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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1326888
審判番号 不服2014-21087  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-17 
確定日 2017-04-04 
事件の表示 特願2012-558075「通信ネットワークを用いる無線充電方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日国際公開、WO2011/112060、平成25年 6月13日国内公表、特表2013-523071〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2011年3月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年3月12日、韓国;2010年7月12日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月10日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成26年6月17日)、これに対し、平成26年10月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成27年8月6日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年8月10日)、これに対し、平成27年11月10日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審により平成28年3月3日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年3月7日)、これに対し、平成28年6月7日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.特許請求の範囲
平成28年6月7日付手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
端末を無線で充電する方法であって、
前記端末が、サーバに、無線電力供給装置に関する情報に対する要求を送信するステップであって、前記無線電力供給装置に関する情報は、領域に存在する少なくとも一つの前記無線電力供給装置を特定する無線電力供給装置のリストを示す情報を含み、前記領域は、前記端末が位置している領域である、ステップと、
前記端末が、前記サーバから、前記サーバが前記端末からの前記要求に応じて生成した、前記無線電力供給装置に関する情報を受信するステップと、
前記端末が、前記リストに含まれる少なくとも一つの前記無線電力供給装置の中から第1の無線電力供給装置を選択するステップと、
前記端末が、前記第1の無線電力供給装置によって無線供給される電力によって前記端末を無線充電するステップと、を有し、
前記第1の無線電力供給装置を選択するステップは、
前記無線電力供給装置のリストに含まれた前記少なくとも一つの前記無線電力供給装置の状態情報を検査するステップと、
前記無線電力供給装置の状態情報に基づいて前記第1の無線電力供給装置を選択するステップとを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記無線電力供給装置に関する情報に対する要求を前記端末が送信するステップは、
前記端末の位置情報を前記端末が確認するステップをさらに有し、
前記無線電力供給装置に関する情報に対する要求を示す情報は、前記端末が確認した前記位置情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無線電力供給装置に関する情報は、前記サーバにより要求され、前記無線電力供給装置により確認され、前記無線電力供給装置から前記サーバに提供された状態情報に基づいて、前記サーバにより生成され、少なくとも一つの前記無線電力供給装置を包含する無線電力供給装置リストを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記端末を充電するステップは、
前記少なくとも一つの無線電力供給装置に無線充電のための電力に対する要求を前記端末が送信するステップを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記端末を充電するステップは、前記サーバが、受信した前記無線充電の結果に基づいて課金情報を生成するステップをさらに有する
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記端末を充電するステップは、
前記状態情報を前記端末が確認するステップと、
前記状態情報に基づいて、前記少なくとも一つの無線電力供給装置を、無線電力供給装置リストのうちで、前記端末が選択するステップと、をさらに有する
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記端末を充電するステップは、前記無線電力供給装置リストに包含される前記無線電力供給装置のうち少なくとも一つを前記サーバが選択するステップをさらに有する
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記無線電力供給装置に関する情報は、前記状態情報を含み、
前記状態情報は、前記無線電力供給装置が前記端末に電力を供給することを許可するか否かを示す情報を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記無線電力供給装置に関する情報は、前記少なくとも一つの無線電力供給装置各々の電源の種類及び前記状態情報を含む
ことを特徴とする請求項4又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記無線電力供給装置に関する情報は、前記少なくとも一つの無線電力供給装置各々の位置情報を含む
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記無線電力供給装置は、前記サーバにより検索された無線電力供給装置に対して、前記サーバから要求された状態情報を、前記無線電力供給装置が確認し、前記確認した状態情報を前記サーバに提供する
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。」


3.当審の拒絶の理由
平成28年3月3日付の当審の拒絶の理由で以下の事項を通知した。
「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、明細書【0006】に無線充電技術として、電磁誘導方式、共振(resonance)方式、及び電気エネルギーをマイクロ波に変換させて放射する電波放射(Radio Frequency(RF)/microwave radiation)方式の3種類が挙げられているが、本願発明は3種類の何れの方法を用いるのか不明(RFを採用しているのではないのか)である。仮に、RF以外であれば、電磁誘導方式の場合、無線電力供給装置に関する情報に対する要求(通常電磁誘導方式無線電力供給装置は、特定の端末専用充電器を近接配置して用いる。)、無線電力供給装置に関する情報とは、具体的にどの様なものか何ら開示が無く不明であり、共振方式の場合、無線電力供給装置に関する情報に対する要求、無線電力供給装置に関する情報とは、具体的にどの様なものか何ら開示が無く不明であり、これら方式で、複数の無線電力供給装置から同時にどの様にして端末が電力を受電するのか何ら開示が無く不明である。

