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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 B62D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62D
管理番号 1326819
審判番号 不服2016-1649  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-04 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2013-195497号「車体のフロアパネル構造」拒絶査定不服審判事件〔平成27年3月30日出願公開、特開2015-58891号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月20日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりある。
平成27年3月27日付け :拒絶理由の通知
平成27年5月29日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年10月27日付け :拒絶査定
平成28年2月4日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年12月21日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」とい
う。)の通知
平成29年3月3日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明(以下、「本願発明1-6」という。)は、平成29年3月3日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】
車体に設けられ、スペアタイヤ用の格納部を有するリヤフロアパネルと、
前記車体の左右方向に延びて前記リヤフロアパネルの前縁部に設置され、前記リヤフロアパネルに結合される第1の骨格部材と、
前記車体の左右方向に延びて前記リヤフロアパネルの後側に設置され、前記リヤフロアパネルに結合される第2の骨格部材と、
前記車体の前後方向を長手方向として前記リヤフロアパネルに形成され、前記第1の骨格部材の設置領域内へ延びている凹部と、を備え、
前記第1の骨格部材は、下向きに開口した上側部材と、上向きに開口した下側部材とを有し、
前記凹部は、前記上側部材と前記下側部材の間に挟まれている、車体のフロアパネル構造。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明、刊行物2又は3で例示される従来周知の技術及び刊行物4に記載の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開平8-142916号公報
刊行物2:特開2011-131712号公報
刊行物3:実願平2-36027号(実開平3-125682号)のマイクロフィルム
刊行物4:特開2013-23001号公報

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア.刊行物1には、「自動車のリヤフロア構造」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
(ア)「0001】
【産業上の利用分野】この発明は自動車のリヤフロア構造に関するものである。」

(イ)「【0027】クロスメンバ11は車幅方向に沿って連続形成された一体製品であり、逆ハット状の断面形状をしており、その両端部13はホイルハウスインナ9の形状に合わせて立ち上げ形成されている。また、このクロスメンバ11の車幅方向中央には切欠部14も形成されている。」

(ウ)「【0029】19はリヤフロアで、右側フロア20と左側フロア21とに二分割されている。そして、右側フロア20と左側フロア21のそれぞれ外側にはホイルハウスインナ9が一体的に形成されている。つまり、右側フロア20と左側フロア21のプレス成形時にホイルハウスインナ9も一体成形している。従って、従来のようにホイルハウスインナ9を別部品として用意し、それをリヤフロア19の対応部に接合する場合に比べて、部品点数及び作業工数の低減が図られている。
【0030】また、右側フロア20と左側フロア21におけるホイルハウスインナ9の下方には、前記補強メンバ10のフランジ10fに相応する湾曲形状の隆起部22が形成されている。この右側フロア20と左側フロア21は、それぞれ前側がリヤシート設置用スペース、後側が荷物室用スペースとなっており、該荷物室用スペースには双方にスペアタイヤパン23が凹設されている。そして、右側フロア20の分割端部25はフラット形状になっているが、左側フロア21の分割端部24には下向きの凸部24aが前後方向に沿って連続形成されている。尚、この左側の分割端部24の凸部24aは、図示されていないが、左側フロア21におけるスペアタイヤパン23の前面にも連続形成されている。つまり、この凸部24は左側フロア21の前後方向において途切れることなく連続している。」

(エ)「【0037】尚、厳密には、右側フロア20と左側フロア21の分割端部24、25同士を上下で重ね合わせて接合していることから、左側フロア21の方がリヤフロア19の板厚分だけ右側フロア20よりも低くなっている。従って、このリヤフロア19の下面に接合されるクロスメンバ11も、図示されていないが、前記のような状態のリヤフロア19に下面に密着できる対応形状となっている。」

(オ)「【0040】そして、クロスメンバ11の両端部13の下部にはショックアブソーバ31の上端が取付けられている。このショックアブソーバ31の下端はアクスルビーム16に取付けられており、該ショックアブソーバ31を介して路面からの入力Fがクロスメンバ11の両端部13に加わるようになっているが、この実施例のクロスメンバ11は車幅方向に沿って連続形成された一体成形品となっているため、該ショックアブソーバ31から両端部13に加わった入力Fはそのままクロスメンバ11全体にて確実に受け止められる。従って、従来のようにクロスメンバ11の両端部13付近に各種の補強部材を追加する必要がなく、部品点数及び車体重量の低減を図ることができる。」

これらの記載事項(ア)?(オ)及び図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
「スペアタイヤパン23が凹設されているリヤフロア19と、
車幅方向に沿って連続形成され、前記リヤフロア19の下面に接合されるクロスメンバ11と、
前後方向に沿って前記リヤフロア19に連続形成されている下向きの凸部24aと、を備え、
前記クロスメンバ11は、逆ハット状の断面形状をしている、自動車のリヤフロア構造。」

