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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1327405
審判番号 不服2016-7074  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-13 
確定日 2017-04-13 
事件の表示 特願2014- 90345「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-208397〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月24日に特許出願されたものであって、平成27年5月21日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し同年7月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月21日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対し同年10月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月29日付け(発送日:平成28年2月19日)で、平成27年10月20日付け手続補正が却下されるとともに、拒絶査定がなされ、これに対し平成28年5月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
平成27年10月20日付けの手続補正は既に却下されている。そして、本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、平成27年7月24日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。

補正前(平成27年7月24日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立により、内部判定を行うとともに図柄の変動及び停止を行い、図柄の組み合わせが所定の態様で停止表示された場合に遊技利益を付与する遊技機において、
円筒状の構造を有し、周面に複数の前記図柄が付されたリールと、
前記リールの内部に配置され、前記図柄に光を照射する複数の発光素子と、
前記発光素子の発光を制御する発光制御手段と、を備え、
前記発光制御手段は、前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子が発光を行う第1の発光形態と、前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子が発光を行う第2の発光形態と、にて発光の制御が可能であり、前記リールに付された図柄のうち少なくとも所定の図柄が停止表示されることに基づいて、前記第2の発光形態によって前記所定の図柄に光を照射させる演出をおこなう
ことを特徴とする遊技機。」

補正後(本件補正である平成28年5月13日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立により、内部判定を行うとともに図柄の変動及び停止を行い、図柄の組み合わせが所定の態様で停止表示された場合に遊技利益を付与する遊技機において、
円筒状の構造を有し、周面に複数の前記図柄が付されたリールと、
前記リールの内部に配置されるハウジングであって、1つの前記図柄の範囲に対応する大きさの開口が形成されたハウジングの内部に配置され、前記開口から前記図柄に光を照射する複数の発光素子と、
前記発光素子の発光を制御する発光制御手段と、を備え、
前記発光制御手段は、前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子が発光を行う第1の発光形態と、前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子が所定の条件を満たすように発光態様を変化させる第2の発光形態と、にて発光の制御が可能であり、前記リールに付された図柄のうち少なくとも所定の図柄が停止表示されることに基づいて、前記第2の発光形態によって前記所定の図柄に光を照射させる演出をおこなう
ことを特徴とする遊技機。」

2.補正の適否
本件補正によって、補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「複数の発光素子」について、「前記リールの内部に配置され」ることを、「前記リールの内部に配置されるハウジングであって、1つの前記図柄の範囲に対応する大きさの開口が形成されたハウジングの内部に配置され」ることに限定し、また、「前記図柄に光を照射する」ことに「前記開口から」という限定が付された。
また、本件補正によって、補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「発光制御手段」が「発光の制御が可能であ」る「前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子」の「第2の発行形態」について、「発光を行う」ことから「所定の条件を満たすように発光態様を変化させる」ことに特定された。
そうすると、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は、明細書の段落【0008】、【0413】?【0433】及び図36?38等に基づいており、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下において検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.で示した特許請求の範囲の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)刊行物に記載された事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-195420号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。)。

ア 「【0048】

(図3のスロットマシン10の正面図の説明)
図3中、10は、スロットマシンを示すものである。
なお、遊技機は、スロットマシン10に限定されず、図示しないが、パチンコ機等でも良い。」

イ 「【0058】

リールドラム200には、図5及び図7に示すように、次の構成を備える。
なお、リールドラム200の構成は、次の(1)?(3)に限定されない。
(1)ハウジング300
ハウジング300は、図5に示すように、表示窓20の裏側に位置し、前面側に開口して形成されるものである。
【0059】
(2)区画室301?303
区画室301?303は、複数個(例えばハウジング300の上下方向に3個)設けられ、図柄220の間隔に合わせてハウジング300内を仕切って形成したものである。
区画室は、図5及び図7に示すように、ハウジングを上下方向に仕切ることで、各区画室内に配置された発光素子の間の光を遮るものである。」

