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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C01G 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C01G 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C01G |
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管理番号 | 1326946 |
異議申立番号 | 異議2016-700438 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-05-16 |
確定日 | 2017-02-23 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5817859号発明「透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びに用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5817859号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?2〕,3,4,〔5?6〕について訂正することを認める。 特許第5817859号の請求項1?2,5?6に係る特許を維持する。 特許第5817859号の請求項3,4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第5817859号は、平成20年12月24日(優先権主張:平成20年4月9日)に出願された特願2008-328498号の一部を平成26年2月3日に新たな出願とした特願2014-18162号の特許請求の範囲に記載された請求項1?5に係る発明について、平成27年10月9日に設定登録がされたものである。 その後、本件の全請求項に係る特許について平成28年5月16日付けの特許異議の申立てがされ、同年8月19日付けで取消理由を通知したところ、同年10月21日付けで訂正請求と共に意見書の提出が特許権者よりされ、これに対し、同年12月6日付けで意見書の提出が特許異議申立人よりされたものである。 第2.訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、次の訂正事項1?4からなる(下線部は訂正箇所)。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「安定化剤として2?4mol%のイットリア、添加剤として粒径が0.01?0.5μmのアルミナを0.1?0.2wt%からなる透光性ジルコニア焼結体用粉末。」とあるのを「安定化剤として2?4mol%のイットリア、添加剤として平均粒径が0.01μm以上0.05μm以下のアルミナ0.1?0.2wt%からなり、常圧焼結(大気中、昇温速度300℃/時)における相対密度70%から90%までの焼結収縮速度(△ρ/△T:g/cm^(3)・℃)が0.0125以上0.0135以下である透光性ジルコニア焼結体用粉末。」に訂正する。 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3,4を削除する。 訂正事項3 請求項5に「アルミナの平均粒径が0.05μmを超え0.5μm以下、常圧焼結(大気中、昇温速度300℃/時)における相対密度70%から90%までの焼結収縮速度(△ρ/△T:g/cm^(3)・℃)が0.0135を超え0.0160以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の粉末。」とあるのを「安定化剤として2?4mol%のイットリア、添加剤として平均粒径が0.05μmを超え0.5μm以下のアルミナ0.1?0.2wt%からなり、常圧焼結(大気中、昇温速度300℃/時)における相対密度70%から90%までの焼結収縮速度(△ρ/△T:g/cm^(3)・℃)が0.0135を超え0.0160以下である透光性ジルコニア焼結体用粉末。」に訂正する。 訂正事項4 特許請求の範囲に請求項6として、「BET比表面積が5?15m2/g、平均粒径が0.3?0.7μmである請求項5に記載の粉末。」を追加する。 2.訂正要件の判断 (1)訂正事項1について この訂正は、請求項1に記載された「透光性ジルコニア焼結体用粉末」の発明において、添加剤(アルミナ)の粒径をより限定すると共に、当該粉末の焼結収縮速度も特定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、設定登録時の請求項1を引用する請求項4には、訂正後の添加剤粒径及び焼結収縮速度が記載されているから、いずれも願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正前の請求項1の記載を請求項2?5が引用する関係にあるから、この訂正を含む本件訂正請求は、一群の請求項(請求項1?5)ごとに請求をするものと認められる。 (2)訂正事項2について この訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 (3)訂正事項3について この訂正は、請求項1の記載を引用する請求項5の記載を請求項1を引用しないものとすることを目的とするものと認められ、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 (4)訂正事項4について この訂正は、請求項5に記載された「透光性ジルコニア焼結体用粉末」の発明において、BET比表面積及び平均粒径を特定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、設定登録時の請求項2を引用する請求項5には、訂正後のBET比表面積及び平均粒径が記載されているから、いずれも願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.むすび 以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?2〕,3,4,〔5?6〕について訂正することを認める。 第3.特許異議申立について 1.本件発明 訂正後の請求項1,2,5,6に係る発明について、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲には、次のとおり記載されている。 【請求項1】 安定化剤として2?4mol%のイットリア、添加剤として平均粒径が0.01μm以上0.05μm以下のアルミナ0.1?0.2wt%からなり、常圧焼結(大気中、昇温速度300℃/時)における相対密度70%から90%までの焼結収縮速度(△ρ/△T:g/cm^(3)・℃)が0.0125以上0.0135以下である透光性ジルコニア焼結体用粉末。 【請求項2】 BET比表面積が5?15m^(2)/g、平均粒径が0.3?0.7μmである請求項1に記載の粉末。 【請求項5】 安定化剤として2?4mol%のイットリア、添加剤として平均粒径が0.05μmを超え0.5μm以下のアルミナ0.1?0.2wt%からなり、常圧焼結(大気中、昇温速度300℃/時)における相対密度70%から90%までの焼結収縮速度(△ρ/△T:g/cm^(3)・℃)が0.0135を超え0.0160以下である透光性ジルコニア焼結体用粉末。 【請求項6】 BET比表面積が5?15m^(2)/g、平均粒径が0.3?0.7μmである請求項1に記載の粉末。 2.取消理由について (1)訂正後の請求項2,6に係る発明は、実質的に訂正前の請求項2を引用する請求項4,5に係る発明に相当するが、これらの請求項に係る特許について、BET比表面積に関する記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨の取消理由を通知したので、以下検討する。 なお、訂正前の請求項1?3に係る特許について通知した取消理由は、訂正により解消した。 (2)本件明細書の【0007】には、発明の解決しようとする課題が「焼結体密度及び強度が高く、透光感に優れるジルコニア焼結体を提供する」ことであると記載され、【0090】【0091】には次の記載がある。 【0090】 【表3】 【0091】 アルミナ含有量が0.1?0.2wt%において、相対密度99.8%以上の焼結体においてのみ全光透過率が35%以上の透光性が得られおり、透過率35%以上を達成するためには相対密度99.8%以上が不可欠である。 (3)表3には、本件特許の請求項1,5に記載された所定の焼結収縮速度により、高密度で透光性の焼結体が得られることが記載されている。 そして、表3に記載されたアルミナの粒径及び含有量が同一の「比較例4」と「実施例7」(又は「実施例10」と「比較例7」)、アルミナの粒径が同一で粉末のBET比表面積が略同一の「実施例7」と「比較例6」(又は「比較例5」と「実施例9」)、アルミナの含有量と粉末のBET比表面積が同一の「実施例7」と「実施例10」(又は「実施例8」と「比較例5」)の測定結果によれば、当該焼結収縮速度は、粉末のBET比表面積、アルミナの含有量、アルミナの粒径に対し、いずれも正の相関をもって変化するものと認められる。 してみると、「比較例4」や「比較例7」で用いたBET比表面積が13m^(2)/g以上の粉末であっても、αアルミナやアルミナゾルの粒径を請求項1,5に記載された範囲内で減少させることにより、また、具体例の開示のないBET比表面積が10.6m^(2)/g未満の粉末であっても、アルミナの粒径や含有量を請求項1,5に記載された範囲内で増加することにより、所定の焼結収縮速度にすることが可能であると解される。 したがって、請求項1,5をそれぞれ引用する請求項2,6に記載された粉末のBET比表面積の数値範囲が、発明の詳細な説明に記載された具体例から拡張ないし一般化できる範囲のものでないとまではいえない。 なお、特許異議申立人は意見書で、請求項2,6に記載された粉末粒径、請求項5に記載されたアルミナの粒径の数値範囲についても特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないと主張しているが、粉末のBET比表面積が、粉末粒径に依存することは技術常識であるところ、請求項2,6に記載された粉末のBET比表面積の数値範囲に対して粒径の数値範囲が不合理なものとはいえないし、アルミナの粒径の数値範囲についても、上記相関関係を考慮すれば、発明の詳細な説明に記載された具体例から拡張ないし一般化できる範囲のものでないとまではいえない。 3.取消理由以外の申立理由について、 (1)特許異議申立人は特許異議申立書で、訂正後の請求項1,2,5,6に係る発明、すなわち、訂正前の請求項1,2を引用する請求項4,5に係る発明について、次の甲第1?7号証(以下、「甲1?7」という。)に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであると主張している。 