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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1326786
審判番号 不服2016-4387  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-24 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2014-168083「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月27日出願公開、特開2014-222368、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、平成20年12月18日(優先権主張平成19年12月21日)に出願した特願2008-322043号の一部を平成25年8月8日に新たな特許出願とした特願2013-164974号の一部を平成26年8月21日に新たな特許出願としたものであって、平成27年6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年8月17日に意見書が提出されるとともに手続補正書が提出されたが、平成28年1月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
本件は、これに対して、平成28年3月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
さらに、その後、当審において、平成28年12月22日付けで拒絶理由(以下、「当審拒理」という。)が通知され、平成29年2月16日に意見書及び手続補正書が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明2」、といい、「本願発明1」?「本願発明2」をまとめて「本願発明」という。)は、平成29年2月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1?2は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
第1の配線と、
前記第1の配線上方の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上方の発光素子と、
を有し、
前記発光素子は、第1の電極を有し、
前記第1の配線は、第1の部分と、前記第1の部分より厚さが小さい第2の部分と、を有し、
前記第1の部分の下面は、平坦であり、
前記第1の部分は、0.8μm以上1.5μm以下の膜厚を有し、
前記第1の電極は、前記第1の絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して、前記第1の配線の前記第2の部分に電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
トランジスタと、
前記トランジスタが有する半導体に電気的に接続された第1の配線と、
前記第1の配線上方の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上方の発光素子と、
を有し、
前記発光素子は、第1の電極を有し、
前記第1の配線は、第1の部分と、前記第1の部分より厚さが小さい第2の部分と、を有し、
前記第1の部分の下面は、平坦であり、
前記第1の部分は、0.8μm以上1.5μm以下の膜厚を有し、
前記第1の電極は、前記第1の絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して、前記第1の配線の前記第2の部分に電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。」


第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2006-18085号公報
引用文献2:特開2006-261109号公報
引用文献3:特開2006-310799号公報

引用文献1(図4等)に記載された発明において、例えば引用文献2(図1等)及び引用文献3(図3、5等)に記載された技術を参考にして、「ドレイン電極42」の段差部分の厚みを平坦な部分の厚みより大きくなるよう設計変更することは、容易になし得たことである。


2 原査定の理由の判断
(1)各引用文献の記載事項
ア 引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

(ア)「本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態は、本発明の自発光装置を有機EL装置に適用したものである。
【0046】
<1:第1実施形態>
本発明の自発光装置に係る第1実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
【0047】
<1-1;有機EL装置の全体構成>
先ず、図1を参照して有機EL装置の全体構成について説明する。図1は、素子基板を封止基板の側から見た有機EL装置の概略的な平面図である。ここでは、自発光装置の一例である駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス駆動方式の有機EL装置を例にとる。
【0048】
図1において、素子基板10上の画像表示領域110aには、複数の画素駆動用信号線が配線されると共に、夫々画素駆動用信号線に電気的に接続される複数の画素部が所定パターンで配列されて形成されている。複数の画素部は夫々有機EL素子を含んでいる。尚、図1中、画像表示領域110aにおける画素駆動用信号線や画素部の具体的な構成については図示を省略し、その詳細については後述する。」