ウ 「【0061】
(3)発光素子(LED)
発光素子は、図6に示すように、各区画室301?303内にマトリックス状に配置され、表示窓20に臨む複数コマの各図柄220を個別に照明可能な複数行(例えば縦4行)及び複数列(例えば横5列)から構成されたものである。
発光素子としては、例えばLEDを使用する。なお、発光素子として、LEDを例示したが、これに限定されず、電球や蛍光灯等でも良い。
(リールテープ210)
リールテープ210は、複数個、例えば3個あり、複数列の各リールドラム200の外周にそれぞれ設けられる。
【0062】
複数個の各リールテープ210には、例えばポリカーボネート等の透光性を有する素材が使用される。
複数個の各リールテープ210の表面には、所定の間隔で複数種類の図柄がそれぞれ表示されている。」

エ 「【0083】
具体的には、リール停止制御手段1120は、スタートスイッチ70の操作にもとづいて、リール31?33の回転を開始させ、遊技結果抽選手段1110による遊技結果、及びストップスイッチ80?82の操作にもとづいて、当該ストップスイッチ80?82に対応するリールモータ34?36の停止制御を行う。」

オ 「【0085】

(利益付与手段1150)
利益付与手段1150は、表示窓20に停止表示された3個のリール31?33の図柄の組み合わせが、予め設定された所定の図柄の組み合わせに一致している場合に、予め設定された所定の枚数のメダルを払い出すためのものである。」

カ 「【0087】

(発光制御手段1240)
発光制御手段1240は、遊技結果抽選手段1110により決定された遊技結果にもとづいて、複数行及び複数列の発光素子を個別に点灯制御可能なものである。」

キ 「【0089】
まず、メダルが投入されると、発光素子320の全てが点灯する。その後、スタートスイッチ70を操作すると、3個のリール31?33の回転が開始する。
このとき、図2のメイン制御手段1100の遊技結果抽選手段1110により遊技結果が抽選される。
遊技結果は、信号送信手段1160により、サブ制御手段1200の信号受信手段1210に送信される。
【0090】
左側のストップスイッチ80が操作されると、リール停止制御手段1120により左側のリール31が停止される。
当該左側のリール31の停止後に、遊技結果が所定の場合、例えばBB移行役の当選であり、BB図柄が表示窓20に停止表示された場合には、全ての発光素子320を消灯した後、部分発光手段1241が、停止表示されたBB図柄の発光部240?247のうち1個の発光部240?247の裏側に位置する発光素子320を点灯して、残る発光素子320を消灯させる。
【0091】
具体的には、図1に示すように、「7」図柄が停止表示された場合は、一旦全ての発光素子320を消灯した後、「7」図柄の星形の発光部240?247の裏側に位置する発光素子320のうち、まず、例えば発光部240の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部240の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部241の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部241の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部243の裏側に位置する発光素子320を点灯させる等、発光部240?247の裏側に位置する発光素子320の点灯・消灯を一方向に順番に行う制御により、星が時計回りに円を描くように回転しているように見せる。」

ク 図5から、ハウジング300がリールドラム200の内部に配置されていることが見てとれる。


上記記載事項ア?クを総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「スタートスイッチ70の操作にもとづいて、リール31?33の回転を開始させ(【0083】)、このとき、メイン制御手段1100の遊技結果抽選手段1110により遊技結果が抽選され(【0089】)、停止表示された3個のリール31?33の図柄の組み合わせが、予め設定された所定の図柄の組み合わせに一致している場合に、予め設定された所定の枚数のメダルを払い出す(【0085】)遊技機(【0048】)において、
複数種類の図柄が表面に表示されているリールテープ210が外周に設けられるリールドラム200(【0061】、【0062】)と、
リールドラム200の内部に配置され、前面側に開口して形成されるハウジング300(【0058】)であって、図柄220の間隔に合わせてハウジング300内を仕切って形成した各区画室301?303(【0059】)内に配置され、各図柄220を個別に照明可能な複数行及び複数列から構成された発光素子320(【0061】、ク)と、
複数行及び複数列の発光素子を個別に点灯制御可能な発光制御手段1240(【0087】)と、を備え、
メダルが投入されると、発光素子320の全てが点灯し(【0089】)、
「7」図柄が停止表示された場合は、一旦全ての発光素子320を消灯した後、「7」図柄の星形の発光部240?247の裏側に位置する発光素子320のうち、まず、発光部240の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部240の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部241の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部241の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部243の裏側に位置する発光素子320を点灯させる等、発光部240?247の裏側に位置する発光素子320の点灯・消灯を一方向に順番に行う制御により、星が時計回りに円を描くように回転しているように見せる(【0091】)
遊技機(【0048】)。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「スタートスイッチ70の操作」、「メイン制御手段1100の遊技結果抽選手段1110により遊技結果が抽選され」ること及び「予め設定された所定の枚数のメダルを払い出す」ことがそれぞれ、本願補正発明の「始動条件の成立」、「内部判定」、「遊技利益を付与する」ことに相当する。
したがって、引用発明1の「スタートスイッチ70の操作にもとづいて、リール31?33の回転を開始させ、このとき、メイン制御手段1100の遊技結果抽選手段1110により遊技結果が抽選され、停止表示された3個のリール31?33の図柄の組み合わせが、予め設定された所定の図柄の組み合わせに一致している場合に、予め設定された所定の枚数のメダルを払い出す遊技機」は、本願補正発明の「始動条件の成立により、内部判定を行うとともに図柄の変動及び停止を行い、図柄の組み合わせが所定の態様で停止表示された場合に遊技利益を付与する遊技機」に相当する。

