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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1326743
審判番号 不服2016-10643  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-13 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2014-512825「イマーシブアプリケーションとしてのデスクトップ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日国際公開、WO2012/166184、平成26年 6月30日国内公表、特表2014-515520、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2011年10月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年5月27日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月6日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月8日に手続補正がされたが、同年3月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2.原査定の経緯
原査定(平成28年3月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1-4に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-025920号公報
2.米国特許出願公開第2003/0052923号明細書
3.特開平05-265901号公報
4.PCfan編集部,Pocket PCfan Windows7攻略ハンドブック 導入・移行編,日本,(株)毎日コミュニケーションズ,2010年 4月 1日,第62,66,72,101ページ(周知技術を示す文献)


第3.本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成28年7月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
一つまたはそれ以上のコンピューターデバイスによって実施される方法であって、
オペレーティングシステムのイマーシブシェルを表示するステップであり、イマーシブシェルは一つまたはそれ以上の技術を使用してアプリケーションに対するアクセスをサポートするように構成されているステップと、
前記イマーシブシェルの中にデスクトップシェルを同時に表示するステップであり、
前記デスクトップシェルが表示され、かつ、前記イマーシブシェルの中の前記アプリケーションに対するアクセスをサポートするために使用される前記一つまたはそれ以上の技術を使用してアクセス可能であり、
前記デスクトップシェルは、ユーザーがコントロールできるフレームを有するウィンドウを通じて前記デスクトップシェルの中で実行可能なアプリケーションを提供し、かつ、
前記イマーシブシェルは、ユーザーがコントロールできるフレームを有するウィンドウを通じて提供されるアプリケーションに対するアクセスについて、アプリケーションに対する前記アクセスが前記デスクトップシェルを通じて実行されなければ、サポートしない、
ステップと、
前記イマーシブシェルを通じて実行されるべきナビゲーションを規定するものとして、入力を認識するステップと、
前記入力の認識に反応して、前記イマーシブシェルの表示を通じてナビゲーションするステップであり、前記イマーシブシェルの前記表示は、
前記イマーシブシェルのプライマリー領域またはセカンダリー領域におけるアプリケーションに対応するデータの表示、および
前記イマーシブシェルの前記プライマリー領域またはセカンダリー領域のうち異なる一つにおける前記デスクトップシェルからのデータの表示、を含む、
ステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記デスクトップシェルを表示するステップは、前記デスクトップシェルの中で実行可能な複数のアプリケーションに対応する複数のウインドウを表示するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デスクトップシェルを表示するステップは、前記アプリケーションのそれぞれに対応する少なくとも一つの前記ウインドウの部分として、前記少なくとも一つの前記ウインドウの表示特性を変更することによって通知を表示する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記デスクトップシェルは、少なくとも一つの前記アプリケーションのための複数のウインドウを使用し、前記イマーシブシェルはアプリケーションごとに一つのウインドウをサポートする、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記デスクトップシェルは、クロームおよびタスクバーを使用するように構成されており、前記デスクトップシェルの外側の前記イマーシブシェルは、そのように構成されていない、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記デスクトップシェルは、深度の表示をサポートし、別の前記アプリケーションからのデータの少なくとも一部に重ねて一つのアプリケーションからのデータが表示されるように構成されており、前記デスクトップシェルの外側の前記イマーシブシェルは、そのように構成されていない、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記一つまたはそれ以上の技術は、前記イマーシブシェルおよび前記デスクトップシェルの前記アプリケーションからのデータを表示する技術を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記一つまたはそれ以上の技術は、前記アプリケーションと前記デスクトップシェルとの間をナビゲーションする技術を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デスクトップシェルは、前記デスクトップシェルの中で実行可能なアプリケーションのアイコンとして構成された複数の表示を含み、少なくとも一つのフォルダーは、前記コンピューターデバイスの階層的ファイル構造をサポートする、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記イマーシブシェルの前記表示において、
前記プライマリー領域と前記セカンダリー領域は、ガターによって分離されており、前記ガターを移動することによって、前記プライマリー領域と前記セカンダリー領域によって使用される表示領域の量を変更することができる、
請求項1に記載の方法。」


第4.引用文献、引用発明

a.引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下、同じ。)

(a)「[0001] 1. Field of the Invention
[0002] The present invention relates to the field of computer systems. More specifically, the present invention relates to exclusive use display surface areas, and their applications to persistently visible display of contents, such as advertisements. 」(1頁)
(当審訳:
[0001]1.発明の分野
[0002]本発明は、コンピュータシステムの分野に関する。より具体的には、本発明は、表示画面領域を排他的に使用し、その領域のアプリケーションが広告のようなコンテンツを永続的に表示することに関するものである。)

