• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1326689
審判番号 不服2016-5430  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-13 
確定日 2017-03-30 
事件の表示 特願2012- 80928「部品内蔵配線板、及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-211426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成24年3月30日の出願であって、平成28年1月28日付け(発送日:平成28年2月9日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後、同年9月27日付けで当審により拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成28年11月30日付けの手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
相対向して配置される少なくとも第1の配線層、開口部を有する第2の配線層、及び第3の配線層と、
前記第1の配線層及び前記第2の配線層間に配設された第1の絶縁層、並びに前記第2の配線層及び前記第3の配線層間に配設された第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層中に埋設され、前記第2の配線層と電極端子を介して電気的に接続するようにして実装された電子部品と、
前記少なくとも第1の配線層、第2の配線層及び第3の配線層を電気的に接続するための層間接続体と、
前記第1の絶縁層上に設けられ、かつ、前記第1の絶縁層の、前記電子部品の直下に位置する領域において、前記第2の配線層の前記開口部と連通する溝部と、
前記電子部品と前記第2の配線層との隙間及び前記溝部内に充填された樹脂と、
を備えたことを特徴とする部品内蔵配線板。」

第3.刊行物の記載事項
(1)当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2009-252942号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「部品内蔵配線板、部品内蔵配線板の製造方法」に関して、図面(特に【図4】及び【図7】参照。)と共に次の事項が記載されている。
ア.「【0028】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、この部品内蔵配線板は、絶縁層11(第1の絶縁層)、同12、同13、同14、同15(12、13、14、15で第2の絶縁層)、配線層21、同22(配線パターン)、同23(第2の配線パターン)、同24、同25、同26(=合計6層配線)、層間接続体31、同32、同34、同35、スルーホール導電体33、半導体素子(ウエハレベル・チップスケールパッケージによる)41、はんだ(接続部材)51、はんだレジスト61、62を有する。
【0029】
この配線板は内蔵部品として半導体素子41を有する。半導体素子41は、ウエハレベル・チップスケールパッケージによる素子であり、半導体チップと、該半導体チップ上に形成されたグリッド状配列の表面実装用端子41aとを少なくとも備えている。その構造例および製造工程例については詳細を後述する(図2、図3)。表面実装用端子41aは、半導体チップがもともと有する端子パッドから再配線層を介して電気的に導通しつつその位置を再配置して設けられた端子であり、このような再配置により端子としての配置密度が半導体チップ上の端子パッドのそれより粗くなっている。これにより、半導体素子41は、表面実装技術により配線層22による実装用ランドにはんだ51を介して実装され得る。
【0030】
部品内蔵配線板としてのほかの構造について述べると、配線層21、26は、配線板としての両主面上の配線層であり、その上に各種の部品(不図示)が実装され得る。実装ではんだ(不図示)が載るべき配線層21、26のランド部分を除いて両主面上には、はんだ接続時に溶融したはんだをランド部分に留めかつその後は保護層として機能するはんだレジスト61、62が形成されている(厚さはそれぞれ例えば20μm程度)。ランド部分の表層には、耐腐食性の高いNi/Auのめっき層(不図示)を形成するようにしてもよい。
【0031】
また、配線層22、23、24、25は、それぞれ、内層の配線層であり、順に、配線層21と配線層22の間に絶縁層11が、配線層22と配線層23の間に絶縁層12が、配線層23と配線層24との間に絶縁層13が、配線層24と配線層25との間に絶縁層14が、配線層25と配線層26との間に絶縁層15が、それぞれ位置しこれらの配線層21?26を隔てている。各配線層21?26は、例えばそれぞれ厚さ18μmの金属(銅)箔からなっている。
【0032】
各絶縁層11?15は、絶縁層13を除き例えばそれぞれ厚さ100μm、絶縁層13のみ例えば厚さ300μmで、それぞれ例えばガラスエポキシ樹脂からなるリジッドな素材である。特に絶縁層13は、内蔵された半導体素子41に相当する位置部分が開口部となっており、半導体素子41を埋設するための空間を提供する。絶縁層12、14は、内蔵された半導体素子41のための絶縁層13の上記開口部および絶縁層13のスルーホール導電体33内部の空間を埋めるように変形進入している。さらに、絶縁層12は、半導体素子41と絶縁層11との間にも変形進入しこの間の空間を埋めている。以上により内部に空隙となる空間は存在しない。
【0033】
配線層21と配線層22とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層11を貫通する層間接続体31により導通し得る。同様に、配線層22と配線層23とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層12を貫通する層間接続体32により導通し得る。配線層23と配線層24とは、絶縁層13を貫通して設けられたスルーホール導電体33により導通し得る。配線層24と配線層25とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層14を貫通する層間絶縁体34により導通し得る。配線層25と配線層26とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層15を貫通する層間接続体35により導通し得る。」