イ.刊行物4の記載事項
刊行物4には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0026】
図1?図3は、本発明に係る車両の後部車体構造の実施形態を示している。該車両の後部車体構造は、左右一対のリヤサイドフレーム1,1と、後部座席(図示せず)の後方側に配設された後部荷室の床面を構成する荷室フロアパネル2とを備えている。該荷室フロアパネル2の後部には、下方へ凹入したタイヤパン3が所定位置に設けられるとともに、該タイヤパン3内には、予備用のタイヤ4が例えば4°?7°程度の角度でやや前下がりに傾斜した倒伏状態で設置されるとともに、図略の固定具により取外し可能に固定されている。」

(イ)「【0028】
上記タイヤパン3の前方側に位置する荷室フロアパネル2の前部上方には、左右のリヤサイドフレーム1,1を連結するクロスメンバ部材8が配設されるとともに、該クロスメンバ部材8の前方側、具体的には上記荷室フロアパネル2の前端部近傍には前方側クロスメンバ9が配設されている。そして、上記クロスメンバ部材8上に、電気自動車またはハイブリッド車両の駆動モータに電力を供給するバッテリユニットや、燃料電池、燃料ボンベまたは電力制御装置等からなる車両の動力補機10が配設されて支持されている(図3参照)。」

(ウ)「【0032】
上記前方側クロスメンバ9は、クロスメンバ部材8よりも前方側において、荷室フロアパネル2の上方側に突出するように設置された断面ハット型の上方部材12と、上記荷室フロアパネル2を挟んで上方部材12の下方側に配設された断面逆ハット型の下方部材13とを有している。そして、上記前方側クロスメンバ9の上方部材12および下方部材13が荷室フロアパネル2にそれぞれスポット溶接される等により、後部荷室の前辺部から前下がりに傾斜するように折曲したリヤサイドフレーム1の折曲部Aに対応する位置において車幅方向に延びる上下一対の閉断面が構成されている(図1参照)。」

(2)対比
ア.本願発明1と刊行物発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、刊行物発明の「スペアタイヤパン23」は本願発明1の「スペアタイヤ用の格納部」に相当し、以下同様に、「リヤフロア19」は「リヤフロアパネル」に、「自動車のリヤフロア構造」は「車体のフロアパネル構造」に、それぞれ相当する。

イ.刊行物発明は「自動車のリヤフロア構造」に関するものであるから、刊行物発明の「リヤフロア19」は、車体に設けられているものと認められる。
したがって、刊行物発明の「スペアタイヤパン23が凹設されているリヤフロア19」は、本願発明1の「車体に設けられ、スペアタイヤ用の格納部を有するリヤフロアパネル」に相当する。

ウ.刊行物発明の「車幅方向に沿って連続形成され、前記リヤフロア19の下面に接合されるクロスメンバ11」と、本願発明1の「前記車体の左右方向に延びて前記リヤフロアパネルの前縁部に設置され、前記リヤフロアパネルに結合される第1の骨格部材」は、「前記車体の左右方向に延びて、前記リヤフロアパネルに結合される第1の骨格部材」という限度で一致する。

エ.上記(1)ア.(ウ)(段落【0030】)には「この右側フロア20と左側フロア21は、それぞれ前側がリヤシート設置用スペース、後側が荷物室用スペースとなっており」と記載されており、併せて図1、2を参照すると、刊行物発明の「前後方向に沿って」の「前後方向」とは車体の前後方向であると認められる。
また、刊行物発明の「下向きの凸部24a」は、上向きの凹部であるともいえるから、本願発明1の「凹部」に相当する。
したがって、刊行物発明の「前後方向に沿って前記リヤフロア19に連続形成されている下向きの凸部24a」と、本願発明1の「前記車体の前後方向を長手方向として前記リヤフロアパネルに形成され、前記第1の骨格部材の設置領域内へ延びている凹部」は、「前記車体の前後方向を長手方向として前記リヤフロアパネルに形成されている凹部」という限度で一致する。

以上から、本願発明1と刊行物発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
「車体に設けられ、スペアタイヤ用の格納部を有するリヤフロアパネルと、
前記車体の左右方向に延びて、前記リヤフロアパネルに結合される第1の骨格部材と、
前記車体の前後方向を長手方向として前記リヤフロアパネルに形成されている凹部と、を備える、車体のフロアパネル構造。」

そして、本願発明1と刊行物発明は、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1では、「前記車体の左右方向に延びて前記リヤフロアパネルの後側に設置され、前記リヤフロアパネルに結合される第2の骨格部材」を備えているのに対し、
刊行物発明では、そのように特定されていない点。

<相違点2>
「第1の骨格部材」及び「凹部」に関し、
本願発明1では、「第1の骨格部材」は「前記リヤフロアパネルの前縁部に設置され、」「凹部」は「前記第1の骨格部材の設置領域内へ延びて」おり、「前記第1の骨格部材は、下向きに開口した上側部材と、上向きに開口した下側部材とを有し、前記凹部は、前記上側部材と前記下側部材の間に挟まれている」という構成を有しているのに対し、
刊行物発明では、そのように特定されていない点。

