• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C23C
管理番号 1326973
異議申立番号 異議2016-700545  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-15 
確定日 2017-03-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5832748号発明「硬質材料で被覆された物体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5832748号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕、〔10?11〕について訂正することを認める。 特許第5832748号の請求項1?6、8?11に係る特許を維持する。 特許第5832748号の請求項7に対する特許異議申立ては却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5832748号の請求項1?11に係る特許についての出願は、2009年1月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年3月12日(DE)ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成27年11月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人森治により特許異議の申立てがなされ、平成28年9月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年11月30日に意見書の提出及び訂正の請求がなされ、この訂正の請求に対して特許異議申立人に意見を求めたところ、平成29年2月7日に意見書の提出がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)請求項1に記載された「外層が、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなり、この外層が400?800MPaの範囲内の圧縮応力を有し、TiCN層またはAl_(2)O_(3)層がこの外層の下に配置されていることを特徴とする、」を、「前記複数の層は、Al_(2)O_(3)層と、このAl_(2)O_(3)層上に直接積層された外層と、を有し、前記外層は、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなり、この外層が400?800MPaの範囲内の圧縮応力を有し、六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%であることを特徴とする、」に訂正する(以下、「訂正事項1」という)。

(2)請求項7を削除する(以下、「訂正事項2」という)。

(3)請求項8に記載された「請求項1から7のいずれか一項に」を「請求項1から6のいずれか一項に」に訂正する(以下、「訂正事項3」という)。

(4)請求項10に記載された「この外層が100?1100MPaの範囲内の圧縮応力を有し、TiCN層またはAl_(2)O_(3)層がこの外層の下に配置されている」を「この外層が100?1100MPaの範囲内の圧縮応力を有するとともに六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%であり、前記外層は、Al_(2)O_(3)層の上に直接形成されている」に訂正する(以下、「訂正事項4」という)。

2 訂正要件の判断
(1)請求項1?9からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「複数の層」の「TiCN層またはAl_(2)O_(3)層」が「外層の下に配置されている」ことを、「Al_(2)O_(3)層」に減縮し、さらに、「外層」が「Al_(2)O_(3)層上に直接積層された」ことに減縮するものであり、また、訂正前の請求項1に記載された「外層」の組成を「六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%である」ことに減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項1に関連する記載として、願書に添付された明細書及び特許請求の範囲には、「前記Ti_(1-x)Al_(x)N層、前記Ti_(1-x)Al_(x)C層、または前記Ti_(1-x)Al_(x)CN層が最大25%の六方晶AlNを含有する」(請求項7)こと、及び、「Al_(2)O_(3)層を塗布し、塩化アルミニウム、塩化チタン、アンモニア、およびエテンをガス雰囲気中に導入して、最外層を塗布する。」(段落【0020】)ことが記載されているから、訂正事項1は、願書に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2に整合させるために、請求項8における引用請求項を変更したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

エ 一群の請求項について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を訂正するものであり、訂正前の請求項2?9は請求項1を引用するため、請求項1?9は一群の請求項である。また、訂正事項2は、訂正前の請求項7を訂正するものであり、訂正事項3は、訂正前の請求項8を訂正するものである。
よって、訂正事項1?3に係る本件訂正請求は、一群の請求項1?9について請求されたものである。

(2)請求項10?11からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項10に記載された「複数の層」の「TiCN層またはAl_(2)O_(3)層」が「外層の下に配置されている」ことを、「Al_(2)O_(3)層」に減縮し、さらに、「外層」が「Al_(2)O_(3)層上に直接形成されている」ことに減縮するものであり、また、訂正前の請求項10に記載された「外層」の組成を「六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%であ」ることに減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項4に関連する記載として、願書に添付された明細書及び特許請求の範囲には、「前記Ti_(1-x)Al_(x)N層、前記Ti_(1-x)Al_(x)C層、または前記Ti_(1-x)Al_(x)CN層が最大25%の六方晶AlNを含有する」(請求項7)こと、及び、「Al_(2)O_(3)層を塗布し、塩化アルミニウム、塩化チタン、アンモニア、およびエテンをガス雰囲気中に導入して、最外層を塗布する。」(段落【0020】)ことが記載されているから、訂正事項4は、願書に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項4は、訂正前の請求項10を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 一群の請求項について
訂正事項4は、訂正前の請求項10を訂正するものであり、訂正前の請求項11は請求項10を引用するため、請求項10?11は一群の請求項である。
よって、訂正事項4に係る本件訂正請求は、一群の請求項10?11について請求されたものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?9〕、〔10?11〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1 本件発明
(1)本件訂正請求により訂正された請求項1?11に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明11」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される次のとおりである。

