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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1327734
審判番号 不服2016-14445  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-27 
確定日 2017-05-23 
事件の表示 特願2012-137588「記憶素子および記憶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月 9日出願公開、特開2014- 3163、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年6月19日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 2月27日 審査請求・手続補正
平成27年12月16日 拒絶理由通知
平成28年 2月18日 意見書・手続補正
平成28年 6月20日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成28年 9月27日 審判請求・手続補正

第2 原査定の概要
1 この出願の請求項1,3,6,7,9-12に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。(以下,「理由1」という。)
2 この出願の請求項1,3,6,7,9-12に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以下,「理由2」という。)
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
引用文献等一覧
引用文献1 特開2006-040946号公報
引用文献1の段落0032には,「イオン源層3には,Ag,Cu,Znから選ばれた1種以上の元素(金属元素)と,S,Se,Teから選ばれた1種以上の元素(カルコゲナイド元素)とを含有する。そして,金属元素が後述するようにイオン化することにより,抵抗変化素子10の抵抗値が変化する。即ち,この金属元素(Ag,Cu,Zn)はイオン源となるものである。」と記載されるように,Ag,Cu,Znの3種類の元素は全く同列に扱われており,特にCuのみを積極的に推奨してるわけではないから,AgまたはZnを選択し,Cuを選択しない構成も引用文献2に記載の発明に含まれるものである。

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1及び11に「可動元素として周期律表第4族,5族および6族の元素を1種または2種以上を含有する」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,同事項は,当初明細書の段落【0019】に記載されているから,当該補正事項は新規事項を追加するものではないといえる。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1及び11に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
また,審判請求時の補正によって,明細書段落【0009】,【0011】及び【0013】が補正されたが,当該補正に係る事項は,当初明細書の段落【0019】に記載されているから,当該補正事項は新規事項を追加するものではないといえる。

第4 本願発明
本願の請求項1-11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は,平成28年9月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
第1電極,イオン源層を含む記憶層および第2電極をこの順に有し,
前記イオン源層は,
可動元素として周期律表第4族,5族および6族の元素を1種または2種以上を含有すると共に,体積抵抗率が150mΩ・cm以上12000mΩ・cm以下であり,さらにアルミニウム(Al)および銅(Cu)を含まない
記憶素子。
【請求項2】
前記体積抵抗率は450mΩ・cm以上3000mΩ・cm以下である,請求項1に記載の記憶素子。
【請求項3】
前記可動元素は電界の印加によって陽イオン化および陰イオン化する,請求項1または2に記載の記憶素子。
【請求項4】
前記陽イオン化する可動元素は(Ti),ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)である,請求項3に記載の記憶素子。
【請求項5】
前記イオン源層は,前記陰イオン化する可動元素として周期律表第16族の元素を1種または2種以上を含有する,請求項3に記載の記憶素子。
【請求項6】
前記陰イオン化する可動元素は硫黄(S),セレン(Se)またはテルル(Te)である,請求項5に記載の記憶素子。
【請求項7】
