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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1327294
審判番号 不服2016-11144  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-24 
確定日 2017-05-08 
事件の表示 特願2015- 18982「入力デバイスおよびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日出願公開、特開2015-111446、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年7月17日を出願日とする特願2013-148975号の一部を平成27年2月3日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 3月 3日 :手続補正書の提出
平成27年11月26日付け:拒絶理由の通知
平成28年 1月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 5月20日付け:拒絶査定
平成28年 7月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年 8月26日 :前置報告


第2 原査定の概要

原査定(平成28年5月20日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

本願請求項1?5に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2005-296483号公報
2.特開2013-089013号公報
3.国際公開第2012/38434号(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)


第3 審判請求時の補正について

平成28年7月24日に審判請求書の提出とともになされた手続補正書により補正された事項は以下の通りである。

(補正事項1)
平成28年1月27日付け手続補正書により補正された請求項1に「押圧式スイッチのキートップ状の突部若しくは機構を設け、当該キートップ状の突部の押圧若しくは機構の操作によって人体が被検出部と導通させるように構成した」という事項を追加する補正事項。

(補正事項2)
平成28年1月27日付け手続補正書により補正された請求項5を削除する補正事項。

審判請求時の補正によってなされた上記補正事項1を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、同補正が新規事項を追加するものではないかについて検討すると、当該補正事項1は、中央の導電部3を含む被検出部の構成について限定するものであるから、当該補正事項1を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、当該補正事項1は、当初明細書の段落【0020】に記載された事項であるから、新規事項を追加するものではない。

なお、審判請求時の補正によってなされた上記補正事項2は、特許法第17条の2第5項第1号を目的とするものである。

そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、平成28年7月24日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下の通りのものである。

「【請求項1】
静電容量検知式タッチパネルによって検出される入力デバイスであって、 ベースシートに前記静電容量検知式タッチパネルの検出面に対向する向きで配置される対向面を有した被検出部を複数配置した検出領域を設け、
前記被検出部を導電体によって形成するとともに、当該被検出部を前記検出領域中に設定した配置可能箇所の何れかに設けたものであり、
入力デバイスを複数個設ける場合に、当該複数個の入力デバイスに共通した配置可能箇所に配置した被検出部からなる基本情報と、当該基本情報とは異なる配置可能箇所に配置した被検出部からなる情報単位を、ベースシート上に複数設け、
押圧式スイッチのキートップ状の突部若しくは機構を設け、当該キートップ状の突部の押圧若しくは機構の操作によって人体が被検出部と導通させるように構成したことを特徴とする入力デバイス。

【請求項2】
前記検出領域は矩形の領域であることを特徴とする請求項1記載の入力デバイス。

【請求項3】
前記ベースシートを2分する略半分の領域のそれぞれに前記基本情報と被検出部からなる情報単位を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の入力デバイス。

【請求項4】
前記配置可能箇所は縦列と横列からなる整列配置された行列状に設定されていることを特徴とする請求項3記載の入力デバイス。」


第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2005-296483号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ア)「本発明は、静電容量センサによってカードに関する情報を認識してカードゲームを行なうカード認識ゲームシステムに関する。」(【0001】)

(イ)「以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、カードおよび静電容量センサマトリックスの構成例を示す図で、静電容量変化によりカード種別を認識する原理を説明するための図である。 カード1の一面を複数の区画に別けて、そのカードの種別を示すため各区画位置に適宜導体部3を設けている。カード1の素材は他の部材の導体部に接触または近づけても静電容量を発生しない部材(樹脂など)が用いられる。導体部3はカードの表面であっても、カード内部に設けてもよい。
この例は、いずれのカードにも左上隅,右上隅および右下隅の3個所に基準となる導体部3を設けている。この3隅の導体部に加えて他の区画に適宜導体部を配置することによりカード種別を行なうものである。
静電容量センサマトリックス2は、上記カードの区画の大きさと同じ大きさを検出単位としており、縦および横方向に多数区画を設けたものである。図1はカード1を静電容量センサマトリックス2の上部付近に載置した状態を示しており、左上隅,右上隅および右下隅の3個所の導体部3は、対面した区画内の電極部との間に形成される静電容量に基づく信号によって検出される。これにより静電容量センサマトリックス2のどの位置に、どういうような種別のカードが載置されたか認識することができる。静電容量センサマトリックス2上の位置は区画単位で認識することができることとなる。」(【0008】?【0009】)

