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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02N |
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管理番号 | 1327561 |
審判番号 | 不服2016-8805 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-14 |
確定日 | 2017-04-27 |
事件の表示 | 特願2011-81732号「発電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 8日出願公開、特開2011-250675号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年4月1日(優先権主張平成22年4月28日)の出願であって、平成26年12月5日付けで拒絶理由通知がされ、平成27年2月9日付けで意見書及び手続補正書が提出がされ、同年8月12日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年10月19日付けで意見書及び手続補正書が提出がされ、平成28年3月2日付けで平成27年10月19日付けの手続補正書の補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ、この査定に対し、平成28年6月14日に本件拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年6月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年6月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、 「【請求項1】 温度が経時的に上下する熱源と、 前記熱源の温度変化により電気分極する第1デバイスと、 前記第1デバイスから電力を取り出すための第2デバイスと を備え、 前記熱源が、 多気筒型のエンジンと、前記エンジンの各気筒に接続される複数の分岐管、および、前記分岐管の下流側において各前記分岐管を統合する集気管を備える排気多岐管とを備え、周期的に温度変化する内燃機関であり、 前記第1デバイスが、前記分岐管において前記エンジンから所定間隔を隔てて配置される焦電素子である ことを特徴とする、発電システム。」 と補正された。 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1デバイス」の「分岐管」への「配置」箇所について、「前記分岐管において前記エンジンから所定間隔を隔てて配置される」と限定する補正を含むものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平3-177082号公報(以下「刊行物1」という。)には、「熱電発電器」に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与。以下も同様。) (ア)「本発明は、熱電発電器に係り、特に、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する半導体熱電素子を備えた熱電発電器に関し、自動車、船舶等の内燃機関あるいは工場の廃熱回収機器等に利用できる。」(第1頁右下欄9?13行) (イ)「従来より、熱電効果(ゼーベック効果)を応用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電素子がある。 例えば、第7図に示されるように、従来の半導体で構成される熱電素子30は、一端にP-N接合部31が設けられ、他端に一対の電極32,33が設けられている。この熱電素子30の一端、P-N接合部31側を加熱し、他端を冷却することにより、温度差に比例した電圧が一対の電極32,33に発生し、温度差の二乗に比例した電力を得ることができる。 このため、複数の熱電素子30を熱源となる熱発生機器の熱源基体部材に取付けることによって発電器を構成できる。熱電素子30を熱発生機器に取付けるにあたっては、熱発生機器が振動を発生しても熱電素子30が破壊されたり、離れたりしないように、熱電素子30を熱発生機器側へ付勢する付勢手段を設けて振動の吸収を図っている。」