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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1327400
審判番号 不服2016-3804  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-11 
確定日 2017-04-13 
事件の表示 特願2013-229292「ビデオ信号を表示のために処理する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日出願公開、特開2014-103663〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.経緯
1.手続
本願は、平成25年11月5日(パリ条約による優先権主張2012年11月20日、米国)の出願であって、平成26年10月22日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成27年4月24日付けで手続補正がなされたが、平成27年11月6日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成28年3月11日付けで請求された拒絶査定不服審判である。

2.査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項1ないし4,6ないし15に係る発明は、下記刊行物1,2,4ないし6に記載された発明、及び本願の請求項5に係る発明は、下記刊行物1ないし6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

記(引用文献)
引用文献1:特開2007-135158号公報
引用文献2:特開2010-107909号公報
引用文献3:特開平7-107410号公報
引用文献4:特開2007-282082号公報
引用文献5:特開2011-205709号公報
引用文献6:特開2001-45444号公報

第2.本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成27年4月24日付けの手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載した事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりである。
なお、本願発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

(本願発明)
(A)コンピュータにより実施される方法であって、
(B)生成される表示のアスペクト比と第1のコンテンツのアスペクト比の差異の少なくとも1つに基づいて複数の未利用領域を検出するステップと、
(C)前記検出に基づいて、前記複数の未利用領域を統合して統合領域を形成するステップと、
(D)前記統合領域と、前記第1のコンテンツに関連する第1のコンテンツ領域とを有する出力ビデオ信号を生成するステップと、
(E)前記統合領域の利用に関連する1又はそれ以上のルールを定義するステップと、
(F)前記1又はそれ以上のルールに基づいて、前記統合領域に第2のコンテンツを関連付けるステップと、
(G)前記第2のコンテンツに関連する前記統合領域のサイズに基づいて、前記第1のコンテンツ領域のサイズをスケール調整するステップと
(H)を含むことを特徴とする方法。

第3.当審の判断
1.引用文献の記載事項
(1)引用文献1
原査定において引用された引用文献1である特開2007-135158号公報には、「番組情報表示装置及び方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、もともと映像の表示領域ではない黒帯部分に番組に関する情報(あらすじなど)を表示可能とし、番組の視聴を妨げることなく、各種の番組情報を表示できるようにした番組情報表示装置及び該装置を用いた番組情報表示方法を提供すること、を目的とする。

【0033】
本発明の番組情報表示装置10は、テレビジョン放送受信装置以外にも、パーソナルコンピュータ(PC)や、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)などのテレビチューナを内蔵あるいは外部接続可能な情報処理装置全般に適用され、表示画面のサイズとアスペクト比が異なる放送信号を表示可能とする。

【0038】
CPU(表示制御部)18は、全体の処理を司り、黒帯部分の表示制御や、番組の録画予約や視聴予約等の処理を行い、さらには、上記取得した番組情報の表示制御や、通信制御部27の処理などを行う。また、CPU18は、放送信号から映像信号と黒帯部分の境界線を検知し、境界線が検知された場合に黒帯部分が含まれていると判定する。
【0039】
上記映像信号と黒帯部分の境界線を検知する方法としては大きく2つあり、第1に、放送信号に含まれる黒部分が連続しているかどうかを判定し、黒部分が連続していると判定した場合に、その黒部分を黒帯部分と判定する。これにより、映像信号と黒帯部分の境界線を検知することができる。
【0040】
第2に、デジタル放送信号に含まれるディスプレイエクステンション情報に基づいて映像信号のサイズを特定し、特定した映像信号以外の部分を黒帯部分と判定する。これにより、第1の方法と同様に、映像信号と黒帯部分の境界線を検知することができる。MPEG形式などのデジタル放送信号には、シーケンスヘッダ中に上記ディスプレイエクステンション情報が含まれており、このディスプレイエクステンション情報において表示サイズ等が定義されている。

【0045】
CPU18は、放送信号に黒帯部分が存在するかどうかを判定し、さらに、黒帯部分に番組情報を表示するかどうかを決定する処理を行う。なお、番組情報を黒帯部分に表示させるかどうかを、ユーザによって選択可能としてもよい。また、CPU18は、番組情報を黒帯部分に表示させるかどうかを、番組情報の有無に応じて判断するようにしてもよい。また、黒帯部分を映像信号と共に表示させるかどうかの判断を、番組情報を黒帯部分に表示させるかどうかの判断に連動させてもよい。これは、例えば、番組情報を黒帯部分に表示させない場合、黒帯部分を表示させず、映像信号のみを画面全体に表示させるように制御し、一方、番組情報を黒帯部分に表示させる場合、黒帯部分を映像信号と共に画面に表示させるように制御する。
【0046】
また、表示部22の表示画面の上下左右に表示される黒帯部分に対して、どの黒帯部分にどの情報を表示させるかを、ユーザにより設定できるようにしてもよい。これは、例えば、後述の図8に示す設定画面を表示させて設定できるようにする。