(イ)「【0066】
先ず、図3及び図4を参照して、画像表示領域110aにおける画素部70の構成について説明する。
【0067】
例えば透明樹脂やガラス基板等の透明基板を用いて構成される素子基板10上には、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74の半導体層3が形成されている。半導体層3は例えば低温ポリシリコン膜を用いて形成されている。また、半導体層3上には、半導体層3を埋め込んで、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74のゲート絶縁層2が形成されている。更には、ゲート絶縁層2上に、駆動用トランジスタ74のゲート電極3a及び走査線112が形成されている。走査線112の一部は、スイッチング用トランジスタ76のゲート電極として形成されている。ゲート電極3a及び走査線112は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、銅(Cu)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成されている。
【0068】
また、走査線112や駆動用トランジスタ74のゲート電極3aを埋め込んで、ゲート絶縁膜2上には層間絶縁層41が形成されている。層間絶縁層41及びゲート絶縁層2は例えばシリコン酸化膜から構成されている。
【0069】
層間絶縁層41上には、例えばアルミニウム(Al)又はITO(Indium Tin Oxide)を含む導電材料から夫々構成される、データ線114及び電源供給線117、更には駆動用トランジスタ74のドレイン電極42が形成されている。層間絶縁層41には、層間絶縁層41の表面から層間絶縁層41及びゲート絶縁層2を貫通して、駆動用トランジスタ74の半導体層3に至るコンタクトホール501及び502が形成されている。図4に示すように、電源供給線117及びドレイン電極42を構成する導電膜は、コンタクトホール501及び502の各々の内壁に沿って半導体層3の表面に至るように連続的に形成されている。
【0070】
ここで、保持容量78の下部容量電極は、走査線112と同一の層に、例えば同様の材料を用いて形成され、電源供給線117の一部が保持容量78の上部容量電極として形成されている。層間絶縁層41は誘電体膜として形成されており、層間絶縁層41の一部分が下部容量電極及び上部容量電極の間に挟持される。
【0071】
層間絶縁層41上には、電源供給線117、ドレイン電極42、及びデータ線114を埋め込んで、保護層45として例えばシリコン窒化膜(SiN)が形成されている。保護層45上には、発光材料保持層47より親水性の高い層として、例えばシリコン酸化膜よりなる親水層46が形成され、更に親水層46上に発光材料保持層47が形成されている。親水層46及び発光材料保持層47によって、画素部70における開口領域9aが形成されている。開口領域9aには保護層45上に本発明に係る「第1電極」である陽極34が形成されている。陽極34は、透明性導電材料としてITOを用いて、開口領域9aから延びてドレイン電極42の一部と重畳するように形成されている。また、開口領域9aにおいて、陽極34上には有機EL層50が形成されている。有機EL素子72は、陽極34及び陰極49と、陽極34及び陰極49間に挟持される有機EL層50を含む。尚、図4には封止基板について図示を省略してある。陰極49は、例えばアルミニウム(Al)を含む金属材料を用いて形成されるか、又はカルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成された導電膜の積層膜として形成されている。」

(ウ)「【図1】


【図3】

【図4】



上記記載事項(ウ)の図4から、「陽極34」が「保護層45」に設けられたコンタクトホールを介して「ドレイン電極42」に接続されている構成が見て取れる。

すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「画像表示領域110aを有する有機EL装置であって、
透明樹脂やガラス基板等の透明基板を用いて構成される素子基板10上には、駆動用トランジスタ74の半導体層3が形成されており、
駆動用トランジスタ74のゲート電極3aを埋め込んで、ゲート絶縁膜2上には層間絶縁層41が形成されており、
層間絶縁層41には、層間絶縁層41の表面から層間絶縁層41及びゲート絶縁層2を貫通して、駆動用トランジスタ74の半導体層3に至るコンタクトホール501が形成されていて、ドレイン電極42を構成する導電膜は、コンタクトホール501の内壁に沿って半導体層3の表面に至るように連続的に形成されて、駆動用トランジスタ74のドレイン電極42が形成されており、
層間絶縁層41上には、ドレイン電極42を埋め込んで、シリコン窒化膜(SiN)からなる保護層45が形成されていて、保護層45上には、発光材料保持層47より親水性の高い層として親水層46が形成され、更に親水層46上に発光材料保持層47が形成されていて、親水層46及び発光材料保持層47によって、画素部70における開口領域9aが形成されていて、開口領域9aには保護層45上に陽極34が形成されていて、陽極34は、透明性導電材料としてITOを用いて、開口領域9aから延びてドレイン電極42の一部と重畳するように形成されていて、陽極34は保護層45に設けられたコンタクトホールを介してドレイン電極42に接続されており、
開口領域9aにおいて、陽極34上には有機EL層50が形成されていて、
有機EL素子72は、陽極34及び陰極49と、陽極34及び陰極49間に挟持される有機EL層50を含む、有機EL装置。」

