部に脚部40、40をそれぞれ回動自在に設けたもので、上記ブロック要素Aの表面各部には互いに嵌まり合う凸部P又は凹部Qが形成されている。すなわち、胴体部10には前面上部に横に2個の角形凹部Q、Qが、前面下部に円形凹部Qが形成され、後面に円形凸部Pが形成されている。頭部20は胴体部10上面に一体に形成され、それ自体円形凸部Pとして構成されている。次に、腕部30には肩部分の外側面に円形凹部Qが形成されている。脚部にはその前面に横に2個の角形凸部P、Pが形成され、後面の中央部には円形凹部Qが、両側面には上下部にはそれぞれ円形凸部P及び円形凹部Qが形成され、さらに底面には3個の円形凹部Q、Q、Qが連続形成されている。以上のように、ロボット形状において、その前後面、上下面及び両側面の六面に互いに嵌まり合う円形凸部P及び凹部Q又は角形凸部P及び凹部Qが形成されている。」(第2頁左上欄第19行?同左下欄第5行)
「次に、脚部40、40は胴体部10に対し回動軸50によって略180度折曲げ自在に軸受されている。また、脚部40、40の基端部にはその長手方向に二つの嵌合用円形凸部P1、P1が形成されている。これらの円形凸部P1、P1間の間隔は、上記脚部の底面の両側の円形凹部Q、Q間の間隔と等しく形成されている。」(第2頁左下欄第11?18行)
「このように、キューブ状態においてブロック要素は縦横、前後いずれの方向にも結合させて平面状に接続させることができる。
次に、ブロック要素は前後のブロック要素に跨って他のブロック要素を結合させることができる。」(第3頁左上欄第20行?同右上欄第5行)
「上述のように、折曲げ状態に変化させたとき、その六面全てに嵌合用凸部P、P1及び凹部Qが形成されているので、多様な組み替えが可能となる。しかも、上述のキューブ状態にロボット状態の形態でも合体結合できるから、色々に組み替えて任意の形態のものを作り出すことができる。」(第3頁左下欄第1?7行)
第3図(a)、(b)から、ブロック要素をキューブ状態としたとき、2つの相互連結可能な一方の表面が1つ以上の凸部を有するが凹部は有さない相互連結可能な凸部面、および、1つ以上の凹部を有するが凸部を有さない相互連結可能な凹部面を含むとともに、2個の角形凹部Q、Qを設けた面と2個の角形凸部P、Pを設けた面とが平行で反対向きに存在するものとなっていることが看取できる。

上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認定できる。
「ロボット形状を有し、かつ脚部及び腕部をそれぞれ胴体部に対して回動自在に設け、折曲げ状態において全体がキューブ状に形成されるブロック要素であって、
ロボット形状において、その前後面、上下面及び両側面の六面に互いに嵌まり合う円形凸部P及び凹部Q又は角形凸部P及び凹部Qが形成されて、脚部40、40の基端部にはその長手方向に二つの嵌合用円形凸部P1、P1が形成されていて、これらの円形凸部P1、P1間の間隔は、上記脚部の底面の両側の円形凹部Q、Q間の間隔と等しく形成され、
ブロック要素をキューブ状態にしたとき、2つの相互連結可能な一方の表面が1つ以上の凸部を有するが凹部は有さない相互連結可能な凸部面、および、1つ以上の凹部を有するが凸部を有さない相互連結可能な凹部面を含むとともに、2個の角形凹部Q、Qを設けた面と、2個の角形凸部P、Pを設けた面とが平行で反対向きに存在するものとなり、
ブロック要素は他のブロック要素を結合させることができ、キューブ状態にロボット状態の形態でも合体結合できる
ブロック要素。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(実願昭61-203804号(実開昭63-106492号)のマイクロフィルム)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「第1図(a)及び(b)は本考案の一実施例に係る組合せ変形玩具を構成する第1の玩具体の・・・外観構成説明図、第2図(a)及び(b)は第2の玩具体の変形前及び変形後の外観構成説明図・・・である。」(第4頁第16行?第5頁第1行)
「各腕部材32は、自在継手である軸部31を中心として第2図(a)の位置から(b)の位置まで移行する。・・・各脚部34は、自在継手である軸部33を中心として第2図(a)の位置から夫々下方に回動して展開伸長し、第2図(b)のような状態となる。」(第8頁第2?12行)