【請求項1】
硬質材料で被覆され、CVDによって塗布された複数の層を有する物体であって、
前記複数の層は、Al_(2)O_(3)層と、このAl_(2)O_(3)層上に直接積層された外層と、を有し、前記外層は、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなり、この外層が400?800MPaの範囲内の圧縮応力を有し、六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%であることを特徴とする、硬質材料で被覆された物体。
【請求項2】
前記Ti_(1-x)Al_(x)N層、前記Ti_(1-x)Al_(x)C層、または前記Ti_(1-x)Al_(x)CN層が、単層からなり立方晶構造を有するか、あるいは複数の層からなり、立方晶の主相とともにウルツ鉱構造を有する、および/またはTiNを含むさらなる層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項3】
最大30質量%の非晶質層成分が前記外層中に存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項4】
前記外層の塩素含有量が0.01?3原子%の範囲内であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項5】
前記外層が複数の層を含み、その各層が1?5nmの厚さを有し、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CNから選択される同一のまたは変化する組成を有し、この外層の全体の厚さが1μm?5μmであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項6】
超硬合金、サーメット、またはセラミックで構成される基体本体に塗布されているすべての層の全体の厚さが5μm?25μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記外層の組成式中のxが0.7≦x≦0.9であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項9】
前記外層の層は交互に変化する組成を有することを特徴とする、請求項5に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項10】
硬質材料で被覆され、CVDによって塗布された複数の層を有する物体であって、
外層が複数の層を含み、その各層が1?5nmの厚さを有し、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)から選択される同一のまたは変化する組成を有し、この外層の全体の厚さが1μm?5μmであり、この外層が100?1100MPaの範囲内の圧縮応力を有するとともに六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%であり、前記外層は、Al_(2)O_(3)層の上に直接形成されていることを特徴とする、硬質材料で被覆された物体。
【請求項11】
前記外層の層は交互に変化する組成を有することを特徴とする、請求項10に記載の硬質材料で被覆された物体。

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?11に係る特許に対して平成28年9月1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)発明の詳細な説明には、当業者が請求項1?11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえないから、本件特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)請求項1?11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明といえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてない。
(3)請求項1?11に係る発明は、明確であるといえないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしてない。