(第1頁右下欄16行?2頁左上欄12行) (ウ)「[発明が解決しようとする課題] しかしながら、前述のような熱電発電器では、熱発生機器の振動による熱電素子30の破壊は防止できるが、熱電素子30が転倒するなどして、熱源基体部材34から離脱してしまう可能性がある。この熱電素子30の離脱によって各熱電素子30を相互接続する電気配線が切断され、発電器としての機能を失う可能性があり、耐久性が十分でないという問題がある。」(第2頁右上欄14行?同頁左下欄2行) (エ)「本発明の目的は、安価でしかも単純な構造で、耐久性が良好な熱電発電器を提供することにある。」(第2頁左下欄10?11行) (オ)「第1図ないし第4図には、本発明の第1実施例が示されている。ただし、第1図中には、熱電素子10を電気的に接続する電極や配線等は図示していない。 図において、本実施例の熱電発電器1では、熱発生機器はエンジンとされ、その熱源基体部材は排気マニホールド2とされる。排気マニホールド2には、円柱状の多数の熱電素子10の一端が埋設され、その他端に冷却部材20が配置される。これらの排気マニホールド2、熱電素子10および冷却部材20を含んで熱電発電器1が構成される。 マニホールド2は、ハイステロイ合金C等の耐熱性部材で構成され、第2図に示されるように、複数の枝管2Aが設けられている。枝管2Aのエンジン側フランジ3近傍には、第3図に示されるように、所定直径dの孔4が所定ピッチPで螺旋状に配列されている。マニホールド2全体では、例えば、約300個の孔4が設けられている。これらの孔4の深さhは、マニホールド2の肉厚の半分以下にされている。各孔4には、孔4の直径dより若干細い直径Dを有する熱電素子10がそれぞれ挿入可能となっている。」(第2頁右下欄20行?3頁右上欄1行) (カ)「一方、熱電素子10の形状は、従来と同様であり、第4図に示されるように、P型およびN型のふたつの半導体11,12が接合されたものであって、一端側にP-N接合部13が設けられ、他端側からP-N接合部13にかけて半導体11,12を電気的に絶縁する溝14が設けられている。」(第2頁右上欄9?14行) (キ)「前記孔4の各々には、アルミナ等で形成した円盤状の絶縁板15が挿入され、その上から熱電素子10のP-N接合部13が挿入される。P-N接合部13の外周と孔4の側面との間には、アルミナセメント等の電気的絶縁性を有する充填剤16が充填され、熱電素子10のP-N接合部13側の一端が埋設、固定されている。また、熱電素子10の他端には、それぞれアルミ箔、パラジューム-銀(Pd-Ag)ペースト等からなる一対の電極17,18が隣接する二つの熱電素子10にまたがって直列に設けられ、電極17,18によって熱電素子10で発生する電力の取り出しが可能となっている。また、電極17,18の両方の上面にわたってアルミナ等で形成した円盤状の絶縁部材19が固着され、絶縁部材19上に柔軟性を有する弾性変形可能な冷却部材20が配置されている。」(第3頁右上欄19行?同頁左下欄14行) (ク)「次に、本実施例の作用を説明する。 まず、エンジンを起動し、これに伴い冷却水を冷却部材20の内部に流通させておく。エンジンの運転によって発生する排気ガスによって、排気マニホールド2は、300?800℃まで加熱される。この熱で熱電素子10のP-N接合部13側の一端側が加熱され、他端側が冷却水を流通させた冷却部材20で冷却される。従って、熱電素子10の両端間に温度差が生じ、この温度差によって電極17,18の間に直流電圧が生じる。エンジンの排気ガスの温度が上昇して前記温度差がある程度大きくなると、熱電発電器の出力電圧が大きくなり、負荷に電力を供給可能な状態となる。この状態で熱電発電器に負荷、例えば、直流モータを接続し、熱電発電器で発電した電力で駆動させる。エンジンの排気ガスの熱、すなわち、排熱によって発電器の電力の供給が連続して行われる。」(第3頁右下欄17行?4頁左上欄13行) (ケ)上記(オ)の熱電素子10は、記載事項(カ)の「熱電素子10の形状は、従来と同様であり、第4図に示されるように、P型およびN型のふたつの半導体11,12が接合されたものであって、一端側にP-N接合部13が設けられ、他端側からP-N接合部13にかけて半導体11,12を電気的に絶縁する溝14が設けられている。」ものであって、記載事項(イ)で「従来より、熱電効果(ゼーベック効果)を応用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電素子がある。 例えば、第7図に示されるように、従来の半導体で構成される熱電素子30は、一端にP-N接合部31が設けられ、他端に一対の電極32,33が設けられている。」