したがって、上記引用文献2には、「組合せ変形玩具を構成する玩具体の可動構造として、自在継手を使用する」という技術事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2008-541985号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0028】
本発明の特徴に基づいて、要素の相対的な寸法設計は、図1に示されているような標準的K’NEX部品の構体が、このようなブロック要素の通常の間隔および組み立てと一致するように、互換性を有する寸法となされたブロック要素に接続されうるようになされている。・・・しかしながら、原則的に、他のロッド寸法を受け入れることができる。すなわち、長さの段階L_(1)、L_(2)?L_(n)のロッドを有するロッドおよび接続具キットでは、L_(1)(最短)からL_(n)(最長)までの長さを有することとなる。」
「【0056】
通常、図7?11に示された原理を取り入れたハイブリッド構築玩具キットは、標準的KID K’NEXロッド、接続具などとともに、既存のKID K’NEXシステムの標準的寸法と互換性を有する間隔を提供するために上述したような寸法となされた、例えば、レゴ、メガ・ブロックス、またはデュプロのブロックの構築ブロック特性を含むであろう。」

したがって、上記引用文献3には、「ブロック要素を含む構築玩具をキットとして構成する」という技術事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(実願昭61-82416号(実開昭62-194393号)のマイクロフィルム)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「本考案は、本の形状とロボット等の形状との間で可逆的に変形可能な本形変形玩具。」(第1頁第17?18行)
「更に、図示の例では、表部材1に取付けた紙葉5には、ロボット形状の背中に適するような模様が印刷等で形成してあるが、ここに変形手順等の取扱説明や商品説明を印刷すれば、小さな子供や、この種の玩具の取扱いに不慣れな女児や母親等にとって便利なものとなるし、ロボットに関する物語等を印刷すれば、一層興趣深い玩具とすることができる。」(第6頁第10?17行)

したがって、上記引用文献4には、「ロボット形状の変形玩具を構成する部材(表部材1)に、変形手順等の取扱説明を印刷しておく」という技術事項が記載されていると認められる。

第4 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
後者の「ブロック要素」は、その形状構造や機能等からみて、前者の「玩具構成要素」に相当し、以下同様に、「ブロック要素は他のブロック要素を結合させることができ、」は「1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素と相互連結可能な」に、「『折曲げ状態』、『キューブ状態』」は「収縮状態」に、「脚部及び腕部」は「複数の可動取付け型の部材」に、「ロボット状態」は「『拡張状態』、『トイフィギュアの形態』」に、それぞれ相当する。
そして、後者は、「ロボット形状を有し、かつ脚部及び腕部をそれぞれ胴体部に対して回動自在に設け、折曲げ状態において全体がキューブ状に形成されるブロック要素」、及び「ブロック要素は他のブロック要素を結合させることができ、キューブ状態にロボット状態の形態でも合体結合できる」としているところから、後者も前者と同様に、「変形可能な玩具構成要素は、可動取付け型の部材の1つまたは2つ以上を操作すると、収縮状態と、1つまたは2つ以上の拡張状態との間で変形可能であるとともに、前記変形可能な玩具構成要素は、収縮状態において相互連結可能な構成ブロックの形態である」といえる。
また、後者は、「その前後面、上下面及び両側面の六面に互いに嵌まり合う円形凸部P及び凹部Q又は角形凸部P及び凹部Qが形成されて、脚部40、40の基端部にはその長手方向に二つの嵌合用円形凸部P1、P1が形成されていて、これらの円形凸部P1、P1間の間隔は、上記脚部の底面の両側の円形凹部Q、Q間の間隔と等しく形成され」、「ブロック要素は他のブロック要素を結合させることができ」るとしているから、後者も前者と同様に、「少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面と少なくとも1つの相互連結可能な第二の表面は、スタッドと、滑り摩擦嵌めでスタッドに解除可能に結合するように成形された凹部とから、それぞれ独立に選択されるそれぞれ1つ以上の、一定の相互間隔をあけて設けられる一定の寸法のカップリングコネクタを有し、各スタッドは、別の玩具構成要素上の1つ以上の規則的に配列した相補的凹部と解除可能に結合するように適合されており、各凹部は、別の玩具構成要素上の1つ以上の規則的に配列した相補的スタッドと解除可能に結合するように適合されている」といえる。
更に、後者は、「ブロック要素は他のブロック要素を結合させることができ、キューブ状態にロボット状態の形態でも合体結合できる」としているから、後者も前者と同様に、「少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面の各々は、変形可能な玩具構成要素が収縮状態および1つまたは2つ以上の拡張状態の内の少なくとも1つの状態である場合に、1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素の少なくとも1つの第二の表面と解除可能に相互連結可能であり」としているといえる。