3 取消理由に対する当審の判断
(1)特許法第36条第4項第1号
ア 本件発明1?6、8?11の「圧縮応力」に関しての検討
本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明には、「本発明による硬質材料で被覆された物体を製造するために、超硬合金またはサーメットの物体を、700℃?900℃の範囲内の被覆温度において、キャリアガスに加えて、TiCNの塗布の場合には塩化チタン、メタン、およびアンモニアを含有し、または酸化アルミニウムの塗布の場合には塩化アルミニウムおよび二酸化炭素を含有するガス雰囲気中に導入する。上記基材またはTiCNベース層の一方の上に接合層を形成した後、その上にAl_(2)O_(3)層を塗布し、塩化アルミニウム、塩化チタン、アンモニア、およびエテンをガス雰囲気中に導入して、最外層を塗布する。好ましい層厚さは2?5μmの範囲内である。すべての層の層厚さは2?10μm、好ましくは3?7μmである。」(段落【0020】)と、本件発明の「硬質材料で被覆された物体」の製造方法が記載されているが、外層の圧縮応力の制御方法は具体的に記載されていない。
しかしながら、甲第6号証(山本兼司他、AIP法により作製したTiN,CrN,Cr_(2)NおよびAlTiN膜の熱膨張率および二軸弾性率の温度依存性、表面技術、1999年、第50巻、第1号、第52?57頁)の「気相コーティングの残留応力は皮膜自身の固有応力および基板と皮膜の熱膨張率差に起因する熱応力の和よりなり」(第53頁右欄14?16行)との記載によれば、皮膜の残留応力が、皮膜自身の固有応力、及び、基板と皮膜の熱膨張率差に起因する熱応力により定まることは技術常識といえるから、本件発明の外層の圧縮応力も、外層の固有応力と、外層とAl_(2)O_(3)層の熱膨張率差に起因する熱応力によって定まるものといえる。
そして、外層の固有応力と熱膨張率、及び、Al_(2)O_(3)層の熱膨張率について検討すると、Al_(2)O_(3)層が特定の熱膨張率を有していることは技術常識といえるし、外層、すなわち、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなる外層の固有応力及び熱膨張率は、その組成によって調整できることも技術常識といえる。
また、乙第1号証(Min Zhou et al., Phase transition and properties of Ti-Al-N thin films prepared by r.f.-plasma assisted magnetron sputtering, Thin Solid Films, 1999年, Vol.339, p.203-208)には、「The AlN lattice parameter is smaller than the TiN lattice parameter, so the volume shrinks when the B1 phase transforms to the B4 phase. The shrinking of the volume generates tensile stress, so the compressive residual stress of the films decrease sharply.」(第206頁右欄下から2行?第207頁左欄3行、当審仮訳:AlNの格子定数は、TiNの格子定数よりも小さいため、B1相がB4相に移行すると体積が収縮する。体積が収縮することにより、引張応力が生じ、これにより残留圧縮応力は急激に低下する。)と記載されていることから、Ti_(1-x)Al_(x)N等の外層に、六方晶窒化アルミニウムを含有することで、外層の残留圧縮応力が影響を受けることも技術常識といえる。
さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「PVDによって最大60%のアルミニウム含有率を有する単相層として製造可能なTi-Al-N層の使用が開示されている。しかし、より高いアルミニウム含有率では、立方晶および六方晶のTiAlNの混合物が形成され、さらに高いアルミニウム含有率では、より軟質であり耐摩耗性ではない六方晶ウルツ鉱構造が形成される。」(段落【0003】)及び「1000℃を超える温度における従来のCVD法によるTiAlの堆積もまた、このような高温では準安定状態のTi_(1-x)Al_(x)Nは分解してTiNおよび六法晶AlNになるため、不可能である。」(段落【0006】)と記載され、また、乙第1号証には、「Fig. 2 shows the X-ray diffraction patterns obtained from the as-deposited (Ti_(1-x)Al_(x))N films (x ranging from 0 to 0.8). When the Al concentration (x) was changed from 0 to 0.6, the films were identified as having the cubic B1 structure which is the same structure as pure TiN. When x varies from 0.6 to 0.7, two phases with the cubic B1 structure and the hexagonal B4 structure were detected. For x exceeding 0.7, only a single phase with the hexagonal B4 structure was observed.」(第205頁右欄第7?15行、当審仮訳:図2は、蒸着したままの(Ti_(1-x)Al_(x))N膜(xは0?0.8の範囲)から得られたX線回折パターンを示す。Al濃度(x)を0から0.6に変化させると、純粋なTiNと同じ構造の立方晶B1構造を有すると同定された。xが0.6から0.7まで変化すると、立方晶B1構造および六方晶B4構造の2相が検出された。xが0.7を超えると、六方晶B4構造を有する単一相だけが観察された。)及び「As shown in Fig. 2 and Fig. 3, the coexistence region of the B1 and B4 phases was observed in the composition range from 60 mol% Al to 70 mol% Al. The coexistence is probably attributed to high substrate temperature at deposition because non-equilibrium B1 phase close to the critical composition becomes unstable with increasing substrate temperature.」(第205頁右欄第42?48行、当審仮訳:図2及び図3に示すように、B1相とB4相が共存する領域は、アルミニウムが60mol%?70mol%の組成領域に見られる。臨界組成近傍にある非平衡B1相は基板温度の上昇に伴って不安定になるから、この共存は、蒸着時の基板温度が高いためと考えられる。)と記載されていることから、Ti_(1-x)Al_(x)N等の外層中の六方晶窒化アルミニウムの含有量は、アルミニウム含有量や堆積温度によって調整できることも技術常識といえる。
したがって、これら技術常識を踏まえると、圧縮応力は層の組成や堆積温度などによって調整できるものであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0020】に記載された製造方法において、塩化アルミニウム、塩化チタン、アンモニア、およびエテンをガス雰囲気中の塩化アルミニウムと塩化チタンの含有量を、形成される最外層であるTi_(1-x)Al_(x)N等のアルミニウム含有量xが0.65≦x≦0.9の範囲になるように調整し、700?900℃の範囲で被覆温度を調整し、Al_(2)O_(3)層上にTi_(1-x)AlxN層等の外層を直接蒸着することで、外層中の六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%となるように調整しつつ、その圧縮応力を100?1100MPaの範囲、あるいは、400?800MPaの範囲に調整することは、過度な試行錯誤を要することなく当業者であれば容易に実施できるものと認められる。

