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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1327376 |
審判番号 | 不服2016-9345 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-23 |
確定日 | 2017-04-21 |
事件の表示 | 特願2011-185024「積層磁心」拒絶査定不服審判事件〔平成25年3月4日出願公開、特開2013-46032〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年8月26日の出願であって、平成27年6月10日付けで拒絶理由が通知され、同年8月4日付けで手続補正がなされたが、平成28年3月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月23日に拒絶査定不服の審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年6月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 厚さ60μm以上、600μm以下の磁性体からなる磁性薄帯と厚さ5μm以下(0を含まず)の絶縁層が交互に積層された積層磁心であって、前記磁性体は組成式FeaBbSicPxCyCuzの合金組成物からなり、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦8at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.08≦z/x≦0.80であり、前記合金組成物はナノ結晶を析出させたナノ結晶合金であり、前記磁性薄帯は前記磁性体からなる磁性薄帯が積層された積層体であり、前記積層磁心に占める前記磁性体の占積率が85%以上であることを特徴とする積層磁心。」 第3 引用発明等 1.引用文献1 原査定で引用された特開2010-70852号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、トランスやインダクタ、モータの磁芯などの使用に好適である、Fe基ナノ結晶合金及びその製造方法に関する。」 (2)「【0006】 本発明の発明者は、鋭意検討の結果、特定の合金組成物を高い飽和磁束密度を有し且つ高い透磁率を有するFe基ナノ結晶合金を得るための出発原料として用いることができることを見出した。ここで特定の合金組成物は、所定の組成式で表され、主相としてアモルファス相を有しており、且つ、優れた靭性を有している。特定の合金組成物を熱処理すると、bccFe相からなるナノ結晶を析出させることができる。このナノ結晶は、Fe基ナノ結晶合金の飽和磁歪を大幅に低減することができる。この低減された飽和磁歪は、高い飽和磁束密度と高い透磁率をもたらす。このように、特定の合金組成物は、高い飽和磁束密度を有し且つ高い透磁率を有するFe基ナノ結晶合金を得るための出発原料として有益な材料である。」 (3)「【0011】 本発明の実施の形態による合金組成物は、Fe基ナノ結晶合金の出発原料として好適であり、組成式FeaBbSicPxCyCuzのものである。ここで、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0<c≦8at%、1≦x≦8at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.08≦z/x≦0.8。b、c、xについて次の条件を満たすことが好ましい:6≦b≦10;2≦c≦8;及び2≦x≦5。y、z、z/xについて次の条件を満たすことが好ましい:0≦y≦3at%;0.4≦z≦1.1at%;及び0.08≦z/x≦0.55。なお、Feの3at%以下を、Ti、Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,W,Cr,Co,Ni,Al,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,Y,N,O及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換しても良い。」 (4)「【0019】 本実施の形態における合金組成物は、様々な形状を有することができる。例えば、合金組成物は、連続薄帯形状を有していてもよいし、粉末形状を有していてよい。連続薄帯形状の合金組成物は、Fe基アモルファス薄帯などの製造に使用されている単ロール製造装置や双ロール製造装置のような従来の装置を使用して形成することができる。粉末形状の合金組成物は水アトマイズ法やガスアトマイズ法によって作製してもよいし、薄帯の合金組成物を粉砕することで作製してもよい。 【0020】 特に、高い靭性への要求を考慮すると、連続薄帯形状の合金組成物は熱処理前の状態において180°曲げ試験の際に密着曲げ可能であることが好ましい。ここで、180°曲げ試験とは、靭性を評価するための試験であり、曲げ角度が180°であり内側半径が零となるように試料を曲げるものである。即ち、180°曲げ試験によれば、試料は密着曲げされる(○)か破断される(×)。