したがって、両者は、
「1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素と相互連結可能な変形可能な玩具構成要素であって;
前記変形可能な玩具構成要素は、少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面および複数の可動取付け型の部材を含み;
前記変形可能な玩具構成要素は、前記可動取付け型の部材の1つまたは2つ以上を操作すると、収縮状態と、1つまたは2つ以上の拡張状態との間で変形可能であるとともに、前記変形可能な玩具構成要素は、収縮状態において相互連結可能な構成ブロックの形態であり、前記1つまたは2つ以上の拡張状態の内の少なくとも1つの状態においてトイフィギュアの形態であって、
前記少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面の各々は、前記変形可能な玩具構成要素が前記収縮状態および前記1つまたは2つ以上の拡張状態の内の少なくとも1つの状態である場合に、前記1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素の少なくとも1つの第二の表面と解除可能に相互連結可能であり、
前記少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面と前記少なくとも1つの相互連結可能な第二の表面は、スタッドと、滑り摩擦嵌めでスタッドに解除可能に結合するように成形された凹部とから、それぞれ独立に選択されるそれぞれ1つ以上の、一定の相互間隔をあけて設けられる一定の寸法のカップリングコネクタを有し、各スタッドは、別の玩具構成要素上の1つ以上の規則的に配列した相補的凹部と解除可能に結合するように適合されており、各凹部は、別の玩具構成要素上の1つ以上の規則的に配列した相補的スタッドと解除可能に結合するように適合されており、
前記玩具構成要素の収縮状態において、前記少なくとも2つの相互連結可能な第一の表面が1つ以上のスタッドを有するが凹部は有さない相互連結可能な第一のスタッド面、および、1つ以上の凹部を有するがスタッドを有さない相互連結可能な第一の凹部面を含み、相互連結可能な第一のスタッド面は相互連結可能な第一の凹部面と平行で反対向きに存在するものである、前記変形可能な玩具構成要素。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明1では、玩具構成要素は、収縮状態において「標準的な構成ブロック」の形態であり、また、1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素は、相互連結可能な「標準的な構成ブロック」を含むのに対し、引用発明では、ブロック要素は、折曲げ状態において「全体がキューブ状」であるにとどまり、ブロック要素、及び他のブロック要素は、「標準的な構成ブロック」を含むものではない点。

(2)判断
上記の相違点について検討する。
上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、上記「第3 2.?4.」に示したとおり、引用文献2ないし4にも開示、あるいは示唆されてはいないし、当業者にとって通常の設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は上記発明特定事項を備えることによって、「様々な遊戯選択肢を提供して」、「異なる年齢の小児に適した、様々なレベルの難度と複雑さの遊戯選択肢を提供することができる」(段落【0004】)という、独自の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本願発明1は、引用発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし14について
本願発明2ないし14も本願発明1と同様に、玩具構成要素は、収縮状態において「標準的な構成ブロック」の形態であり、また、1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素は、相互連結可能な「標準的な構成ブロック」を含むという発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1についてと同様の理由により、引用発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定に係る拒絶理由の概要は、原査定時における請求項1ないし13に係る発明は、上記引用文献1ないし4に記載された発明あるいは周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかし、平成29年3月6日付けの手続補正により、当該補正後における本願発明1ないし14においては、玩具構成要素は、収縮状態において「標準的な構成ブロック」の形態であり、また、1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素は、相互連結可能な「標準的な構成ブロック」を含むという発明特定事項を備えるものとなっており、上記のとおり、引用発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.当審で通知した拒絶理由の概要
当審では、平成28年9月26日付けで拒絶理由を通知したが、その概要は次のとおりである。
「本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


