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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H02J
管理番号 1326971
異議申立番号 異議2016-700324  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-19 
確定日 2017-03-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5797313号発明「回生サーキュレータ、高周波電源装置、及び高周波電力の回生方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5797313号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9-16〕、〔17-21〕について訂正することを認める。 特許第5797313号の請求項2ないし8、10ないし16、18ないし21に係る特許を維持する。 特許第5797313号の請求項1、9、17に係る特許についての特許異議の申立を却下する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第5797313号に係る出願は、平成26年8月25日の出願であって、平成27年8月28日に特許の設定登録がなされた。
これに対して、特許異議申立人より平成28年4月19日に、本件請求項1ないし21に係る発明の特許について特許異議の申立がなされ、平成28年7月12日付で取消理由が通知され(発送日:平成28年7月15日)、これに対し特許権者より平成28年8月26日付で意見書及び訂正請求書が提出され、平成28年10月26日付で取消理由が通知され(発送日:平成28年11月1日)、これに対し特許権者より平成28年12月8日付で意見書及び訂正請求書が提出されたものである。なお、特許異議申立人は意見書提出を希望していない。


2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成28年8月26日付の訂正請求は特許法第120条の5第7項の規定により取り下げたものとみなすので、平成28年12月8日付の訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

ア 請求項1?8からなる一群の請求項に係る訂正
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、請求項1に記載の回生サーキュレータ。」とあるのを、独立形式に改め、「高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生する回生サーキュレータであり、前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、回生サーキュレータ。」に訂正する。
(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置であり、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、請求項1又は2に記載の回生サーキュレータ。」とあるうち、請求項1に従属するものについて、独立形式に改め、「高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生する回生サーキュレータであり、前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、回生サーキュレータ。」に訂正する。
(エ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記伝送経路から高周波電力を片方向に取り込む方向性結合器を備え、前記方向性結合器は、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の回生サーキュレータ。」とあるのを、「前記伝送経路から高周波電力を片方向に取り込む方向性結合器を備え、前記方向性結合器は、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項2又は3に記載の回生サーキュレータ。」に訂正する。

イ 請求項9?16からなる一群の請求項に係る訂正
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項10に「前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を取り込み回生することを特徴とする、請求項9に記載の高周波電源装置。」とあるのを、独立形式に改め、「高周波負荷に高周波電力を供給する高周波電源と、前記高周波電源が備える高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路から高周波電力を片方向に取り込んで回生する回生サーキュレータを備え、前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を取り込み回生することを特徴とする高周波電源装置。」に訂正する。
(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11に「前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置であり、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、請求項9又は10に記載の高周波電源装置。」とあるうち、請求項9に従属するものについて、独立形式に改め、「高周波負荷に高周波電力を供給する高周波電源と、前記高周波電源が備える高周波増幅回路と高週波負荷との間の伝送経路から高周波電力を片方向に取り込んで回生する回生サーキュレータを備え、前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置であり、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする高周波電源装置。」に訂正する。
(エ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12に「前記伝送経路から高周波電力を片方向に取り込む方向性結合器を備え、前記方向性結合器は、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧と比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項9?11の何れか一つに記載の高周波電源装置。」とあるのを、「前記伝送経路から高周波電力を片方向に取り込む方向性結合器を備え、前記方向性結合器は、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項10又は11に記載の高周波電源装置。」に訂正する。