上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「静電容量センサによってカードに関する情報を認識してカードゲームを行なうカード認識ゲームシステムであって、
前記カードは、カード1の一面を複数の区画に別けて、そのカードの種別を示すため各区画位置に適宜導体部3を設け、カード1の素材は他の部材の導体部に接触または近づけても静電容量を発生しない部材(樹脂など)が用いられ、導体部3はカードの表面であっても、カード内部に設けてもよく、いずれのカードにも左上隅,右上隅および右下隅の3個所に基準となる導体部3を設けており、この3隅の導体部に加えて他の区画に適宜導体部を配置することによりカード種別を行なうものであり、
静電容量センサマトリックス2は、上記カードの区画の大きさと同じ大きさを検出単位としており、縦および横方向に多数区画を設けたものである、カード認識ゲームシステム。」

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2013-089013号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ウ)「本発明は、投影型静電容量方式のタッチパネルを用いて読み取り可能な情報媒体及び情報媒体の読取方法に関する。」(【0001】)

(エ)「情報媒体に係る実施の形態1:請求項1,2に対応)
図1は本発明に係る情報媒体の実施の形態1を概略的に示す平面図である。情報媒体1は、基材11上に、電気導電性を持った接触部12と、同じく電気導電性を持った反応部13とが形成される。これら接触部12と反応部13は導通可能にするために導電部14により接続されている。」(【0024】)

(オ)「図8ないし図11は本発明に係る情報媒体の読取方法の実施の形態を説明する図である。
図8は図2に示す情報媒体1の接触部12に手2の指21を接触させた状態を示しており、図9は図4に示す情報媒体1の接触部12に手2の指21を接触させた状態を示している。それぞれ情報媒体1の接触部12に指21を接触させたとき、手2の一部となる指21が持っている電荷が反応部13に移動される。
そこで、情報媒体1の接触部12に指21を接触させた状態で、図10に示すように読取装置3のタッチパネル31に反応部13を接触させたとすると、当該反応部13に留まっている電荷がタッチパネル31に反応し、読取装置30がタッチパネル31を介して反応部13の位置を認識する。
情報媒体1には複数の反応部13,…が存在するが、そのタッチされた反応部13の位置関係を、読取装置30が読取パターン33として認識すれば、当該読取パターン33にひも付けされた読取画像32を出現させることができる。」(【0044】?【0046】)

3.引用例3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(国際公開第2012/38434号)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、摘記する事項は、対応する日本出願である特願2013-528718号の公表公報である特表2013-541761号公報の記載を用いた。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(カ)「本発明は、少なくとも1つの導電性タッチ構造体が非導電性基板上に配置される容量性情報担体を記述する。また、本発明は、容量性情報担体と、容量性エリアセンサーと、双方の要素の間の接触と、情報担体のタッチ構造体を、エリアセンサーに接続されたデータ処理システムにとって評価可能とするとともに、情報担体に関連したイベントをトリガーすることができる相互作用とからなる、情報を取得するためのシステム及び方法を含む。
本発明の意味では、情報担体は、詳細には、情報を記憶し、イメージングし、ファイリングし、及び/又は割り当てるための媒体である。
本発明の意味では、容量性エリアセンサーは、詳細には、画定されたエリアのサブエリア内の電気静電容量及び/又は静電容量差を取得するための物理インターフェースである。エリアセンサーを含むデバイスには、例えば、スマートフォン、移動電話、ディスプレイ、タブレットPC、タブレットノートブック、タッチパッドデバイス、グラフィックスタブレット、テレビ、PDA、MP3プレーヤー、トラックパッド及び/又は容量性入力デバイスが含まれる。そのようなエリアセンサーは、例えば、タッチスクリーン、タッチパッド又はグラフィックスタブレットとして、入力デバイスの一体部分となることもできる。タッチスクリーンは、触覚性スクリーン又はタッチセンサースクリーンとしても知られている。そのような入力デバイスは、中でも、スマートフォン、PDA、タッチディスプレイ又はノートブックにおいて用いられる。」(【0001】?【0003】)