(b)「[0003] 2. Background Information
[0004] With advances in microprocessor and other related technology, today's computers are equipped with processing capabilities that were once the exclusive domain of large mainframe computers. To exploit these capabilities, today's computers are often equipped with multi-tasking operating systems that allow multiple tasks of the same or different applications to be executed at the same time. These operating systems are also typically equipped with windowing managers to manage the concurrent display of the execution results of the various tasks or applications through windowing, within the constraint of the available display surface of a display device. That is, the execution results of the various tasks/applications are rendered in corresponding display windows (hereinafter, simply windows), and these windows share the display surface. This employment of windows along with the use of iconic representations for various programs and“objects”is also often referred to as the desktop metaphor, with the shared display surface area being referred to as the desktop area.
[0005] Whether the contents rendered in the various windows are actually visible to a user depend on the relatively placement of the windows within the available display surface. Except for the top window (such as the“in focus”window or another window“rigged”to be“always on top”) or windows that do not overlap with other windows (such as windows placed in a tile arrangement), contents of the underlying windows disposed in the overlapping portions are considered obstructed, and generally invisible, unless the top and other intermediate windows are considered“transparent”. Contents disposed in the obstructed portions of these underlying windows become visible only when the window manager surfaces the window as the top window, typically responsive to a user request.
[0006] Many applications, such as Internet advertising, desire to have at least some of their rendered contents (in the case of Internet advertising, the advertisements themselves) persistently visible to the user. However,“rigging”the browser window to be“always on top” is not necessarily a viable option. Furthermore, in the case of Internet advertisement, even if“rigging”the browser window as“always on top”is a viable option,it still would not fully satisfy its persistent visibility desire. The reason is because most Internet advertisements are rendered in the form of banners, typically disposed at least at the top and at the bottom of a page. The banner advertisement placed at the bottom of a page is typically not visible when the page is first displayed, as the page is typically larger than the browser window. Similarly, the banner advertisement placed at the top of the page becomes invisible as the page is scrolled downward.
[0007] Thus, an improved approach to display management that better addresses the persistent visibility requirements of applications, in particular, the persistent visibility requirements of Internet advertising is desired. 」(1頁)
(当審訳:
[0003] 2.背景情報
[0004] マイクロプロセッサおよび他の関連技術の進歩に伴い、今日のコンピュータは、かつては大きなメインフレーム・コンピュータの独占的な領域であった処理能力を備えている。これらの能力を利用するために、今日のコンピュータは、同一又は異なるアプリケーションの複数のタスクを同時に実行されることを可能にするマルチタスクオペレーティングシステムをしばしば備えている。これらのオペレーティング・システムは、典型的には、表示装置の利用可能な表示面の制約内で、ウィンドウを介して各種タスク又はアプリケーションの実行結果の同時表示を管理するウィンドウ・マネージャを備えている。すなわち、様々なタスク・アプリケーションの実行結果は、対応する表示ウィンドウ(以下、単に「ウィンドウ」という。)で表現されており、これらのウィンドウは表示画面を共有している。デスクトップ領域と呼ばれる共有ディスプレイ画面領域において、各種プログラムや「オブジェクト」のアイコン表現を使用と共にウィンドウの使用は、しばしば、デスクトップの象徴と呼ばれる。
[0005] 複数のウィンドウに描画された内容が実際にユーザに見ることができるかは、利用可能な表示画面内のウィンドウの相対的配置による。トップウィンドウ(「フォーカス」ウィンドウまたは「常に上」にあるウィンドウなど)や、他のウィンドウ(タイルのように配置されたウィンドウ)が重ならないウィンドウを除いて、トップや他の中間的なウィンドウが「透明」でなければ、重なり部分の下にあるウィンドウの内容は遮られ、一般的に不可視と考えられる。これらの下に横たわるウィンドウの遮られた部分に配置された内容は、典型的にはユーザの要求に応じて、ウィンドウマネージャがそのウィンドウをトップウィンドウとして表示した時にのみ見ることができる。
[0006] インターネット広告のような、多くのアプリケーションは、その表示されたコンテンツ(インターネット広告の場合は、広告自体)の少なくとも一部をユーザに永続的に見えることを望んでいる。しかし、ブラウザ・ウィンドウを「常に上」に置くことは、必ずしも実行可能なオプションではない。それ以上に、インターネット広告の場合、「常に上」にブラウザ・ウィンドウを置くことが実行可能なオプションであっても、その永続的に視認可能であるという要望を十分に満たすことはない。その理由は、ほとんどのインターネット広告は、バナーの形式で表示され、典型的には、少なくともページの先頭と底部に配置されているからである。ページの底部に載置されたバナー広告は、ページがブラウザ・ウィンドウよりも一般的に大きいから、ページの先頭が表示されている時は見ることができない。同様に、ページの先頭に配置されたバナー広告は、ページが下へスクロールされるにつれ見えなくなる。
[0007] したがって、アプリケーションが永続的に見えるという要求、特に、インターネット広告での永続的に見えることに対する要求に対して、画面の管理をよりよく処理する改善を行う。)

(c)「SUMMARY OF THE INVENTION
[0008] In a computer system having a display device with a display surface, a portion of the display surface is reserved for an exclusive use, allowing contents rendered in the reserve area to be persistently visible. In one embodiment, the reservation is accomplished through reducing the width and height of a shared portion of the display surface managed by a window manager, corresponding to a graphics resolution. In one embodiment, the exclusive use is to render advertisements in the reserved portion by an advertising rendering program. The advertisements are HTML pages received from an advertisement web server through the Internet. The HTML pages are rendered in the reserved portion through a direct draw component. The direct draw component is provided with the unreduced width and height as the width and height of the surface area to support direct drawing of graphical displays. A cursor control device driver also supports monitoring of movements of a cursor control device and of occurrences of cursor events. The cursor control device driver is likewise provided with the unreduced width and height as the width and height of the surface area to monitor for cursor movements and events. In other embodiments, multiple portions of the display surface are reserved for advertising and/or other exclusive uses. 」(1頁)
(当審訳:
発明の要約
[0008] 表示画面を有する表示装置を有するコンピュータ・システムであって、表示画面の一部分は排他的な使用のために予約され、この予約された領域で描画されたコンテンツは永続的に見ることができる。一実施形態では、予約は、ウィンドウマネージャによって管理される表示画面の共有部分の幅と高さを、グラフィックス解像度に応じ、低減することにより達成される。一実施形態では、排他的な使用は、広告描画プログラムが予約された部分に広告を描画することである。広告は、インターネットを介して広告のウェブ・サーバから受信したHTMLページである。そのHTMLページは、直接描画コンポーネントを介して予約部分に描画される。直接描画コンポーネントには、直接描画をするための画面の表面領域の幅と高さとして縮小されていない幅と高さが提供される。カーソル制御装置ドライバは、カーソルの移動とカーソルイベントの発生の監視をサポートしている。カーソル制御装置ドライバは、同様にカーソル移動やカーソルイベントの監視が行われる画面の表面領域の幅と高さとしての縮小されない幅と高さが提供される。他の実施形態では、画面の表面領域の複数の部分が、広告および/またはその他の排他的使用のために予約される。)