イ 引用発明1の「リールドラム200」と「リールドラム200の外周に設けられ、表面に複数種類の図柄が表示されているリールテープ210」とからなるものは、リールドラム200が円筒状の構造を有していることは明らかであるから、本願補正発明の「円筒状の構造を有し、周面に複数の前記図柄が付されたリール」に相当する。

ウ 引用発明1の「リールドラム200の内部に配置され、前面側に開口して形成されるハウジング300であって、図柄220の間隔に合わせてハウジング300内を仕切って形成した各区画室301?303内に配置され、各図柄220を個別に照明可能な複数行及び複数列から構成された発光素子320」は、ハウジング300が前面側に開口して形成されることから各区画室301?303が前面側に図柄220の間隔に合わせた開口を有しその開口から各図柄220を個別に照明可能であることは明らかであるから、本願補正発明の「前記リールの内部に配置されるハウジングであって、1つの前記図柄の範囲に対応する大きさの開口が形成されたハウジングの内部に配置され、前記開口から前記図柄に光を照射する複数の発光素子」に相当する。

エ 引用発明1の「複数行及び複数列の発光素子を個別に点灯制御可能な発光制御手段1240」は、本願補正発明の「前記発光素子の発光を制御する発光制御手段」に相当する。

オ 引用発明1の「発光素子320の全て」が本願補正発明1の「前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子」といえるから、引用発明1の「発光素子320の全てが点灯」することは、本願補正発明の「前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子が発光を行う第1の発光形態」に相当する。
また、引用発明1の「「7」図柄の星形の発光部240?247の裏側に位置する発光素子320」が本願補正発明の「前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子」といえ、引用発明1の「まず、発光部240の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部240の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部241の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部241の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部243の裏側に位置する発光素子320を点灯させる等、発光部240?247の裏側に位置する発光素子320の点灯・消灯を一方向に順番に行う制御により、星が時計回りに円を描くように回転しているように見せる」ことが本願補正発明の「所定の条件を満たすように発光態様を変化させる」といえるから、引用発明1の「「7」図柄の星形の発光部240?247の裏側に位置する発光素子320のうち、まず、発光部240の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部240の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部241の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部241の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部243の裏側に位置する発光素子320を点灯させる等、発光部240?247の裏側に位置する発光素子320の点灯・消灯を一方向に順番に行う制御により、星が時計回りに円を描くように回転しているように見せる」ことは、本願補正発明の「前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子が所定の条件を満たすように発光態様を変化させる第2の発光形態」に相当する。
さらに、引用発明1の「「7」図柄が停止表示された場合」が本願補正発明の「前記リールに付された図柄のうち少なくとも所定の図柄が停止表示されることに基づいて」に相当し、また、引用発明1は「「7」図柄の星形の発光部240?247の裏側に位置する発光素子320」「の点灯・消灯を一方向に順番に行う制御により、星が時計回りに円を描くように回転しているように見せる」のであるから発光素子320の発光形態によって「7」図柄に光を照射させるものであることは明らかであり、引用発明1も本願補正発明のように「前記第2の発光形態によって前記所定の図柄に光を照射させる演出をおこなう」ものといえる。
そして、これら引用発明1の発光素子320の点灯・消灯の制御を発光制御手段1240が行うことは明らかである。
したがって、引用発明1の「発光制御手段1240」が「メダルが投入されると、発光素子320の全てが点灯し、「7」図柄が停止表示された場合は、一旦全ての発光素子320を消灯した後、「7」図柄の星形の発光部240?247の裏側に位置する発光素子320のうち、まず、発光部240の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部240の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部241の裏側に位置する発光素子320を点灯し、次に発光部241の裏側に位置する発光素子320の消灯と同時に発光部243の裏側に位置する発光素子320を点灯させる等、発光部240?247の裏側に位置する発光素子320の点灯・消灯を一方向に順番に行う制御により、星が時計回りに円を描くように回転しているように見せる」ように制御を行うことは、本願補正発明の「前記発光制御手段は、前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子が発光を行う第1の発光形態と、前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子が所定の条件を満たすように発光態様を変化させる第2の発光形態と、にて発光の制御が可能であり、前記リールに付された図柄のうち少なくとも所定の図柄が停止表示されることに基づいて、前記第2の発光形態によって前記所定の図柄に光を照射させる演出をおこなう」ことに相当する。

