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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1326622
審判番号 不服2015-14301  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-30 
確定日 2017-03-29 
事件の表示 特願2013-235049「光学モジュール、及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 5日出願公開、特開2015- 26803〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年11月13日(パリ条約による優先権主張 2013年7月25日 台湾)の出願であって、平成26年11月12日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月13日付けで、意見書及び手続補正書が提出され、同年3月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、平成28年3月10日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年8月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?8に記載された発明は、平成28年8月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認められる。
「発光ゾーン、及び、受光ゾーンが定義されている基板と、
前記基板の前記受光ゾーンに設けられている受光チップと、
前記基板の前記発光ゾーンに設けられている発光チップと、
前記基板に設けられ、且つ、前記発光チップに電気的に接続されている電子ユニットと、
前記基板側より前記基板の反対側が狭い凸字状を呈し、前記受光チップ、前記発光チップ、及び、前記電子ユニットを覆う二つのパッケージ部材と、
前記発光チップ及び前記受光チップを覆うよう前記基板に設けられており、前記発光チップ及び前記受光チップに対応する位置に発光穴と受光穴とが形成されている封止用蓋体と、を備え、
前記封止用蓋体は、前記受光穴と連通している第1の収容空間、及び、前記発光穴と連通している第2の収容空間を有し、
前記受光チップおよび前記電子ユニットは前記第1の収容空間内に収容されており、
前記発光チップは前記第2の収容空間内に収容されており、
二つの前記パッケージ部材は、前記第1の収容空間、前記受光穴、前記第2の収容空間、および、前記発光穴にそれぞれ位置し、前記第1の収容空間、前記受光穴、前記第2の収容空間、および、前記発光穴を充満していることを特徴とする光学モジュール。」

3.当審の拒絶理由の概要
当審の拒絶理由の概要は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2011-49473号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開2011-180121号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

4.引用例の記載(下線は当審において付与した。)
(1)引用例1
引用例1には、「光検出装置および電子機器」(発明の名称)について、次の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、発光素子および受光素子を備えた光検出装置において、発光素子から出た光が被検出物によって反射され、その反射光を受光素子によって受光することで、被検出物の検知を行う機能を備えた光検出装置および当該光検出装置を搭載した電子機器に関するものである。」
イ 「【0064】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る光検出装置1の概略構造を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る光検出装置1は、パネル108および実装基板101を備えている。
【0065】
実装基板101は、発光素子102、受光素子103、IC104、透光樹脂105、および遮光樹脂106を備えており、例えば、セラミックなどからなる。受光素子103は発光素子102が発光する光の波長を含む波長領域に感度を有する。本実施形態では、発光素子102は赤外光を発光し、受光素子103は赤外域に感度を有する。IC104は、発光素子102および受光素子103を制御するためのICである。
【0066】
発光素子102、受光素子103およびIC104は、半導体を用いて構成することができる。すなわち、光検出装置1を光検出半導体装置として構成することができる。
【0067】
透光樹脂(第1の透光樹脂)105aおよび透光樹脂(第2の透光樹脂)105bは、光を透過させる樹脂からなり、発光素子102および受光素子103をそれぞれ封止している(樹脂封止領域を形成している)。遮光樹脂106は、光を通さず吸収する樹脂からなり、透光樹脂105aおよび105bの周囲と両者の間の領域とを封止している(樹脂封止領域を形成している)。透光樹脂105aおよび105bならびに遮光樹脂106は、例えば、エポキシ樹脂などの合成樹脂から形成することができる。」
ウ 「【0070】
パネル108は、光検出装置1または光検出装置1が備えられた他の装置(例えば、携帯電話などのモバイル機器)の筐体を構成するものであり、光を透過させるパネル窓部(透光板)109を備えている。パネル窓部109は、例えば、アクリル樹脂、ガラスなどから形成することができる。」
エ 図1