(d)「[0019] Referring now to FIGS.1a-1f, wherein six block diagrams illustrating an overview of the present invention in accordance with three embodiments are shown. As illustrated, in accordance with the present invention, displace surface 102 of display device 100 (of a computer system) are divided into display areas 104 and 106a - 106aa. Display area 104 is referred to as the shared display area (SDA), where any number of applications 108 (executing on the computer system or remotely, and of a display area sharing type) may render contents in their corresponding windows (disposed inside SDA 104). Display areas 106a-106aa are referred to as exclusive-use display areas (EDA), where only assigned applications 110 (executing on the computer system or remotely, and of an exclusive use type, in terms of display area) may correspondingly render contents into these areas. For FIG.1a, one EDA 106 a disposed along the bottom edge of display surface 102 is set aside or reserved. Whereas, in FIGS.1b-1c, three EDAs 106b-106d and 106e-106g disposed along the left and top edges and along the right and bottom edges of displace surface 102 respectively, are set aside or reserved. In FIGS.1d-1e, six EDAs 106h-106m and 106n-106s disposed in two rows along the left and top edges and along the right and bottom edges of displace surface 102 respectively, are set aside or reserved. Finally, in FIG.1f, eight EDAs 106t-106aa disposed along the perimeter of displace surface 102 are set aside or reserved. As a result, contents rendered into EDAs 106a-106aa by applications 110 are persistently visible to an end-user, without resorting to prior art“rigging”techniques, such as“always on top”. As will be described in more detail below, by selectively associating with an application 110, an application 108 may selectively render a portion of its output display in this persistently visible manner, thereby enabling applications (such as advertisement rendering), to overcome the prior art disadvantage of losing visibility to some of the rendered contents (such as banner advertisements), when the rendered contents (such as a displayed page), is scrolled up and down within a display window (such as a browser window).」(2頁)
(当審訳:
[0019] 図1a-1fを参照すると、3つの実施形態による本発明の概要を示す6つのブロック図が示されている。図示のように、本発明によれば、(コンピュータシステムの)表示装置100の表示画面102が表示領域104と、106a-106aaに分割される。表示領域104は、共有表示領域(SDA)と呼び、任意の数のアプリケーション108(コンピュータシステムまたは遠隔で実行され、表示領域が共有される)は、それらに対応するウィンドウ(SDA104内に配置される)にコンテンツを描画することができる。表示領域106a-106aaは、排他的表示領域(EDA)と呼ばれ、割り当てられたアプリケーション110(コンピュータ・システムまたはリモートで実行され、表示領域では排他領域が使用される)だけに対応して、この領域にコンテンツを描画する。図1aの場合では、表示画面102の下縁部に沿って配置された1つのEDA106aが別に確保されるか、または予約されている。これに対し、図1b-1cには、表示面102の左縁部と上縁部に沿って、及び右縁部と下縁部に沿って配置された、それぞれ3つのEDA106b-106d、106e-106gが別に確保されるか、または予約されている。図1d-1eでは、表示画面102の左縁部及び上縁部に沿って、及び右縁部と下縁部に沿って2列に配置された6つのEDA106h-106mおよび106n-106sが別に確保されるか、または予約されている。最後に、図1fでは、表示画面102の外周に沿って配置された8つのEDA106t-106aaが別に確保されるか、または予約されている。結果として、アプリケーション110によってEDA106a-106aaに描画されるコンテンツはエンドユーザにとって永続的に見ることができ、従来の技術の「常に上」におく技術に頼らないでよい。以下でより詳細に説明するように、アプリケーション110と関連付けるかを選択することによって、アプリケーション108は、この永続的に見える手段で選択的に出力表示手段の一部に描画でき、それゆえ、アプリケーション(広告描画等)は、表示ウィンドウ(ブラウザウィンドウなど)内で描画されたコンテンツ(表示されているページなど)がスクロールされる時に、描画された内容の一部(バナー広告等)が見えなくなるという従来技術の欠点を克服する。)

(e)「[0021] Referring now to FIG.2, wherein an example computer system suitable for practicing the present invention is shown. As shown, example computer system 200 includes processor 202, ROM 203, and system memory 204 coupled to each other via“bus”206. Coupled also to“bus”206 are non-volatile mass storage 208, display device 210, cursor control device 212 and communication interface 214. ROM 203 includes a basic input/output system (BIOS) 205. During operation, memory 204 includes working copies of operating system 222, applications 224 that use the shared display area (see FIGS.1a-1f) of the display surface of display device 210, and applications 226 that use correspondingly assigned exclusive-use display areas (see FIGS.1a-1f) of the display surface of display device 210. Operating system 222, applications 226, and in some embodiments, applications 224 are incorporated with the teachings of the present invention.」(2頁)
(当審訳:
[0021] ここで図2を参照すると、本発明を実施するのに適した例示的なコンピュータシステムが示されている。図示されているように、例示的なコンピュータシステム200は、バス206を介して接続されたプロセッサ202、ROM203と、システムメモリ204を含む。同様に、バス206で不揮発性大容量記憶装置208、表示装置210、カーソル制御装置212、及び通信インターフェイス214と結合されている。ROM203は、基本入出力システム(BIOS)205を備えている。動作中、メモリ204は、オペレーティングシステム222、アプリケーション224、及びアプリケーション226の作業用コピーを含み、アプリケーション224は表示装置210の表示画面の共有表示領域(図1a-1fを参照)を使用し、アプリケーション226は表示装置201の表示替画面の対応する排他的表示領域(図1a-1f参照)を使用するものである。オペレーティングシステム222、アプリケーション226、及び一部の実施形態では、アプリケーション224は、本発明で教示されるように共同している。)

