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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1327645
審判番号 不服2016-10671  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-14 
確定日 2017-05-18 
事件の表示 特願2015-131746「顧客情報提供システム及びその制御方法並びにコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月19日出願公開、特開2017- 16352、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成27年6月30日を出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年12月22日付け:拒絶理由の通知
平成28年 2月15日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 5月11日付け:拒絶査定
平成28年 7月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年 8月31日 :前置報告


第2 原査定の概要

原査定(平成28年5月11日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

1.本願請求項1?8に係る発明は、以下の引用文献1?4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-098944号公報
2.特開2000-242689号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2014-170402号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2007-128295号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

2.請求項3-6に係る発明は不明確であり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-8に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成28年7月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
顧客店舗におけるキャッシュレジスタである又はキャッシュレジスタ機能を有する顧客装置の操作履歴に関する情報データを、ネットワークを介してサーバ装置へ送信する履歴情報送信部と、
前記操作履歴に関する情報データに基づいて、前記顧客装置の稼働状況を示すパラメータを算出するパラメータ演算部と、
前記算出されたパラメータを含む前記顧客装置に関する情報を、営業担当者であるユーザが操作するユーザ装置へ送信する顧客情報送信部と、
前記顧客装置に関する情報に基づいて、前記ユーザに提供する表示情報に対応する画像データを生成する表示情報演算部と、
前記画像データに対応する前記表示情報を表示する表示部と、
を備え、
前記パラメータ演算部は、前記顧客装置による所定時間当たりの会計処理の回数Kと、
予め設定された会計処理の回数の基準値K0との比率から、前記パラメータとして前記顧客装置の稼働状況の実績値を算出する、
顧客情報提供システム。
【請求項2】
前記パラメータ演算部は、前記顧客装置の操作履歴に関する情報データと、前記顧客装置の稼働状況の実績値の経時的な変化との相関関係を解析し、前記顧客がX日後にY%の確率で前記顧客装置を所定の稼働率で使用し始めることを推測するデータモデルを作成し、前記顧客装置の操作履歴に関する直近の情報データと前記Xの値を前記データモデルに入力することにより、前記パラメータとして、前記顧客装置の稼働状況の予測値Y%を更に算出する、
請求項1記載の顧客情報提供システム。
【請求項3】
前記パラメータ演算部は、前記パラメータを時間又は時刻に関連付けて算出する、
請求項1又は2記載の顧客情報提供システム。
【請求項4】
前記表示情報演算部は、前記顧客店舗の位置情報に基づいて、前記顧客店舗の所在地、及び、前記ユーザに提供する表示情報として前記顧客装置の稼働状況の実績値及び所定エリア内に位置する顧客店舗の数を含む地図データを生成する、
請求項1乃至3の何れか1項記載の顧客情報提供システム。
【請求項5】
前記表示情報演算部は、前記算出されたパラメータに応じて、前記顧客装置に関する情報の前記表示部における表示形態を変化させる、
請求項1乃至4の何れか1項記載の顧客情報提供システム。
【請求項6】
前記表示情報演算部は、前記顧客装置に関する情報の一部を前記表示部に表示させ、前記ユーザの指示に応じて、前記顧客装置に関する情報の他の一部又は全部を前記表示部に表示させる、
請求項1乃至5の何れか1項記載の顧客情報提供システム。
【請求項7】
履歴情報送信部、パラメータ演算部、顧客情報送信部、表示情報演算部、及び表示部を備える顧客情報提供システムの制御方法であって、
前記履歴情報送信部により、顧客店舗におけるキャッシュレジスタである又はキャッシュレジスタ機能を有する顧客装置の操作履歴に関する情報データを、ネットワークを介してサーバ装置へ送信し、
前記パラメータ演算部により、前記操作履歴に関する情報データに基づいて、前記顧客装置の稼働状況を示すパラメータを算出し、
前記顧客情報送信部により、前記算出されたパラメータを含む前記顧客装置に関する情報を、営業担当者であるユーザが操作するユーザ装置へ送信し、
前記表示情報演算部により、前記顧客装置に関する情報に基づいて、前記ユーザに提供する表示情報に対応する画像データを生成し、
前記表示部により、前記画像データに対応する前記表示情報を表示し、
前記パラメータ演算部は、前記顧客装置による所定時間当たりの会計処理の回数Kと、
予め設定された会計処理の回数の基準値K0との比率から、前記パラメータとして前記顧客装置の稼働状況の実績値を算出する、
顧客情報提供システムの制御方法。
【請求項8】
コンピュータを、
顧客店舗におけるキャッシュレジスタである又はキャッシュレジスタ機能を有する顧客装置の操作履歴に関する情報データを、ネットワークを介してサーバ装置へ送信する履歴情報送信部、
前記操作履歴に関する情報データに基づいて、前記顧客装置の稼働状況を示すパラメータを算出するパラメータ演算部、
前記算出されたパラメータを含む前記顧客装置に関する情報を、営業担当者であるユーザが操作するユーザ装置へ送信する顧客情報送信部、
前記顧客装置に関する情報に基づいて、前記ユーザに提供する表示情報に対応する画像データを生成する表示情報演算部、及び、
前記画像データに対応する前記表示情報を表示する表示部、
として機能させ、
前記パラメータ演算部は、前記顧客装置による会計処理の回数Kと、予め設定された会計処理の回数の基準値K0との比率から、前記パラメータとして前記顧客装置の稼働状況の実績値を算出する、
顧客情報提供用のコンピュータプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審にて付した。)

