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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1327470
審判番号 不服2015-19338  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-27 
確定日 2017-04-20 
事件の表示 特願2011-177994「センサー・データの二分決定図としての表現」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月 1日出願公開、特開2012- 40392〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年8月16日(パリ条約による優先権主張 平成22年8月17日 米国)の出願であって、平成26年12月26日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月10日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年7月22日付けで拒絶査定されたところ、同年10月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後、当審において平成28年5月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年7月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年9月29日に当審において面接審理を行い、同月30日付けで最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年12月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月10日に電話応対が行われたものである。

第2 当審拒絶理由2及び平成28年12月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての検討

1 当審拒絶理由2の概要

当審拒絶理由2の概要は、以下のとおりである。

(1) 拒絶の理由1

本願は、発明の詳細な説明が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


請求項1ないし13に係る発明は、発明特定事項に、「前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算を適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階であって、前記特性関数は、所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す、段階」を含むものであるが、どのようにすれば、論理的AND、XORまたはNOT演算を適用することによって、特性関数を生成することができるのか、発明の詳細な説明の記載からは理解できない。

(2) 拒絶の理由2

本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


請求項1ないし13に係る発明は、発明特定事項に、「前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算を適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階であって、前記特性関数は、所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す、段階」を含むものであるが、発明の詳細な説明には、論理的OR演算を適用することによって特性関数を生成した例は記載されているが、論理的AND、XORまたはNOT演算を適用したものは何ら記載されておらず、また、出願時の技術常識を照らしても、発明の詳細な説明に記載された内容を、論理的AND、XORまたはNOT演算を適用することにまで一般化できるとは認められない。

2 本件補正の適否

本件補正は、補正前の請求項1、7、13にそれぞれ存在する「前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算を適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階」の記載を、「前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階」に補正するものである。
本件補正は、当審拒絶理由2の(1)及び(2)に対応するものであり、特許法第17条の2第5項第4号の、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、特許法第17条の2第3項、及び、第4項に違反するところはない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

3 当審拒絶理由2の判断

(1) 本願発明

本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし13に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本願発明1、本願発明7、及び、本願発明13は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
メモリおよび一つまたは複数のプロセッサを有する装置が実行する方法であって、
一つまたは複数のセンサーによって取られた複数の測定を記録するセンサー・データのサンプルの集合にアクセスする段階と;
前記サンプルの集合の各サンプルを最小項として表し、最小項の集合を生じる段階と;
前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階であって、
前記特性関数は、所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す、段階とを含む、
方法。」

「【請求項7】
メモリおよび一つまたは複数のプロセッサを有する装置であって、
前記メモリは、一つまたは複数のセンサーによって取られた複数の測定を記録するセン
サー・データのサンプルの集合を記憶するよう構成されており;
前記一つまたは複数のプロセッサは:
前記サンプルの集合の各サンプルを最小項として表し、最小項の集合を生じる段階と;
前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階であって、前記特性関数は、所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す、段階とを実行するよう構成されている、
装置。」

「【請求項13】
プログラムを記憶している一つまたは複数の非一時的なコンピュータ可読媒体であって
、前記プログラムは、一つまたは複数のプロセッサによって実行されたときに、該一つまたは複数のプロセッサに:
一つまたは複数のセンサーによって取られた複数の測定を記録するセンサー・データのサンプルの集合にアクセスする段階と;
前記サンプルの集合の各サンプルを最小項として表し、最小項の集合を生じる段階と;
前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階であって、
前記特性関数は、所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す、段階と
を実行させる、
媒体。」

(2) 当審拒絶理由2の検討

ア 当審拒絶理由2の「拒絶の理由 1」の検討
請求人は、平成28年12月2日付け意見書において、「A or B=not ((not A) and (not B))なので、「組み合わせ」であれば0044段末尾に記載されているようなorと同等の処理ができ」る旨を主張し、「本願に接した当業者は、どのようにすれば「論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用することによって」特性関数を生成することができるのか、理解できる」旨を主張した。
したがって、「論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせ」であれば、当業者が本願発明1ないし13を実施可能である点は明らかになった。
よって、当審拒絶理由2の「拒絶の理由 1」は解消した。

イ 当審拒絶理由2の「拒絶の理由 2」の検討
請求人は、上記意見書において、「「組み合わせ」であれば0044段末尾に記載されているようなorと同等の処理ができ」、「本願に接した当業者は、「論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用することによって」特性関数を生成するための組み合わせを考案することができる旨を主張した。
また、段落【0044】には、「論理演算は、AND、OR、XORおよびNOTのうちの一つまたは任意の二つ以上の論理的な組み合わせであってもよい。」との記載があり、本願発明1ないし13が、発明の詳細な記載された範囲を超えるものを含むものとまではいえなくなった。
よって、当審拒絶理由2の「拒絶の理由 2」は解消した。

