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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08F
管理番号 1326763
審判番号 不服2014-16170  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-14 
確定日 2017-04-05 
事件の表示 特願2010-517097「低結晶化度ハードブロックを含むエチレン/α-オレフィンインターポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月22日国際公開、WO2009/012215、平成23年11月10日国内公表、特表2011-528041〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年8月18日を国際出願日とする出願であって、平成22年1月13日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、同年3月10日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、平成24年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成25年7月8日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたが、平成26年4月9日付けで拒絶査定がされ、同年8月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成27年11月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年5月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月11日付けで最後の拒絶理由(以下、「当審最後の拒絶理由」という。)が通知され、同年10月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年10月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年10月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成28年10月11日付けの手続補正の内容
平成28年10月11日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成28年5月31日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
エチレン/α-オレフィンインターポリマーがハードセグメント及びソフトセグメントを有しており、前記エチレン/α-オレフィンインターポリマーが:
(a)1.7?3.5のMw/Mnを有し;
(b)ハードセグメント中の全モノマー含有量に基づいて70重量%?85重量%の範囲のハードセグメント中のエチレン含有量を有し;
(c)(i)少なくとも40%のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
90≧Tm≧4.1276(C_(2)重量%)-244.76;又は
(ii)40%未満のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
Tm≦4.1276(C_(2)重量%)-264.95;又は
(v)前記エチレン含有量をGPC-IRにより測定される分子量の対数に対してプロットした線が、4以下の傾き絶対値mを有するように、前記エチレン含有量(重量%)と分子量の対数の間の関係を有し;かつ、
(d)油中エチレン/α-オレフィンインターポリマーの1.0重量%溶液の濁度測定値が、3NTU未満であり、
前記ソフトセグメントが、前記ソフトセグメント中の全モノマー含有量に基づいて35重量パーセント?80重量パーセントの範囲内のコモノマーを有する、エチレン/α-オレフィンインターポリマー。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
エチレン/α-オレフィンインターポリマーがハードセグメント及びソフトセグメントを有しており、前記エチレン/α-オレフィンインターポリマーが:
(a)1.7?3.5のMw/Mnを有し;
(b)ハードセグメント中の全モノマー含有量に基づいて70重量%?85重量%の範囲のハードセグメント中のエチレン含有量を有し;
(c)(i)少なくとも40%のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
90≧Tm≧4.1276(C_(2)重量%)-244.76;又は
(ii)40%未満のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
Tm≦4.1276(C_(2)重量%)-264.95;又は
(v)前記エチレン含有量をGPC-IRにより測定される分子量の対数に対してプロットした線が、4以下の傾き絶対値mを有するように、前記エチレン含有量(重量%)と分子量の対数の間の関係を有し;かつ、
(d)油中エチレン/α-オレフィンインターポリマーの1.0重量%溶液の濁度測定値が、1.5NTU未満であり、
前記ソフトセグメントが、前記ソフトセグメント中の全モノマー含有量に基づいて35重量パーセント?80重量パーセントの範囲内のコモノマーを有する、エチレン/α-オレフィンインターポリマー。」
(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「(d)油中エチレン/α-オレフィンインターポリマーの1.0重量%溶液の濁度測定値が、3NTU未満であり」を「(d)油中エチレン/α-オレフィンインターポリマーの1.0重量%溶液の濁度測定値が、1.5NTU未満であり」とするものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-2 独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。

(1)先願発明
当審最後の拒絶理由で引用された、本願と同一人による本願出願前の出願である特願2010-517083号(以下、「先願」という。)は、平成28年9月2日に特許第5996162号として登録されており、特許法第39条第5項の規定により、同法同条第1項から第4項までの規定の適用について、初めからなかったものとみなされる出願ではない。そして、その請求項1に係る発明(以下、「先願発明」という。)は、先願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
異なる化学的又は物理的性質を含む、2又はそれ以上の実質的に均質な分子内セグメント又はブロックを含む、エチレン/α-オレフィンインターポリマーであって、前記分子内セグメントは最確分子量分布を有することを特徴とし、前記エチレン/α-オレフィンインターポリマーがハードセグメント及びソフトセグメントを含み、且つ
(a)1.7?3.5のMw/Mnを有し;
(b)ハードセグメントにおいて、前記ハードセグメント中の全モノマー含有量に基づいて70重量パーセント?85重量パーセントの範囲内のエチレン含有量を有し;
(c)(v)前記エチレン含有量対GPC-IRによって測定される分子量の対数がプロットされた線が、4以下の傾き絶対値mを有するような、重量パーセントで表された前記エチレン含有量と分子量の対数との関係を有し;且つ
(d)油中の前記エチレン/α-オレフィンインターポリマーの1.0重量パーセント溶液において1.5NTU未満の濁度を有し、
ブロックコポリマーが、制御されたブロック配列分布を有し、前記ソフトセグメントが、前記ソフトセグメント中の全モノマー含有量に基づいて35重量パーセント?80重量パーセントの範囲内のコモノマーを有する、
エチレン/α-オレフィンインターポリマー。」