(2)更に、明細書【0045】に「状態情報は、電子機器15の電力供給に対する許可を示す情報、電子機器15の電源の種類及び状態を示す情報、及び電子機器15の位置情報を全て含むことができる。その結果、選択された電子機器15は、他の電子機器に電力供給が許可された電子機器、安定に電力を供給する電源の種類及び状態を有する電子機器、及び/又は端末11に近接した電子機器であり得る。」との訳語があるが、どのタイミングで状態情報を発するのか不明(常時か定時毎かそれ以外か。)であり、又、電子機器15の電力供給に対する許可を示す情報とはどの様な情報であるのか定義が不明(許可とは電子機器がどの様な状態のときにされるものか。)であり、電子機器15の電源の種類及び状態を示す情報とはどの様な情報であるのか定義が不明(電源の種類には、例えばリチウム電池、乾電池、太陽電池等の区分けも含まれるが、本願発明に何故これらが必要か不明。電源の状態には、使用回数、電源筐体汚染状態等も含まれるが、本願発明に何故これらが必要か不明。)であり、電子機器15の位置情報とはどの様な情報であるのか定義が不明(仮に、電子機器の位置のみが判明しても、電子機器の電力供給部の向きが判明しなければ充電に関して無意味ではないか。)であり、又、当該記載は「状態情報は、電子機器15の電力供給に対する許可を示す情報、電子機器15の電源の種類及び状態を示す情報、及び電子機器15の位置情報を全て含む」ことを示すだけであって、状態情報はこの3つのみではない(無線充電の方式が何故不要であるのか不明)ので、どの様な情報が状態情報であるのか不明(そもそも状態情報とは一般的な用語ではないため構成が特定できない)であり、「全て含む」ことと「全てを用いる」ことは意味が異なるから、本願発明の状態情報として必ず【0045】記載の3つの情報を用いるのか否か不明であり、又、状態情報として位置情報を取得することは記載されているが、無線による充電のための送信側受信側の結合の度合い(結合係数)を何ら考慮しておらず、単に送信側受信側が近くても結合係数がほぼゼロの場合、充電できず、何故結合の度合いを考慮しないのか不明である。

(3)更に、請求項1に「前記端末が、サーバに、無線電力供給装置に関する情報に対する要求を送信するステップ」との訳語があるが、当該記載に基づけば、端末がサーバに対して「無線電力供給装置に関する情報」を要求する(例えば、無線電力供給装置がどの様な端末に充電可能であるか等の情報ではなく、サーバに対し何ら情報を特定すること無く「無線電力供給装置に関する情報」という情報自体を要求することとなる。)こととなるが、何故この様な情報を要求するのか不明であり、又、従属する請求項3、8、9、10の記載から判断して、当該要求は請求項3、8、9、10の無線電力供給装置に関する情報以外のものでも良いこととなるが、例えば無線電力供給装置の位置情報を要求しなかった場合、例えば無線電力供給装置の充電方式(【0006】参照)を要求しなかった場合、どの様にして電力を受信するのか不明であり、当該要求以外の要求も含まれることとなるが、どの様な要求となるのか何ら記載が無く不明であり、又、無線電力供給装置に関する情報に対する要求とは、一般的な用語ではないためどの様な定義であるのか全く不明(具体的にどの様な要求か。端末がサーバに対してどのタイミングで発する要求か。状態情報と何が異なるのか。)である。