後述する評価においては、長さ3cmの薄帯試料をその中心において折り曲げて密着曲げできたか(○)破断したか(×)をチェックした。 【0021】 本実施の形態による合金組成物を成形して、巻磁芯、積層磁芯、圧粉磁芯などの磁気コアを形成することができる。また、その磁気コアを用いて、トランス、インダクタ、モータや発電機などの部品を提供することができる。」 (5)「【0022】 本実施の形態による合金組成物は主相としてアモルファス相を有している。従って、本実施の形態による合金組成物をArガス雰囲気のような不活性雰囲気中で熱処理すると、2回以上結晶化される。最初に結晶化が開始した温度を第1結晶化開始温度(T_(x1))とし、2回目の結晶化が開始した温度を第2結晶化開始温度(T_(x2))とする。また、第1結晶化開始温度(T_(x1))と第2結晶化開始温度(T_(x2))の間の温度差をΔT=T_(x2)-T_(x1)とする。単に「結晶化開始温度」といった場合、第1結晶化開始温度(T_(x1))を意味する。なお、これら結晶化温度は、例えば、示差走査熱量分析(DSC)装置を用い、40℃/分程度の昇温速度で熱分析を行うことで評価可能である。 【0023】 本実施の形態による合金組成物を毎分100℃以上の昇温速度で且つ結晶化開始温度(即ち、第1結晶化開始温度)以上で熱処理をすると、本実施の形態によるFe基ナノ結晶合金を得ることができる。Fe基ナノ結晶合金形成の際に均質なナノ結晶組織を得るためには、合金組成物の第1結晶化開始温度(T_(x1))と第2結晶化開始温度(T_(x2))の差ΔTが100℃以上200℃以下であることが好ましい。」 (6)「【0025】 本実施の形態によるFe基ナノ結晶合金を用いて磁気コアを形成することができる。また、その磁気コアを用いて、トランス、インダクタ、モータや発電機などの部品を構成することができる。」 上記(3)によれば、組成式FeaBbSicPxCyCuzであって、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0<c≦8at%、1≦x≦8at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.08≦z/x≦0.8である合金組成物は、Fe基ナノ結晶合金の出発原料として好適であり、上記(2)及び(5)によれば、上記合金組成物を熱処理することにより、ナノ結晶を析出させたFe基ナノ結晶合金を得ることができ、さらに、上記(1)及び(6)によれば、上記Fe基ナノ結晶合金を用いて磁芯(磁気コア)を形成することができる。 また、上記(4)によれば、上記合金組成物は連続薄帯形状を有することができ、さらに、上記合金組成物から積層磁芯を形成することができる。 したがって、以上の記載事項と図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「組成式FeaBbSicPxCyCuzであって、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦8at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.08≦z/x≦0.80である合金組成物を熱処理してナノ結晶を析出させたFe基ナノ結晶合金を用いて形成した積層磁芯。」 2.引用文献2 原査定で引用された特開昭57-88712号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「ところが従来、アモルフアスをシート状にしたアモルフアスシートを巻回してなるアモルファス巻鉄心には次のような問題があつた。即ち、現在実用化されているアモルフアスシートには絶縁被覆がなされていないが、従来ではこれをそのまま用いてアモルフアス巻鉄心を作製していた。したがつて、アモルフアスシート相互間が絶縁されていないため、このアモルフアス巻鉄心で変圧器を構成すると、大きなうず電流が流れ、これにより多大な損失が生じていた。また、前記うず電流を低減すべく、アモルフアスシートに絶縁被覆をした後、これによりアモルフアス巻鉄心を作製した場合には、絶縁被覆の厚さがアモルフアスシートの厚さに比して必要以上に厚くなる。これを具体的に説明すると、アモルフアスシートは特殊な製法で作られるためその厚さは薄く(0.037mm)、これに対し絶縁被覆の厚さは現行技術では一定値(0.006mm)以下にすることはできない。つまり、アモルフアスシートの厚さは従来の珪素鋼板(0.35mm)の約1/10でしかないのに、絶縁被覆の厚さは従来と同じである。したがつて、絶縁被覆をしたアモルフアスシートでアモルフアス巻鉄心を作成すると絶縁被覆の割合が多くなり占積率の低下を招来していた。このため、低損失で占積率の低下を招来することのないアモルフアス巻鉄心の製造方法の出現が待望されていた。」(第1頁右下欄第6行ないし第2頁左上欄第12行。) (2)「ここで、本発明の実施例を説明するのにさきだち、これを実現する装置を第1図を参照して説明しておく。同図に示すように、回転自在にセツトされた複数のドラム1(図では6個示す)には夫々アモルフアスシート2が巻回されている。また、回転自在にセツトされたドラム3には、絶縁テープ4が巻回されており、この絶縁テープ4は具体的には厚さ0.004?0.006mmのマイラーテープ等が用いられる。