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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1326928
異議申立番号 異議2015-700320  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-17 
確定日 2017-02-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5737877号発明「酸性染毛料組成物及びそれを用いた染毛方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5737877号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第5737877号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5737877号に係る発明は、平成22年7月9日に特許出願され、平成27年5月1日にその特許権の設定登録がなされ、平成27年12月17日に特許異議申立人 山下桂(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。
平成28年 2月10日付け:取消理由の通知
同年 5月 9日 :訂正の請求、意見書の提出
同年 6月 1日付け:訂正拒絶理由の通知
同年 7月 6日 :意見書の提出
同年 7月22日付け:取消理由(決定の予告)の通知
同年 9月23日 :訂正の請求、意見書の提出
同年12月16日 :特許異議申立人による意見書の提出

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正前後の記載
本件訂正請求は、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-7について訂正することを求めるものであるところ、一群の請求項〔1-7〕ごとに請求するものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合して請求されたものである。

(2)訂正の内容
平成28年9月23日に提出された本件訂正請求(以下、「本件請求」という。)による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。
ア 特許請求の範囲【請求項1】の「下記の成分(A)?(C)を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、染毛後の毛髪のpHが5.5?6であることを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%。
(C)酸性染料。」を、
「下記の成分(A)?(C)を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%。
(C)酸性染料。」に訂正する。
イ 明細書【0007】の「上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の酸性染毛料組成物は、(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%、(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、染毛後の毛髪のpHが5.5?6であることを特徴とする。」を、
「上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の酸性染毛料組成物は、(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%、(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする。」に訂正する。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項アのうち「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」点(以下、「訂正事項ア1」という。)について検討する。
訂正事項ア1は、染毛前のpHを特定することによる、その明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
そして、本件明細書には「酸性染毛料組成物のpHは、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6である。酸性染毛料組成物のpHをかかる範囲内に規定することにより、染毛後の毛髪内部のpHを本来の毛髪のpHである弱酸性領域、つまり5.5?6の範囲に維持することができる。」(【0024】 注:下線は当審が付した。)、「表1,2に示される各成分を混合して各実施例及び比較例の酸性染毛料組成物を調製した。得られた酸性染毛料組成物を白髪混じりの人毛毛束に刷毛を用いて塗布し、40℃で20分放置した後、通常のシャンプーにて洗浄し、次いで乾燥させることにより染毛処理毛束とした。かかる染毛処理毛束について、染毛処理後の毛髪内部のpH及び毛髪の感触について評価を行った。」(【0060】)と記載されており、また、【表1】には、染毛後の毛髪内部のpHとして5.6?5.9の値が記載されている。これらの記載から、酸性染毛料組成物による処理前の毛髪のpH、すなわち本来の毛髪のpHは5.5?6の範囲にあり、処理後の毛髪のpHは5.6?5.9、すなわち5.5?6の範囲にあるものといえる。そうすると、訂正事項ア1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
このため、訂正事項ア1は、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

イ 訂正事項アのうち「(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)」点(以下、「訂正事項ア2」という。)について検討する。
訂正事項ア2は、請求項1に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項1に係る発明に包含される一部の事項のみを除外するものである。そして、この除外された後の請求項1は、新たな技術的事項を導入するものではない。そして、訂正事項ア2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
このため、訂正事項ア2は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 訂正事項イについて検討する。
訂正事項イは、訂正事項アに対応する明細書の当該箇所を、訂正事項アと同様に訂正するものである。
このため、訂正事項イは、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 訂正事項ア及びイは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、本件請求による訂正を認める。

3 本件発明
本件請求により訂正された訂正請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
【請求項1】
「下記の成分(A)?(C)を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%。
(C)酸性染料。」
【請求項2】
「前記有機酸は、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の酸性染毛料組成物。」
【請求項3】
「前記酸性染毛料組成物中における前記(B)緩衝剤の含有量に対する前記(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比は、1?750であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸性染毛料組成物。」
【請求項4】
「請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物を用いた染毛方法において、
前記酸性染毛料組成物で染毛処理した後、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理することを特徴とする染毛方法。」
【請求項5】
「前記酸化染毛剤は、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが7?9.5であることを特徴とする請求項4に記載の染毛方法。」
【請求項6】
「請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物を用いた染毛方法において、
酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、前記酸性染毛料組成物で染毛処理することを特徴とする染毛方法。」
【請求項7】
「前記酸化染毛剤は、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが7?9.5であることを特徴とする請求項6に記載の染毛方法。」

4 取消理由についての判断
(1)取消理由通知の概要
当審は平成28年7月22日付け取消理由(決定の予告)において、平成28年5月9日に提出された訂正請求書による訂正は認められない旨を通知し、併せて概要以下のとおりの取消理由を通知した。
「本件発明1?7の特許は、特許法第36条第6項第2号、同条同項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであり、本件発明1?3の特許は、刊行物1に記載された発明であり同法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
刊行物1:特開2000-344639号公報(甲第1号証)」

(2)取消理由(特許法第36条第6項第2号)についての当審の判断
上記2(2)アで検討したとおり、「染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」との規定が「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」と訂正されたことにより、染毛前の毛髪のpHが明らかとなった。
そうすると、本件発明1?3、及びこれらのいずれかを引用する本件発明4?7は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものといえる。

(3)取消理由(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断
本件発明1?3は、係る酸性染毛料組成物において、「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」(以下、「訂正特定事項」ということがある。)と特定されたものであるから、訂正特定事項以外の特定事項に関わらず、訂正特定事項が明らかなものである。そして、試験例1?3で使用されている実施例17の酸性染毛料組成物について、本件発明1?3によって、当業者が本件発明1?3の解決しようとする課題である、「酸性染料を含有する酸性染毛料組成物において、毛髪のpH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる酸性染毛料組成物を提供すること」(【0006】)を解決すると認識することができるものといえるから、本件発明の詳細な説明の記載から、本件発明1によって、当業者が上記課題を解決できると認識できるものといえる。
そうすると、本件発明1?3、及びこれらのいずれかを引用する本件発明4?7は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものといえる。

(4)取消理由(特許法第36条第4項第1号)についての当審の判断
上記(3)で検討したとおり、本件発明1?3は、係る酸性染毛料組成物において、訂正特定事項のとおり特定されたものであるから、訂正特定事項以外の特定事項に関わらず、訂正特定事項が明らかなものである。
そうすると、当業者が本件発明1?7を実施するのには過度の試行錯誤を要するとはいえない。
よって、本件の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものといえる。

(5)取消理由(特許法第29条第1項第3号)についての当審の判断
ア 甲第1号証(刊行物1)に記載された事項
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)下記一般式(1)で示される芳香族アルコール類及びn-ブタノールから選ばれる少なくとも1種以上である染毛助剤と、(B)酸性染料と、(C)水とを含有し、pHが2.0?4.5であることを特徴とする濡れ髪用酸性染毛料。
【化1】

(式中、R^(1)は水素原子、メチル基又はメトキシ基を示し、Xは単結合又は炭素数1?3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基もしくはアルケニレン基を示し、Yは水素原子又は水酸基を示し、m及びnは各々0?5の整数である。)

【請求項4】 (D)である(A)の溶剤がエタノールである請求項2又は3に記載の濡れ髪用酸性染毛料。
【請求項5】 (A)染毛助剤が、ベンジルアルコール、2-ベンジルオキシエタノール、n-ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である請求項4に記載の濡れ髪用酸性染毛料。
…」

(イ)「【0019】本発明に用いられる酸性染料としてはタール系色素が用いられ、化学構造から大別すると、ニトロ染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料が挙げられ、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色227号、赤色220号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色402号、黄色402号、黄色403号、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、黒色401号が挙げられる。酸性色素の本発明に係る染毛剤への配合量は0.2?2.0質量%が望ましい。尚、これら酸性染料は1種又は2種以上を混合して用いることができる」

