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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1327635
審判番号 不服2016-1342  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-29 
確定日 2017-05-16 
事件の表示 特願2011-177516「定着装置および画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月28日出願公開、特開2013- 41087、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月15日の出願であって、平成27年4月7日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月11日付けで意見書が提出され、同年10月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年1月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年2月22日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月8日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、平成29年3月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される事項により特定される、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
加熱手段によって加熱される定着部材と、該定着部材に圧接される加圧部材とを有し、前記定着部材と前記加圧部材間に形成される定着ニップに未定着画像を担持した記録媒体を通過させて画像の定着を行なう定着装置において、
前記加圧部材の表面をクリーニングウェブを送って清掃するクリーニング手段を備え、
前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを接離可能に設け、
前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に、前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを離間させた状態で、所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行なって一段の新しいクリーニングウェブを放出し、
前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、両面定着動作であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
加熱手段によって加熱される定着部材と、該定着部材に圧接される加圧部材とを有し、前記定着部材と前記加圧部材間に形成される定着ニップに未定着画像を担持した記録媒体を通過させて画像の定着を行なう定着装置において、
前記加圧部材の表面をクリーニングウェブを送って清掃するクリーニング手段を備え、
前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを接離可能に設け、
前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に、前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを離間させた状態で、所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行なって一段の新しいクリーニングウェブを放出し、
前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、記録媒体表面の凹凸が大きい記録媒体での定着動作であることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記クリーニング手段は前記クリーニングウェブを前記加圧部材に押し付ける押圧部材を有し、該押圧部材による前記クリーニングウェブの押圧を解除することにより前記加圧部材から前記クリーニングウェブを離間させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加圧部材と前記定着部材とを接離可能に設け、前記加圧部材が、前記定着部材に対して接離するのに伴って、前記クリーニングウェブに対しても接離されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記所定時間が、前記加圧部材と前記クリーニングウェブとの当接ニップ幅に相当する距離だけ前記クリーニングウェブを送る時間であることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行う時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、片面定着時と両面定着時で変更することを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行う時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する記録媒体がコート紙の場合と非コート紙の場合とで変更することを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行う時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する記録媒体の銘柄に応じて変更することを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行う時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、ユーザが変更可能に設けられていることを特徴とする、請求項1?8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行う時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する記録媒体に形成された画像面積率に応じて変更することを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。」