(ア)「店内の繁忙状況を把握するための繁忙度算出装置、店舗管理システム、繁忙度算出方法およびプログラムに関する。」(【0001】)

(イ)「本発明の店舗管理システムは、各店舗に対応して設けられた上記に記載の繁忙度算出装置と、複数の繁忙度算出装置とネットワークを介して接続された管理サーバーと、を備えた店舗管理システムであって、管理サーバーは、複数の繁忙度算出装置による繁忙度算出結果を、各店舗の名称と共に顧客端末に対して提供する繁忙度提供部を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、繁忙度算出結果を顧客端末に提供するため、店舗から離れた場所に居る顧客に対しても繁忙度を提示できる。
なお、繁忙度提供部は、Webサイトに表示することで不特定多数の顧客に対して繁忙度を提供しても良いし、電子メール等で直接対象となる顧客端末に繁忙度を送信しても良い。」(【0015】-【0016】)

(ウ)「[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る店舗管理システムSY1のシステム構成図である。店舗管理システムSY1は、店舗(飲食店)に設置されるキッチンプリンター10(繁忙度算出装置)、オーダー端末11、レシートプリンター12、POS(Point Of Sales)端末13、バーコードリーダー14、店頭ディスプレイ15および空席待ち管理装置16の他、複数の店舗(例えば、チェーン展開している飲食店グループに含まれる店舗)における繁忙度を統括管理する管理サーバー20と、顧客が操作する顧客端末30と、から成る。
オーダー端末11は、店員がオーダー内容を入力するためのハンディ型の情報入力端末である。キッチンプリンター10は、オーダー端末11に入力されたオーダー情報を、無線通信を介して取得し、オーダー票51(図2(a)参照)を印刷する。なお、当該「オーダー情報」には、オーダー内容を示す情報の他、顧客が着席した座席を示す情報が含まれる。
レシートプリンター12は、POS端末13から取得した会計情報に基づいて会計レシート52(図2(b)参照)を印刷する。バーコードリーダー14は、オーダー票51に印刷されたバーコード55を読み取り、POS端末13に出力する。POS端末13は、バーコードリーダー14から取得したバーコード情報(オーダー番号を示す情報)から、オーダー内容を特定し(不図示のオーダー管理データベースからオーダー内容を読み出し)、当該オーダー内容と、各メニューの価格データベースと、に基づいて、会計処理を行う。なお、上記の「会計情報」とは、POS端末13による当該会計処理結果を含む情報を指す。
なお、レシートプリンター12は、POS端末13から取得した会計情報を解析し、その解析結果(以下、「会計実行情報」とも称する)をキッチンプリンター10に出力する。キッチンプリンター10は、当該解析結果から、オーダー番号やオーダー内容を特定し、未会計処理のオーダー情報である残オーダー情報を管理する。詳細については後述するが、本実施形態のキッチンプリンター10は、当該残オーダー情報に基づいて繁忙度を算出する。
店頭ディスプレイ15は、店舗の店頭に設置されるディスプレイ装置であり、顧客に対してその店舗の繁忙度を示す。これにより、来店した顧客は、繁忙度を確認した上で、入店するか否かを判断することができる。また、空席待ち管理装置16は、店内入口の受付カウンターに設置される装置である。顧客は、入店した後、当該空席待ち管理装置16に必要な情報を入力することにより、空席待ち票53(図4(b)参照)を得る。これにより、店員は、顧客の入店順序に従って、公平にテーブル案内を行うことができる。
一方、管理サーバー20は、複数の店舗に設置されたキッチンプリンター10と、インターネット等のネットワークNT1を介して接続される。管理サーバー20は、各店舗において算出された現在の繁忙度(以下、「繁忙情報」とも称する)を取得して顧客(顧客端末30)に提供すると共に、過去の繁忙度(以下、「繁忙履歴情報」とも称する)をデータベース21に蓄積して、繁忙予測を行う。また、顧客端末30から、店舗検索の依頼を受託した場合は、最短待ち時間となる店舗や最短移動時間で入店可能な店舗を検索し、推奨店舗として顧客端末30に通知する。
顧客端末30は、上記のネットワークNT1(インターネット)、電話公衆回線等のネットワークNT2、および基地局40等を介して、管理サーバー20と通信する。なお、顧客端末30として、本実施形態では携帯電話、スマートフォン、PDA、カーナビゲーション装置など、顧客と共に移動する移動通信端末を想定しているが、自宅にあるデスクトップ型のパーソナルコンピューター、コンビニエンスストアや公共施設に設置されたキオスク端末など、固定設置されることを前提とした端末を顧客端末30として用いても良い。」(【0039】-【0045】)

