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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1326715
審判番号 不服2016-3835  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-11 
確定日 2017-04-18 
事件の表示 特願2014-165268「省略符号化を用いた映像符号化及び復号化装置及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月11日出願公開、特開2014-233085、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
1.手続
本願は、2011年(平成23年)5月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年5月7日、韓国、2010年12月1日、韓国、2011年5月6日、韓国)を国際出願日とする出願である特願2013-509000号の一部を平成26年8月14日に新たな特許出願としたものであって、平成27年6月2日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成27年9月2日付けで手続補正がなされたが、平成27年11月12日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成28年3月11日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたが、その後当審において、平成28年10月25日(起案日)付けで拒絶理由が通知され、それに応答して平成29年1月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.査定
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。

[理由1]
本願の請求項1,2に係る発明(平成27年9月2日付け手続補正書による)は、下記刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

[理由2]
本願の請求項1ないし3に係る発明(平成27年9月2日付け手続補正書による)は、下記刊行物1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


刊行物1:国際公開第2010/091504号
刊行物2:大久保榮,「改訂三版 H.264/AVC教科書」,株式会社インプレス,2009年1月1日,第144?148頁(周知技術を示す文献)

3.当審拒絶理由
当審において通知した拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。

[理由1]
本願は、特許請求の範囲(平成28年3月11日付け手続補正書による)の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


本願の発明の詳細な説明には、『画面内の符号化過程で、残余信号を符号化の対象から省略する省略符号化を用いることによって、映像信号符号化及び復号化の性能を高める映像復号化方法を提供する』という課題を解決するために、『画面内予測の実行において、省略符号化器で残余信号の符号化なしに、符号化対象信号を省略符号化したことを示す情報を取得するステップ、復号化対象信号より先に復元された復元信号に対してフィルタリングを実行するステップ、フィルタリングされた復元信号を用いて復号化対象信号の予測信号を生成するステップ、残余信号を復号化せずに予測信号を用いて復号化対象信号を復号化するステップを含む映像復号化方法』の発明が記載されている。
他方、請求項1には、省略符号化に関する構成、具体的には省略符号が用いられていること、及び、それにより予測信号を用いて復号化対象信号を復号化するステップにおいて残余信号の復号化は行われないこと、という構成が反映されていない。
そのため、請求項1に記載される発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになり、サポート要件を満たしていない。
請求項1を引用する請求項2についても同様である。

[理由2]
本願の請求項1,2に係る発明(平成28年3月11日付け手続補正書による)は、下記の刊行物1,3,4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:国際公開第2010/091504号(原査定で引用済み)
刊行物3:国際公開第2009/149151号(当審において新たに引用)
刊行物4:国際公開第2010/030761号(当審において新たに引用)

第2 本願発明
本願の請求項1,2に係る発明(以下、各請求項の項番にしたがい「本願発明1」及び「本願発明2」という。また、これらの総称を「本願発明」という。)は、平成29年1月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】
復号化対象信号に省略符号化を行うか否かを示すインジケータに対してエントロピ復号化を行うステップ;
前記復号化対象信号より先に復元された復元信号から、フィルタリングされるべきフィルタリング対象信号を判別するステップであって、前記フィルタリング対象信号は、前記復号化対象信号の変換ユニットの境界に隣接する少なくとも一つの画素を含む、前記ステップ;
前記インジケータに基づいて前記復号化対象信号に画面内予測を実行する時、フィルタを用いて、前記フィルタリング対象信号にフィルタリングを実行するステップ;
フィルタリングされた前記フィルタリング対象信号を用いて前記復号化対象信号の予測信号を生成するステップ;
前記予測信号に基づいて前記復号化対象信号の復元された信号を生成するステップ;
を含み、
前記フィルタリングを実行する際に、前記フィルタのフィルタ強度は可変的に決定され、及び前記フィルタの前記フィルタ強度は、映像符号化装置から送信されたフラグに基づいて決定され、
前記フィルタリングにおいて用いられた前記フィルタのタッブ寸法は、可変的に決定される映像復号化方法。
【請求項2】
前記フィルタリングは、双一次補間を用いて実行される請求項1に記載の映像復号化方法。

第3 当審において通知した拒絶の理由についての判断
1.特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
当審が上記「第1 手続の経緯」の「3.当審拒絶理由」の拒絶の理由を通知したところ、平成29年1月27日の手続補正により、本願発明1は以下のとおりの記載となった。

