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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1326664
審判番号 不服2016-2509  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-19 
確定日 2017-04-18 
事件の表示 特願2012-57197「繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システムおよび部分放電計測方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月26日出願公開、特開2013-190342、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月14日の出願であって、平成27年7月6日付けの拒絶理由の通知に対し同年9月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月11日付けで拒絶査定(同年同月24日謄本送達)(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、平成28年2月19日に拒絶査定不服審判が請求され同時に手続補正書が提出され、同年8月22日に上申書が提出され、その後、当審において同年9月7日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)を通知したところ、同年11月10日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、当審において同年12月9日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)を通知(特許法第17条の2第1項第3号の最後の拒絶理由通知)したところ、平成29年1月16日に意見書及び手続補正書(同手続補正書でした補正を、以下、「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本件補正における補正の適否
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を、それぞれ以下のとおり補正するものである。
(1)特許請求の範囲の補正
ア 補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正による補正前の、平成28年11月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源と、
所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、
前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、
前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、
前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として出力する電圧指示部と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路と、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、
前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、
前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、
前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、
を具備する部分放電計測システムであって、
前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、
前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること、
を特徴とする繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項2】
前記部分放電回数算出部は、前記検出信号に対してデジタルフィルタ処理を行うことにより、前記検出信号から不要な信号成分を除去して前記部分放電を表す部分放電信号のみを抽出し、周期ごとに前記部分放電信号を抽出した回数を前記部分放電回数としてカウントすることを特徴とする請求項1に記載の繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項3】
前記部分放電回数算出部は、前記検出信号の立ち上がり時間に基づいてデジタルフィルタ処理のカットオフ周波数を算出し、前記カットオフ周波数に基づいて前記検出信号に対する前記デジタルフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項4】
前記部分放電回数算出部は、前記印加電圧信号の立ち上がり時間に基づいてデジタルフィルタ処理のカットオフ周波数を算出し、前記カットオフ周波数に基づいて前記検出信号に対する前記デジタルフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項5】
前記部分放電回数算出部は、前記検出信号に対するデジタル微分処理を行うことにより、前記検出信号から前記不要な信号成分を除去して前記部分放電信号のみを抽出することを特徴とする請求項2に記載の繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項6】
指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力し、昇圧ランプ電圧出力および降圧ランプ電圧出力が可能な直流電源と、
所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、
前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、
前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、
前記昇圧ランプ電圧出力のための開始電圧と上限電圧と昇圧時間とを設定する電圧指示信号を前記直流電源に出力する電圧指示部と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路と、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、
前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、
前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、
前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記開始電圧と上限電圧と昇圧時間とを設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、
を具備する部分放電計測システムであって、
前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記降圧ランプ電圧出力のための終了電圧および降圧時間を設定した電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、
前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること、
を特徴とする繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項7】
指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源と、所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、を具備する繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システムの計測装置であって、
前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、
前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として出力する電圧指示部と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路と、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、
前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、
前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、
前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、
前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること、
を特徴とする計測装置。
【請求項8】
指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源と、所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、信号指示部と、電圧指示部と、検出信号観測回路と、部分放電回数算出部と、印加電圧信号観測回路と、電圧値取得部と、制御部と、を具備する部分放電計測システムによる計測方法であって、
前記制御部が、前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号指示部に出力する工程と、
前記信号指示部が前記方形波指示信号を前記信号発生器に出力する工程と、
前記制御部が、前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程と、
前記電圧指示部が、前記電圧指示信号を前記直流電源に出力する工程と、
前記検出信号観測回路が、前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する工程と、
前記部分放電回数算出部が、周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする工程と、
前記印加電圧信号観測回路が、前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する工程と、
前記制御部が、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする工程と、
前記部分放電開始電圧が取得された後の各周期で、前記制御部が、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程と、
前記部分放電開始電圧が取得された後に、前記電圧指示部が、前記減算した電圧が設定された前記電圧指示信号を直流電源に出力する工程と、
前記制御部が、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする工程と、
を具備することを特徴とする計測方法。」

イ 補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正による補正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(下線は、補正箇所を示す。以下同じ。)。
「 【請求項1】
指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源と、
所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、
前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、
前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、
前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として出力する電圧指示部と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路と、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、
前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、
前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、
前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、
を具備する部分放電計測システムであって、
前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、
前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること、
を特徴とする繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項2】
前記部分放電回数算出部は、前記検出信号に対してデジタルフィルタ処理を行うことにより、前記検出信号から不要な信号成分を除去して前記部分放電を表す部分放電信号のみを抽出し、周期ごとに前記部分放電信号を抽出した回数を前記部分放電回数としてカウントすることを特徴とする請求項1に記載の繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項3】
前記部分放電回数算出部は、前記検出信号の立ち上がり時間に基づいてデジタルフィルタ処理のカットオフ周波数を算出し、前記カットオフ周波数に基づいて前記検出信号に対する前記デジタルフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項4】
前記部分放電回数算出部は、前記印加電圧信号の立ち上がり時間に基づいてデジタルフィルタ処理のカットオフ周波数を算出し、前記カットオフ周波数に基づいて前記検出信号に対する前記デジタルフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項5】
前記部分放電回数算出部は、前記検出信号に対するデジタル微分処理を行うことにより、前記検出信号から前記不要な信号成分を除去して前記部分放電信号のみを抽出することを特徴とする請求項2に記載の繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項6】
指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力し、昇圧ランプ電圧出力および降圧ランプ電圧出力が可能な直流電源と、
所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、
前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、
前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、
前記昇圧ランプ電圧出力のための開始電圧と上限電圧と昇圧時間とを設定する電圧指示信号を前記直流電源に出力する電圧指示部と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路と、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、
前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、
前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、
前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記開始電圧と上限電圧と昇圧時間とを設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、
を具備する部分放電計測システムであって、
前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記降圧ランプ電圧出力のための終了電圧および降圧時間を設定した電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、
前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること、
を特徴とする繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。
【請求項7】
指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源と、所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、を具備する繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システムの計測装置であって、
前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、
前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として出力する電圧指示部と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路と、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、
前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、
前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、
前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、
前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること、
を特徴とする計測装置。
【請求項8】
指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源と、所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、信号指示部と、電圧指示部と、検出信号観測回路と、部分放電回数算出部と、印加電圧信号観測回路と、電圧値取得部と、制御部と、を具備する部分放電計測システムによる計測方法であって、
前記制御部が、前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号指示部に出力する工程と、
前記信号指示部が前記方形波指示信号を前記信号発生器に出力する工程と、
前記制御部が、前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程と、
前記電圧指示部が、前記電圧指示信号を前記直流電源に出力する工程と、
前記検出信号観測回路が、前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する工程と、
前記部分放電回数算出部が、周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする工程と、
前記印加電圧信号観測回路が、前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する工程と、
前記制御部が、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする工程と、
前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期から後の各周期で、前記制御部が、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程と、
前記部分放電開始電圧が取得された後に、前記電圧指示部が、前記減算した電圧が設定された前記電圧指示信号を直流電源に出力する工程と、
前記制御部が、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする工程と、
を具備することを特徴とする計測方法。」

(2)明細書の補正
明細書の補正は、【0011】について、補正前に「前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」、「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること」、「前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」及び「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること」とあるのを、それぞれ「前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」、「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること」、「前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」及び「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること」と補正し、【0012】について、補正前に「前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」及び「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること」とあるのを、それぞれ「前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」及び「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること」と補正し、【0013】について、補正前に「前記制御部が、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする工程と、前記部分放電開始電圧が取得された後の各周期で、前記制御部が、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程と、前記部分放電開始電圧が取得された後に、前記電圧指示部が、前記減算した電圧が設定された前記電圧指示信号を直流電源に出力する工程と、前記制御部が、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする工程」とあるのを、「前記制御部が、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする工程と、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期から後の各周期で、前記制御部が、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程と、前記部分放電開始電圧が取得された後に、前記電圧指示部が、前記減算した電圧が設定された前記電圧指示信号を直流電源に出力する工程と、前記制御部が、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする工程」と補正するものである。

2 補正の適否
特許請求の範囲についての補正は、通知された当審拒絶理由2の指摘(下記「第3」2(3))を受けて、本件補正による補正前の請求項1、6、7及び8の明瞭でない記載を、それぞれ本件補正による補正後の請求項1、6、7及び8の記載のとおりに正すことにより、その記載の本来の意味内容を明らかにするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところもない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記「第2」のとおり特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するので、本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれを「本願発明1」等という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定された、上記「第2」1(1)イに記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由
(1)原査定の理由の概要
ア 原査定の拒絶理由は、概略、本願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に頒布された次の刊行物(以下、それぞれを番号順に「引用文献1」等という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。なお、引用文献1ないし5は、いずれも平成27年7月6日付け拒絶理由通知書において引用されたものであり(そのうち、引用文献2ないし5は、いずれも周知技術を示す文献として引用されたものである。)、引用文献6ないし9は、いずれも周知技術を示す文献として平成27年11月11日付け拒絶査定において新たに引用されたものである。
1.特開2009-115505号公報
2.特開2002-169200号公報
3.特開平10-335089号公報
4.特開平8-204455号公報
5.特開2006-38688号公報
6.特開2010-281673号公報
7.木村健,“繰返しインパルス下の部分放電開始電圧のIEC規格”,
電気学会研究会資料(放電研究会),社団法人 電気学会,
2010年12月2日,ED-10-127,p.13-17
8.実願昭57-147033号(実開昭59-52410号)の
マイクロフィルム
9.特開2003-219677号公報

イ 請求項1に係る発明についての、より具体的な拒絶理由は、次のとおりである。
(ア)引用文献1には、
指示電圧である高電圧を出力する直流電源(21)と、
所定個数のパルス信号がパルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器(24,61;【0036】の「10パルス」等)と、
前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子(22)を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチ(23;【0012】)と、
方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部(61)と、
前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として設定する電圧指示部(63)と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路(40,50)と、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部(61)と、
前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路(30,50)と、
前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする電圧値取得部(【0040】「放電ありの回数・・・放電発生確率」、「放電発生確率(Px)は判定値(Pn)以上」、「印加電圧は放電開始発生電圧になる」等)と、
を具備する繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム、
が記載又は示唆されている。
設定倍の電圧で、出力電圧を指定することは、設計的事項である(発明の詳細な説明等を参酌しても、格別の技術的意義は読み取れない。)。
例えば引用文献2(主に図6)、引用文献3(主に図3)、引用文献4(図3)で開示されるように、重ね合わせにより信号を生成する構成は、周知である。
所定電圧を減算する構成を採ることに格別の困難性はない(引用文献1【0043】等)。

(イ)引用文献1に対し、出願人は、「印加電圧を低下させていくだけであって、本願請求項1に係る発明のように、印加電圧を上昇させていって部分放電開始電圧を取得した後に印加電圧を低下させていくという技術については記載も暗示もされていない」と主張している。しかしながら、部分放電開始電圧と部分放電終了電圧の取得が記載されており、また、部分放電終了電圧の取得には部分放電が発生するように印加電圧する手順があることからみても、印加電圧の上昇後に低下させていく手法をとることは、当業者ならば容易に想到し得たものである。
また、このような手順をとることは、例えば引用文献6(【0023】「部分放電開始電圧と部分放電消滅電圧とを続けて測定してもよい」等)、引用文献7(図1等の手順)にも開示されるように、当業者ならば自明であるともいえる。
さらに、出願人は、引用文献2-4に対し、技術分野が異なる旨の主張をしているが、この種の信号を生成する構成(重ね合わせ、ゲート回路、論理積等による信号の生成又は制御)は広く用いられている技術であり(引用文献8の第1図、第3図(AND回路等)で開示されるような試験に関する技術分野、引用文献9【0027】-【0028】及び図3に開示されるような本願明細書【0002】等の電動機に関する技術分野等)、引用文献1に開示されるこの種の検査(引用文献7も参照)で採用することに格別の困難性はない。

(2)当審拒絶理由1の概要
ア 当審拒絶理由1は、概略、本願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に頒布された次の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。なお、周知例2ないし8は、いずれも周知技術を示す文献として引用されたものである。
引用例1.木村健,“繰返しインパルス下の部分放電開始電圧のIEC
規格”,電気学会研究会資料(放電研究会),社団法人
電気学会,2010年12月2日,ED-10-127,p.13-17(上記(1)
アの引用文献7に同じ。以下、「引用文献7」という。)
周知例2.特開2009-115505号公報(上記(1)アの
引用文献1に同じ。以下、「引用文献1」という。)
周知例3.特開2003-219677号公報(上記(1)アの
引用文献9に同じ。以下、「引用文献9」という。)
周知例4.村上義信、外5名,“繰返しインパルス電圧下における部分
放電開始電圧測定の第1次共同実験”,平成22年電気学会
全国大会講演論文集,社団法人 電気学会,2010年3月5日,
p.33-36(以下、「引用文献10」という。)
周知例5.特開2010-281673号公報(上記(1)アの
引用文献6に同じ。以下、「引用文献6」という。)
周知例6.特開平11-118870号公報
(以下、「引用文献11」という。)
周知例7.特開平1-272983号公報
(以下、「引用文献12」という。)
周知例8.特開平9-105766号公報
(以下、「引用文献13」という。)