イ 引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

(ア)「【0052】
(実施の形態1)
アクティブマトリクス型発光装置の断面図(1画素の一部)を図1に示す。
【0053】
図1中、絶縁表面を有する基板10上に設けられたTFT(pチャネル型TFT)は、青色、赤色、或いは緑色を発光する第2EL層20bに流れる電流を制御する素子であり、13、14はソース領域またはドレイン領域である。基板10は、ガラス基板や、プラスチック基板を用いることができ、絶縁膜を表面に有する半導体基板や金属基板も用いることができる。基板10上には下地絶縁膜11(ここでは、下層を窒化絶縁膜、上層を酸化絶縁膜)が形成されており、ゲート電極15と半導体層との間には、ゲート絶縁膜12が設けられている。また、16は無機材料、例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム、または窒化酸化アルミニウムから選ばれる単層または積層からなる層間絶縁膜である。また、ここでは図示しないが、一つの画素には、他にもTFT(nチャネル型TFTまたはpチャネル型TFT)を一つ、または複数設けている。また、ここでは、一つのチャネル形成領域を有するTFTを示したが、特に限定されず、複数のチャネルを有するTFTとしてもよい。
【0054】
また、18a?18dは、第1の電極、即ち、発光素子の陽極(或いは陰極)である。第1の電極は、2層の領域からなる第1領域と、4層の領域からなる第2領域と、第1領域と第2領域の境界線に段差を有する構造となっている。
【0055】
ここでは、18aとしてチタン膜、18bとして窒化チタン膜、18cとしてアルミニウムを主成分とする膜、18dとして窒化チタン膜として順に積層し、バッファ層20aに接する窒化チタン膜(18bで示される第1の電極の1層)を陽極として機能させる。窒化チタンはバッファ層20aと良好な接触抵抗が得られるため、好ましい。
【0056】
また、同じ積層構造(合計4層)で電源供給線17a?17dも形成される。上記積層構造(合計4層)は、アルミニウムを主成分とする膜を含んでおり、低抵抗な配線とすることができ、ソース配線なども同時に形成される。
【0057】
例えば、第1の電極18aとしてTi=60nm、第1の電極18bとしてTiN=100nm、第1の電極18cとしてAl-Ti=350nm、第1の電極18dとしてTi=100nmとする場合、レジストマスクを形成してエッチングする。エッチング条件は、ICPエッチング装置を用い、反応ガスとしてBCl_(3)=60sccm、Cl_(2)=20sccmを用い、1.9Paの圧力でコイル型の電極に450WのRF(13.56MHz)電力を投入し、基板側(試料ステージ)にも100WのRF(13.56MHz)電力を投入してドライエッチングを行い、Al-Ti(第1の電極18c)がエッチングされたところからさらに15秒のオーバーエッチングによってTiN(第1の電極18b)を露出させる。
【0058】
エッチングによって段差を有する第1の電極を形成した後、段差を覆う絶縁物19を形成する。絶縁物19は隣合う画素との境界に配置され、第1の電極の周縁を囲むように覆っている。絶縁物19の厚さは、後の蒸着工程で接触する蒸着マスクと第1の電極との間隔を確保するため重要であり、厚くすることが望ましい。本実施の形態においては、絶縁物19の下方に4層構造の配線を設けることができるため、絶縁物19の最上面と第1の電極との間隔を十分に確保することができる。
【0059】
また、21は、透光性を有する導電膜からなる第2の電極、即ち、有機発光素子の陰極(或いは陽極)である。透光性を有する導電膜(透光性導電膜とも呼ぶ)としては、ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In_(2)O_(3)?ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化スズ(SnO_(2))等を用いることができる。また、第2の電極21は、可視光に対して透明であれば特に限定されず、例えば、薄い金属層(代表的にはMgAg、MgIn、AlLiなどの合金や、AgやAl)と透光性導電膜との積層としてもよい。
【0060】
本明細書において、可視光に対して透明とは可視光の透過率が80?100%であることを指す。
【0061】
また、第1の電極と第2の電極の間にはEL層、即ち、有機化合物を含む積層(第1EL層(バッファ層)20aと第2EL層20bの積層)を設けている。バッファ層20aは、金属酸化物(酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウムなど)と有機化合物(ホール輸送性を有する材料(例えば4,4’-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α-NPD)、4,4’-ビス{N-[4-(N,N-ジ-m-トリルアミノ)フェニル]-N-フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)など))とを含む複合層である。また、第2EL層20bは、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq_(3))や、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq_(3))や、α-NPDなどを用いることができる。また、第2EL層20bは、ドーパント材料を含ませてもよく、例えば、N,N’-ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)や、クマリン6や、ルブレンなどを用いることができる。第1の電極と第2の電極の間に設けられる有機化合物を含む積層は、抵抗加熱法などの蒸着法によって形成すればよい。
【0062】
バッファ層20aの膜厚を調節することによって、第1の電極と第2EL層20bとの距離を制御し、発光効率を高めることができる。バッファ層の膜厚を調節することによって、各発光素子からの発光色がきれいに表示された優れた映像を表示でき、低消費電力化された発光装置を実現することができる。」