(ウ)「【0023】本発明に係る濡れ髪用酸性染毛料は酸性であることが主に染毛性の点から必要である。特に、望ましくは、そのままで、又は酸及び必要に応じてその塩類を用いてpHを2.0?4.5に調整することが染毛性の点から必要である。その際、使用される酸としては、クエン酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、リンゴ酸、酪酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸又は、塩酸、リン酸等の無機酸の1種もしくは2種以上を任意に用いることができ、更に、必要に応じてそれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等の塩類を用いることができる。そして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のアルカリ一種もしくは二種以上を任意に用いることでpHを調整することもできる。それら酸及びその塩類の本発明に係る染毛剤の配合量は、刺激等の面より10.0質量%以下が望ましい。
【0024】pHを調整する際には、弱酸とその塩との組み合わせのような公知の緩衝剤を用いると良い。その時には、頭髪への塗布等によるpH変動を極力抑止するためにも緩衝能は一定値(例えば、0.01グラム当量/l)以上とすることが望ましい。」

(エ)「【0025】本発明の濡れ髪用酸性染毛料には、更に水溶性高分子を配合することができる。水溶性高分子は、染毛剤に粘性を与えることにより、染毛剤を毛髪に塗布し易くするとともに、使用時に染毛剤が皮膚等に垂れ落ちないようにすることを目的として配合されるものであり、その目的を達成する範囲で特に限定されるものではなく、水溶性高分子全般を用いることができるが、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース系高分子、キサンタンガム、グアーガム等の天然多糖類を挙げることができる。更に、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等のアクリル系共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子も挙げられ、これらの中から任意に選択される。また2種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性高分子の本発明に係る濡れ髪用酸性染毛料への配合量は0.1?10.0質量%が望ましい。」

(オ)「【0039】
実施例10(ヘアマニキュア)
配合成分 配合量(質量%)
ベンジルアルコール 8.0
フェノキシエタノール 1.0
ジプロピレングリコール 5.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 1.0
(PEMULEN TR-1)
キサンタンガム 1.2
高重合メチルポリシロキサン 0.2
(5,000,000cs)
高重合メチルポリシロキサン 0.5
(100,000cs)
軽質流動パラフィン 5.0
エデト酸二ナトリウム 0.02
エタノール 24.0
クエン酸 1.0
トリエタノールアミン 適量
赤色504号 0.25
橙色205号 0.05
精製水 バランス
【0040】常法により、上記組成の濡れ髪用酸性染毛料であるヘアマニキュアを調製し(pH4.0)、頭髪を予め水で濡らした後、この染毛剤を塗布し、室温(30℃)で20分間放置後洗い流し、頭髪を乾燥して染毛性及び皮膚染着性を評価した結果、いずれの特性も優れていた。」

(カ)「【0053】
実施例17(ヘアマニキュア)
配合成分 配合量(質量%)
ベンジルアルコール 8.0
n-ブタノール 1.0
ジプロピレングリコール 5.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 1.0
(PEMULEN TR-1)
キサンタンガム 1.2
高重合メチルポリシロキサン 0.2
(20,000,000cs)
メチルポリシロキサン 2.0
(20cs)
軽質流動イソパラフィン 5.0
エデト酸二ナトリウム 0.02
エタノール 24.0
乳酸 1.0
水酸化ナトリウム 適量
シリル化加水分解ケラチン 0.05
シリル化加水分解シルク 0.05
加水分解コンキオリン 0.05
ハマメリスエキス 0.05
アロエエキス 0.05
モモ葉エキス 0.05
赤色227号 0.05
黄色4号 0.15
精製水 バランス
【0054】常法により、上記組成の濡れ髪用酸性染毛料であるヘアマニキュアを調製し(pH4.0)、頭髪を予め水で濡らした後、この染毛剤を塗布し、室温(30℃)で20分間放置後洗い流し、頭髪を乾燥して染毛性及び皮膚染着性を評価した結果、いずれの特性も優れていた。」

イ 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、濡れ髪用酸性染毛料(上記ア(ア))の実施例10(上記ア(オ))として、「ベンジルアルコール 8.0、フェノキシエタノール 1.0、ジプロピレングリコール 5.0、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(PEMULEN TR-1) 1.0、キサンタンガム 1.2、高重合メチルポリシロキサン(5,000,000cs) 0.2、高重合メチルポリシロキサン(100,000cs) 0.5、軽質流動パラフィン 5.0、エデト酸二ナトリウム 0.02、エタノール 24.0、クエン酸 1.0、トリエタノールアミン 適量、赤色504号 0.25、橙色205号 0.05、精製水 バランスからなり、pH4.0であるヘアマニュキュア」の発明(以下、「引用発明1A」という。)が記載されている。(各成分の配合量は質量%である。)
また、刊行物1には、濡れ髪用酸性染毛料(上記ア(ア))の実施例17(上記ア(カ))として、「ベンジルアルコール 8.0、n-ブタノール 1.0、ジプロピレングリコール 5.0、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(PEMULEN TR-1) 1.0、キサンタンガム 1.2、高重合メチルポリシロキサン(20,000,000cs) 0.2、メチルポリシロキサン(20cs) 2.0、軽質流動イソパラフィン 5.0、エデト酸二ナトリウム 0.02、エタノール 24.0、乳酸 1.0、水酸化ナトリウム 適量、シリル化加水分解ケラチン 0.05、シリル化加水分解シルク 0.05、加水分解コンキオリン 0.05、ハマメリスエキス 0.05、アロエエキス 0.05、モモ葉エキス 0.05、赤色227号 0.05、黄色4号 0.15、精製水 バランスからなり、pH4.0であるヘアマニュキュア」の発明(以下、「引用発明1B」という。)も記載されている。(各成分の配合量は質量%である。)

ウ 引用発明1Aに基づく対比・判断
(ア)本件発明1と引用発明1Aとを対比する。
引用発明1Aの「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(PEMULEN TR-1)」及び「キサンタンガム」(合計2.2質量%)が、いずれも水溶性高分子として配合されていること(上記ア(エ))、「PEMULEN TR-1」はアニオン性合成高分子であるのは技術常識であること、及び、本件明細書【0015】でイオン性水溶性高分子としてキサンタンガムが例示されていることからみて、本件発明1の「(A)イオン性水溶性高分子」(「1.5?4.5質量%」)に相当する。
そして、引用発明1Aが、「ベンジルアルコール」、「フェノキシエタノール」、「ジプロピレングリコール」「高重合メチルポリシロキサン(5,000,000cs)」、「高重合メチルポリシロキサン(100,000cs)」、「軽質流動パラフィン」、「エデト酸二ナトリウム」、「エタノール」、「精製水」を含有することは、本件発明1が成分(A)?(C)以外の浸透促進剤、有機溶剤などの種々の成分を含有してもよいものであることからみて(本件明細書【0014】、【0022】?【0038】)、本件発明1との相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と引用発明1Aとは以下の一致点、相違点を有する。
一致点:
「下記の成分(A)を含有することを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%。」
相違点:
a 前者の酸性染毛料組成物は「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり」、かつ、「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」のに対し、後者の酸性染毛料は「pH4.0」であり、染毛処理前後の毛髪のpHが明らかでない点。
b 前者の酸性染毛料組成物は「(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%」含有するのに対し、後者の酸性染毛料は「クエン酸 1.0、トリエタノールアミン 適量」含有するものである点。
c 「(C)酸性染料」において、前者の酸性染毛料組成物は「(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)」ものであるのに対し、後者の酸性染毛料は「赤色504号」及び「橙色205号」を用いている点。

(イ)上記相違点について検討する。
相違点aに関し、引用発明1Aの酸性染毛料のpHは4.0であるところ、これが10質量%水溶液のpHにおいて「4?6」であるかは明らかでない。仮にそうであるとしても、引用発明1Aに係る酸性染毛料が「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」ことを満たすものとなるかは明らかでない。
このため、本件発明1は引用発明1Aと同一であるということはできない。