【0050】
図4は、本発明による番組情報表示装置10において、上下部分に黒帯部分が存在する場合に、黒帯部分を画面上部のみにまとめて表示し、上部黒帯部分に文字や画像等を表示させる表示画面の一例を示す図で、図中、100は表示画面を示す。ここでは、表示画面100の下部に水平及び垂直サイズを変更せずに放送番組102を表示し、表示画面100の上下に表示されるべき黒帯部分をすべて放送番組102の上側(画面上部)に表示することにより、一度に表示できる領域を広くして画像情報および文字情報を同じ黒帯部分101に表示している状態を示す。
【0051】
図5は、本発明による番組情報表示装置10において、上下部分に黒帯部分が存在する場合に、黒帯部分を画面下部のみにまとめて表示し、下部黒帯部分に文字や画像等を表示させる表示画面の一例を示す図で、図中、100は表示画面を示す。ここでは、表示画面100の上部に水平及び垂直サイズを変更せずに放送番組102を表示し、表示画面100の上下に表示されるべき黒帯部分をすべて放送番組102の下側(画面下部)に表示することにより、一度に表示できる領域を広くして画像情報および文字情報を同じ黒帯部分101に表示している状態を示す。
【0052】
図6は、本発明による番組情報表示装置10において、左右部分に黒帯部分が存在する場合に、黒帯部分を画面左部のみにまとめて表示し、左部黒帯部分に文字や画像等を表示させる表示画面の一例を示す図で、図中、100は表示画面を示す。ここでは、表示画面100の右部に水平及び垂直サイズを変更せずに放送番組102を表示し、表示画面100の左右に表示されるべき黒帯部分をすべて放送番組102の左側(画面左部)に表示することにより、一度に表示できる領域を広くして画像情報および文字情報を同じ黒帯部分101に表示している状態を示す。
【0053】
図7は、本発明による番組情報表示装置10において、左右部分に黒帯部分が存在する場合に、黒帯部分を画面右部のみにまとめて表示し、右部黒帯部分に文字や画像等を表示させる表示画面の一例を示す図で、図中、100は表示画面を示す。ここでは、表示画面100の左部に水平及び垂直サイズを変更せずに放送番組102を表示し、表示画面100の左右に表示されるべき黒帯部分をすべて放送番組102の右側(画面右部)に表示することにより、一度に表示できる領域を広くして画像情報および文字情報を同じ黒帯部分101に表示している状態を示す。
【0054】
図8は、本発明による番組情報表示装置10において、黒帯部分の情報表示内容を設定するための設定画面の一例を示す図で、図中、200は黒帯部分の情報設定画面を示す。まず、情報設定画面200には、黒帯部分が存在する位置毎に設定するための設定項目201として「左右設定」、「上下設定」、「上下左右設定」が表示される。ここで例えば「左右設定」を選択決定すると、画面の左右のどこに黒帯部分を表示するかどうかを設定するための設定項目202が表示され、設定項目202には「左右両方に表示」、「左のみに表示」、「右のみに表示」、「表示しない(ワイド)」の項目が表示される。
【0055】
設定項目202において「表示しない(ワイド)」以外の項目を選択すると、詳細の設定項目203が表示される。この詳細設定項目203には、現在設定されている項目204(ここでは、情報連動、文字と画像、あらすじ情報が設定されている)が表示される。なお、図中の◎印はそれぞれの設定項目の中で選択されている項目を示す。

(2)引用文献4
同じく原査定において引用された引用文献4である特開2007-282082号公報には、「デジタル放送受信装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、第1には多画面表示中における緊急放送の文字スーパーの見易さを向上させ、第2には多画面表示中におけるいかなる映像を視聴中にも緊急放送の文字スーパーの見易さを向上させるデジタル放送受信装置を提供することを目的とする。

【0011】
本構成によって、取得した緊急放送情報に基づいて文字スーパーを重畳した画面のアスペクト比若しくは縮尺率を制御して変更可能とすることで、緊急放送を受信した時に文字スーパーを自動的に拡大表示させることが最も主要な特徴となる。