(イ)「【図1】



上記記載事項(イ)の図1から、「発光素子の陽極である、第1の電極18a?18d」が「層間絶縁膜16」に設けられたコンタクトホールを介して「ドレイン領域14」に接続されている構成が見て取れる。

すると、上記引用文献2には、以下の技術事項(以下「引用文献2の技術事項」という。)が記載されている。

「アクティブマトリクス型発光装置において、基板10上に第2EL層20bに流れる電流を制御する素子であり、ソース領域13とドレイン領域14を有するTFTを設け、
発光素子の陽極である、第1の電極18a?18dが層間絶縁膜16に設けられたコンタクトホールを介してドレイン領域14に接続されており、
第1の電極は、2層の領域からなる第1領域と、4層の領域からなる第2領域と、第1領域と第2領域の境界線に段差を有する構造となっていて、
第1の電極と第2の電極の間にはEL層、即ち、有機化合物を含む積層(第1EL層(バッファ層)20aと第2EL層20bの積層)を設けていて、
18aとしてチタン膜、18bとして窒化チタン膜、18cとしてアルミニウムを主成分とする膜、18dとして窒化チタン膜として順に積層し、バッファ層20aに接する窒化チタン膜(18bで示される第1の電極の1層)を陽極として機能させると、窒化チタンはバッファ層20aと良好な接触抵抗が得られるため、好ましい。」

ウ 引用文献3
引用文献3には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

(ア)「【0051】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1や実施の形態2と異なる構造のメモリ装置の一例を図3に示す。
【0052】
図3の構造は、絶縁物319をマスクとしたエッチングにより第1の電極層の一部が薄い第1領域を有しており、第1領域がメモリセルの有機化合物を含む積層(バッファ層320a、有機化合物層320b)と接している。絶縁物319は隣合うメモリセルとの境界に配置され、第1の電極層の周縁を囲むように覆っている。
【0053】
また、第1の電極層318a?318cは、メモリ素子のビット線を構成する導電層である。第1の電極層318a?318cは、1層の領域からなる第1領域と、3層の領域からなる第2領域と、第1領域と第2領域の境界線に段差を有する構造となっている。ここでは、318aとしてチタン膜、318bとしてアルミニウムを主成分とする膜、318cとしてチタン膜として順に積層している。
【0054】
また、同じ積層構造(合計3層)でソース線317a?317cも形成される。上記積層構造(合計3層)は、アルミニウムを主成分とする膜を含んでおり、低抵抗な配線とすることができ、接続部の接続配線325a?325cも同時に形成される。
【0055】
なお、図3中、絶縁表面を有する基板310上に設けられたTFT(nチャネル型TFTまたはpチャネル型TFT)は、メモリセルの有機化合物層320bに流れる電流を制御する素子であり、313、314はソース領域またはドレイン領域である。また、図3に示すTFTは、チャネル形成領域とドレイン領域(またはソース領域)との間にLDD領域323、324を有する。
【0056】
基板310上には下地絶縁膜311(ここでは、下層を窒化絶縁膜、上層を酸化絶縁膜)が形成されており、ゲート電極315と半導体層との間には、ゲート絶縁膜312が設けられている。また、ゲート電極315の側壁にはサイドウォール322が設けられている。また、316は無機材料、例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム、または窒化酸化アルミニウムから選ばれる単層または積層からなる層間絶縁膜である。
【0057】
また、第1の電極層上に接してバッファ層320aを設けることによって、メモリ素子における第1の電極層と第2の電極層321との間隔を広げることができ、金属電極の表面凹凸などを起因とするメモリ素子の短絡による初期不良なども抑制することができる。
【0058】
第2層となる有機化合物層320bは、導電性を有する有機化合物材料からなる層を単層または積層構造で設ける。導電性を有する有機化合物材料の具体例としては、キャリア輸送性を有する材料を用いることができる。
【0059】
なお、特に必要がなければ、バッファ層320aは設けなくともよい。
【0060】
図3の構造とした場合、第1の電極層の1層目318aは、平坦な層間絶縁膜316上に薄く形成されているため、比較的平坦な表面を得ることができる。従って、金属電極の表面凹凸などを起因とするメモリ素子の短絡による初期不良なども抑制することができる。
【0061】
また、接続部において、第2の電極層321と第1の電極層の1層目325aとが接し、且つ、2層目325bの側壁も第2の電極層321と接する構造となる。図3の構造とすることで、接続部における接触面積を大きくすることができる。」