エ 引用発明1Bに基づく対比・判断
(ア)本件発明1と引用発明1Bとを対比する。
引用発明1Bの「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(PEMULEN TR-1)」及び「キサンタンガム」(合計2.2質量%)が、いずれも水溶性高分子として配合されていること(上記ア(エ))、「PEMULEN TR-1」はアニオン性合成高分子であるのは技術常識であること、及び、本件明細書【0015】でイオン性水溶性高分子としてキサンタンガムが例示されていることからみて、本件発明1の「(A)イオン性水溶性高分子」(「1.5?4.5質量%」)に相当する。
引用発明1Bの「赤色227号」及び「黄色4号」は、本件発明1の「(C)酸性染料」に相当する。
そして、引用発明1Bが、「ベンジルアルコール」、「n-ブタノール」、「ジプロピレングリコール」、「高重合メチルポリシロキサン(20,000,000cs)」、「メチルポリシロキサン(20cs)」、「軽質流動イソパラフィン」、「エデト酸二ナトリウム」、「エタノール」、「シリル化加水分解ケラチン」、「シリル化加水分解シルク」、「加水分解コンキオリン」、「ハマメリスエキス」、「精製水」を含有することは、本件発明1が成分(A)?(C)以外の浸透促進剤、有機溶剤、植物抽出物などの種々の成分を含有してもよいものであることからみて(本件明細書【0014】、【0022】?【0038】)、本件発明1との相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と引用発明1Bとは以下の一致点、相違点を有する。
一致点:
「下記の成分(A)、(C)を含有することを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%。
(C)酸性染料。」
相違点:
a 前者の酸性染毛料組成物は「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり」、かつ、「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」のに対し、後者の酸性染毛料は「pH4.0」であり、染毛処理前後の毛髪のpHが明らかでない点。
b 前者の酸性染毛料組成物は「(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%」含有するのに対し、後者の酸性染毛料は「乳酸 1.0、水酸化ナトリウム 適量」含有するものである点。
c 前者の酸性染毛料組成物は「(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)」ものであるのに対し、後者の酸性染毛料組成物はアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している点。

(イ)上記相違点に関し、上記ウ(イ)で検討したことと同様、本件発明1は引用発明1Bと同一であるということはできない。

オ 甲第1号証全体に基づく判断
甲第1号証からは、係る酸性染毛料が「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」と解しうるような記載ないし示唆を見いだすことができない。
このため、本件発明1は甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」ということがある。)と同一であるいうことはできない。
さらに、本件発明2?3は、本件発明1を引用して、さらに規定を加えたものであることに鑑みると、同様に甲1発明と同一であるということはできない。

カ 小括
よって、本件発明1?3は、甲第1号証をもって、特許法第29条第1項第3号に該当する発明とはいえない。

5 異議申立ての理由についての検討
申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
(理由1:本件発明1?7)
請求項1の「染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」との規定に関し、pHとは、水溶液中の水素イオン濃度を表すものであり、「毛髪のpH」とは、発明が不明確である。仮に、「毛髪のpH」が毛髪の抽出液のpHを表すとしても、染毛条件、係る抽出液の作製条件、pHの測定条件等が請求項1に具体的に記載されておらず、発明の内容が不明確である。(以上、「理由1a」という。)
また、「染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」とは、酸性染毛料組成物の構成を規定するものであるのか、又は、染毛に供される毛髪の構成を規定するものであるのか理解できず、発明が不明確である。(以上、「理由1b」という。)
(理由2:本件発明1?7)
本件明細書【0060】、【0063】には、「毛髪のpH」について、特定の条件で測定した実施例のみが記載されている。しかし、上述のとおり、請求項1には、染毛条件、係る抽出液の作製条件、pHの測定条件等が具体的に記載されていない。このため、本件発明の詳細な説明に開示された内容を、本件発明1の範囲まで拡張ないし一般化できない。(以上、「理由2a」という。)
また、仮に、「染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」が、染毛に供される毛髪の構成を規定するものであれば、染毛に供される毛髪をどのような構成とすれば「染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」ようにすることができるのかを発明の詳細な説明の記載から把握することができない。(以上、「理由2b」という。)
仮に、「染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」が、酸性染毛料組成物の構成を規定するものであって、酸性染毛料組成物その物自体を意味しているのではないとすれば、本件実施例のみから、他にどのようにすれば「染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」酸性染毛料組成物が得られるのかを発明の詳細な説明の記載から把握することができない。(以上、「理由2c」という。)
比較例7の酸性染毛料組成物のpHは3.5、すなわち有効数字1桁ではpH4であり、該組成物は、本件発明1の全ての構成を備えている。しかし、比較例7は、本件発明の効果が得られておらず、本件発明1は、発明の効果を奏さない態様を含むものである。(以上、「理由2d」という。)
(理由3:本件発明1?3)
本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由3a」という。)
本件発明1?3は、甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由3b」という。)
(理由4:本件発明1?7)
本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由4a」という。)
本件発明1?3は、甲第2号証に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由4b」という。)
本件発明4?7は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証の記載及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由4c」という。)
本件発明4?7は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証の記載及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由4d」という。)
<証拠方法>
甲第1号証:特開2000-344639号公報
甲第2号証:特開平7-101841号公報
甲第3号証:特開2005-170838号公報
甲第4号証:特開2003-95896号公報
甲第5号証:特開2002-173418号公報
甲第6号証:特開2002-97121号公報

(1)理由1b、2b、2c、3aについて
理由1b、2b、2c、3aについては、上記4において検討したとおり、これらの理由によって本件発明1?7の特許を取り消すことはできない。

(2)理由1a、2aについて
「毛髪のpH」に関し、申立人が主張するとおり、本件明細書【0063】には特定の条件で測定した実施例が記載されている。そうであれば、本件発明でいう「毛髪のpH」とは係る実施例において記載されたものと解するのが相当である。このため、「毛髪のpH」との規定をもって、発明の内容が不明確であるとはいえず、本件発明の詳細な説明に開示された内容を、本件発明1の範囲まで拡張ないし一般化できないものとはいえず、これらの理由によって本件発明1?7の特許を取り消すことはできない。

(3)理由2dについて
申立人が主張するとおり、pH3.5は有効数字1桁ではpH4となる。しかし、請求項1の「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6」との規定におけるpH「4」とは、例えば、実施例6、11、12、14を参酌すると、「4.0」を意味するものと解するのが相当である。このため、本件発明1は、発明の効果を奏さない態様を含むものとはいえず、この理由によって本件発明1?7の特許を取り消すことはできない。

(4)理由3bについて
ア 甲第2号証に記載された事項(注:○囲みの数字の標記は、例えば「○1」のように示した。)
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)カルボキシビニルポリマーと、(2)エチルアルコール,ブチルアルコール,シクロヘキサノール,ベンジルアルコール,フェノキシエタノールの一価アルコール、及び多価アルコールの中から選ばれる一種もしくは二種以上のアルコール類と、(3)染料とを含有することを特徴とする頭髪用酸性染毛料組成物。

【請求項4】 カルボキシビニルポリマーの含有量が0.5?15重量%である請求項1記載の頭髪用酸性染毛料組成物。
…」

(イ)「【0004】本発明に用いられるカルボキシビニルポリマーとしては、例えば、カーボポール934、940、941(いずれもグッドリツチ社製商品名)、ハイビスワコー104、105(いずれも和光純薬株式会社製商品名)等が挙げられ、その含有量は0.5?15重量%であり、好ましくは1.0?10重量%である。0.5重量%未満では適度な粘度を付与することができず、また、15重量%を超える場合には、流動性、毛髪へのなじみの点であまり良い効果が得られない。」

(ウ)「【0013】(5)シリコーン類
○1
【0014】
【化1】(CH_(3))_(3)SiO[(CH_(3))_(2)SiO]_(n)Si(CH_(3))_(3)
(nは、3?650の整数)
で表されるジメチルポリシロキサン。

○9
【0023】
【化13】

(式中、R_(1)はメチル基または一部がフェニル基を表し、R_(2)はメチル基または水酸基を表す。また、nは3,000?20,000の整数を表す。)で表される高分子シリコーン。」