(4)更に、請求項1に「前記端末が、前記サーバから、前記サーバが前記端末からの前記要求に応じて確認した、前記無線電力供給装置に関する情報を受信するステップ」との訳語があるが、サーバの確認は、端末からの要求と同じ情報であることを確認する場合と異なることを確認する場合が考えられ、確認とはどの様な意味であるのか不明であり、又、端末からの要求どおりの情報でないことが確認できた場合、サーバは端末に対して情報を送信するのか否か不明であり、「前記無線電力供給装置に関する情報」とあるから、仮に端末の要求どおりの情報とすれば、何故必ず要求どおりの情報をサーバが常に保有するのか不明であり、又、サーバと無線電力供給装置の間に情報のやり取りは無いが、サーバは何時の時点で入手した無線電力供給装置に関する情報を端末に送信するのか不明であり、又、無線電力供給装置に関する情報(例えば「サムスン製」、「重量0.5キロ」等も無線電力供給装置に関する情報であるが、充電には意味のない情報である。)とはどの様な情報であるのか定義が不明であり、何故充電に必要であるのか不明(【0045】に示される状態情報がなければ充電できないが請求項1には記載が無い。「電子機器15の電力供給に対する許可を示す情報、電子機器15の電源の種類及び状態を示す情報、及び電子機器15の位置情報」が最低限必要がある。なお、情報として、図3、図7の様にサーバがデータベースに有しているものを用いれば、今現在の電子機器の情報を用いないこととなり、充電ができない。図10の様に電子機器に対して確認要求が必要ではないか。)である。

(5)更に、請求項1に「前記端末が、前記受信した情報に基づいて、無線充電のための電力を少なくとも一つの前記無線電力供給装置から受信して前記端末を無線充電するステップ」との訳語があるが、単に「基づいて」と曖昧な表現があるだけで、端末が受信した情報にどの様に基づいて少なくとも一つの無線電力供給装置を選択するのか何等記載が無く不明(そもそも無線電力供給装置の選択を行っていないのではないか)であり、又、少なくとも一つの前記無線電力供給装置とあるから、2つ以上(複数)の無線電力供給装置から電力を受信しても良いこととなるが、電磁誘導方式、共振方式、RF方式の3方式があるにもかかわらず、具体的にどの様に無線電力供給装置を選択してどの様に電力を受信するのか不明(複数の無線電力供給装置に対して、重み付け、優先順位等を付けなければ受信できない。如何なる場合も複数の無線電力供給装置から同時に電力を受信するのか。端末がどの様な構成を備えるのか。電磁誘導方法であれば近接配置が、共振方法であればコイル同士の向きを一致させることが必要であるが、無線電力供給装置である他人の携帯端末が送電のために何らかの行為を行うことや、端末のユーザが無線電力供給装置が存在する位置近傍まで移動することは何等記載が無い。)である。

(6)更に、請求項2に「前記無線電力供給装置に関する情報に対する要求を前記端末が送信するステップは、前記端末の位置情報を前記端末が確認するステップをさらに有し、前記無線電力供給装置に関する情報に対する要求は、前記端末が確認した前記位置情報を包含する」との訳語があるが、端末の位置情報は無線電力供給装置に関する情報ではないので何を意味するのか不明であり、端末が何故端末の位置情報の確認をサーバに対して要求するのか不明であり、要求に端末が確認した位置情報を包含するのであれば、端末が位置情報を要求する必要は無く、何故この様な要求が必要であるのか不明であり、又、引用する請求項1は端末の位置情報がない場合が含まれることとなるが、サーバとどの様な情報をやり取りすることによってどの様にして無線電力供給装置から受電するのか、その方法が開示がなく不明である。

(7)更に、請求項3に「前記無線電力供給装置に関する情報は、前記サーバにより要求され、前記無線電力供給装置により確認され、前記無線電力供給装置から前記サーバに提供された状態情報に基づいて、前記サーバにより生成され、少なくとも一つの前記無線電力供給装置を包含する無線電力供給装置リストを含む」との訳語があるが、状態情報とは一般的な用語ではなくどの様な情報が含まれ、どの様な情報が含まれないのか特定できず不明であり、「状態情報に基づいて」とあるが、基づき方は様々なものが考えられるため構成を特定できず不明であり、「少なくとも一つ」とあるから最低でも1つとなるが、無線電力供給装置の状態情報によっては無線電力供給装置リストに無線電力供給装置が0の場合が考えられ、何故必ず1つ含まれるのか不明であり、又、無線電力供給装置に関する情報と状態情報は何が異なるのか不明である。