更に、前記アモルフアスシート2や絶縁テープ4を誘導する複数のガイドローラ5及び図示しない電動機により回転する巻型6が配置されている。 このような装置を用いてアモルフアス巻鉄心を製造する本発明の実施例は、ガイドローラ5で誘導された複数のアモルフアスシート2の先端を巻型6に固定するとともに、同じくガイドローラ5で誘導された絶縁テープ4の先端を固定する。次に巻型6を回転させ、複数のアモルフアスシート2と絶縁テープ4とが互いに重なるよう前記巻型6に一体的に巻回して所定の厚さのアモルフアス巻鉄心7が得られる。」(第2頁右上欄第5行ないし同頁左下欄第5行。) (3)「かかる本実施例により得られたアモルフアス巻鉄心7の正面図を第2図に、この図における3部分を抽出して第3図に示す。これらの図に示すように、絶縁テープ4と複数枚のアモルフアスシート2とが交互に積み重なつているため、アモルフアス巻鉄心7にはうず電流が発生し難い。したがつて、アモルフアス巻鉄心7は、アモルフアス自体の属性であるヒステリシス損が小さいことと相俟つて、きわめて低損失なものとなる。 なお、アモルフアスシート2と絶縁テープ4との枚数比は、アモルフアス巻鉄心7で変圧器を構成した場合に、なるべく、励磁電流が小さく且つ占積率が大きくなるような枚数比を採る。即ち、次のような関係を考慮し、用途に応じて適当な枚数比が採られる。この関係とは次の二つである。(1)アモルフアスシート2の枚数を多くすると、占積率は高くなるが励磁電流は大きくなる。(2)励磁電流を規定値より大きくすることはできない。一般的には、アモルフアスシート2の厚さが0.037mmなので、これを8?10枚重ねれば現行の珪素鋼板の厚さと略等しくなり、励磁電流及び占積率の値が適当なものとなる。」(第2頁左下欄第6行ないし同頁右下欄第9行。なお、上記「3部分」の「3」はローマ数字である。) 上記(1)によれば、アモルフアスシート相互間が絶縁されていないと、大きなうず電流が流れ、これにより多大な損失が生じるという問題があった。そして、前記うず電流を低減すべく、絶縁被覆をしたアモルフアスシートを用いると、絶縁被覆の割合が多くなり占積率の低下を招来していた。 これに対して、上記(2)及び(3)によれば、複数のアモルフアスシート2と絶縁テープ4とが交互に積み重なっていると、うず電流が発生し難く、きわめて低損失なものとなる。 さらに、上記(2)及び(3)によれば、上記絶縁テープ4の厚さは0.004?0.006mmすなわち4μm?6μmであり、上記アモルフアスシート2の厚さは0.037mmすなわち37μmであって、当該アモルフアスシート2を8?10枚重ねれば、占積率の値は適当なものとなる。 したがって、以上の記載事項と図面の記載とを総合勘案すると、引用文献2には、アモルフアス巻鉄心に関して、次の技術事項が記載されている。 「占積率の低下を招来せずに、うず電流を低下させるために、厚さ4μm?6μmの絶縁テープ4と8?10枚の厚さ37μmのアモルフアスシート2とを交互に積み重ねること。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明における「Fe基ナノ結晶合金」は、合金組成物を熱処理してナノ結晶を析出させたものであり、本願発明における「合金組成物」はナノ結晶を析出させたナノ結晶合金であるから、引用発明における「Fe基ナノ結晶合金」と本願発明における「合金組成物」は、「ナノ結晶合金」である点、すなわち、「ナノ結晶を析出させた」合金組成物である点で共通する。 (2)引用発明における「Fe基ナノ結晶合金」と本願発明における「合金組成物」は、ナノ結晶を析出させた合金組成物である点で共通するだけでなく、その組成について、「組成式FeaBbSicPxCyCuz」であって、「79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0<c≦8at%、1≦x≦8at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.08≦z/x≦0.8」である点でも共通する。 (3)引用発明における「Fe基ナノ結晶合金」は、高い飽和磁束密度と高い透磁率とを有するものである(上記第3の1.(2)参照。)から、「磁性体」であるということができる。 (4)上記(1)ないし(3)をまとめると、本願発明と引用発明は、 ・磁性体は合金組成物からなる点 ・上記合金組成物は、ナノ結晶を析出させたナノ結晶合金である点 ・上記合金組成物は、組成式FeaBbSicPxCyCuzであって、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0<c≦8at%、1≦x≦8at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.08≦z/x≦0.8である点 で共通する。 (5)引用発明における「積層磁芯」は、本願発明における「積層磁心」に相当する。ただし、本願発明の「積層磁心」が「厚さ60μm以上、600μm以下の磁性体からなる磁性薄帯と厚さ5μm以下(0を含まず)の絶縁層が交互に積層された」構造を有し、「前記磁性薄帯は前記磁性体からなる磁性薄帯が積層された積層体である」のに対して、引用発明においては、「積層磁芯」の具体的な構造等については特定されていない。 (6)積層磁心に占める磁性体の占積率について、本願発明おいては、「85%以上である」のに対して、引用発明においては、上記占積率についての特定はなされていない。 