(2)引用例2の記載
引用例2には、「シールドとレンズが改良された光学式近接センサ」(発明の名称)について、次の記載がある。
ア 「【0017】
図3?図9を参照すると、光学式近接センサ10とその種々の構成要素の1つの実施形態が示されている。そのような実施形態の完全な光学式近接センサは、図9に示されている。後で明らかになるように、図3?図9に示された光学式近接センサ10の実施形態により、近接センサ10に正確にかつ迅速に装着されるシールド18を容易に取り付けかつ正確に位置決めできるようにすることによって、物体60を検出できる距離を増加することによって、発光体16と光検出器12との間の不要なクロストークを減少させることによって、光学式近接センサ10の全体的な大きさ、体積及び占有面積を減少することによって、またそれらに関連する製造及び材料のコストを低減することによって、従来技術の光学式近接センサに関連した多くの問題が克服される。一例として、1つの実施形態では、図9に示された光センサ10は、寸法が約4.0mm×3.0mm×1.1mmになるように構成されることができる。図3?図9に例示された光学式近接センサ10の実施形態の別の利点は、この明細書及び図面を読み、理解し、考えれば、当業者には明らかになるであろう。
【0018】
ここで図3及び図4を参照すると、それぞれシールド18の1つの実施形態による上部及び底部の斜視図が示されている。図示のように、開口52、54及び56がシールド18の上部61及び63を貫通して配置され、そして基板11に取り付けられた又は装着された発光体16、光検出器12及び周辺光センサ14の直ぐ上に配置されるように構成される(図7及び図8を参照されたい)。光バリア25が部分61と63との間から下方に突出して、一方の発光体16と他方の周辺光センサ14及び光検出器12との間のクロストークの発生を最小にするために、近接センサ10を、発光体16を有する発光部分と光検出器12及び周辺光センサ14を有する光検出部分とに分離して、これにより発光体16と光検出器12(及び周辺光センサ14)との間のクロストークを最小にする。」
イ 「【0025】
ここで図5?図8を参照すると、光学式近接センサ10が、線43を介してワイヤ・ボンド・パッド41の1つに動作可能に接続された発光体16を上に搭載した基板11を備えていることが分かる。1つの実施形態によれば、発光体16は、型式番号TK116IRA TYNTEK(登録商標)のAlGaAs/GaAs赤外線チップなどの半導体赤外線LEDである。このLEDのデータシートは、本願と同じ日に提出された情報開示陳述書の中に含まれており、その全体は参照により本願に組み込まれるものとする。1つの実施形態では、基板11は、上又は中に配置されたトレース、ワイヤ・ボンド・パッド及び/又はビア(via)を有するプリント回路基板である。当業者に周知の従来の材料は、第1の基板11を形成するために使用できる。光検出器12と周辺光検出器14は、線77及び78を介してワイヤ・ボンド・パッド75及び76に動作可能に接続される。1つの実施形態によれば、光検出器12はAVAGO TECHNOLOGIES(登録商標)社のAPDS-9120型集積光学式近接センサであり、周辺光検出器14はAVAGO TECHNOLOGIES(登録商標)社のAPDS-9800型集積周辺光・近接センサである。集積回路35が線73とワイヤ・ボンド・パッド74を介して基板11に搭載され、発光体16、光検出器12及び周辺光センサ14に動作可能に接続される。1つの実施形態によれば、集積回路35は、AVAGO TECHNOLOGIES(登録商標)社の光学式近接センサ用のAPDS-9702型信号処理ICであり、そのデータシートは参照によりその全体が本願に組み込まれるものとする。
【0026】
図5及び図6は、成形された光学的に透明な赤外線通過部品(molded optically transmissive infrared light pass component)31/32が、発光体16、光検出器12及び周辺光検出器14の上に配置され、またそれらをカバーした後のアセンブリ20を示している。成形された光学的に透明な赤外線通過部品31/32は、図5及び図6に示されたレンズ27、29及び30を含むように成形されることができることに注意されたい。ここで、レンズ27、29及び30は、発光体16によって放射され、検出されるべき物体60(図5及び図6には図示されていない)から反射された光を平行にしかつ光検出器12に向けて内向きに方向付けるように構成される。図5及び図6の光学レンズ27、29及び30は、同じ材料から形成され、そして製造工程の間に同じ時間に、またチャネル72(図7及び図8を参照のこと)が1つの実施形態によれば切断又は鋸引きによって形成される前に形成されることが好ましい。
【0027】
第1及び第2の成形された光学的に透明な赤外線通過部品31及び32は、中に配置された集積回路35、発光体16、光検出器12、及び周辺光センサ14をシール及び保護し、また前述されたように、シールド18を上に取り付けるためのプラットフォームを提供する。1つの実施形態によれば、第1及び第2の成形された光学的に透明な赤外線通過部品31及び32は、NITTO DENKO(登録商標)社のNT-8506型クリア・トランスファ成形化合物(clear transfer molding compound)又はPENCHEM Technologies(登録商標)社のOP 579型赤外線パス光電子式エポキシ(infrared pass optoelectronic epoxy)などの赤外線通過及び光学的に透明なトランスファ成形化合物を用いて形成される。他の適当な光学的に透明なエポキシ、プラスチック、ポリマー又は他の材料も、使用することができる。幾つかの実施形態では、光学的に透明な赤外線通過部品31及び32は、同じ製造段階の間に成形される、又は別個に成形されうる。2001年付けの「Clear Transfer Molding Compound NT-8506」という題名の技術データシートNT-8506及び2009年4月付けのPENCHEM OP 579 IR Pass Optoelectronic Epoxy Data Sheet, Revision 1を参照されたい。それらの資料は両方とも参照により、それぞれの全体が本願に組み込まれるものとする。」
ウ 図3