(キ)「本発明の意味では、結合面は詳細には基板上の導電性エリアである。結合面は、本発明による情報担体の好ましい変形形態を表しており、例えば、タッチ構造体の一部ではない外部の電気静電容量への結合を可能にし、それゆえ、情報担体のタッチ構造体の実効的な電気静電容量を高めることを可能にする。結果として、その情報担体は、特に安全かつ確実に読み取ることができる。これは、人が情報担体に接触するか、又は接近するときに、及びまた、物体による結合を通じて行うことができる。」(【0015】)

(ク)「容量性エリアセンサーは、本発明の意味では、特にタッチスクリーンと呼ぶことができる。」(【0028】)

(ケ)「情報担体上において、サブエリアとして構成することができるタッチ構造体の形態で情報を記憶することができることが好ましい。情報担体がエリアセンサーに接触又は接近すると、情報は、エリアセンサーを介して読み取り可能になり、静電容量が特に部分的に変化する。
情報を形成するタッチ構造体、すなわち或るエリアのサブエリアは導電性材料からなる。本発明の開示によれば、当業者は、タッチ構造体が、コーナーポイント、及び/又は曲線によって画定されたエリア一帯、例えば長方形、円形又は類似の形状からなることを認識する。サブエリアの相互の空間的関係(向き、量、位置合わせ、距離及び/又は位置)及び/又はサブエリアの形状が好ましくは情報を表す。情報担体がエリアセンサー上に位置決めされると、タッチ構造体は、例えば指の入力として解釈され、それによって、タッチ構造体のサブエリアから、符号化された情報が、これに限定されるものではないが例えば2進コード化された数の形で決定可能である。しかしながら、情報担体は情報担体として直接解釈することができるか、又はそれぞれ、情報担体の使用状況が特にその特定の情報を決定する。位置決めは、エリアセンサーに対して情報担体を動かすことを通じて実行することもできる。エリアセンサーは、情報担体に対する相対的な動きの中で、情報担体から完全な情報又は部分的な情報を徐々に受信することが好ましい。これに関連して、エリアセンサーに対する情報担体の位置に基づいて、異なるイベントが生成されることも可能である。このために不可欠なのは、例えば、エリアセンサーに対して情報担体が動く方向、又は留まる時間である。」(【0046】?【0047】)

(コ)「導電層のエリアであるタッチ構造体は、好ましくはサブエリアからなる。情報担体がエリアセンサーと接触すると、イベントがトリガーされるように、特に、サブエリアの形状、向き、量、位置合わせ、距離及び/又は位置が情報担体の情報を形成する。これに関して、エリアセンサーを用いてデバイスのプログラムシーケンスを制御することが可能である。サブエリア、すなわちタッチ構造体は、好ましくはコーナーポイント、及び/又は曲線によって画定されたエリア一帯、例えば長方形、円形又は類似の形状からなる。
サブエリアは、例えば、8mmの円とすることができる。したがって、幅50mm、高さ75mmの163ppi(ピクセル/インチ)の分解能のエリアセンサーにおいて、サブエリアは実質的に約50×50ピクセルのサイズを有する。8mmのサイズを有するサブエリアをエリアセンサー上に6×9に配列して、54分割することができる。この結果、以下となる。」(【0056】?【0057】)

(サ)「図6及び図7は、導体経路4を有する情報担体1を示している。タッチ構造体3のサブエリアは、有利には、導体経路4よりも小さくすることもできるし、導電トレース4と等しくすることもできるし(図6)、導体経路4よりも大きくすることもできる(図7)。更なる実施形態(図8、図9、図10、図11)では、結合面5としての、導電層(タッチ構造体3)の少なくとも1つの更なるサブエリアが基板2上に位置している。タッチポイント3の個々のサブエリアは、好ましくは導体経路4を介して互いに導電的に接続される。タッチポイント3及び導体経路4は、有利には、導電層から形成される。」(【0108】)