(本願発明1)
【請求項1】
復号化対象信号に省略符号化を行うか否かを示すインジケータに対してエントロピ復号化を行うステップ;
前記復号化対象信号より先に復元された復元信号から、フィルタリングされるべきフィルタリング対象信号を判別するステップであって、前記フィルタリング対象信号は、前記復号化対象信号の変換ユニットの境界に隣接する少なくとも一つの画素を含む、前記ステップ;
前記インジケータに基づいて前記復号化対象信号に画面内予測を実行する時、フィルタを用いて、前記フィルタリング対象信号にフィルタリングを実行するステップ;
フィルタリングされた前記フィルタリング対象信号を用いて前記復号化対象信号の予測信号を生成するステップ;
前記予測信号に基づいて前記復号化対象信号の復元された信号を生成するステップ;
を含み、
前記フィルタリングを実行する際に、前記フィルタのフィルタ強度は可変的に決定され、及び前記フィルタの前記フィルタ強度は、映像符号化装置から送信されたフラグに基づいて決定され、
前記フィルタリングにおいて用いられた前記フィルタのタッブ寸法は、可変的に決定される映像復号化方法。

下線は、補正により補正された構成である。

上記補正により、本願発明1において、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段である『画面内予測の実行において、省略符号化器で残余信号の符号化なしに、符号化対象信号を省略符号化したことを示す情報を取得する』こと、『省略符号化を用いて復号化対象信号を復号化する』ことが反映され、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
本願発明1を引用する本願発明2も同様である。
よって、上記手続補正により、本願各請求項に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものとなり、当審が通知した拒絶の理由は解消した。

2.特許法第29条第2項(進歩性)について
2-1.本願の優先権について
本願は、以下の3つの韓国特許出願を基礎として優先権を主張するものである。
第1出願:韓国特許出願第10-2010-0042823号
(2010年5月7日出願)
第2出願:韓国特許出願第10-2010-0121192号
(2010年12月1日出願)
第3出願:韓国特許出願第10-2011-0042990号
(2011年5月6日出願)
しかしながら、本願の請求項1の「前記フィルタのフィルタ強度は可変的に決定され、及び前記フィルタの前記フィルタ強度は、映像符号化装置から送信されたフラグに基づいて決定され、前記フィルタリングにおいて用いられた前記フィルタのタッブ寸法は、可変的に決定される」という構成は、優先権主張の基礎とされた先の出願のうち、第1、第2出願の明細書等には記載されておらず、第3出願の明細書等にのみ記載されているものである。
したがって、本願の請求項1,2に対する特許法第29条の適用にあたっての判断の基準となる日を、上記第3出願の出願日である2011年5月6日とする。

2-2.本願発明1について
(1)本願発明1
本願発明1は、上記「第2 本願発明」の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項
(2-1)刊行物1
当審拒絶理由及び査定の理由において引用された刊行物1である国際公開第2010/091504号(2010年8月19日公開)には、「Title: IN-LOOP DEBLOCKING FOR INTRA-CODED IMAGES OR FRAMES」(発明の名称:イントラコード化された画像またはフレームのインループ非ブロック化)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。また、括弧内に示した日本語仮訳は刊行物1のパテントファミリーである特表2012-517752号公報の記載に基づき、当審において付記したものである。

[0007] The present application further describes methods and encoders/decoders configured to apply in-loop deblocking to intra-coded images/frames. In one aspect, a deblocking filter is applied to decoded pixels of an intra-coded block prior to decoding the subsequent block in the decoding sequence.
(本願はさらに、インループ非ブロック化をイントラコード化された画像/フレームに適用するように構成される、方法およびエンコーダ/デコーダを説明する。一側面では、非ブロック化シーケンスで後続のブロックを復号する前に、非ブロック化フィルタが、イントラコード化されたブロックの復号されたピクセルに適用される。)

[0058] The decoder 50 includes an entropy decoder 52, dequantizer 54, inverse transform processor 56, spatial compensator 57, and deblocking processor 60. A frame buffer 58 supplies reconstructed frames for use by a motion compensator 62 in applying motion compensation. The spatial compensator 57 represents the operation of recovering the video data for a particular intra-coded block from a previously decoded block.
(デコーダ50は、エントロピーデコーダ52と、逆量子化器54と、逆変換プロセッサ56と、空間補償器57と、非ブロック化プロセッサ60とを含む。フレームバッファ58は、動き補償を適用する際に動き補償器62によって使用するための再構築されたフレームを供給する。空間補償器57は、以前に復号されたブロックからの特定のイントラコード化されたブロックに対するビデオデータを回収する動作を表す。)