ウ 請求項17?21からなる一群の請求項に係る訂正
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項17を削除する。
(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項18に「前記回生サーキュレータにおいて、入力端を前記伝送経路上において、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置に接続し、前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスによって前記接続位置から高周波電力を取り込み回生することを特徴とする、請求項17に記載の高周波電力の回生方法。」とあるのを、独立形式に改め、「高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生サーキュレータによって回生する方法であり、前記回生サーキュレータの入力端を前記伝送経路上に接続し、前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記電送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記回生サーキュレータにおいて、入力端を前記伝送経路上において、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置に接続し、前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスによって前記接続位置から高周波電力を取り込み回生することを特徴とする高周波電力の回生方法。」に訂正する。
(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項19に「前記回生サーキュレータにおいて、入力端を前記伝送経路上において、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置に接続し、前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスによって前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、請求項17又は18に記載の高周波電力の回生方法。」とあるうち、請求項17に従属するものについて、独立形式に改め、「高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生サーキュレータによって回生する方法であり、前記回生サーキュレータの入力端を前記伝送経路上に接続し、前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記回生サーキュレータにおいて、入力端を前記伝送経路上において、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置に接続し、前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスによって前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする高周波電力の回生方法。」に訂正する。
(エ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項20に「前記並列インピーダンスによって、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項17?19の何れか一つに記載の高周波電力の回生方法。」とあるのを、「前記並列インピーダンスによって、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項18又は19に記載の高周波電力の回生方法。」に訂正する。
(オ)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項21に「高周波電力の交流出力を直流に変換した後に回生することを特徴とする、請求項17?19の何れか一つに記載の高周波電力の回生方法。」とあるのを、「高周波電力の交流出力を直流に変換した後に回生することを特徴とする、請求項18又は19に記載の高周波電力の回生方法。」に訂正する。


(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.一群の請求項について
訂正前の請求項1?8において、訂正前の請求項2?8は、訂正前の請求項1を引用しているものであって、訂正によって訂正前の請求項1が削除されることに伴い訂正されるものであり、訂正前の請求項9?16において、訂正前の請求項10?16は、訂正前の請求項9を引用しているものであって、訂正によって訂正前の請求項9が削除されることに伴い訂正されるものであり、訂正前の請求項17?21において、訂正前の請求項18?21は、訂正前の請求項17を引用しているものであって、訂正によって訂正前の請求項17が削除されることに伴い訂正されるものであるから、これらの訂正は一群の請求項ごとに請求されたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。

イ.訂正の適否
(ア)請求項1?8からなる一群の請求項に係る訂正の適否
a 訂正事項1
(a) 訂正事項1は特許請求の範囲の請求項1を削除するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項1は特許請求の範囲の請求項1を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項1は特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
b 訂正事項2
(a) 訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項2は引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項2は引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
c 訂正事項3
(a) 訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1または2の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用するものについて、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項3は引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項3は引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
d 訂正事項4
(a) 訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1から3の何れか一つの記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1を引用しないものとし、訂正前の請求項2又は3の従属形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項4は訂正前の請求項1についての引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項4は訂正前の請求項1についての引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(イ)請求項9?16からなる一群の請求項に係る訂正の適否
a 訂正事項1
(a) 訂正事項1は特許請求の範囲の請求項9を削除するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項1は特許請求の範囲の請求項9を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項1は特許請求の範囲の請求項9を削除するものであるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項9に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
b 訂正事項2
(a) 訂正事項2は、訂正前の請求項10が訂正前の請求項9の記載を引用する記載であったものを、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項2は引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項2は引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項10に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
c 訂正事項3
(a) 訂正事項3は、訂正前の請求項11が訂正前の請求項9または10の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項9を引用するものについて、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項3は引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項3は引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項11に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
d 訂正事項4
(a) 訂正事項4は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項9?11の何れか一つの記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項9を引用しないものとし、訂正前の請求項10又は11の従属形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項4は訂正前の請求項9についての引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項4は訂正前の請求項9についての引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項12に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(ウ)請求項17?21からなる一群の請求項に係る訂正の適否
a 訂正事項1
(a) 訂正事項1は特許請求の範囲の請求項17を削除するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項1は特許請求の範囲の請求項17を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項1は特許請求の範囲の請求項17を削除するものであるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項17に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
b 訂正事項2
(a) 訂正事項2は、訂正前の請求項18が訂正前の請求項17の記載を引用する記載であったものを、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項2は引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項2は引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項18に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
c 訂正事項3
(a) 訂正事項3は、訂正前の請求項19が訂正前の請求項17または18の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項17を引用するものについて、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項3は引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項3は引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項19に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
d 訂正事項4
(a) 訂正事項4は、訂正前の請求項20が訂正前の請求項17?19の何れか一つの記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項17を引用しないものとし、訂正前の請求項18又は19の従属形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項4は訂正前の請求項17についての引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項4は訂正前の請求項17についての引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項20に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
e 訂正事項5
(a) 訂正事項5は、訂正前の請求項21が訂正前の請求項17?19の何れか一つの記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項17を引用しないものとし、訂正前の請求項18又は19の従属形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(b) 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項5は請求項17についての引用関係を解消する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c) 訂正事項5は請求項17についての引用関係を解消する訂正であるから、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d) 本件は、訂正前の全ての請求項1?21について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項21に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。