イ 請求項1、7及び8に係る発明についての、より具体的な拒絶理由は、次のとおりである。
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献7には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内は関連する記載箇所を示す。)。
「繰返しインパルス電圧における部分放電計測法において、(p.13「1.まえがき」)
試験前に、電圧インパルスの最小値、最大値、電圧ステップ値、繰返し周波数を決めてインパルス電源を設定し、(p.15「<2.5> 電圧インパルスの上昇・下降の手順」)
最小電圧から繰返しインパルス電圧を発生させ、繰返し電圧インパルスの値は低い電圧毎の段階状に上昇させ、(p.15「<2.5> 電圧インパルスの上昇・下降の手順」)
部分放電開始電圧RPDIVは、同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以上の部分放電パルスが発生した時の最小電圧として求められ、(p.14「<2.1> 用語の定義」、p.15「<2.5> 電圧インパルスの上昇・下降の手順」)
最大電圧に達した後、繰返し電圧インパルスは電圧ステップ毎に下降させ、(p.15「<2.5> 電圧インパルスの上昇・下降の手順」)
部分放電消滅電圧RPDEVは、同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以下の部分放電パルスが発生した時の最大電圧として求められ、(p.14「<2.1> 用語の定義」、p.15「<2.5> 電圧インパルスの上昇・下降の手順」)
電圧インパルス10発が供給される供給期間の後に、電圧インパルスの供給が休止される休止期間が設けられ、供給期間と休止期間とが周期的に繰り返され、(p.15図5)
Test Objectの部分放電は、UHF電磁波アンテナにより検出される、(p.14「<2.3> UHF電磁波アンテナによるPD検出」、図2)
方法。」
一般に、高電圧直流電源、容量素子及び半導体スイッチを用い、ゲートパルス制御回路によって半導体スイッチをオン/オフ制御し、容量素子に充電した電荷を瞬時に放出することでインパルス電圧を発生させることは、周知技術であり(例えば、引用文献1(【0012】)を参照。)、また、所定のパルス幅及び所定のパルス繰り返し周波数を有するパルス信号と、1周期が供給期間と休止期間を含む期間設定信号との重ね合わせにより、供給期間と休止期間とが周期的に繰り返され、所定個数のパルス信号が前記供給期間にのみ発生する方形波信号を生成し、該方形波信号によってスイッチング素子の制御を行うことも、周知技術である(例えば、引用文献9(【0028】)を参照。)から、引用発明において、「繰返しインパルス電圧」を「発生」するための「インパルス電源」の具体的な構成として、これらの周知技術を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。
そして、引用発明において、そのように「インパルス電源」の具体的な構成として前述の周知技術を採用するにあたり、方形波信号を生成するためのパルス信号のパルス幅、パルス繰り返し周波数、供給期間におけるパルス数を設定することによって、「電圧インパルス」の「繰返し周波数」及び個数(「10発」)を決めること、及び、高電圧直流電源を、指示電圧の設定倍の電圧を出力するものとすることは、単なる設計的事項にすぎないものである。
部分放電開始電圧とするための電圧値を、印加されたインパルス電圧の信号を観測し、そのピーク電圧によって取得することは、周知の技術である(例えば、引用文献10(「<2・5> 実験方法」)を参照。)。
部分放電開始電圧と部分放電消滅電圧とを比較した場合に、部分放電開始電圧の方が高いことは、一般に広く知られているところである(例えば、引用文献6(【0024】)、引用文献11(【0034】)を参照。)から、部分放電消滅電圧の検出において、その初期値に部分放電開始電圧を用いることが可能であることは、明らかであるといえる。そして、部分放電試験において、供試体に必要以上の電圧を印加しないようにすることも、当業者が通常考慮することである(例えば、引用文献12(第2ページ左下欄第18?19行)、引用文献13(【0005】)を参照。)から、引用発明においても、「Test Object」に必要以上の電圧を印加しないようにするために、「部分放電開始電圧RPDIV」が「求められ」た時点で、「繰返し電圧インパルスの値」の「上昇」を止めて「下降」に転じるようにし、それにより「部分放電消滅電圧RPDEV」を「求め」るようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
引用発明において、「部分放電消滅電圧RPDEV」を「求め」る際の「部分放電パルス」の数を、「同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以下」(すなわち、6発未満)に代えて、4発以下(すなわち、5発未満)としたことは、当業者が適宜なしうる設計変更にすぎないものである。
そして、引用発明において「部分放電開始電圧RPDIV」とするための電圧値について、観測した信号のピーク電圧から求めるのであれば、「部分放電消滅電圧RPDEV」についても同様にして求めるのが通常である。

(3)当審拒絶理由2の概要
当審拒絶理由1は、概略、本願は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備(以下、それぞれを順に「不備1」、「不備2」という。)のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。
ア 請求項8に、「前記制御部が、・・・2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程」と記載され、一方で、「前記部分放電開始電圧が取得された後の各周期で、前記制御部が、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程」と記載されているところ、「前記制御部が、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する」のは、「前記部分放電開始電圧が取得された後の各周期」のうちのどの周期においてであるのか、明らかでないから、請求項8に係る発明は、明確でない。

イ 請求項1に、「・・・前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部・・・前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする」と記載されているところ、「前記部分放電回数が規定回数以上になった」かどうか、及び、「前記部分放電回数が前記規定回数未満になった」かどうかが、「制御部」において比較され判定されているのか、あるいは「制御部」以外において比較され判定されているのか、いずれか明らかでないから、請求項1及びこれを引用する請求項2ないし5に係る発明は、明確でなく、さらに、同様の点で、請求項6ないし8に係る発明も、明確でない。

3 当審の判断
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
a 「【技術分野】
【0001】
この発明は、巻線(例えば、モータ、変圧器、インダクタ、回転電機の固定子巻線等の巻線部品)のレアーショート(巻線間の絶縁破壊)及び部分放電の有無を検査する検査装置あるいは検査方法に関する。」

b 「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態例について説明する。
なお、各図間において、同一符号は同一あるいは相当のものであることを表す。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る巻線の検査装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態による巻線の検査装置100は、検査(試験)対象の巻線である被試験巻線10の良否の状態(即ち、被試験巻線10の「巻線間の絶縁破壊(レヤーショート)」の有無及び「放電(部分放電)」の有無)を判定するための試験(検査)を行うものであり、インパルス電圧発生手段20と、端子間電圧検出手段30と、電磁波検出手段40と、波形メモリ手段50と、試験制御手段60を備えている。
なお、被試験巻線(検査対象の巻線)10は、例えば、モータ、変圧器、インダクタ、磁界発生用コイル等の巻線部品(以降、単に巻線と称す)である。
【0012】
インパルス電圧発生手段20は、被試験巻線10にインパルス電圧を印加するものであり、高電圧発生回路21、高圧コンデンサ22、高電圧スイッチング回路23及びゲートパルス制御回路24を備えている。
高電圧発生回路21は、高圧コンデンサ22に電荷を充電するためのものである。
この高電圧発生回路21は、一般的なコイル(巻線)の絶縁試験が可能な程度(通常、数kV)の高い電圧を発生する。
高圧コンデンサ22は、高電圧発生回路21から入力される電荷を充電し、高電圧スイッチング回路23のスイッチ作用(ゲート制御)によって、充電した電荷を瞬時に放出することにより、インパルス電圧を発生させるものである。
高電圧スイッチング回路23は、ゲートパルス制御回路24によってオン/オフ制御され、オンになったときに高圧コンデンサ22に充電されている電荷を瞬時に被試験巻線10に放出させる。なお、高電圧スイッチング回路23は、サイリスタ、MOSFET(モス電界効果トランジスタ)またはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの汎用素子で構成する。
【0013】
高電圧発生回路21から印加されていた充電電圧及び高圧コンデンサ22に充電されている電荷は、被試験巻線10への1回のインパルス電圧印加によって0になる。
このため、インパルス電圧の印加休止期間中に、高圧コンデンサ22に高電圧発生回路21から絶えず電荷が充電されるようにしておくことにより、連続的なインパルス電圧の発生(パルス動作)が行える。
端子間電圧検出手段30は、被巻試験線10の端子間に印加する高電圧を計測する端子間電圧検出回路31を備えている。
端子間電圧検出回路31は高電圧に耐える分圧器(図示なし)で構成されており、インパルス電圧発生手段20からインパルス電圧が被試験巻線10に印加された際の被試験巻線10の端子間に発生する電圧(共振振動電圧)を所定比で分圧するものである。
端子間電圧検出回路31の図示しない分圧器は、電圧の分圧比に応じた抵抗値及び静電容量を有している。
「被試験巻線10の端子間に発生する共振振動電圧」を分圧器で分圧した電圧を「振動電圧信号」あるいは「共振電圧信号」と呼ぶ。
端子間電圧検出回路31の分圧器で分圧された端子間電圧である振動電圧信号は、波形メモリ手段50の第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51に入力される。
【0014】
電磁波検出手段40は、マイクロ波帯(1?2GHzの周波数うち、公共で使用されていない周波数)のアンテナ(マイクロ波アンテナ)41と電磁波検出回路42とを備えている。
インパルス電圧を被試験巻線10に印加した際に発生する「被試験巻線内の絶縁耐力の低下で起きる部分放電」により発生する電磁波をアンテナ41で捕らえ、電磁波検出回路42で帯域制限(中心周波数の5%以下)し、電磁波信号を増幅し、電磁波検波信号に変換する。
電磁波検出回路42が出力する電磁波検波信号は、波形メモリ手段50の第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段52に入力される。
波形メモリ手段50は、端子間電圧検出手段30からの振動電圧信号及び電磁波検出手段40からの電磁波波形信号を、デジタル信号に変換すると共に、デジタル信号に変換されたそれぞれの信号波形を記憶するものである。
第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51及び第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段52のそれぞれでデジタル信号に変換された振動電圧信号及び電磁波波形信号は、試験制御手段60に入力されて被試験巻線10の状態判定に供される。
【0015】
試験制御手段60は、制御装置(CPU)61、操作入力装置62、高電圧制御回路63及び表示装置(モニタ)64を備えている。
制御装置(CPU)61は被試験巻線10に印加するインパルス電圧の大きさを設定し、高電圧制御回路63は制御装置(CPU)61によって設定された大きさのインパルス電圧をインパルス電圧発生手段20が発生するように高電圧発生回路21を制御する。
また、インパルス電圧が被試験巻線10に印加されたときに被試験巻線10の端子間に発生する振動電圧信号は、第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51によってデジタル信号に変換され、デジタル化された振動電圧信号の波形がメモリされる。
制御装置(CPU)61は、第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51によってメモリされたデジタル信号(即ち、振動電圧信号)や第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段52によってメモリされたデジタル信号(即ち、電磁波信号)の時間変化を示す波形の特徴量に基づいて、被試験巻線10の良否(レヤーショートの有無及び部分放電の有無)を判定するものである。
なお、この制御装置(CPU)61は、入出カインターフェース、記憶装置、演算装置などを有する専用マイクロコントローラ、マイクロコンピュータもしくはコンピュータによって実現される。
制御装置(CPU)61によって被試験巻線10の良否を自動的に判定する方法については、後述の実施の形態5で詳述する。
また、操作入力装置62は、制御装置(CPU)61に対して必要な操作(動作)を指示するためのものであり、キーボードやタッチパネルなどである。
また、表示装置64は、制御装置(CPU)61に第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51及び第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段52のからそれぞれ入力される振動電圧信号及び電磁波波形信号を表示する。」

