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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
管理番号 1326950
異議申立番号 異議2016-700410  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-11 
確定日 2017-02-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5876461号発明「積層板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5876461号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第5876461号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5876461号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成19年3月30日にした特許出願の一部を、平成25年11月28日に新たな特許出願としたものであり、平成28年1月29日にその特許権の設定登録がされた。
その後、その特許について、特許異議申立人新井紀子により特許異議の申立てがされ、平成28年10月14日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年12月15日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年1月19日付けで意見書が提出された。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
請求項1の
「2枚の熱可塑性樹脂製の板部の間に嵩上げ架橋材が介在しているとともに、前記2枚の板部の端部同士が溶着されている積層板であって、
前記嵩上げ架橋材として、熱可塑性樹脂発泡成形体、上下2枚の金属板の間に合成樹脂シートまたは合成樹脂発泡シートを積層した成形体、縦壁部を有するエンボス形状成形体、縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成したハニカム構造成形体、縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成した格子状構造成形体、チップウレタン樹脂成形体、チップフェルト成形体、ダンボール成形体のうちの少なくとも1つが用いられており、
前記2枚の板部の間に補強部材が介在し、当該補強部材の長手方向の両端側の一部のみを覆うように前記嵩上げ架橋材の一部分が突出しており、
前記積層板は車両用内装材であることを特徴とする積層板。」を、
「2枚の熱可塑性樹脂製の板部の間に嵩上げ架橋材が介在しているとともに、前記2枚の板部の端部同士が溶着されているブロー成形品である積層板であって、
前記嵩上げ架橋材として、熱可塑性樹脂発泡成形体、上下2枚の金属板の間に合成樹脂シートまたは合成樹脂発泡シートを積層した成形体、縦壁部を有するエンボス形状成形体、縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成したハニカム構造成形体、縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成した格子状構造成形体、チップウレタン樹脂成形体、チップフェルト成形体、ダンボール成形体のうちの少なくとも1つが用いられており、
前記2枚の板部の間に補強部材が介在し、当該補強部材の長手方向の両端部において、各端部の一部のみを覆うように前記嵩上げ架橋材の一部分が突出しており、
前記積層板は車両用内装材であることを特徴とする積層板。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項に関連する記載として、明細書の段落0031、0047、、0061、0068には「ブロー成形する」と記載され、段落0040には「本実施形態によれば、平面視で略I状の発泡樹脂(嵩上げ架橋材)13を用い、発泡樹脂13の突出部が、リインフォース20の長手方向の両端側の少なくとも一部分を覆うように配置している」と記載されている。
上記訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし9に係る発明(以下「本件発明1ないし9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された、以下のとおりのものである。