(3) 当審拒絶理由2のまとめ

以上のことから、本件補正により、当審拒絶理由2は解消した。

第3 当審拒絶理由1について

1 再度当審拒絶理由1の検討を行う理由

上記「第2」で検討したとおり、本件補正により、当審拒絶理由2は解消した。
そして、平成28年7月11日付けの手続補正後の請求項1ないし13に係る発明は、「最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算を適用する」点に特徴があり、当審拒絶理由1において示した引用例とは明らかに異なる論理演算を適用するものであったため、当審拒絶理由2の通知時には、当審拒絶理由1は解消したと判断されたが、本件補正により、「最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用する」点に特徴を有するものとなり、再び論理演算が変更されたため、本件補正後の請求項1ないし13が、当審拒絶理由1を解消するものであるか否かについて、改めて、以下に検討する。

2 当審拒絶理由1の概要

当審拒絶理由1の概要は以下のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1ないし15について
・下記引用例1、2
引用例1:特開2003-58614号公報
引用例2:「Stergios Stergiou, et al.,”重要な産業問題に対するコンパクトBDDライブラリの新たな応用”,雑誌FUJITSU,2009年9月,第60巻,第5号,p.522-528」

3 当審拒絶理由1の検討

(1) 本願発明1

上記「第2」「3」「(1)」に記載した本願発明1の発明特定事項を分説し、A)ないしE)の符号を付与すると、下記のとおりである。

A) メモリおよび一つまたは複数のプロセッサを有する装置が実行する方法であって、
B) 一つまたは複数のセンサーによって取られた複数の測定を記録するセンサー・データのサンプルの集合にアクセスする段階と;
C) 前記サンプルの集合の各サンプルを最小項として表し、最小項の集合を生じる段階と;
D) 前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階であって、
E) 前記特性関数は、所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す、段階とを含む、
方法。

(2) 引用例記載の事項

ア 引用例1

上記引用例1には、次の事項が記載されている。(下線は、参考のために当審が付したものである。)

(引1-1) 「【請求項1】 建物内の環境を規定する各種環境因子を計測・計量する各環境因子に対応したセンサと、各センサの計測・計量値を取り込むセンサ情報収集手段と、収集されたセンサ情報をデータマイニングの決定木を適用してデータマイニングする診断手段とからなり、データマイニングのために採用する目的変数に応じた設備の運用に関する診断結果を提示する建物の設備運用管理支援システム。」

(引1-2) 「【発明の実施の形態】以下本発明を以下に説明する。
【0014】図1は本発明のシステムの概略構成を示すものであって、かかる構成は、建物内の各居室空間での温度を測定する温度センサ、・・・建物の環境を規定する各種環境因子を測定するセンサ1…群と、これらセンサ…群の計測出力を取り込む中央制御盤、BMS(Building Management System)、BEMS(Building Energy and Environmental Management System)などからなるセンサ情報収集手段2と、このセンサ情報収集手段2により収集された大規模なセンサ情報を格納するデータベースDBと、図2に示すようにこのデータベースDBに格納したセンサ情報をネットワークNTを介して取り込み(ステップS1)、この取り込んだセンサ情報に対して前処理を施して目的変数を決定し(ステップS2)、データマイニングの決定木によるデータマイニングを行い(ステップS3)、知識発見(ステップS4)という過程を経て建物のライフサイクルにおける最適化に対する診断を行うコンピュータシステムからなる診断手段3とで構成される。」

(引1-3) 「【0023】次に生成される決定木を図4に示す決定木から知識を獲得する例を実施例により以下に示す。
【0024】(実施例1)本実施例では、建物Xの全体のランニングコスト(総運用維持費)を最小にする運用方法のデータマイニングについて以下のアルゴリズムを採用する。
【0025】まず、目的変数の決定を行うに当たっては、上記の膨大なセンサ情報(例えばサンプリング間隔5分、データ1年分属性総数10万5千個、パラメータ数700)の中から建物Xの全体のランニングコストに関連する、ガス料金(ガス使用量から求める)、電気料金(電力使用量から求める)を抽出し、目的変数をランニングコストたる(ガス料金+電気料金)とする。
【0026】次に上述のマイニングアルゴリズムを実行して決定木を生成させ、この生成された決定木の一番先端のクラスに注目する(図4の例の場合は6クラスである。)その中で、目的変数が最小になっているパラメータと値を設備制御や建物Xの管理者にフィードバックする。
【0027】例えば、パラメータ1が建物Xの各階の空調設備の室温設定値26度以上、パラメータ2が、ガス吸収式熱源の運転時間8時間以下、パラメータ3が熱源からの送水温度10℃以下と言うように診断を下し、夫々の値の運用になるように設備制御や建物Xの管理者へフィードバックするのである。」