エ 図4

オ 図5


カ 図6

キ 図7

ク 図8


5.引用発明の認定
(1)引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)
ア 「実施形態1」に係る「光検出装置1」は、「パネル108および実装基板101を備え」(上記4(1)イの【0064】)、「実装基板101は、発光素子102、受光素子103、IC104、透光樹脂105、および遮光樹脂106を備えて」(同【0065】)いるものの、「パネル108は、・・・光検出装置1が備えられた他の装置(例えば、携帯電話などのモバイル機器)の筐体を構成するもの」(上記4(1)ウの【0070】)であるから、「パネル108」は、「光検出装置1」の部材ではないことがわかり、「光検出装置1」は、発光素子102、受光素子103、IC104、透光樹脂105、及び遮光樹脂106を備えた実装基板101を有することがわかる。

イ 図1は、「実施形態1に係る光検出装置1の概略構造を示す模式図」(上記4(1)イの【0064】)であるところ、一番下は、光検出器1を上から見た図であり、その上は、光検出器1の断面図であると解することができる。
そして、「透光樹脂(第1の透光樹脂)105aおよび透光樹脂(第2の透光樹脂)105bは、光を透過させる樹脂からなり、発光素子102および受光素子103をそれぞれ封止している(樹脂封止領域を形成している)。遮光樹脂106は、光を通さず吸収する樹脂からなり、透光樹脂105aおよび105bの周囲と両者の間の領域とを封止している(樹脂封止領域を形成している)。」(同【0067】)という記載と図1から、光検出器1には、発光素子102を収容する樹脂封止領域(以下、「第1の樹脂封止領域」という。)及び、該第1の樹脂封止領域とは異なる、受光素子103を収容する樹脂封止領域(以下、「第2の樹脂封止領域」という。)とが、遮光樹脂106によって実装基板101上に形成されていることがわかる。
また、図1から、発光素子102を収容する第1の樹脂封止領域の上部には、遮光樹脂106によって穴(以下、「発光穴」という。)が形成され、受光素子103を収容する第2の樹脂封止領域の上部には、遮光樹脂106によって穴(以下、「受光穴」という。)が形成され、発光素子102及び受光素子103を制御するためのIC104(同【0065】)が、遮光樹脂106に埋設されていることが看取される。
そして、第1の樹脂封止領域は、発光素子102を収容する領域を発光穴まで、第1の透光樹脂によって充満され、第2の樹脂封止領域は、受光素子103を収容する領域を受光穴まで、第2の透光樹脂によって充満されていることが理解できる。

ウ 技術常識に照らして、実装基板101には配線が設けられており、実装基板101上に、発光素子102、受光素子103及びIC104が載置され、それぞれに、実装基板101の配線と電気的に接続する領域が設けられていることは明らかである。
また、「IC104は、発光素子102および受光素子103を制御するためのICである」(同【0065】)から、IC104と、発光素子102及び受光素子103は、実装基板の配線で電気的に接続されていることは明らかである。