【請求項1】
2枚の熱可塑性樹脂製の板部の間に嵩上げ架橋材が介在しているとともに、前記2枚の板部の端部同士が溶着されているブロー成形品である積層板であって、
前記嵩上げ架橋材として、熱可塑性樹脂発泡成形体、上下2枚の金属板の間に合成樹脂シートまたは合成樹脂発泡シートを積層した成形体、縦壁部を有するエンボス形状成形体、縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成したハニカム構造成形体、縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成した格子状構造成形体、チップウレタン樹脂成形体、チップフェルト成形体、ダンボール成形体のうちの少なくとも1つが用いられており、
前記2枚の板部の間に補強部材が介在し、当該補強部材の長手方向の両端部において、各端部の一部のみを覆うように前記嵩上げ架橋材の一部分が突出しており、
前記積層板は車両用内装材であることを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記2枚の板部の間に複数の嵩上げ架橋材が介在していることを特徴とする請求項1に記載の積層板。
【請求項3】
前記縦壁部を有するエンボス形状成形体として、合成樹脂素材、合成樹脂発泡素材、または、金属素材のうちのいずれかが用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層板。
【請求項4】
前記縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成したハニカム構造成形体若しくは前記縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成した格子状構造成形体として、合成樹脂素材、合成樹脂発泡素材、金属素材、または紙素材のうちのいずれかが用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層板。
【請求項5】
前記縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成したハニカム構造成形体若しくは前記縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成した格子状構造成形体として、プレス抜き成形された合成樹脂素材または合成樹脂発泡素材、射出成形された合成樹脂素材または合成樹脂発泡素材のうちのいずれかが用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層板。
【請求項6】
前記補強部材として、金属製の異形押出し成形品、合成樹脂製の異形押出し成形品若しくはプレス成形品のうちの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層板。
【請求項7】
前記2枚の板部は、厚さがそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項1?6のうちいずれか1項に記載の積層板。
【請求項8】
前記2枚の板部は、ポリプロピレン樹脂に充填材とガラス長繊維の少なくとも一方を配合した素材で形成されており、2枚の板部は、前記充填材の種類、充填材の配合分量、ガラス長繊維の長さ、ガラス長繊維の配合分量のうちの少なくとも1つが異なっていることを特徴とする請求項1?7のうちいずれか1項に記載の積層板。
【請求項9】
前記2枚の板部のうち少なくとも一方の板部の外面に、被覆材で覆われた被覆部が形成されていることを特徴とする請求項1?8のうちいずれか1項に記載の積層板。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし9に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1)本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
2)本件特許の請求項1?9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


(29条)
1.特開2006-334801号公報
2.特開平11-216789号公報
3.実願平5-74051号(実開平7-37629号)のCD-ROM
4.特公平1-54186号公報
なお、刊行物1?4は、甲第1?4号証に同じである。

請求項1について、刊行物1記載の発明と同一、又は、容易。
請求項2?5について、刊行物1記載の発明、及び、刊行物2?4記載事項から容易。
請求項6?9について、刊行物1記載の発明から容易。

(36条)
本発明の効果は、段落0009のとおり、「強度を高める」、「歪みの発生を抑制する」ことであるが、そのために必要と解される「ブロー成形」が、請求項1に、特定されていない。

(3)刊行物の記載
刊行物1には、請求項1、3、段落0001、0006、0016、0018、0019、0021等の記載から、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。かっこ内は、刊行物1の対応部分を示す。

2枚の樹脂製の板部(表壁2、裏壁3)の間に嵩上げ架橋材(発泡体8)が介在しているとともに、前記2枚の板部の端部同士が溶着されているブロー成形品(段落0019、0021)である積層板であって、
前記嵩上げ架橋材として、熱可塑性樹脂発泡成形体(発泡体8)が用いられており、
前記2枚の板部の間に補強部材(補強材9)が介在し、補強部材は熱可塑性樹脂発泡成形体の収容部に嵌め込み状に配置される(段落0016)が、補強部材の少なくとも一方の端部には熱可塑性樹脂発泡成形体の介在しない空洞部を形成した態様とすることもでき(段落0018)、
前記積層板は車両用内装材(段落0001)である積層板。

(4)判断
ア.特許法第29条について
本件発明1と引用発明とを対比する。
補強部材の長手方向の両端部において、本件発明1は「各端部の一部のみを覆うように前記嵩上げ架橋材の一部分が突出して」いるが、引用発明は、「熱可塑性樹脂発泡成形体(嵩上げ架橋材)の介在しない空洞部を形成した態様とすることもでき」るものである。

刊行物1には、引用発明の「空洞部を形成した態様」の具体的形態についての記載は一切ない。
そのため、引用発明の「熱可塑性樹脂発泡成形体(嵩上げ架橋材)の介在しない空洞部を形成した態様」が、本件発明1の「各端部の一部のみを覆うように前記嵩上げ架橋材の一部分が突出して」いるものであるとすることはできない。
また、引用発明を本件発明1のようにする動機、示唆は、いずれの刊行物にも認められない。
そして、当該事項により、本件発明1は、強度を高める、歪みの発生を抑制する、成形性を向上、異音発生を抑制(段落0009、0024、0035)という効果を奏するものである。
本件発明1は、引用発明であるとも、引用発明及び刊行物2?4記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