(f)「[0026] Referring now the FIG.3, wherein a block diagram illustrating enhanced operating system 222 and its interactions with applications 224-226 is shown. As illustrated, operating system 222 includes conventional elements such as window manager 302, graphics manager 304, display device driver 306, and cursor control device driver 308. Each of these elements performs its conventional functions known in the art. That is, window manager 302 performs the conventional function of managing the current display of the various display windows of applications 224 in the SDA (see FIGS.1a-1f). Graphics manager 304 performs the conventional function of rendering graphics objects for an application. Graphics manager 304 includes in particular, the capability of allowing an application to make direct draw onto the display surface of a display device. For example, for the WindowsR(当審注:Rは○囲みRの上付き文字を表す。以下同じ。) operating systems, graphics manager 304 is intended to represent the Graphics Device Interface (GDI) and DirectX combined. (The two components are expected to be consolidated into a single component in GDI2K and beyond.) Display driver 306 performs the conventional function of controlling the display device, whereas cursor control device driver 308 performs the conventional function of monitoring movements of a cursor control device and cursor events (such as clicking or double clicking of a control button).
[0027] As illustrated, in accordance with the present invention, operating system 222 is also advantageously provided with exclusive-use display area manager 310. EDA manager 310 is employed to“coordinate”with window manager 302 to set up the shared and exclusive areas. Furthermore, EDA manager 310 is also employed to enable applications 226 to be able to correspondingly render contents into their assigned EDAs, and to respond to cursor device movements and events detected within their assigned EDAs. These and other aspects will be described more fully below with references to FIGS.4a-4c.」(3頁)
(当審訳
[0026] ここで図3を参照すると、増強されたオペレーティング・システム222を示すブロック図およびアプリケーション224 - 226との相互作用が示されている。図示されているように、オペレーティングシステム222は、ウィンドウマネージャ302、グラフィクスマネージャ304、表示装置ドライバ306と、カーソル制御装置ドライバ308のような従来の要素を含む。これらの要素の各々は、当該技術分野で知られたその従来の機能を実行する。すなわち、ウィンドウマネージャ302は、SDAにおけるアプリケーション224の各種表示ウィンドウの表示を管理する従来の機能を実行する(図1a-1f参照)。グラフィクスマネージャ304は、アプリケーションのためにグラフィックスオブジェクトを描画する従来の機能を実行する。グラフィクスマネージャ304は、具体的には、表示装置の表示画面上にアプリケーションが直接描画することを可能にするための機能を含む。例えば、Windows(登録商標)オペレーティングシステムでは、グラフィックスマネージャ304は、GDI(Graphics Device Interface)およびDirectXが結合したものを表すことを意図している(2つのコンポーネントはGDI2K以降で単一のコンポーネントに統合することが期待されている)。表示ドライバ306は、表示装置を制御する従来機能を実行し、カーソル制御装置ドライバ308は、カーソル制御装置の動き、およびカーソルイベント(操作ボタンのクリックやダブルクリックなど)の監視という従来の機能を行う。
[0027] 図示のように、本発明によれば、オペレーティングシステム222はまた、EDAマネージャ310が備えられると好都合である。EDAマネージャ310は、ウィンドウマネージャ302と「共同」して、共有領域と排他的領域を設定する。EDAマネージャ310はまた、アプリケーション226がそれに割り当てられたEDAにコンテンツを描画できるように、また、それらに割り当てられたEDA内で検出されたカーソル装置の移動やイベントに応答できるようにするために用いられる。これらおよび他の態様は図4a-4cを参照して以下でより詳細に説明する。)