そうすると、上記ア?オの対比から、両者は、
「始動条件の成立により、内部判定を行うとともに図柄の変動及び停止を行い、図柄の組み合わせが所定の態様で停止表示された場合に遊技利益を付与する遊技機において、
円筒状の構造を有し、周面に複数の前記図柄が付されたリールと、
前記リールの内部に配置されるハウジングであって、1つの前記図柄の範囲に対応する大きさの開口が形成されたハウジングの内部に配置され、前記開口から前記図柄に光を照射する複数の発光素子と、
前記発光素子の発光を制御する発光制御手段と、を備え、
前記発光制御手段は、前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子が発光を行う第1の発光形態と、前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子が所定の条件を満たすように発光態様を変化させる第2の発光形態と、にて発光の制御が可能であり、前記リールに付された図柄のうち少なくとも所定の図柄が停止表示されることに基づいて、前記第2の発光形態によって前記所定の図柄に光を照射させる演出をおこなう
遊技機。」
である点で一致し、相違点はない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1と一致するから、刊行物1に記載された発明である。
また、仮に、上記ア?オの対比において、相違点があったとしても、本願補正発明は引用発明1から容易に発明をすることができたものである。

(4)小括
よって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明であり、また、仮に、刊行物1に記載された発明でないとしても、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。。

4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年7月24日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の補正前の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-280872号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)等の制御装置を用いて遊技態様を制御する遊技機に関し、特に複数の図柄(シンボル)を可変表示する可変表示部として、機械的に回転駆動されるリールから成る機械的表示手段或いは液晶、LED、CRT等の電気的表示手段を備えたスロットマシン、パチンコ機その他の弾球遊技機、ポーカーゲーム機等の遊技機に関する。」

イ 「【0019】
【実施例】図1は、実施例のスロットマシンの外観を示す正面斜視図である。このスロットマシン1の本体中央部には、各々の外周面に複数種類の図柄(以下、シンボルという)から成るシンボル列が描かれた3個のリール2,3,4が回転自在に設けられて可変表示部を形成している。」

ウ 「【0028】表示窓5,6,7の内側では、図2に示すように、3つのリール2,3,4の各々に対応して、各表示窓に現われるシンボルの裏側にそれぞれ3個のリールランプ41を縦方向に配列した基板42が設置されている。以下、合計9個のランプ41のうち、上の列のランプを左から順にW1,W2,W3、中央の列のランプを左から順にW4,W5,W6、下の列のランプを左から順にW7,W8,W9とする。これらのランプW1?W9の点灯・消灯の動作により、後述の図7?図15に示すデモンストレーションが実行される。」

