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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B62D
管理番号 1326904
審判番号 不服2015-21582  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-04 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2014-516197号「自動車のハンドル及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月27日国際公開、WO2012/175075、平成26年8月21日国内公表、特表2014-520028号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)6月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年6月22日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年12月20日 :翻訳文提出
平成27年2月20日付け :拒絶理由の通知
平成27年6月3日 :意見書の提出
平成27年7月31日付け :拒絶査定
平成27年12月4日 :審判請求書、誤訳訂正書、手続補正書の 提出
平成28年9月12日付け :拒絶理由の通知
平成28年12月12日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年3月6日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」とい う。)の通知
平成29年3月10日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成29年3月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項5に係る発明(拒絶査定時の請求項1に係る発明を補正した発明に対応する。以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項5】
基部と、
前記基部の外周を覆う少なくとも2つの条(18、20)を有する被覆(16)と、を有し、
少なくとも2つの条(18、20)の第1の自由端(22、24)は、前記基部に形成された第1の溝(28)内にしっかりと保持され、
前記少なくとも2つの条(18、20)の第2の自由端(32、34)は、前記基部に形成された第2の溝(36)内にしっかりと保持され、
前記第1の溝(28)内に保持された前記第1の自由端(22、24)は、ミシンによる機械縫合によって形成された装飾縫い目(44、46)を備え、
前記第1の溝(28)内に保持された前記第1の自由端(22、24)は、前記第1の溝(28)内に配置された少なくとも1つの装飾ブレード(26)にミシンによる機械縫合によって連結されている、ことを特徴とする自動車のハンドル。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
この出願の各請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記1?6の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
特に、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記1?2の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開2001-048025号
刊行物2:英国特許出願公告第980673号明細書
刊行物3:特開2010-244812号公報
刊行物4:特開2009-126448号公報
刊行物5:特開2010-070134号公報
刊行物6:実願平04-065374号(実開平06-021500号)のCD-ROM
(なお、刊行物2、刊行物6は上記のとおりであるが、原査定においては、前者は英国特許出願公開第980673号明細書、後者は、実願平04-065374号(実開平06-021500号)のマイクロフィルムと誤って記載されていた。)

刊行物1(特に、図4を参照。)には、2条のうち1条は革からなり、2条の部材からハンドルの外周を被覆し、溝にそれぞれの端部を挿入してハンドルを構成することが記載されている。通常ハンドルを革で被覆する場合においては、ハンドルの外周すべてを革で構成することは、よく知られている(例えば、刊行物2の第1欄第9-12行、Fig. 2、Fig. 4を参照。)。このため、刊行物1に記載された発明において、2条すべてを革で構成しようとすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物1の記載事項及び発明
ア 刊行物1の記載事項
刊行物1には、図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、少なくともリムを皮革または同等物からなる外皮で包んだ車両のハンドルに関する。」
(1b)「【0023】
【発明の実施の形態】図1に示したハンドル1は、カバー5を被せたエアバッグモジュールを備える中央ハブ4に、4個の短い分枝(ブランチ)3によって結合されるリム2を含み、リム2および分枝3は、皮革からなる外皮6によって包まれている。