(g)「[0028] FIG.4a illustrates the operational flow of EDA manager 310 for“coordinating”with window manager 302 in setting up the shared and exclusive-use display areas, in accordance with one embodiment. As shown, for the illustrated embodiment, EDA manager 310 intercepts a call from window manager 302 to display device driver 306 to obtain the size of the display surface for the display device under the control of display device driver 306 for a particular graphics resolution. The interception or redirection to EDA manager 310 is accomplished in an operating system dependent manner. In one embodiment, where the operating system is of the WindowsRfamily, the interception or redirection of the call is by modifying the registry and the system.ini file. For this embodiment, the call includes the graphics resolution, expressed in terms of a pixel resolution, e.g. 800×600 pixels.
[0029] Upon interception, at 402, EDA manager 310 forwards the call to display device driver 306. At 404 , the display device driver 306 returns the size of the display surface of the display device under the control of display device driver 306 for the particular graphics resolution. In one embodiment, the size is expressed in terms of the width and height of the display surface. In one embodiment, the width and height are implicitly expressed in terms of maximum x and y coordinates. In one embodiment, where the operating system is of the WindowsR family, the original of the x-y coordinate is by-definition the top left corner of the display surface.
[0030] For the illustrated embodiment, upon receipt of the size of display surface expressed in terms of width and height, at 406, EDA manager 310 reduces the width and height accordingly to set aside or reserve the EDA(s). In one embodiment, the number of EDA(s) to be created and the applications to be assigned to the various EDAs are specified through a configuration file, e.g. for an operating system of the WindowsR family, through sections in the win.ini and system.ini files. Depending on the coordinate system of the operating system, multiple EDAs can be created with a single or successive operations of reducing the width and the height.
・・・中略・・・
[0031] Upon reducing the size of the display surface, at 408, EDA manager 310 returns the reduced size to window manager 302, thereby“coordinating”the locations of the shared and exclusive-use display areas with window manager 302. In alternate embodiments, other expression of sizes as well as other coordinate systems may be employed. The manner in which the size is reduced, and the manner in which shared and exclusive-use areas are designated may simply be adjusted accordingly to the alternate approaches.
[0032] For the illustrated embodiment, it is assumed that upon receipt of the reduced size, window manager 302 also sets up graphics manager 304 and cursor control device driver 308 to operate with the same display surface information, i.e. the reduced size. Accordingly, at 410, EDA manager 310 overrides this information, restoring graphics manager 304 and cursor control device driver 308 to operate with the unreduced size, thereby allowing applications 226 to render contents into the EDAs through direct draw, and to be notified of detected cursor movements and events in the EDAs. Towards the later objective, at 412, EDA manager 310 also modifies the set up of cursor control device driver 308 such that event notifications of cursor movements and events are provided to EDA manager 310 instead of window manager 302, for EDA manager 310 to filter out the detected cursor movements and events in the EDAs before allowing the residual detected cursor movements and events (within the shared display area) to be passed on to window manager 310. 」(3頁-4頁)
(当審訳
[0028] 図4aは、一実施形態において、共用、排他的表示領域を設定するためにウィンドウマネージャ302と「共同」する本発明のEDAマネージャ310の動作フローを示している。図示のように、図示の実施形態では、EDAマネージャ310は、ウィンドウマネージャ302から表示装置ドライバ306への呼び出しを傍受する、この呼び出しは、特定のグラフィックス解像度で表示装置ドライバ306を制御している表示装置の表示画面のサイズを取得するためのものである。EDAマネージャ310への傍受やリダイレクトは、オペレーティングシステムに依存的に達成される。一実施形態では、オペレーティングシステムは、Windows(登録商標)ファミリーであり、呼び出しの傍受やリダイレクトは、レジストリおよびシステム.iniファイルの修正によって行う。本実施の形態において、呼び出しは、画素解像度で表現されるグラフィックス解像度、例えば、800×600ピクセルを含んでいる。
[0029] ステップ402で傍受されると、EDAマネージャ310は、呼び出しを表示装置ドライバ306に転送する。ステップ404で、表示装置ドライバ306は、制御している特定のグラフィックス解像度での、表示装置の表示画面のサイズを返信する。一実施形態では、サイズは表示画面の幅と高さで表現される。一実施形態では、幅と高さは、暗黙的に最大x座標及びy座標で表されている。一実施形態では、オペレーティングシステムがWindows(登録商標)ファミリーである場合には、xy座標の原点は表示面の左上隅として定義される。
[0030] 図示されている実施形態では、幅と高さで表現された表示画面のサイズを受けると、ステップ406で、EDAマネージャ310は、EDAを確保または予約するために表示画面の幅と高さを減少させる。一実施形態では、例えばWindows(登録商標)ファミリーのオペレーティングシステムのwin.ini、System.iniなどの構成ファイルを介して、EDA(単数または複数)の数が決定され、そして、該EDAにアプリケーションが割り当てられる。オペレーティングシステムの座標系に応じて、幅及び高さを低減させるための単一または連続した操作によって、複数のEDAを作成することができる。
・・・中略・・・
[0031] ステップ408で、EDAマネージャ310は、表示画面の減少したサイズをウィンドウマネージャ302に返送する、それによって、ウィンドウマネージャ302と共に行う共有エリアと排他的表示エリアの位置の「調停」が行われる。代替実施形態では、他の座標系と同じようなサイズに関する他の表現を用いることができる。サイズを縮小する手段、および、共有領域と排他的使用領域を区別する手段は、他のアプローチでも調節され得る。
[0032] 例示された実施形態では、縮小されたサイズを受け取ると、ウィンドウマネージャ302はまた、同じディスプレイ表面情報、すなわち縮小されたサイズで作業するように、グラフィクスマネージャ304及びカーソル制御装置ドライバ308を設定する。したがって、ステップ410ではEDAマネージャ310はこの情報を無視して、グラフィクスマネージャ304、カーソル制御装置ドライバ308に縮小していないサイズで動作するようにすることで、EDAにアプリケーション226が直接描画でコンテンツを描画でき、EDA内でカーソルの移動およびカーソルイベントを検出し通知することができる。ステップ412では、後者の目的のために、EDAマネージャ310は、カーソルの動きおよびカーソルイベントなどの通知をウィンドウマネージャ302の代わりにEDAマネージャ310に与えられるように、カーソル制御装置ドライバ308の設定を変更し、このことによって、カーソルの移動およびカーソルイベントの残りの検出(共有表示領域での検出)がウィンドウマネージャ310に渡される前に、EDAマネージャ310は、EDA内での検出されたカーソルの移動およびカーソルイベントをフィルタリングすることができる。)

(h)「[0034]FIG.4b illustrates the operational flow of EDA manager 310 for filtering cursor movement/event notifications, in accordance with one embodiment. Upon receipt of a cursor movement/event notification, at 412, EDA manager 310 first determines whether the movement/event was detected in the SDA or one of the EDAs. If the movement/event was detected in the SDA, at 414 , EDA manager 310 forwards the notification to window manager 302. From there, operations proceed as in the prior art. On the other hand, if the movement/event was detected in one of the EDAs, at 414 , EDA manager 310 determines within which EDA, the movement or event occurred. At 416, EDA manager 310 forwards the notification to the appropriate application 110 accordingly. The manner in which the notification is handled is application dependent.
[0035]Referring back to FIG.3, as illustrated, whether it is for the initial content rendering, or for subsequent rendering, in response to e.g. a cursor movement/event notification, for the illustrated embodiment, an application 110 assigned with an EDA renders contents into its EDA through the direct draw feature of graphics manager 304. These operations, and the manner in which graphics manager 304 handles these requests are well known. Accordingly, they will not be further described. 」(4頁)
(当審訳
[0034] 図4bはカーソル移動/イベント通知をフィルターリングするEDAマネージャ310の動作フローの実施形態を示す。ステップ412でカーソル移動/イベント通知を受信すると、EDAマネージャ310は、まず、カーソル移動/イベントが、SDA又はEDAのどちらで検出されたかを判定する。ステップ414で、カーソル移動/イベントがSDAで検出された場合、EDAマネージャ310は、通知をウィンドウマネージャ302に転送する。これからは、従来技術のように進む。一方、カーソル移動/イベントが、EDAで検出された場合、EDAマネージャ310は、EDA内でカーソル移動/イベントが発生したと判定する。ステップ416で、EDAマネージャ310は、それに応じて適切なアプリケーション110に通知を転送する。通知を処理する手法は、アプリケーションに依存する。
[0035] 図3を再び参照すると、図示のように、初期コンテンツの描画、または、後続の描画は、例えば、カーソル移動/イベントの通知に応答して、例示の実施形態において、EDAが割り当てられたアプリケーション110はグラフィクスマネージャ304の直接描画機能を介してEDAにコンテンツを描画する。グラフィクスマネージャ304がこれらの要求を処理する方法は、よく知られている。従って、詳細な説明は省略する。)