(エ)「続いて、図3(a)は、店頭ディスプレイ15に設けられた表示画面61の表示例を示す図である。表示画面61には、店舗名、現在の繁忙度および補足情報が印刷される。ここで、現在の繁忙度とは、キッチンプリンター10によって算出される値である。計算式については後述する。また、補足情報とは、顧客に対して待ち時間の目安を示す情報である。当該待ち時間の目安は、図3(b)に示す待ち時間テーブルを参照してキッチンプリンター10が決定する。例えば、繁忙度が0%の場合、待ち時間の目安は0分となる。また、繁忙度が20%の場合、待ち時間の目安は20分となる。なお、同図のテーブルにおいて「○○?△△」の標記は、「○○以上、△△未満」を意味する(後述する図17(b)についても同様)。
続いて、図4(a)は、空席待ち管理装置16に設けられたタッチパネル62の表示例を示す図である。タッチパネル62には、空席待ち状況、空席待ち番号および人数選択アイコンが表示される。ここで、空席待ち状況とは、空席待ち状態の顧客に付与されている空席待ち番号の一覧と、各番号の顧客人数を指す。また、空席待ち番号とは、次に空席待ちの操作を行った顧客に対して付与される番号を指す。また、人数選択アイコンとしては、「1人」、「2人」などの人数に応じたアイコンを表示する。顧客により、これらのアイコンのうちいずれかが選択(押下)されると、空席待ち管理装置16は、図4(b)に示す空席待ち票53を印刷(発行)する。当該空席待ち票53には、空席待ち番号および補足メッセージが印刷される。ここで、補足メッセージとは、顧客に対して、番号の確認および待機を促す説明を指す。
次に、図5を参照し、店舗管理システムSY1の機能構成について説明する。キッチンプリンター10は、主な機能構成として、オーダー情報取得部110、オーダー票印刷部120、会計実行情報取得部130、オーダー情報管理部140、席待ち情報取得部150、繁忙度算出部160、繁忙情報送信部170および繁忙度出力部180を備えている。
オーダー情報取得部110は、各店員が所持する複数のオーダー端末11から、オーダー内容を示すオーダー情報を取得する。オーダー票印刷部120は、オーダー情報取得部110により取得したオーダー情報に基づいて、オーダー票51を印刷する。会計実行情報取得部130は、レシートプリンター12から、会計処理終了後に、オーダー内容を含む会計実行情報を取得する。
オーダー情報管理部140は、オーダー情報取得部110により取得したオーダー情報を管理用メモリー22に蓄積すると共に、会計実行情報取得部130により取得した会計実行情報に含まれるオーダー内容に対応するオーダー情報を管理用メモリー22から削除する。図6は、管理用メモリー22の記憶内容の一例を示す図である。同図に示すように、管理用メモリー22には、オーダーごとに、オーダー時刻、オーダー番号、座席およびオーダー内容(品目および数量)が記憶される。例えば、同図に示す3つのオーダー情報が管理用メモリー22に記憶されている場合であって、POS端末13によりオーダー番号「T001」のオーダー票51に基づいて会計処理が行われた場合、オーダー情報管理部140は、管理用メモリー22からオーダー番号「T001」のオーダー情報を削除する。