(エ)「【0043】本発明の頭髪用酸性染毛料組成物に含まれるものとしては、この他に、酸性染料およびpH調整用の酸、場合によってはアルカリ剤が挙げられる。以下、これらの構成物質について説明する。
【0044】本発明で使用される染料は人体に対して有害な作用を示さない医薬品、医薬部外品および化粧品の着色に使用することが許可されている「医薬品等に使用する事の出来るタール色を定める省令」に掲示されている法定色素が極めて有効で、その配合量は0.001?2.0重量%が望ましい。また、本発明の組成物をリンス兼用の染毛料組成物として使用する場合には、0.001?0.2重量%が適当である。
【0045】本発明で使用されるpH調整用の酸としては、クエン酸,リンゴ酸,酢酸,乳酸,蓚酸,酒石酸,ギ酸,レブリン酸等の有機酸、リン酸,塩酸等の無機酸がある。また、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ剤、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノプロパノール等の有機アルカリ剤、アルギニン等の塩基性のアミノ酸がある。配合量は組成物のpHを1.5?4.5になるように配合する。
【0046】また、本発明の染毛料組成物は、本発明の効果を損わない質的、量的範囲内でカルボキシビニルポリマー以外の他の増粘剤も用いることができる。本発明で用いられる他の増粘剤としては、アラビアガム,カラギーナン,カラヤガム,トラガカントガム,キャロブガム,クインスシード(マルメロ),カゼイン,デキストリン,ゼラチン,ペクチン酸ナトリウム,アルギン酸ナトリウム,メチルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース(CMC),ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,PVA,PVM,PVP,ポリアクリル酸ナトリウム,ローカストビーンガム,グアーガム,タマリントガム,ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース,キサンタンガム,ケイ酸アルミニウムマグネシウム,ベントナイト等が挙げられる。」

(オ)「【0062】実施例6
黒色-401号 0.2(重量%)
紫色-401号 0.3
黄色-4号 0.1
ベンジルアルコール 5.0
N-メチルピロリドン 2.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 2.5
ジメチルポリシロキサン 0.5
(前記(5)の○9で示した高分子シリコーンの一般式で、R_(1)およびR_(2)はメチル基、n=10,000)
グリセリン 0.5
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油エステル 1.0
カルボキシビニルポリマー 3.5
クエン酸 適量
キレート剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
製法
精製水にN-メチルピロリドンとベンジルアルコールを加え、この中にオクタメチルシクロテトラシロキサンにジメチルシロキサンを溶解し、グリセリンとポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油エステルの混合物に加えて乳化したものを加える。次いでクエン酸及びキレート剤を加え、この中にカルボキシビニルポリマーを徐々に添加し粘稠液を調製する。この粘稠液に染料の黒色401号、紫色401号、黄色4号を加え、pH3.8?4.1に調整し均一な粘稠液を得た。
【0063】
実施例7(カラーリンスタイプの染毛料)
黒色-401号 0.02(重量%)
紫色-401号 0.03
黄色-4号 0.01
ベンジルアルコール 3.0
N-メチルピロリドン 1.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 3.0
ジメチルポリシロキサン 0.6
(前記(5)の○9で示した高分子シリコーンの一般式で、R_(1)およびR_(2)はメチル基)
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油エステル 0.7
1,3ブチレングリコール 15.0
クエン酸 0.6
カルボキシビニルポリマー 2.0
精製水 残部
合計 100.0
製法
上記の配合量で実施例6と同様にして均一な粘稠液を得た。

【0065】
実施例9(カラーリンスタイプの染毛料)
配合
黒色-401号 0.02(重量%)
紫色-401号 0.03
黄色-4号 0.01
ベンジルアルコール 3.0
ジメチルポリシロキサン 0.5
(前記(5)の○9で示した高分子シリコーンの一般式で、R_(1)およびR_(2)はメチル基)
ジメチルポリシロキサン 2.0
(前記(5)の○1で示したジメチルポリシロキサンの一般式で、n=20)
ポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテル 1.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
クエン酸 0.7
カルボキシビニルポリマー 2.0
アルギン酸ソーダ 1.0
精製水 残部
合計 100.0
製法
上記の配合量で実施例6と同様にして調製し、均一な粘稠液を得た。
【0066】上記実施例6?9は、いずれも耐洗浄性、毛髪への付着性やなじみ、使用感、染着性に優れた染毛料組成物であった。」

イ 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、カルボキシビニルポリマー0.5?15重量%(上記ア(ア)、(イ)、(エ)、(オ))、組成物のpHを1.5?4.5になる配合量のpH調整用の有機酸又は無機酸(上記ア(エ)、(オ))、酸性染料(上記ア(ア)、(エ)、(オ))を含有する頭髪用酸性染毛料組成物が記載されている。
そうすると、甲第2号証には、次の甲2発明が記載されている。
「下記の成分(A)?(C)を含有し、頭髪用酸性染毛料組成物のpHが1.5?4.5であることを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)カルボキシビニルポリマー0.5?15重量%。
(B)有機酸及び無機酸から選ばれる少なくとも一種として構成されるpH調整用の酸。
(C)酸性染料。」

ウ 本件発明1と甲2発明との対比・判断
(ア)本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明のカルボキシビニルポリマーは、本件発明1のイオン性水溶性高分子化合物に相当し、該カルボキシビニルポリマーは、実施例では2.0重量%あるいは3.5重量%使用されている。
甲2発明のpH調整用の酸は、本件発明1の緩衝剤に相当し、該pH調整用の酸は、実施例7、9ではクエン酸が0.6重量%あるいは0.7重量%使用されている。加えて、実施例6の頭髪用酸性染毛料組成物のpHは3.8?4.1に調整されている。
酸性染料において、本件発明1は赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除くものであるが、例えば甲2発明の実施例は、赤色504号及び橙色205号のみからなる場合ではない。
配合量の単位において、本件発明1は質量%、甲2発明は重量%で標記されているが、これらの文言の間に技術的な差異は見いだせない。
そして、本件発明1は酸性染毛料組成物、甲2発明は頭髪用酸性染毛料組成物に、それぞれ係るものであるが、これらの文言の間に技術的な差異は見いだせない。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは以下の一致点、相違点を有する。
一致点:
「下記の成分(A)?(C)を含有し、(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%。
(C)酸性染料。」
相違点:
a 本件発明1は、「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」のに対し、甲2発明は「頭髪用酸性染毛料組成物のpHが1.5?4.5である」とされ、係る組成物において「10質量%水溶液のpH」や「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」ことが明らかでない点。

(イ)上記相違点aについて検討する。
甲2発明の頭髪用酸性染毛料組成物のpHは1.5?4.5であるところ、これが10質量%水溶液のpHにおいて「4?6」であるかは明らかでない。仮にそうであるとしても、甲2発明に係る頭髪用酸性染毛料組成物が「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」ことを満たすものとなるかは明らかでない。
そして、甲第2号証からは、係る酸性染毛料が「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」と解しうるような記載ないし示唆を見いだすことができない。
このため、本件発明1は甲2発明と同一であるということはできない。
さらに、本件発明2?3は、本件発明1を引用して、さらに規定を加えたものであることに鑑みると、同様に甲2発明と同一であるということはできない。

エ 小括
よって、本件発明1?3は、甲第2号証によって、特許法第29条第1項第3号に該当する発明とはいえず、この理由によって本件発明1?7の特許を取り消すことはできない。

(5)理由4a、4b、4c、4dについて
上記(1)(すなわち上記4)及び(4)で示したとおり、甲1発明、甲2発明とも、本件発明1に係る「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」点の記載ないし示唆はない。甲第4?6号証には、酸性染毛料組成物に関する記載ないし示唆はない。甲第3号証には下記(ア)?(エ)のとおり、酸性染毛料組成物に関する記載がある。

(ア)「【請求項1】
(a)直接染料、(b)グリシン及び/又はタウリン、(c)水を含有することを特徴とする染毛用前処理剤組成物。

【請求項7】
酸化染毛剤を適用する前に使用するための、請求項1?6のいずれか1項に記載の染毛用前処理剤組成物。」

(イ)「【0007】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、損傷毛髪に対する染毛均一性、並びに色持ち(堅牢性)を一層向上させることが可能な染毛用前処理組成物を提供することである。

【発明の効果】
【0012】
本発明の染毛用前処理剤は、染毛前の毛髪に適用することにより、染毛剤による毛先のかぶり(毛先だけが非常に濃く染まった状態)やむら染まりを良好に抑え、均一に染毛することができる。さらに、染色毛のシャンプー堅牢性を向上させ、退色時の不自然な色味を抑えることができる。」