以上総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

〈引用発明〉

「バス206を介してプロセッサ202と、ROM203と、システムメモリ204と、不揮発性大容量記憶装置208と、表示装置210と、カーソル制御装置212と、通信インターフェイス214が結合されたコンピュータシステム200において、前記表示装置210の表示画面を、共有表示領域(SDA)と呼ばれる表示領域と、排他的表示領域(EDA)と呼ばれる表示領域に分割し、前記共有表示領域(SDA)では、任意の数のアプリケーション224が、SDA内に配置される該アプリケーション224に対応するウィンドウにコンテンツを描画し、前記排他的表示領域(EDA)では、割り当てられたアプリケーション226のみがコンテンツを描画する方法であって、
前記メモリ204は、動作中、オペレーティングシステム222、前記共有表示領域を使用するアプリケーション224、及び前記排他的表示領域を使用するアプリケーション226、の作業用コピーを含み、
前記オペレーティングシステム222は、ウィンドウマネージャ302、グラフィクスマネージャ304、表示装置ドライバ306と、カーソル制御装置ドライバ308と、EDAマネージャ310を含み、
前記ウィンドウマネージャ302は、SDAにおけるアプリケーション224の各種表示ウィンドウの表示を管理するものであり、
前記EDAマネージャ310が、前記アプリケーション226がそれに割り当てられたEDAにコンテンツを描画できるように、また、それらに割り当てられたEDA内で検出されたカーソル装置の移動やイベントに応答できるものであって、
前記EDAマネージャ310は、前記ウィンドウマネージャ302から前記表示装置ドライバ306への表示装置の表示画面のサイズを取得するための呼び出しを傍受するステップと、
前記EDAマネージャ310は、傍受した呼び出しを前記表示装置ドライバ306に転送するステップ402と、
前記表示装置ドライバ306が表示装置の表示画面のサイズを前記EDAマネージャ310に返信するステップ404と、
前記EDAマネージャ310が、EDAを確保または予約するために表示画面のサイズを減少させるステップ406と、
前記EDAマネージャ310は、表示画面の減少したサイズを前記ウィンドウマネージャ302に返信するステップ408と、を有し、更に、
カーソル移動/イベント通知を受信すると、前記EDAマネージャ310が、カーソル移動/イベントが、SDA又はEDAのどちらで検出されたかを判定するステップ412と、
カーソル移動/イベントがSDAで検出された場合、前記EDAマネージャ310は、通知を前記ウィンドウマネージャ302に出力するステップ414と、
カーソル移動/イベントが、EDAで検出された場合は、前記EDAマネージャ310は、EDA内でカーソル移動/イベントが発生した判定し、それに応じて適切なアプリケーション226に通知を送信するステップ416と、
からなる方法。」