前記イオン源層は,マンガン(Mn),コバルト(Co),鉄(Fe),ニッケル(Ni),白金(Pt)およびケイ素(Si)のいずれか1種または2種以上を含む,請求項1乃至6のいずれか1つに記載の記憶素子。
【請求項8】
前記記憶層は前記第1電極側に抵抗変化層を有する,請求項1乃至7のいずれか1つに記載の記憶素子。
【請求項9】
前記抵抗変化層は金属元素の酸化膜,窒化膜または酸窒化膜によって構成されている,請求項8に記載の記憶素子。
【請求項10】
前記第1電極および前記第2電極への電圧印加によって前記抵抗変化層内に前記金属元素を含む,あるいは酸素欠陥を含む低抵抗部が形成されることにより抵抗値が変化する,請求項1乃至9のいずれか1つに記載の記憶素子。
【請求項11】
第1電極,イオン源層を含む記憶層および第2電極をこの順に有する複数の記憶素子と,前記複数の記憶素子に対して選択的に電圧または電流のパルスを印加するパルス印加手段とを備え,
前記イオン源層は,
可動元素として周期律表第4族,5族および6族の元素を1種または2種以上を含有すると共に,体積抵抗率が150mΩ・cm以上12000mΩ・cm以下であり,さらにアルミニウム(Al)および銅(Cu)を含まない
記憶装置。」

第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-040946号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極の間に記録層を有して成り,前記2つの電極に極性の異なる電位を印加することにより,可逆的に前記記録層の抵抗値が変化する抵抗変化素子により,それぞれのメモリセルが構成され,
隣接する複数の前記メモリセルにおいて,前記抵抗変化素子の前記記録層を構成する少なくとも一部の層が同一層により共通に形成されている
ことを特徴とする記憶素子。
【請求項2】
前記記録層が,Ag,Cu,Znから選ばれた1種以上の元素及びS,Se,Teから選ばれた1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の記憶素子。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,2つの電極に極性の異なる電位を印加することにより,可逆的に記録膜の抵抗値が変化する,抵抗変化素子を用いてメモリセルを構成した記憶素子に係わる。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報機器においては,ランダム・アクセス・メモリとして,動作が高速で,高密度のDRAMが広く使用されている。
・・・
【0006】
そこで,縮小化に適した構成のメモリとして,新しいタイプの記憶素子が提案されている。
この記憶素子は,2つの電極の間に,ある金属を含むイオン導電体を挟んだ構造である。
そして,2つの電極のいずれか一方にイオン導電体中に含まれる金属を含ませることにより,2つの電極間に電圧を印加した場合に,電極中に含まれる金属がイオン導電体中にイオンとして拡散するため,これによりイオン導電体の抵抗値或いはキャパシタンス等の電気特性が変化する。
この特性を利用して,メモリデバイスを構成することが可能である(例えば特許文献1,非特許文献1参照)。
【0007】
具体的には,イオン導電体はカルコゲナイドと金属との固溶体より成る,ガラス材料又は半導体材料であり,さらに具体的には,AsS,GeS,GeSeにAg,Cu,Znが固溶された材料(例えば,AsSAg,GeSeAg,GeSAg,AsSCu,GeSeCu,GeSCu等のように,Ag,Cu,Znを含むカルコゲナイドガラスが好適とされている。)からなり,2つの電極のいずれか一方の電極には,Ag,Cu,Znを含んでいる(上記特許文献1参照)。なお,他方の電極は,イオン導体を含む材料に実質的に溶解しない,タングステン,ニッケル,モリブデン,白金,メタルシリサイド等により形成されている。
【0008】
そして,例えば,記憶素子とダイオード或いはMOSトランジスタのような選択素子とを接続してメモリセルを形成し,このメモリセルをアレイ状に配置してメモリデバイスを構成することができる。
【0009】
この構成の記憶素子では,2つの電極に閾値電圧以上のバイアス電圧を印加することにより,イオン導体内にある導電性イオン(Ag,Cu,Zn等のイオン)が負電極方向に移動して,負電極に達することにより電着が生じる。さらに,この電着が,例えば樹枝状(デンドライト)に成長し,正電極に達することにより電流パスが形成されるため,イオン導体の抵抗値が高抵抗から低抵抗に変化する。これにより,記憶素子に情報の記録を行うことができる。
また,2つの電極に,上述のバイアス電圧と逆極性の電圧を印加することにより,樹枝状の電流パスを形成していた導電性イオンが,イオン導体中に溶解することによって,電流パスが消滅し,抵抗値が初期の高抵抗の状態に戻る。これにより,記録した情報の消去動作を行っている。」
ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の一実施の形態として,記憶素子の概略構成図(断面図)を図1に示す。
この記憶素子は,メモリセルを構成する抵抗変化素子10が多数アレイ状に配置されて構成されている。
【0031】
抵抗変化素子10は,下部電極1と上部電極4との間に,高抵抗膜2とイオン源層3とが挟まれて成る。これら高抵抗膜2及びイオン源層3により記憶層が構成され,後述するように,各メモリセルの抵抗変化素子10に情報を記録することができる。
【0032】
イオン源層3には,Ag,Cu,Znから選ばれた1種以上の元素(金属元素)と,S,Se,Teから選ばれた1種以上の元素(カルコゲナイド元素)とを含有する。
そして,金属元素が後述するようにイオン化することにより,抵抗変化素子10の抵抗値が変化する。即ち,この金属元素(Ag,Cu,Zn)はイオン源となるものである。
【0033】
高抵抗膜2は,イオン源層3よりも抵抗率の高い材料,例えば,絶縁体或いは半導体を用いて構成される。
具体的には,例えば,酸化珪素,窒化珪素,希土類酸化膜,希土類窒化膜,アモルファスシリコン,アモルファスゲルマニウム,さらには,アモルファスカルコゲナイド等の材料を用いることが可能である。
【0034】
上述のイオン源層3として,具体的には,例えばCuTeGeGd膜を用いることができる。このCuTeGeGd膜は,組成により抵抗率が異なるが,Cu,Te,Gdは金属元素であるため抵抗を低くすることは,少なくともカルコゲナイドとしてS或いはSeを用いた場合に比して容易である。
アモルファスカルコゲナイド薄膜の中では,GeTeは非常に抵抗率が低く,1×10^(4)Ωcm程度である。これに対して,例えば,GeSeは1×10^(13)Ωcm程度であり,GeSTeは1×10^(11)Ωcm程度である(「機能材料」1990年5月号p76参照)。
このように,GeTeを母材とする材料,或いはTeを含有する材料に,Cu,Gd等の金属を含有させることにより,抵抗を低くすることができる。そして,厚さ20nm,セル面積0.4μm^(2)のCuTeGeGd膜の抵抗値は,100Ω程度以下とすることが可能である。
これに対して,高抵抗膜2に用いられるガドリニウム酸化膜の抵抗値は高く,比較的薄い膜厚でも容易に100kΩ以上,さらには1MΩとすることが可能である。」
エ 「【0041】
続いて,図1?図3を参照して,本実施の形態の記憶素子の動作を説明する。
ワード線WLにより選択用のMOSトランジスタTrのゲートをオン状態として,ビット線BLに電圧を印加すると,MOSトランジスタTrのソース/ドレインを介して,選択されたメモリセルの下部電極1に電圧が印加される。
【0042】
ここで,下部電極1に印加された電圧の極性が,上部電極4(プレート電極PL)の電位に比して負電位である場合には,イオン源層3に含有されるイオン源となる金属元素(例えばCu)がイオンとして下部電極1方向に移動する。このイオンが高抵抗膜2に注入される,或いは高抵抗膜2の表面に析出することによって,高抵抗膜2の界面状態が変化して,抵抗変化素子10の抵抗値が低抵抗状態へと遷移する。これにより,選択されたメモリセルの抵抗変化素子10に情報を記録することができる。
【0043】
また,下部電極1に,上部電極4(プレート電極PL)の電位に比して正電位である場電圧を印加することにより,高抵抗膜2内或いは高抵抗膜2の表面に移動したイオンが,上部電極4(プレート電極PL)方向に移動するため,抵抗変化素子10の抵抗値が再び高抵抗状態へと遷移する。これにより,選択されたメモリセルの抵抗変化素子10に対して,記録された情報を消去することができる。」
(2)引用素子発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用素子発明」という。)が記載されていると認められる。
「下部電極と上部電極との間に,高抵抗膜とイオン源層とが挟まれて成る抵抗変化素子であって,イオン源層には,Ag,Znから選ばれた1種以上の金属元素と,S,Se,Teから選ばれた1種以上のカルコゲナイド元素とを含有すること。」
(3)引用デバイス発明
前記(1)エのとおり,引用文献1には「選択されたメモリセルの下部電極に電圧が印加され」てメモリセルに情報を記録/消去することが記載されており,ここで情報の記録/消去が終われば電圧は印加されなくなることは当然であるから「選択されたメモリセルの下部電極に電圧のパルスが印加される」ものであることは自明である。
すると,前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用デバイス発明」という。)が記載されていると認められる。
「下部電極と上部電極との間に,高抵抗膜とイオン源層とが挟まれて成る抵抗変化素子がアレイ状に配置されて構成されるメモリデバイスで,選択された抵抗変化素子の下部電極に電圧のパルスが印加され,イオン源層には,Ag,Znから選ばれた1種以上の金属元素と,S,Se,Teから選ばれた1種以上のカルコゲナイド元素とを含有すること。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-187925号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極,記憶層および第2電極をこの順に有し,