なお、オーダー情報を削除する際は、オーダー番号単位で削除するのではなく、オーダー内容(オーダー品目)ごとに削除しても良い。例えば、図6に示した3つのオーダー情報が管理用メモリー22に記憶されている場合であって、POS端末13により品目「Aセット」、数量「1」のオーダー内容の会計処理が行われた場合(例えば、「テーブル1」に着席した3人の顧客のうち1人分のみ先に会計処理が行われた場合)、該当する品目(同図の例では、オーダー番号「T001」およびオーダー番号「T003」のいずれかに含まれる品目「Aセット」)を削除する。
席待ち情報取得部150は、空席待ち管理装置16から、席待ち顧客の人数を示す席待ち情報を取得する。例えば、図4(a)に示したタッチパネル62の表示が行われている場合、席待ち顧客の人数は、4+2=6人であるから、席待ち情報は「6」となる。なお、席待ち情報の取得は、定期的、または顧客によるタッチパネル62への操作をトリガーとして行われる。また、当該席待ち情報は、繁忙度の算出に用いられる。
繁忙度算出部160は、管理用メモリー22に蓄積されているオーダー情報の数や、当該管理用メモリー22に蓄積されているオーダー情報に含まれる品目ごとの注文数(品目ごとの注文数から算出される品目別調理時間の合計)などに基づいて、店内の繁忙度を算出する(図7(b)参照)。また、繁忙度算出部160は、繁忙度を算出するための計算式に、席待ち情報取得部150により取得した席待ち情報に応じたパラメーターを反映して繁忙度を算出することも可能である(図8(a),(b)参照)。なお、上記の待ち時間テーブル(図3(b)参照)は、繁忙度算出部160に含まれるものであり、店頭ディスプレイ15の表示画面61(図3(a)参照)に表示する待ち時間の目安も、待ち時間テーブルを参照して、繁忙度算出部160により算出される。
繁忙情報送信部170は、繁忙度算出部160の算出結果である繁忙情報を、管理サーバー20に送信する。なお、繁忙情報の送信は、キッチンプリンター10が繁忙度の算出ごとに自発的に送信しても良いし、管理サーバー20から要求があった場合に、その時点における繁忙度を送信しても良い。また、前者の場合、定期的に繁忙度を送信しても良いし、繁忙度に変化が生じた場合のみ送信しても良い。
繁忙度出力部180は、店頭ディスプレイ15(外部装置)に対し、繁忙度算出部160の算出結果(繁忙度および待ち時間の目安)を出力する。当該出力は、キッチンプリンター10または店頭ディスプレイ15の電源投入時、並びに繁忙度に変化が生じた場合に行われる。なお、繁忙度の出力は、ディスプレイ装置以外にも、スピーカー、印刷装置、並びに携帯電話等の情報端末に対して行っても良い。
続いて、レシートプリンター12の機能構成について説明する。レシートプリンター12は、主な機能構成として、会計情報解析部190および会計実行情報出力部200を備えている。
会計情報解析部190は、POS端末13から取得した、会計処理結果を示す会計情報を解析し、オーダー番号やオーダー内容を抽出する。会計実行情報出力部200は、会計情報の解析によって得られたオーダー番号やオーダー内容を、会計実行情報(会計処理済みのオーダー情報またはオーダー内容を特定するための情報)として、キッチンプリンター10(会計実行情報取得部130)に出力する。」(【0049】-【0060】)