本件発明2?9は、本件発明1の構成を全て含むものであるから、同様に、引用発明及び刊行物2?4記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ.特許法第36条について
訂正により、本件発明1の「積層板」は「ブロー成形品」であることが特定され、取消理由は解消した。

ウ.特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は訂正事項により追加された「ブロー成形品」なる事項は、物の製造方法が記載され、不明確と主張するが、「ブロー成形品」は、物の状態を示しており、一般的技術用語でもあるから、不明確とは言えない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の熱可塑性樹脂製の板部の間に嵩上げ架橋材が介在しているとともに、前記2枚の板部の端部同士が溶着されているブロー成形品である積層板であって、
前記嵩上げ架橋材として、熱可塑性樹脂発泡成形体、上下2枚の金属板の間に合成樹脂シートまたは合成樹脂発泡シートを積層した成形体、縦壁部を有するエンボス形状成形体、縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成したハニカム構造成形体、縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成した格子状構造成形体、チップウレタン樹脂成形体、チップフェルト成形体、ダンボール成形体のうちの少なくとも1つが用いられており、
前記2枚の板部の間に補強部材が介在し、当該補強部材の長手方向の両端部において、各端部の一部のみを覆うように前記嵩上げ架橋材の一部分が突出しており、
前記積層板は車両用内装材であることを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記2枚の板部の間に複数の嵩上げ架橋材が介在していることを特徴とする請求項1に記載の積層板。
【請求項3】
前記縦壁部を有するエンボス形状成形体として、合成樹脂素材、合成樹脂発泡素材、または、金属素材のうちのいずれかが用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層板。
【請求項4】
前記縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成したハニカム構造成形体若しくは前記縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成した格子状構造成形体として、合成樹脂素材、合成樹脂発泡素材、金属素材、または紙素材のうちのいずれかが用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層板。
【請求項5】
前記縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成したハニカム構造成形体若しくは前記縦壁部を有し当該縦壁部に通気孔を形成した格子状構造成形体として、プレス抜き成形された合成樹脂素材または合成樹脂発泡素材、射出成形された合成樹脂素材または合成樹脂発泡素材のうちのいずれかが用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層板。
【請求項6】
前記補強部材として、金属製の異形押出し成形品、合成樹脂製の異形押出し成形品若しくはプレス成形品のうちの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層板。
【請求項7】
前記2枚の板部は、厚さがそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項1?6のうちいずれか1項に記載の積層板。
【請求項8】
前記2枚の板部は、ポリプロピレン樹脂に充填材とガラス長繊維の少なくとも一方を配合した素材で形成されており、2枚の板部は、前記充填材の種類、充填材の配合分量、ガラス長繊維の長さ、ガラス長繊維の配合分量のうちの少なくとも1つが異なっていることを特徴とする請求項1?7のうちいずれか1項に記載の積層板。
【請求項9】
前記2枚の板部のうち少なくとも一方の板部の外面に、被覆材で覆われた被覆部が形成されていることを特徴とする請求項1?8のうちいずれか1項に記載の積層板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-02-14 
出願番号 特願2013-245937(P2013-245937)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 113- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩本 昌大村松 宏紀  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 山田 由希子
千葉 成就
登録日 2016-01-29 
登録番号 特許第5876461号(P5876461)
権利者 盟和産業株式会社
発明の名称 積層板  
代理人 高松 俊雄  
代理人 高橋 俊一  
代理人 三好 秀和  
代理人 三好 秀和  
代理人 伊藤 正和  
代理人 高松 俊雄  
代理人 高橋 俊一  
代理人 伊藤 正和  
代理人 岩▲崎▼ 幸邦  
代理人 岩▲崎▼ 幸邦  

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