(ウ)「【0014】
本発明に使用される種々の直接染料は、タール系色素や天然色素などの公知のものが使用でき、1種又は2種以上を併用してもよい。その中でも、…「医薬品等で使用できるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた酸性染料等が挙げられる。これら直接染料は、各々単独で、あるいは混合して配合することができる。その配合量は0.001?5.0重量%であり、0.001重量%より少ないと均染性の効果は得られず、また5.0重量%を越えても効果の上昇は期待できない。さらに好ましくは0.005?2.0重量%、最も好ましくは0.01?1.0重量%である。」

(エ)「【0020】
本発明の染毛用前処理剤組成物は、直接染料含有組成物を前処理剤として用いていることにより初めて本発明の効果を得ることができたものである。一方、直接染料を染毛剤へ同時に配合した場合も検討したが良好な結果は得られていない。対象の染毛剤が酸化染毛剤の場合、直接染料を少量で配合することは一般的な技術であるが、これは調色を目的とするもので、本件発明と同様な効果を得ることはできない。また、後処理剤として用いた場合にも効果は得られなかった。既に酸化染毛剤で染毛された毛髪のむら染まりなどの状態を均一にするような効果を本発明の染毛用前処理剤組成物は有していない。」

しかし、上記(ア)?(エ)のみならず、甲第3号証のいずれにも、本件発明1に係る「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」点の記載ないし示唆はない。
そして、甲各号証の如何なる記載に基づいても、「前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である」ようにするといった、染毛処理後の毛髪のpHを調整することは、本件出願時の周知慣用技術とはいえず、また、当業者が容易に想到し得ることともいえない。
よって、本件発明1?3は、甲各号証及び本件出願時の周知慣用技術によって、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、この理由によって本件発明1?7の特許を取り消すことはできない。