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-53176号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「未定着現像剤による画像が形成された記録媒体を、一対の回転体である定着ローラで形成される圧接部に通過させることによって、未定着現像剤を記録媒体上に溶融し固着する定着装置であって、
定着ローラの少なくともいずれか一方の表面をクリーニングする定着ローラクリーニング手段と、
定着ローラに対して定着ローラクリーニング手段を近接離反させる接離手段とを含むことを特徴とする定着装置。」(【請求項1】)
イ.「定着ローラクリーニング手段は、
定着ローラの少なくとも一方に当接するように設けられて定着ローラの表面を清掃する帯状の清掃部材と、
清掃部材が当接される定着ローラに対して清掃部材を押圧するように設けられる圧接ローラと、
予めコイル状に巻きまわされた帯状の清掃部材を送出す送出ローラと、
送出ローラから送出され、定着ローラに当接して定着ローラ表面を清掃した清掃部材を巻取る巻取ローラと含むことを特徴とする請求項1?5のいずれか1つに記載の定着装置。」(【請求項6】)
ウ.「定着装置10は、たとえば電子写真方式の画像形成装置に搭載されて、未定着現像剤による画像が形成された記録媒体を、加熱ローラ11と加圧ローラ12とで形成されるニップ部に通過させることによって、未定着現像剤を記録媒体上に溶融し固着する定着に用いられる。」(段落【0041】)
エ.「本実施の形態の定着装置10では、定着ローラクリーニング手段20は、加熱ローラ11と加圧ローラ12との両方に設けられ、それぞれ同一に構成される。したがって、加熱ローラ11側に設けられる定着ローラクリーニング手段20を代表にして構成を説明し、加圧ローラ12側の定着ローラクリーニング手段20の説明を省略する。」(段落【0042】)
オ.「圧接ローラ24は、加熱ローラ11に押圧される際にある程度変形し、加熱ローラ11との間に圧接領域32(以後、この圧接領域もニップ部32と呼ぶ)が形成されるように、少なくとも最外層が耐熱性を有する弾性素材によって形成される。圧接ローラ24は、その軸線が加熱ローラ11の軸線と平行になるように、かつ加熱ローラ11との間に介在させる清掃部材23を、不図示の前記押圧手段によって加熱ローラ11の表面に押圧するように設けられる。」(段落【0047】)
カ.「画像形成装置50に搭載される定着装置43は、記録紙上の現像剤を溶融軟化させて定着させるように動作するけれども、複数の記録紙に対する定着動作の繰返しによって、定着ローラに現像剤が付着するので、前述のように定着ローラクリーニング手段44の清掃部材23で定着ローラを清掃する。さらに清掃によって清掃部材23と定着ローラとの間隙に、定着ローラから除去した現像剤がある程度蓄積されると、巻取ローラ26を回転駆動させ、一定長さの清掃部材23を巻取り、清掃部材23の清浄な部分を定着ローラに新たに摺接させることによって、清掃部材23の清掃能力を回復させて定着ローラの清掃を継続する。」(段落【0088】)
キ.上記「ア.」、「ウ.」、及び「エ.」の記載から、上記「ア.」に記載の「一対の回転体である定着ローラ」は、上記「ウ.」、及び「エ.」に記載の「加熱ローラ」、及び「加圧ローラ」を意味しているといえる。
これらの記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「未定着現像剤による画像が形成された記録媒体を、一対の回転体である加熱ローラ、及び加圧ローラで形成される圧接部に通過させることによって、未定着現像剤を記録媒体上に溶融し固着する定着装置であって、
加熱ローラ、及び加圧ローラの少なくともいずれか一方の表面をクリーニングする定着ローラクリーニング手段と、
加熱ローラ、及び/または加圧ローラに対して定着ローラクリーニング手段を近接離反させる接離手段とを含み、
定着ローラクリーニング手段は、
加熱ローラ、及び加圧ローラの少なくとも一方に当接するように設けられて定着ローラの表面を清掃する帯状の清掃部材と、
清掃部材が当接される加熱ローラ、及び/または加圧ローラに対して清掃部材を押圧するように設けられる圧接ローラと、
予めコイル状に巻きまわされた帯状の清掃部材を送出す送出ローラと、
送出ローラから送出され、定着ローラに当接して定着ローラ表面を清掃した清掃部材を巻取る巻取ローラと含み、
清掃によって清掃部材と加熱ローラ、及び/または加圧ローラとの間隙に、加熱ローラ、及び/または加圧ローラから除去した現像剤がある程度蓄積されると、巻取ローラを回転駆動させ、一定長さの清掃部材を巻取り、清掃部材の清浄な部分を加熱ローラ、及び/または加圧ローラに新たに摺接させることによって、清掃部材の清掃能力を回復させて加熱ローラ、及び/または加圧ローラの清掃を継続する
定着装置。」
2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2006-201380号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「未定着現像剤による画像が形成された記録媒体を、一対の回転体である定着ローラで形成される圧接部に通過させることによって、未定着現像剤を記録媒体上に溶融し固着する定着装置において、
(a)定着ローラの少なくともいずれか一方に当接するように設けられて定着ローラの表面を清掃する帯状の清掃部材と、
(b)清掃部材が当接される定着ローラに対して清掃部材を押圧し、押圧部であるニップ部を形成するように設けられる圧接ローラと、
(c)予めコイル状に巻きまわされた帯状の清掃部材を送出す送出ローラと、
(d)送出ローラから送出されて定着ローラ表面を清掃した清掃部材を巻取る巻取ローラであって、清掃部材を介して送出ローラと互いに表層で接触または圧接するように設けられる巻取ローラと、