イ 本件発明5?6、8?11の「1?5nmの厚さ」に関しての検討
発明の詳細な説明の段落【0020】に記載された製造方法には、外層の各層が「1?5nmの厚さ」の各層を有する外層を被覆するための具体的な製造条件は記載されていない。
しかしながら、CVDによる被覆膜の膜厚は被覆する時間によって制御できることは技術常識であるし、被覆速度が、被覆温度、被覆圧力、原料ガス濃度等の被覆条件で制御できることも技術常識であるから、被覆速度が遅くなるような被覆条件において、被覆時間を制御することで、「1?5nmの厚さ」の膜をCVDによって被覆することは、過度な試行錯誤を要することなく当業者であれば容易に実施できるものと認められる。

ウ 特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人は、本件特許に係る出願の優先日当時の技術常識を考慮しても、当業者が、本件発明の製造条件が理解できない旨(特許異議申立書第57?62頁の3(4)イ(ウ)及び(エ)、平成29年2月7日付け意見書第3頁の3(1)イ(イ)b(a))を主張しているが、上記ア及びイで検討したとおりであるから、特許異議申立人の当該主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、特許権者の平成28年11月30日付け意見書における「外層の400?800MPaの範囲の圧縮応力が、外層をTiC層またはAl_(2)O_(3)層上に直接積層されることによって達成される」(5.(4)(c))との主張が、「Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、又はTi_(1-x)Al_(x)CN皮膜に六方晶AlNを導入することにより、圧縮応力を400?800MPaの範囲に設定することができます」(5.(5))との主張と矛盾するため不合理であると主張している(平成29年2月7日付け意見書第2頁の3(1)イ(ア))。
しかしながら、上記アで検討したとおり、皮膜の残留圧縮応力が皮膜自身の固有応力及び基板と皮膜の熱膨張率差に起因する熱応力により定まるとの技術常識を踏まえると、特許権者の上記主張は、総合して、外層の400?800MPaの範囲の圧縮応力は、外層とAl_(2)O_(3)層が直接積層され、外層に六方晶AlNを導入することで調整しているとの主張と認められるから、不合理な主張であるとはいえない。よって、特許異議申立人の当該主張も採用できない。

エ まとめ
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?6、8?11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえるから、本件特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

(2)特許法第36条第6項第1号
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、発明の解決しようとする課題が「硬質材料で被覆され、改善された耐熱性およびサイクル疲労強度を有する物体を提供することである」(段落【0011】)と記載されている。
そして、発明の詳細な説明の段落【0013】には、「立方晶窒化チタンアルミニウムまたは炭窒化チタンアルミニウムは、準安定結晶系として、被覆温度から冷却した後で100?1100MPaの範囲内、好ましくは400?800MPaの範囲内の圧縮応力を有し、クラック構造は形成せず、全体的には、請求項1に記載のこの層の組み合わせによって、耐摩耗性が非常に高くなることが分かる。周知のTiCNの高い耐摩耗性ならびにAl_(2)O_(3)の低い熱伝導性および高い耐酸化性と、圧縮残留応力を有する外層として、同様に非常に高い摩耗抵抗性および耐酸化性の窒化チタンアルミニウムまたは炭窒化物チタンアルミニウムの被覆とを組み合わせることで、大きな負荷の変化および大きな温度変化を伴う用途において切削耐久性が大きく改善される。」と記載され、また、段落【0020】には、「上記基材またはTiCNベース層の一方の上に接合層を形成した後、その上にAl_(2)O_(3)層を塗布し、塩化アルミニウム、塩化チタン、アンモニア、およびエテンをガス雰囲気中に導入して、最外層を塗布する。」と記載されている。
さらに、平成26年10月22日付けの意見書において、「Ti_(1-x)Al_(x)N被膜においてxを0.65≦x≦0.9の範囲に設定することにより、TiAlN系被膜に六方晶相が導入され、これによって、被膜の硬度及びヤング率が適度に抑えられ、脆性破壊し難くなります」(同意見書の3.(2))、「外層の硬度及びヤング率が減少することにより、外層の靭性が向上するから、耐熱性及びサイクル疲労強度が改善される」(同意見書の3.(4))及び「外層の圧縮残留応力が好適な範囲である100?1100MPaの範囲に保持されるから、過大な圧縮応力による脆性破壊が防止される」(同意見書の3.(4))と主張されていること、並びに、上記(1)に記載した技術常識を考慮すると、上記課題を解決するためには、硬質材料で被覆された物体の外層は、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなること、Al_(2)O_(3)層上に直接積層されていること、外層の圧縮応力が100?1100MPaの範囲内であること、及び、六方晶相窒化アルミニウムの含有量が最大25%であることが必要といえる。
これに対して、本件発明1?6、8?11は、請求項に記載された発明特定事項からみて、上記課題解決手段を反映しているといえるから、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。