(8)更に、請求項4に「前記端末を充電するステップは、前記少なくとも一つの無線電力供給装置に無線充電のための電力に対する要求を前記端末が送信するステップを有する」との訳語があるから、引用する請求項1は電力に対する要求を行わないものが含まれ、請求項1は無線電力供給装置が何ら要求なしに端末に対して電力を供給することとなり、請求項1記載の方法が何故必要であるのか不明である。

(9)更に、請求項6に「前記状態情報に基づいて、前記少なくとも一つの無線電力供給装置を、無線電力供給装置リストのうちで、前記端末が選択するステップ」との訳語があるが、状態情報に対する基づき方は様々なものが考えられるため、どの様な基準で端末が選択するのか何ら開示が無く不明である。

(10)更に、請求項7に「前記端末を充電するステップは、前記無線電力供給装置リストに包含される前記無線電力供給装置のうち少なくとも一つを前記サーバが選択するステップをさらに有する」との訳語があるが、サーバが無線電力供給装置をどの様な基準で選択するのか何ら開示が無く不明である。」


4.拒絶の理由に対する当審の判断
(1)明細書【0006】に無線充電技術として、電磁誘導方式、共振(resonance)方式、及び電気エネルギーをマイクロ波に変換させて放射する電波放射(Radio Frequency(RF)/microwave radiation)方式の3種類が挙げられているが、本願発明は3種類の何れの方法をどの様に用いるのか不明である。例えば、電磁誘導方式の場合、伝送距離が短く、送電側と受電側のコイルの位置ズレの許容が厳しいから、通常充電器の筐体と被充電器(端末)の筐体は接触して定位置で給電されるが、無線電力供給装置に関する情報に対する要求、無線電力供給装置に関する情報とは、具体的にどの様なものか何ら開示が無く不明であり、請求項1には、「前記無線電力供給装置に関する情報は、領域に存在する少なくとも一つの前記無線電力供給装置を特定する無線電力供給装置のリストを示す情報を含み、前記領域は、前記端末が位置している領域である」とあるが、端末が位置している領域とはどの様な領域になるのか何ら開示が無く不明(電磁誘導方式無線電力供給装置の給電可能距離のこととすれば通常数mm程度であるから、日常生活において本願発明を用いる場合は実質的にゼロである。給電可能距離とは無関係であるとすると、どの様な基準に基づいて選択する領域であるのか開示が無い。)である。共振方式の場合、伝送距離が短く、送受信間で共振周波数のマッチングをとる必要があり、送受信コイル間の位置ズレで共振周波数が変化するが、無線電力供給装置に関する情報に対する要求、無線電力供給装置に関する情報とは、具体的にどの様なものか何ら開示が無く不明であり、請求項1の端末が位置している領域とはどの様な領域になるのか何ら開示が無く不明(共振方式無線電力供給装置の給電可能距離のこととすれば通常数mである。他の給電方式と給電可能距離が異なるが、どの様に領域を決定するのか開示が無い。給電可能距離とは無関係であるとすると、どの様な基準に基づいて選択する領域であるのか開示が無い。)である。
更に、請求項1の記載では、3種類の方式で第1の無線電力供給装置から同時に端末が電力を受信するものを排除していないが、どの様にして端末が電力を受電するのか何ら開示が無く不明である。