イ.「【0057】
次に、図4(d)に示すように、片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランドを含む配線層22に加工する。そして、加工により得られた実装用ランド上に、図4(e)に示すように、例えばスクリーン印刷によりクリームはんだ51Aを印刷・適用する。クリームはんだ51Aは、スクリーン印刷を用いれば容易に所定パターンに印刷できる。スクリーン印刷に代えてディスペンサを使用することもできる。」

ウ.「【0071】
次に、本発明の別の実施形態について図7を参照して説明する。図7は、本発明の別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図である。図7において、すでに説明した構成部分と同一または同一相当の部分には同一符号を付し、その説明は省略する。この実施形態は、図1に示したものに比較して、配線層22が、半導体素子41の実装用ランドを除く絶縁層12側の面が粗化表面22aを有する配線層22になっている点、および半導体素子41と絶縁層11との間に、絶縁層12とは別の樹脂52(アンダーフィル樹脂)が設けられている点が異なる。」

エ.「【0076】
粗化処理に続き、図8(c)に示すように、半導体素子41と絶縁層11との間にアンダーフィル樹脂52を充填する。具体的には、例えば、液状の熱硬化性樹脂をディスペンサで注入する。液状であるため、半導体素子41の面積が相当に大きい場合であっても、毛管現象により液状の樹脂52が隙間に広がり充填が完了する。充填後加熱してアンダーフィル樹脂52を硬化させる。」

オ.「【0079】
また、この実施形態において、粗化表面22aの形成と、絶縁層12とは異なるアンダーフィル樹脂52の採用とは、必要な信頼性の仕様によっては一方のみとする場合も考えられる。」

カ.「【0081】
1,1A…配線板素材、2…配線板素材、3…配線板素材、11…絶縁層、11A…プリプレグ、12…絶縁層、12A…プリプレグ、13…絶縁層、13A…プリプレグ、14…絶縁層、14A…プリプレグ、15…絶縁層、21…配線層(配線パターン)、21A…金属箔(銅箔)、22…配線層(配線パターン)、22a…粗化表面、22A…金属箔(銅箔)、23…配線層(配線パターン)、23A…金属箔(銅箔)、24…配線層(配線パターン)、24A…金属箔(銅箔)、25…配層(配線パターン)、26…配線層(配線パターン)、26A…金属箔(銅箔)、31,32,34,35…層間接続体(導電性組成物印刷による導電性バンプ)、33…スルーホール導電体、41…半導体素子(ウエハレベル・チップスケールパッケージによる)、41a…表面実装用端子、41b…再配線層、41c…端子パッド、41d,41e…絶縁層、41w…半導体ウエハ、51…接続部材(はんだまたは導電性組成物)、51A…クリームはんだまたは硬化前導電性組成物、52…アンダーフィル樹脂、61,62…はんだレジスト、71,72…開口部、81…部品用開口部、82…貫通孔。」

キ.上記イ.の「片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランドを含む配線層22に加工する。」との記載及び上記カ.の「22…配線層(配線パターン)」との記載並びに【図4】(d)からみて、配線層22は、配線パターンの隙間を有することが分かる。