【0029】
また、映像合成部110に対し、例えば主映像を画面の右側(副画面)に、副映像を画面の左側(主画面)に多画面表示するよう指示を出す。チューナ部101は直前に視聴していたデジタル放送のチャンネル例えばスポーツ中継放送を選局している。
【0030】
この結果、モニタ部111の画面左側(主画面)に水平方向の表示サイズが画面全体の3/4でアスペクト比16:9のDVDの映像が、同右側(副画面)に水平方向の表示サイズが画面全体の1/4でアスペクト比4:3のデジタル放送の受像映像が表示される。
【0031】
ここで、視聴中のデジタル放送のチャンネルを送出しているTS上に緊急放送の送出が開始され、緊急放送情報取得部105が緊急放送情報の有無を検出し、且つ緊急放送に係る文字スーパーが存在している場合、文字スーパー生成部106がOSD表示用文字列を生成して、OSD重畳部107より主力された文字スーパー付きの受像映像が主映像処理部108、映像合成部110の処理を経て出力される。そのとき、モニタ部111は図2(a)となる。
【0032】
従来技術により構成されたデジタル放送受信装置においては図2(a)と同じ画面状態となり、文字スーパーが小さく見辛くなってしまう。そこで、本発明のデジタル受信装置の特徴部分である、緊急放送情報に基づいた画面の表示サイズ若しくはアスペクト比の制御処理を施すことにより、例えば、画面制御部116が、主映像処理部108に対し、表示サイズが画面全体の3/4でアスペクト比が16:9の映像、副映像処理部109に対し、表示サイズが画面全体の1/4でアスペクト比4:3の映像を表示するよう指示を出す。また、映像合成部110に対し、主映像を画面右側(副画面)に、副映像を画面左側(主画面)に多画面表示するよう指示を出す。その結果、文字スーパー付きの受像映像が拡大されてモニタ部111の画面上に表示され、大幅に見易さを向上させる。そのとき、モニタ部111は図2(b)となる。

(3)引用文献5
同じく原査定において引用された引用文献5である特開2011-205709号公報には、「映像受信装置および表示出力方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0008】
本発明にかかる映像受信装置は、所定の情報が取得可能であることを通知するためのイベント通知を受信するイベント通知受信手段と、映像情報を受信する映像情報受信手段と、前記イベント通知が受信された場合に、前記所定の情報の表示又は非表示を指示するための情報を含むポップアップ表示情報を表示装置に表示させる第1の表示制御手段と、前記イベント通知が受信された場合に、このイベント通知に含まれる、前記所定の情報の重要度を示すイベントタイプを判別するイベントタイプ判別手段と、前記判別されたイベントタイプに基づいて、前記所定の情報及び前記映像情報の表示形態をそれぞれ設定する表示形態設定手段と、前記所定の情報の表示を指示された場合に、前記表示形態を設定された前記所定の情報及び前記映像情報のうちの少なくとも前記所定の情報を前記表示装置に表示させる第2の表示制御手段と、を備えている。

【0049】
ユーザがポップアップ表示42を見て、サーバ13が提供する情報を閲覧しようとするとき、上述のようにDTV10はイベント通知のイベントタイプの情報に基づいて表示部120に表示する放送番組画面41とブラウザ画面43のレイアウト(各画面の配置、大きさ、有り/無し)を決定する。

【0053】
図6は本実施形態におけるイベント通知に含まれるイベントタイプが警報(alert)である場合の表示部120の表示の一例を示す図である。
【0054】
ここでは表示部120には放送番組画面41及びブラウザ画面43が表示されており、ブラウザ画面43は放送番組画面41より大きく表示されている。これによりユーザはこのサーバ13からの提供情報がある程度重要であることを一見して把握することができ、ブラウザ画面が大きめに表示されているためWebページの内容を把握しやすい(可視性がよい)。
【0055】
図7は本実施形態におけるイベント通知に含まれるイベントタイプが確認(notice)である場合の表示部120の表示の一例を示す図である。
【0056】
ここでは表示部120には放送番組画面41及びブラウザ画面43が表示されており、ブラウザ画面43は放送番組画面41より小さく表示されている。これによりユーザはこのサーバ13からの提供情報があまり重要でないことを一見して把握することができる。

2.引用発明
上記引用文献1に記載された発明について検討する。

(1)引用文献1の段落0005,0033,0038の記載によれば、引用文献1には、『パーソナルコンピュータにおいて、映像の表示領域でない黒帯部分に番組情報を表示する番組情報表示方法』に関する発明が記載されている。