(2)明細書【0045】に「状態情報は、電子機器15の電力供給に対する許可を示す情報、電子機器15の電源の種類及び状態を示す情報、及び電子機器15の位置情報を全て含むことができる。その結果、選択された電子機器15は、他の電子機器に電力供給が許可された電子機器、安定に電力を供給する電源の種類及び状態を有する電子機器、及び/又は端末11に近接した電子機器であり得る。」とあるが、電子機器はどのタイミングで状態情報を発するのか不明(常時か定時毎かそれ以外か。)であり、又、電子機器の電力供給に対する許可を示す情報とはどの様な情報であるのか定義が不明(許可とは電子機器がどの様な状態のときにされ、どの様な状態のときにされないのか。端末を何ら選択することなしに許可を出しているが、何故許可する相手を選択しないのか。)であり、又、電子機器の電源の種類及び状態を示す情報とはどの様な情報であるのか定義が不明(電源の種類には、例えばリチウム電池、乾電池、太陽電池等の区分けも含まれるが、本願発明に何故これらが必要か不明。電源の状態には、使用回数、電源筐体汚染状態等も含まれるが、本願発明に何故これらが必要か不明。)であり、又、電子機器の位置情報とはどの様な情報であるのか定義が不明(仮に、電子機器の位置のみが判明しても、電子機器の電力供給部の向きが判明しなければ充電できない方式がある。)であり、又、当該記載は「状態情報は、電子機器15の電力供給に対する許可を示す情報、電子機器15の電源の種類及び状態を示す情報、及び電子機器15の位置情報を全て含むことができる」ことを示すだけであって、状態情報はこの3つのみではない(無線充電の方式が何故不要であるのか不明)ので、どの様な情報が状態情報であるのか定義が不明(そもそも状態情報とは一般的な用語ではないため構成が特定できない)であり、「全て含むことができる」ことと「全てを用いる」ことは意味が異なるから、本願発明の状態情報として必ず【0045】記載の3つの情報を用いるのか否か不明であり、又、状態情報として位置情報を取得することは記載されているが、無線による充電のための送信側受信側の結合の度合い(結合係数)を何ら考慮しておらず、単に送信側受信側が近くても結合係数がほぼゼロの場合、充電できず、何故結合の度合いを考慮しないのか不明(本願発明は、電磁誘導方式が含まれており、送受信側のコイルの向きを合わせる必要性、即ち結合係数を考慮する必要がある。)である。

(3)請求項1に「前記端末が、サーバに、無線電力供給装置に関する情報に対する要求を送信するステップであって、前記無線電力供給装置に関する情報は、領域に存在する少なくとも一つの前記無線電力供給装置を特定する無線電力供給装置のリストを示す情報を含み、前記領域は、前記端末が位置している領域である、ステップ」とあるが、無線電力供給装置に関する情報は位置に関する情報は含まれるが他の情報は特定されておらず、且つ請求項1の従属項である請求項8、9の記載から判断して、無線電力供給装置が端末に電力を供給することを許可するか否かを示す情報、無線電力供給装置の電源の種類及び状態を示す情報、及び無線電力供給装置の充電方式を要求しなかった場合、どの様にして電力を受信するのか不明であり、当該要求以外の無線電力供給装置に関する情報に対する要求も含まれることとなるが、どの様な要求が含まれるのか何ら記載が無く不明である。

(4)請求項1に「前記端末が、前記サーバから、前記サーバが前記端末からの前記要求に応じて生成した、前記無線電力供給装置に関する情報を受信するステップ」とあるが、サーバは無線電力供給装置に関する情報を無線電力供給装置から受信しておらず、サーバは何時の時点で入手した無線電力供給装置に関する情報を端末に送信するのか不明(電子機器等の無線電力供給装置は時々刻々移動するにもかかわず、無線電力供給装置の位置情報を常に入手していない。)であり、又、無線電力供給装置に関する情報とはどの様な情報であるのか定義が不明(例えば「サムスン製」、「重量0.5キロ」等も無線電力供給装置に関する情報であるが、充電には意味のない情報である。)であり、例えばメーカー、重量等の情報は何故充電に必要であるのか不明(【0045】に示される状態情報「電子機器15の電力供給に対する許可を示す情報、電子機器15の電源の種類及び状態を示す情報、及び電子機器15の位置情報」がなければ充電できない。図3、図7の様にサーバがデータベースに有しているものを用いれば、今現在の電子機器の情報を用いないこととなり、充電ができない。図10の様に電子機器に対して情報を要求するが必要がある。)である。

(5)請求項1に「前記端末が、前記第1の無線電力供給装置によって無線供給される電力によって前記端末を無線充電するステップ」とあって、端末がどの様な構成を備えるのか何ら開示が無いが、電磁誘導方式であれば近接配置が必要であり、共振方式であればコイル同士の向きを一致させることが必要であり、具体例にどの様にすれば無線電力供給装置である他人の電子機器が送電のために何らかの行為を行うことや、端末のユーザが無線電力供給装置が存在する位置近傍まで移動することを行うこと無く、無線で電力を供給できるのか不明であり、しかも、例えば電磁誘導方式で無線電力供給装置から受電するには、端末筐体を無線電力供給装置筐体に接触させなければ受電ができないが、全く見ず知らずの無線電力供給装置所有者に接近して端末を無線電力供給装置筐体に接触させなければならないこととなり、何故この様な行為を行うのか不明であり、又、端末が給電されるのは1つの第1の無線電力供給装置であるが、【0075】を参照すると、選択された第1の無線電力供給装置が充電方式を決定しており、このとき第1の無線電力供給装置は端末から充電方式についての情報を得ていないから、端末が対応できない充電方式を選択する場合があり、何故この様な選択を行うのか不明である。