ク.上記ア.の段落【0033】の「配線層21と配線層22とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層11を貫通する層間接続体31により導通し得る。同様に、配線層22と配線層23とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層12を貫通する層間接続体32により導通し得る。配線層23と配線層24とは、絶縁層13を貫通して設けられたスルーホール導電体33により導通し得る。配線層24と配線層25とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層14を貫通する層間絶縁体34により導通し得る。」との記載及び【図7】からみて、層間接続体31,32,34及びスルーホール導電体33は、配線層21、配線層22、配線層23、配線層24及び配線層25を電気的に接続することが分かる。

ケ.上記ア.の段落【0031】の「配線層21と配線層22の間に絶縁層11」との記載及び上記エ.の「半導体素子41と絶縁層11との間にアンダーフィル樹脂52を充填する。」との記載並びに【図7】からみて、アンダーフィル樹脂52は、半導体素子41と絶縁層11に隣接する配線層22との隙間に充填されることが分かる。

上記記載事項及び認定事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、図7の実施形態(中央部参照)として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「相対向して配置される配線層21、配線パターンの隙間を有する配線層22、及び配線層25と、
前記配線層21及び前記配線層22間に配設された絶縁層11、並びに前記配線層22及び前記配線層25間に配設された絶縁層12,14と、
前記絶縁層12,14中に埋設され、前記配線層22と表面実装用端子41aを介して電気的に接続するようにして実装された半導体素子41と、
前記配線層21、配線層22及び配線層25を電気的に接続するための層間接続体31,32,34及びスルーホール導電体33と、
前記半導体素子41と前記配線層22との隙間に充填されたアンダーフィル樹脂52と、
を備えた部品内蔵配線板。」

(2)当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2008-171879号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「プリント基板およびパッケージ実装構造」に関して、図面(特に【図2】および【図3】参照。)と共に次の事項が記載されている。
コ.「【0018】
また、充填用のアンダーフィルがこの溝を介してパッケージとプリント基板間に浸透しやすくなるため、アンダーフィルのはんだ接続用PADの周囲への充填をより効率的に行うことができ、はんだ接続部の補強をより高める効果も生ずる。」

サ.「【0027】
また、この溝3は、各はんだ接続部近傍に達したアンダーフィル8を更にはんだ接続部まで誘導する効果も期待できるので、各はんだ接続部へのアンダーフィルの充填を効率化する作用も有しており、各はんだ接続部の補強効果を一層高めることができる。」

シ.「【0029】
第1の実施形態では、フラックスを溜めるための溝3を、各はんだ接続用PAD2の周囲に沿って各PADを円状に囲む溝としてそれぞれ形成したが、本実施形態では、図3に示すように、フラックスを溜めるための溝3を、PAD2の各列に沿って直線状に形成したことを特徴としている。
【0030】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、LGAパッケージ5のPAD6とプリント基板1上のPAD2を電気的、機械的に接続するための熱処理の際に溶融してはんだ接続部周辺に流出するはんだペースト4中のフラックスは、PAD2の各列に沿って直線状に形成されたプリント基板1上の溝3に誘導されて、残フラックス7として溝3内に溜めることができ、パッケージ5とプリント基板1の間にはぬれ広がらなくなる。
【0031】
従って、はんだ付け後にアンダーフィル8をLGAパッケージ5の周囲から塗布してパッケージ下面にぬれ広がらせることによりはんだ接続部へ充填する際に、残フラックス7によって妨げられることなくアンダーフィル8をLGAパッケージ5の中心部のはんだ接続部まで浸透させて充填することができ、十分なはんだ接続部の補強効果を得ることができる。
【0032】
また本実施形態の場合、フラックスを溜めるための溝3を、PAD2の各列に沿って直線状に形成しているので、溝3の形成方法としては、プリント基板1のソルダーレジスト、あるいはレーザーによる溝加工に加えて、ダイシングによる形成方法を採用することもでき、溝3の形成方法も比較的容易であって、より低コスト化を図ることができる。
【0033】
また、この直線状の溝3を、プリント基板1のLGAパッケージ5搭載面の範囲よりも少し外側まで延長して設けることによって、アンダーフィル8をLGAパッケージ5の周囲から塗布した際に、このアンダーフィル8がこの直線状の溝3に導かれてプリント基板1のLGAパッケージ5搭載面内部まで浸透しやすくなり、はんだ接続部へのアンダーフィル充填効率を一層高める効果も期待できる。
【0034】
なお上記の実施形態では、プリント基板上に形成する溝の形状として、プリント基板上の各はんだ接続用PAD周辺部を囲む円状の溝、およびプリント基板上に配列された前記はんだ接続用PADに沿う直線状の溝として形成したが、溝の形状は上記の実施形態に限定されるものではなく、プリント基板の前記はんだ接続用PAD近傍に任意の形状で設けることができる。またその際、PAD2より配線の引き回しがある場合には、引き回しのための配線を避けて溝を形成する。」