[0060] The quantized coefficients are then dequantized by the dequantizer 54 to produce the transform domain coefficients, which are then subjected to an inverse transform by the inverse transform processor 56 to recreate the "video data". It will be appreciated that, in some cases, such as with an intra-coded macroblock, the recreated "video data" is the residual data for use in spatial compensation relative to a previously decoded block within the frame. The spatial compensator 57 generates the video data from the residual data and pixel data from a previously decoded block. In other cases, such as inter-coded macroblocks, the recreated "video data" from the inverse transform processor 56 is the residual data for use in motion compensation relative to a reference block from a different frame.
(次いで、量子化された係数は、「ビデオデータ」を再作成するように逆変換プロセッサ56による逆変換を受ける、変換領域係数を生じるように、逆量子化器54によって逆量子化される。イントラコード化されたマクロブロックを用いた場合等の、場合によっては、再作成された「ビデオデータ」は、フレーム内の以前に復号されたブロックに対する空間補償で使用するための残余データであることが理解されるであろう。空間補償器57は、以前に復号されたブロックからの残余データおよびピクセルデータから、ビデオデータを生成する。インターコード化されたマクロブロック等の他の場合においては、逆変換プロセッサ56からの再作成された「ビデオデータ」は、異なるフレームからの参照ブロックに対する動き補償で使用するための残余データである。)

[0068] In one aspect of the present application, the decoder is configured to apply deblocking to individual blocks within the spatial prediction process. In other words, deblocking is applied, block-by-block, as blocks are reconstructed instead of after the full frame is completed. With respect to inter-coded frames, the deblocking, in some embodiments, may still be applied after the full frame is complete, or in some embodiments, it may be performed block-by-block as will be described below in connection with intra-coded frames.
[0069] Reference is now made to Figure 5, which shows the deblocking impact on an example 4x4 block 100. The block 100 is the most recently decoded block in the frame. Blocks above and to the left of block 100 have already been reconstructed. It will be noted that for a given block the deblocking can only be applied to its left and top boundaries directly (blocks crossing its right and bottom boundaries have not been reconstructed yet), but it is the bottom and right boundaries that will be used in prediction computation and may affect the coding of future blocks. Nevertheless, it will be noted from the following description that applying deblocking to the upper and left boundaries of the block 100 has a positive benefit if the lower and right pixels of the block 100 are subsequently used for spatial prediction in later blocks.
[0070] Referring still to Figure 5, those skilled in the art will appreciate that some deblocking filters, like those prescribed, for example, in H.264, may enhance up to three pixels deep from a boundary. For example "mode 4" within the H.264 deblocking process has an effect three pixels deep. Moreover, under the boundary strength model used in H.264 because the block is intra-coded the deblocking mode that will be employed is either mode 4 or mode 3, depending on whether the boundary is also a macroblock boundary. Accordingly, it will be noted that deblocking the upper boundary 102 and left boundary 104 of the block 100 may have an impact on fifteen of the sixteen pixels in the block 100. Notably, the deblocking may impact three out of four of the pixels 108 on the right boundary, and three out of four of the pixels 106 on the bottom boundary. Therefore, deblocking the upper boundary 102 and the left boundary 104 will have an influence on the quality of the pixel data on the bottom and right boundaries, which may be used in spatial prediction for neighbouring blocks.
(本願の一側面では、デコーダは、空間予測プロセス内で非ブロック化を個々のブロックに適用するように構成される。言い換えれば、フルフレームが完成した後の代わりに、ブロックが再構築されるにつれて、非ブロック化がブロック毎に適用される。インターコード化されたフレームに関して、非ブロック化は、いくつかの実施形態では、依然としてフルフレームが完成した後に適用されてもよく、またはいくつかの実施形態では、イントラコード化されたフレームに関連して以下で説明されるように、ブロック毎に行われてもよい。
ここで、4×4ブロック例100に対する非ブロック化の影響を示す図5を参照する。ブロック100は、フレーム内のごく最近に復号されたブロックである。ブロック100の上側および左側のブロックは、すでに再構築されている。所与のブロックについて、非ブロック化は、その左および上の境界にしか直接適用することができない(その右および下の境界を越えるブロックはまだ再構築されていない)が、予測計算に使用され、今後のブロックのコーディングに影響を及ぼす場合があるのは、下および右の境界であることが留意されるであろう。それでもなお、以下の説明から、ブロック100の下および右のピクセルが、後に、以降のブロックでの空間予測に使用される場合、非ブロック化をブロック100の上および左の境界に適用することは、好ましい有益性を有することが留意されるであろう。
依然として図5を参照すると、当業者であれば、例えば、H.264で規定されているもののような、いくつかの非ブロック化フィルタが、境界から奥の最大3つのピクセルを強化してもよいことを理解するであろう。例えば、H.264非ブロック化プロセス内の「モード4」は、3つのピクセル分の深さの効果を及ぼす。また、H.264で使用される境界強度モデル下では、ブロックがイントラコード化されるため、非ブロック化モードは、境界がマクロブロック境界でもあるかどうかに応じて、モード4またはモード3のいずれか一方となる。したがって、ブロック100上の境界102および左の境界104を非ブロック化することは、ブロック100内の16個のピクセルのうちの15個に影響を及ぼしてもよいことが留意されるであろう。顕著に、非ブロック化は、右の境界上の4つのピクセル108のうち3つ、および下の境界上のピクセル106のうち3つに影響を及ぼしてもよい。したがって、上の境界102および左の境界104を非ブロック化することは、隣接ブロックに対する空間予測に使用されてもよい、下および右の境界上のピクセルデータの質に影響を及ぼす。)