c 「【0035】
実施の形態5.
本実施の形態による巻線の検査装置のハードウエア構成は、基本的には実施の形態1(図1)で説明したものと同じであるが、試験制御手段60の制御装置(CPU)61に搭載したソフトウエアにより検査(試験)の自動化を図っていることが特徴である。
本実施の形態では、試験制御手段60における制御装置(CPU)61と高電圧制御回路63を用いてインパルス印加電圧の制御を行うと共に、被試験巻線10にインパルス印加の際に発生する放電を電磁波検出手段40で検出し、放電発生の有無を自動で判定することにより、インパルス電圧の印加電圧に同期した放電発生試験を行うことができる。
放電発生開始電圧、放電発生終了電圧の測定は、制御装置(CPU)61に組み込まれているソフトウエアで以下に示す複数のパラメータ(測定条件及び判定条件)を設定することにより、自動的に評価することができる。
【0036】
放電発生開始電圧の測定は、制御装置(CPU)61に組み込まれているソフトウエアの下記に示す複数のパラメータを設定することにより、自動的に評価することができる。
測定条件の設定内容の例を以下に示す。
* インパルス電圧の印加開始電圧(Vs):1000V
* 印加終了電圧(Ve):5000V
* 電圧増加ステップ量(△V):10V
* 1ステップについての繰り返しインパルス印加数(Vn):10パルス
* インパルス印加リトライ回数(Vr):3回
判定条件の設定内容の例を以下に示す。
* 放電波形レベルのピーク値(Ppeak):15
(測定結果が設定値以上でNG、単位は無い)
* 放電波形面積の大きさ(Pmax):50
(測定結果が設定値以上でNG、単位は無い)
* 同一電圧にて繰り返しパルスを印加した際の放電発生率(Pn):50%
これらのパラメータにより、放電発生開始電圧測定の自動測定が行える。
【0037】
具体例として、図11のフローチャート1及び図12のフローチャート2を用いて放電発生開始電圧の測定動作について説明する。
なお、図11と図12を合わせて、放電発生開始電圧測定の手順を示すフローチャートとなる。
図11に示すように、まず試験条件(即ち、上記測定条件)を設定し、試験を開始し、インパルス電圧VinpにVs(インパルス電圧の印加開始電圧)を代入する。
次に、高圧コンデンサ22をインパルス電圧Vinpに充電し、ゲートバルス制御回路24から高電圧スイッチング回路23にゲートパルスを出力して高電圧スイッチング回路23を通電し、インパルス電圧を被試験巻線10へ印加する。以上がインパルス電圧印加(A)のステップである。
次に、電圧波形取り込み(B)のステップにおいて、端子間電圧検出回路31により被試験巻線10の端子間に発生する電圧波形信号を第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51のA/Dコンバータでサンプリングし、サンプリングデータを第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51の波形メモリにメモリし、サンプリングした波形データの個数が所定値(例えば、512個)を越えたか否かを判定し、Noであれば電圧信号サンプリングに戻り、Yesであれば電圧波形判定(C)のステップへ進む。
【0038】
電圧波形判定(C)のステップでは、メモリした波形データから印加電圧値を求め、印加電圧が正常であるか否かを判定し、Noであれば表示装置64に「電圧異常」を表示して試験を終了(エンド)する。印加電圧が正常(Yes)であれば、メモリした波形データ(共振振動波形)と基準パターン曲線の偏差から良・否を求め、状態の良・否(即ち、巻線間の絶縁不良の有無)を判定する。
一方、電磁波波形取り込み(D)のステップに示すように、インパルス電圧を被試験巻線10へ印加すると、発生する電磁波信号を第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段52のA/Dコンバータでサンプリングし、サンプリングデータを第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段52の波形メモリにメモリし、サンプリングした波形データの個数が所定値(例えば、512個)を越えたか否かを判定し、Noであれば電磁波信号サンプリングに戻り、Yesであれば電磁波波形判定(E)のステップへ進む。
電磁波波形判定(E)のステップでは、第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段52の波形メモリにメモリした電磁波信号の波形データからピーク値と面積値を求め、求めたピーク値と面積値を放電判定規格値と比較して良・否を求め、状態の良・否(即ち、部分放電の有無)を判定する。
【0039】
次に、図12に示すように、インパルス電圧を予め設定した繰り返しインパルス数(Vn)分印加したかどうかを判定するステップに進み、Yesであれば電磁波波形が良(即ち、部分放電なし)であるか否かの判定ステップに進む。Noであれば、インパルス電圧印加(A)のステップに戻る。
電磁波波形が良(即ち、放電なし)である(Yes)と判定した場合は、電圧波形が良(即ち、巻線間の絶縁不良が無し)であるか否かを判定し、No(即ち、巻線間の絶縁不良が有り)であれば「不合格(即ち、巻線試験NG)」と判定する。
また、Yes(即ち、巻線間の絶縁不良が無し)の場合は、インパルス電圧Vinpは設定された終了電圧Ve以上であるか否かを判定し、Yesであれば「合格(即ち、放電発生無しOK/巻線試験OK)」と判定する。
また、Noの場合(インパルス電圧Vinpが終了電圧Veで無い場合)は、インパルス電圧Vinpに△V(電圧増加ステップ量)を加算して試験を継続し、図11のインパルス電圧印加(A)のステップに戻る。
【0040】
一方、図12のフローにおいて、電磁波波形が良でないと判定(即ち、放電ありと判定)すると、放電ありの回数と繰り返しインパルス印加数とで放電発生確率(Px)を求め、放電発生確率(Px)は判定値(Pn)以上であるか否かを判定し、Noであれば試験を継続して「電圧波形が良(即ち、巻線間の絶縁不良が無し)であるか否かを判定するステップ」に戻る。
また、「放電発生確率(Px)が判定値(Pn)以上であるか否か」の判定結果がYesの場合は、印加リトライ回数(Vr)試験したか否かを判定し、判定した印加リトライ回数がYesの場合は「不合格(放電発生有り)」と判定し、印加電圧は放電開始発生電圧になる。
「印加リトライ回数(Vr)試験したか否かの判定結果」がNoの場合は、図11のインパルス電圧印加(A)のステップに戻り、リトライを継続する。
図12に示すように、「合格」や「不合格」の判定結果及び印加電圧などは試験制御手段60の表示装置(モニタ)64に表示される。
【0041】
図11及び図12のフローチャートに基づく「放電発生開始電圧測定」の手順は、上述したとおりであるが、更に説明を補足しておく。
放電発生開始の自動測定では、印加開始電圧(Vs)から終了電圧(Ve)までの電圧を、設定した電圧増加ステップ量(△V)の割合で、自動で段階的に昇圧しながら(以降電圧スイープと呼ぶ)、連続的に繰り返しインパルス印加数(Vn)回のインパルス電圧印加を行い、その時の電磁波波形を印加回数(Vn)分測定する。
段階的な電圧スイープ毎に、繰り返しインパルス印加数(Vn)回測定した電磁波波形のデータから、1パルス毎に以下に示す判定処理を行う。
放電波形のピーク値及び放電波形の面積の大きさをソフトウエア処理により求め、それぞれが、放電波形レベルのピーク値(Ppeak)、放電波形面積の大きさ(Pmax)の判定条件以上だった場合、「放電発生あり」と判断する。
その「放電あり」が、繰り返しインパルス印加数(Vn)回のうち、何回「放電あり」であったかにより放電発生率を計算で求め(求めた確率値をPxとする)、この求めた確率値Pxが繰り返しパルスを印加した際の放電発生率(Pn)(%)の判定条件以上であった場合(Px>Pnの場合)、「放電発生」と判断する。
【0042】
しかしながら、放電発生は不安定であるため、上記「放電発生」の状態を何回か繰り返してリトライ測定を行うことにより、再現性の良いより完全な放電発生の確認を行うことが可能となる。
具体的には、「放電発生」の状態を、設定したインパルス印加リトライ回数(Vr)回繰り返し測定を行い、リトライ回数分全てが「放電発生」の場合を、「放電発生電圧」として、電圧スイープは中断し、その時の電圧値を「放電発生開始電圧」として示す。
また、繰り返しパルスを印加した際の放電発生率(Pn)(%)の判定条件以下であった場合は、「放電発生無し」と判断し、スイープ電圧に電圧増加ステップ量(ΔV)を加えて測定を継続する。
このように自動による電圧スイープの測定では、放電発生と判断した場合、その放電発生確率を計算により求め、放電発生の再現性を確認する為に設定したリトライ回数分を自動で繰り返し行い、放電発生有無の判断を行うことで、より確実な放電発生自動測定を行なうことができる効果がある。
放電波形レベルのピーク値(Ppeak)、放電波形面積の大きさ(Pmax)の判定は、それぞれ片方だけの判定(即ち、PpeakあるいはPmaxの判定)であっても、両方判定を行い、どちらかが判定条件以上だった場合でも、任意に設定可能である。
【0043】
なお、上記説明では放電発生開始電圧の試験について述べているが、放電発生終了電圧の試験も同様に実施することができる。
この場合の試験のフローチャートは、図11において「電圧増加ステップ量(△V)」とあるのを「電圧減少ステップ量(ΔV)」と変更すればよく、他は同じである。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態による巻線の検査装置は、検査対象の巻線である被試験巻線10の端子間にインパルス電圧を印加するインパルス電圧発生手段20と、インパルス電圧発生手段20からインパルス電圧を印加することにより被試験巻線10の端子間に発生する振動電圧の波形を検出する端子間電圧検出手段30と、被試験巻線10の放電により発生する電磁波を検出する電磁波検出手段40と、端子間電圧検出手段30が検出する振動電圧の波形信号をA/D変換し、振動電圧波形として記憶する第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51と、電磁波検出手段40が検出する電磁波の信号をA/D変換し、電磁波波形として記憶する第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段と、第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51が記憶した振動電圧波形及び第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段52が記憶した電磁波波形を表示する表示装置64と、第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51が記憶した振動電圧波形及び第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段が記憶した電磁波波形に基づいて、被試験巻線10の良否を自動的に評価する制御装置(CPU)61を備えている。
【0045】
本実施の形態では、第1のA/Dコンバータ・波形メモリ手段51が記憶した振動電圧波形及び第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段が記憶した電磁波波形に基づいて、被試験巻線10の良否を自動的に評価する制御装置(CPU)61を備えていることを特徴としており、これにより、被試験巻線の良否を自動的に評価できるので、検査作業の精度及び効率が向上する。
【0046】
また、制御装置(CPU)61は、インパルス電圧を連続して被試験巻線10に印加した際の放電発生の確率を計算により求め、求めた放電発生確率に基づいて放電発生の有無及び放電レベルの大きさを判定する。従って、再現性よく確実に放電発生の有無を自動判定することができる。
また、制御装置(CPU)61は、被試験巻線10に印加するインパルス電圧を段階的に上昇あるいは下降させる。従って、放電発生開始あるいは放電終了のインパルス電圧の大きさを知ることができる。
また、前記制御装置(CPU)は、前記第2のA/Dコンバータ・波形メモリ手段のA/Dでサンプリングされ、数値化された電磁波波形データから計算によりパルス状の放電波形の面積を求めることで、被試験巻線10の放電エネルギー相当の大小を判定できる。」

d 「【図1】



e 「【図11】



f 「【図12】



g 図12のフローチャートからは、「「不合格」判定 放電発生有りNG 印加電圧が放電開始発生電圧になる」の処理がなされると、「結果を表示」の処理に進み、次に「印加電圧表示」の処理に進み、「エンド」となってフローが終了する点が見て取れる。