ス.上記シ.の段落【0030】の「PAD2の各列に沿って直線状に形成されたプリント基板1上の溝3」との記載及び同段落【0034】の「プリント基板上に形成する溝の形状として・・・(中略)・・・PAD2より配線の引き回しがある場合には、引き回しのための配線を避けて溝を形成する」並びに【図3】からみて、溝3が、プリント基板1上に設けられ、かつ、プリント基板1のLGAパッケージ5の直下に位置する領域において、はんだ接続用PAD2の配線を避けた部分、すなわち配線のない部分に設けられることが分かる。

セ.上記シ.の段落【0033】の「アンダーフィル8がこの直線状の溝3に導かれてプリント基板1のLGAパッケージ5搭載面内部まで浸透しやすくなり」との記載及び【図2】(d)からみて、アンダーフィル8は、溝3内にも進入することは明らかであるから、アンダーフィル8が溝3内の一部に充填されることが分かる。

上記記載事項及び認定事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物2には、次の技術事項(以下、「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「プリント基板1上に設けられ、かつ、プリント基板1の、LGAパッケージ5の直下に位置する領域において、はんだ接続用PAD2の配線のない部分に設けられる溝3を備え、アンダーフィル8が溝3内の一部に充填されること。」

第4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「配線層21」は本願発明における「第1の配線層」に相当し、以下同様に、「配線層22」は「第2の配線層」に、「配線層25」は「第3の配線層」に、「絶縁層11」は「第1の絶縁層」に、「絶縁層12,14」は「第2の絶縁層」に、「表面実装用端子41a」は「電極端子」に、「半導体素子41」は「電子部品」に、「層間接続体31,32,34及びスルーホール導電体33」は「層間接続体」に、「アンダーフィル樹脂52」は「樹脂」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「配線パターンの隙間」は、本願明細書の段落【0060】の「第2の配線層12の配線パターンの隙間が第2の配線層の開口部に相当する」との記載を参酌すれば、本願発明における「開口部」に相当する。

そこで、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「相対向して配置される第1の配線層、開口部を有する第2の配線層、及び第3の配線層と、
前記第1の配線層及び前記第2の配線層間に配設された第1の絶縁層、並びに前記第2の配線層及び前記第3の配線層間に配設された第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層中に埋設され、前記第2の配線層と電極端子を介して電気的に接続するようにして実装された電子部品と、
前記第1の配線層、第2の配線層及び第3の配線層を電気的に接続するための層間接続体と、
前記電子部品と前記第2の配線層との隙間に充填された樹脂と、
を備えた部品内蔵配線板。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明においては、「第1の絶縁層上に設けられ、かつ、第1の絶縁層の、電子部品の直下に位置する領域において、第2の配線層の開口部と連通する溝部」を備え、「溝部内に」樹脂が充填されるのに対して、引用発明においては、溝部を備えない点。