とされたものと同様のものであるので、「P型およびN型のふたつの半導体11,12が接合され熱電効果(ゼーベック効果)を応用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電素子」といえる。 (コ)上記(オ)の熱発生機器は、「熱発生機器はエンジンとされ」るものであって、その「マニホールド2は、ハイステロイ合金C等の耐熱性部材で構成され、第2図に示されるように、複数の枝管2Aが設けられている。枝管2Aのエンジン側フランジ3近傍には、第3図に示されるように、所定直径dの孔4が所定ピッチPで螺旋状に配列されている。」ものであって、第2図の上側に「4本の枝管2A」が示され、第2図の下側でこれら4本の枝管2Aが1本の管に統合されていることが図示されていることなどからみて、エンジンは、「4気筒型のエンジン」であるといえる。 また、上記(オ)の排気マニホールドは、「複数の枝管2Aが設けられている。枝管2Aのエンジン側フランジ3近傍には、第3図に示されるように、所定直径dの孔4が所定ピッチPで螺旋状に配列されている。」、第2図の下側でこれら枝管2Aが1本の管に統合されているものであるので、「複数の枝管が設けられ、枝管のエンジン側フランジ近傍には所定直径dの孔が所定ピッチPで螺旋状に配列され、各枝管の下流側において各枝管を統合する集気管を備えるもの」といえる。 (サ)上記(オ)の「枝管2Aのエンジン側フランジ3近傍には、第3図に示されるように、所定直径dの孔4が所定ピッチPで螺旋状に配列されている。」という記載、第1図及び第3図の記載並びに技術常識からみて、枝管2Aのエンジン側フランジ3は、エンジンの各気筒に直接接続されるか、エンジンから導出される排気管を介してエンジンの各気筒に接続されるものであることが理解できる。また、第1図及び第3図で、多数の熱電素子10及びそれを挿入する孔4が、いずれもフランジ3からある程度の距離離間していることが図示されていることから、上記(オ)の熱電素子10は「枝管2Aにおいてエンジンからある程度の間隔を隔てて配置される素子である」といえる。 そうすると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているといえる。 「熱発生機器と、 P型およびN型のふたつの半導体が接合され熱電効果(ゼーベック効果)を応用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電素子と、 熱電素子を電気的に接続する電極や配線と を備え、 熱発生機器はエンジンとされ、その熱源基体部材は排気マニホールドとされ、 エンジンは、4気筒型のエンジンであり、 排気マニホールドは、複数の枝管が設けられ、枝管のエンジン側フランジ近傍には所定直径dの孔が所定ピッチで螺旋状に配列され、各枝管の下流側において各枝管を統合する集気管を備えるものであり、 前記熱電素子が、枝管においてエンジンからある程度の間隔を隔てて配置される素子である 熱電発電器。」 3.本願補正発明と引用発明との対比 (1)両発明の対応関係 (a)引用発明の「熱発生機器」は、「エンジンとされ」るものであって、通常、吸気、圧縮、爆発及び排気の4行程で作動するものであり、爆発行程で温度が上昇し、吸気行程で温度が下降するものであるから、本願補正発明の「温度が経時的に上下する熱源」に相当する。 (b)引用発明の「熱電素子」は、「P型およびN型のふたつの半導体が接合され熱電効果(ゼーベック効果)を応用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する」ものであって、本願明細書【0036】で「第1デバイス3は、熱源2の温度変化に応じて電気分極するデバイスである。」とし、【0037】で「ここでいう電気分極とは、・・および/または、温度変化や温度勾配などにより電荷に偏りが発生し電位差が生まれる現象、例えばゼーベック効果などのように、材料の両端に温度差が生じると起電力が発生する現象と定義」した、本願補正発明の「第1デバイス」と同様にゼーベック効果を用いた電気素子であるので、本願補正発明の「熱源の温度変化により電気分極する第1デバイス」に相当する。 (c)引用発明の「熱電素子から電力を取り出すための電極や配線」は、本願補正発明の「第1デバイスから電力を取り出すための第2デバイス」に相当する。 (d)引用発明の「4気筒型のエンジン」は、本願補正発明の「多気筒型のエンジン」に相当するとともに、通常、吸気、圧縮、爆発及び排気の4行程で周期的に作動する内燃機関であって、爆発行程で温度が上昇し、吸気行程で温度が下降するものであるので、本願補正発明の「周期的に温度変化する内燃機関」にも相当する。 