第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(1-1)
引用発明に係る静電容量センサマトリックス2は、「カードの区画の大きさと同じ大きさを検出単位としており、縦および横方向に多数区画を設けたもの」であって、「静電容量センサによってカードに関する情報を認識」するものであるから、当該「静電容量センサマトリックス2」と本願発明1に係る『静電容量検知式タッチパネル』とは、いずれも『静電容量検知式パネル』という点で一致しているといえる。
また、引用発明に係る「カード」及び「カード1」は、静電容量センサマトリックス2によって、カードに関する情報を認識されるものであるから、本願発明1でいうところの『入力デバイス』であるといえる。

(1-2)
引用発明に係る「カード」及び「カード1」は、「カード1の一面を複数の区画に別けて、そのカードの種別を示すため各区画位置に適宜導体部3を設け、カード1の素材は他の部材の導体部に接触または近づけても静電容量を発生しない部材(樹脂など)が用いられ、」ているのであるから、前記「導体部3」は、本願発明1でいうところの『被検出部』に対応し、更に、前記導体部3が設けられる「カード1の素材」は、本願発明1でいうところの『ベースシート』に対応するといえる。
そして、前記「カード」及び「カード1」は、上記(イ)で摘記した様に、静電容量センサマトリックス2の上部付近に載置して用いるものであるから、前記「導体部3」は、静電容量検知式パネルの検出面に対向する向きで配置される対向面を有していることは明らかである。
更に、「カードは、カード1の一面を複数の区画に別け」られているのであるから、当該「複数の区画」により形成される部分は、本願発明1でいうところの『検出領域』に対応するといえる。そして、前記「導体部3」は、「いずれのカードにも左上隅,右上隅および右下隅の3個所に基準となる導体部3を設けており、この3隅の導体部に加えて他の区画に適宜導体部を配置」しているのであるから、本願発明1でいうところの『検出領域』に『複数配置』されているといえる。
してみると、引用発明は、本願発明1でいうところの『ベースシートに前記静電容量検知式タッチパネルの検出面に対向する向きで配置される対向面を有した被検出部を複数配置した検出領域を設け、』に対応する構成を備えているといえる。

(1-3)
引用発明に係る「導体部3」は、「カード1の一面を複数の区画に別けて、そのカードの種別を示すため各区画位置に適宜導体部3を設け、」られていることから明らかな様に、複数の区画に別けられた各区画位置に適宜設けられるものであるから、本願発明1でいうところの『検出領域中に設定した配置可能箇所の何れかに設けたもの』であるといえる。
してみると、引用発明は、本願発明1でいうところの『前記被検出部を導電体によって形成するとともに、当該被検出部を前記検出領域中に設定した配置可能箇所の何れかに設けたものであり、』に対応する構成を備えているといえる。

(1-4)
引用発明は、「導体部3」を「いずれのカードにも左上隅,右上隅および右下隅の3個所に基準となる導体部3を設けており、この3隅の導体部に加えて他の区画に適宜導体部を配置することによりカード種別を行なう」ものであり、前記「左上隅,右上隅および右下隅の3個所に基準となる導体部3を設け」は、本願発明1でいうところの『複数個の入力デバイスに共通した配置可能箇所に配置した被検出部からなる基本情報』に対応し、前記「この3隅の導体部に加えて他の区画に適宜導体部を配置する」は、本願発明1でいうところの『基本情報とは異なる配置可能箇所に配置した被検出部からなる情報単位』に対応するといえる。
してみると、引用発明は、本願発明1でいうところの『当該複数個の入力デバイスに共通した配置可能箇所に配置した被検出部からなる基本情報と、当該基本情報とは異なる配置可能箇所に配置した被検出部からなる情報単位を、ベースシート上に設け、』という構成を備えているといえる。