(イ)上記記載事項において、「実施の形態5」(上記(ア)c)に着目すると、「実施の形態5」の巻線の検査装置のハードウエア構成は、基本的に「実施の形態1」(上記(ア)b)と同じにされている(上記(ア)c【0035】)。
したがって、上記(ア)aないしgの記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(括弧内は、特に関連する記載箇所を示す。)。
「一般的なコイル(巻線)の絶縁試験が可能な程度(通常、数kV)の高い電圧を発生する高電圧発生回路と、(上記(ア)b【0012】)
ゲートパルス制御回路と、(上記(ア)b【0012】)
インパルス電圧の印加休止期間中に高電圧発生回路から絶えず電荷が充電されるようにしておき、高電圧スイッチング回路のスイッチ作用(ゲート制御)によって、充電した電荷を瞬時に放出することにより、インパルス電圧を発生させる高圧コンデンサと、(上記(ア)b【0012】、【0013】)
サイリスタ、MOSFET(モス電界効果トランジスタ)またはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの汎用素子で構成されており、ゲートパルス制御回路によってオン/オフ制御され、オンになったときに高圧コンデンサに充電されている電荷を瞬時に被試験巻線に放出させる高電圧スイッチング回路と、(上記(ア)b【0012】)
インパルス電圧が被試験巻線に印加された際の被試験巻線の端子間に発生する電圧(共振振動電圧)を所定比で分圧して、被巻試験線の端子間に印加する高電圧を計測する端子間電圧検出回路と、(上記(ア)b【0013】)
インパルス電圧を被試験巻線に印加した際、被試験巻線内の絶縁耐力の低下で起きる部分放電により発生する電磁波をアンテナで捕らえ、電磁波検波信号に変換する電磁波検出回路と、(上記(ア)b【0014】)
被試験巻線に印加するインパルス電圧の大きさを設定し、被試験巻線10に印加するインパルス電圧を段階的に上昇あるいは下降させるとともに、インパルス電圧を連続して被試験巻線10に印加した際の放電発生の確率を計算により求め、求めた放電発生確率に基づいて放電発生の有無を自動判定して、被試験巻線の良否を自動的に評価する制御装置(CPU)と、(上記(ア)b【0015】、c【0045】、【0046】)
制御装置(CPU)によって設定された大きさのインパルス電圧を発生するように高電圧発生回路を制御する高電圧制御回路と、(上記(ア)b【0015】)
を備えた、巻線の検査装置であって、(上記(ア)b【0011】、c【0035】)
放電発生開始電圧、放電発生終了電圧の測定は、制御装置(CPU)に組み込まれているソフトウエアで複数のパラメータ(測定条件及び判定条件)を設定することにより、自動的に評価するものであり、(上記(ア)c【0035】)
測定条件の設定内容の例では、インパルス電圧の印加開始電圧を1000V、印加終了電圧を5000V、電圧増加ステップ量を10V、1ステップについての繰り返しインパルス印加数を10パルス、インパルス印加リトライ回数を3回とし、判定条件の設定内容の例では、同一電圧にて繰り返しパルスを印加した際の放電発生率を50%とし、(上記(ア)c【0036】)
放電発生開始電圧測定の手順は、(上記(ア)c【0037】)
まず試験条件(即ち、上記測定条件)を設定し、試験を開始し、インパルス電圧にインパルス電圧の印加開始電圧を代入し、次に、高圧コンデンサをインパルス電圧に充電し、ゲートバルス制御回路から高電圧スイッチング回路にゲートパルスを出力して高電圧スイッチング回路を通電し、インパルス電圧を被試験巻線へ印加し、(上記(ア)c【0037】)
次に、端子間電圧検出回路により被試験巻線の端子間に発生する電圧波形信号をサンプリングし、サンプリングデータをメモリし、メモリした波形データから印加電圧値を求め、一方、インパルス電圧を被試験巻線へ印加すると、発生する電磁波信号をサンプリングし、サンプリングデータをメモリし、メモリした電磁波信号の波形データから部分放電の有無を判定し、(上記(ア)c【0037】、【0038】)
印加開始電圧から終了電圧までの電圧を、設定した電圧増加ステップ量の割合で、自動で段階的に昇圧しながら、連続的に繰り返しインパルス印加数回のインパルス電圧印加を行い、その時の電磁波波形を印加回数分測定し、(上記(ア)c【0041】)
インパルス電圧を予め設定した繰り返しインパルス数分印加したら、部分放電なしであるか否かを判定し、放電ありと判定すると、放電ありの回数と繰り返しインパルス印加数とで放電発生確率を求め、放電発生確率が判定値以上であるか否かを判定し、判定結果がYesの場合は、印加リトライ回数試験するまでリトライを継続した上で印加電圧が放電開始発生電圧になり、結果及び印加電圧が表示されて終了し、(上記(ア)c【0039】、【0040】、g)
放電発生終了電圧の試験も、放電発生開始電圧の試験と同様に実施することができ、電圧増加ステップ量を電圧減少ステップ量と変更すれば、他は同じである、(上記(ア)c【0043】)
巻線の検査装置。」

(ウ)また、上記(ア)c及びeないしgの記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「自動で段階的に昇圧しながらインパルス電圧を被試験巻線へ印加して放電発生開始電圧を測定するにあたり、印加電圧が放電開始発生電圧として求められると、結果及び印加電圧を表示して測定手順を終了させる」点。

イ 引用文献2
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0045】<バースト制御された発振信号によって制御する第3の方法>次に、発振回路11より出力するバースト制御された発振信号によって制御する方法について、図6、図11及び図12を参照して説明する。
【0046】図6は、第1の実施形態において発振信号を制御する第3の方法を実現する発振回路11の回路構成を示すブロック図である。図11は、第1の実施形態において発振信号を制御する第3の方法を実現する発振回路11の各部の動作を説明するタイムチャートである。
【0047】第3の方法における発振回路11は、所定周波数の矩形波B1を出力する第1発振器11-4、第2の方法において採用した回路と同様な構成のデューティ比調整回路11-3、デューティ比調整回路11-3によって指示されたデューティ比の矩形波B2を出力する第2発振器11-5、並びに矩形波B1及びB2の論理積を採ることにより、駆動回路12に対してバースト(間欠)発振信号B3を供給するAND素子11-6を備える。デューティ比調整回路11-3には、第3の方法においても電源電圧検出回路6の出力信号(電源電圧を表わす信号)が入力される。」

ウ 引用文献3
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0004】バースト発振回路8は、三角波発生回路9と、PWM駆動パルス回路10、ゲート回路11、PWMスライス電圧発生回路12、外付け調光用抵抗回路13、そして定電流源14とから構成され、PWM駆動パルス回路10のバーストパルス出力をゲート回路11を介してFETの駆動トランジスタTrのゲートに加えて、これをスイッチングする。駆動トランジスタTrは、圧電トランス駆動回路5に設けられたトランジスタであって、電源ラインVccからフライバックスイッチング回路5aへ電力を供給するスイッチ回路になっている。そこで、この駆動トランジスタTrがバースト駆動され、その駆動パルスの発生期間がPWM制御されることで、発生する昇圧電圧が制御され、もって冷陰極管7(バックライト)が調光される。なお、点線枠の駆動パルス発生回路1とバースト発振回路8とは、IC化された回路である。ここで、PWM駆動パルス回路10は、コンパレータ10aとコンパレータ10bとからなり、コンパレータ10aは、可変周波数のパルス発振回路2の出力を外付けコンデンサ2aを介して三角波として基準電圧入力(-側入力)に受ける。そして、PWMスライス電圧発生回路12の電圧を信号入力側(+側入力)に受けてこれらを比較することでPWM制御された60kHz?150kHz程度の駆動パルスを発生する。PWMスライス電圧発生回路12は、圧電トランス6の一次側の駆動電流を抵抗回路6aを介して電圧値に変換し、この帰還電圧として受けてこれと基準電圧VREFとを比較することで自動レベル制御された電圧を発生する。
【0005】コンパレータ10bは、定電流源14から調光用抵抗回路13に流された電流によって発生する電圧をPWM制御のスライス電圧として基準電圧入力(-側入力)に受け、三角波発生回路9の出力を信号入力側(+側入力)に受けてこれらを比較することでPWM制御された150Hzのウインドウパルスを発生する。ゲート回路11は、1入力が負論理入力を持つ2入力ANDゲート11aとインバータ11bとからなり、コンパレータ10aの出力をANDゲート11aの一方の入力に、コンパレータ10bの出力をANDゲート11aの負論理側入力にそれぞれ受けて、コンパレータ10bのLOWレベル期間をウインドウ期間として図3に示すようなPWM制御されたバーストパルスを発生してインバータ11bを介して駆動トランジスタTrのゲートに加えてこれを駆動する。このときのコンパレータ10bのLOWレベル期間(ウインドウ幅)は、調光用抵抗回路13により制御され、その周波数は三角波発生回路9と同じである。ここで、三角波発生回路9は、図4に示すように、定電流源を上流と下流とに有していて、コンデンサCを充放電する回路である。すなわち、三角波発生回路9は、充放電回路15とコンパレータ(COMP)16,17と、フリップフロップ(FF)18とからなる。充放電回路15は、充放電用のコンデンサCを有していて、このコンデンサCを充放電することでその発振周波数が決定される。そのために、充放電回路15には充放電用の定電圧回路15a,15bが設けられている。定電流で充放電が行われることで、直線傾斜を持つ三角波を発生することができる。」

エ 引用文献4
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0003】従来のノイズ発生器は、図3に示すように、高周波信号Aを発生するシグナルジェネレータ11と、パルスBを発生するパルスジェネレータ12の出力をパルス変調器13に入力して、高周波信号AをパルスBにより変調して、ノイズを模擬した信号Cを発生させる。」

オ 引用文献5
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ駆動モータのモータ巻線ターン間の部分放電を計測するための計測装置に関する。」

b 「【0025】
図1に戻る。サージ電圧波形調整回路4の出力5は、部分放電電流検出器3を介して、供試モータ2の3相巻線の内、2つの巻線の口出し22、23に接続される。また、部分放電電流検出器3において、それぞれの高圧接続線は、互いに逆方向に貫通している。それにより、サージ電圧の立ち上がりと立ち下がりの急峻電圧時間変化に伴いモータ巻線22、23の浮遊容量に同時に流れる充電電流をキャンセルし、かつ、被試験相の巻線の高圧印加側で発生する部分放電電流を高感度に検出することができる。一方、供試モータ2の3相巻線の内、他相の巻線の口出し24はサージ電圧発生装置1の負極性一定電圧出力端子28が接続される。なお、モータコア25を接地することで、サージ電圧発生装置1の出力電圧が、被試験相22、23の巻線-コア間に印加される。モータの各絶縁部に加わる電圧は、サージ電圧計測器8、9、10を接続することで計測でき、例えばサージ電圧波形調整回路4の出力5と、モータ被試験相の巻線の任意ターン26とサージ電圧発生装置1の一定電圧出力端子28の対地電圧を計測することができる。
【0026】
解析表示装置7には、サージ電圧計測器8、9、10と部分放電電流検出器3の出力が接続される。解析表示装置7内部では、サージ電圧計測器8、9、10の出力電圧を演算することで、モータの巻線ターン間、巻線‐コア間、異相間絶縁部に加わる電圧を表示、記録する。具体的には、実施例1では巻線ターン間電圧は、サージ電圧計測器8と9の出力の差電圧をアナログもしくはデジタル演算することで求められる。また、実施例1ではモータコア25を接地しているので、巻線‐コア間電圧はサージ電圧計測器8の対地電圧と一致する。巻線22、23の相と巻線24の相の異相間電圧は、サージ電圧計測器8と10の出力の差電圧をアナログもしくはデジタル演算することで求められる。部分放電電流検出器3の出力は、解析表示装置7のアナログもしくはデジタルハイパスフィルタもしくはバンドパスフィルタに接続され、サージ電圧の立ち上がりと立ち下がりの急峻電圧時間変化に伴いモータ巻線22、23の浮遊容量に流れる充電電流を除去し、部分放電電流のみを表示し、記録することができる。ハイパスフィルタもしくはバンドパスフィルタのカットオフ周波数は、サージ電圧の立ち上がり、立ち下がり時間0.1μsの逆数の10MHz以上が必要であり、30MHz?70MHz程度が望ましい。なお、前述のように、実施例1では、部分放電電流検出器3にモータ巻線22、23の接続リードを逆方向に貫通させることで、サージ電圧の立ち上がりと立ち下がりの急峻電圧時間変化に伴うモータ巻線22、23の浮遊容量に同時に流れる充電電流をキャンセルする。また、キャンセルできなかった充電電流はフィルタで除去するため、高感度で部分放電計測できる。しかしながら、例えば、三相巻線の製作途中に特定の一相を試験したい場合には、被試験相が1つしかない。ところが、このような場合にも、解析表示装置7内のフィルタのカットオフ周波数をさらに10?30MHz程度高くすれば、特定の一相の部分放電を部分放電電流検出器3で計測することもできる。」

カ 引用文献6
(ア)本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁物に高電圧を印加した際に、絶縁物の内部または外部で発生する部分放電を計測する部分放電電圧計測システム,及び部分放電電圧計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器をはじめとする電気設備では、経年劣化或いは環境劣化により、絶縁物の内部や外部において部分放電と称する微小な放電が発生したり、さらに絶縁物が長期間部分放電に晒されることで絶縁材料が劣化し、何れは絶縁破壊に至ることがよく知られている。したがって、設備を構成する絶縁材料の部分放電特性を詳細に把握することは、事故を防止するためにも重要である。
部分放電は、絶縁物にあるレベル以上の電圧が印加されると発生する。その場合、部分放電開始電圧は、印加する電圧レベルを徐々に上昇させて、部分放電が最初に発生した際の印加電圧で定義され、部分放電消滅電圧は、部分放電が発生している状態から徐々に電圧レベルを下降させて、最初に部分放電が消滅した際の印加電圧で定義される。」