(オ)「なお、上記の実施形態では、キッチンプリンター10により繁忙度の算出を行ったが、管理サーバー20側で行っても良い。図13は、第1実施形態に係る店舗管理システムSY1の変形例を示すシステム構成図である。当該変形例では、キッチンプリンター10が、取得したオーダー情報、会計実行情報および席待ち情報をそれぞれ管理サーバー20に送信する。つまり、図5に示した構成と比較して、キッチンプリンター10に、オーダー情報送信部310、会計実行情報送信部320および席待ち情報送信部330が追加されている。また、管理サーバー20に、管理用メモリー22と、オーダー情報管理部340(図5のオーダー情報管理部140に相当)および繁忙度算出部350(図5の繁忙度算出部160に相当)が追加されている。このように、管理サーバー20側で、オーダー情報の管理や繁忙度の算出を行うことで、キッチンプリンター10(店舗装置)の処理負荷を軽減できる。これにより、キッチンプリンター10のコストを抑えることができ、ひいては店舗管理システムSY1全体の低コスト化を図ることができる。」(【0087】)

(カ)

(図13)

上記(ア)ないし(カ)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

<引用発明1>

「店舗に設置されるキッチンプリンター、オーダー端末、レシートプリンター、POS(Point Of Sales)端末、繁忙度を統括管理する管理サーバーと、顧客が操作する顧客端末と、から成る店舗管理システムSY1であって、
レシートプリンターは、会計情報解析部、及び、会計実行情報出力部を備え、
会計情報解析部は、POS端末から取得した、会計処理結果を示す会計情報を解析し、オーダー内容を抽出し、
会計実行情報出力部は、会計情報の解析によって得られたオーダー内容を、会計実行情報(会計処理済みのオーダー情報またはオーダー内容を特定するための情報)として、キッチンプリンター(会計実行情報取得部)に出力し、
キッチンプリンターは、オーダー情報取得部、会計実行情報取得部、オーダー情報送信部、及び、会計実行情報送信部を備え、
オーダー情報取得部は、オーダー端末から、オーダー内容を示すオーダー情報を取得し、
会計実行情報取得部は、レシートプリンターから、会計処理終了後に、オーダー内容を含む会計実行情報を取得し、
オーダー情報送信部は、オーダー情報を管理サーバーに送信し、
会計実行情報送信部は、会計実行情報を管理サーバーに送信し、
管理サーバーは、オーダー情報管理部、繁忙度算出部、管理用メモリー、及び、繁忙度提供部を備え、キッチンプリンターと、インターネット等のネットワークNT1を介して接続され、
オーダー情報管理部は、オーダー情報取得部により取得したオーダー情報を管理用メモリーに蓄積すると共に、会計実行情報取得部により取得した会計実行情報に含まれるオーダー内容に対応するオーダー情報を管理用メモリーから削除し、
繁忙度算出部は、管理用メモリーに蓄積されているオーダー情報の数などに基づいて、店内の繁忙度を、繁忙度が0%の場合、待ち時間の目安は0分とし、繁忙度が20%の場合、待ち時間の目安は20分となるように算出し、
繁忙度提供部は、電子メール等で直接対象となる顧客端末に繁忙度を送信することを備えた、店舗管理システム。」