b.引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある。

(a)「【0086】
[第2の実施形態]
次に、発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、上記の第1の制御技術を拡張した実施形態を説明するものである。
【0087】
ウィンドウを表示部104において表示する場合、一般には以下の3通りの表示状態が考えられる。
【0088】
1.ウィンドウの縦横ともに表示画面いっぱいに最大化される表示状態(いわゆる、全画面表示)
2.一つのアイコンないし表題だけが小さく表示される表示状態(いわゆる、最小化表示)
3.ウィンドウが表示画面のうちの一部のみを占める表示状態
である。
【0089】
ここで上記1と3とを比較してみる。1の場合、ウィンドウ自体が固定されているのでウィンドウを扱うという意味での煩雑さがない。しかしながら、他のウィンドウを参照するためには全画面表示状態を脱するための切り替え作業を行なわなければならない。
【0090】
一方の3の場合、複数のウィンドウを参照できるというメリットがある反面、各ウィンドウの大きさ、位置を決めて整理された状態にしておかなければならず煩雑である。特に、相対的に小さいウィンドウの上に相対的に大きいウィンドウが完全に覆い被さって隠蔽してしまう場合などは、上のウィンドウを適切なところに移動させて、下のウィンドウを探すなどしなければならず面倒である。
【0091】
本実施形態では、両者の利点を考慮したタイプのウィンドウの利用を可能とするべく、第1の実施形態におけるウィンドウ表示をいわゆる「全画面表示」に適用する。
【0092】
上記のように「全画面表示」では、ウィンドウが表示部104の表示画面のX方向及びY方向において最大化され、ウィンドウサイズは固定される。また、ウィンドウサイズの変更は、全画面表示を解除しない限りできないようになっている。
【0093】
これに対し、本実施形態に対応する全画面表示では、ウィンドウのX方向またはY方向のいずれか一方の方向においてのみ表示画面内で最大化がなされ、その方向に関してウィンドウは固定される。また残った一方向においては、一方の辺が表示画面端に固定され、他方の辺のみドラッグによって移動可能となる。このドラッグ可能な辺を操作することにより、一方向に向かってのウィンドウの開閉が可能であり、これがウィンドウのサイズ変更に相当する。
【0094】
図7a乃至図7cは、本実施形態における全画面表示の一例を示す図である。図7a乃至図7cでは、表示部104の表示画面全体には参照番号700を付す。ウィンドウの構成は第1の実施形態の図2と同様であるので、対応する参照番号を利用する。ウィンドウ200の左辺203は、第1の領域203aと第2の領域203bとで構成される。また、第1の領域203aと第2の領域203bとはカーソル701によりドラッグ可能とする。また、表示画面全体700及びウィンドウ200についての方向性は、XY座標系502に基づいて決定される。
【0095】
図7aは、ウィンドウ200のサイズが表示画面全体700のサイズに一致している状態を示している。即ち、図7aは全画面表示状態に相当する。
【0096】
図7bは、カーソル701を第2の領域203bに配置して、X方向にドラッグした場合に、ウィンドウ200のサイズが変化する様子を示している。第2の領域203bを利用したX方向へのドラッグにより、ウィンドウ200のサイズがX方向においてのみ変化するが、このときドラッグされた左辺203に対向する右辺204は表示領域端に固定され、左辺203のみドラッグして移動することが可能である。これによりウィンドウが一方向に開閉されるすなわち、サイズ変更される。なお、ドラッグ方向に直交するY方向では、ウィンドウ200のサイズは最大化されたまま固定されている。なお、図7bの場合、第2の領域203bが利用されるので、第1の実施形態で説明したスクロールを伴わないサイズ変更が行われることとなる。
【0097】
図7cは、カーソル701を第1の領域203aに配置して、X方向にドラッグした場合に、ウィンドウサイズが変化する様子を示している。第1の領域203aを利用したX方向へのドラッグにより、ウィンドウ200のサイズがX方向においてのみ変化するが、このときもドラッグされた左辺203に対向する右辺204は表示領域端に固定され、左辺203のみドラッグして移動可能である。これによりウィンドウ200が一方向に開閉されるすなわち、サイズ変更される。なお、ドラッグ方向に直交するY方向では、ウィンドウ200のサイズは最大化されたまま固定されている。なお、このとき、第1の領域203aが利用されるので、第1の実施形態で説明したスクロールを伴ったサイズ変更が行われることとなる。
【0098】
なお、図7a乃至図7cでは、開閉動作として機能する辺を左辺203としたが、これに限らず、ウィンドウ701を構成する他の3辺のいずれか1辺を利用してもよい。例えば、下辺202を利用した場合を図8a乃至図8cに示している。即ち、図8aは、本実施形態に対応する、ウィンドウ200のサイズが表示画面全体700のサイズに一致している状態の一例を示している。図8bは、本実施形態に対応する、カーソル701を第2の領域202bに配置して、Y方向にドラッグした場合に、ウィンドウ200のサイズが変化する様子の一例を示している。図8cは本実施形態に対応する、カーソル701を第1の領域202aに配置して、Y方向にドラッグした場合に、ウィンドウサイズが変化する様子の一例を示している。図8a乃至図8cはドラッグ辺が異なる以外は、図7a乃至図7cと同様である。」(15頁-17頁)

図7bの記載によれば、ウィンドウ200のサイズをX方向において縮小すると、縮小前のウィンドウ200があった領域に「デスクトップ」の画面が表示されている。
以上総合すると、引用文献1には、以下の技術(以下、「引用文献1に記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「デスクトップ画面の上に全画面表示したウィンドウを配置し、該ウィンドウの縁部を操作することで、ウィンドウが縮小され、下に位置されるデスクトップ画面が見えること。」


第5.当審の判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(a)引用発明の「コンピュータシステム200」は、本願発明1の「一つまたはそれ以上のコンピューターデバイス」に相当し、引用発明の「方法」は後述する相違点を除き、本願発明1の「一つまたはそれ以上のコンピューターデバイスによって実施される方法」に相当する。

(b)引用発明では「オペレーティングシステム222」の「EDAマネージャ310」が、「排他的表示領域(EDA)」を「確保または予約」し、該「排他的表示領域(EDA)」に「アプリケーション226」の「コンテンツを描画」するものであるから、引用発明は、オペレーティングシステムの「排他的表示領域(EDA)」を表示するステップを有するものと認められる。
さらに、引用発明の「EDAマネージャ310」は「EDA内で検出されたカーソル装置の移動やカーソルイベントに応答」し、「排他的表示領域(EDA)」の「適切なアプリケーション226に通知」するものであるから、引用発明の「EDAマネージャ310」は、「排他的表示領域(EDA)」内でアプリケーションに対するアクセスをサポートする技術といえる。
したがって、引用発明の「排他的表示領域(EDA)」、及び「EDAマネージャ310」は、本願発明1の「オペレーティングシステムのイマーシブシェル」、及び「一つまたはそれ以上の技術」に相当し、引用発明の、上記「オペレーティングシステムの『排他的表示領域(EDA)』を表示するステップ」は、本願発明1の「オペレーティングシステムのイマーシブシェルを表示するステップであり、イマーシブシェルは一つまたはそれ以上の技術を使用してアプリケーションに対するアクセスをサポートするように構成されているステップ」に相当する。

(c)引用発明の「共有表示領域(SDA)」は、「任意の数のアプリケーション224が、SDA104内に配置される該アプリケーション224に対応するウインドウにコンテンツを描画」するものであるから、引用発明の「共有表示領域(SDA)」は、本願発明1の「ユーザーがコントロールできるフレームを有するウィンドウを通じて前記デスクトップシェルの中で実行可能なアプリケーションを提供」する「デスクトップシェル」に相当する。
また、引用発明では「前記表示装置210の表示画面を、共有表示領域(SDA)と呼ばれる表示領域と、排他的表示領域(EDA)と呼ばれる表示領域に分割」していることから、引用発明は「共有表示領域(SDA)」と「排他的表示領域(EDA)」を同時に表示するステップを有しているものと認められ、引用発明の該「同時に表示するステップ」と、本願発明1の「前記イマーシブシェルの中にデスクトップシェルを同時に表示するステップ」とは、「前記イマーシブシェルとデスクトップシェルを同時に表示するステップ」である点で共通する。