(3)むすび
したがって、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。


3.特許異議の申立について
(1)本件発明
本件訂正により訂正された請求項1ないし21に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」等という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生する回生サーキュレータであり、
前記回生サーキュレーターの入力端は前記伝送経路上に接続され、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、回生サーキュレータ。
【請求項3】
高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生する回生サーキュレータであり、
前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置であり、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、回生サーキュレータ。
【請求項4】
前記伝送経路から高周波電力を片方向に取り込む方向性結合器を備え、
前記方向性結合器は、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、
回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項2又は3に記載の回生サーキュレータ。
【請求項5】
前記方向性結合器は変成器を備え、
前記変成器の巻き数比は、前記設定電圧と回生サーキュレータの出力端の電圧の電圧比に基づく値であることを特徴とする、請求項4に記載の回生サーキュレータ。
【請求項6】
前記変成器の交流出力を直流に変換する整流器を備えることを特徴とする、請求項5に記載の回生サーキュレータ。
【請求項7】
前記変成器の2次側にコンデンサを並列に備えることを特徴とする、請求項5又は6に記載の回生サーキュレータ。
【請求項8】
前記整流器の後段に直流リアクトルを直列に備えることを特徴とする、請求項6に記載の回生サーキュレータ。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
高周波負荷に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記高周波電源が備える高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路から高周波電力を片方向に取り込んで回生する回生サーキュレータを備え、
前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を取り込み回生することを特徴とする、高周波電源装置。
【請求項11】
高周波負荷に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記高周波電源が備える高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路から高周波電力を片方向に取り込んで回生する回生サーキュレータを備え、
前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置であり、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、高周波電源装置。
【請求項12】
前記伝送経路から高周波電力を片方向に取り込む方向性結合器を備え、
前記方向性結合器は、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、
回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項13】
前記方向性結合器は変成器を備え、
前記変成器の巻き数比は、前記設定電圧と回生サーキュレータの出力端の電圧の電圧比に基づく値であることを特徴とする、請求項12に記載の高周波電源装置。
【請求項14】
前記変成器の交流出力を直流に変換する整流器を備えることを特徴とする、請求項13に記載の高周波電源装置。
【請求項15】
前記変成器の2次側にコンデンサを並列に備えることを特徴とする、請求項13又は14に記載の高周波電源装置。
【請求項16】
前記整流器の後段に直流リアクトルを直列に備えることを特徴とする、請求項14に記載の高周波電源装置。
【請求項17】
(削除)
【請求項18】
高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生サーキュレータによって回生する方法であり、
前記回生サーキュレータの入力端を前記伝送経路上に接続し、
前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータにおいて、入力端を前記伝送経路上において、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置に接続し、
前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスによって前記接続位置から高周波電力を取り込み回生することを特徴とする、高周波電力の回生方法。
【請求項19】
高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生サーキュレータによって回生する方法であり、前記回生サーキュレータの入力端を前記伝送経路上に接続し、
前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータにおいて、入力端を前記伝送経路上において、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置に接続し、
前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスによって前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、高周波電力の回生方法。
【請求項20】
前記並列インピーダンスによって、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、
回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項18又は19に記載の高周波電力の回生方法。
【請求項21】
高周波電力の交流出力を直流に変換した後に回生することを特徴とする、請求項18又は19に記載の高周波電力の回生方法。」