また、引用発明の「複数の枝管」は、「エンジン側フランジ」を備え、エンジンの各気筒に接続されることが自明であるので、本願補正発明の「エンジンの各気筒に接続される複数の分岐管」に相当し、引用発明の「排気マニホールド」は、「複数の枝管が設けられ、枝管のエンジン側フランジ近傍には所定直径dの孔が所定ピッチで螺旋状に配列され、各枝管の下流側において各枝管を統合する集気管を備える」ものであるので、本願補正発明の「エンジンの各気筒に接続される複数の分岐管、および、前記分岐管の下流側において各前記分岐管を統合する集気管を備える排気多岐管」に相当する。 そして、引用発明の「熱発生機器はエンジンとされ、その熱源基体部材は排気マニホールドとされ、 エンジンは、4気筒型のエンジンであり、 排気マニホールドは、複数の枝管が設けられ、枝管のエンジン側フランジ近傍には所定直径dの孔が所定ピッチで螺旋状に配列され、各枝管の下流側において各枝管を統合する集気管を備えるものであ」る構成は、本願補正発明の「熱源が、 多気筒型のエンジンと、前記エンジンの各気筒に接続される複数の分岐管、および、前記分岐管の下流側において各前記分岐管を統合する集気管を備える排気多岐管とを備え、周期的に温度変化する内燃機関であ」る構成に相当する。 なお、本願補正発明の「熱源が、・・エンジンと・・排気多岐管とを備え」ること(換言すると、排気多岐管は、エンジンと別のもの。)に関して、引用発明の「熱発生機器はエンジンとされ、その熱源基体部材は排気マニホールドとされ」では、排気マニホールド2がエンジンの一部分であるのか、別のものであるのか明らかでないが、「枝管のエンジン側フランジ」や刊行物1第4頁左上欄14?15行の「エンジンが発生する振動は、マニホールド2に伝達され」等の記載から一応、マニホールドがエンジンと別のものとして取り扱ったが、仮に、マニホールドがエンジンの一部分であるとして取り扱ったとしても、本願補正発明のエンジンの内のマニホールドを含まない本体部分が、本願補正発明の「多気筒型のエンジン」に相当するものとなるにすぎない。 (e)引用発明の熱電素子が「枝管においてエンジンからある程度の間隔を隔てて配置される」構成は、本願補正発明の第1デバイスが「分岐管において前記エンジンから所定間隔を隔てて配置される」構成に相当する。 (2)両発明の一致点 「温度が経時的に上下する熱源と、 前記熱源の温度変化により電気分極する第1デバイスと、 前記第1デバイスから電力を取り出すための第2デバイスとを備え、 前記熱源が、 多気筒型のエンジンと、前記エンジンの各気筒に接続される複数の分岐管、および、前記分岐管の下流側において各前記分岐管を統合する集気管を備える排気多岐管とを備え、周期的に温度変化する内燃機関であり、 前記第1デバイスが、前記分岐管において前記エンジンから所定間隔を隔てて配置される素子である 発電システム。」 (3)両発明の相違点 相違点:第1デバイスが、本願補正発明は「焦電素子」であるのに対して、引用発明では「熱電効果(ゼーベック効果)を生じる熱電素子」である点。 4.容易想到性の検討 (1)「焦電素子」及び「熱電効果(ゼーベック効果)を生じる熱電素子」は、いずれも温度によって発電をする周知の素子であり、代替的に利用可能なものであることは、例えば、原審の補正の却下の決定に周知技術を示す文献として例示された特開平5-259513号公報【0002】に「【従来の技術】従来熱エネルギーを電気エネルギーに変換する種々の方法が知られている。・・熱電子発電、ゼーベック効果を利用した発電、焦電性を利用した発電等がある。」と記載され、同じく、特開平10-107667号公報【請求項11】に「センサは・・人体から発する赤外線を電圧として出力する焦電センサ、あるいは、人体の接触で発する熱で電圧を発生させる熱電変換素子等の自己発電型のセンサである」と記載され、同じく、特開平10-281749号公報【0017】、【0018】に「発電器1のポリフッ化ビニリデンが赤外線やレーザー光を受けて発熱しその焦電性の為に発電し上記の仕組みにて位置指示手段によって指示された位置が判別される・・発電器1に熱電変換体であるペルチェ素子を用い、発熱体あるいは冷却体等の熱源を用いた位置指示手段を利用すれば、当該位置指示手段による位置指示時に発電器1のペルチェ素子が熱的作用を受け発電することを利用すれば位置検出装置内での位置指示手段が示した位置を確定することが可能である」と記載されているように周知のことである。