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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1327730
審判番号 不服2016-4787  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-01 
確定日 2017-05-23 
事件の表示 特願2011-122227号「ランフラットタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日出願公開、特開2012-250554号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年5月31日に出願されたものであって、平成26年10月17日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年5月28日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月25日付けで補正の却下の決定がなされると共に拒絶査定がされ、これに対し、平成28年4月1日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正書が提出され、その後当審において同年10月24日付けで拒絶理由が通知され、同年12月20日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月6日付けで最後の拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月3日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明4」という。また、まとめて「本願発明」ということもある。)は、平成29年4月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりものと認められる。
「【請求項1】
サイド部に三日月状のサイド補強ゴムを備えたランフラットタイヤであって、
ガスバリア性樹脂を含むバリア層とエラストマーを含む弾性体層とを含む積層体からなるインナーライナーを備え、
前記積層体のヤング率が、前記サイド部におけるサイド補強ゴムのヤング率の3倍?200倍であり、
前記積層体は、前記バリア層を10層以上有し、
前記バリア層と前記弾性体層との合計層数は、21?48層であり、
前記バリア層が、一層の平均厚さ0.001μm?0.8μmの層であり、前記弾性体層が、一層の平均厚さ0.001μm?0.8μmの層であり、
前記バリア層と前記弾性体層とが交互に積層されている、
ことを特徴とするランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記積層体の両最外層が、前記弾性体層であることを特徴とする請求項1に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記ガスバリア性樹脂は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ナイロン、及びアイオノマーからなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ。
【請求項4】
前記積層体の最大厚みは、38.4μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のランフラットタイヤ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2007-276587号公報
引用文献2:特開2009-202649号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2009-227124号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:国際公開第2010/053014号(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2010-095150号公報
引用文献6:特開2005-343218号公報
特に、請求項1に係る発明(本願発明1に対応)は、引用文献1に記載された発明に、引用文献5または6に記載された技術的事項及び引用文献2?4に示される周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献1に記載された発明
引用文献1の段落【0042】に「上記変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層とエラストマーからなる補助層(D)とを多層化する方法としては、・・・変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)と補助層(D)(及び必要に応じて接着層)とを共押出成形する方法、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる成形物とエラストマーのフィルム、シートとを接着層を用いてラミネートする方法、更にはタイヤ成型時にドラム上で、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる成形物と補助層(D)(及び必要に応じて接着層)を貼り合わせる方法等が挙げられる。」(下線は当審で付加。)と記載されており、「接着層」を用いず多層化することが開示されているといえる。
以上のことと、【請求項1】、段落【0001】、【0019】?【0024】、【0034】?【0041】及び【図1】の記載によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。なお、数字や単位は全角表記とした。
「一対のサイドウォール部2に断面三日月状の一対のサイド補強ゴム層8を備えたランフラットタイヤであって、
0.1?50μmの変成エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層が、50?1500μmのエラストマーからなる補助層(D)に貼り合わせた低空気透過層9をタイヤ内面に設け、
前記サイド補強ゴム層8は、25℃における100%伸長時の引張強さが5MPa?20MPaで且つ室温における動的弾性率が10.5MPa以下であり、
前記低空気透過層9は、20℃、65%RHにおける酸素透過量が3.0×10^(-12)cm^(3)・cm/cm^(2)・sec・cmHg以下であるランフラットタイヤ。」

(2)引用文献2に記載された技術的事項
引用文献2には、【請求項1】、段落【0034】、【0035】の記載からみて、次の技術的事項(以下「引用文献2技術」という。)が記載されているものと認める。
「熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物のヤング率を1?500MPaの範囲に設定した熱可塑性エラストマー組成物の薄膜からなるフィルム層をインナーライナー層として用いた空気入りタイヤ。」

(3)引用文献3に記載された技術的事項
引用文献3には、【請求項1】、段落【0027】の記載からみて、次の技術的事項(以下「引用文献3技術」という。)が記載されているものと認める。
「熱可塑性樹脂樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続層として分散した構造をとり、ヤング率を1?500MPaの範囲に設定した熱可塑性エラストマー組成物の薄膜からなるフィルム層をインナーライナー層として用いた空気入りタイヤ。」