(2)取消理由
訂正前の請求項1、3、4、9、11、12、17、19、20、21に係る特許に対して平成28年10月26日付で通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
「本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1(設定登録時)は、「高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生する回生サーキュレータであり、前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、回生サーキュレータ。」と記載されているから、回生サーキュレータが定在波を用いずに電力を回生するものが含まれることとなる。
しかし、発明の詳細な説明には、回生サーキュレータの入力端が定在波の腹の部分に相当する位置に接続されるものしか開示がなく、回生サーキュレータの入力端が伝送経路上に接続されていれば、接続位置が定在波の腹の部分に相当する位置に接続されていなくてもよいものを含んだ請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではない(請求項1+請求項2、又は、請求項1+請求項3しか、開示が無いのではないか。)から、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。請求項9、17も同様である。
更に、請求項1を引用する請求項4、請求項9を引用する請求項12、請求項17を引用する20、21も同様である。
(2)請求項1(設定登録時)が、仮に回生サーキュレータが定在波を用いるものであるとしても、回生サーキュレータの入力端が定在波の節の部分に相当する位置に接続されれば回生は行われないから、定在波を用いる回生サーキュレータの入力端が単に伝送経路上に接続されている場合、どの様にして回生を行うのか発明の詳細な説明にも何ら開示が無く不明であるから、請求項1の記載は明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載は当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。請求項9、17も同様である。特許異議申立書「(4)〈請求項1〉(e)」(29-31頁)参照のこと。
(3)請求項1(設定登録時)を引用する請求項2を引用する請求項3は、伝送経路の端部がオープン状態で定在波が腹の位置に回生サーキュレータを接続すれば、高周波増幅回路の出力端から伝送経路上において高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の位置は定在波の節の位置になり、所望の効果を奏することはできず、何故この様な回生サーキュレータの接続を行うのか不明であり、又、請求項2に記載の事項は第1の態様に相当するものであり、請求項3に記載の事項は第2の態様に相当するものであるが、第1の態様と第2の態様を両方同時に行うことは発明の詳細な説明に記載が無い。請求項11、19も同様である。特許異議申立書「(4)〈請求項3〉(b)」(33-34頁)参照のこと。」


(3)取消理由に対する当審の判断
本件訂正により、取消理由の対象であった、訂正前の請求項1、9、17が削除されると共に、請求項間の引用関係を解消することによって、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項4、訂正前の請求項9を引用する訂正前の請求項12、訂正前の請求項17を引用する訂正前の請求項20、訂正前の請求項17を引用する訂正前の請求項21、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3、訂正前の請求項9を引用する訂正前の請求項10を引用する訂正前の請求項11、訂正前の請求項17を引用する訂正前の請求項18を引用する訂正前の請求項19が存在しなくなった。
そうすると、取消理由の対象が存在しなくなったので、取消理由では当該請求項に係る特許を取り消すことはできない。


(4)採用しなかった特許異議申立理由
特許異議申立人が提出した甲第3号証(Tadashi Suetsugu "Clamping of Switch Peak Voltage with Diode and Transformer at Output of Class E Amplifier for Renewable Energy Applications",INTERNATIONAL JOURNAL of RENEWABLE ENERGY RESEARCH,vol.3,No.2,2013,Page359-363)には集中定数回路のみが示されており、分布定数回路を前提とする本件特許とは全く技術的に異なるものであるから、本件発明4、5、12、13、20が甲第3号証に記載された発明とすることはできず、本件発明2、3、6-8、10、11、13-16、18、19-21が甲第3号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
特許異議申立人が提出した甲第1号証(国際公開2011/052653号)には、高周波電力回生装置であって、サーキュレータが伝送経路の一部を構成しているから、「高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生する回生サーキュレータであり、前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され」との構成を採用することはできず、本件発明2-8、10-16、18-21が甲第1号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項3-8、11-16、19-21には、伝送経路の端部がショート状態にあることが記載されていないから、実施できない発明が含まれている旨主張するが、高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長を採用することは、伝送経路の端部がショート状態であることを意味しており、しかも伝送経路の端部がショート状態にあるか否かは回路構成ではなく回路の使用状況を示すものであるから、発明の構成は明確であり、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしており、請求人の主張に理由はない。