(引1-4) 上記(引1-3)において、「例えばサンプリング間隔5分」と記載されていることから、センサ情報は、所定のサンプリング間隔で複数回取得されるものであることは当業者にとって明らかである。

(引1-5) 上記(引1-1)に記載された「各センサの計測・計量値」は、「センサ情報収集手段」により取り込まれるものであり、上記(引1-2)には、「センサ情報収集手段2により収集された大規模なセンサ情報」と記載されていることから、上記の「各センサの計測・計量値」と「大規模なセンサ情報」は同じものといえる。

よって、上記(引1-4)及び(引1-5)を踏まえ、上記(引1-1)から(引1-3)の摘記を総合し、a)ないしg)の符号を付与し、方法の発明として整理すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「a) コンピュータシステムからなる診断手段が診断を行う方法であって、
b) 建物内の環境を規定する各種環境因子を計測・計量する各環境因子に対応したセンサと、
c) 所定のサンプリング間隔で複数回取得される各センサの計測・計量値を取り込むセンサ情報収集手段と、
d) 収集されたセンサ情報をデータマイニングの決定木を適用してデータマイニングする診断手段とからなり、
e) センサ情報収集手段により収集された各センサの計測・計量値である大規模なセンサ情報を格納するデータベースを有し、
f) 該データベースに格納されたセンサ情報を取り込む段階と、
g) センサ情報に基づきデータマイニングする段階とを含む
方法。」

イ 引用例2

上記引用例2には、次の事項が記載されている。(下線は、参考のために当審が付したものである。)

(引2-1) 「BDDは,効率的に操作することができる。二つのBDD間のいかなるブール演算も,各BDDの大きさの高々二次の時間で完了することができる。BDDは,実際の応用における大多数の関数をコンパクトに表現できる。
コンパクトであること,そして効率的であることから,シミュレーション,合成,検証,テスト生成,人工知能,データマイニング,ソフトウェアセキュリティ,フォールトトレラントコンピューティングなどの分野において,様々な応用が可能である。」(第523頁左欄第18行?27行)

(引2-2) 「図1のBDDは関数f=x1x3x4+x1x3~x4~を表しており,リスト[8, 11, 12, 15]を符合化している。
最初の要素は図-2に示すトレースから得られる。変数の割当ては(x1, x2, x3, x4)=(1, 0, 0, 1)であり,リストの最初の要素「8」が得られる。」(第526頁左欄第11行?15行)(引用例2では「~」は左の文字のアッパーライン。)

(引2-3) 「インターネットルータアクセス制御の問題の概略を以下に示す。すなわち,ルータを通過することを許可されていないパケットの送信元と送信先のIPアドレスの対のリストを維持する。このリストをL={<IP_(s),IP_(d)>_(i)}とする。通常,IPアドレスは32ビット長の整数なので,各対は64ビットの数で示される。
各対iについて,64個の変数による最小項(minterm)miを構成する。例えば,対
11011110101011110010000000000111
00100000000001101101111010101111
は最小項
x1x2x3~x4x5・・・x60~x61x62x63x64
により表される。」(第527頁左欄最下行?右欄14行)(引用例2では「~」は左の文字のアッパーライン。)

(引2-4) 上記(引2-2)では、8から15までのリストを4つの二進数の項で表現しており、4つの二進数で表現できる数は0から15であるから、上記(引2-3)を参酌すれば、上記(引2-2)のBDDが表す関数であるリスト[8, 11, 12, 15]の要素か否かを示す関数は、最小項により表現されていることがわかる。

(引2-5) 上記(引2-2)において、BDDが表す関数であるf=x1x3x4+x1x3~x4~において、x1x3x4と、x1x3~x4~は、それぞれ最小項であり、OR演算子で結合されていることから、BDDが表す関数fは、最小項にOR演算を適用して生成されたものといえる。