(4)引用文献4に記載された技術的事項
引用文献4には、[請求項1]、段落[0029]の記載からみて、次の技術的事項(以下「引用文献4技術」という。)が記載されているものと認める。
「熱可塑性樹脂樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続層として分散した構造をとり、ヤング率を1?500MPaの範囲に設定した熱可塑性エラストマー組成物の薄膜からなるフィルム層をインナーライナー層として用いた空気入りタイヤ。」

(5)引用文献5に記載された技術的事項
引用文献5には、【請求項1】、段落【0026】?【0029】、【0053】?【0062】の記載によれば、次の技術的事項(以下「引用文献5技術」という。)が記載されているものと認める。
「サイドウォール部3の表面の少なくとも一部に、突部を備える乱流発生部5を設け、インナーライナー14は、0.1μm以上100μm以下の樹脂組成物からなる層に隣接して、合計の厚さが50?2000μmであるエラストマーからなる補助層を一層以上備えるランフラットタイヤ1。」

(6)引用文献6に記載された技術的事項
引用文献6には、【請求項1】、段落【0026】?【0028】、【0048】?【0064】の記載によれば、次の技術的事項(以下「引用文献6技術」という。)が記載されているものと認める。
「サイド部3に三日月状の補強ゴム層10を備えたランフラットタイヤ100であって、
エチレン含有量25?50モル%のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)100重量部に対して、エポキシ化合物(B)1?50重量部を反応させて得られる変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層とエラストマーからなる補助層(D)を含むインナーライナーを備え、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層をC、エラストマーからなる補助層(D)をD1、D2、接着層をAdで表すと、C/D1、D1/C/D1、C/Ad/D1、D1/Ad/C/Ad/D1、D1/C/D1/D2、D1/C/D1/Ad/D2であり、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層の厚さが0.1μm以上50μm以下であり、エラストマーからなる補助層(D)の厚さの合計が50?1500μmであるランフラットタイヤ100。」

(7)本願発明1と引用発明との対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「サイドウォール部2」は前者の「サイド部」に相当し、以下同様に、「サイド補強ゴム層8」は「サイド補強ゴム」に、「ランフラットタイヤ」は「ランフラットタイヤ」に相当する。
また、後者の「変成エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層」は、低空気透過を図るものであるから、前者の「ガスバリア性樹脂を含むバリア層」に相当し、同様に、「エラストマーからなる補助層(D)」は、「エラストマーを含む弾性体層」に相当し、「低空気透過層9」は、「変成エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層」と「エラストマーからなる補助層(D)」を貼り合わせて積層され、タイヤ内面に設けられているものであるから、「積層体からなるインナーライナー」に相当するといえる。

イ 以上のことより、後者の「一対のサイドウォール部2に断面三日月状の一対のサイド補強ゴム層8を備えたランフラットタイヤであって、」は、前者の「サイド部に三日月状のサイド補強ゴムを備えたランフラットタイヤであって、」に相当するといえる。

ウ また、前者において、「サイド補強ゴム」の引っ張り強さや動的弾性率の具体的数値範囲及び「インナーライナー」の酸素透過量の具体的数値範囲を特定しないものであるから、後者の「0.1?50μmの変成エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層が、50?1500μmのエラストマーからなる補助層(D)に貼り合わせた低空気透過層9をタイヤ内面に設け、前記サイド補強ゴム層8は、25℃における100%伸長時の引張強さが5MPa?20MPaで且つ室温における動的弾性率が10.5MPa以下であり、前記低空気透過層9は、20℃、65%RHにおける酸素透過量が3.0×10^(-12)cm^(3)・cm/cm^(2)・sec・cmHg以下である」と、前者の「ガスバリア性樹脂を含むバリア層とエラストマーを含む弾性体層とを含む積層体からなるインナーライナーを備え、前記積層体のヤング率が、前記サイド部におけるサイド補強ゴムのヤング率の3倍?200倍であり、前記積層体は、前記バリア層を10層以上有し、前記バリア層と前記弾性体層との合計層数は、21?48層であり、前記バリア層が、一層の平均厚さ0.001μm?0.8μmの層であり、前記弾性体層が、一層の平均厚さ0.001μm?0.8μmの層であり、前記バリア層と前記弾性体層とが交互に積層されている、」とは、「ガスバリア性樹脂を含むバリア層とエラストマーを含む弾性体層とを含む積層体からなるインナーライナーを備え、」との限度で一致するといえる。