(3)判断
事案にかんがみ相違点2について検討する。
上記(1)イ.(ア)?(ウ)の記載事項及び図面内容を総合すると、刊行物4には、以下の技術的事項(以下、「刊行物4に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「荷室フロアパネル2を備えている車両の後部車体構造において、前記荷室フロアパネル2の前端部近傍には前方側クロスメンバ9が配設されており、前記前方側クロスメンバ9は、前記荷室フロアパネル2の上方側に突出するように設置された断面ハット型の上方部材12と、前記荷室フロアパネル2を挟んで前記上方部材12の下方側に配設された断面逆ハット型の下方部材13とを有している、車両の後部車体構造。」

本願発明1と刊行物4に記載の技術的事項とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、刊行物4に記載の技術的事項の「荷室フロアパネル2」は本願発明1の「リヤフロアパネル」に相当し、以下同様に、「前方側クロスメンバ9」は「第1の骨格部材」に、「前記荷室フロアパネル2の上方側に突出するように設置された断面ハット型の上方部材12」は「下向きに開口した上側部材」に、「前記荷室フロアパネル2を挟んで前記上方部材12の下方側に配設された断面逆ハット型の下方部材13」は「上向きに開口した下側部材」に、それぞれ相当する。
そうすると、刊行物4には、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項のうちの、「『第1の骨格部材』は『前記リヤフロアパネルの前縁部に設置され、』『前記第1の骨格部材は、下向きに開口した上側部材と、上向きに開口した下側部材とを有し』」という構成が記載されているものと認められる。

しかしながら、上記(1)ア.(オ)(段落【0040】)に「そして、クロスメンバ11の両端部13の下部にはショックアブソーバ31の上端が取付けられている。・・・該ショックアブソーバ31から両端部13に加わった入力Fはそのままクロスメンバ11全体にて確実に受け止められる。従って、従来のようにクロスメンバ11の両端部13付近に各種の補強部材を追加する必要がなく、部品点数及び車体重量の低減を図ることができる。」と記載されるように、刊行物発明の「クロスメンバ11」(「第1の骨格部材」に相当する。)は、ショックアブソーバ31を介した路面からの入力を受け止めるための部材であるから、刊行物4に記載の技術的事項を刊行物発明に適用し、クロスメンバ11がリヤフロア19(「リヤフロアパネル」に相当する。)の前縁部に設置されるように構成することには、阻害要因があるといえる。
したがって、刊行物発明において、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは、当業者にとって容易とはいえない。

なお、刊行物2及び刊行物3は、リヤフロアパネルの後側に第2の骨格部材を設置するという技術が従来周知の技術であることを例示するものであり、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項と直接関連するものではない。

(4)小括
以上から、刊行物発明において、少なくとも相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは当業者にとって容易とはいえないから、本願発明1は、当業者が刊行物発明、刊行物2又は3で例示される従来周知の技術及び刊行物4に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明2-6は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が刊行物発明、刊行物2又は3で例示される従来周知の技術及び刊行物4に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
(新規事項)平成28年2月4日に提出された手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


上記補正により、補正前の請求項1の「前記車体の左右方向に延びて前記リヤフロアパネルの前側に設置され、前記リヤフロアパネルに結合される第1の骨格部材」は、「前記車体の左右方向に延びて前記リヤフロアパネルの前縁部の前側に設置され、前記リヤフロアパネルに結合される第1の骨格部材」と補正された(当審にて、補正箇所に下線を付した。)。
そして、出願人は、平成28年2月4日提出の審判請求書において、上記補正の根拠として、本願の出願当初の明細書の段落【0015】、【0016】及び図1等を挙げている。
しかしながら、上記明細書の段落【0015】、【0016】及び図1等から読み取れるのは、リヤクロスメンバ20(第1骨格部材)がリヤフロアパネル10の前側に設置されているという事項であって、リヤクロスメンバ20(第1骨格部材)がリヤフロアパネル10の前縁部14の前側に設置されているという事項まで読み取ることはできない。
加えて、本願の図1、2、4等を参照すると、リヤクロスメンバ20(第1骨格部材)はリヤフロアパネル10の前縁部14の前側ではなく、むしろ、前縁部14の略中央部に設置されているようにもみえる。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

2.当審拒絶理由の判断
平成29年3月3日に提出された手続補正書により、補正前の請求項1の「前縁部の前側に」との記載は、「前縁部に」と補正された。
これにより、当審拒絶理由で通知した理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-10 
出願番号 特願2013-195497(P2013-195497)
審決分類 P 1 8・ 561- WY (B62D)
P 1 8・ 121- WY (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 諸星 圭祐鹿角 剛二志水 裕司  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 氏原 康宏
森林 宏和
発明の名称 車体のフロアパネル構造  
代理人 大森 鉄平  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 小飛山 悟史  
代理人 黒木 義樹  

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