(イ)「【0075】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4と一部異なる構造のメモリ装置の一例を図5に示す。
【0076】
実施の形態4では、第1の電極層の3層目を一部除去した例を示したが、本実施の形態では、第1の電極層の積層数を4として、4層目及び3層目を一部除去する例を示す。
【0077】
図5の構造は、エッチングにより第1の電極層の一部が薄い第1領域を有しており、第1領域がメモリセルの有機化合物を含む積層(バッファ層520a、有機化合物層520b)と接している。絶縁物519は隣合うメモリセルとの境界に配置され、第1の電極層の周縁を囲むように覆っている。
【0078】
また、第1の電極層518a?518dは、メモリ素子のビット線を構成する導電層である。第1の電極層518a?518dは、2層の領域からなる第1領域と、4層の領域からなる第2領域と、第1領域と第2領域の境界線に段差を有する構造となっている。ここでは、518aとして窒化チタン膜、518bとしてチタン膜、518cとしてアルミニウムを主成分とする膜、518dとしてチタン膜として順に積層している。
【0079】
また、図5の構造においては、第1領域と第2領域の境界にある段差も絶縁物519で覆っている。
【0080】
また、同じ積層構造(合計4層)でソース線517a?517dも形成される。上記積層構造(合計4層)は、アルミニウムを主成分とする膜を含んでおり、低抵抗な配線とすることができ、接続部の接続配線525a?525dも同時に形成される。
【0081】
なお、図5中、絶縁表面を有する基板510上に設けられたTFT(nチャネル型TFTまたはpチャネル型TFT)は、メモリセルの有機化合物層520bに流れる電流を制御する素子であり、513、514はソース領域またはドレイン領域である。また、図5に示すTFTは、チャネル形成領域とドレイン領域(またはソース領域)との間にLDD領域523、524を有する。
【0082】
基板510上には下地絶縁膜511(ここでは、下層を窒化絶縁膜、上層を酸化絶縁膜)が形成されており、ゲート電極515と半導体層との間には、ゲート絶縁膜512が設けられている。また、ゲート電極515の側壁にはサイドウォール522が設けられている。また、516は無機材料、例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム、または窒化酸化アルミニウムから選ばれる単層または積層からなる層間絶縁膜である。
【0083】
また、第1の電極層上に接してバッファ層520aを設けることによって、メモリ素子における第1の電極層と第2の電極層521との間隔を広げることができ、金属電極の表面凹凸などを起因とするメモリ素子の短絡による初期不良なども抑制することができる。また、2層目の第1の電極層518bと有機化合物層520bとの密着性が悪い場合、これらの層の間にバッファ層520aを設けることによって密着性を向上させることができる。
【0084】
第2層となる有機化合物層520bは、導電性を有する有機化合物材料からなる層を単層または積層構造で設ける。導電性を有する有機化合物材料の具体例としては、キャリア輸送性を有する材料を用いることができる。
【0085】
なお、特に必要がなければ、バッファ層520aは設けなくともよい。」

(ウ)「【図3】

【図5】



上記記載事項(ウ)の図3、5から、「メモリ素子のビット線を構成する導電層である、第1の電極318a?318c、518a?518d」が「層間絶縁膜316、516」に設けられたコンタクトホールを介して「ドレイン領域314、514」に接続されている構成が見て取れる。

すると、上記引用文献3には、以下の技術事項(以下「引用文献3の技術事項」という。)が記載されている。

「メモリ装置において、基板310、510上にメモリ素子の有機化合物層320b、520bに流れる電流を制御する素子であり、ソース領域313、513とドレイン領域314、514を有するTFTを設け、
メモリ素子のビット線を構成する導電層である、第1の電極318a?318c、518a?518dが層間絶縁膜316、516に設けられたコンタクトホールを介してドレイン領域314、514に接続されており、
第1の電極は、1層あるいは2層の領域からなる第1領域と、3層あるいは4層の領域からなる第2領域と、第1領域と第2領域の境界線に段差を有する構造となっていて、
第1の電極と第2の電極の間には有機化合物を含む積層(第1層(バッファ層320a、520a)と第2層(有機化合物層320b、520b)の積層)を設けていて、
518aとして窒化チタン膜、318a、518bとしてチタン膜、318b、518cとしてアルミニウムを主成分とする膜、318c、518dとしてチタン膜として順に積層し、バッファ層320a、520aに接する第1の電極層が平坦な層間絶縁膜316、516上に薄く形成されているため、比較的平坦な表面を得ることができ、金属電極の表面凹凸などを起因とするメモリ素子の短絡による初期不良などを抑制することができる。」