エ してみると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「サイド部に三日月状のサイド補強ゴムを備えたランフラットタイヤであって、
ガスバリア性樹脂を含むバリア層とエラストマーを含む弾性体層とを含む積層体からなるインナーライナーを備えるランフラットタイヤ。」

[相違点1]
本願発明1が、「前記積層体のヤング率が、前記サイド部におけるサイド補強ゴムのヤング率の3倍?200倍であり」というものであるのに対し、引用発明は、当該事項の特定がない点。

[相違点2]
「積層体」の構造に関し、本願発明1が「前記積層体は、前記バリア層を10層以上有し、前記バリア層と前記弾性体層との合計層数は、21?48層であり、前記バリア層が、一層の平均厚さ0.001μm?0.8μmの層であり、前記弾性体層が、一層の平均厚さ0.001μm?0.8μmの層であり、前記バリア層と前記弾性体層とが交互に積層されている」というものであるのに対し、引用発明は、当該事項を有していない点。

(8)相違点の判断
事案に鑑み上記相違点2について検討する。
引用文献5技術の「樹脂組成物からなる層」は、ガスバリア性を有するものであるから、本願発明1の「ガスバリア性樹脂を含むバリア層」に相当し、同様に、「エラストマーからなる補助層」は「エラストマーを含む弾性体層」に相当するといえる。
しかし、引用文献5技術においても、「樹脂組成物からなる層」(バリア層)は10層以上有するものではなく、「樹脂組成物からなる層」(バリア層)と「エラストマーからなる補助層」(弾性体層)の合計層数は21?48層という多層構造をとるものではない。
したがって、引用発明に引用文献5技術を適用したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の事項を有するものとならない。

また、引用文献6技術の「変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層」はガスバリア性を有するものであるから、本願発明1の「ガスバリア性樹脂を含むバリア層」に相当し、同様に、「エラストマーからなる補助層(D)」は「エラストマーを含む弾性体層」に相当するといえる。
しかし、引用文献6技術においても、「変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)からなる層」(バリア層)は10層以上有するものではなく、「樹脂組成物からなる層」(バリア層)と「エラストマーからなる補助層(D)」(弾性体層)の合計層数は21?48層という多層構造をとるものではない。
したがって、引用発明に引用文献6技術を適用したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の事項を有するものとならない。

また、周知技術を示すために引用された引用文献2?4技術にも、上記相違点2に係る本願発明1の事項に関する技術の開示は見当たらない。

そして、上記相違点2に係る本願発明1の事項を有することにより、平成28年4月1日付け手続補正により補正された本願明細書の段落【0149】の【表1】の「実施例3」に示されるような有利な効果を奏するものである。

よって、引用発明において、少なくとも上記相違点2に係る本願発明1の事項を有するものとすることは当業者にとって容易とはいえないことから、本願発明1は、引用発明、引用文献5技術または引用文献6技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(9)小活
以上検討したとおり、本願発明1は、引用発明、引用文献5技術または引用文献6技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2?4は、本願発明1をさらに限定したものであるので、同様に引用発明、引用文献5技術または引用文献6技術及び周知技術に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の請求項4及び5の記載が不備で特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

2 当審拒絶理由の判断
平成29年4月3日付け手続補正により、補正前の本願の請求項1?5の記載は、上記第2に示すとおりに補正され、指摘した特許請求の範囲の記載の不備はいずれも解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-08 
出願番号 特願2011-122227(P2011-122227)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B60C)
P 1 8・ 121- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳楽 隆昌  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 平田 信勝
一ノ瀬 覚
発明の名称 ランフラットタイヤ  
代理人 冨田 和幸  
代理人 杉村 憲司  
代理人 吉田 憲悟  
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