(e)送出ローラが1回の送出し機会に清掃部材を送出す送出量と、巻取ローラが1回の巻取り機会に清掃部材を巻取る巻取量との和が、圧接ローラの周方向におけるニップ部の長さの2倍以上になるように、送出ローラまたは巻取ローラのいずれか一方の回転動作を制御する制御手段とを含むことを特徴とする定着装置。」(【請求項1】)
イ.「画像形成装置50に搭載される定着装置30は、記録紙上の現像剤を溶融軟化させて定着させるように動作するけれども、複数の記録紙に対する定着動作の繰返しによって、定着ローラに現像剤が付着するので、前述のように定着ローラクリーニング手段40の清掃部材33で定着ローラを清掃する。さらに清掃によって清掃部材33と定着ローラとの間隙に、定着ローラから除去した現像剤がある程度蓄積されると、巻取ローラ36が、前述の回転時間制御によって回転駆動される。巻取ローラ36の回転時間によって定まる巻取量に対応する送出量の清掃部材33が、巻取ローラ36に対して従動回転する送出ローラ35から送出されることによって、清掃部材33の清浄な部分が定着ローラに新たに摺接される。このようにして、清掃部材33の清掃能力が回復し、定着ローラの清掃を長期にわたって継続することができる。このように、巻取ローラ36が時間制御によって回転駆動される動作は、間欠回転動作である。」(段落【0073】)
ウ.「巻取ローラ36が、間欠回転動作を開始するタイミング、すなわち巻取動作を間欠的に実行するタイミングは、清掃部材33と定着ローラとの間隙に蓄積される現像剤量に依存する。蓄積される現像剤量は、定着装置30を通過して定着される記録紙上の現像剤量にほぼ比例するので、記録紙のサイズと該記録紙に対する印字比率とによって求めることができる。」(段落【0074】)
これらの記載を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「未定着現像剤による画像が形成された記録媒体を、一対の回転体である定着ローラで形成される圧接部に通過させることによって、未定着現像剤を記録媒体上に溶融し固着する定着装置において、
(a)定着ローラの少なくともいずれか一方に当接するように設けられて定着ローラの表面を清掃する帯状の清掃部材と、
(b)清掃部材が当接される定着ローラに対して清掃部材を押圧し、押圧部であるニップ部を形成するように設けられる圧接ローラと、
(c)予めコイル状に巻きまわされた帯状の清掃部材を送出す送出ローラと、
(d)送出ローラから送出されて定着ローラ表面を清掃した清掃部材を巻取る巻取ローラであって、清掃部材を介して送出ローラと互いに表層で接触または圧接するように設けられる巻取ローラと、
(e)送出ローラが1回の送出し機会に清掃部材を送出す送出量と、巻取ローラが1回の巻取り機会に清掃部材を巻取る巻取量との和が、圧接ローラの周方向におけるニップ部の長さの2倍以上になるように、送出ローラまたは巻取ローラのいずれか一方の回転動作を制御する制御手段とを含み、
清掃によって清掃部材と定着ローラとの間隙に、定着ローラから除去した現像剤がある程度蓄積されると、巻取ローラが、回転時間制御によって回転駆動され、
巻取ローラが時間制御によって回転駆動される動作は、間欠回転動作であり、
巻取ローラが、間欠回転動作を開始するタイミング、すなわち巻取動作を間欠的に実行するタイミングは、清掃部材と定着ローラとの間隙に蓄積される現像剤量に依存し、蓄積される現像剤量は、定着装置を通過して定着される記録紙上の現像剤量にほぼ比例するので、記録紙のサイズと該記録紙に対する印字比率とによって求める
定着装置。」
3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2008-40310号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「このように構成された定着装置7において、定着ローラ71が時計方向に回転すると、加圧ローラ72は反時計方向に回転し、搬送された記録紙P上のトナー像は定着ローラ71と加圧ローラ72とにより形成されるニップ部Nで加熱・加圧されて、定着される。」(段落【0025】)
イ.「また、定着ローラ71に付着したトナーや紙粉等の汚れを清掃するために清掃ローラ73(清掃部材)が定着ローラ71に圧着している。そして、清掃ローラ73にはバックアップローラ74によりクリーニングウェブ75が圧着し、清掃ローラ73に転写された汚れを清掃する。なお、クリーニングウェブ75は元巻軸76に巻かれていて、間欠的に巻取軸77に巻き取られる。」(段落【0026】)
ウ.「そこで、必要でないときは清掃ローラ73を定着ローラ71より離間させておくことが望ましく、図2においては清掃ローラ73はバックアップローラ74の支持軸を中心に回転するアーム78に保持されていて、不図示のステップモータ等の駆動手段によりアーム78が回動することによって、清掃ローラ73は実線で示した定着ローラ71への圧着位置と、二点鎖線で示した定着ローラ71よりの離間位置とに切り換え可能に可能に構成されている(切換手段)。」(段落【0028】)
エ.「図3において、プリント開始となると、図6におけるCPU(制御手段)101はカウンタ102(カウント手段)を作動状態にする(S1)。そして、CPU101は1回のプリントが行われる度にカウンタ102にカウントアップさせる(S2)。そして、カウンタ102がカウントしたプリント数が所定の回数X(例えば100回)に達したならば(S3のY)、CPU101はステップモータや図に示すアーム78等からなる切換手段103を駆動して、今まで定着ローラ71より離間していた清掃ローラ73を定着ローラ71に圧着する(S4)。続いて、次のプリントにおいて定着ローラ71が回転することにより、定着ローラ71は清掃ローラ73によって清掃される(S5)。1回のプリントが終了すると、CPU101は切換手段103を駆動して、清掃ローラ73による定着ローラ71への圧着を解除して清掃ローラ73を定着ローラ71より離間させる(S6)。そして、CPU101はカウンタ102をリセットし(S7)、クリーニングウェブ巻上げ手段104を駆動して、クリーニングウェブ75を元巻軸76から巻取軸77に巻き取る(S8)。そして、S1の次に戻ってフローを繰り返す。」(段落【0031】)
