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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01T
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01T
管理番号 1326821
審判番号 不服2016-2458  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-18 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2014-523847「放射線映像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日国際公開、WO2013/019077、平成26年12月18日国内公表、特表2014-534408、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)8月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年8月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月28日付け(同年2月3日発送)で拒絶理由が通知され、同年5月28日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたが、同年10月14日付け(同年同月20日送達)で拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対して、平成28年2月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審より平成28年9月29日付け(同年10月4日発送)で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、平成29年2月3日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)
「放射線映像システムであって、
a)放射線変換層と、
b)前記放射線変換層上にある上部電極と、
c)前記放射線変換層に電気的にカップリングされたピクセル単位のアレイとを含み、
前記放射線変換層は、電荷輸送物質(CTM)を含む有機マトリックスと、放射線を吸収するための閃光粒子とを含み、前記有機マトリックス内には、表面の一部もしくは全部が電荷発生物質(CGM)で被覆された前記閃光粒子が分散され、
前記電荷発生物質(CGM)は、オキシチタンフタロシアニン、キノリン、ポルフィリン、キナクリドン、ジブロモアンタントロン顔料、スクアリリウム染料、ペリレンジアミン、ペリノンジアミン、多核芳香族キノン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、アゾ顔料、トリフェニルメタン型染料、セレン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、銅フタロシアニン、オキシチタンフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、金属非含有フタロシアニン、インジゴ型顔料、及びこれらの調合物のうちの少なくとも1つであり、
電荷発生物質(CGM)対電荷輸送物質(CTM)の重量比が10:90ないし80:20であることを特徴とする放射線映像システム。」

また、本願の請求項2?14に係る発明は、本願発明を減縮した発明である。

第3 原査定の拒絶理由について
1 原査定の拒絶理由の概要
本願請求項1?15に係る発明は、下記引用文献1?3に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開2007-12982号公報
引用文献2 特開2006-208158号公報
引用文献3 特開2003-282854号公報

2 原査定の拒絶理由の判断
(1)引用文献の記載事項、引用発明
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明
引用文献1には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は当審で付与したものである。
「【0001】
本発明は、光電変換素子、放射線画像検出器及び放射線画像撮影システムに係り、特に、デジタル式の放射線画像撮影システムに用いられる光電変換素子、放射線画像検出器及び放射線画像撮影システムに関する。」

「【0097】
[第1の実施形態]
第1の実施形態である光電変換素子について図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の光電変換素子10aは、透明電極20と、透明電極20を透過して入光した電磁波により励起されて電荷を発生する電荷発生層30aと、透明電極20に対しての対極になる対電極40とから構成されている。
【0098】
透明電極20とは、光電変換される電磁波を透過させる電極であり、例えばインジウムチンオキシド(ITO)、SnO_(2)、ZnOなどの導電性透明材料を用いて形成される。
【0099】
電荷発生層30aは、透明電極20の一面側に薄膜状に形成されており、光電変換可能な化合物として電磁波(光)によって電荷分離する有機化合物を含有するものであり、電荷を発生し得る電子供与体としての導電性化合物と電子受容体としての導電性化合物とを含有している。電荷発生層30aでは、電磁波が入射されると、電子供与体は励起されて電子を放出し、放出された電子は電子受容体に移動して、電荷発生層30a内に電荷、すなわち、正孔と電子のキャリアが発生するようになっている。」