第5.当審の判断
上記相違点について検討する。
本願発明と刊行物2に記載された技術事項とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、刊行物2に記載された技術事項における「プリント基板1」は本願発明における「第1の絶縁層」に相当し、以下同様に、「LGAパッケージ5」は「電子部品」に、「はんだ接続用PAD2」は「第2の配線層」に、「溝3」は「溝部」に、「アンダーフィル8」は「樹脂」に、それぞれ相当する。
また、刊行物2に記載された技術事項における「はんだ接続用PAD2の配線のない部分に設けられる溝3」は、溝3がはんだ接続用PAD2の配線のない部分であるところの開口部に連接して設けられるものであるから、本願発明における「第2の配線層の開口部と連接する溝部」に相当する。
したがって、刊行物2に記載された技術事項は、本願発明の用語を用いて表現すると、
「第1の絶縁層上に設けられ、かつ、第1の絶縁層の、電子部品の直下に位置する領域において、第2の配線層の開口部と連通する溝部を備え、樹脂が溝部の一部に充填されること。」ということができる。
また、刊行物2の上記第3.(2)サ.の「この溝3は、各はんだ接続部近傍に達したアンダーフィル8を更にはんだ接続部まで誘導する効果も期待できるので、各はんだ接続部へのアンダーフィルの充填を効率化する作用も有しており」(段落【0027】)との記載、及び同シ.の「このアンダーフィル8がこの直線状の溝3に導かれてプリント基板1のLGAパッケージ5搭載面内部まで浸透しやすくなり、はんだ接続部へのアンダーフィル充填効率を一層高める効果も期待できる。」(段落【0033】)との記載から、刊行物2に記載された技術事項は、溝3を設けることにより、LGAパッケージ5の直下に樹脂を簡易に充填するためのものであることが理解できる。
一方、 引用発明も、刊行物1の上記第3.(1)エ.の「液状であるため、半導体素子41の面積が相当に大きい場合であっても、毛管現象により液状の樹脂52が隙間に広がり充填が完了する」(段落【0076】)との記載から、半導体素子41の直下に樹脂を簡易に充填しようとすることが理解できる。
そうすると、引用発明及び刊行物2記載された技術事項は、電子部品と配線の隙間に樹脂を簡易に流入するという共通の課題を有するものである。
また、刊行物2に記載された技術事項は、引用発明と共通の「電子部品の直下に位置する領域へアンダーフィル等の樹脂が充填される配線板」という技術分野に属することは明らかである。
してみると、引用発明に刊行物2に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にあるといえ、引用発明に刊行物2に記載された技術事項を適用する際に、溝部内に樹脂を充填するものとして、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ここで、審判請求人は平成28年11月30日付けの意見書第2ページ第37ないし44行において、「つまり、刊行物2は、上述したように、はんだ付け後にアンダーフィル8を、LGAパッケージ5の周囲から塗布しパッケージ下面にぬれ広がらせて、はんだ接続部へ充填する際に、残フラックス7によって妨げられることなくアンダーフィル8をLGAパッケージ5の中心部のはんだ接続部まで浸透させて充填できるように、残フラックス7を溜めておくための溝3を設けたものであります。これに対して、本願発明は、電子部品とこの電子部品が実装された第2の配線層との間隙に、樹脂が毛細管現象によって簡易に流入するように、溝部を設け、この溝部を言わば樹脂の流動を案内する案内溝として機能させるものであります。」旨主張している。しかしながら、前述のように刊行物2の段落【0033】には、「このアンダーフィル8がこの直線状の溝3に導かれてプリント基板1のLGAパッケージ5搭載面内部まで浸透しやすくなり、はんだ接続部へのアンダーフィル充填効率を一層高める効果も期待できる。」と記載されているように、刊行物の「溝3」は、残フラックス7を溜めておく以外にも、アンダフィル8を導く、すなわち、アンダフィル8等の樹脂の流動を案内する案内溝としての機能も有するから、審判請求人の主張は誤りであり、採用することはできない。
さらに、審判請求人は、同意見書第3ページ第6ないし9行において、「また、本願発明は、このような溝部を設けることによって、電子部品と第2の配線層との隙間をフラックス洗浄する際などにおいて、洗浄液が隙間に対して出入りしやすくなるので、前記隙間におけるフラックス残渣や洗浄液の残渣を低減させることができる、という格別な効果を奏するものであります。」旨主張している。しかしながら、請求項1においては、フラックス洗浄について特定されるものではないから、審判請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基くものではなく、採用することはできない。

また、本願発明の効果は、全体としてみても、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

以上から、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-25 
結審通知日 2017-01-31 
審決日 2017-02-14 
出願番号 特願2012-80928(P2012-80928)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 部品内蔵配線板、及びその製造方法  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