エ 「【0045】一方、「S・Bゲーム」の発生時には、まず入賞の発生を報知するために、下記の表2に示すように、図9(A)?図10(E)の入賞図柄が並んだラインを示すリールランプ(W1?W9)によるデモンストレーションが行われ、その後、下記の表3に示すように、後述のCPU31(図5)内に設定されるR-レジスタの乱数値(これは、後述する図18?図20の入賞判定のための乱数サンプリングとは別で、この例では0?3のいずれか)に応じて、図11(A)?図12(D)に示すリールランプ(W1?W9)による「S・Bゲーム」入賞発生用のデモンストレーション及び音の発生が実行される。
【0046】詳細には、入賞ライン上に各入賞図柄が並んだ時、下記の表2及び図9(A)?図10(E)に示すように、リールランプ(W1?W9)により、入賞図柄が並んだ入賞ラインに対応したデモンストレーションが行われ(図16のステップ9)、その後、入賞図柄が並んだ3つのリールランプ(例えばW1-W2-W3)のみが、点灯と消灯を所定時間(例えば、120 msec)間隔で繰り返す。
【0047】
【表2】
そして、「S・Bゲーム」そのものの入賞発生を示すものとして、下記の表3及び図11(A)?図12(D)に示す4つの場合のファンファーレ音の発生及びリールランプ(W1?W9)によるデモンストレーションが実行される。その後、次のボーナスゲームで前述の“JAC-JAC-JAC”入賞が発生した時には、図10(F)のデモンストレーションが実行される。」

オ 「【0052】図5の回路において、マイコン30からの制御信号により動作が制御される主要なアクチュエータとしては、前述のリール2,3,4をそれぞれ回転駆動するステッピングモータ2S,3S,4S、前述の有効化ライン表示ランプ19、リールランプ41、表示ランプ20L,20C,20R、特定入賞状態表示ランプ(WINランプ)23、クレジット数表示部21、入賞配当数表示部22、遊技媒体のコインを収納するホッパー(払い出しのための駆動部を含む)40、及びスピーカ43があり、これらは各々、モータ駆動回路44、ランプ駆動回路45、表示部駆動回路(例えば、コインの枚数を計数するカウンタから成る)46、ホッパー駆動回路47、スピーカ駆動回路48によって駆動される。そして、これらの駆動回路は、マイコン30のI/Oポート38を介してCPU31に接続されている。」

カ 「【0060】上記実施例の回路構成によれば、前述のようにスタートレバー11が操作されると、その操作を検出するスタートスイッチ11Sからの信号に応じて、CPU31はモータ駆動回路44に駆動信号を送り、ステッピングモータ2S,3S,4Sによるリール2,3,4の回転駆動を行わせる一方、適宜のタイミングで乱数発生器36から1個の乱数をサンプリングし、この乱数について、ROM32内の入賞確率テーブルでどの入賞グループに属するかを判定する。入賞と判定された場合には、CPU31は、遊技者がストップボタン12,13,14を操作した時にリール停止信号回路49から送られる操作信号に応じて、入賞の種類に対応したシンボル表示位置にリール2,3,4を停止制御する信号をモータ駆動回路44に送ると共に、入賞の種類に対応したコイン払出しデータを表示部駆動回路46に供給して表示部22にコイン払出し数を表示し、且つ、払い出し指令信号をホッパー駆動回路47に供給してホッパー40から所定個数のコインの払出しを行う。その際、メダル検出部は、ホッパー40から払い出されるコインの枚数を計数し、その計数値が表示部駆動回路46からの枚数データに達した時点で、払出し完了信号回路がCPU31に払い出し完了信号を入力する。これにより、CPU31は、ホッパー駆動回路47を介してホッパー40の駆動を停止し、コインの払い出し処理を終了する。」

キ 「【0076】次に、上記乱数値の判定結果が“NO”の場合は、「外れゲーム」のフラグをRAM33にセットし(ST33)、“YES”の場合は、「JACゲーム」(JAC-JAC-JACが真ん中の入賞ラインに並ぶゲーム)のフラグをRAM33にセットして(ST34)、本フローの処理を終了する。」

ク 図9(A)?図10(E)から、中央ライン、上段ライン、下段ライン、斜め下がりライン及び斜め上がりラインのいずれのラインに入賞図柄がある場合でも、リールランプW1?W9のすべてを用いたデモンストレーションが行われることが見てとれる。

ケ 図10(F)から、ボーナスゲーム時に入賞図柄(JAC)が発生した場合、真ん中の入賞ラインに対応するリールランプW4?W6のみを用いた、W6を除く点灯→W5を除く点灯→W4を除く点灯→全て点灯というデモンストレーションが行われることが見てとれる。