エ そうすると、引用例1には、
「実装基板101に、発光素子102、受光素子103、IC104、透光樹脂105、及び遮光樹脂106を備えた光検出装置において、
実装基板101上に、
発光素子102を載置し、発光素子102と実装基板101の配線とが電気的に接続される実装基板101の領域と、
受光素子103を載置し、受光素子103と実装基板101の配線とが電気的に接続される実装基板101の領域と、
発光素子102及び受光素子103を制御するためのIC104を載置し、実装基板101の配線と電気的に接続する領域とを設け、
IC104と、発光素子102及び受光素子103は、電気的に接続されており、
実装基板101上に光を通さず吸収する遮光樹脂106によって、
発光素子102を収容し、発光穴を有する第1の樹脂封止領域と、
受光素子103を収容し、受光穴を有する第2の樹脂封止領域とが形成され、
IC104は遮光樹脂106に埋設され、
第1の樹脂封止領域は、光を透過させる第1の透光樹脂105aが、発光素子102を封止して、発光穴まで充満され、
第2の樹脂封止領域は、光を透過させる第2の透光樹脂105bが、受光素子103を封止して、受光穴まで充満された光検出装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)引用例2に記載された事項
ア 「そして基板11に取り付けられた又は装着された発光体16、光検出器12及び周辺光センサ14の直ぐ上に配置されるように構成される」(上記4(2)アの【0018】)という記載から、光学式近接センサ10は、基板11に、発光体16、光検出器12及び周辺光センサ14を装着したものであることがわかる。

イ 「一方の発光体16と他方の周辺光センサ14及び光検出器12との間のクロストークの発生を最小にするために、近接センサ10を、発光体16を有する発光部分と光検出器12及び周辺光センサ14を有する光検出部分とに分離して、これにより発光体16と光検出器12(及び周辺光センサ14)との間のクロストークを最小にする。」(上記4(2)アの【0018】)という記載から、発光体16と光検出器12(及び周辺光センサ14)との間のクロストークを最小にするために、発光体16を有する発光部分と、光検出器12及び周辺光センサ14を有する光検出部分とは分離されることがわかる。

ウ 「成形された光学的に透明な赤外線通過部品(molded optically transmissive infrared light pass component)31/32が、発光体16、光検出器12及び周辺光検出器14の上に配置され、またそれらをカバーした後のアセンブリ20」(上記4(2)イの【0026】)という記載において、「成形された」とは、「molded」、すなわち、モールドされた、という意味であることは明らかである。
また、該記載と図7、8から、光学的に透明な赤外線通過部品31によって、発光体16がモールドされ、また、集積回路35は、光検出器12及び周辺光センサ14を有する光検出部分に設けられ、光学的に透明な赤外線通過部品32によって、集積回路35は、光検出器12及び周辺光センサ14とともに、モールドされることがわかる。

5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「光検出装置」、「発光素子102を載置し、発光素子102と実装基板101の配線とが電気的に接続される実装基板101の領域」、「受光素子103を載置し、受光素子103と実装基板101の配線とが電気的に接続される実装基板101の領域」、「実装基板101」、「発光素子102」、「受光素子103」及び「IC104」は、本願発明の「光学モジュール」、「発光ゾーン」、「受光ゾーン」、「発光ゾーン、及び、受光ゾーンが定義されている基板」、「前記基板の前記発光ゾーンに設けられている発光チップ」、「前記基板の前記受光ゾーンに設けられている受光チップ」及び「前記基板に設けられ、且つ、前記発光チップに電気的に接続されている電子ユニット」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明の「透光樹脂105a」は、「発光素子102」を封止しているから、発光素子102を覆う部材であり、「透光樹脂105b」は、「受光素子103」を封止しているから、受光素子103を覆う部材である。
そうすると、引用発明の「透光樹脂105a、105b」は、本願発明の「パッケージ部材」に相当する。
また、「透光樹脂105a」及び「透光樹脂105b」は、異なる位置に配置されるから、それらは、二つの透光樹脂をなし、本願発明の「二つのパッケージ部材」に相当する。
そうすると、引用発明の「透光樹脂105a」及び「透光樹脂105b」と、本願発明の「前記受光チップ、前記発光チップ、及び、前記電子ユニットを覆う二つのパッケージ部材」とは、「受光チップ及び発光チップを覆う二つのパッケージ部材」である点で共通する。

そして、引用発明の「第1の樹脂封止領域は、光を透過させる第1の透光樹脂105aが、発光素子102を封止して、発光穴まで充満され、第2の樹脂封止領域は、光を透過させる第2の透光樹脂105bが、受光素子103を封止して、受光穴まで充満され」ている構成は、本願発明の「二つの前記パッケージ部材は、前記第1の収容空間、前記受光穴、前記第2の収容空間、および、前記発光穴にそれぞれ位置し、前記第1の収容空間、前記受光穴、前記第2の収容空間、および、前記発光穴を充満している」構成に相当する。