(なお、特開平10-281749号公報【0018】の発電器の「ペルチェ素子」が「ゼーベック効果を生じる熱電素子」と同じものであることは技術常識である。) そうすると、引用発明において「熱電効果(ゼーベック効果)を生じる熱電素子」に代えて「焦電素子」を採用し、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (2)審判請求書における請求人の主張について 請求人は、審判請求書の4頁8?12行において「すなわち、審査官殿が認定されるように、引用文献1に記載の発明において、「熱から発電するデパイスとして、熱電素子に代えて焦電素子を選択する」場合、その焦電素子は、通常、分岐管において、エンジンに近接配置される。これに対して、本発明では、焦電素子は、分岐管において、エンジンから所定間隔を隔てて配置される。」と主張している。 しかし、「焦電素子は、分岐管において、エンジンから所定間隔を隔てて配置される」との事項(本願補正発明の「分岐管において前記エンジンから所定間隔を隔てて配置される焦電素子」)は、本願の図4を根拠としているものである(審判請求書3頁1行)ところ、図4には、エンジン16と第1デバイス3とが「ある程度の距離離間していることが図示されている」にとどまる。そして、分岐管において「エンジンから所定間隔を隔て」る距離については、本願の明細書又は特許請求の範囲に何も記載されていない。 一方、上記「2.(サ)」で指摘したように刊行物1の第1図及び第3図には、多数の熱電素子10及びそれを挿入する孔4が、いずれもフランジ3からある程度の間隔を隔てて配置されていることが図示されている。 そして、本願の図4と、刊行物1の第1図及び第3図とに図示されている、第1デバイスを配置するエンジンからの間隔(距離)を比較しても、両者に技術的意義の違いを読み取れるような違いは認識できない。 そうすると、請求人の上記主張は、採用することができない。 (3)総合判断 そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明及び上記当業者に周知の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び上記当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本件出願の請求項1に係る発明 平成28年6月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成27年2月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 温度が経時的に上下する熱源と、 前記熱源の温度変化により電気分極する第1デバイスと、 前記第1デバイスから電力を取り出すための第2デバイスと を備え、 前記熱源が、 多気筒型のエンジンと、前記エンジンの各気筒に接続される複数の分岐管、および、前記分岐管の下流側において各前記分岐管を統合する集気管を備える排気多岐管とを備え、周期的に温度変化する内燃機関であり、 前記第1デバイスが、前記分岐管に配置されており、 前記第1デバイスは、焦電素子であることを特徴とする、発電システム。」 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明の発明特定事項を全て含むとともに、本願発明の発明特定事項に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2」の「3.」?「4.」に記載したとおり、引用発明及び上記当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明及び上記当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-02-24 |
結審通知日 | 2017-02-28 |
審決日 | 2017-03-13 |
出願番号 | 特願2011-81732(P2011-81732) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02N)
P 1 8・ 575- Z (H02N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田村 耕作、津久井 道夫、安池 一貴、松永 謙一 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
矢島 伸一 中川 真一 |
発明の名称 | 発電システム |
代理人 | 岡本 寛之 |
代理人 | 岡本 寛之 |