「【0136】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態として本発明に係る光電変換素子10aを用いた放射線画像検出器50について図4又は図5を参照して説明する。
・・・(途中省略)・・・
【0146】
光電変換層70はシンチレータ層60の放射線照射面側と逆側の面に設けられており、シンチレータ層60側から順に、隔膜71、光電変換素子10a及び画像信号出力層72を備えている。以下、順次説明する。
【0147】
隔膜71は、シンチレータ層60と他の層を分離するためのものであり、例えばOxi-nitrideなどが用いられる。
【0148】
光電変換素子10aは、隔膜71側に透明電極が配置されるように設けられている。つまり、隔膜71側から順に透明電極20、電荷発生層30a、対電極40が配置される。
【0149】
画像信号出力層72は、光電変換素子10aで得られた電荷の蓄積および蓄積された電荷に基づく信号の出力を行うものであり、光電変換素子10aで生成された電荷を画素毎に蓄積する電荷蓄積素子であるコンデンサ73と、蓄積された電荷を信号として出力する画像信号出力素子であるトランジスタ74とを用いて構成されている。
【0150】
トランジスタ74は、例えばTFT(薄膜トランジスタ)を用いるものとする。このTFTは、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のものでも、有機半導体を用いたものでもよく、好ましくはプラスチックフィルム上に形成されたTFTである。プラスチックフィルム上に形成されたTFTとしては、アモルファスシリコン系のものが知られているが、その他、米国Alien Technology社が開発しているFSA(Fluidic Self Assembly)技術、即ち、単結晶シリコンで作製した微小CMOS(Nanoblocks)をエンボス加工したプラスチックフィルム上に配列させることで、フレキシブルなプラスチックフィルム上にTFTを形成するものとしても良い。さらに、Science,283,822(1999)やAppl.Phys.Lett,771488(1998)、Nature,403,521(2000)等の文献に記載されているような有機半導体を用いたTFTであってもよい。
【0151】
このように、本発明に用いられるトランジスタ74としては、上記FSA技術で作製したTFT及び有機半導体を用いたTFTが好ましく、特に好ましいものは有機半導体を用いたTFTである。この有機半導体を用いてTFTを構成すれば、シリコンを用いてTFTを構成する場合のように真空蒸着装置等の設備が不要となり、印刷技術やインクジェット技術を活用してTFTを形成できるので、製造コストが安価となる。さらに、加工温度を低くできることから熱に弱いプラスチック基板上にも形成できる。
【0152】
トランジスタ74には、光電変換素子10aで発生した電荷を蓄積するとともに、コンデンサ73の一方の電極となる収集電極(図示せず)が電気的に接続されている。コンデンサ73には光電変換素子10aで生成された電荷が蓄積されるとともに、この蓄積された電荷はトランジスタ74を駆動することで読み出される。すなわちトランジスタ74を駆動させることで放射線画像の画素毎の信号を出力させることができる。」

「【0167】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態である放射線画像検出器について、図7を参照して説明する。
第6の実施形態の放射線画像検出器は、第4の実施形態において放射線画像変換パネル51aを備える代わりに、放射線画像変換パネル51cを備える以外は同様の構成の放射線画像検出器である。
【0168】
放射線画像変換パネル51cは、蛍光体粒子61を含有するシンチレータ層20を備える代わりに、図7に示すように第4の実施形態における電荷発生層30aに蛍光体粒子61を含有して形成される電荷発生層30dを備えて形成される光電変換素子10dにより構成されており、いわゆる直接型の放射線画像変換パネルである。なお、図7では、放射線画像変換パネル51cの一例として放射線照射方向から順に、光電変換素子10d、画像信号出力層72及び基板80を備える構成について図示する。ここで、直接型の放射線画像変換パネルとは、電荷発生層に蛍光体粒子を含むものをいい、電荷発生層において放射線が直接吸収されて電気エネルギーに変換されるようになっている。これに対して、第4の実施形態に係る放射線画像変換パネル51aは、電荷発生層において放射線のエネルギーが間接的に吸収される、いわゆる間接型の放射線画像変換パネルである。
【0169】
直接型の放射線画像変換パネルにおいても、蛍光体粒子が放射線を吸収して、エネルギーが蛍光体粒子から導電性高分子化合物に移動して、導電性高分子化合物が電荷分離状態となり電気エネルギーが生成するという原理は同じである。しかしながら、両者においては、放射線を吸収した蛍光体粒子から導電性高分子化合物へエネルギーが伝達する態様が異なっている。直接型では、蛍光体粒子の分子軌道と導電性高分子化合物の分子軌道とが接近している場合、間接型におけるような蛍光体粒子から発光される電磁波によるエネルギーの伝達に加え、蛍光体粒子が電磁波を発光するより早く電子などによりエネルギーは直接導電性高分子化合物に伝達されることがある。
【0170】
本実施形態における放射線画像変換パネル51cによる画像信号の出力について説明すると、本実施形態の放射線画像変換パネル51cにはシンチレータ層が別途設けられていないので、放射線は電荷発生層30dに入射する。すると、電荷発生層30dに含まれる蛍光体粒子61が放射線を吸収する。吸収されたエネルギーの一部はすぐに電子を媒体として導電性高分子化合物に伝達されるとともに、残りのエネルギーは電磁波となり導電性高分子化合物に伝達される。よって、電荷発生層30dから電荷が発生し、この電荷に基づいて画像信号出力層72から画像信号が出力される。
【0171】
したがって、直接型の放射線画像変換パネル51cにおいても、第4の実施形態における間接型の放射線画像変換パネルと同様の効果を得ることができる。」