(2)対比
ア 一致点
本願発明1と引用発明を対比すると、
引用発明の「ドレイン電極42」、「保護層45」、「有機EL素子72」、「陽極34」及び「有機EL装置」は、それぞれ、本願発明1の「第1の配線」、「第1の絶縁膜」、「発光素子」、「第1の電極」及び「表示装置」に相当する。
してみると、両者は、
「 第1の配線と、
前記第1の配線上方の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上方の発光素子と、
を有し、
前記発光素子は、第1の電極を有し、
前記第1の電極は、前記第1の絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して、前記第1の配線に電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。」
で一致し、次の点で相違する。

イ 相違点
本願発明1では、
「前記第1の配線は、第1の部分と、前記第1の部分より厚さが小さい第2の部分と、を有し、
前記第1の部分の下面は、平坦であり、
前記第1の部分は、0.8μm以上1.5μm以下の膜厚を有し、」
「前記第1の電極は、」「前記第2の部分に電気的に接続されている」
のに対して、引用発明では、「ドレイン電極42」が厚さの異なる2つの部分からなるか否か、「ドレイン電極42」の下面が平坦であるか否か及び「ドレイン電極42」の膜厚が明らかでなく、「陽極34」は「ドレイン電極42」に電気的に接続されるものの、「ドレイン電極42」の膜厚の小さい部分に接続されるものであるか否かが明らかでない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2、3の技術事項の「第1の電極18a?18d」、「第1の電極318a?318c、518a?518d」は、いずれも、膜厚が小さい「第1の領域」及び膜厚が大きい「第2の領域」を有するものであって、本願発明1の「前記第1の配線は、第1の部分と、前記第1の部分より厚さが小さい第2の部分と、を有」する構成に相当する。
しかし、引用文献2、3の技術事項の「第1の電極18a?18d」、「第1の電極318a?318c、518a?518d」は、それぞれ、「発光素子の陽極」、「メモリ素子のビット線を行使する導電層」であり、かつ、「層間絶縁膜16に設けられたコンタクトホールを介してドレイン領域14に接続されており」、「層間絶縁膜316、516に設けられたコンタクトホールを介してドレイン領域314、514に接続されて」いるものであって、本願発明1と引用発明との一致点の構成要素である「第1の電極」と「第1の配線」とを、1つの層で兼用するものに相当するといえるから、本願発明1と引用発明との一致点の構成である、「前記第1の電極は、前記第1の絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して、前記第1の配線に電気的に接続されている」、すなわち、「第1の電極」、「第1の配線」が異なる層である構成とは相違する。
してみると、引用発明と引用文献2、3の技術事項とでは、駆動用トランジスタ(TFT)から第1の電極に至る基本的な積層構造が異なるから、引用文献2、3の技術事項を引用発明に、そのまま採用する動機付けはない。

さらに、引用文献2の技術事項は、材料の異なる多層構造である「第1の電極18a?18d」において、「第1EL層(バッファ層20a)」と良好な接触抵抗を得ることを目的として、「18c」及び「18d」を除去して、「18b」を露出させた結果、膜厚の大きい「第1領域」と「第2領域」が形成されているものであり、また、引用文献3の技術事項は、「バッファ層320a、520aに接する第1の電極層が平坦な層間絶縁膜316、516上に薄く形成されているため、比較的平坦な表面を得ることができ、金属電極の表面凹凸などを起因とするメモリ素子の短絡による初期不良などを抑制する」ことを目的として、多層構造の「第1の電極318a?318c、518a?518dから、「318b」及び「318c」、「518c」及び「518d」を除去したものであるから、引用発明において、「有機EL層50」と接触しない「ドレイン電極42」に、引用文献2、3の技術事項を採用する動機付けもない。

そして、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項により、本願発明1は本願の明細書に記載された効果を奏する。