イ 特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人は、本件発明の外層中の六方晶窒化アルミニウムの含有量が0%の場合を包含しているため、サポート要件を満足していない旨を主張している(平成29年2月7日付け意見書第4?5頁の3(2)イ)。
しかしながら、上記アで検討したとおり、本件発明の課題は、外層が、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなること、Al_(2)O_(3)層上に直接積層されていること、外層の圧縮応力が100?1100MPaの範囲内であること、及び、六方晶相窒化アルミニウムの含有量が最大25%であることを満足することで、解決されるといえるから、熱応力等の圧縮応力についての技術常識を考慮すると、六方晶窒化アルミニウムの含有量が0%の場合を包含していてもサポート要件違反とはならない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、本件発明の外層の400?800MPaの圧縮応力を有している位置が特定されていないため、硬質材料で被覆された物体で耐熱性及び熱サイクル疲労強度が要求されない部分(例えば刃先以外の部分)が上記圧縮応力を満足し、要求される部分(例えば刃先)が上記圧縮応力を満足しない場合には、本件発明の課題を解決できない旨を主張している(特許異議申立書第64?65頁の3(4)ウ(エ))。
しかしながら、本件特許の請求項1及び10の記載からみて、外層全体の圧縮応力を特定していることは明らかであるから、特許異議申立人の上記主張も採用できない。