以上のことから、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「放射線画像撮影システムであって、
光電変換素子10dは、順に透明電極20、電荷発生層30d、対電極40が配置され、
光電変換素子10dで発生した電荷を、収集電極、コンデンサ73、トランジスタ74により、放射線画像の画素毎の信号として出力させ、
電荷発生層30dは、光電変換可能な化合物として電磁波(光)によって電荷分離する有機化合物を含有するものであり、電荷を発生し得る電子供与体としての導電性化合物と電子受容体としての導電性化合物と、蛍光体粒子61を含有し、
蛍光体粒子61が放射線を吸収するものである
放射線画像撮影システム。」

イ 引用文献2の記載事項
特開2006-208158号公報(引用文献2)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、放射線画像変換パネル、放射線画像検出器及び放射線画像撮影システムに係り、特に、デジタル式の放射線画像撮影システムに用いられる放射線画像変換パネル、放射線画像検出器及び放射線画像撮影システムに関する。」
「【0077】
光電変換層20aはシンチレータ層10の放射線照射面側とは逆の面側に設けられており、図1では簡略化したが、シンチレータ層10側から順に、隔膜、透明電極膜、電荷発生層及び導電層を備えている。以下、順次説明する。
【0078】
隔膜は、シンチレータ層10と他の層を分離するためのものであり、例えばOxi-nitrideなどが用いられる。」
「【0137】
(3)実施例3の作製
表1に示すように、添加物をCNT/ポルフィリン複合体(化18)として、混合膜の組成を、当量比にして化合物1:化合物7=20:1とした以外は実施例1と同様にして電荷発生層を作製し、本発明に係る実施例3とした。」

ウ 引用文献3の記載事項
特開2003-282854号公報(引用文献3)には、次の記載がある。
「【0034】電荷発生層は、電荷発生物質としてのスーダンレッド又はダイアンブルー等のアゾ顔料、ピレンキノン、アントアントロン等のキノン顔料、インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料、アズレニウム塩顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどのフタロシアニン顔料等をバインダー樹脂であるポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、酢酸酪酸セルロース等に分散含有させた層として得られる。」