(2)引用文献1の段落0038?0040の記載によれば、引用文献1の『番組情報表示方法』は、『デジタル放送信号に含まれるディスプレイエクステンション情報に基づいて映像信号のサイズを特定し、放送信号のうち、特定した映像信号以外の部分を黒帯部分と判定』することで、『放送信号に黒帯部分が含まれていることを判定』するものであり、さらに、段落0045,0046の記載によれば、判定される『黒帯部分』は、『表示画面の上下左右に表示される黒帯部分』である。
これらの事項及び図2,図3を参酌すると、引用文献に記載される技術事項は、表示画面に表示されるデジタル放送信号のサイズとデジタル放送信号に含まれる映像信号のサイズが異なる場合には、表示画面に表示されるデジタル放送信号の上下左右に黒帯部分が含まれ、その黒帯部分が存在することを判定するというものと認定できる。
すなわち、引用文献1の『番組情報表示方法』は、『表示画面に表示されるデジタル放送信号のサイズと映像信号のサイズに基づいて表示画面の上下左右に表示される黒帯部分の存在を判定』するものといえる。

(3)引用文献1の段落0050?0053の記載によれば、引用文献1の『番組情報表示方法』は、『上下(左右)部分に黒帯部分が存在する場合に、表示画面の上部あるいは下部(左部あるいは右部)に黒帯部分をまとめ』て表示するものであり、『表示画面の上部あるいは下部(左部あるいは右部)にまとめられた黒帯部分と放送番組とを表示画面に表示』する。

(4)引用文献1の段落0045,0046,0054,0055の記載によれば、引用文献1の引用文献1の『番組情報表示方法』は、『番組情報をまとめられた黒帯部分に表示させるかどうか、どのまとめられた黒帯部分にどの情報を表示させるかをユーザにより設定』する。

(5)まとめ
上記(1)ないし(4)によると、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)パーソナルコンピュータにおいて、映像の表示領域でない黒帯部分に番組情報を表示する番組情報表示方法であって、
(b)表示画面に表示されるデジタル放送信号のサイズと映像信号のサイズに基づいて表示画面の上下左右に表示される黒帯部分の存在を判定し、
(c)上下(左右)部分に黒帯部分が存在する場合に、表示画面の上部あるいは下部(左部あるいは右部)に黒帯部分をまとめ、
(d)表示画面の上部あるいは下部(左部あるいは右部)にまとめられた黒帯部分と放送番組とを表示画面に表示し、
(e)番組情報をまとめられた黒帯部分に表示させるかどうか、どのまとめられた黒帯部分にどの情報を表示させるかをユーザにより設定する
(f)番組情報表示方法。

3.引用文献4及び引用文献5に記載された技術事項
(1)引用文献4
上記1.(2)の記載によれば、引用文献4には、水平方向の表示サイズが画面全体の1/4の画面右側(副画面)に表示される主画像であるデジタル放送の受像画像に緊急放送情報に係る文字スーパーが存在した時に、その画面右側(副画面)の受像画像の表示サイズを画面全体の3/4に変更し、一方の画面左側(主画面)の水平方向の表示サイズが画面全体の3/4の副画像であるDVDの映像を、画面全体の1/4の表示サイズに変更する技術が記載されている。

(2)引用文献5
上記1.(3)の記載によれば、引用文献5には、表示部に映像情報(放送番組画面)と所定の情報(ブラウザ画面)を表示する際に、所定の情報の重要度に応じて、所定の情報が警報である場合には、所定の情報(ブラウザ画面)を映像情報(放送番組画面)より大きく表示し、所定の情報が確認である場合には、所定の情報(ブラウザ画面)を映像情報(放送番組画面)より小さく表示する技術が記載されている。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明の構成(A)及び(H)と引用発明の構成(a)及び(f)との対比
引用発明の「パーソナルコンピュータにおいて、映像の表示領域でない黒帯部分に番組情報を表示する番組情報表示方法」は、コンピュータにより番組情報の表示が実施されるものであり、本願発明の「コンピュータにより実施される方法」と相違しない。

(2)本願発明の構成(B)と引用発明の構成(b)との対比
本願発明は、「生成される表示のアスペクト比」と「第1のコンテンツのアスペクト比」を比較するものであり、引用発明は「表示画面に表示されるデジタル放送信号のサイズ」と「映像信号のサイズ」を比較するものである。