前記記憶層は,
テルル(Te),硫黄(S)およびセレン(Se)のうち少なくとも1種のカルコゲン元素と共にアルミニウム(Al)を含むイオン源層と,
前記イオン源層と前記第1電極との間に設けられ,アルミニウム酸化物と,前記アルミニウム酸化物よりも抵抗の低い遷移金属酸化物および遷移金属酸窒化物のうち少なくとも一方とを含有する抵抗変化層と
を備えた記憶素子。」
イ 「【0019】
(第1の実施の形態)
図1は,本発明の第1の実施の形態に係る記憶素子1の断面構成図である。この記憶素子1は,下部電極10(第1電極),記憶層20および上部電極30(第2電極)を順に有するものである。記憶層20は,上部電極30の側から順に,イオン源層21と,抵抗変化層22とを有している。
・・・
【0022】
イオン源層21は,イオン供給源としての役割を有するものであり,主に非晶質構造を有している。イオン源層21は,陰イオン化するイオン伝導材料として,テルル(Te),硫黄(S)およびセレン(Se)のうち少なくとも1種のカルコゲン元素を含んでいる。また,イオン源層21は,消去時に酸化物を形成する元素として,Alを含有している。
【0023】
更に,イオン源層21は,少なくとも1種の金属元素を含んでいる。イオン源層21に含まれる金属元素としては,例えば,Cu,亜鉛(Zn),銀(Ag),ニッケル(Ni),コバルト(Co),マンガン(Mn),鉄(Fe),Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,MoおよびWからなる金属元素の群のうちの少なくとも1種が好ましい。Alおよびこれらの金属元素のいくつかは,陽イオン化するイオン伝導材料としての機能を有するものである。
【0024】
イオン源層21は,非晶質化のため金属元素としてZrを含むことが好ましい。低抵抗状態(書き込み状態)または高抵抗状態(初期状態または消去状態)の抵抗値保持特性を向上させることが可能となるからである。ここでは,低抵抗状態を書き込み状態,高抵抗状態を消去状態と定義する。また,Cuは,Zrとの組み合わせにより,非晶質を形成しやすく,イオン源層21の微細構造を均一に保つものであると共に,陽イオン化する金属元素としての機能も有している。
【0025】
イオン源層21には,必要に応じてその他の元素が添加されていてもよい。添加元素の例としては,マグネシウム(Mg),ゲルマニウム(Ge),シリコン(Si)などが挙げられる。Mgは,陽イオン化しやすいと共に消去バイアスで酸化膜を形成し高抵抗化しやすくするためのものである。Geは,Alと同様に,消去時に酸化物を形成することにより高抵抗状態(消去状態)を安定化させると共に,繰り返し回数の増加にも寄与するものである。Siは,記憶層20の高温熱処理時の膜剥がれを抑止すると共に,保持特性の向上も同時に期待できる添加元素であり,イオン源層21にZrと共に添加してもよい。
【0026】
このようなイオン源層21の具体的な材料としては,例えば,ZrTeAl,ZrTeAlGe,CuZrTeAl,CuZrTeAlGe,CuHfTeAl,CuTiTeAl,AgZrTeAl,NiZrTeAl,CoZrTeAl,MnZrTeAl,FeZrTeAlの組成のイオン源層材料が挙げられる。
【0027】
イオン源層21中のAlの含有量は,例えば30?50原子%である。イオン源層21中のZrの含有量は,7.5?26原子%であることが好ましく,更には,イオン源層21に含まれるカルコゲン元素の合計に対するZrの組成比率(=Zr(原子%)/ カルコゲン元素の合計(原子%))は,0.2?0.74の範囲であることが好ましい。イオン源層21中のGeの含有量は15原子%以下であることが好ましい。イオン源層21中のSiの含有量は10?45原子%程度の範囲内であることが望ましい。このように構成することにより各構成元素の役割を最大限に発揮することができる。その詳細については後述する。」
ウ 「【0032】
更に,イオン源層21は,下部電極10の側から順に,中間層21Aと,イオン供給層21Bとを積層した2層構造を有していることが好ましい。中間層21Aは,Alと共に,Te,SおよびSeのうち少なくとも1種のカルコゲン元素を含んでいる。イオン供給層21Bは,上述したイオン源層21と同様の構成,すなわち,Alおよびカルコゲン元素と共に,Cu,Zn,Ag,Ni,Co,Mn,Fe,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,MoおよびWからなる金属元素の群のうちの少なくとも1種を含んでいる。このようにすることにより,良好な繰り返し耐久性を保持したまま保持特性を向上させることが可能となり,低電流での不揮発メモリ動作が可能となる。なお,イオン供給層21Bは,上記の金属元素を含んでいて,必要以上の元素拡散や層の混合を抑制する構成であることが望ましい。