ウ まとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1?6,8?11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明といえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(3)特許法第36条第6項第2号
ア 本件発明の発明特定事項である「圧縮応力」に関し、発明の詳細な説明には、圧縮応力の測定方法が定義されていない。
しかしながら、乙第3号証(D.T.Quinto et al., Mechanical properties, Structure and Performance of Chemically Vapor-deposited and Physically Vapor-deposited Coated Carbide Tools, Materials Science and Engineering, 1988年, Vol.A105/106, P443-452)には、「Residual stress measurements were made at room temperature on the uncoated substrates and on coated samples with the standard X-ray sin^(2)ψ method.」(第444頁右欄28?31行、当審仮訳:残留応力測定は室温において、表面被覆されていないサンプル及び表面被覆されたサンプルについて標準的なX線sin^(2)ψ法で実施した。)と記載され、乙第4号証(D.T.Quinto et al., HIGH TEMPERATURE MICROHARDNESS OF HARD COATINGS PRODUCED BY PHYSICAL AND CHEMICAL VAPOR DEPOSITION, Thin Solid Films, 1987年, vol.153, p.19-36)には、「A large number of coated samples were diffracted for residual stress measurement following the standard sin^(2)ψ method in which the strain in a direction inclined by an angle ψ from the surface (coating) plane normal is related to the stresses acting on the plane via the elastic properties of the material:」(第21頁第17?20行、当審仮訳:多数の被覆サンプルは、標準sin^(2)ψ法によって解析を行って残留応力測定したが、標準sin^(2)ψ法は、サンプル面(被覆面)の面法線から角度ψだけ傾いた傾きの大きさは、材料の弾性によって前記面に作用する応力と関連する:)と記載され、そして、乙第5号証(J.C. Outeiro et al., Analysis of residual stresses induced by dry turning of difficult-to-machine materials, CIRP Annals - Manufacturing Technology, 2008年, vol.57, p.77-80)には、「The residual stress state in the transient and machined surfaces and sub-surface has been analyzed by the X-ray diffraction technique using the sin^(2)ψ method.」(第78頁第10?12行、当審仮訳:過渡面や機械加工面及びサブ表面の残留応力は、sin^(2)ψ法を用いたX線回折技術によって分析されてきた。)と記載されているように、X線応力測定装置を用いたsin^(2)ψ法による残留応力の測定方法が、本件特許に係る出願の出願時に慣用技術であるといえる。
したがって、技術常識を踏まえると、本件発明の「圧縮応力」が、X線応力測定装置を用いたsin^(2)ψ法によって測定されたものと推認できるから、本件発明の「圧縮応力」が明確でないとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人は、sin^(2)ψ法による残留応力の測定方法が慣用手段でもないし、当業者が本件発明の残留応力の測定がsin^(2)ψ法によるものと理解できたものでない旨を主張している(平成29年2月7日付け意見書第6頁の3(3)イ)。
しかしながら、上記アで検討したように、sin^(2)ψ法による残留応力の測定方法が慣用手段であるといえるし、本件発明の「圧縮応力」が、X線応力測定装置を用いたsin^(2)ψ法によって測定されたものと推認できるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ウ まとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1?6,8?11に係る発明は、明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、訂正前の請求項1?11に係る発明は、甲第1号証(特開2001-341008号公報)、甲第2号証(国際公開第2007/003648号)、甲第3号証(特開2006-175560号公報)及び甲第8号証(米国特許第6040012号明細書)に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を主張している。
この点について検討すると、上記甲号証には以下の発明が記載されていると認められる。
すなわち、甲第1号証の【特許請求の範囲】、段落【0001】、【0006】、【0011】、【0012】、【0013】及び【0016】の記載を、表1の試料番号24に注目して整理すると、甲第1号証には、「工具基体に、熱CVDにより成膜した多層からなる被覆層を有する窒化チタンアルミニウム膜被覆工具であって、多層からなる被覆層は、TiN膜と、このTiN膜上に直接積層された窒化チタンアルミニウム膜からなり、窒化チタンアルミニウムは、そのAl含有量が45.3質量%であって、立方晶であり六方晶が混在しない膜であり、引張応力を有している窒化チタンアルミニウム膜被覆工具」の発明が記載されているといえる。
甲第2号証の特許請求の範囲、明細書の第1頁第10?14行、第3頁第16?28行、第3頁第33?34行、第5頁第6?28行、第5頁第32行?第8頁第9行の記載を、例2(Beispiel 2)に注目して整理すると、甲第2号証には、「多層の層構造を有する硬質膜被覆された物体であり、前記多層の層構造はCVDにより作成され、前記多層の層構造は、窒化チタン層と、窒化チタン層に直接積層したTi_(1-x)Al_(x)N硬質皮膜であり、前記Ti_(1-x)Al_(x)N硬質皮膜は、その主要な相がx>0.75?x=0.93の化学量論係数を有する立方晶NaCl構造を有するTi_(1-x)Al_(x)Nからなり、かつ別の相としてAlNがウルツ鉱構造として含有されている多相の層である硬質膜被覆された物体」の発明が記載されているといえる。
甲第3号証の【特許請求の範囲】、段落【0008】、【0021】、【0022】、【0031】、【0065】の記載を、表1のNo3に注目して整理すると、甲第3号証には、「基材と、該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、前記被膜は、硼窒化チタンからなる第1被膜と、酸化アルミニウムからなる第2被膜と、CVD法で形成した炭窒化チタン膜からなる第3被膜からなり、前記第2被膜は、少なくとも切削に関与する部位において圧縮応力を有することで優れた靱性を備えた被膜である表面被覆切削工具」の発明が記載されているといえる。
そして、甲第8号証の明細書の第5欄第44?49行、第8欄第4?15行、第11欄第15?45行の記載を整理すると、甲第8号証には、「多層膜で被覆された物体であって、CVDで形成したTiN膜と(Ti,Al)N膜の多層膜であって、多層膜の層の数は2から数百層であり、総厚さが1から50μmである多層膜で被覆された物体」の発明が記載されているといえる。
本件発明1と各甲号証に記載された発明を対比すると、いずれの甲号証にもTi_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなる外層が、Al_(2)O_(3)層上に直接積層され、400?800MPaの範囲内の圧縮応力を有することは記載も示唆もされておらず、本件発明1は、各甲号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。
また、本件発明10と各甲号証に記載された発明を対比すると、いずれの甲号証にもTi_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなる外層が、Al_(2)O_(3)層上に直接形成され、100?1100MPaの範囲内の圧縮応力を有することは記載も示唆もされておらず、本件発明10は、各甲号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。
そして、本件発明2?6、8?9は、本件発明1をさらに減縮したものであるし、本件発明11は、本件発明10をさらに減縮したものであるから、上記で検討したとおり、各甲号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。
以上のとおり、本件特許の請求項1?6、8?11に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、特許異議申立人の特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨の主張は妥当であるといえない。