上記(引2-4)及び(引2-5)を踏まえ、上記(引2-1)から(引2-3)の摘記を総合すると、引用例2には、
「BDDは関数をコンパクトに表現でき、効率的であることから、データマイニングに応用が可能である点。」(以下、「引用例2記載事項1」という。)、及び、「BDDが表す関数は、最小項にOR演算を適用して生成されたものであり、最小項で表現されたリストの要素か否かを示すものである点。」(以下、「引用例2記載事項2」という。)が記載されている。

(3) 対比

引用発明と本願発明1とを対比する。

ア 本願発明1のA)の特定事項について
コンピュータがメモリやプロセッサを備えていることは技術常識であるから、引用発明における「コンピュータシステムからなる診断手段が診断を行う方法」は、本願発明1における「メモリおよび一つまたは複数のプロセッサを有する装置が実行する方法」に相当する。

イ 本願発明1のB)の特定事項について
(ア) 引用発明の「各センサ」は、本願発明1の「一つまたは複数のセンサー」に相当し、引用発明の「所定のサンプリング間隔で複数回取得される」「計測・計量値」は、本願発明1の「複数の測定を記録するセンサー・データ」に相当する。
(イ) 引用発明における「大規模なセンサ情報」は、本願発明1における「センサー・データのサンプルの集合」に相当する。
(ウ) 情報を取り込むにあたり、該情報が格納されたデータベースにアクセスすることは当業者にとって自明であるから、引用発明における「所定のサンプリング間隔で複数回取得される各センサの計測・計量値である」「データベースに格納された」「大規模なセンサ情報」「を取り込む段階」は、本願発明1における「一つまたは複数のセンサーによって取られた複数の測定を記録するセンサー・データのサンプルの集合にアクセスする段階」に相当する。

ウ 本願発明1のC)ないしE)の特定事項について
引用発明は、本願発明1のC)ないしE)の特定事項を具備していない。

そうすると、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
「メモリおよび一つまたは複数のプロセッサを有する装置が実行する方法であって、
一つまたは複数のセンサーによって取られた複数の測定を記録するセンサー・データのサンプルの集合にアクセスする段階とを含む、
方法。」

また、両者は、以下の点で相違している。

本願発明1が、サンプルの集合の各サンプルを最小項として表し、最小項の集合を生じる段階と、前記最小項の集合の最小項に論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせを適用することによって前記最小項の集合から特性関数を生成する段階であって、前記特性関数は、所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す、段階とを含むのに対し、引用発明は、それらの段階を含んでいない点。

(4) 相違点の判断

ア 前述したとおり、引用例2には、引用例2記載事項1が記載されている。そして、引用例2記載事項1における「BDDが表す関数」は、引用例2記載事項2を踏まえると、「リスト[8, 11, 12, 15]の要素か否かを示す関数」であるから、本願発明1の「所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す」「特性関数」に相当する。

イ そして、引用例2記載事項2における「BDDが表す関数」が「最小項で表現されたリストの要素か否かを示す」ことは、本願発明1の「特性関数」が「所与の最小項が前記最小項の集合の要素であるかどうかを示す」ことに相当する。

ウ 引用発明はセンサ情報に基づきデータマイニングするものであるところ、効率的に処理することは自明の課題であるから、引用例2記載事項1を参酌し、BDDが表す関数をデータマイニングに応用するとともに、データマイニングを行うにあたって、引用例2記載事項2を参酌し、効率的な処理を行う目的で、最小項で表現されたリストの要素か否かを示す、最小項にOR演算を適用して生成されたBDDが表す関数を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。

エ また、「論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせ」という場合には、文言上、様々な組み合わせを含み、「not ((not A) and (not B))」もその組み合わせに含まれるところ、これが、論理的に「A or B」と全く同じものであることは、ド・モルガンの定理を参酌すれば当業者にとって明らかである。
なお、この点は、平成28年12月2日付け意見書における請求人の主張からも明らかである。
したがって、本願発明1における「論理的AND、XORまたはNOT演算の二つ以上の論理的な組み合わせ」は、実質的に「OR演算」を包含するものである。

(5) 本願発明1の効果

本願発明1の効果は、引用例1及び引用例2の記載事項から当業者が予測できる範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。

4 当審拒絶理由1のまとめ

よって、本願発明1は、引用発明、及び、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 結語

以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明、及び、引用例2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-17 
結審通知日 2017-02-21 
審決日 2017-03-07 
出願番号 特願2011-177994(P2011-177994)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A61B)
P 1 8・ 537- WZ (A61B)
P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 幸仙  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 小川 亮
▲高▼橋 祐介
発明の名称 センサー・データの二分決定図としての表現  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 加藤 隆夫  

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