[0072] As shown in Figure 2, the spatial compensator 57 includes a deblocking module 64. It will be understood that in some embodiments, the deblocking module 64 may include a call to a pre-existing deblocking routine or other software component normally used in the deblocking processor 60.
(図2に示されるように、空間補償器57は、非ブロック化モジュール64を含む。いくつかの実施形態では、非ブロック化モジュール64は、非ブロック化プロセッサ60で通常使用される、既存の非ブロック化ルーチンまたは他のソフトウェア構成要素への呼び出しを含んでもよいことが理解されるであろう。)

(2-2)刊行物3
当審拒絶理由において引用された刊行物3である国際公開第2009/149151号(2009年12月10日公開)には、「Title: METHOD AND SYSTEM FOR VIDEO CODER AND DECODER JOINT OPTIMIZATION」(発明の名称:ビデオのコーダとデコーダとの同時最適化のための方法およびシステム)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。また、括弧内に示した日本語仮訳は刊行物3のパテントファミリーである特表2011-523000号公報の記載に基づき、当審において付記したものである。

DETAILED DESCRIPTION
Embodiments of the present invention provide apparatuses and methods of coding video. The apparatuses and methods further provide coding a source video sequence according to a block-based coding process, estimating processing capabilities of a target decoder, determining if the estimated processing capabilities are sufficient to perform deblocking filtering. If not sufficient, the apparatuses and methods further provide computing deblocking filter strengths for pixel blocks of the source video sequence to be used at decoding, and transmitting the deblocking filter strengths in a coded video data signal with the coded video data.
In one example embodiment of the present invention, the video coder may code source video data based on the capacity of the decoding device. For a particular type of decoding device, the coding device may determine whether the decoding device has the computational resources to carry out the block-based deblocking filtering process without degrading visual quality. In the case where the decoding device does not have sufficient resources, the coding device may estimate block-based filtering strengths on behalf of the decoder and code the deblocking filter strengths in the bitstream. Therefore, the decoder may perform block based deblocking filtering without the need for estimating deblocking filter strengths.(6頁3行?19行)
(詳細な説明
本発明の実施形態はビデオを符号化する装置および方法を提供する。本装置および本方法はさらに、ブロック・ベースの符号化処理に従ってソース・ビデオ・シーケンスを符号化し、対象デコーダの処理能力を推定し、推定された処理能力がデブロッキング・フィルタリングを実行するのに十分であるかを判定することを提供する。十分でないならば、本装置および本方法はさらに、復号で用いられるソース・ビデオ・シーケンスの画素ブロックに対するデブロッキング・フィルタ強度を算出し、符号化ビデオデータとともに、符号化ビデオデータ信号においてデブロッキング・フィルタ強度を送信することを提供する。
本発明の1つの例示の実施形態では、ビデオ・コーダは復号装置の能力に基づいてソース・ビデオデータを符号化しうる。特定の種類の復号装置について、符号化装置は視覚的品質を劣化させずにブロック・ベースのデブロッキング・フィルタリング処理を実行するための計算リソースを復号装置が有するかを判定しうる。復号装置が十分なリソースを有しない場合に、符号化装置はデコーダに代わってブロック・ベースのフィルタリング強度を推定し、ビットストリーム内にデブロッキング・フィルタ強度を符号化しうる。従って、デコーダはデブロッキング・フィルタ強度を推定する必要なく、ブロック・ベースのデブロッキング・フィルタリングを実行しうる。)