2.引用文献4について

また、原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審にて付した。)

(キ)「本発明は、居酒屋やレストラン等の飲食店において、客席で顧客から受けた注文データを電子的に入力し、この入力データを顧客単位に一元的に管理するものであって、特に、そのデータから作成される管理データをレポートに出力するレポート出力方法及びそのシステムに関するものである。」【0001】

(ク)「然しながら、注文の種類や注文受付け担当者を明確にするという概念が無かったため、店舗側としては、レポートを参照した際に、売上げ状況の細かい分析や、 各従業員の動きを把握するということが困難であり、また、管理本部では、どの商品が何時、新規あるいは追加で注文されたものか知ることができなかった。」【0005】

(ケ)「本発明のレポート出力方法及びそのシステムは、注文データとして、新規か何回目の追加かなどを示す注文種別、それぞれの注文種別に対する受付け担当者及び受付け時刻などの情報が含まれるので、担当者別の集計レポート、時間帯別の売上レポート、顧客入店時間別の売上レポート、注文受付け時間別の売上レポート、仕分けレシートなどが作成できる。従って、店員ごとの注文受け数、時間帯別の入店顧客数、時間帯ごとの注文受付け数、時間帯ごとの会計精算数などという注文受付け担当者の個別評価、各職場での最繁時間帯の変化などを判断する木目細かなデータ情報を得ることができるという効果がある。」【0010】

(コ)「 次に、図5Aから図5Cまでは、時間帯別売上レポートの実施の一形態を示す説明図である。図5Aは入店時間別、図5Bは注文(オーダー)受付け時間別、また図5Cは会計時間別の売上レポートである。
図示されるように、点検時刻におけるそれまでの一時間毎の時間帯に処理された顧客組数、顧客人数、売上金額などが出力される。この結果、各時間帯の、例えば入店顧客数、注文受付け数、会計精算回数などの変化を把握することができる。」【0027】?【0028】

3.その他の文献について

また、前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2013-109664号公報)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審にて付した。)

(サ)「本発明は、混雑予測を行う、混雑予測装置、混雑予測方法、及び混雑予測プログラムに関し、特に、顧客に対してサービスを提供する店舗の混雑予測を行う技術に関する。」【0001】

(シ)「また、「混雑量」とは、混雑状況を数値化したものであり、複数の段階(レベル)で表現する。例えば、店舗のある窓口における手続きの混雑状況について、「混雑量」は以下のように定義する。
本実施形態では、単位時間当たりの処理可能な手続きの最大件数をTmaxとした場合の混雑量を以下のように「低(Tlow)」/「中(Tmid)」/「高(Thigh)」として求めることにする。
1.混雑量「低(Tlow)」:Tlow < Tmax×0.5
2.混雑量「中(Tmid)」:Tmax×0.5 ≦ Tmid < Tmax×0.7
3.混雑量「高(Thigh)」:Thigh ≧ Tmax×0.7
なお、以下では、便宜的に混雑量「低」を「1」として、混雑量「中」を「2」として、混雑量「高」を「3」として表す場合がある。」【0026】


第6 対比・判断

1.本願発明1について

1-1.対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1に係る「POS端末」は、図1に示される様に「店舗」に設置されており、また、「POS端末」がキャッシュレジスタである又はキャッシュレジスタ機能を備えていることは明らかである。してみると、引用発明1に係る「POS端末」と本願発明1でいうところの『顧客装置』とは、『店舗におけるキャッシュレジスタである又はキャッシュレジスタ機能を有する装置』という点で一致している。