上記記載事項ア?ケを総合すれば、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「スタートレバー11が操作されると、リール2,3,4の回転駆動を行わせる一方、乱数発生器36から1個の乱数をサンプリングし、この乱数について、ROM32内の入賞確率テーブルでどの入賞グループに属するかを判定し、入賞と判定された場合には、入賞の種類に対応したシンボル表示位置にリール2,3,4を停止制御すると共に、ホッパー40から所定個数のコインの払出しを行う(【0060】)遊技機(【0001】)において、
外周面に複数種類の図柄から成る図柄列が描かれた3個のリール2,3,4(【0019】)と、
3つのリール2,3,4の各々に対応して、図柄の裏側に縦方向に配列された3個のリールランプ41(【0028】)と、
リールランプ41の動作を制御するマイコン30(【0052】)と、を備え、
合計9個のランプ41のうち、上の列のランプを左から順にW1,W2,W3、中央の列のランプを左から順にW4,W5,W6、下の列のランプを左から順にW7,W8,W9とし、これらのランプW1?W9の点灯・消灯の動作により、デモンストレーションが実行される(【0028】)ものであり、
「S・Bゲーム」の発生時には、リールランプW1?W9のすべてを用いたデモンストレーションが行われ(【0045】、ク)、
次のボーナスゲームで“JAC-JAC-JAC”が真ん中の入賞ラインに並ぶ(【0076】)“JAC-JAC-JAC”入賞が発生した時には、真ん中の入賞ラインに対応するリールランプW4?W6のみを用いた、W6を除く点灯→W5を除く点灯→W4を除く点灯→全て点灯というデモンストレーションが行われる(【0047】、ケ)
遊技機(【0001】)。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。

ア 引用発明2の「スタートレバー11が操作される」こと、「乱数発生器36から1個の乱数をサンプリングし、この乱数について、ROM32内の入賞確率テーブルでどの入賞グループに属するかを判定」すること及び「ホッパー40から所定個数のコインの払出しを行う」ことがそれぞれ、本願発明の「始動条件の成立」、「内部判定」及び「遊技利益を付与する」ことに相当する。
また、引用発明2の「外周面に複数種類の図柄から成る図柄列が描かれた3個の」「リール2,3,4の回転駆動を行わせ」「リール2,3,4を停止制御する」ことは、本願発明の「図柄の変動及び停止を行」うことに相当する。
さらに、引用発明2の「入賞の種類に対応した図柄表示位置にリール2,3,4を停止制御する」ことは、本願発明の「図柄の組み合わせが所定の態様で停止表示された場合」に相当する。
したがって、引用発明2の「スタートレバー11が操作されると、リール2,3,4の回転駆動を行わせる一方、乱数発生器36から1個の乱数をサンプリングし、この乱数について、ROM32内の入賞確率テーブルでどの入賞グループに属するかを判定し、入賞と判定された場合には、入賞の種類に対応した図柄表示位置にリール2,3,4を停止制御すると共に、ホッパー40から所定個数のコインの払出しを行う遊技機」は、本願発明の「始動条件の成立により、内部判定を行うとともに図柄の変動及び停止を行い、図柄の組み合わせが所定の態様で停止表示された場合に遊技利益を付与する遊技機」に相当する。

イ 引用発明2の「外周面に複数種類の図柄から成る図柄列が描かれた3個のリール2,3,4」は、円筒状の構造を有していることは明らかであるから、本願発明の「円筒状の構造を有し、周面に複数の前記図柄が付されたリール」に相当する。

ウ 引用発明2の「3つのリール2,3,4の各々に対応して、図柄の裏側に縦方向に配列された3個のリールランプ41」は、リールの内部に配置され、図柄に光を照射するものであることは明らかであるから、本願発明の「前記リールの内部に配置され、前記図柄に光を照射する複数の発光素子」に相当する。