b 「【0016】
次に、部分放電電圧計測システム1により部分放電開始電圧を測定する方法について説明する。図2は、本実施例における部分放電開始電圧の測定手順を示すフローチャートである。ステップS1では、初期電圧取得プログラム12が、ユーザにより計測制御装置4の表示パネルの入力欄に設定された初期電圧V_(i)(例えば、1kV)を読み込み、ステップS2では、電圧制御プログラム9が発振器5の出力電圧振幅Aを例えば「0」に初期化する。
【0017】
ステップS3では、電圧制御プログラム9が発振器5に振幅Aの正弦波電圧を生成するように指示を与える。これにより、発振器5で生成された振幅Aの正弦波電圧は、アンプ6で増幅された後、変圧器7でさらに昇圧されて絶縁物8に印加される。ステップS4では、印加電圧計測回路13が絶縁物8に印加された電圧波形を計測し、ステップS5では、電圧値算出プログラム14が、ステップS4で計測された波形から例えば実効値として電圧値Vを算出する。この場合、算出する電圧値はピーク値でも構わない。
【0018】
ステップS6では、電圧制御プログラム9が初期電圧V_(i)とステップS5算出した電圧値Vとを比較し、(V≧V_(i))であれば(YES)ステップS8に移行し、それ以外であれば(NO)ステップS7に移行する。ステップS7では、振幅Aに対し、所定の振幅変化幅ΔAをn倍(1<n)した増加幅を加えたものを新たな振幅Aとすると、ステップS3に戻る。そして、ステップS6において(V≧V_(i))となるまで、ステップS3からステップS7を繰り返し実行する。
尚、変化幅ΔAは、発振器5の出力電圧の最小単位(出力分解能)で決まり、倍率nについては、発振器5に対し、出力分解能のn倍(n[mV])の電圧を指示するものとなる。そして、例えばアンプ6のゲインが「100」,変圧器8の昇圧率が「60」であるとすれば、変化幅ΔAに応じて電源装置2が出力する電圧レベルは、1mV×100×60=6Vとなる。
【0019】
ステップS8では、部分放電信号計測回路16が、部分放電検出ユニット3より出力される部分放電信号波形(判定対象信号)を計測し、ステップS9では、部分放電信号レベル算出プログラム17が、部分放電信号レベルの最大値PD_(max)を算出する。
【0020】
図3(a)は、絶縁物8にて部分放電が発生していない状態で、部分放電検出ユニット3が出力した電圧6周期分の部分放電信号波形の一例であり、図3(b)は、部分放電が発生した状態の(a)相当図である。図3(b)に示すように、部分放電が発生すると、ピーク値が異なるインパルス状の信号波形が間欠的に観測される。そこで、部分放電信号レベルの最大値があるレベル以上となったか否かを判定すれば、部分放電の発生を確実に検知できる。
再び、図2を参照する。ステップS10では、部分放電判定プログラム19が、所定のしきい値Th_(i)(測定対象の絶縁物8に応じて異なる)と最大値PD_(max)とを比較し、(PD_(max)≧Th_(i))であれば部分放電が発生したと判定して(YES)ステップS13に移行する。ステップS13では、ステップS5で算出した電圧値Vを部分放電開始電圧として、計測制御装置4の表示パネルなどに表示する。
【0021】
一方、ステップS10において(PD_(max)<Th_(i))の場合には(NO)、部分放電の発生はないと判定し、ステップS11にて所定の電圧上昇時間Δt_(up)(例えば0.5秒)が経過するまで待機する。Δt_(up)が経過するとステップS12に移行し、電圧制御プログラム9が振幅Aに所定の振幅変化幅ΔAを加えて更新する処理を行い、ステップS3に戻る。なお、ステップS10では、Th_(i)≦PD_(max))という判定式を用いたが、(Th_(i)<PD_(max))を用いても構わない。
尚、ステップS7における電圧の増加幅は(ΔA・n)に設定されているが、ステップS12における電圧の増加幅はΔAに設定されている。これは、部分放電開始電圧が1kVを上回ると予想される絶縁物の場合、初期電圧V_(i)を超えるまでは印加電圧の上昇率を高めて、測定を迅速に行うためである。
【0022】
図4は、部分放電消滅電圧の測定手順を示すフローチャートである。ステップS21では、初期電圧取得プログラム12が、計測制御装置4の表示パネルの入力欄に、ユーザにより設定された初期電圧V_(e)を読み込み、ステップS22では、電圧制御プログラム9が絶縁物8に印加される電圧がV_(e)となる振幅Aをセットする。ステップS3?S5,S8,S9では、図2と同様の処理を行う。
ステップS23では、部分放電判定プログラム19が、所定のしきい値Th_(e)と最大値PD_(max)を比較し、(PD_(max)<Th_(e))となれば部分放電が消滅したと判定し(YES)、ステップS26に移行する。ステップS26では、ステップS5で算出した電圧値Vを部分放電消滅電圧として、計測制御装置4の表示パネルなどに表示する。
【0023】
ステップS23において、(PD_(max)≧Th_(e))の場合は(NO)部分放電が継続していると判定し、ステップS24にて所定の電圧下降時間Δt_(down)(例えば0.5秒)が経過するまで待機する。Δt_(down)が経過するとステップS25に進み、電圧制御プログラム9が振幅Aを振幅変化幅ΔAだけ減少させて、ステップS3に戻る。なお、ステップS23では(PD_(max)<Th_(e))という判定式を用いたが、(Th_(e)≦PD_(max))を用いても構わない。また、図2及び図4では、部分放電開始電圧と部分放電消滅電圧とを個別に測定する手順として説明したが、図2のステップS13を実行した後に図4のステップS21に進み、部分放電開始電圧と部分放電消滅電圧とを続けて測定してもよい。」

c 「【0024】
一般に、部分放電開始電圧と部分放電消滅電圧とでは、前者が高く、後者が低い値となる。例えば、特許文献1にも試料として開示されているような、エナメル線によるツイストペアについて測定を行った一例では、部分放電開始電圧が640V(平均値)であるのに対して部分放電消滅電圧は570V(平均値)であり、70V程度の差がある。したがって、部分放電開始電圧と共に部分放電消滅電圧も計測しておき、耐圧等を設定する場合に部分放電消滅電圧を基準にすれば、安全に対するマージンをより確実に設定することが可能となる。」

(イ)したがって、上記(ア)a及びcの記載から、引用文献6には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「絶縁物に高電圧を印加した際に絶縁物の内部または外部で発生する部分放電の計測において、部分放電開始電圧は、印加する電圧レベルを徐々に上昇させて部分放電が最初に発生した際の印加電圧で定義され、部分放電消滅電圧は、部分放電が発生している状態から徐々に電圧レベルを下降させて最初に部分放電が消滅した際の印加電圧で定義され、一般に、部分放電開始電圧と部分放電消滅電圧とでは、前者が高く、後者が低い値となる」点。

(ウ)また、上記(ア)a及びbの記載並びに図面の図2ないし図4から、引用文献6には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「絶縁物に高電圧を印加した際に絶縁物の内部または外部で発生する部分放電の計測において、部分放電開始電圧の測定手順では、絶縁物への印加電圧を増加させながら部分放電の有無を判定し、部分放電が発生したと判定されると、電圧値を部分放電開始電圧として表示し部分放電開始電圧の測定手順を終了し、その後、絶縁物への印加電圧を初期電圧にセットし、続けて部分放電消滅電圧の測定手順を実行する」点。

キ 引用文献7
(ア)本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献7には、次の事項が記載されている。
a 「2006年10月に発行されたIEC60034-18-41(以下-41と省略)はモータコイルに部分放電が無いことを要求する初の規格である^((10))。その部分放電測定法として同年4月に発行されたばかりのIEC61934TSEd.1が引用されている^((11))。これは繰返しインパルス電圧における部分放電計測法の基本を述べたものであるが、-41の発行前に駆け足で発行された事情がある。そのため内容的に不十分であるとの指摘があり、発行直後のIEC/TC112ベルリン会議で第2版に改定するプロジェクトチームWG3PT1が発足した。プロジェクトリーダには筆者が指名された。2007年東京会議から年2回のペースでPT1会議を開催し、プロジェクト原案(WD)を5回作成した後、2010年5月にCDを発行するに至った。本年9月のベルリン会議においてこれに対する技術コメント審議を行い、10月のTC112シアトル会議に報告し、引き続きDTS(TS成立前の最終原案)を2011年春に発行する予定となった。
本稿では、IEC61934の第2版の主な改訂内容を紹介するとともに、関連IEC規格改定の動向についても紹介する。」(13ページ左欄第11行ないし最下行)

b 「<2.1> 用語の定義
IEC61934第1版の最も特徴的な点は、初めて繰返しインパルス電圧における部分放電開始電圧RPDIV、消滅電圧RPDEVを初めて定義したことにある。第2版では電圧インパルス10発に対し5 発以上部分放電パルスが発生した時と定義した。さらにイメージ図1(本文では図12)を追加し、理解しやすく工夫している。」(14ページ左欄第1ないし7行)

c 「

図1 繰返し電圧インパルスの上昇・下降の例
(PDIV、PDEV、RPDIV、RPDEVの表示例)
Figure 1 Example of increasing and decreasing the impulse voltage magnitude」(14ページ左欄)

d 「<2.2> インパルス電源
第1版にはインパルス電源に関する記載が全くなく、これではRPDIV等が使用電源に応じて変化することが十分想定された。そのため、まずPWM制御により生じるインバータサージを模擬するという目的を説明し、さらに具体的なインパルス電圧波形として発行済のIEC62068-1^((12))の表を追加した。なお、この数値の範囲は議論の結果、一部修正している。基本的にモータコイルの端部ターンにかかる電圧を模擬しているので、PWM波形の方形波の幅と誤解したコメントは除外した。

<2.3> UHF電磁波アンテナによるPD検出
第1版では従来のコンデンサ法・CT法などに加えて、方向性結合器のみが電磁波センサとして記載されていた。一方日本ではオンライン部分放電センサとしてこれまでも高周波アンテナが研究されており^((13))、特に日本の共同実験では狭帯域のUHFアンテナが電磁アンテナとして使用されてきた^((14))。このため、図2で示す通常の電磁波アンテナを本文の図6に追加した。」(14ページ左欄下から18行目ないし最下行)

e 「

図2 UHF電磁アンテナ
Figure 2 Circuit using an electromagnetic UHF antenna」(14ページ右欄)

f 「<2.5> 電圧インパルスの上昇・下降の手順
第1版では具体的にどのように具体的に試験するのか全く触れられていなかった。そのため筆者は以下の文を提案し、イタリアから若干のコメントがあったが、ほぼそのまま8節として受け入れられた。その全文を記す。
7節で述べたバックグランドノイズや検出限界を確認したのち、PDIV、PDEV、RPDIV、RPDEVを次のように測定する。繰返し電圧インパルスの値は連続的または低い電圧毎の段階状に上昇させ、その後下降させる。各値は次のような手順で求めていく。
・試験前に電圧インパルスの最小値、最大値、電圧ステップ値、繰返し周波数を決めておく。
・予備試験によって、最小電圧は部分放電が発生しない電圧に選ぶ。
・予備試験によって、最大電圧では電圧インパルスに対して部分放電が必ず発生する電圧に選ぶ。
・必要であれば試験前にインパルス電源を上記パラメータ値に設定する。
・最小電圧から繰返しインパルス電圧を発生させる。
・PDIVは初めて部分放電が1発発生した時の電圧とする。
・RPDIVは同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以上の部分放電パルスが発生した時の最小電圧とする。10発以下の電圧インパルスで試験する場合には、電圧インパルスと部分放電パルスの比率が同じになるようにする。
・最大電圧に達した後、繰返し電圧インパルスは電圧ステップ毎に下降させる。
・RPDEVは同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以下の部分放電パルスが発生した時の最大電圧とする。
・PDEVは部分放電パルスが消滅した時の電圧である。
この手順以外の(連続的)電圧上昇・下降も可能である。
注)PDIVやPDEVは電圧上昇下降が繰り返されると変動する可能性が高い。

<2.6> 付録Cの追加
2007年より電気学会調査専門委員会の有志委員で共同実験(RRT)が発足し、RPDIV測定データを収集している。この狙いは、同一のツイストペア試料を用い、同一の繰返しインパルス電圧パターンを用いて、各研究機関のセンサで部分放電計測して求めたRPDIVを共通のデータシートで統計処理したものである。
測定中の温度と気圧は共通の補正式で補正し、normalizeを意味するNを頭に付けている。図5がRRTに使用した繰返し負極インパルス電圧波形、図6は相対湿度のRPDIV特性である。またRPDIV付近の電圧インパルスに対する部分放電パルス発生状態の実例も追加した。」(15ページ左欄下から18行目ないし右欄第27行)

g 「

図5 RRTに使用した繰返し負極インパルス電圧^((15))
Figure 5 The sequence of negative voltage impulses used of RRT」(15ページ右欄)

h 図5から、電圧インパルス10発が供給される供給期間の後に、電圧インパルスの供給が休止される休止期間が設けられ、供給期間と休止期間とが周期的に繰り返される点が見て取れる。

(イ)上記(ア)a及びdの記載によれば、「繰返しインパルス電圧における部分放電計測」のためのシステムは、「インパルス電源」と、「UHF電磁波アンテナ」を有する「部分放電センサ」と、を備えるものといえ、また、上記(ア)bに記載された「消滅電圧」が「繰返しインパルス電圧における部分放電消滅電圧」を意味することは、明らかである。
したがって、上記(ア)aないしhの記載から、引用文献7には、次の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されていると認められる(括弧内は、特に関連する記載箇所を示す。)。
「繰返しインパルス電圧における部分放電計測のためのシステムであって、インパルス電源と、UHF電磁波アンテナを有する部分放電センサと、を備えており、(上記(ア)a、d)
試験前に、電圧インパルスの最小値、最大値、電圧ステップ値、繰返し周波数を決めてインパルス電源を設定し、(上記(ア)f)
最小電圧から繰返しインパルス電圧を発生させ、繰返し電圧インパルスの値は低い電圧毎の段階状に上昇させ、(上記(ア)f)
繰返しインパルス電圧における部分放電開始電圧RPDIVは、同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以上の部分放電パルスが発生した時の最小電圧として求められ、(上記(ア)b、f)
最大電圧に達した後、繰返し電圧インパルスは電圧ステップ毎に下降させ、(上記(ア)f)
繰返しインパルス電圧における部分放電消滅電圧RPDEVは、同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以下の部分放電パルスが発生した時の最大電圧として求められ、(上記(ア)b、f)
電圧インパルス10発が供給される供給期間の後に、電圧インパルスの供給が休止される休止期間を設け、供給期間と休止期間とを周期的に繰り返す、(上記(ア)h)
システム。」