5 平成29年2月7日付け意見書における「特許異議申立人のその他の主張」についての検討
特許異議申立人は、本件発明1?6、8?11の外層中における六方晶窒化アルミニウムの存在形態に関して、発明の詳細な説明に何ら記載されておらず、どの様な存在形態であっても所望の残留応力に調整できるとはいえないから、本件発明1?6、8?11は、特許法第36条第6項第1号に違反している旨を主張している(第5頁の3(2)ウ)。
また、特許異議申立人は、本件発明1?6、8?11において、「六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%である」との記載、及び、本件発明5?6、8?11の外層が「複数の層」であり、「六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%」である場合の記載がそれぞれ明確でないから、特許法第36条第6項第2号に違反している旨を主張している(第5頁の3(3)ウ)。
しかしながら、これら主張は、実質的に新たな内容であって、特許権者による訂正の請求に付随して生じた内容といえないから、これら主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?6、8?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?6、8?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、請求項7に係る発明は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項7に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料で被覆され、CVDによって塗布された複数の層を有する物体であって、
前記複数の層は、Al_(2)O_(3)層と、このAl_(2)O_(3)層上に直接積層された外層と、を有し、前記外層は、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)の少なくとも1つからなり、この外層が400?800MPaの範囲内の圧縮応力を有し、六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%であることを特徴とする、硬質材料で被覆された物体。
【請求項2】
前記Ti_(1-x)Al_(x)N層、前記Ti_(1-x)Al_(x)C層、または前記Ti_(1-x)Al_(x)CN層が、単層からなり立方晶構造を有するか、あるいは複数の層からなり、立方晶の主相とともにウルツ鉱構造を有する、および/またはTiNを含むさらなる層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項3】
最大30質量%の非晶質層成分が前記外層中に存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項4】
前記外層の塩素含有量が0.01?3原子%の範囲内であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項5】
前記外層が複数の層を含み、その各層が1?5nmの厚さを有し、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CNから選択される同一のまたは変化する組成を有し、この外層の全体の厚さが1μm?5μmであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項6】
超硬合金、サーメット、またはセラミックで構成される基体本体に塗布されているすべての層の全体の厚さが5μm?25μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記外層の組成式中のxが0.7≦x≦0.9であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項9】
前記外層の層は交互に変化する組成を有することを特徴とする、請求項5に記載の硬質材料で被覆された物体。
【請求項10】
硬質材料で被覆され、CVDによって塗布された複数の層を有する物体であって、
外層が複数の層を含み、その各層が1?5nmの厚さを有し、Ti_(1-x)Al_(x)N、Ti_(1-x)Al_(x)C、およびTi_(1-x)Al_(x)CN(式中、0.65≦x≦0.9)から選択される同一のまたは変化する組成を有し、この外層の全体の厚さが1μm?5μmであり、この外層が100?1100MPaの範囲内の圧縮応力を有するとともに六方晶窒化アルミニウムの含有量が最大25%であり、前記外層は、Al_(2)O_(3)層の上に直接形成されていることを特徴とする、硬質材料で被覆された物体。
【請求項11】
前記外層の層は交互に変化する組成を有することを特徴とする、請求項10に記載の硬質材料で被覆された物体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-02-27 
出願番号 特願2010-550050(P2010-550050)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C23C)
P 1 651・ 121- YAA (C23C)
P 1 651・ 536- YAA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植前 充司國方 恭子  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 宮澤 尚之
萩原 周治
登録日 2015-11-06 
登録番号 特許第5832748号(P5832748)
権利者 ケンナメタル インコーポレイテッド
発明の名称 硬質材料で被覆された物体  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 西元 勝一  
代理人 加藤 和詳  
代理人 西元 勝一  
代理人 中島 淳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