エ 引用発明2の「リールランプ41の動作を制御するマイコン30」は、本願発明の「前記発光素子の発光を制御する発光制御手段」に相当する。

オ 引用発明2の「リールランプW1?W9のすべて」が本願発明の「前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子」といえるから、引用発明2の「「S・Bゲーム」の発生時には、リールランプW1?W9のすべてを用いたデモンストレーション」は、本願発明の「前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子が発光を行う第1の発光形態」に相当する。
また、引用発明2の「真ん中の入賞ラインに対応するリールランプW4?W6」が本願発明の「前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子」といえ、引用発明2の「リールランプW4?W6のみを用いた、W6を除く点灯→W5を除く点灯→W4を除く点灯→全て点灯というデモンストレーションが行われる」ことが本願発明の「所定の条件を満たすように発光態様を変化させる」といえるから、引用発明2の「次のボーナスゲームで“JAC-JAC-JAC”が真ん中の入賞ラインに並ぶ“JAC-JAC-JAC”入賞が発生した時には、真ん中の入賞ラインに対応するリールランプW4?W6のみを用いた、W6を除く点灯→W5を除く点灯→W4を除く点灯→全て点灯というデモンストレーション」は、本願発明の「前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子が所定の条件を満たすように発光態様を変化させる第2の発光形態」に相当する。
さらに、引用発明2の「“JAC-JAC-JAC”が真ん中の入賞ラインに並ぶ“JAC-JAC-JAC”入賞が発生した時には」が本願発明の「前記リールに付された図柄のうち少なくとも所定の図柄が停止表示されることに基づいて」に相当し、また、引用発明2は「真ん中の入賞ラインに対応するリールランプW4?W6のみを用いた、W6を除く点灯→W5を除く点灯→W4を除く点灯→全て点灯というデモンストレーションが行われる」のであるから、リールランプW4?W6の発光形態によって真ん中の入賞ラインに並ぶ“JAC-JAC-JAC”図柄に光を照射させるものであることは明らかであり、引用発明2も本願発明のように「前記第2の発光形態によって前記所定の図柄に光を照射させる演出をおこなう」ものといえる。
そして、引用発明2のデモンストレーションにおけるリールランプW1?W9の動作の制御を「マイコン30」が行うことは明らかである。
したがって、引用発明2の「マイコン30」が「「S・Bゲーム」の発生時には、リールランプW1?W9のすべてを用いたデモンストレーション」を行い、「次のボーナスゲームで“JAC-JAC-JAC”が真ん中の入賞ラインに並ぶ“JAC-JAC-JAC”入賞が発生した時には、真ん中の入賞ラインに対応するリールランプW4?W6のみを用いた、W6を除く点灯→W5を除く点灯→W4を除く点灯→全て点灯というデモンストレーション」を行うことは、本願発明の「前記発光制御手段は、前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子が発光を行う第1の発光形態と、前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子が所定の条件を満たすように発光態様を変化させる第2の発光形態と、にて発光の制御が可能であり、前記リールに付された図柄のうち少なくとも所定の図柄が停止表示されることに基づいて、前記第2の発光形態によって前記所定の図柄に光を照射させる演出をおこなう」ことに相当する。

そうすると、上記ア?オの対比から、両者は、
「始動条件の成立により、内部判定を行うとともに図柄の変動及び停止を行い、図柄の組み合わせが所定の態様で停止表示された場合に遊技利益を付与する遊技機において、
円筒状の構造を有し、周面に複数の前記図柄が付されたリールと、
前記リールの内部に配置され、前記図柄に光を照射する複数の発光素子と、
前記発光素子の発光を制御する発光制御手段と、を備え、
前記発光制御手段は、前記複数の発光素子のうち第1のグループに含まれる発光素子が発光を行う第1の発光形態と、前記複数の発光素子のうち第2のグループに含まれる発光素子が発光を行う第2の発光形態と、にて発光の制御が可能であり、前記リールに付された図柄のうち少なくとも所定の図柄が停止表示されることに基づいて、前記第2の発光形態によって前記所定の図柄に光を照射させる演出をおこなう
遊技機。」
である点で一致し、相違点はない。

したがって、本願発明は、引用発明2と一致するから、刊行物2に記載された発明である。
また、仮に、上記ア?オの対比において、相違点があったとしても、本願発明は引用発明2から容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物2に記載された発明であり、また、仮に、刊行物2に記載された発明でないとしても、当業者が刊行物2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-10 
結審通知日 2017-02-14 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2014-90345(P2014-90345)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 史彬  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 藤田 年彦
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 田中 信介  

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