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「放射線画像撮影システム」は、本願発明の「放射線映像システム」に相当する。
引用発明において、「光電変換素子10dで発生した電荷を、収集電極、コンデンサ73、トランジスタ74により、放射線画像の画素毎の信号として出力させ」ているから、放射線画像の画素毎(ピクセル単位)に出力する引用発明の「収集電極、コンデンサ73、トランジスタ74」は、本願発明の「前記放射線変換層に電気的にカップリングされたピクセル単位のアレイ」に相当する。
引用発明は、「電荷発生層30dは、光電変換可能な化合物として電磁波(光)によって電荷分離する有機化合物を含有するものであり、電荷を発生し得る電子供与体としての導電性化合物と電子受容体としての導電性化合物と、蛍光体粒子61を含有し、蛍光体粒子61が放射線を吸収するものである」から、引用発明の「電荷を発生し得る電子供与体としての導電性化合物」、「電子受容体としての導電性化合物」、「有機化合物」、「蛍光体粒子」は、それぞれ、本願発明の「電荷発生物質(CGM)」、「電荷輸送物質(CTM)」、「有機マトリックス」、「放射線を吸収するための閃光粒子」に相当し、引用発明の「電荷発生層30d」は、本願発明の「放射線変換層」に相当する。
そして、引用発明は、「順に透明電極20、電荷発生層30d、対電極40が配置され」ているから、引用発明の「透明電極20」は、本願発明の「前記放射線変換層上にある上部電極」に相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。
「放射線映像システムであって、
a)放射線変換層と、
b)前記放射線変換層上にある上部電極と、
c)前記放射線変換層に電気的にカップリングされたピクセル単位のアレイとを含み、
前記放射線変換層は、電荷輸送物質(CTM)を含む有機マトリックスと、前記有機マトリックス内に分散されている放射線を吸収するための閃光粒子とを含む、
放射線映像システム。」

そして、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、「前記有機マトリックス内には、表面の一部もしくは全部が電荷発生物質(CGM)で被覆された前記閃光粒子が分散され」ているのに対し、引用発明は、「電荷発生層30dは、光電変換可能な化合物として電磁波(光)によって電荷分離する有機化合物を含有するものであり、電荷を発生し得る電子供与体としての導電性化合物と電子受容体としての導電性化合物と、蛍光体粒子61を含有し」ていることから、電子供与体としての導電性化合物と蛍光体粒子61は単に混合した状態になっている点。

(相違点2)
本願発明の「前記電荷発生物質は、オキシチタンフタロシアニン、キノリン、ポルフィリン、キナクリドン、ジブロモアンタントロン顔料、スクアリリウム染料、ペリレンジアミン、ペリノンジアミン、多核芳香族キノン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、アゾ顔料、トリフェニルメタン型染料、セレン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、銅フタロシアニン、オキシチタンフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、金属非含有フタロシアニン、インジゴ型顔料、及びこれらの調合物のうちの少なくとも1つであ」るのに対し、引用発明の「電荷を発生し得る電子供与体としての導電性化合物」の材料が特定されていない点。

(相違点3)
本願発明は、「電荷発生物質(CGM)対電荷輸送物質(CTM)の重量比が10:90ないし80:20である」のに対し、引用発明は、「電荷を発生し得る電子供与体としての導電性化合物」と「電子受容体としての導電性化合物」の重量比の特定がない点。

(3)判断
相違点1について検討する。
有機マトリックス内に、表面の一部もしくは全部が電荷発生物質(CGM)で被覆された閃光粒子を分散させることは、上記引用文献2,3に記載されていないから、引用発明の電子供与体としての導電性化合物と蛍光体粒子61を、本願発明の相違点1に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、本願発明は、相違点2,3を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本願請求項2?14に係る発明も、本願発明の相違点1に係る構成を有するものであるから、本願発明と同様に、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(4)小括
上記のとおりであるから、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)(進歩性)本願請求項1?14に係る発明は、特開2007-12982号公報に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)(明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1、2、7において、「電荷輸送物質(CTM)」、「CTM」、「電荷輸送物質」と記載されているが、前記「電荷輸送物質(CTM)」、「CTM」、「電荷輸送物質」は同一のものを指しているのか、それとも異なるものを指しているのかが明確でない。
なお、同一のものを指すなら、名称を統一のこと。


イ 請求項1?3、6において、「電荷発生物質(CGM)」、「CGM」、「CGM物質」と記載されているが、前記「電荷発生物質(CGM)」、「CGM」、「CGM物質」は同一のものを指しているのか、それとも異なるものを指しているのかが明確でない。
なお、同一のものを指すなら、名称を統一のこと。