(2)引用発明1に係る「管理サーバー」は、本願発明1でいうところの『サーバ装置』に対応する。

(3)引用発明1に係る「会計情報解析部」が抽出する「オーダー内容」は、「POS端末から取得した、会計処理結果を示す会計情報を解析」して得られたものであるから、「POS端末」に関する情報といえ、上記(1)で言及した内容を踏まえると、引用発明1に係る「会計実行情報取得部」が取得する「オーダー内容を含む会計実行情報」は、店舗におけるキャッシュレジスタである又はキャッシュレジスタ機能を有する装置に関する情報といえる。

そして、引用発明1に係る「会計実行情報送信部」は、「オーダー内容を含む会計実行情報」を「管理サーバー」に送信するものであるから、引用発明1に係る「会計実行情報送信部」と、本願発明1でいうところの『履歴情報送信部』とは、『店舗におけるキャッシュレジスタである又はキャッシュレジスタ機能を有する装置に関する情報を、ネットワークを介してサーハ装置へ送信する情報送信部』という点で一致する。

(4)引用発明1に係る「繁忙度」は、繁忙度が0%の場合、待ち時間の目安は0分とし、繁忙度が20%の場合、待ち時間の目安は20分となるように算出したものであるので、いわゆる忙しさの度合いを数値化したものであるから、本願発明1でいうところの『パラメータ』に対応する。そして、「算出する」ことは演算を行っているものといえるから、引用発明1に係る「繁忙度算出部」と、本願発明1でいうところの『パラメータ演算部』とは、『店舗におけるキャッシュレジスタである又はキャッシュレジスタ機能を有する装置に関する情報に基づいて、パラメータを算出するパラメータ演算部』という点で一致する。

(5)引用発明1に係る「顧客端末」は本願発明1でいうところの『ユーザーが操作するユーザー装置』に対応する。そして、引用発明1に係る「繁忙度提供部」は「電子メール等で直接対象となる顧客端末に繁忙度を送信する」のであるから、引用発明1に係る「繁忙度提供部」と、本願発明1でいうところの『顧客情報送信部』とは、『算出されたパラメータを含む情報をユーザーが操作するユーザー装置へ送信する情報送信部』という点で一致する。

(6)引用発明1に係る「顧客端末」は電子メールを受信するものであり、電子メールの内容を表示する表示部を備えていることは明らかである。そうすると、引用発明1には、本願発明1でいうところの『表示部』に対応する構成を備えているといえる。

(7)引用発明1に係る「店舗管理システム」は、「顧客端末」に「繁忙度」という情報を通知しているのであるから、引用発明1に係る「店舗管理システム」と、本願発明1でいうところの『顧客情報提供システム』とは、『情報提供システム』という点で一致する。

上記(1)から(7)で対比した様に、本願発明1と引用発明1とは、
「店舗におけるキャッシュレジスタ又はキャッシュレジスタ機能を有する装置に関する情報を、ネットワークを介してサーハ装置へ送信する情報送信部と、
前記情報に基づいて、パラメータを算出するパラメータ演算部と、
算出されたパラメータを含む情報をユーザーが操作するユーザー装置へ送信する情報送信部と、
表示部と、
を備える情報提供システム。」

との点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明1は、『履歴情報送信部』が『顧客店舗』における『顧客装置の操作履歴に関する情報データ』を送信しているのに対し、引用発明1では、店舗、及び、装置について『顧客』という限定がなく、送信される情報が、『操作履歴に関する』ものではない点

<相違点2>
本願発明1は、『顧客装置の稼働状況』を示すパラメータを算出しているのに対し、引用発明1では、「繁忙度」を算出しており『顧客装置の稼働状況』を示すパラメータではない点。

<相違点3>
本願発明1は、パラメータを含む『顧客装置に関する情報』をユーザー装置へ送信しているのに対し、引用発明1では、『顧客装置に関する情報』は送信していない点。

<相違点4>
本願発明1では、『営業担当者』であるユーザーが操作するユーザー装置へ送信しているのに対し、引用発明1では、「顧客端末」へ送信している点。

<相違点5>
本願発明1は、『前記顧客装置に関する情報に基づいて、前記ユーザに提供する表示情報に対応する画像データを生成する表示情報演算部』を備え、『前記画像データに対応する前記表示情報』を表示しているのに対し、引用発明1では、表示情報についての記載がない点。

