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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01J
管理番号 1327723
審判番号 不服2016-7722  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-26 
確定日 2017-05-26 
事件の表示 特願2013-502334「熱処理品の温度測定装置と方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 7日国際公開、WO2012/118016、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)2月27日(国内優先権主張 平成23年2月28日)を国際出願日とする出願であって、平成27年11月6日付けで拒絶理由が通知され、同年12月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月17日付けで拒絶査定されたところ、同年5月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-5に係る発明は、平成27年12月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。
「 【請求項1】
冷却液の液滴を含むミストで冷却するミスト冷却装置を備えた熱処理炉内に収容された熱処理品の温度測定装置であって、
前記熱処理炉に設けられ前記熱処理品の被測定面を直視可能な測定用窓と、
該測定用窓の外側に設けられ、測定用窓を通して前記被測定面の表面温度を非接触で測定可能な温度センサとを備え、
前記温度センサは、水による吸収率が100%未満となる測定波長域を有し、
前記測定用窓は、前記測定波長域において0%よりも高い透過率を有する窓材によって構成されており、
前記温度センサにより測定された温度測定値を、熱処理品の放射率の補正係数、窓材の透過率による補正係数、又はミスト濃度による補正係数に基づいて補正する温度補正装置を備える、熱処理品の温度測定装置。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用例1.特開2010-249332号公報
引用例2.特開昭63-288041号公報
引用例3.特開2010-2150号公報
引用例4.特開2007-171112号公報
引用例5.特開2001-281064号公報
引用例6.特開昭61-193036号公報
引用例7.特開2003-121352号公報
引用例8.特開2001-124409号公報
引用例9.特開平11-235331号公報

2.原査定の理由の判断
(1)引用例の記載事項
ア 引用例1の記載事項
原査定において引用された引用例1には、以下の事項が記載されている。(以下、下線は当審にて付した。)

(引1a)「【0036】
ミスト供給部20は、冷却室120内に冷却液をミスト状に供給することによって被処理物Mを冷却するものであって、冷却液供給管21と、冷却液回収・供給系22とを備えている。
なお、本実施形態の冷却液としては、例えば水、油、ソルト又はフッ素系不活性液体等が用いられる。」

(引1b)「【0043】
温度計測部40は、被処理物Mの表面温度を計測するものであって、第1温度センサ40aないし第4温度センサ40dから構成される。第1温度センサ40aないし第4温度センサ40dは、第1気体供給管31aないし第4気体供給管31dに各々対向する被処理物Mの表面にそれぞれ設けられ、各温度センサの計測結果は制御部50に出力される。
本実施形態の第1温度センサ40aないし第4温度センサ40dとしては、熱電対が用いられているが、例えば放射温度計のような非接触式の温度計測器により被処理物Mの複数箇所を計測する構成としてもよい。」

イ 引用例1に記載の発明
上記アの(引1a)及び(引1b)の記載より、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ミスト供給部20は、冷却室120内に冷却液をミスト状に供給することによって被処理物Mを冷却するものであって、
温度計測部40は、第1温度センサ40aないし第4温度センサ40dから構成され、
第1温度センサ40aないし第4温度センサ40dとして、
放射温度計のような非接触式の温度計測器により被処理物Mの複数箇所を計測する、
被処理物Mの表面温度を計測する温度計測部40。」

(2)対比
ア 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア) 引用発明の「被処理物M」、「温度計測部40」、「ミスト供給部20」及び「冷却室120」は、それぞれ本願発明1の「熱処理品」、「温度測定装置」、「ミスト冷却装置」及び「熱処理炉」に相当する。
そして、引用発明の「冷却室120」は、「冷却液をミスト状に供給する」「ミスト供給部20」を備えているから、引用発明の「冷却室120」と、本願発明1の「熱処理炉」は、冷却液の液滴を含むミストで冷却するミスト冷却装置を備えた点で共通している。
また、引用発明の「被処理物M」は、「冷却室120」内で冷却されるから、引用発明の「被処理物M」と、本願発明1の「熱処理品」とは、「熱処理炉」内に収容されている点で共通する。

(イ)引用発明の「第1温度センサ40aないし第4温度センサ40d」は、本願発明1の「温度センサ」に相当する。
そして、引用発明の「第1温度センサ40aないし第4温度センサ40d」は、「放射温度計のような非接触式の温度計測器により」「被処理物Mの表面温度」を「複数箇所を計測する」ものであるから、引用発明の「第1温度センサ40aないし第4温度センサ40d」と、本願発明1の「温度センサ」とは、前記被測定面の表面温度を非接触で測定可能なものである点で共通する。

以上、(ア)及び(イ)より両者は、以下の(一致点)で一致し、以下の(相違点)で相違している。

(一致点)
「冷却液の液滴を含むミストで冷却するミスト冷却装置を備えた熱処理炉内に収容された熱処理品の温度測定装置であって、
前記被測定面の表面温度を非接触で測定可能な温度センサとを備える、
熱処理品の温度測定装置。」

(相違点1)
本願発明1の「熱処理炉」には、「熱処理品」の被測定面を直視可能な測定用窓が設けられ、該測定用窓は、「温度センサ」の測定波長域において0%よりも高い透過率を有する窓材によって構成されているのに対し、引用発明には、測定用窓が記載されていない点。

(相違点2)
本願発明1の温度センサは、測定用窓の外側に設けられ、測定用窓を通して前記被測定面の表面温度を測定可能に設けられているのに対し、引用発明の「第1温度センサ40aないし第4温度センサ40d」は、どこに設けられているか特定されていない点。

(相違点3)
「温度センサ」の測定波長域は、本願発明1は、水による吸収率が100%未満となる測定波長域であるのに対し、引用発明は、そのような限定がなされていない点。

(相違点4)
本願発明1は、温度センサにより測定された温度測定値を、熱処理品の放射率の補正係数、窓材の透過率による補正係数、又はミスト濃度による補正係数に基づいて補正する温度補正装置を備えているのに対し、引用発明は、そのような温度補正装置を備えていない点。

(3)判断
上記相違点4について検討する。
原査定で引用された、引用例2ないし9には、温度センサにより測定された温度測定値を、熱処理品の放射率の補正係数、窓材の透過率による補正係数、又はミスト濃度による補正係数に基づいて補正する点に関し記載も示唆もされておらず、当該技術分野において周知の事項であるともいえない。
そうすると、本願発明1は、相違点1ないし相違点3を検討するまでもなく、引用発明や、引用例2ないし9に記載された発明から容易に想到できたものであるとはいえない。

(4)小括
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明や引用例2ないし9に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2-4に係る発明は、本願発明1をさらに限定したものであり、請求項5に係る発明は、本願発明1を熱処理品の温度測定方法として記載したものであるから、本願発明1と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-16 
出願番号 特願2013-502334(P2013-502334)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塚本 丈二  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 福島 浩司
信田 昌男
発明の名称 熱処理品の温度測定装置と方法  
代理人 堀田 実  
代理人 野村 俊博  
代理人 堀田 実  
代理人 野村 俊博  

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