まず、本願発明の「生成される表示のアスペクト比」について検討すると、本願明細書の段落0010?0013に記載される「用語の定義」を参酌すれば、生成される出力ビデオ信号のアスペクト比のことであって、出力ビデオ信号はディスプレイ画面に表示される信号であるから、ディスプレイ画面に表示される出力ビデオ信号のアスペクト比のことと認められる。
一方、それに対応する引用発明の構成は「表示画面に表示されるデジタル放送信号のサイズ」である。
ここで、引用発明の「表示画面に表示されるデジタル放送信号」は、ディスプレイ画面に表示される出力ビデオ信号と同様のものであるから、本願発明の「生成される表示」に相当するものである。また、引用発明の「サイズ」及び本願発明の「アスペクト比」は、共に表示の『大きさに係る情報』といえる。
そうすると、引用発明の「表示画面に表示されるデジタル放送信号のサイズ」と本願発明の「生成される表示のアスペクト比」は、『生成される表示の大きさに係る情報』という点で一致する。

次に、本願発明の「第1のコンテンツのアスペクト比」について検討すると、それに対応する引用発明の構成は「映像信号のサイズ」である。
ここで「映像信号」はコンテンツといえ、それを第1のコンテンツと称することは任意のことであるから、『第1のコンテンツ』といえる。
そうすると、両者は『第1のコンテンツの大きさに係る情報』という点で一致する。

また、引用発明は、表示画面に表示されるデジタル放送信号のサイズと映像信号のサイズに基づいて表示画面の上下左右に表示される黒帯部分の存在を判定」するものであるが、その「表示画面の上下左右に表示される黒帯部分」は、本願発明の「複数の未利用領域」に相当するものである。
さらに、引用発明は、上記2つの大きさに係る情報から表示画面の黒帯部分の存在を判定しているのであるから、2つの大きさに係る情報の「差異」に基づいて表示画面の黒帯部分の存在を判定しているものといえる。
よって、引用発明は、本願発明と、上記2つの大きさに係る情報の「差異の少なくとも1つに基づいて複数の未利用領域を検出する」ものである点で一致する。

以上のことから、引用発明は、本願発明と、「生成される表示の大きさに係る情報と第1のコンテンツの大きさに係る情報の差異の少なくとも1つに基づいて複数の未利用領域を検出するステップ」を有している点で一致する。
ただし、当該ステップの「大きさに係る情報」に関し、本願発明は、「アスペクト比」であるのに対し、引用発明は、「サイズ」である点で、両者は相違する。

(3)本願発明の構成(C)と引用発明の構成(c)との対比
引用発明は「上下(左右)部分に黒帯部分が存在する場合に、表示画面の上部あるいは下部(左部あるいは右部)に黒帯部分をまとめ」るものであり、黒帯部分が存在することを検出したことに基づいて、上下(左右)の黒帯部分を統合して統合領域を形成しているといえ、本願発明の「前記検出に基づいて、前記複数の未利用領域を統合して統合領域を形成するステップ」と相違しない。

(4)本願発明の構成(D)と引用発明の構成(d)との対比
引用発明は「表示画面の上部あるいは下部(左部あるいは右部)にまとめられた黒帯部分と放送番組を表示画面に表示」するものであり、表示画面に、まとめられた黒帯部分と放送番組を表示するものであるから、そのような表示のために出力ビデオ信号を生成していることは明らかである。
そして、表示画面に表示される「放送番組」は、引用発明の構成(b)のサイズが特定された映像信号からなる放送番組が表示される領域であることは明かであり、本願発明の「第1のコンテンツに関連する第1のコンテンツ領域」に相当するものである。
すなわち、引用発明は「前記統合領域と、前記第1のコンテンツに関連する第1のコンテンツ領域とを有する出力ビデオ信号を生成するステップ」を有するといえ、本願発明と相違しない。

(5)本願発明の構成(E)及び(F)と引用発明の構成(e)との対比
まず、本願発明の「ルール」について確認すると、本願明細書の段落0018に記載される「用語の定義」によれば、結合領域の利用方法を定める1又はそれ以上の条件又はイベントであり、統合領域に第2のコンテンツをどのように関連付けるか、及びどのようなタイプの第2のコンテンツを関連付けるかを定め、例えば、統合領域に第1のコンテンツに関する追加情報を関連付けることなどが含まれるものである。
一方、引用発明は「番組情報をまとめられた黒帯部分に表示させるかどうか、どのまとめられた黒帯部分にどの情報を表示させるかをユーザにより設定する」ものであり、まとめられた黒帯部分に番組情報を表示するか否か、まとめられた黒帯部分にどのような番組情報を表示するかという決まりをユーザが設定可能にしているから、少なくとも1つのルールが定義されているといえる。
そして、その設定されたルールに基づいて、まとめられた黒帯部分に番組情報を表示するものである。
ここで、表示される番組情報は、コンテンツといえ、放送番組の映像信号とは異なるコンテンツであるから、そのコンテンツを第2のコンテンツと称することは任意である。
以上のことから、引用発明は「前記統合領域の利用に関連する1又はそれ以上のルールを定義するステップ」と、「前記1又はそれ以上のルールに基づいて、前記統合領域に第2のコンテンツを関連付けるステップ」を有するといえ、その点で本願発明と相違しない。