(ウ)また、上記(ア)aないしc及びfの記載から、引用文献7には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「繰返しインパルス電圧における部分放電計測において、
繰返し電圧インパルスの値を段階状に上昇させて、繰返しインパルス電圧における部分放電開始電圧RPDIVを求め、
その後、繰返し電圧インパルスの値を段階状に下降させて、繰返しインパルス電圧における部分放電消滅電圧RPDEVを求める」点。

ク 引用文献8
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献8には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「一般にデマンド監視装置の機能試験には、電力量を模擬するパルス発生装置が必要である。
これに対して、従来は第1図に示すように、一定周波数のパルスを発生するパルス発生回路1とパルス間隔をタイマー等を用いて手動で任意に設定するパルス間隔設定器2とそのパルス出力回路3とを組合せたものが多く用いられている。」(明細書第1ページ第20行ないし第2ページ第6行)

b 「本考案の一実施例を第3図に示す。
第3図は折線Xを任意の傾斜で6段、合計30分間設定できるものを示している。
第3図において100m秒間隔のパルス発生装置4で発生した10HZのパルス列はパルスカウント回路5で1/10に分周されて1HZのパルス列となり、AND回路11-1?11-6を介してそれぞれパルス間隔設定回路6-1?6-6に入力されると共に出力時間設定回路8-1?8-6に入力される。
尚スイッチ7-1?7-6はそれぞれAND回路11-1?11-6を阻止するためのパルスカットスイッチであり、これによって折線Xの段数を減らすことができる。
上記1HZパルスは先ず1段目のパルス間隔設定回路6-1で任意に分周され、所要パルス間隔の試験パルス列P1を出力時間設定回路8-1で任意に設定した時間T1だけAND回路12-1を介して出力し、パルス出力回路3を介して出力される。
設定時間T1が経過すると、次段のAND回路11-2がオンとなり、上記1段目と同じようにして2段目の試験パルス列P2が設定されたパルス間隔で設定時間T2だけ出力される。
以下順次6段目までの試験パルス列が出力され、最終的に30分カウント回路10が30分をカウントアップすると出力時間設定回路8-1?8-6をそれぞれリセット回路9-1?9-6を介してすべてリセットし、上記の試験パルス列が再度1段目から発生される。
これによって任意の折線形状をもった30分間の試験用パルス列Xが繰返し得られる。
尚上記は試験パルス列が6段の場合について説明したが回路数を変えることによって任意の段数をとることが可能である。」(明細書第3ページ第14行ないし第5ページ第6行)

ケ 引用文献9
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献9には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0026】これは、図2に波線枠72で囲むように、三相交流発電電動機10のリアクトルを介してIPD52のFET52aとスイッチング素子27のFET27aとが直列に接続された構造となっているので電流経路が遮断されるものである。この遮断機能を以降IPDの保護機能という。
【0027】2つ目の特徴は、PWM駆動回路58を用いたことにある。PWM駆動回路58は、パルス幅変調により得た複数回の「L」/「H」を繰り返すPWM駆動信号を生成して論理積回路54?56に供給する。
【0028】論理積回路54?56には図3(a)に示すようなゲート駆動信号(第1信号)とPWM駆動回路58からのPWM駆動信号(第2信号)とが入力されるので、論理積回路54?56の出力信号(第3信号)は、図3(b)に示すように、ゲート駆動信号が「H」のときにPWM駆動信号による「L」/「H」を繰り返す。この出力信号(第3信号)はスイッチング素子26?28のFETのゲート端に供給され、これによって、スイッチング素子26?28のFETが高速にスイッチング動作する。」

コ 引用文献10
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献10には、次の事項が記載されている。
「<2・5> 実験方法
第1次RRTの実験方法は以下の通りとした。
[1]実験前にはアルコール付きガーゼで表面を清浄する。
[2]2.3節で述べたインパルス電圧を印加する。
[3]同一試料で10回測定し、10本の試料を用いて実施する。
[4]RPDIVは10発のインパルス電圧に対しPDが5発以上発生した時のインパルスピーク電圧を分圧器で読み直して平均値を求める。
[5]実験結果は共通テンプレートに入力し、測定条件に対する共通の補正と統計処理を行う。」(33ページ右欄下から2行目ないし34ページ左欄第8行)(なお、摘記にあたり都合上、○に数字は、[ ]に数字と表記した。)

サ 引用文献11
(ア)本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献11には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0032】この実施の形態2は、従来方法の部分放電を測定する絶縁試験において、部分放電消滅電圧が最高常規対地電圧よりも高い高電圧電気機器の絶縁物内部のボイドの状況を調査する絶縁試験法である。
【0033】例えば6.6kV用エポキシ樹脂モールド形計器用変圧器の絶縁試験の状況を次に示す。図1は6.6kV用エポキシ樹脂モールド形計器用変圧器の断面図である。図において、20はモールド形計器用変圧器、21は高圧側コイル、22は低圧側コイル、23は高圧コイル21と低圧コイル22を所定の間隔を保持して周囲を覆った主絶縁部、24は鉄心である。試験回路は図25の被試験物1の部分に図1の6.6kV用計器用変圧器を接続して行ったものである。
【0034】被試験物としてのモールド形計器用変圧器20に放射線を照射しないで、高圧側コイル21と低圧側コイル22の間に試験電圧を印加して部分放電を測定した結果を図2に示す。図2の縦軸は発生した部分放電電荷量、横軸は印加電圧である。試験電圧は商用周波交流電圧を10kVまで印加し、1pC以上の部分放電電荷量を測定したものである。この結果は図示のように、8.6kVで部分放電が開始し、5.0kVで消滅しており、部分放電開始電圧と消滅電圧に差がある結果が得られている。」

(イ)したがって、上記(ア)の記載から、引用文献11には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「部分放電を測定する絶縁試験において、被試験物としてのモールド形計器用変圧器に、高圧側コイルと低圧側コイルの間に試験電圧を印加して部分放電を測定したところ、8.6kVで部分放電が開始し、5.0kVで消滅しており、部分放電開始電圧と消滅電圧に差がある結果が得られた」点。

シ 引用文献12
(ア)本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献12には、次の事項が記載されている。
「〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、部分放電試験においては部分放電開始電圧・消滅電圧測定の場合、測定値と絶縁劣化の関係が明確に現われないことがあり、また測定者によって読み取りかたにバラツキがあり、累積発生頻度-放電電荷特性の計測の場合、一定電圧を印加して測定するので、供試巻線の絶縁劣化の程度が進んでいると測定中に絶縁破壊する危険性がある。
またtanδ試験においては、前述したように測定中に絶縁破壊する危険性があった。
本発明は上述した点に鑑みて創案された方法で、その目的とするところは、絶縁劣化の程度を短時間に精度よく測定出来、且つ供試巻線の絶縁劣化の程度が進んでいるものであっても、測定中に絶縁破壊しない程度の電圧を印加すればよい回転電機の巻線の絶縁診断方法を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
つまり、その目的を達成するための手段は、回転電機の巻線の絶縁劣化の進行を電気的特性の変化に基づいて計測する絶縁診断方法において、巻線に電圧を印加せしめたとき発生する放電電荷量を計測するときに、一定の部分放電電荷量以上の累積発生頻度と巻線に印加せしめた電圧とを同時に計測して記録装置に記録させ、印加電圧の上昇に対して一定の部分放電電荷量以上の累積発生頻度の増加程度により絶縁劣化の程度を測定することにある。また、請求項第(2)項に記載したように、前記累積頻度につきある設定した累積発生頻度に部分放電電荷量が到達したときに、印加電圧を遮断せしめて、巻線に必要以上の電圧を印加させない診断を行う方法もある。
〔作用〕
その作用は、供試絶縁体が建全な場合、この絶縁体内部には微少な空隙、すなわちボイドしかなく、部分放電の開始電圧は比較的高く、同じ印加電圧ではその発生個数も少ない。しかし、供試絶縁体が熱の影響を受けて膨張・収縮を繰り返すうちに、絶縁層に亀裂が生じたりしてボイドは初期のときより大きくなり、同一の電圧でも部分放電の発生個数は増えてくる。従って、第2図に示されるように、印加電圧の上昇に対して一定の部分放電電荷以上の累積発生頻度の増加程度により、絶縁劣化の程度が判る。
本発明の診断方法はその現象を利用した方法であり、また請求項第(2)に記載したように、ある一定の放電電荷量以上の累積発生頻度を測定しつつ、累積発生頻度の限界を定めてその累積発生頻度に到達したときに供試体に印加している電圧を遮断しようとする場合もある。これにより、供試絶縁体に必要以上の電圧を印加することが防止できる。」(第2ページ左上欄第9行ないし左下欄第19行)

(イ)したがって、上記(ア)の記載から、引用文献12には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「部分放電試験において、測定中に絶縁破壊する危険性を避けるため、巻線に必要以上の電圧を印加させないようにし、供試絶縁体に必要以上の電圧を印加することを防止する」点。

ス 引用文献13
(ア)本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献13には、次の事項が記載されている。
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】この様な部分放電試験において、部分放電開始電圧については、使用電圧の1.3倍以上のある値に定めた基準電圧を試料に対して印加し、部分放電が発生しないことを確認すれば十分である。しかしながら、部分放電消滅電圧については、実際に試料に対して部分放電を発生させて、その正確な値を測定する必要がある。従って、上記のように部分放電を発生させるために、試料に対して長時間の電圧印加を行ったり、基準電圧を大きく上回る過度の高電圧を印加することが避けられず、試験時間を長時間必要としたり、また、試料にかかる高電圧ストレスが大きいという問題があった。」

(イ)したがって、上記(ア)の記載から、引用文献13には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「部分放電試験において、部分放電消滅電圧については、実際に試料に対して部分放電を発生させて、その正確な値を測定する必要があるため、試料に対して長時間の電圧印加を行ったり、基準電圧を大きく上回る過度の高電圧を印加することが避けられず、試験時間を長時間必要としたり、また、試料にかかる高電圧ストレスが大きいという問題がある」点。

(2)原査定の理由についての判断
ア 本願発明1について
(ア)対比
a 本願発明1と引用発明1とを対比する。
(a)引用発明1の「高圧コンデンサ」においては、「高電圧発生回路から」の「電荷が充電される」とともに、「充電した電荷」が「高電圧スイッチング回路のスイッチ作用(ゲート制御)によって」「瞬時に放出」されるので、引用発明1の「高電圧発生回路」によって「発生」させられる、「一般的なコイル(巻線)の絶縁試験が可能な程度(通常、数kV)の高い電圧」が、直流電圧であることは、明らかである。
そして、引用発明1の「高電圧制御回路」は、「制御装置(CPU)によって設定された大きさのインパルス電圧を発生するように高電圧発生回路を制御する」ものであるので、引用発明1の「高電圧発生回路」は、「高電圧制御回路」の指示する「インパルス電圧」の「大きさ」に応じた「高い電圧を発生する」ものといえる。
したがって、引用発明1の「高電圧発生回路」と、本願発明1の「指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源」とは、「指示電圧に応じた高電圧を出力する直流電源」である点で共通する。

(b)引用発明1の「ゲートパルス制御回路」は、「高電圧スイッチング回路」を「オン/オフ制御」することにより、「高電圧スイッチング回路にゲートパルスを出力して高電圧スイッチング回路を通電し、インパルス電圧を被試験巻線へ印加」するものであるところ、引用発明1において、「測定条件の設定内容の例では」、「1ステップについての繰り返しインパルス印加数を10パルス」として「設定」されているから、「1ステップについての繰り返しインパルス印加数」と同じ回数の「10パルス」の「ゲートパルス」が、「ゲートパルス制御回路」から「出力」されることは、明らかであり、また、そのような「10パルス」の「ゲートパルス」から構成される信号が、所定のパルス幅及び所定のパルス繰り返し周波数を有するとともにパルス供給期間にのみ発生する方形波の信号であることも、明らかである。
したがって、引用発明1の「ゲートパルス制御回路」と、本願発明1の「所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器」とは、「所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を有する所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器」である点で共通する。