6 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
酸性染毛料組成物及びそれを用いた染毛方法
【技術分野】
【0001】
本発明は酸性染料を含有する酸性染毛料組成物に関し、詳しくは染毛処理後の毛髪のpHを所定範囲内に維持することにより、pH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる酸性染毛料組成物及びそれを用いた染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、直接染料として例えば酸性染料を含有し、半永久染毛料として使用される酸性染毛料組成物が知られている。一方、アルカリ剤の働きで酸化染料を毛髪のキューティクル内部に浸透させ、酸化剤でメラニン色素の分解と染料の発色を行わせる酸化染毛剤が知られている。酸性染毛料組成物は、コルテックスのごく浅い部分に染料をイオン結合させて発色させる。酸性染毛料組成物は、毛髪へのダメージを酸化染毛剤に比べて抑制することができるというメリットがある。
【0003】
従来より、特許文献1に開示される酸性染毛料組成物が知られている。特許文献1は、酸性染料、及びグリコール酸等を含有するとともにpH2.8?3.3に調整された酸性染毛料組成物について開示する(表1等参照)。かかる構成により、染毛処理後の毛髪に対し、染毛力を向上させ、さらには櫛通りを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-245327号公報
【特許文献2】特開平10-273432号公報
【特許文献3】特開2007-131569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示される酸性染毛料組成物は、pHが低いため、染毛処理後の毛髪の感触が悪いという問題があった。また、酸性染毛料組成物で染毛処理した後、続けて酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理する場合、又は酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、続けて酸性染毛料組成物で染毛処理する場合、施術時のpH変動により酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすという問題があった。したがって、酸化染毛剤と酸性染毛料組成物を繰り返して使用する場合、特許文献2,3に記載されるような還元剤を含有する染料除去剤を使用する必要があった。特許文献2,3に記載されるような染料除去剤を使用する場合、施術が煩雑という問題が生ずる他、還元剤の使用により毛髪の感触が低下する場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、酸性染料を含有する酸性染毛料組成物において、所定の水溶性高分子化合物等を使用し、染毛処理後の毛髪のpHを所定範囲内に維持することにより、上記問題が解決できることを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、酸性染料を含有する酸性染毛料組成物において、毛髪のpH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる酸性染毛料組成物及びそれを用いた染毛方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の酸性染毛料組成物は、(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%、(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の酸性染毛料組成物において、前記有機酸は、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の酸性染毛料組成物において、前記酸性染毛料組成物中における前記(B)緩衝剤の含有量に対する前記(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比は、1?750であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明の染毛方法は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物を用いた染毛方法において、前記酸性染毛料組成物で染毛処理した後、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の染毛方法において、前記酸化染毛剤は、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが7?9.5であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物を用いた染毛方法において、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、前記酸性染毛料組成物で染毛処理することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の染毛方法において、前記酸化染毛剤は、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが7?9.5であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸性染料を含有する酸性染毛料組成物において、毛髪のpH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の酸性染毛料組成物を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の酸性染毛料組成物は、(A)イオン性水溶性高分子化合物、(B)緩衝剤、(C)酸性染料を含有しており、例えば浸透促進剤及び有機溶剤を更に含有してもよい。
【0015】
(A)イオン性水溶性高分子化合物は、染毛処理後の毛髪の感触を向上させるとともに、酸性染毛料組成物のpH安定性を向上させる。(A)イオン性水溶性高分子化合物としては、アニオン性、カチオン性、及び両性の天然又は合成高分子が使用可能である。アニオン性高分子としては、例えばアラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、変性キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体(市販名;SIMULGEL NS,FL;セイワサプライ社製)、アクリル酸塩・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体(市販名;SIMULGEL EG;セイワサプライ社製)、及び(アクリロイルジメチルタウリン塩/メタクリル酸ベヘネス-25)共重合体(市販名;Aristoflex HMB;クラリアントジャパン社製)が挙げられる。カチオン性高分子としては、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩・アクリルアミド共重合物、及び4級化ポリビニルピロリドン誘導体が挙げられる。両性高分子としては、例えばN-メタクリロイルエチルN,N-ジメチルアンモニウムα-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸ブチル共重合体(市販名;ユカフォーマーAM-75;三菱化学社製)、アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル・アクリル酸オクチルアミド共重合体(市販名;アンフォマー28-4910;ナショナルスターチ社製)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(市販名;マーコート280,295;カルゴン社製)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸のターポリマー(市販名;マーコートプラス3330,3331;カルゴン社製)、及びアクリル酸・アクリル酸メチル・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム共重合体(市販名;マーコート2001;カルゴン社製)が挙げられる。
【0016】
酸性染毛料組成物中における(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量は、1.5?4.5質量%、好ましくは2?3.5質量%である。含有量が1.5質量%未満であると毛髪の感触及び粘度安定性が低下する場合がある。一方、含有量が4.5質量%を超えると、毛髪の感触が低下する場合がある。
【0017】
(B)緩衝剤は、酸性染毛料組成物のpHを所定範囲に規定し、それにより(C)酸性染料を毛髪タンパクに定着させる作用を発揮する。(B)緩衝剤は、有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される。有機酸としては、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸が挙げられる。無機酸としては、例えば塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、及び炭酸が挙げられる。それらの酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及びトリエタノールアミン塩が挙げられる。これらの中で、長期保存時におけるpH安定性を向上させる観点から、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸が好ましい。さらに、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸がより好ましい。なお、上記有機酸の具体例は、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0018】
酸性染毛料組成物中における緩衝剤の含有量は、0.005?1.5質量%、好ましくは0.01?1質量%である。含有量が0.005質量%未満であると酸性染毛料組成物のpH安定性及び粘度安定性が低下する場合がある。一方、含有量が1.5質量%を超えると、染毛処理後の毛髪の感触が低下する場合があるとともに、酸性染料の保存安定性に影響を与えるおそれがある。
【0019】
酸性染毛料組成物中における(B)緩衝剤の含有量に対する(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比(A/B)は、好ましくは1?750、より好ましくは2?350、さらに好ましくは4.5?100に規定される。かかる範囲内に規定することにより、長期保存時における酸性染毛料組成物の粘度安定性をより向上させることができる。また、pH変化に伴う感触の低下をより抑制することができる。
【0020】
(C)酸性染料は、毛髪を染色するために配合される。この酸性染料は、反応性がなく、それ自体で発色可能なものを示す。具体的には、「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた酸性染料等が挙げられ、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、及び黒色401号が挙げられる。なお、上記酸性染料の具体例は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0021】
酸性染毛料組成物中における酸性染料の含有量は、好ましくは0.001?1質量%である。酸性染料の含有量が0.001質量%未満の場合には、染毛効果が十分に得られない場合がある。一方、酸性染料の含有量が1質量%を超える場合には、酸性染毛料組成物中における溶解性が十分に得られないおそれがある。
【0022】
浸透促進剤は、酸性染料の染毛力を向上させる。そのため酸性染毛料組成物は、好ましくは浸透促進剤を含有する。浸透促進剤としては、例えば炭素数4?8の一価アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、芳香族アルコール、環状アルコール、及び低級アルキレンカーボネートが挙げられる。炭素数4?8の一価アルコールとしては、例えばn-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、及びn-オクタノールが挙げられる。エチレングリコールアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノn-ブチルエーテルが挙げられる。芳香族アルコールとしては、例えばベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、フェニルジグリコール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、及びp-アニシルアルコールが挙げられる。環状アルコールとしては、例えばシクロヘキサノールが挙げられる。低級アルキレンカーボネートとしては、例えば炭酸エチレン、及び炭酸プロピレンが挙げられる。浸透促進剤の中でも、染毛力を向上させる効果に優れるという観点から、芳香族アルコールが好ましい。酸性染毛料組成物中における浸透促進剤の含有量は、好ましくは0.1?20質量%、より好ましくは0.5?15質量%、さらに好ましくは1?10質量%である。含有量が0.1質量%未満であると十分な染毛力の向上効果が得られない場合がある。一方、含有量が20質量%を超えると、地肌汚れが生じやすくなる場合がある。
【0023】
有機溶剤は、酸性染料の染毛力を向上させる。そのため酸性染毛料組成物は、好ましくは有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、例えば炭素数1?3の一価アルコール(低級アルコール)、多価アルコールとしてのグリコール類及びグリセリン類、並びにジエチレングリコール低級アルキルエーテルが挙げられる。炭素数1?3の一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールが挙げられる。グリコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、及び1,3-ブチレングリコールが挙げられる。グリセリン類としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。ジエチレングリコール低級アルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)が挙げられる。酸性染毛料組成物中における有機溶剤の含有量は、好ましくは0.1?25質量%、より好ましくは2?20質量%、さらに好ましくは5?15質量%である。含有量が0.1質量%未満であると十分な染毛力の向上効果が得られない場合がある。一方、含有量が25質量%を超えると、地肌汚れが生じやすくなる場合がある。
【0024】
酸性染毛料組成物のpHは、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6である。酸性染毛料組成物のpHをかかる範囲内に規定することにより、染毛後の毛髪内部のpHを本来の毛髪のpHである弱酸性領域、つまり5.5?6の範囲に維持することができる。酸性染毛料組成物のpHは、上述した緩衝剤及び後述するpH調整剤を用いて調整することができる。
【0025】
酸性染毛料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、例えば水、非イオン性の水溶性高分子化合物、油性成分、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、キレート化剤、上記以外のpH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0026】
非イオン性の水溶性高分子化合物としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、グアーガム、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0027】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため酸性染毛料組成物は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーンが挙げられる。
【0028】
油脂としては、例えばオリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、及び卵黄油が挙げられる。ロウとしては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0029】
炭化水素としては、例えばα-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0030】
エステルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10?30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、及びラノリン誘導体が挙げられる。
【0031】
シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、グリセリン変性シリコーン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。これらの油性成分の具体例は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0032】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として酸性染毛料組成物の安定性を保持するために配合される場合がある。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0033】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤、リン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤、及びN-アシルアミノ酸型界面活性剤が挙げられる。アルキル硫酸エステル塩としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、及びラウリル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばポリオキシエチレン(以下、「POE」という)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤としては、例えばステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、及びテトラデセンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。リン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤としては、例えばPOEラウリルエーテルリン酸及びその塩が挙げられる。N-アシルアミノ酸型界面活性剤としては、例えばN-ラウロイルグルタミン酸塩類、及びN-ラウロイルメチル-β-アラニン塩類が挙げられる。
【0034】
カチオン性界面活性剤としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、及びメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0035】
両性界面活性剤としては、例えば2-ウンデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。
【0036】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、及びPOEオクチルフェニルエーテルが挙げられる。
【0037】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、及びモノミリスチン酸デカグリセリルが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例は、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0038】