・「変身(玩具構成要素)」という用語について
特許請求の範囲及び発明の詳細な説明に記載されている「変身」という語は、本願の発明に必ずしも対応したものとはいえず、「変形可能な」とするのが適切ではないか。

・請求項1について
1.「別の玩具構成要素」と、「前記玩具構成要素」と、「変身玩具構成要素」と、「標準的な相互連結可能な構成ブロック」との関係が明確でない。 また、「前記変身玩具構成要素は、収縮状態においてブロックの形態であり」という記載中の、「ブロック」は、「標準的な相互連結可能な構成ブロック」であることを明確にするべきである。
2.「第一の表面」と「第二の表面」との関係が不明であるし、変身玩具構成要素が「第二の表面」を備えるものであることが明確に示されていない。 また、「前記玩具構成要素は、収縮状態において、前記相互着脱可能な第一の表面が1つ以上のスタッドを有するが凹部は有さない相互着脱可能な第一のスタッド面、および、1つ以上の凹部を有するがスタッドを有さない相互脱着可能な第一の凹部面からなるものであって、相互脱着可能な第一のスタッド面は相互脱着可能な第一の凹部面と平行で反対向きに存在する」という記載によれば、「第一の表面」が、「1つ以上のスタッドを有するが凹部は有さない相互着脱可能な第一のスタッド面」と「1つ以上の凹部を有するがスタッドを有さない相互脱着可能な第一の凹部面」とを「平行で反対向き」の状態で含むことになり、「第一の表面」の意味と形状が不明になっている。
3.「可動取付け型部材」と記載されているが、「可動取付け型」の部材を意味するのか、可動取付けされる「型部材」を意味するのかが明りょうではないし、発明の詳細な説明(実施例)との対応関係も明確ではない。また、「可動部材」(【0013】、【0020】、【0023】)との異同関係も不明である。
4.「前記少なくとも1つの相互着脱可能な第一の表面は、前記収縮状態および前記1つまたは2つ以上の拡張状態の内の少なくとも1つの状態である前記1つまたは2つ以上の別の玩具構成要素、および標準的な相互連結可能な構成ブロックの、相互着脱可能な第二の表面との相互連結のために提示されており、」という記載中の「提示」の意味が不明である。

・請求項5について
「可動取付け型部材の再配列」という記載に関して、「可動取付け型部材」の意味が明りょうではないし、「再配列」もどのようなことをいっているのかが明確ではない。

・請求項6について
「トイフィギュアの形態を見えるようにするための変身玩具構成要素の開口または拡張をもたらす」という記載の意味が明確ではない。

・請求項8?11について
「変身玩具構成要素を組み立てる方法」が、変身玩具構成要素を組み立てて製造する方法をいうのか、変身玩具構成要素を組み立てて遊ぶ方法をいうのかが不明であり、請求項8を引用する請求項9?11も同様である。
また、変身玩具構成要素を組み立てて製造する方法をいうとすれば、請求項12は「物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている」ことになり、明確なものとはいえない。
請求項8の「可動取付けられる」という記載は明確とはいえない。
請求項9の「適合されている」という記載は明確ではない。

・請求項12について
「請求項8?11のいずれか一項に記載の方法によって、請求項1?6のいずれか一項に記載の変身玩具構成要素を組み立てるためのキット」と記載されているが、請求項8は「請求項1?6のいずれか一項に記載の変身玩具構成要素を組み立てる方法」であって、請求項の引用関係が不明りょうである。」

2.当審拒絶理由についての検討
平成29年3月6日に提出された手続補正書において、上記「第2」のとおり、請求項1?9、12、及び13の記載は補正されたことにより、請求項1?9、12、及び13に係る発明は明確となった。
したがって、当審拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-12 
出願番号 特願2012-219947(P2012-219947)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A63H)
P 1 8・ 121- WY (A63H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植田 泰輝  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 植田 高盛
黒瀬 雅一
発明の名称 相互連結可能で変形可能な玩具構成要素  
代理人 葛和 清司  
代理人 塩崎 進  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