(c)引用発明1の「高電圧スイッチング回路」は、「ゲートパルス制御回路によってオン/オフ制御され」るものであるところ、「サイリスタ、MOSFET(モス電界効果トランジスタ)またはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの汎用素子で構成されて」いるので、半導体スイッチということができ、また、引用発明1において、「ゲートパルス制御回路」の生成する方形波信号の電圧値が、ハイレベルかローレベルか、すなわち、予め設定された電圧しきい値よりも高いか低いかに応じて、「高電圧スイッチング回路」の「オン/オフ」が「制御され」ることは、明らかである。
そして、引用発明1における、「高電圧スイッチング回路のスイッチ作用(ゲート制御)によって」「インパルス電圧を発生させる高圧コンデンサ」は、「インパルス電圧の印加休止期間中に」、すなわち「高電圧スイッチング回路」が「オフ」のときに、「高電圧発生回路から絶えず電荷が充電されるようにしておき」、「高電圧スイッチング回路」が「オンになったときに」、「充電されている電荷を瞬時に被試験巻線に放出」するものであるから、引用発明1において、「被試験巻線に」印加される「インパルス電圧」のピーク値が、「高電圧発生回路」の電圧値となることも、明らかである。
したがって、引用発明1の「サイリスタ、MOSFET(モス電界効果トランジスタ)またはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの汎用素子で構成されており、ゲートパルス制御回路によってオン/オフ制御され、オンになったときに高圧コンデンサに充電されている電荷を瞬時に被試験巻線に放出させる高電圧スイッチング回路」は、本願発明1の「前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチ」に相当する。

(d)引用発明1においては、「制御装置(CPU)に組み込まれているソフトウエアで」「設定」された「1ステップについての繰り返しインパルス印加数」と同じ回数の「10パルス」の「ゲートパルス」が、「ゲートパルス制御回路」から「出力」されるところ、そのような「10パルス」の「ゲートパルス」から構成される信号が、所定のパルス幅及び所定のパルス繰り返し周波数を有する方形波の信号であることは、明らかである(上記(b))ので、引用発明1の「制御装置(CPU)」が、「ゲートパルス制御回路」に対し、所定のパルス幅、所定のパルス繰り返し周波数及び所定回数(「10パルス」)が設定された方形波を「出力」するよう、指示するための信号を出力していることも、明らかであるといえる。
したがって、引用発明1の「制御装置(CPU)」は、そのような方形波についての指示信号を、「ゲートパルス制御回路」に対し出力する手段を備えるものということができ、引用発明1の「制御装置(CPU)」における該手段が、本願発明1の「前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部」に相当する。

(e)引用発明1の「高電圧制御回路」は、「制御装置(CPU)によって設定された大きさのインパルス電圧を発生するように高電圧発生回路を制御する」ものであるところ、引用発明1においては、「制御装置(CPU)に組み込まれているソフトウエアで」、「測定条件の設定内容の例では、インパルス電圧の印加開始電圧を1000V」、「電圧増加ステップ量を10V」として「設定」され、「印加開始電圧から終了電圧までの電圧を、設定した電圧増加ステップ量の割合で、自動で段階的に昇圧しながら、連続的に繰り返しインパルス印加数回のインパルス電圧印加を行」うから、引用発明1の「高電圧制御回路」は、「高電圧発生回路」に対し、1周期目においては「インパルス電圧の印加開始電圧」の「1000V」を指示する信号を出力し、2周期目以降の周期においては、直前の周期で指示した電圧に「電圧増加ステップ量」の「10V」を加算した電圧を指示する信号を出力するものといえる。
したがって、引用発明1の「高電圧制御回路」は、本願発明1の「前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として出力する電圧指示部」に相当する。

(f)引用発明1においては、「インパルス電圧を被試験巻線に印加した際」、「電磁波検出回路」により「被試験巻線内の絶縁耐力の低下で起きる部分放電により発生する電磁波をアンテナで捕らえ、電磁波検波信号に変換する」とともに、「発生する電磁波信号をサンプリングし、サンプリングデータをメモリし、メモリした電磁波信号の波形データから部分放電の有無を判定し」ているので、引用発明1は、「インパルス電圧」が「印加」された「被試験巻線内の絶縁耐力の低下で起きる部分放電」に基づいた検出信号を観測する回路を備えるものということができ、引用発明1の当該回路が、本願発明1の「前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路」に相当する。

(g)引用発明1においては、「インパルス電圧を予め設定した繰り返しインパルス数分印加したら、部分放電なしであるか否かを判定し、放電ありと判定すると、放電ありの回数と繰り返しインパルス印加数とで放電発生確率を求め」ているので、引用発明1は、周期ごとに「部分放電」に基づいた検出信号の入力回数を「放電ありの回数」としてカウントする手段を備えるものということができ、引用発明1の当該手段が、本願発明1の「周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部」に相当する。

(h)引用発明1の「端子間電圧検出回路」は、「インパルス電圧が被試験巻線に印加された際の被試験巻線の端子間に発生する電圧(共振振動電圧)を所定比で分圧して、被巻試験線の端子間に印加する高電圧を計測する」ものであるから、本願発明1の「前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路」に相当する。

(i)引用発明1においては、「端子間電圧検出回路により被試験巻線の端子間に発生する電圧波形信号をサンプリングし、サンプリングデータをメモリし、メモリした波形データから印加電圧値を求め」ているので、引用発明1は、「被試験巻線に印加された」「インパルス電圧」を表す「印加電圧」の信号を「端子間電圧検出回路」から取得する手段を備えるものということができ、引用発明1の当該手段が、本願発明1の「前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部」に相当する。

(j)引用発明1において、「放電発生開始電圧」「の測定は、制御装置(CPU)に組み込まれているソフトウエアで複数のパラメータ(測定条件及び判定条件)を設定することにより、自動的に評価するものであり」、「放電ありの回数と繰り返しインパルス印加数とで放電発生確率を求め、放電発生確率が判定値以上であるか否かを判定し、判定結果がYesの場合は、印加リトライ回数試験するまでリトライを継続した上で印加電圧が放電開始発生電圧にな」るところ、「放電発生確率が判定値以上であるか否か」の「判定」は、「放電ありの回数」が規定回数「以上であるか否か」の「判定」ということができ、また、「放電開始発生電圧にな」る「印加電圧」が「インパルス電圧」のピーク値であることも、明らかである。
したがって、更に上記(d)及び(e)も踏まえると、上記引用発明1の「被試験巻線に印加するインパルス電圧の大きさを設定し、被試験巻線10に印加するインパルス電圧を段階的に上昇あるいは下降させるとともに、インパルス電圧を連続して被試験巻線10に印加した際の放電発生の確率を計算により求め、求めた放電発生確率に基づいて放電発生の有無を自動判定して、被試験巻線の良否を自動的に評価する制御装置(CPU)」と、本願発明1の「前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」とは、「前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」である点で共通する。

(k)引用発明1において、「放電発生終了電圧の試験も、放電発生開始電圧の試験と同様に実施することができ、電圧増加ステップ量を電圧減少ステップ量と変更すれば、他は同じである」ところ、「放電発生開始電圧測定の手順」では、「印加開始電圧から終了電圧までの電圧を、設定した電圧増加ステップ量の割合で、自動で段階的に昇圧しながら、連続的に繰り返しインパルス印加数回のインパルス電圧印加を行」うものとされているので、「放電発生終了電圧の試験」にあっては、「電圧減少ステップ量」「の割合で、自動で段階的に」減圧「しながら、連続的に繰り返しインパルス印加数回のインパルス電圧印加を行」うものとなることは、明らかである。
したがって、引用発明1において、「放電発生終了電圧の測定は、制御装置(CPU)に組み込まれているソフトウエアで複数のパラメータ(測定条件及び判定条件)を設定することにより、自動的に評価するものであり」、「放電発生終了電圧の試験も、放電発生開始電圧の試験と同様に実施することができ、電圧増加ステップ量を電圧減少ステップ量と変更すれば、他は同じである」ことと、本願発明1において、「前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること」とは、「前記制御部は、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、部分放電消滅電圧を求める」点で共通する。

(l)引用発明1の「巻線の検査装置」は、「連続的に繰り返し」「インパルス電圧印加を行」って「放電発生開始電圧、放電発生終了電圧の測定」を行うものであるから、次の相違点は除いて、本願発明1の「繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム」に相当するといえる。

b したがって、上記a(a)ないし(l)から、本願発明1と引用発明1とは、
「指示電圧に応じた高電圧を出力する直流電源と、
所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を有する所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、
前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、
前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、
前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として出力する電圧指示部と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路と、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、
前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、
前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、
前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、
を具備する部分放電計測システムであって、
前記制御部は、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、部分放電消滅電圧を求める、
繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
直流電源の出力する高電圧が、本願発明1では、「指示電圧の設定倍の電圧と」されているのに対し、
引用発明1では、そのような特定がない点。

(相違点2)
信号発生器において、方形波信号が、本願発明1では、「その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と」「所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号」「とを重ね合わせて」「生成」されるのに対し、
引用発明1では、そのような特定がない点。

(相違点3)
制御部が、本願発明1では、「前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする」のに対し、
引用発明1では、「放電発生確率が判定値以上」になり「印加リトライ回数試験するまでリトライを継続した上で印加電圧が放電開始発生電圧にな」る点。

(相違点4)
制御部が、本願発明1では、「前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し」、「前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする」のに対し、
引用発明1では、「放電発生開始電圧」が取得されて「結果及び印加電圧が表示されて終了し」た後に、「インパルス電圧」の「昇圧」は行わずに「放電発生終了電圧の試験」を「実施する」点については、特定がなく、また、「放電発生終了電圧の試験」に関し、「放電発生確率」又は「放電ありの回数」がどのようになったときの「印加電圧」をもって「放電発生終了電圧」とするかについても、特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み、最初に上記相違点4について検討する。
例えば引用文献6(上記(1)カ(イ))に示されているように、一般に、部分放電開始電圧と部分放電消滅電圧とを比較した場合に、部分放電開始電圧の方が高いことは、周知の事項と認められ、また、例えば引用文献6(上記(1)カ(ウ))、引用文献7(上記(1)キ(ウ))に示されているように、部分放電開始電圧の測定に続いて部分放電消滅電圧の測定を行うことも、周知の事項と認められる。
しかしながら、部分放電開始電圧の測定に続いて部分放電消滅電圧の測定を行うにあたり、部分放電消滅電圧測定における印加電圧の初期値を、部分放電開始電圧を取得した際の印加電圧として定めること(すなわち、部分放電開始電圧が取得された以降、印加電圧は加算せずに部分放電消滅電圧の測定に移行すること)については、引用文献6、7のほか引用文献2ないし5、8、9にも記載されておらず周知技術であったともいえないから、引用発明1において、たとえ前述の周知事項を考慮したとしても、「放電発生開始電圧」が取得されて「結果及び印加電圧が表示され」た後、「インパルス電圧」は「昇圧」せずに「放電発生開始電圧」が取得された際の「インパルス電圧」を初期値に定めた上で、引き続き「放電発生終了電圧の試験」を「実施する」ようにすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、上記相違点1ないし3については検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2ないし9に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、いずれも、本願発明1を更に限定したものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2ないし9に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1の「指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源」との構成を、本願発明6の「指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力し、昇圧ランプ電圧出力および降圧ランプ電圧出力が可能な直流電源」との構成に置き換えた上で、それに合わせて、「前記直流電源に出力」する「電圧指示信号」についても、本願発明1では、「前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧」を「設定」し、「2周期目以降の周期において」「直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として」「設定」し、「前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定」していたものを、本願発明6では、「前記昇圧ランプ電圧出力のための開始電圧と上限電圧と昇圧時間」並びに「前記降圧ランプ電圧出力のための終了電圧および降圧時間」を設定するように変更したものであり、これらの変更点を除けば、引用発明1に対し本願発明1の上記相違点4と同様の相違点を有するものといえる。
してみると、本願発明6は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2ないし9に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本願発明7について
本願発明7は、「繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システムの計測装置」の発明ではあるが、本願発明1の上記相違点4に係る構成と同様の構成を、その発明特定事項に含むものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2ないし9に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本願発明8について
本願発明8は、「部分放電計測システムによる計測方法」の発明ではあるが、本願発明1の上記相違点4に係る構成と同様の構成を、その発明特定事項に含むものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2ないし9に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ 小括
以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし8に係る発明は、引用発明1及び引用文献2ないし9に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
したがって、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