オ.「また、定着ローラ71の清掃に関し、定着ローラ71に付着した汚れを清掃ローラ73介してクリーニングウェブ75で清掃する構成であったが、場合によってはクリーニングウェブ75が直に定着ローラ71に圧着・退避する構成であってもよい。この場合は、クリーニングウェブ75が清掃部材に該当する。」(段落【0053】)
これらの記載を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「定着ローラが時計方向に回転すると、加圧ローラは反時計方向に回転し、搬送された記録紙上のトナー像は定着ローラと加圧ローラとにより形成されるニップ部で加熱・加圧されて、定着される定着装置において、
定着ローラに付着したトナーや紙粉等の汚れを清掃するために清掃ローラ(清掃部材)が定着ローラに圧着しており、清掃ローラにはバックアップローラによりクリーニングウェブが圧着し、清掃ローラに転写された汚れを清掃し、クリーニングウェブは元巻軸に巻かれていて、間欠的に巻取軸に巻き取られ、
必要でないときは清掃ローラを定着ローラより離間させておくことが望ましく、清掃ローラは定着ローラへの圧着位置と、定着ローラよりの離間位置とに切り換え可能に構成されている切換手段を備え、
プリント開始となると、CPU(制御手段)は、プリント数が所定の回数X(例えば100回)に達したならば、CPUは切換手段を駆動して、今まで定着ローラより離間していた清掃ローラを定着ローラに圧着し、続いて、次のプリントにおいて定着ローラが回転することにより、定着ローラは清掃ローラによって清掃され、1回のプリントが終了すると、CPUは切換手段を駆動して、清掃ローラによる定着ローラへの圧着を解除して清掃ローラを定着ローラより離間させ、クリーニングウェブ巻上げ手段を駆動して、クリーニングウェブを元巻軸から巻取軸に巻き取り、
また、クリーニングウェブが直に定着ローラ71に圧着・退避する構成であってもよく、この場合は、クリーニングウェブが清掃部材に該当する
定着装置。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
後者における「加熱ローラ」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「加熱手段によって加熱される定着部材」に相当し、以下同様に、「加圧ローラ」は「加圧部材」に、「圧接部」は「定着ニップ」に、「未定着現像剤による画像」は「未定着画像」に、「記録媒体」は「記録媒体」に、「定着装置」は「定着装置」に、「帯状の清掃部材」は「クリーニングウェブ」に、「定着ローラクリーニング手段」は「クリーニング手段」に、それぞれ相当する。
また、後者における「定着装置」は、未定着現像剤による画像が形成された記録媒体を、一対の回転体である加熱ローラ、及び加圧ローラで形成される圧接部に通過させることによって、未定着現像剤を記録媒体上に溶融し固着するものであるから、「加熱ローラと加圧ローラ間に形成される圧接部に未定着現像剤による画像を担持した記録媒体を通過させて画像の定着を行なう」ものといえる。
また、後者における「定着ローラクリーニング手段」は、加熱ローラ、及び加圧ローラの少なくとも一方に当接するように設けられて定着ローラの表面を清掃する帯状の清掃部材と、清掃部材が当接される加熱ローラ、及び/または加圧ローラに対して清掃部材を押圧するように設けられる圧接ローラと、予めコイル状に巻きまわされた帯状の清掃部材を送出す送出ローラと、送出ローラから送出され、定着ローラに当接して定着ローラ表面を清掃した清掃部材を巻取る巻取ローラと含み、加圧ローラの表面をクリーニングするから、「加圧ローラの表面を帯状の清掃部材を送って清掃する」といえる。
また、後者における「接離手段」は、加圧ローラに対して帯状の清掃部材を含む定着ローラクリーニング手段を近接離反させるから、「加圧ローラと帯状の清掃部材とを接離可能に設けている」といえる。
したがって、両者は、
「加熱手段によって加熱される定着部材と、該定着部材に圧接される加圧部材とを有し、前記定着部材と前記加圧部材間に形成される定着ニップに未定着画像を担持した記録媒体を通過させて画像の定着を行なう定着装置において、
前記加圧部材の表面をクリーニングウェブを送って清掃するクリーニング手段を備え、
前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを接離可能に設けた、
定着装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
本願発明1は、「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に、加圧部材と前記クリーニングウェブとを離間させた状態で、所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行なって一段の新しいクリーニングウェブを放出し、前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、両面定着動作である」のに対して、引用発明1は、清掃によって清掃部材と加熱ローラ、及び/または加圧ローラとの間隙に、加熱ローラ、及び/または加圧ローラから除去した現像剤がある程度蓄積されると、巻取ローラを回転駆動させ、一定長さの清掃部材を巻取り、清掃部材の清浄な部分を加熱ローラ、及び/または加圧ローラに新たに摺接させることによって、清掃部材の清掃能力を回復させて加熱ローラ、及び/または加圧ローラの清掃を継続する点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
上記「第3 2.」によれば、引用発明2における「定着装置」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明1における「定着装置」に相当し、以下同様に、「帯状の清掃部材」は「クリーニングウェブ」に、それぞれ相当する。