(d)また、引用発明の「EDAマネージャ310」は、「カーソル移動/イベント通知を受信」し、「カーソルの移動/イベントがSDAで検出された場合」は、「通知を前記ウィンドウマネージャ302に出力する」ものであるから、引用発明は、「共有表示領域(SDA)」が表示され、かつ、「共有表示領域(SDA)」中の「アプリケーション226」に対するアクセスを「EDAマネージャ310」を使用してアクセス可能であるといえる。
さらに、引用発明では「カーソルの移動/イベントがSDAで検出された場合、前記EDAマネージャ310は、通知を前記ウィンドウマネージャ302に出力」し、「カーソル移動/イベントが、EDAで検出された場合は、前記EDAマネージャ310は、EDA内でカーソル移動/イベントが発生した判定し、それに応じて適切なアプリケーション226に通知を送信する」ものであり、引用発明では、「EDA」から「SDA」の「アプリケーション224」にアクセスできないものと認められ、引用発明の、この「EDA」から「SDA」の「アプリケーション224」にアクセスできないことは、本願発明1の「前記イマーシブシェルは、ユーザーがコントロールできるフレームを有するウィンドウを通じて提供されるアプリケーションに対するアクセスについて、アプリケーションに対する前記アクセスが前記デスクトップシェルを通じて実行されなければ、サポートしない」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「一つまたはそれ以上のコンピューターデバイスによって実施される方法であって、
オペレーティングシステムのイマーシブシェルを表示するステップであり、イマーシブシェルは一つまたはそれ以上の技術を使用してアプリケーションに対するアクセスをサポートするように構成されているステップと、
前記イマーシブシェルとデスクトップシェルを同時に表示するステップであり、
前記デスクトップシェルが表示され、かつ、前記イマーシブシェルの中の前記アプリケーションに対するアクセスをサポートするために使用される前記一つまたはそれ以上の技術を使用してアクセス可能であり、
前記デスクトップシェルは、ユーザーがコントロールできるフレームを有するウィンドウを通じて前記デスクトップシェルの中で実行可能なアプリケーションを提供し、かつ、
前記イマーシブシェルは、ユーザーがコントロールできるフレームを有するウィンドウを通じて提供されるアプリケーションに対するアクセスについて、アプリケーションに対する前記アクセスが前記デスクトップシェルを通じて実行されなければ、サポートしない、
ステップと、
を含む、方法。」

(相違点1)
上記「前記イマーシブシェルとデスクトップシェルを同時に表示するステップ」が、本願発明1では、「前記イマーシブシェルの中にデスクトップシェルを同時に表示する」ものであるのに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記イマーシブシェルを通じて実行されるべきナビゲーションを規定するものとして、入力を認識するステップ」と、「前記入力の認識に反応して、前記イマーシブシェルの表示を通じてナビゲーションするステップであり、前記イマーシブシェルの前記表示は、前記イマーシブシェルのプライマリー領域またはセカンダリー領域におけるアプリケーションに対応するデータの表示、および、前記イマーシブシェルの前記プライマリー領域またはセカンダリー領域のうち異なる一つにおける前記デスクトップシェルからのデータの表示、を含む、ステップ」を有するのに対して、引用発明では、そのうようなナビゲーションを規定する入力を認識するステップを有しておらず、表示を通じたナビゲーションも行われない点。


(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
引用発明を開示する引用文献2には、引用発明において上記相違点2に係る本願発明1の構成を採用することについての記載も、それを示唆する記載もない。
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、デスクトップ画面の上に全画面表示したウィンドウを配置し、該ウィンドウの縁部を操作することで、ウィンドウが縮小され、下に位置されるデスクトップ画面が見えるようする技術が記載されているが、引用文献1に記載の技術は、単にウィンドウが縮小されるだけであって、シェルの表示を通じてナビゲーションが行われるものではない。
また、原査定の拒絶の理由で引用された他の引用文献においても、シェルの表示を通じてナビゲーションが行われることは記載されていない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献1、3-4に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.請求項2-10について
本願発明2-本願発明10は、本願発明1の「前記イマーシブシェルを通じて実行されるべきナビゲーションを規定するものとして、入力を認識するステップ」と、「前記入力の認識に反応して、前記イマーシブシェルの表示を通じてナビゲーションするステップであり、前記イマーシブシェルの前記表示は、前記イマーシブシェルのプライマリー領域またはセカンダリー領域におけるアプリケーションに対応するデータの表示、および、前記イマーシブシェルの前記プライマリー領域またはセカンダリー領域のうち異なる一つにおける前記デスクトップシェルからのデータの表示、を含む、ステップ」を有するものであるから、引用発明、引用文献1、3-4に記載された技術に基づいて、当業者にとって容易であったとはいえない。


第6.原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-本願発明10は「前記イマーシブシェルを通じて実行されるべきナビゲーションを規定するものとして、入力を認識するステップ」と、「前記入力の認識に反応して、前記イマーシブシェルの表示を通じてナビゲーションするステップであり、前記イマーシブシェルの前記表示は、前記イマーシブシェルのプライマリー領域またはセカンダリー領域におけるアプリケーションに対応するデータの表示、および、前記イマーシブシェルの前記プライマリー領域またはセカンダリー領域のうち異なる一つにおける前記デスクトップシェルからのデータの表示、を含む、ステップ」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとは認められない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-10 
出願番号 特願2014-512825(P2014-512825)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上嶋 裕樹齋藤 哲  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 土谷 慎吾
山澤 宏
発明の名称 イマーシブアプリケーションとしてのデスクトップ  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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