ウ 請求項9及び11において、「約」の記載は、体積パーセントの範囲や厚さの範囲を曖昧にしており、その結果、発明の範囲が明確でない。

エ 請求項9に記載された「請求項1から9」は、「請求項1から8」の誤記ではないか。

2 当審拒絶理由の判断
(1)本件補正について
ア 本願発明の「表面の一部」「が電荷発生物質(CGM)で被覆される」ことと、引用発明の「電荷を発生し得る電子供与体と」「蛍光体粒子61を含有」した状態との違いを明確にするために、本願明細書段落【0037】の「図2は、他の例示的な実施形態による放射線変換層を例示した概路図である。図2に示すように、電荷発生物質(CGM)21に被覆された閃光粒子10は、有機マトリックス20内に分散されることができる。」との記載を参考に、請求項1の「前記放射線変換層は、電荷輸送物質(CTM)を含む有機マトリックスと、前記有機マトリックス内に分散されている放射線を吸収するための閃光粒子とを含み、前記閃光粒子は、電荷発生物質(CGM)に接触され、」「前記閃光粒子は、表面の一部もしくは全部が電荷発生物質(CGM)で被覆されること」の記載を、「前記放射線変換層は、電荷輸送物質(CTM)を含む有機マトリックスと、放射線を吸収するための閃光粒子とを含み、前記有機マトリックス内には、表面の一部もしくは全部が電荷発生物質(CGM)で被覆された前記閃光粒子が分散され、」と補正した。

イ 請求項1、3、6、および7において、「電荷輸送物質(CTM)」との名称あるいは「電荷発生物質(CGM)」との名称を統一的に用いるべく、記載を改めた。

ウ 請求項8、9、および11における「約」の記載を削除した。

エ 請求項9に記載された「請求項1から9」を「請求項1から8」に補正した。

(2)当審拒絶理由(1)について
当審拒絶理由(1)で引用した特開2007-12982号公報は、原査定の拒絶理由で引用した引用文献1である。
また、当審拒絶理由(1)で説示した周知技術は、電荷発生物質の材料(例えば、原査定の拒絶理由で引用した引用文献3である特開2003-282854号公報段落0034等参照。)と、放射線画像撮影システムにおいて「電荷注入遮断層」を有すること(原査定の拒絶理由で引用した引用文献2である特開2006-208158号公報段落【0001】、【0077】、【0078】、図1参照)についてである。
そして、引用文献1の記載事項、引用発明は、上記「第3」「2」「(1)」「ア」に記載のとおりであり、本願発明と引用発明との対比については、上記「第3」「2」「(2)」に記載のとおりである。
相違点1について検討すると、引用発明は、電子供与体としての導電性化合物と蛍光体粒子61は混合した状態になっており、電子供与体としての導電性化合物と蛍光体粒子61とが接触した状態があるとはいえるものの、有機化合物内に、表面の一部もしくは全部が電子供与体で被覆された蛍光体粒子61が分散しているものではない。また、有機マトリックス内に、表面の一部もしくは全部が電荷発生物質(CGM)で被覆された閃光粒子を分散させることは、本願出願前に公知であるとはいえないから、引用発明の電子供与体としての導電性化合物と蛍光体粒子61を、本願発明の相違点1に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、本願発明は、相違点2,3を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本願請求項2?14に係る発明も、本願発明の相違点1に係る構成を有するものであるから、本願発明と同様に、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)当審拒絶理由(2)について
本件補正により、上記(1)イ、ウ、エのとおり補正された。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえなくなった。

(4)小括
以上のとおり、本件補正により、当審拒絶理由で指摘した理由は解消し、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 結論
以上のとおりであり、原査定の拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。また、他に、本願を拒絶する理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-10 
出願番号 特願2014-523847(P2014-523847)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01T)
P 1 8・ 537- WY (G01T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 靖  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森 竜介
松川 直樹
発明の名称 放射線映像システム  
代理人 吉田 稔  
代理人 土居 史明  
代理人 小淵 景太  
代理人 鈴木 伸太郎  
代理人 鈴木 泰光  
代理人 田中 達也  
代理人 臼井 尚  

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