In one embodiment of the present invention, upon a determination of decoder's limited processing capability (e.g., by comparing the decoder device with a known list of limited- resource devices), the coder may compute the deblocking filter strengths for pixel block edges on behalf of the decoder. The coder may compute the deblocking filter strengths based on pixel blocks that form a pixel block edge. Referring to FIG. 3A, the coder may code the deblocking parameters, including deblocking strengths, along with the coding parameters 330.1-330.9 for each pixel block. In one example embodiment, the coder may first code a video source into, e.g., a H.264 complied, bitstream. A custom coder may estimate deblocking parameters, e.g., deblocking filter strengths (bS) in H.264. Referring to FIG. 3C, these deblocking filter parameters may be again coded with coding parameters 330.5 for the pixel block and transmitted to the decoder at the receiving end.(7頁29行?8頁8行)
( 本発明の1つの実施形態では、(例えば限られたリソース装置の既知のリストに対してデコーダ装置を比較することによって)デコーダの限られた処理能力を判定する際に、コーダはデコーダの代わりに画素ブロック・エッジについてのデブロッキング・フィルタ強度を算出しうる。コーダは画素ブロック・エッジを形成する画素ブロックに基づいてデブロッキング・フィルタ強度を算出しうる。図3Aを参照して、コーダは各画素ブロックについて、デブロッキング強度を含むデブロッキング・パラメータを符号化パラメータ330.1?330.9とともに符号化しうる。1つの例示の実施形態では、コーダはまず、例えばH.264準拠のビットストリームにビデオソースを符号化しうる。カスタム・コーダはデブロッキング・パラメータ、例えばH.264におけるデブロッキング・フィルタ強度(bS)を推定しうる。図3Cを参照して、これらのデブロッキング・フィルタ・パラメータはここでも画素ブロックについて符号化パラメータ330.5とともに符号化され、受信側においてデコーダへ送信されうる。)

(2-3)刊行物4
当審拒絶理由において引用された刊行物4である国際公開第2010/030761号(2010年3月18日公開)には、「Title: SYSTEM AND METHOD FOR VIDEO ENCODING USING ADAPTIVE SEGMENTATION」(発明の名称:適応セグメンテーションを用いた動画符号化システムおよび方法)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。また、括弧内に示した日本語仮訳は刊行物4のパテントファミリーである特表2012-502593号公報の記載に基づき、当審において付記したものである。

[00025] Block artifacts manifest as discontinuities between adjacent blocks. Such discontinuities are visually disturbing and also reduce the effectiveness of a reconstructed frame as a predictor for subsequent frames.
[00026] To remove these discontinuities, loop filtering can be applied to reconstructed frames during a reconstruction path, which is discussed in more detail below. The choice of loop filter and the strength of the loop filter can have a significant effect on image quality. A filter that is too strong may cause blurring and loss of detail. A filter that is too weak may not adequately suppress discontinuities between adjacent blocks.
[00027] As such, described herein are embodiments of an efficient adaptive segmentation scheme for efficiently transmitting a segmentation map and a set of parameters, such as a quantization level and loop filter type and/or strength, to be applied to each segment in the segmentation map.
([0025]ブロックアーチファクト(画像の乱れ)は、隣接ブロック間の不連続性として現れる。このような不連続性は、目ざわりであるばかりでなく、後続フレームのための予測子としての再構成フレームの有効性を低下させてしまう。
[0026]これらの不連続性を除去するためには、再構成パス時に、ループフィルタ処理を再構成フレームに適用できる。これについては下記に詳述する。どのようなループフィルタとループフィルタ強度を選択するかによって、画質に著しい影響を与えるだろう。余りに強いフィルタは、ぼけが生じ、細部が消失する可能性がある。一方、余りに弱いフィルタは、隣接ブロック間の不連続性を十分に抑制し得ない可能性がある。
[0027]そうであるから、ここで説明するのは、セグメンテーションマップ中の各セグメントに適用される、量子化レベル、ループフィルタのタイプおよび/または強度などの、セグメンテーションマップと一組のパラメータを効率的に送信する、効率的な適応セグメンテーション方式の実施形態である。)