(6)請求項1に「前記端末が、前記リストに含まれる少なくとも一つの前記無線電力供給装置の中から第1の無線電力供給装置を選択するステップ」とあるが、端末が無線電力供給装置をどの様な基準で選択するのか何ら開示が無く不明である。

(7)請求項3に「前記無線電力供給装置に関する情報は、前記サーバにより要求され、前記無線電力供給装置により確認され、前記無線電力供給装置から前記サーバに提供された状態情報に基づいて、前記サーバにより生成され、少なくとも一つの前記無線電力供給装置を包含する無線電力供給装置リストを含む」とあるが、状態情報とは一般的な用語ではなくどの様な情報が含まれ、どの様な情報が含まれないのか特定できず不明であり、サーバが要求するのは何時であるのか何ら特定されていないため、例えば2時間に毎に要求を行っても良いこととなるが、この場合移動可能な電子機器は既に当該場所に存在せず、何故任意のタイミングで要求を行うのか不明であり、「状態情報に基づいて」とあるが、基づき方は様々なものが考えられるため、状態情報をどの様に加工して無線電力供給装置に関する情報とするのか構成を特定できず不明であり、「少なくとも一つ」とあるから最低でも1つとなるが、無線電力供給装置の状態情報によっては無線電力供給装置リストに無線電力供給装置が無い(ゼロ)の場合が考えられ、何故必ず1つ含まれるのか不明であり、又、無線電力供給装置に関する情報と状態情報は具体的に何が異なるのか不明である。

(8)請求項4に「前記端末を充電するステップは、前記少なくとも一つの無線電力供給装置に無線充電のための電力に対する要求を前記端末が送信するステップを有する」とあるから、請求項4が引用する請求項3が引用する請求項1の方法は、無線電力供給装置に無線充電のための電力に対する要求を行わないものが含まれ、請求項1は無線電力供給装置が何ら要求なしに端末に対して電力を供給することとなり、何故この様な構成を採用するのか不明であり、しかも端末は無線充電を行う第1の無線電力供給装置に対して無線充電のための電力に対する要求を送信するのではなく、無線電力供給装置のリストに含まれる少なくとも一つの無線電力供給装置に無線充電のための電力に対する要求を送信しており、何故無線充電を行わない無線電力供給装置に対して要求を行うのか不明である。

(9)請求項6に「前記状態情報に基づいて、前記少なくとも一つの無線電力供給装置を、無線電力供給装置リストのうちで、前記端末が選択するステップ」とあるが、状態情報に対する基づき方は様々なものが考えられるため、状態情報からどの様な基準で端末が選択するのか何ら開示が無く不明であり、しかも、請求項6が引用する請求項4が引用する請求項3が引用する請求項1の方法は、端末を無線充電するステップの前に既に第1の無線電力供給装置を選択しており、何故再度無線電力供給装置の選択を行うのか不明である。

(10)請求項7に「前記端末を充電するステップは、前記無線電力供給装置リストに包含される前記無線電力供給装置のうち少なくとも一つを前記サーバが選択するステップをさらに有する」との訳語があるが、サーバが無線電力供給装置をどの様な基準で選択するのか何ら開示が無く不明であり、請求項7が引用する請求項4が引用する請求項3が引用する請求項1の方法は、端末を無線充電するステップの前に既に第1の無線電力供給装置を選択しており、何故再度サーバが無線電力供給装置の選択を行うのか不明である。

(11)したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-11の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


5.むすび
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-11の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-03 
結審通知日 2016-10-07 
審決日 2016-11-17 
出願番号 特願2012-558075(P2012-558075)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 誠治  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 通信ネットワークを用いる無線充電方法  
代理人 実広 信哉  

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