(6)本願発明の構成(G)について
引用発明は「前記第2のコンテンツに関連する前記統合領域のサイズに基づいて、前記第1のコンテンツ領域のサイズをスケール調整するステップ」を有していない点で、本願発明と相違する。

(7)まとめ
以上(1)ないし(6)の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
コンピュータにより実施される方法であって、
生成される表示の大きさに係る情報と第1のコンテンツの大きさに係る情報の差異の少なくとも1つに基づいて複数の未利用領域を検出するステップと、
前記検出に基づいて、前記複数の未利用領域を統合して統合領域を形成するステップと、
前記統合領域と、前記第1のコンテンツに関連する第1のコンテンツ領域とを有する出力ビデオ信号を生成するステップと、
前記統合領域の利用に関連する1又はそれ以上のルールを定義するステップと、
前記1又はそれ以上のルールに基づいて、前記統合領域に第2のコンテンツを関連付けるステップと、
を含むことを特徴とする方法。

[相違点1]
「複数の未利用領域を検出するステップ」の「大きさに係る情報」に関し、本願発明は、「アスペクト比」であるのに対し、引用発明は、「サイズ」である点。

[相違点2]
本願発明は、「前記第2のコンテンツに関連する前記統合領域のサイズに基づいて、前記第1のコンテンツ領域のサイズをスケール調整するステップ」を有しているのに対し、引用発明は、そのような特定はなされていない点。

5.判断
(1)相違点1について
表示画面の具体的なサイズと映像信号の具体的なサイズの差異に因らずとも、表示画面のアスペクト比と映像信号のアスペクト比に差異があれば、表示画面に黒帯部分を付加する必要があることは当該技術分野においては周知の事項である。
そうすると、引用発明の表示画面と映像信号の「サイズ」の差異の少なくとも1つに基づいて複数の未利用領域を検出するものを、を「アスペクト比」の差異の少なくとも1つに基づいて複数の未利用領域を検出するもとすることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
表示画面に2つのコンテンツを領域分割して表示する技術において、一方のコンテンツの情報が重要である場合に、重要なコンテンツの画面のサイズを大きくして、それに伴い、他方のコンテンツの画面のサイズを小さくして重要な画面を見やすくすること、すなわち重要なコンテンツの画面のサイズに基づいて、他方のコンテンツの画面のサイズをスケール調整する技術は、上記3.に示した引用文献4及び引用文献5に開示されているように周知の技術である。
したがって、引用発明に上記周知の技術を適用し、引用発明の表示画面にまとめられた黒帯部分に表示される番組情報と放送番組の2つのコンテンツが表示されている状態において、まとめられた黒帯部分に表示される番組情報に起因してそのまとめられた黒帯部分のサイズを変更し、そのサイズに基づいて放送番組のサイズをスケール調整する機能を設けることは、当業者が容易になし得ることであり、そうすることによって、相違点2に係る「前記第2のコンテンツに関連する前記統合領域のサイズに基づいて、前記第1のコンテンツ領域のサイズをスケール調整するステップ」を設けることは、当業者が容易に想到できることである。

(3)効果等について
本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献4,5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のように、本願の請求項7に係る発明は、引用文献1記載された発明及び引用文献4,5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-16 
結審通知日 2016-11-21 
審決日 2016-12-02 
出願番号 特願2013-229292(P2013-229292)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 曽我 亮司福西 章人  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 清水 正一
冨田 高史
発明の名称 ビデオ信号を表示のために処理する方法及び装置  
代理人 須田 洋之  
代理人 上杉 浩  
代理人 辻居 幸一  
代理人 鈴木 信彦  
代理人 辻居 幸一  
代理人 近藤 直樹  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 近藤 直樹  
代理人 上杉 浩  
代理人 鈴木 信彦  
代理人 大塚 文昭  

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