【0024】図2から分かるように、リム2は、断面がU字形の金属心材(コア)7を含む。心材7は、ポリウレタンフォームからなる被覆(コーティング)8中に埋め込まれており、この被覆内に、径方向に配向された成形溝9が設けられる。外皮6の対向する2個の縁10、11は、2つとも溝9に係合され、外皮6は、被覆8に接着される。」
(1c)「【0026】溝9、従って縁10、11の面接合線12は、リム2の周囲全体に延び、各分枝3の被覆は、2個の追加溝を有する。」
(1d)「【0028】ハンドル1は、縁10が、線12の位置に配置される部片14の対応縁に代えられる分枝3の位置を除いて、溝9に2個の縁10、11を挿入することによって包まれる。」
(1e)「【0031】図3、図4に示されたハンドル1’は、一般にハンドル1と同じであるが、周囲溝9は、互いに平行な2個の周囲溝15、16に代えられており、外皮6は、外皮6’および異形材(プロファイル)17に代えられている。」
(1f)「【0033】異形材17は環状であって、比較的剛性の材料、ここではプラスチックからなり、図4から分かるように断面がU字形である。U字形の側面腕あるいは翼(aile laterale)18は、外皮6’の縁10’と共に溝15に係合され、他方の側面翼19は、外皮6’の縁11’と共に溝16に係合され、異形材20の中央翼は、溝15、16の間にまたがっており、接合線12’、21に沿った中央翼20の外面は、外皮6’の外面とほぼ同じ水準のところにある。」
イ 刊行物1の発明
以上の記載事項および図面の記載内容より、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の認定は、主に刊行物1の図3、図4に示された実施例に基づいている(上記(1e)、参照。)。
「中央ハブ4’に、4個の短い分枝(ブランチ)3’によって結合されるリム2’からなる車両のハンドルであって、
リム2’は、皮革からなる外皮6’および異形材17によって包まれており、
リム2’は、ポリウレタンフォームからなる被覆(コーティング)8’中に埋め込まれたU字形の金属心材(コア)7’を含み、
被覆8’内には径方向に配向された、互いに平行な2個の周囲溝15、16が設けられており、
異形材17の一方の翼18は、外皮6’の縁10’と共に周囲溝15に係合され、
異形材17の他方の翼19は、外皮6’の縁11’と共に周囲溝16に係合され、
ている車両のハンドル1’。」
(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「車両のハンドル1’」が自動車のハンドルとして用いられるのは明らかであるから、本願発明の「自動車のハンドル」に相当する。
イ 引用発明の「中央ハブ4’に、4個の短い分枝(ブランチ)3’によって結合されるリム2’」は自動車のハンドルといえる車両のハンドルの一部を成し、また、「ポリウレタンフォームからなる被覆(コーティング)8’中に埋め込まれたU字形の金属心材(コア)7’を含」むものである。よって、引用発明の「ポリウレタンフォームからなる被覆(コーティング)8’」と「ポリウレタンフォームからなる被覆(コーティング)8’中に埋め込まれたU字形の金属心材(コア)7’」とが、本願発明の「基部」に相当する。
ウ また、引用発明の「皮革からなる外皮6’および異形材17」は、はリム2’を包んでいる、すなわち、その外周を覆っているといえる。しかも、そのそれぞれ(外皮6’と異形材17のそれぞれ)の形状は、細長い筋状であるといえる(図3、4)から、条状であるといえる。よって、引用発明の「皮革からなる外皮6’および異形材17」は、本願発明の「前記基部の外周を覆う少なくとも2つの条」に相当し、引用発明の「リム2は、皮革からなる外皮6’および異形材17によって包まれて」いることは、本願発明の「前記基部の外周を覆う少なくとも2つの条を有する被覆と、を有」することに相当する。
エ 引用発明の「ポリウレタンフォームからなる被覆(コーティング)8’中に埋め込まれたU字形の金属心材(コア)7’」の「被覆8’内には径方向に配向された、互いに平行な2個の周囲溝15、16が設けられて」いるから、引用発明の「ポリウレタンフォームからなる被覆(コーティング)8’」と「ポリウレタンフォームからなる被覆(コーティング)8’中に埋め込まれたU字形の金属心材(コア)7’」には、周囲溝15、16が形成されているといえ、引用発明の「周囲溝15」および「周囲溝16」は、それぞれ本願発明の「基部に形成された第1の溝」および「基部に形成された第2の溝」に相当する。また、上記ウのように、引用発明の「皮革からなる外皮6’および異形材17」は、本願発明の「少なくとも2つの条」に相当し、異形材17の一方および他方の翼は、リムを包む前にはどこにも固定されない自由な端部であるといえるし、外皮6’の縁10’および11’も同様の理由で自由な端部であるといえる。よって、引用発明の「異形材17の一方の翼18」と「外皮6’の縁10’」は、本願発明の「少なくとも2つの条の第1の自由端」に相当し、引用発明の「異形材17の他方の翼19」と「外皮6’の縁11’」は、本願発明の「前記少なくとも2つの条の第2の自由端」に相当する。そして、機能的にみて、引用発明の「異形材17の一方の翼18」と「外皮6’の縁10’」が「周囲溝15」内にしっかりと保持されなければならないことは当業者には明らかであり、引用発明の「異形材17の他方の翼19」と「外皮6’の縁11’」と「周囲溝16」に対する関係についても同様である。よって、引用発明の「異形材17の一方の翼18は、外皮6’の縁10’と共に周囲溝15に係合され」ることは、本願発明の「少なくとも2つの条(18、20)の第1の自由端(22、24)は、前記基部に形成された第1の溝(28)内にしっかりと保持され」ることに相当し、引用発明の「異形材17の他方の翼19は、外皮6’の縁11’と共に周囲溝16に係合され」ることは、本願発明の「前記少なくとも2つの条(18、20)の第2の自由端(32、34)は、前記基部に形成された第2の溝(36)内にしっかりと保持され」ることに相当する。