してみると、引用発明2は、上記相違点に係る本願発明1の「所定時間連続してクリーニングウェブの巻き取り動作を行なって一段の新しいクリーニングウェブを放出し」との発明特定事項を具備するが、「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に、加圧部材と前記クリーニングウェブとを離間させた状態で」、クリーニングウェブを放出し、「前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、両面定着動作である」との発明特定事項を具備していない。
また、上記「第3 3.」によれば、引用発明3における「定着ローラ」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明1における「定着部材」に相当し、以下同様に、「加圧ローラ」は「加圧部材」に、「定着装置」は「定着装置」に、「クリーニングウェブ」は「クリーニングウェブ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明3における「定着ローラ」と本願発明1における「加圧部材」とは、「定着体」との概念で共通する。
してみると、引用発明3は、上記相違点に係る本願発明1の定着体(加圧部材)と「クリーニングウェブとを離間させた状態で、所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行なって一段の新しいクリーニングウェブを放出し」との発明特定事項を具備するが、「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に」、クリーニングウェブを放出し、「前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、両面定着動作である」との発明特定事項を具備していない。
また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
したがって、本願発明1は、引用発明1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本願発明2について
本願発明2も、「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に」、クリーニングウェブを放出するとの本願発明1と同一の発明特定事項を備えると共に、「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、記録媒体表面の凹凸が大きい記録媒体での定着動作である」との発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と実質的に同じ理由により、当業者であっても、引用発明1?3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明3?11について
本願発明3?11は、本願発明1、または2の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明3?11は、上記「1.」、「2.」と同様の理由により、引用発明1?3、並びに原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2007-304180号公報)、引用文献5(特開2010-122363号公報)、引用文献6(特開昭54-9941号公報)、引用文献7(特開平3-111877号公報)、引用文献8(特開2003-57986号公報)、引用文献9(特開平5-188796号公報)、及び引用文献10(特開2005-24619号公報)に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1?11について上記引用文献1?10に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年3月8日付け手続補正により補正された請求項1、2は、それぞれ「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に」、クリーニングウェブを放出し、「前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、両面定着動作である」という発明特定事項、「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に」、クリーニングウェブを放出し、「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、記録媒体表面の凹凸が大きい記録媒体での定着動作である」という発明特定事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1?11は、引用発明1?3、並びに上記引用文献4?10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1の「クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件」の記載は、不明瞭である。
(2)請求項7等に記載の「前記連続巻き取り動作時」における「前記」が指し示す用語が請求項1?6には記載されていない。
(3)請求項8、9、11に記載の「用紙」は、「記録媒体」の誤記である。

2.当審拒絶理由の判断
平成29年3月8日付けの手続補正書において、上記「第2」のとおり、請求項1?11の記載は補正されたことにより、請求項1?11に係る発明は明確となった。
したがって、当審拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?11は、引用発明1?3、並びに上記引用文献4?10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-02 
出願番号 特願2011-177516(P2011-177516)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 孝幸  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 古田 敦浩
黒瀬 雅一
発明の名称 定着装置および画像形成装置  
代理人 藤田 アキラ  
代理人 今井 秀樹  

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