(5)むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項2-8、10-16、18-21に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件請求項2-8、10-16、18-21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項1、9、17に係る特許は、訂正により削除されたため、本件請求項1、9、17に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生する回生サーキュレータであり、
前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、回生サーキュレータ。
【請求項3】
高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生する回生サーキュレータであり、
前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置であり、 前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、回生サーキュレータ。
【請求項4】
前記伝送経路から高周波電力を片方向に取り込む方向性結合器を備え、
前記方向性結合器は、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、
回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項2又は3に記載の回生サーキュレータ。
【請求項5】
前記方向性結合器は変成器を備え、
前記変成器の巻き数比は、前記設定電圧と回生サーキュレータの出力端の電圧の電圧比に基づく値であることを特徴とする、請求項4に記載の回生サーキュレータ。
【請求項6】
前記変成器の交流出力を直流に変換する整流器を備えることを特徴とする、請求項5に記載の回生サーキュレータ。
【請求項7】
前記変成器の2次側にコンデンサを並列に備えることを特徴とする、請求項5又は6に記載の回生サーキュレータ。
【請求項8】
前記整流器の後段に直流リアクトルを直列に備えることを特徴とする、請求項6に記載の回生サーキュレータ。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
高周波負荷に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記高周波電源が備える高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路から高周波電力を片方向に取り込んで回生する回生サーキュレータを備え、
前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置であり、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を取り込み回生することを特徴とする、高周波電源装置。
【請求項11】
高周波負荷に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記高周波電源が備える高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路から高周波電力を片方向に取り込んで回生する回生サーキュレータを備え、
前記回生サーキュレータの入力端は前記伝送経路上に接続され、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータの入力端の前記伝送経路上の接続位置は、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置であり、
前記回生サーキュレータは、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスは前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、高周波電源装置。
【請求項12】
前記伝送経路から高周波電力を片方向に取り込む方向性結合器を備え、
前記方向性結合器は、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、
回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項13】
前記方向性結合器は変成器を備え、
前記変成器の巻き数比は、前記設定電圧と回生サーキュレータの出力端の電圧の電圧比に基づく値であることを特徴とする、請求項12に記載の高周波電源装置。
【請求項14】
前記変成器の交流出力を直流に変換する整流器を備えることを特徴とする、請求項13に記載の高周波電源装置。
【請求項15】
前記変成器の2次側にコンデンサを並列に備えることを特徴とする、請求項13又は14に記載の高周波電源装置。
【請求項16】
前記整流器の後段に直流リアクトルを直列に備えることを特徴とする、請求項14に記載の高周波電源装置。
【請求項17】
(削除)
【請求項18】
高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生サーキュレータによって回生する方法であり、
前記回生サーキュレータの入力端を前記伝送経路上に接続し、
前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータにおいて、入力端を前記伝送経路上において、前記伝送経路上においてインピーダンス不整合により発生する定在波の腹部分に相当する位置に接続し、
前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスによって前記接続位置から高周波電力を取り込み回生することを特徴とする、高周波電力の回生方法。
【請求項19】
高周波電源の高周波増幅回路と高周波負荷との間の伝送経路上から高周波電力を回生サーキュレータによって回生する方法であり、
前記回生サーキュレータの入力端を前記伝送経路上に接続し、
前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記回生サーキュレータにおいて、入力端を前記伝送経路上において、高周波増幅回路の出力端から、前記伝送経路上において前記高周波電源が出力する高周波の波長(λ)の4分の1波長(λ/4)の奇数倍の電気長の位置に接続し、
前記回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて、前記伝送経路に対して並列インピーダンスを構成し、
前記並列インピーダンスによって前記接続位置から高周波電力を片方向で取り込み回生することを特徴とする、高周波電力の回生方法。
【請求項20】
前記並列インピーダンスによって、回生サーキュレータの入力端の電圧と設定電圧との比較に基づいて前記伝送経路から高周波電力を取り込み、
回生動作中において、回生サーキュレータの入力端の電圧の上限を設定電圧に制限することを特徴とする、請求項18又は19に記載の高周波電力の回生方法。
【請求項21】
高周波電力の交流出力を直流に変換した後に回生することを特徴とする、請求項18又は19に記載の高周波電力の回生方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-02-22 
出願番号 特願2014-170664(P2014-170664)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H02J)
P 1 651・ 536- YAA (H02J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石川 晃  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 堀川 一郎
矢島 伸一
登録日 2015-08-28 
登録番号 特許第5797313号(P5797313)
権利者 株式会社京三製作所
発明の名称 回生サーキュレータ、高周波電源装置、及び高周波電力の回生方法  
代理人 塩野入 章夫  
代理人 塩野入 章夫  

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