(3)刊行物1に記載された発明
上記(2-1)に摘示した記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
イントラコード化されたブロックの復号されたピクセルに、デブロッキングフィルタを適用するデコーダ([0007])に関するデコード方法であって、
空間補償器により、以前に復号されたブロックから特定のイントラコード化されたブロックに対応するビデオデータが取得され([0058])、
デブロッキングフィルタは、所与のブロックの上及び左の境界のピクセルから奥の最大3つのピクセルに適用され([0069]、[0070])、
空間補償器内のデブロッキングモジュールにより、既存のデブロッキングルーチンが呼び出され、空間予測プロセス(イントラコード)内でブロックが再構築されるにつれて、デブロッキングがブロック毎に適用され([0068],[0072])、
空間補償器により、以前に復号されたブロックからのピクセルデータと残余データからビデオデータが生成される([0060])、
ことを含むデコード方法。

(4)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下の一致点において一致し、相違点において相違する。

[一致点]
フィルタリング対象信号は、前記復号化対象信号の変換ユニットの境界に隣接する少なくとも一つの画素を含み、
フィルタを用いて、前記フィルタリング対象信号にフィルタリングを実行するステップ;
フィルタリングされた前記フィルタリング対象信号を用いて前記復号化対象信号の予測信号を生成するステップ;
前記予測信号に基づいて前記復号化対象信号の復元された信号を生成するステップ;
を含む映像復号化方法。

[相違点]
(相違点1)
本願発明1は、「復号化対象信号に省略符号化を行うか否かを示すインジケータに対してエントロピ復号化を行うステップ」を有し、フィルタリングを実行するステップは、「前記インジケータに基づいて前記復号化対象信号に画面内予測を実行する時」に、フィルタリング対象信号にフィルタリングを実行するものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記復号化対象信号より先に復元された復元信号から、フィルタリングされるべきフィルタリング対象信号を判別するステップ」を有し、「前記フィルタリングを実行する際に、前記フィルタのフィルタ強度は可変的に決定され、及び前記フィルタの前記フィルタ強度は、映像符号化装置から送信されたフラグに基づいて決定され」、「前記フィルタリングにおいて用いられた前記フィルタのタッブ寸法は、可変的に決定される」ものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。

(5)相違点についての判断
まず、相違点2について検討すると、復号化側におけるフィルタリング対象信号、及びフィルタリングを実行する際のフィルタ強度を符号化側から送信することは、刊行物3及び刊行物4に記載されるように周知の技術であり、フィルタリングを行うためのフィルタのタッブ寸法を可変的に決定することも、当該技術分野における周知の技術である。
よって、引用発明にこれらの周知技術を適用することにより相違点2に係る構成を付加することは、当業者が容易になし得ることである。
しかしながら、相違点1に関し、復号化対象信号に省略符号化を行うか否かを示すインジケータに基づいて復号化対象信号に画面内予測を実行する時に、フィルタリング対象信号にフィルタリングを実行することは、上記刊行物3及び刊行物4には記載されておらず、当該技術分野における技術常識、あるいは周知の技術であるともいえないから、省略符号化とフィルタリングを関連付けて復号化対象信号に画面内予測を実行することは、引用発明、及び刊行物3及び刊行物4に記載される技術から、当業者が容易になし得ることとはいえない。
よって、相違点1に係る構成は、引用発明、刊行物3及び刊行物4に記載される技術に基づいて、当業者が容易になし得ることとはいえない。

(6)小括
このように、本願発明1は、引用発明、刊行物3及び刊行物4に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2-3.本願発明2について
本願発明2は、請求項1を引用する発明であり、本願発明1と同様の発明特定事項を有するものである。
よって、本願発明2は、本願発明1と同様に引用発明、刊行物3及び刊行物4に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.まとめ
以上のように、本願の請求項1及び請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、刊行物1に記載された発明、刊行物3及び刊行物4に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、当審が通知した拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。