以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは、 「磁性体を用いた積層磁心であって、前記磁性体は組成式FeaBbSicPxCyCuzの合金組成物からなり、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦8at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.08≦z/x≦0.80であり、前記合金組成物はナノ結晶を析出させたナノ結晶合金である積層磁心。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 積層磁心が、本願発明においては、「厚さ60μm以上、600μm以下の磁性体からなる磁性薄帯と厚さ5μm以下(0を含まず)の絶縁層が交互に積層された」ものであり、かつ、「前記磁性薄帯は前記磁性体からなる磁性薄帯が積層された積層体であ」るのに対して、引用発明においては、積層構造や各層の厚みについて具体的な特定がなされていない点。 [相違点2] 積層磁心に占める磁性体の占積率が、本願発明においては、「85%以上」であるのに対して、引用発明においては、そのような特定がなされていない点。 第5 判断 1.相違点1について 引用文献2には、上記第3の2.で説示したように「占積率の低下を招来せずに、うず電流を低下させるために、厚さ4μm?6μmの絶縁テープ4と8?10枚の厚さ37μmのアモルフアスシート2とを交互に積み重ねること。」という技術事項が記載されている。 ここで、上記アモルフアスシート2を積み重ねたものの厚さを計算すると、8枚重ねた場合には296μmであり、10枚重ねた場合には370μmとなる。 また、上記「アモルファスシート2」及び上記「絶縁テープ4」は、それぞれ「磁性薄帯」及び「絶縁層」であるということができ、上記「アモルファスシート2」すなわち「磁性薄帯」を複数枚(8?10枚)積み重ねたものは、「積層体」であるということができる。 そうすると、引用文献2に記載の上記技術事項は、「占積率の低下を招来せずに、うず電流を低下させるために、厚さ4μm?6μmの絶縁層と複数枚の磁性薄帯を積み重ねた厚さ296μm?370μmの積層体とを交互に積み重ねること。」であるということができる。 そして、積層磁心を含む磁心の技術分野においては、渦電流の発生によって損失(鉄損)が生じることは技術常識であって、損失の少ない磁心を得るために渦電流の発生を抑制することはごく一般的な技術的課題であることや、積層磁心においても、引用例2に記載のような巻線磁心と同様に、磁性薄帯と絶縁層とを交互に積み重ねることは、従来から行われている(例えば、本願明細書の背景技術の欄(【0002】ないし【0004】)に先行技術文献として提示されている特開平8-45723号公報の【請求項1】及び【請求項6】、【0009】ないし【0013】参照。)ことにすぎないことを勘案すると、引用発明の積層磁心において、引用文献2に記載の上記技術事項を適用することによって、厚さ4μm?6μmの絶縁層と複数枚の磁性薄帯を積み重ねた厚さ296μm?370μmの積層体とを交互に積み重ねる構造とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 さらに、占積率の低下を防ぐためには、絶縁層の厚みは薄い方がよいことは明らかであるから、上記絶縁層の厚さを4μm?6μmの範囲のうち、4μm?5μmの範囲に限定することも、当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことではない。 2.相違点2について 上記1.のように、絶縁層の厚さを4μm?5μmに、複数枚の磁性薄帯を積み重ねた積層体の厚さを296μm?370μmとした場合の、積層磁心に占める磁性体の占積率について検討する。 絶縁層の厚さを下限の4μm、かつ、積層体の厚さを上限の370μmとした場合の占積率は約99%であり、絶縁層の厚さを上限の5μm、かつ、積層体の厚さを下限の296μmとした場合の占積率は約98%である。 そうすると、絶縁層の厚さを4μm?5μmに、複数枚の磁性薄帯を積み重ねた積層体の厚さを296μm?370μmとした場合の、積層磁心に占める磁性体の占積率の範囲は約98%?約99%であるから、本願発明において規定される「85%以上」を満たしている。 したがって、上記1.のように、絶縁層の厚さを4μm?5μmに、複数枚の磁性薄帯を積み重ねた積層体の厚さを296μm?370μmとすることによって、さらなる創意工夫を要することなく本願発明で規定する占積率の範囲を満たす積層磁心を得ることができる。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-02-21 |
結審通知日 | 2017-02-22 |
審決日 | 2017-03-07 |
出願番号 | 特願2011-185024(P2011-185024) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保田 昌晴 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
國分 直樹 井上 信一 |
発明の名称 | 積層磁心 |
代理人 | 池田 憲保 |