糖としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。キレート化剤としては、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸塩、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、並びにヒドロキシエチリデンジホスホン酸及びその塩が挙げられる。pH調整剤としては、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン(TEA)、及びアルギニンが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば亜硫酸塩が挙げられる。また「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0039】
酸性染毛料組成物の剤型は特に限定されず、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。酸性染毛料組成物の毛髪への塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜使用することができる。例えばコーム又は刷毛を用いた塗布方法、手櫛による塗布方法、スプレー(噴霧)による塗布方法を挙げることができる。
【0040】
次に、本実施形態の酸性染毛料組成物の作用について説明する。
本実施形態の酸性染毛料組成物は毛髪に塗布された後に、所定時間放置される。そして毛髪は、その表面における酸性染料の吸着、及び毛髪の内部への酸性染料の浸透により、所望の色調に染色される。染毛処理後、毛髪内部のpHは、本来の毛髪内部のpHである弱酸性領域、つまり5.5?6の範囲に維持される。これにより、pH変動に伴う感触の低下を抑制することができる。また、施術時のpH変動に伴う酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる。つまり、酸性染毛料組成物で染毛処理した後、続けて酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理する場合、酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすことがないため、酸性染料を除染することなく、酸化染料をさらに重ね塗りした場合に予測される色調通りに染毛することができる。また、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、続けて酸性染毛料組成物で染毛処理する場合、先に染色した酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすことがないため、酸性染毛料組成物をさらに重ね塗りした場合に予測される色調通りに染色することができる。
【0041】
以上により、本実施形態の酸性染毛料組成物は、酸性染毛料組成物で染毛処理した後、続けて酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理する染毛方法、又は酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、続けて酸性染毛料組成物で染毛処理する染毛方法に好ましく適用することができる。かかる染毛方法としては、酸化染毛剤で染毛処理を完了した直後に、本実施形態の酸性染毛料組成物で染毛処理してもよい。また、酸化染毛剤で染毛した後、数日から数週間、1ヶ月経過後に酸性染毛料組成物で染毛してもよい。同様に、本実施形態の酸性染毛料組成物で染毛処理を完了した直後に、酸化染毛剤で染毛してもよい。また、酸性染毛料組成物で染毛した後、数日から数週間、1ヶ月経過後に酸化染毛剤で染毛してもよい。
【0042】
かかる染毛方法に用いられる酸化染毛剤としては、公知のものを適宜採用することができる。例えば、酸化染毛剤は、アルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とから構成される2剤式の酸化染毛剤が挙げられる。
【0043】
アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進することにより、毛髪の染色性を向上させる。アルカリ剤としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ハロゲン化アンモニウム、並びに無機系アンモニウム塩として、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。ハロゲン化アンモニウムとしては、例えば塩化アンモニウムが挙げられる。ケイ酸塩としては、例えばケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウムが挙げられる。炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、及び炭酸アンモニウムが挙げられる。炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素アンモニウムが挙げられる。メタケイ酸塩としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸カリウムが挙げられる。硫酸塩としては、例えば硫酸アンモニウムが挙げられる。リン酸塩としては、例えばリン酸第1アンモニウム、及びリン酸第2アンモニウムが挙げられる。これらの中で、染毛力向上の観点から、アンモニア及びアンモニウム塩が好ましい。
【0044】
アルカリ剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは第1剤及び第2剤を混合した酸化染毛剤において、その酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが好ましくは7?9.5の範囲となる量である。pHが7未満では、第2剤の酸化剤の作用が十分に促進されないおそれがある。混合液のpHが9.5を超えると、酸性染毛料組成物で染毛した毛髪に重ね塗りする場合、又は酸化染毛剤で染毛処理後に酸性染毛料組成物を重ね塗りする場合に色調の変色が生じる場合がある。
【0045】
酸化染料は、第2剤に含有される酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類される。酸化染料は少なくとも染料中間体を含んでいる。
【0046】
染料中間体としては、例えばp-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0047】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料、及び直接染料から選ばれる少なくとも一種を適宜含有してもよい。また、第1剤に含有される、前述した成分以外の成分としては、酸性染毛料組成物に含有される染料以外の成分、例えば水、水溶性高分子化合物、油性成分、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、キレート化剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が挙げられる。
【0048】
第2剤は、酸化剤を含有する。酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンを脱色する。酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物が挙げられる。第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは0.1?15.0質量%であり、より好ましくは2.0?9.0質量%であり、最も好ましくは3.0?6質量%である。酸化剤の含有量が0.1質量%未満では、メラニンを十分に脱色することができない場合がある。酸化剤の含有量が15.0質量%を超えると、毛髪に損傷等が発生するおそれがある。
【0049】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、酸化染毛剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される、アルカリ剤以外の成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0050】
酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とが混合された後、次いで、必要量の混合物が薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布され、所定時間放置後、洗浄及び乾燥処理することにより染毛処理が施される。
【0051】
本実施形態の酸性染毛料組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の酸性染毛料組成物では、(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%、(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有するとともに、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6に調整される。したがって、染毛処理後、毛髪内部のpHは、本来の毛髪内部の等電点である弱酸性領域、つまり5.5?6の範囲に維持される。よって、酸性染料を含有する酸性染毛料組成物において、pH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる。
【0052】
(2)また、酸性染毛料組成物の長期保存時における粘度安定性及びpH安定性を向上させることができる。
(3)好ましくは(B)緩衝剤を構成する有機酸として、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸から選ばれる少なくとも一種が用いられる。したがって、長期保存時における酸性染毛料組成物のpH安定性をより向上させることができる。また、pH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色をより抑制することができる。
【0053】
(4)好ましくは、酸性染毛料組成物中における(B)緩衝剤の含有量に対する(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比は、1?750である。したがって、長期保存時における酸性染毛料組成物の粘度安定性をより向上させることができる。また、pH変化に伴う感触の低下をより抑制することができる。
【0054】
(5)本実施形態の酸性染毛料組成物は、好ましくは、酸性染毛料組成物で染毛処理した後、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理する染毛方法に適用される。したがって、酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすことがないため、酸性染料を除染することなく、酸化染料をさらに重ね塗りした場合に予測される色調通りに染毛することができる。
【0055】
(6)本実施形態の酸性染毛料組成物は、好ましくは、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、酸性染毛料組成物で染毛処理する染毛方法に適用される。したがって、先に染色した酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすことがないため、酸性染毛料組成物をさらに重ね塗りした場合に予測される色調通りに染毛することができる。
【0056】
(7)本実施形態の酸性染毛料組成物と酸化染毛剤を交互に繰り返して使用する染毛方法において、好ましくは、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHは、7?9.5である。したがって、第2剤の酸化剤の作用を十分に促進することができるとともに、酸性染毛料組成物で染毛した毛髪に重ね塗りする場合、又は酸化染毛剤で染毛処理後に酸性染毛料組成物を重ね塗りする場合に色調の変色を抑制することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、酸性染毛料組成物を構成する各成分を全て配合する1剤式として構成した。しかしながら、各成分を分離して複数剤式に構成し、使用直前にそれらを混合するよう構成してもよい。
【0058】
・上記実施形態において、酸化染毛剤をアルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とからなる2剤式として構成した。しかしながら、各構成成分を全て配合する1剤式として構成してもよく、各構成成分を分離して3剤式以上の複数剤式に構成し、使用直前にそれらを混合するよう構成してもよい。
【0059】
・上記実施形態において、酸性染毛料組成物の製品形態は、ヘアマニキュアの他に、例えばカラートリートメントであってもよい。なお、ヘアマニキュアは、一度の染毛作業により、所望する色調に染め上げる染毛料である。一方、カラートリートメントは、日常的なヘアケア等により毛髪に適用されることで、染毛処理が繰り返される結果、所望する色調へ徐々に染め上げる徐染性の染毛料である。
【実施例】
【0060】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
表1,2に示される各成分を混合して各実施例及び比較例の酸性染毛料組成物を調製した。得られた酸性染毛料組成物を白髪混じりの人毛毛束に刷毛を用いて塗布し、40℃で20分放置した後、通常のシャンプーにて洗浄し、次いで乾燥させることにより染毛処理毛束とした。かかる染毛処理毛束について、染毛処理後の毛髪内部のpH及び毛髪の感触について評価を行った。また、各例の酸性染毛料組成物及び酸化染料を含有する酸化染毛剤を用いて繰り返し染毛処理した場合の色調の変色抑制効果を評価した。また、各実施例及び比較例の酸性染毛料組成物についてpH安定性及び粘度安定性について評価を行った。それらの評価結果を表1,2に示す。なお、表1,2における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。また、表中「成分」欄における(A)?(C)の表記は、それぞれ本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における「a」の表記は、本願請求項記載の成分(A)の対比化合物を示す。
【0061】
表中「(A)の合計質量/(B)の合計質量」は、酸性染毛料組成物中における(B)緩衝剤の含有量に対する(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比(A/B)を示す。また、酸性染毛料組成物のpHは、粘度を下げるために各調製された酸性染毛料組成物を水で10倍希釈した10質量%水溶液のpHを示す。また、後述する表3中の酸化染毛剤のpHは、粘度を下げるために各調製された第1剤と第2剤を混合した混合物を水で10倍希釈した10質量%水溶液のpHを示す。
【0062】
表中のイオン性水溶性高分子化合物Aは、Aristoflex HMB((アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)共重合体:クラリアントジャパン社製)を使用した。イオン性水溶性高分子化合物Bは、SIMULGEL EG((アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、及び水の混合原料:セイワサプライ社製)を使用した。表中の配合量を示す数値は、イオン性水溶性高分子化合物の純分を示している。
【0063】
<染毛処理後の毛髪内部のpH>
染毛処理した毛髪を約5mmに切断し、約1gを計りとり、凍結粉砕装置(FREEZER/MILL、Spex Industries Inc.N.J.U.S.A製)の粉砕用セルにと金属製粉砕用バーとともに入れ、液体窒素で20分冷やす。毛髪が完全に凍結したのを確認したのち、20分間粉砕を行い、毛髪パウダーを得た。毛髪パウダー0.5gを計りとり、精製水2gを加えペースト状水溶液を得た。ペースト状水溶液約1gを計りとり、コンパクトpHメータ<Twin pH>AS212形(堀場製作所社製)を用いてpHを測定した。
【0064】
<感触>
染毛処理後の人毛毛束について、パネラー10名が手で触れることにより、感触が良いか否かを判断した。パネラー10人中「良い」と答えた人が8人以上を評価5、パネラー10人中「良い」と答えた人が6?7人を評価4、パネラー10人中「良い」と答えた人が4?5人を評価3、パネラー10人中「良い」と答えた人が2?3人を評価2、パネラー10人中「良い」と答えた人が1人以下を評価1とした。
【0065】
<pH安定性>
各例における酸性染毛料組成物を60℃の恒温槽に入れ、1週間保存した。1週間保存後の酸性染毛料組成物のpHを測定した。調製直後の酸性染毛料組成物のpH及び1週間保存後の酸性染毛料組成物のpHから比率(=調製直後のpH/1週間保存後のpH)を算出した。この比率が0.99以上1.01未満(非常に優れる:5)、pH比率が0.97以上0.99未満又は1.01以上1.03未満(優れる:4)、pH比率が0.95以上0.97未満又は1.03以上1.05未満(良好:3)、pH比率が0.93以上0.95未満又は1.05以上1.07未満(やや悪い:2)及びpH比率が0.93未満又は1.07以上(悪い:1)の5段階で評価した。
【0066】
<粘度安定性>
各例における酸性染毛料組成物を60℃の恒温槽に入れ、1週間保存した。1週間保存後の酸性染毛料組成物の粘度をB型粘度計にて、BLアダプター(回転数60rpm、25℃、1分間の条件)、又はTV-10M形粘度計/デジタル形にて、ローターNo.3、ローターNo.4にて(回転数3rpm、6rpm、12rpm、25℃、1分間の条件)で測定した。調製直後の酸性染毛料組成物を同条件で測定した粘度及び1週間保存後の酸性染毛料組成物の粘度から粘度比率(=調製直後の粘度/1週間保存後の粘度)を算出した。この粘度比率が0.80以上1.20未満(非常に優れる:5)、粘度比率が0.60以上0.80未満又は1.2以上2.0未満(優れる:4)、粘度比率が0.40以上0.60未満又は2.0以上4.0未満(良好:3)、粘度比率が0.20以上0.40未満又は4.0以上6.0未満(やや悪い:2)及び粘度比率が0.20未満又は6.0以上(悪い:1)の5段階で評価した。
【0067】
<酸性染毛料組成物を用いた染毛処理の後に酸化染毛剤を用いて染毛処理した場合の色調の変色抑制効果>
上記のように酸性染毛料組成物を用いて処理された各例の染毛処理毛束について、さらに続けて酸化染料を含有する酸化染毛剤を用いて染毛処理した場合の色調の変色抑制効果を評価した。酸化染毛剤として、表3の処方4に示される各成分を含有する組成物を使用した。尚、表3における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。そして、第1剤と第2剤とを1:1の質量比で混合して酸化染毛剤を調製した。得られた各例の酸化染毛剤を、各例の染毛処理毛束に刷毛を用いて塗布し、30℃にて30分間放置した。そして、毛束に付着した酸化染毛剤を水で洗い流した後、毛束にシャンプーを2回、及びリンスを1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。酸性染毛料組成物と酸化染毛剤で染毛処理が施された毛束について、色調の変化について評価した。
【0068】
上記のように染毛処理が施された毛束の色調について、専門のパネラーが標準光源下にて目視で観察し、色調の変色抑制効果が良好であると判定したパネラーの人数に基づいて評価した。パネラー10人中「良好」と答えた人が8人以上を評価5、パネラー10人中「良好」と答えた人が6?7人を評価4、パネラー10人中「良好」と答えた人が4?5人を評価3、パネラー10人中「良好」と答えた人が2?3人を評価2、パネラー10人中「良好」と答えた人が1人以下を評価1とした。
【0069】
<酸化染毛剤と酸性染毛料組成物を用いて染毛処理した場合の色調の変色抑制効果>
表4の試験例1?12に示される各順番で実施例17又は比較例9の酸性染毛料組成物と表3に示される各処方の酸化染毛剤を用いて染毛処理した場合の色調の変色抑制効果を評価した。先に酸性染毛料組成物を用いて染毛処理し、続けて酸化染毛剤を用いて染毛処理した場合(試験例4?6、10?12)、及び先に酸化染毛剤を用いて染毛処理し、続けて酸性染毛料組成物を用いて染毛処理した場合(試験例1?3、7?9)の2つの染毛方法で処理した。酸性染毛料組成物と酸化染毛剤の染毛方法は、上記の方法に従った。
【0070】
上記のように酸化染毛剤と酸性染毛料組成物で染毛処理が施された毛束の色調について、専門のパネラーが標準光源下にて目視で観察し、色調の変色抑制効果が良好であると判定したパネラーの人数に基づいて評価した。パネラー10人中「良好」と答えた人が8人以上を評価5、パネラー10人中「良好」と答えた人が6?7人を評価4、パネラー10人中「良好」と答えた人が4?5人を評価3、パネラー10人中「良好」と答えた人が2?3人を評価2、パネラー10人中「良好」と答えた人が1人以下を評価1とした。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