オ 以上ア?エより、本願発明と引用発明の一致点および相違点は次のとおりである。
<一致点>
「基部と、
前記基部の外周を覆う少なくとも2つの条を有する被覆と、を有し、
少なくとも2つの条の第1の自由端は、前記基部に形成された第1の溝内にしっかりと保持され、
前記少なくとも2つの条の第2の自由端は、前記基部に形成された第2の溝内にしっかりと保持され、
ている自動車のハンドル。」
<相違点1>
本願発明の「第1の溝内に保持された前記第1の自由端は、ミシンによる機械縫合によって形成された装飾縫い目を備え」ているものであるのに対し、引用発明はそのような構成(装飾縫い目)を備えていない点。
<相違点2>
本願発明の「第1の溝内に保持された前記第1の自由端は、前記第1の溝内に配置された少なくとも1つの装飾ブレードにミシンによる機械縫合によって連結されている」ているものであるのに対し、引用発明の「異形材17の一方の翼18」と「外皮6’の縁10’」は、装飾ブレードにミシンによる機械縫合によって連結されていない点。
(3)判断
ア 事案に鑑み、相違点2について検討する。
刊行物2には自動車のハンドルに関し、図4と共に次の記載がある(当審訳)。
「外包35(図4)の上部35’’及び下部35’には、それぞれ、外側及び内側に平行な溝41、43が形成されている。溝41、43の側面は、ステアリングコラム40の軸42と平行に延びている。カバー部36の折り曲げ縁部36’とカバー部37の折り曲げ縁部37’とが接着剤によって押圧、固定されている溝41は、カバー34の近傍まで延びている。 カバー部36の折り曲げ縁部36’’とカバー部37の折り曲げ縁部37’’とが同様に固定された溝43は、円38まで延びている。溝41、43は、縁部36’、37’と36’’、37’’によって完全に充填されている。内部カバー部分37はまた、リム32をスポーク31に接合する部分33を覆い、その目的のために、部分37は、33の領域で適切に成形される。」(公報第2ページ第71?90行)
以上のように、刊行物2には、刊行物1と同様に、本願発明の「基部と、前記基部の外周を覆う少なくとも2つの条を有する被覆と、を有し、少なくとも2つの条の第1の自由端は、前記基部に形成された第1の溝内にしっかりと保持され、前記少なくとも2つの条の第2の自由端は、前記基部に形成された第2の溝内にしっかりと保持され、ている自動車のハンドル」に相当する技術的事項が記載されているものの、そのカバー部36の折り曲げ縁部36’あるいは36’’とカバー部37の折り曲げ縁部37’あるいは37’’とが、溝41あるいは43内に配置された少なくとも1つの装飾ブレードにミシンによる機械結合によって連結されているという技術的事項については、記載も示唆もされていない。
よって、刊行物2に記載の上記技術的事項を参考にして、相違点2に係る本願発明の構成に想到することは当業者といえど容易になし得ない。
したがって、本願発明は、相違点1について検討するまでもなく、当業者が引用発明および刊行物2に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ また、本願の請求項1に係る発明は、本願発明を製造する製造方法の発明であり、上記アでの説示と同様の理由により当業者が引用発明および刊行物2に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。さらに、請求項2?4に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項4の「該泡体(14)」が不明りょうである。

2.当審拒絶理由の判断
平成29年3月10日にされた手続補正により、請求項4は、「前記基部は、剛性材料の発泡体(14)で包まれた金属製の担体(12)を含み、該発泡体(14)には前記第1及び第2の溝(28、36)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車のハンドルの製造方法。」と補正された(下線は補正箇所で、当審で付した。)。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由および当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-12 
出願番号 特願2014-516197(P2014-516197)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B62D)
P 1 8・ 537- WY (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳元 八大杉▲崎▼ 覚  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 尾崎 和寛
一ノ瀬 覚
発明の名称 自動車のハンドル及びその製造方法  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 中村 英子  
代理人 西尾 美良  
代理人 梶 俊和  

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