ウ 引用発明の「遮光樹脂106」は、「実装基板101」上に設けられ、「発光素子102を収容し、発光穴を有する第1の樹脂封止領域」及び「受光素子103を収容し、受光穴を有する第2の樹脂封止領域」を形成していて、「発光素子102」及び「受光素子103」を覆うようになっているから、引用発明の「第1の樹脂封止領域」は、本願発明の「発光チップ」を収容する「第2の収容空間」に相当し、引用発明の「第2の樹脂封止領域」と本願発明の「第1の収容空間」とは、受光チップを収容空間内に収容する点で共通する。
そして、引用発明の「遮光樹脂106」は、本願発明の「前記発光チップ及び前記受光チップを覆うよう前記基板に設けられており、前記発光チップ及び前記受光チップに対応する位置に発光穴と受光穴とが形成されている封止用蓋体」であって、しかも、「前記受光穴と連通している第1の収容空間、及び、前記発光穴と連通している第2の収容空間を有」する「封止用蓋体」に相当する。

エ そうすると、本願発明と引用発明とは、
「発光ゾーン、及び、受光ゾーンが定義されている基板と、
前記基板の前記受光ゾーンに設けられている受光チップと、
前記基板の前記発光ゾーンに設けられている発光チップと、
前記基板に設けられ、且つ、前記発光チップに電気的に接続されている電子ユニットと、
前記受光チップ及び前記発光チップを覆う二つのパッケージ部材と、
前記発光チップ及び前記受光チップを覆うよう前記基板に設けられており、前記発光チップ及び前記受光チップに対応する位置に発光穴と受光穴とが形成されている封止用蓋体と、を備え、
前記封止用蓋体は、前記受光穴と連通している第1の収容空間、及び、前記発光穴と連通している第2の収容空間を有し、
前記受光チップは前記第1の収容空間内に収容されており、
前記発光チップは前記第2の収容空間内に収容されており、
二つの前記パッケージ部材は、前記第1の収容空間、前記受光穴、前記第2の収容空間、および、前記発光穴にそれぞれ位置し、前記第1の収容空間、前記受光穴、前記第2の収容空間、および、前記発光穴を充満している光学モジュール。」で一致し、次の相違点1、2で相違する。
(相違点1)
「電子ユニット」について、本願発明は、電子ユニットがパッケージ部材で覆われ、受光チップを収容する第1の収容空間内に収容されているのに対し、引用発明の「IC104」は、遮光樹脂106に埋設されている点。
(相違点2)
「二つのパッケージ部材」の形状について、本願発明は、「基板側より基板の反対側が狭い凸字状を呈している」のに対し、引用発明の「透光樹脂105a」及び「透光樹脂105b」の形状は、そうではない点。

(2)判断
相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明の「IC104」の配置は、実装基板101上で、配線等の設計に応じて、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
また、近接センサにおいて、「IC104」のような制御を行う集積回路を、受光素子を収容する空間内に収容して、モールドすること(パッケージ部材で覆うこと)は、引用例2の「集積回路35」に示されるように周知である(上記「4(2)ア?ウ」参照。)。
そうすると、引用発明において、「IC104」を受光素子を収容する「第2の樹脂封止領域」に収容して、「第2の透光樹脂105b」によって封止して、本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
引用発明のような「光検出装置1」において、発光素子102及び受光素子103を封止する透光樹脂の形状は、必要とされる光の経路等によって、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
また、そのような透光樹脂を、「基板側より基板の反対側が狭い凸字状を呈している」ようにすることは、周知である(必要であれば、下記の特開2007-201360号公報の図1を参照されたい。
特開2007-201360号公報の図1:

)。

そうすると、引用発明において、「透光樹脂105a」及び「透光樹脂105b」を基板側より基板の反対側が狭い凸字状を呈するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)まとめ
以上のことから、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-20 
結審通知日 2016-10-25 
審決日 2016-11-11 
出願番号 特願2013-235049(P2013-235049)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 元彦  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 川端 修
土屋 知久
発明の名称 光学モジュール、及びその製造方法  
代理人 服部 雅紀  

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