表1に示されるように(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%、(B)緩衝剤0.005?1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有するとともに、pH4?6の範囲に調整された各実施例は、各評価が良好な結果であることが確認される。また、(B)緩衝剤としてクエン酸、乳酸、グリコール酸、又はピロリドンカルボン酸を使用する実施例9?14は、酢酸又は酒石酸を使用する実施例1?8に対し、pH安定性の評価がより優れることが確認される。(B)緩衝剤の含有量に対する(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比(A/B)が、2?350である実施例15?18は、実施例1?14に対し、感触及び粘度安定性の評価がより優れることが確認される。
【0075】
また、表2に示されるように(A)イオン性の水溶性高分子化合物を含有しない比較例1は、感触及びpH安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(A)イオン性の水溶性高分子化合物の含有量が1.5質量%未満である比較例2は、感触及び粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(A)イオン性の水溶性高分子化合物の含有量が4.5質量%を超える比較例3は、感触の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(B)緩衝剤の含有量が0.005質量%未満の比較例4は、pH安定性及び粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(B)緩衝剤の含有量が1.5質量%を超える比較例5は、感触及び粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(B)緩衝剤を含有しない比較例6は、pH安定性及び粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。酸性染毛料組成物のpHが4未満である比較例7,9は、染毛処理後の毛髪内のpHが5.5を下回るため、酸化染毛剤を用いた染毛処理において、色調の変色抑制効果が各実施例に比べて低いことが確認される。酸性染毛料組成物のpHが6を超える比較例8は、染毛処理後の毛髪内のpHが6を超えるため、毛髪の感触が各実施例に比べて低下することが確認される。(A)イオン性の水溶性高分子化合物の代わりに非イオン性の水溶性高分子化合物を含有する比較例10は、特に粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。
【0076】
表4に示されるように、処方1の酸化染毛剤で染毛処理した直後の毛束に、実施例17の酸性染毛料組成物で染毛処理した毛束は色調変化が少ない。処方2及び処方3の各酸化染毛剤で染毛処理した直後の毛束に、実施例17の酸性染毛料組成物で染毛処理した毛束は色調の変色抑制効果が良好であることが確認された。実施例17の酸性染毛料組成物で染毛した直後の毛束に処方1?処方3の各酸化染毛剤で染毛処理した各毛束は色調の変色抑制効果が良好であることが確認された。
【0077】
処方1の酸化染毛剤で染毛した直後の毛束に、比較例9の酸性染毛料組成物で染毛処理した毛束は、酸性染毛料組成物のpHが低いため色調変化が大きい。処方2及び処方3の各酸化染毛剤で染毛した直後の毛束に、比較例9の酸性染毛料組成物で染毛処理した毛束は、酸性染毛料組成物のpHが低いため色調変化がやや大きい。比較例9の酸性染毛料組成物で染毛した直後の毛束に処方1の酸化染毛剤で染毛処理した毛束は、酸性染毛料組成物のpHが低いため色調変化がやや大きい。比較例9の酸性染毛料組成物で染毛した直後の毛束に処方2,3の各酸化染毛剤で染毛処理した各毛束は、酸性染毛料組成物のpHが低いため色調変化が大きい。
【0078】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記酸性染毛料組成物と前記酸化染毛剤と交互に複数回繰り返し処理することを特徴とする染毛方法。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)?(C)を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4?6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5?6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5?6である(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5?4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005?1.5質量%。
(C)酸性染料。
【請求項2】
前記有機酸は、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項3】
前記酸性染毛料組成物中における前記(B)緩衝剤の含有量に対する前記(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比は、1?750であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物を用いた染毛方法において、
前記酸性染毛料組成物で染毛処理した後、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理することを特徴とする染毛方法。
【請求項5】
前記酸化染毛剤は、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが7?9.5であることを特徴とする請求項4に記載の染毛方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物を用いた染毛方法において、
酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、前記酸性染毛料組成物で染毛処理することを特徴とする染毛方法。
【請求項7】
前記酸化染毛剤は、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが7?9.5であることを特徴とする請求項6に記載の染毛方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-31 
出願番号 特願2010-157050(P2010-157050)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今村 明子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 須藤 康洋
関 美祝
登録日 2015-05-01 
登録番号 特許第5737877号(P5737877)
権利者 ホーユー株式会社
発明の名称 酸性染毛料組成物及びそれを用いた染毛方法  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 博宣  

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