よって、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明に、引用文献2、3の技術事項を参照しても、当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(4)小括
したがって、本願発明1は、当業者が、引用発明に、引用文献2、3の技術事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明2も、本願発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本願発明1と同様に、当業者が、引用発明に、引用文献2、3の技術事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第4 当審拒理について
1 当審拒理の概要
(1)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項1、2の
「前記第1の部分は、前記第2の部分より厚さが小さい領域を有し、
前記第1の電極は、前記第1の絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して、前記第1の配線の前記第1の部分に電気的に接続されている」
という記載について

まず、「前記第1の部分は、前記第2の部分より厚さが小さい領域を有し、」という記載(特に、下線部)では、「第1の部分」は、「前記第2の部分より厚さが小さい領域」ではない領域、例えば、「第2の部分」と厚さが同じ領域をも有し得ると認める。
この認定を前提とすると、「前記第1の電極は、・・・前記第1の配線の前記第1の部分に電気的に接続されている」では、「第1の部分」のうちの、「前記第2の部分より厚さが小さい領域」、「前記第2の部分より厚さが小さい領域」ではない領域のどちらの領域に接続されるのかが特定されないこととなる。
しかし、本願の明細書及び図面(特に、段落【0174】参照)には、「画素電極1614」は「導電膜1612」の膜厚の薄い部分と接続する構成が記載されるのみである。
よって、請求項1、2に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

また、上述のとおり、「第1の部分」は、「前記第2の部分より厚さが小さい領域」ではない領域をも有し得ることを考慮すると、「第1の部分」、「第2の部分」が、それぞれ、「第1の配線」のうちのどの部分を指すのかが不明確である。(例えば、「第1の配線」のうちの膜厚の薄い部分を「第1の部分」、膜厚の厚い部分を「第2の部分」と定義するのであれば、明確となる。)
よって、請求項1、2に係る発明は、明確でない。

(2)本願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



請求項1、2の
「前記第1の部分は、前記第2の部分より厚さが小さい領域を有し、
前記第1の電極は、前記第1の絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して、前記第1の配線の前記第1の部分に電気的に接続されている」
という記載(「第1の電極」は、「第1の部分」のうちの「前記第2の部分より厚さが小さい領域」に接続されているものとする。)が示す構成について、この構成は、言い換えると、「第1の配線」が膜厚の薄い「第1の部分」と膜厚の厚い「第2の部分」とを有し、膜厚の薄い「第1の部分」に「第1の電極」が接続されている構成であるといえる。
この構成について、本願の明細書段落【0176】には、「画素電極1614が、導電膜1612の膜厚の薄い部分と接続されているので、画素電極1614が、導電膜1612の膜厚の薄い部分と層間絶縁膜1602との間に形成される段差により、膜厚が極端に薄くなる、或いは段切れを起こすのを防ぐことができる。」との記載があるが、この記載によれば、「導電膜1612」(「第1の配線」)が全領域で膜厚が薄くてもよいことになり、「第1の配線」が膜厚の薄い「第1の部分」と膜厚の厚い「第2の部分」とを有することの技術上の意義が理解できない。

なお、本願の明細書段落【0175】には、「抵抗値を下げるために、導電膜1612の膜厚の厚い部分及び導電膜1610の膜厚を、0.8μm以上1.5μm以下程度に大きくした場合においても、」との記載があり、膜厚の厚い「第2の部分」は、抵抗値を下げるために、膜厚を0.8μm以上1.5μm以下とすることが示されているところ、このような構成は、請求項1、2には記載されていない。

したがって、本願の請求項1、2に係る発明の技術上の意義が理解できないから、本願の明細書及び図面は、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえない。

よって、本願の明細書及び図面は、請求項1、2に係る発明について、当業者が、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものとはいえないから、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。

2 当審拒理の判断
(1)理由(1)について
平成29年2月16日の手続補正により、請求項1及び2は、「前記第1の配線は、第1の部分と、前記第1の部分より厚さが小さい第2の部分と、を有し」と補正され、理由(1)は解消された。

(2)理由(2)について
平成29年2月16日の手続補正により、請求項1及び2は、「前記第1の部分は、0.8μm以上1.5μm以下の膜厚を有し」と補正され、理由(2)は解消された。

3 小括
そうすると、もはや、当審拒理で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-11 
出願番号 特願2014-168083(P2014-168083)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G09F)
P 1 8・ 121- WY (G09F)
P 1 8・ 536- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田井 伸幸関根 裕  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松川 直樹
発明の名称 表示装置  

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