なお、訂正前の請求項1に係る特許についての特許法第29条第1項及び同法第36条第6項を根拠とする申立理由は、訂正により解消している。 甲1:特表2003-530970号公報 甲2:松井光二「3mol%イットリアドープジルコニア粉末の初期焼結 メカニズム:アルミナの効果」、東ソー研究・技術報告第51巻、 平成19年12月31日、東ソー株式会社発行、9-18頁 甲3:宮内克己外1名著「オプトセラミックス」技報堂出版株式会社 1984.12.14、76-77頁,82-83頁,112-113頁 甲4:宗宮重行外1名編「ジルコニアセラミックス10」、内田老鶴圃 1989.5.15、123-135頁 甲5:特開2002-255556号公報 甲6-1:本件特許公報の記載に基づく分析資料 甲6-2:守吉祐介外6名共著「セラミックスの焼結」、内田老鶴圃 1998.8.25、120-121頁,128-131頁 甲7:特開平8-117248号公報 (2)上記申立理由について検討するに、甲1の【請求項17】?【請求項20】には、2.9モル%から3.2モル%の範囲の酸化イットリウムを含有する1ミクロン未満の粒度の粉末ジルコニアに、1ミクロン未満の粒度の粉末アルミナを1重量%以下添加した粉末混合物を、非加圧焼結とHIPにより緻密化してジルコニアセラミックスを製造することが記載されている。 ここで、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と上記粉末混合物の発明(以下、「引用発明」という。)を対比すると、本件発明1が、アルミナの平均粒径を「0.01μm以上0.05μm以下」、添加量を「0.1?0.2wt%」に限定し、さらに粉末の焼結収縮速度を「0.0125以上0.0135以下」に限定している点で相違する。 そこでこれらの相違点について検討するに、甲1?7(公知文献ではない甲6-1は除く。以下同様)には、引用発明において、アルミナの粒径と共に添加量を上記範囲に限定し、また、粉末の焼結収縮速度を上記範囲に限定することや、その結果、常圧焼結でも高密度な透光性焼結体が製造できること(本件特許明細書【0051】参照)について記載や示唆はない。 してみると、本件発明1が、甲1?7に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 請求項1に記載された発明特定事項を全て引用する請求項2に係る発明、アルミナの平均粒径及び粉末の焼結収縮速度の数値範囲が異なるほかは、本件発明1と同様の発明特定事項を有する請求項5,6に係る発明についても、同様の理由により、甲1?7に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、上記申立理由の主張は採用できない。 第4.むすび 以上のとおり、取消理由及び申立理由によっては、本件の請求項1?2,5?6に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件の請求項1?2,5?6に係る特許をを取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項3,4は訂正により削除されたため、同請求項に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 安定化剤として2?4mol%のイットリア、添加剤として平均粒径が0.01μm以上0.05μm以下のアルミナ0.1?0.2wt%からなり、常圧焼結(大気中、昇温速度300℃/時)における相対密度70%から90%までの焼結収縮速度(△ρ/△T:g/cm^(3)・℃)が0.0125以上0.0135以下である透光性ジルコニア焼結体用粉末。 【請求項2】 BET比表面積が5?15m^(2)/g、平均粒径が0.3?0.7μmである請求項1に記載の粉末。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 安定化剤として2?4mol%のイットリア、添加剤として平均粒径が0.05μmを超え0.5μm以下のアルミナ0.1?0.2wt%からなり、常圧焼結(大気中、昇温速度300℃/時)における相対密度70%から90%までの焼結収縮速度(△ρ/△T:g/cm^(3)・℃)が0.0135を超え0.0160以下である透光性ジルコニア焼結体用粉末。 【請求項6】 BET比表面積が5?15m^(2)/g、平均粒径が0.3?0.7μmである請求項5に記載の粉末。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-02-13 |
出願番号 | 特願2014-18162(P2014-18162) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C01G)
P 1 651・ 121- YAA (C01G) P 1 651・ 113- YAA (C01G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 村岡 一磨 |
特許庁審判長 |
新居田 知生 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 永田 史泰 |
登録日 | 2015-10-09 |
登録番号 | 特許第5817859号(P5817859) |
権利者 | 東ソー株式会社 |
発明の名称 | 透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びに用途 |