(3)当審拒絶理由1についての判断
ア 本願発明1について
(ア)対比
a 本願発明1と引用発明7とを対比する。
(a)引用発明7の「インパルス電源」は、「試験前に、電圧インパルスの最小値、最大値、電圧ステップ値、繰返し周波数を決めて」「設定」されて、「最小電圧から繰返しインパルス電圧を発生させ、繰返し電圧インパルスの値は低い電圧毎の段階状に上昇させ」、「電圧インパルス10発が供給される供給期間の後に、電圧インパルスの供給が休止される休止期間を設け、供給期間と休止期間とを周期的に繰り返す」ものであるところ、引用発明7において、「インパルス電源」の「発生」する「繰返しインパルス電圧」が高電圧であること(なお、引用文献7の図1(上記(1)キ(ア)c)には、「Voltage」が「1000」ないし「2000」の範囲にある「Voltage impulse」が示されている。)、該「繰返しインパルス電圧」が測定対象物に印加されること(なお、引用文献7の図2(上記(1)キ(ア)e)には、「Supply」及び「Test Object」が示されている。)、「繰返し電圧インパルスの値」を「低い電圧毎の段階状に上昇させ」るための「電圧ステップ値」が、「電圧インパルスの最小値」よりも低い電圧値とされていること、「繰返し電圧インパルスの値」が、「電圧インパルス10発」ごと、すなわち「供給期間と休止期間と」からなる「周期」ごとに、「段階状に上昇させ」られること、及び、「供給期間」における「電圧インパルス」の個数である「10発」が、「試験前に」あらかじめ設定された個数であることは、いずれも明らかである。
したがって、引用発明7の「インパルス電源」と、本願発明1における、「指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源と、所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として出力する電圧指示部と」からなる構成とは、「所定のパルス繰り返し周波数と所定個数と初期電圧とが設定され、供給期間および前記供給期間の後の休止期間を含む周期ごとに、1周期目には初期電圧の電圧が指示され、2周期目以降の周期においては直前の周期に指示された電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧が指示されて、前記所定の繰り返し周波数を有する前記所定個数の高電圧のインパルス電圧を前記供給期間にのみ発生させて測定対象物に印加する手段」である点で共通する。

(b)引用発明7の「UHF電磁波アンテナを有する部分放電センサ」が、「繰返し電圧インパルス」が印加された測定対象物からの「部分放電」に基づいた信号を観測するための回路を有していること(なお、引用文献7の図2(上記(1)キ(ア)e)には、「Test Object」、「Antenna」及び「Acquisition System」が示されている。)は、明らかであるので、引用発明7の「部分放電センサ」における当該回路が、本願発明1の「前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路」に相当する。

(c)引用発明7においては、「同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以上の部分放電パルスが発生した」ことを判定しているので、測定対象物からの「部分放電」に基づいた信号の入力回数を、「供給期間と休止期間と」からなる「周期」ごとにカウントしていることは、明らかである。また、引用発明7において、「部分放電開始電圧RPDIV」として求められる、「同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以上の部分放電パルスが発生した時の最小電圧」が、「部分放電パルス」の回数が「5発以上」となった最初の「周期」における電圧値のことであることも、明らかである(なお、引用文献7の図1(上記(1)キ(ア)c)も参照。)。
したがって、引用発明7において、「繰返しインパルス電圧における部分放電開始電圧RPDIVは、同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以上の部分放電パルスが発生した時の最小電圧として求められ」ることと、本願発明1において、「周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、を具備する」こととは、「周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントし、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において部分放電開始電圧を取得」する点で共通する。

(d)引用発明7において、「部分放電開始電圧RPDIV」が「求められ、最大電圧に達した後、繰返し電圧インパルスは電圧ステップ毎に下降させ」ることと、本願発明1において、「前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力」することとは、「前記部分放電開始電圧が取得された後、各周期において、直前の周期に指示した電圧に前記所定電圧を減算した電圧を指示」する点で共通する。

(e)引用発明7において、「部分放電消滅電圧RPDEV」として求められる、「同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以下の部分放電パルスが発生した時の最大電圧」が、「部分放電パルス」の回数が「5発以下」(すなわち、6発未満)となった最初の「周期」における電圧値のことであることは、明らかである(なお、引用例1の図1も参照。)。
したがって、引用発明7において、「部分放電消滅電圧RPDEVは、同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以下の部分放電パルスが発生した時の最大電圧として求められ」ることと、本願発明1において、「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とすること」とは、「前記部分放電開始電圧が取得された後、前記部分放電回数が規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数未満になった最初の周期において部分放電消滅電圧を取得する」点で共通する。

(f)引用発明7の「繰返しインパルス電圧における部分放電計測のためのシステム」は、次の相違点は除いて、本願発明1の「繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム」に相当するといえる。

b したがって、上記a(a)ないし(f)から、本願発明1と引用発明7とは、
「所定のパルス繰り返し周波数と所定個数と初期電圧とが設定され、供給期間および前記供給期間の後の休止期間を含む周期ごとに、1周期目には初期電圧の電圧が指示され、2周期目以降の周期においては直前の周期に指示された電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧が指示されて、前記所定の繰り返し周波数を有する前記所定個数の高電圧のインパルス電圧を前記供給期間にのみ発生させて測定対象物に印加する手段と、
前記インパルス電圧が印加された前記測定対象物から発生する部分放電に基づいた検出信号を観測する検出信号観測回路と、
を具備する部分放電計測システムであって、
周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントし、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において部分放電開始電圧を取得し、
前記部分放電開始電圧が取得された後、各周期において、直前の周期に指示した電圧に前記所定電圧を減算した電圧を指示し、
前記部分放電開始電圧が取得された後、前記部分放電回数が規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数未満になった最初の周期において部分放電消滅電圧を取得する、
繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
インパルス電圧を印加する手段が、本願発明1では、「指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源と、所定のパルス幅および所定のパルス繰り返し周波数を表すパルス信号を生成し、その1周期がパルス供給期間および前記パルス供給期間の後のパルス休止期間を含む期間設定信号と前記パルス信号とを重ね合わせて、所定個数の前記パルス信号が前記パルス供給期間にのみ発生する方形波信号を生成する信号発生器と、前記方形波信号の電圧値が予め設定された電圧しきい値よりも低いときに前記直流電源からの前記高電圧により容量素子を充電し、前記方形波信号の電圧値が前記電圧しきい値以上であるときに前記容量素子から前記高電圧の値をピーク値とするインパルス電圧を測定対象物に印加する半導体スイッチと、前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とが設定された方形波指示信号を前記信号発生器に出力する信号指示部と、前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧が設定された電圧指示信号を前記直流電源に出力し、2周期目以降の周期において、前記電圧指示信号に対して、直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として出力する電圧指示部と」からなるのに対し、
引用発明7では、「インパルス電源」について、そのような特定がない点。

(相違点2)
本願発明1では、「周期ごとに前記検出信号の入力回数を部分放電回数としてカウントする部分放電回数算出部と、前記測定対象物に印加される前記インパルス電圧を表す印加電圧信号を観測する印加電圧信号観測回路と、前記印加電圧信号観測回路から前記印加電圧信号を取得する電圧値取得部と、前記方形波指示信号の前記所定のパルス幅と前記所定のパルス繰り返し周波数と前記所定個数とを設定して前記方形波指示信号を前記信号指示部に出力し、前記初期電圧および前記2周期目以降の周期における前記指示電圧を設定して前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力し、前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部と、を具備する」のに対し、
引用発明7では、「繰返しインパルス電圧における部分放電開始電圧RPDIVは、同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以上の部分放電パルスが発生した時の最小電圧として求められ」るものの、そのための具体的な手段については特定がない点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記制御部は、前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力」するのに対し、
引用発明7では、「制御部」、「電圧値取得部」及び「電圧指示部」の構成について特定がなく、また、「部分放電開始電圧RPDIV」が「求められ」てからも「最大電圧に達」するまで「繰返し電圧インパルスの値は低い電圧毎の段階状に上昇させ」られ、「最大電圧に達した後、繰返し電圧インパルスは電圧ステップ毎に下降させ」られている点。

(相違点4)
本願発明1では、「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする」のに対し、
引用発明7では、「制御部」の構成について特定がなく、また、「部分放電消滅電圧RPDEVは、同じ極性の電圧インパルス10発に対して、5発以下の部分放電パルスが発生した時の最大電圧として求められ」ている点。

(イ)判断
事案に鑑み、最初に上記相違点3について検討する。
例えば引用文献6(上記(1)カ(イ))、引用文献11(上記(1)サ(イ))に示されているように、一般に、部分放電開始電圧と部分放電消滅電圧とを比較した場合に、部分放電開始電圧の方が高いことは、周知の事項と認められる。
また、例えば引用文献12(上記(1)シ(イ))、引用文献13(上記(1)ス(イ))に示されているように、部分放電試験において、供試体に必要以上の電圧を印加しないようにすることも、周知の事項と認められる。
そして、例えば引用文献1(上記(1)ア(ウ))に示されているように、部分放電開始電圧が取得された時点で部分放電開始電圧の測定手順を終了させること、更には、例えば引用文献6(上記(1)カ(ウ))に示されているように、部分放電開始電圧が取得された時点で部分放電開始電圧の測定手順を終了し、続いて、印加電圧を初期値にセットした上で部分放電消滅電圧の測定手順に移行することは、いずれも周知の事項と認められる。
しかしながら、部分放電開始電圧の測定に続いて部分放電消滅電圧の測定を行うにあたり、部分放電消滅電圧測定における印加電圧の初期値を、部分放電開始電圧を取得した際の印加電圧として定めること(すなわち、部分放電開始電圧が取得された以降、印加電圧は加算せずに部分放電消滅電圧の測定に移行すること)については、引用文献1、6、11ないし13のほか引用文献9、10にも記載されておらず周知技術であったともいえないから、引用発明7において、たとえ前述の周知事項を考慮したとしても、「部分放電開始電圧RPDIV」が「求められ」た後、「繰返し電圧インパルスの値」は「上昇させ」ずに「部分放電開始電圧RPDIV」が「求められ」た際の「繰返し電圧インパルスの値」を初期値に定めた上で、引き続き「部分放電消滅電圧RPDEV」を「求め」るようにすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、上記相違点1、2及び4については検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明7並びに引用文献1、6及び9ないし13に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、いずれも、本願発明1を更に限定したものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明7並びに引用文献1、6及び9ないし13に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1の「指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力する直流電源」との構成を、本願発明6の「指示電圧の設定倍の電圧として高電圧を出力し、昇圧ランプ電圧出力および降圧ランプ電圧出力が可能な直流電源」との構成に置き換えた上で、それに合わせて、「前記直流電源に出力」する「電圧指示信号」についても、本願発明1では、「前記方形波信号の1周期目に前記指示電圧として初期電圧」を「設定」し、「2周期目以降の周期において」「直前の周期の前記指示電圧に前記初期電圧よりも低い所定電圧を加算した電圧を前記指示電圧として」「設定」し、「前記電圧値取得部により前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期からの各周期においては、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定」していたものを、本願発明6では、「前記昇圧ランプ電圧出力のための開始電圧と上限電圧と昇圧時間」並びに「前記降圧ランプ電圧出力のための終了電圧および降圧時間」「を設定」するように変更したものであり、これらの変更点を除けば、引用発明7に対し本願発明1の上記相違点3と同様の相違点を有するものといえる。
してみると、本願発明6は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明7並びに引用文献1、6及び9ないし13に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本願発明7について
本願発明7は、「繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システムの計測装置」の発明ではあるが、本願発明1の上記相違点3に係る構成と同様の構成を、その発明特定事項に含むものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明7並びに引用文献1、6及び9ないし13に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本願発明8について
本願発明8は、「部分放電計測システムによる計測方法」の発明ではあるが、本願発明1の上記相違点3に係る構成と同様の構成を、その発明特定事項に含むものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明7並びに引用文献1、6及び9ないし13に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ 小括
以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし8に係る発明は、引用発明7並びに引用文献1、6及び9ないし13に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
したがって、当審拒絶理由1によっては、本願を拒絶することはできない。

(4)当審拒絶理由2についての判断
ア 不備1について
本件補正により、請求項8において、補正前の「前記部分放電開始電圧が取得された後の各周期で、前記制御部が、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程」との記載を、「前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で初めの周期から後の各周期で、前記制御部が、前記指示電圧の加算を行わずに、直前の周期の前記指示電圧に前記所定電圧を減算した電圧が前記指示電圧として設定された前記電圧指示信号を前記電圧指示部に出力する工程」とする補正がなされたので、不備1は解消した。

イ 不備2について
本件補正により、請求項1において、補正前の「前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」及び「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする」との記載を、それぞれ、「前記部分放電回数が規定回数以上になったか否かを判定し、前記部分放電回数が規定回数以上になった最初の周期において前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電開始電圧とする制御部」及び「前記制御部は、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降に、前記部分放電回数が前記規定回数未満になったか否かを判定し、前記部分放電開始電圧が取得された周期以降で前記部分放電回数が前記規定回数未満になった最初の周期において、前記印加電圧信号観測回路からの前記印加電圧信号が表す電圧のピーク値を部分放電消滅電圧とする」とする補正がなされ、また、請求項6、7及び8においても同様の補正がなされたので、不備2は解消した。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件補正による補正後の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも明確であり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
したがって、当審拒絶理由2によっては、本願を拒絶することはできない。

4 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由及び当審において通知した拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-03 
出願番号 特願2012-57197(P2012-57197)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
P 1 8・ 537- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 中塚 直樹
大和田 有軌
発明の名称 繰り返しインパルス電圧による部分放電計測システムおよび部分放電計測方法  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  

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