(2)対比・判断
本願補正発明と先願発明を対比する。

先願発明における「前記エチレン/α-オレフィンインターポリマーがハードセグメント及びソフトセグメントを含み」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本願補正発明における「エチレン/α-オレフィンインターポリマーがハードセグメント及びソフトセグメントを有しており」に相当し、以下、同様に、「(a)1.7?3.5のMw/Mnを有し;」は「(a)1.7?3.5のMw/Mnを有し;」に、「(b)ハードセグメントにおいて、前記ハードセグメント中の全モノマー含有量に基づいて70重量パーセント?85重量パーセントの範囲内のエチレン含有量を有し;」は「(b)ハードセグメント中の全モノマー含有量に基づいて70重量%?85重量%の範囲のハードセグメント中のエチレン含有量を有し;」に、それぞれ相当する。
また、本願補正発明における「(c)(i)少なくとも40%のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
90≧Tm≧4.1276(C_(2)重量%)-244.76;又は
(ii)40%未満のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
Tm≦4.1276(C_(2)重量%)-264.95;又は
(v)前記エチレン含有量をGPC-IRにより測定される分子量の対数に対してプロットした線が、4以下の傾き絶対値mを有するように、前記エチレン含有量(重量%)と分子量の対数の間の関係を有し;」という発明特定事項は、「(i)少なくとも40%のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
90≧Tm≧4.1276(C_(2)重量%)-244.76;」、
「(ii)40%未満のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
Tm≦4.1276(C_(2)重量%)-264.95;」及び
「(v)前記エチレン含有量をGPC-IRにより測定される分子量の対数に対してプロットした線が、4以下の傾き絶対値mを有するように、前記エチレン含有量(重量%)と分子量の対数の間の関係を有し;」という3つの発明特定事項が「または」で結ばれているものであり、いずれか1つの発明特定事項を有するものである。そして、上記3つの発明特定事項の内、「(v)前記エチレン含有量をGPC-IRにより測定される分子量の対数に対してプロットした線が、4以下の傾き絶対値mを有するように、前記エチレン含有量(重量%)と分子量の対数の間の関係を有し;」という発明特定事項は、その機能、構成または技術的意義からみて、先願発明における「(c)(v)前記エチレン含有量対GPC-IRによって測定される分子量の対数がプロットされた線が、4以下の傾き絶対値mを有するような、重量パーセントで表された前記エチレン含有量と分子量の対数との関係を有し」という発明特定事項に相当するから、本願補正発明における「(c)(i)少なくとも40%のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
90≧Tm≧4.1276(C_(2)重量%)-244.76;又は
(ii)40%未満のハードセグメント組成、少なくとも1つの融点Tm(℃)、及び重量パーセントで表されるエチレン量C_(2)重量%としての前記エチレン含有量を有し、前記Tm及びC_(2)重量%の数値は次の関係に対応する:
Tm≦4.1276(C_(2)重量%)-264.95;又は
(v)前記エチレン含有量をGPC-IRにより測定される分子量の対数に対してプロットした線が、4以下の傾き絶対値mを有するように、前記エチレン含有量(重量%)と分子量の対数の間の関係を有し;」という発明特定事項は、先願発明における「(c)(v)前記エチレン含有量対GPC-IRによって測定される分子量の対数がプロットされた線が、4以下の傾き絶対値mを有するような、重量パーセントで表された前記エチレン含有量と分子量の対数との関係を有し」という発明特定事項を包含するものである。
さらに、先願発明における「(d)油中の前記エチレン/α-オレフィンインターポリマーの1.0重量パーセント溶液において1.5NTU未満の濁度を有し」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本願補正発明における「(d)油中エチレン/α-オレフィンインターポリマーの1.0重量%溶液の濁度測定値が、1.5NTU未満であり」に相当し、同様に、「前記ソフトセグメントが、前記ソフトセグメント中の全モノマー含有量に基づいて35重量パーセント?80重量パーセントの範囲内のコモノマーを有する」は「前記ソフトセグメントが、前記ソフトセグメント中の全モノマー含有量に基づいて35重量パーセント?80重量パーセントの範囲内のコモノマーを有する」に相当する。

したがって、先願発明は、本願補正発明の発明特定事項を全て有した上で、「異なる化学的又は物理的性質を含む、2又はそれ以上の実質的に均質な分子内セグメント又はブロックを含む、エチレン/α-オレフィンインターポリマーであって、前記分子内セグメントは最確分子量分布を有することを特徴とし」及び「ブロックコポリマーが、制御されたブロック配列分布を有し」という発明特定事項により、さらに、限定したものである。

よって、本願補正発明は先願発明を包含するものであり、本願補正発明は先願発明と同一である。

(3)まとめ
したがって、本願補正発明は、先願発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-3 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年5月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、平成26年8月14日に提出された手続補正書により補正された明細書及び平成22年3月10日に提出された図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)のとおりである。

2 先願発明
先願発明は、上記第2[理由]2 2-2(1)のとおりである。

3 対比・判断
上記第2[理由]2 2-1で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記第2[理由]2 2-2(2)のとおり、先願発明を包含し、先願発明と同一であるから、本願発明も、同様に、先願発明を包含し、先願発明と同一である。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-01 
結審通知日 2016-11-08 
審決日 2016-11-21 
出願番号 特願2010-517097(P2010-517097)
審決分類 P 1 8・ 4- WZ (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 英司  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 前田 寛之
加藤 友也
発明の名称 低結晶化度ハードブロックを含むエチレン/α-オレフィンインターポリマー  
代理人 潮 太朗  
代理人 大森 規雄  
代理人 小林 浩  
代理人 鈴木 康仁  

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