以上、上記(1-1)から(1-4)で対比した様に、本願発明1と引用発明とは、

「静電容量検知式パネルによって検出される入力デバイスであって、
ベースシートに前記静電容量検知式タッチパネルの検出面に対向する向きで配置される対向面を有した被検出部を複数配置した検出領域を設け、
前記被検出部を導電体によって形成するとともに、当該被検出部を前記検出領域中に設定した配置可能箇所の何れかに設けたものであり、
当該複数個の入力デバイスに共通した配置可能箇所に配置した被検出部からなる基本情報と、当該基本情報とは異なる配置可能箇所に配置した被検出部からなる情報単位を、ベースシート上に設けた、
ことを特徴とする入力デバイス。」

という点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明1は、『静電容量検知式タッチパネル』を用いているのに対し、引用発明は、静電容量センサを用いた「静電容量センサマトリックス」を用いており、いわゆる「タッチパネル」ではない点。

(相違点2)
本願発明1は、『入力デバイスを複数個設ける場合、』との限定が付されているのに対し、引用発明にはその旨の限定がない点。

(相違点3)
本願発明1は、「当該複数個の入力デバイスに共通した配置可能箇所に配置した被検出部からなる基本情報と、当該基本情報とは異なる配置可能箇所に配置した被検出部からなる情報単位を、ベースシート上」に『複数』設けるとの限定が付されているのに対し、引用発明にはその旨の限定がない点。

(相違点4)
本願発明1には、『押圧式スイッチのキートップ状の突部若しくは機構を設け、当該キートップ状の突部の押圧若しくは機構の操作によって人体が被検出部と導通させるように構成した』との限定が付されているのに対し、引用発明にはその旨の限定がない点。

(2)判断

上記(相違点4)について判断する。

本願発明1は、人体が被検出部と導通させるように『押圧式スイッチのキートップ状の突部若しくは機構を設け、当該キートップ状の突部の押圧若しくは機構』なる構成を備えている。
一方、引用例1には、上記構成に関する記載又は当該構成を示唆する様な記載は認められず、また、上記構成が周知であるとも認められない。また、引用例2及び引用例3にも、上記構成に関する記載又は当該構成を示唆する様な記載は認められない。更に、引用発明は、人体と導電部3とを接触させることを前提としないものであるから、上記構成を備えさせる必然性もない。
したがって、引用発明に本願発明1が備えている様な『押圧式スイッチのキートップ状の突部若しくは機構を設け、当該キートップ状の突部の押圧若しくは機構の操作によって人体が被検出部と導通させるように構成した』との構成を備えさせることは、当業者といえども容易に想到し得るとは認められない。

なお、引用例2及び引用例3には、指や人が導電性の部分に接触することを前提とする入力デバイス(引用例2においては「情報媒体」であり、引用例3においては「情報担体」である。)が開示されているが、本願発明1が備えている様な『押圧式スイッチのキートップ状の突部若しくは機構を設け、当該キートップ状の突部の押圧若しくは機構の操作によって人体が被検出部と導通させるように構成した』との構成は、上述した様に、拒絶の理由で提示されたいずれの引用例にも記載されておらず、また、当該構成を示唆する記載も認められない。更に、当該構成が周知であるとも認められない。
したがって、引用例2又は引用例3を主たる引用例としても本願発明1に係る上記構成を入力デバイスに備えさせることは、当業者といえども容易に想到し得るとは認められない。

以上の通りであるから、上記相違点1から相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、引用例1から引用例3に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2から本願発明4について

本願発明2から本願発明4は、いずれも本願発明1であるところの請求項1を直接的又は間接的に引用する発明であり、本願発明1が備える『押圧式スイッチのキートップ状の突部若しくは機構を設け、当該キートップ状の突部の押圧若しくは機構の操作によって人体が被検出部と導通させるように構成した』という構成を備えているものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用例1から引用例3に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

・理由(特許法第29条第2項)

審判請求時の補正により、本願発明1?4は『押圧式スイッチのキートップ状の突部若しくは機構を設け、当該キートップ状の突部の押圧若しくは機構の操作によって人体が被検出部と導通させるように構成した』という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-20 
出願番号 特願2015-18982(P2015-18982)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 佐藤 智康
貝塚 涼
発明の名称 入力デバイスおよびプログラム  

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