第4 原査定の拒絶の理由についての判断
1.本願発明
本願発明は、上記「第2 本願発明」の請求項1及び請求項2に記載した事項により特定されるとおりのものである。
また、本願の優先権については、上記「第3 2.2-1.」に示したとおりである。

2.引用発明及び対比
刊行物1の記載事項及び引用発明は、上記「第3 2.2-2.(2)(2-1)」及び上記「第3 2.2-2.(3)」に示したとおりである。
また、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、上記「第3 2.2-2.(4)」に示したとおりである。

3.特許法第29条第1項第3号に(新規性)について
上記「第3 2.2-2.(4)」に示したとおり、本願発明1と引用発明には相違点があるため、本願発明1は、刊行物1に記載された発明と同一ではない。
請求項1を引用する本願発明2も同様である。

4.特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)刊行物2の記載事項
査定の理由において引用された刊行物2である「改訂三版 H.264/AVC教科書」には、次に掲げる事項が記載されている。

「H.264/AVC符号化方式においては、フレーム・メモリに復号画像を格納するに先立ち、適応的にデブロッキング・フィルタ(画像の符号化時に生じるブロック歪を減少させるためのフィルタ)によって、ブロック歪の除去を行います。」(144頁7?9行)

「まず、デブロッキング・フィルタ処理に先立ち、図6-2に示すp_(0)?p_(3)により構成されるブロック、およびq_(0)?q_(3)により構成されるブロックに対して、表6-1のように、Bs値(Boundary Strength、画像のブロック境界の強度)が決定されます。
すなわち、同一ピクチャ(画像)に属するブロック境界に、一様に同じ強さのフィルタ処理を行うのではなく、これから処理を行うべきブロック境界が、マクロブロック境界であるかどうかとか、そのどちらかが画面内符号化されたものであるかといった条件に応じて、個々に対しどの程度の強さのフィルタをかけるべきかを決定します。」(145頁10?16行)

「ビット・ストリーム中のスライス・ヘッダに含まれる、slice_alpha_c0_offset_div2およびslice_beta_offset_div2(という2つのパラメータによって、図6-3に示す通り、ユーザーがその強度を調整することが可能です。」(146頁8?10行)

「・入力画素値がp_(2)、p_(1)、p_(0)、q_(0)、q_(1)である5タップのFIRフィルタ(1,2,2,2,1)//8により、画素値p'_(0)が生成されます。ここで、//は四捨五入を表します。
・入力画素値がp_(2)、p_(1)、p_(0)、q_(1)である4タップのFIRフィルタ(1,1,1,1)//4により、画素値p'_(1)が生成されます。
・(輝度信号に関してのみ)入力画素値がp_(3)、p_(2)、p_(1)、p_(0)、q_(0)である5タップのFIRフィルタ(2,3,1,1,1)//8により画素値p'_(2)が生成されます。」(148頁17?22行)

(2)相違点についての判断
復号化対象信号に省略符号化を行うか否かを示すインジケータに基づいて復号化対象信号に画面内予測を実行する時に、フィルタリング対象信号にフィルタリングを実行することは、上記刊行物2には記載されておらず、当該技術分野における技術常識、あるいは周知の技術であるともいえないから、省略符号化とフィルタリングを関連付けて復号化対象信号に画面内予測を実行することは、引用発明、及び刊行物2に記載される技術から、当業者が容易になし得ることとはいえない。
よって、少なくとも相違点1に係る構成は、引用発明、刊行物2に記載される技術に基づいて、当業者が容易になし得ることとはいえない。

(3)小括
このように、本願発明1は、引用発明、及び刊行物2に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、請求項1を引用する本願発明2も同様である。

5.まとめ
以上のように、本願の請求項1及び請求項2に係る発明は、刊行物1に記載された発明ではなく、また、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及び請求項2に係る発明は、原査定の拒絶理由によって拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-05 
出願番号 特願2014-165268(P2014-165268)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04N)
P 1 8・ 121- WY (H04N)
P 1 8・ 113- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 清水 正一
渡辺 努
発明の名称 省略符号化を用いた映像符号化及び復号化装置及びその方法  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 吉元 弘  
代理人 吉元 弘  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 吉元 弘  
代理人 永井 浩之  

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