<相違点6>
本願発明1は、『前記パラメータ演算部は、前記顧客装置による所定時間当たりの会計処理の回数Kと、予め設定された会計処理の回数の基準値K0との比率から、前記パラメータとして前記顧客装置の稼働状況の実績値を算出』しているのに対し、引用発明1では、「繁忙度」をオーダー情報の数などに基づいて、20%などの比率で表示している点。

1-2.相違点についての判断

上記<相違点6>について判断する。

引用発明1では、「繁忙度」を会計実行情報に含まれるオーダー内容に対応するオーダー情報をメモリーから削除することにより、店内に残っている顧客の残オーダー情報を管理することにより算出している。

そうすると、引用文献4に、各時間帯の会計精算回数などの変化を把握して、最繁時間帯の変化などを判断するという技術事項が記載されているとしても、引用発明1の「繁忙度」の算出方法においては、会計精算回数は「繁忙度」の算出に使用し得ないため、引用発明1に上記技術事項を適用する動機があるとはいえない。

したがって、引用発明1、及び、引用文献4に記載されている技術事項に基づいて、当業者が本願発明1に係る『前記パラメータ演算部は、前記顧客装置による所定時間当たりの会計処理の回数Kと、予め設定された会計処理の回数の基準値K0との比率から、前記パラメータとして前記顧客装置の稼働状況の実績値を算出』を想起し得たとはいえない。

また、引用文献5には、単位時間当たりの処理可能な手続きの最大件数を基準値として、基準値に対する比率と、混雑量の大小関係を比較することにより、混雑量の程度を求める技術事項が記載されているものの、上記<相違点6>に関する事項を想起させる記載又は示唆する記載は認められない。


以上の通りであるから、上記相違点1から上記相違点5について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明1、上記引用文献4に記載された技術事項、及び、上記引用文献5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-6について

本願発明2-6も、本願発明1の『前記パラメータ演算部は、前記顧客装置による所定時間当たりの会計処理の回数Kと、予め設定された会計処理の回数の基準値K0との比率から、前記パラメータとして前記顧客装置の稼働状況の実績値を算出』と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、拒絶査定において引用された引用文献2-4、及び、上記引用文献5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7-8について

本願発明7は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明8は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、共に本願発明1の『前記パラメータ演算部は、前記顧客装置による所定時間当たりの会計処理の回数Kと、予め設定された会計処理の回数の基準値K0との比率から、前記パラメータとして前記顧客装置の稼働状況の実績値を算出』と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、上記引用文献4に記載された技術事項、及び、上記引用文献5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

1.理由2(特許法第29条第2項)について

審判請求時の補正により、本願発明1-8は『前記パラメータ演算部は、前記顧客装置による所定時間当たりの会計処理の回数Kと、予め設定された会計処理の回数の基準値K0との比率から、前記パラメータとして前記顧客装置の稼働状況の実績値を算出』という事項を有するものとなっており、前述の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」で言及したように、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第36条第6項第2号)について

審判請求時の補正により、補正前の請求項3-6の「顧客店舗の位置情報に基づいて、前記ユーザに提供する表示情報に対応する画像データを生成する」という記載は「顧客店舗の位置情報に基づいて、前記顧客店舗の所在地、及び、前記ユーザに提供する表示情報として前記顧客装置の稼働状況の実績値及び所定エリア内に位置する顧客店舗の数を含む地図データを生成する」に補正されており、原査定の理由2を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-08 
出願番号 特願2015-131746(P2015-131746)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 雅士谷川 智秀  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 宇多川 勉
相崎 裕恒
発明の名称 顧客情報提供システム及びその制御方法並びにコンピュータプログラム  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 江口 昭彦  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 大貫 敏史  
代理人 内藤 和彦  

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