【0033】
特に,イオン供給層21Bは,Alおよびカルコゲン元素と共に,Cu,Ti,ZrおよびHfのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの元素により,非晶質構造を安定化してマトリクス構造を保ちやすくなるので,結果として書き込み・消去動作の信頼性向上につながる。中でもCuは,Zrとの組み合わせにより,非晶質を形成しやすく,イオン供給層21Bの微細構造を均一に保つ機能を有するものである。
【0034】
また,イオン供給層21Bは,必要に応じて,Ge,Si,Mgなどの他の添加元素を含んでいてもよい。
【0035】
中間層21Aにおけるカルコゲン元素含有量に対するAl含有量の比(Al濃度)は,イオン供給層21Bにおけるカルコゲン元素含有量に対するAl含有量の比(Al濃度)よりも小さいことが好ましい。中間層21A中のAlはイオン供給層21Bとの濃度勾配による拡散によりもたらされると考えられるので,例えばAl2Te3の化学量論的組成よりも少なくなると考えられる。そのため,中間層21A中のAlのほとんどはイオン状態で存在していると考えられ,印加した電位が効果的にイオン駆動に用いられることにより,上述した保持特性の向上や低電流での不揮発メモリ動作に結びつくことが可能となる。」
エ 「【0242】
この原因の考察のために,実施例18の中間層21AのCuZrTeOx,実施例19の中間層21AのCrTe,および比較例4の中間層のTeをそれぞれ作製してシート抵抗を測定し体積抵抗率を求めたところ,以下のようになった。
Te 0.27Ωcm
CuZrTeOx 0.44Ωcm
CrTe 0.56Ωcm
【0243】
この結果から分かるように,比較例の中間層であるTeと比較して,実施例18,19の中間層は抵抗が高くなっていた。これにより,イオン供給層21Bの抵抗に比較して中間層21Aの抵抗がより高くなるので,書き込み・消去バイアス電圧が印加された際により効果的に中間層21Aに電界が印加され,Alを主とするイオン種により強い電界がかかることにより,イオンが移動しやすくなり,実施例18,19では書き込み・消去共に動作が安定したものと考えられる。」
(2)引用発明2
前記(1)より,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「第1電極,記憶層および第2電極をこの順に有し,前記記憶層は,テルル(Te),硫黄(S)およびセレン(Se)のうち少なくとも1種のカルコゲン元素と共にアルミニウム(Al)を含むイオン源層とを備えた記憶素子で,更に,イオン源層はTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,MoおよびWからなる金属元素の群のうちの少なくとも1種を含んでいる。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用素子発明との対比
ア 引用素子発明の「下部電極」,「上部電極」及び「高抵抗膜とイオン源層」は,それぞれ本願発明1の「第1電極」,「第2電極」及び「イオン源層を含む記憶層」に相当すると認められる。
イ 引用素子発明において,「イオン源層には,Ag,Znから選ばれた1種以上の金属元素と,S,Se,Teから選ばれた1種以上のカルコゲナイド元素とを含有する」から,本願発明1における「前記イオン源層は,アルミニウム(Al)および銅(Cu)を含まない」を満たすと認められる。
ウ 引用素子発明の「抵抗変化素子」は,下記相違点1及び2を除いて,本願発明1の「記憶素子」に相当すると認められる。
エ すると,本願発明1と引用素子発明とは,下記オの点で一致し,下記カの点で相違すると認められる。
オ 一致点
「第1電極,イオン源層を含む記憶層および第2電極をこの順に有し,
前記イオン源層は,アルミニウム(Al)および銅(Cu)を含まない
記憶素子。」
カ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1においては「前記イオン源層は,可動元素として周期律表第4族,5族および6族の元素を1種または2種以上を含有する」のに対し,引用素子発明においてはこのことが明示されていない点。
(イ)相違点2
本願発明1においては「前記イオン源層は,体積抵抗率が150mΩ・cm以上12000mΩ・cm以下である」のに対し,引用素子発明においてはこのことが明示されていない点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点1について検討する。
引用発明2において「イオン源層はTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,MoおよびWからなる金属元素の群のうちの少なくとも1種を含んでいる」が,これは,引用発明2のイオン源層がAlを含むことを前提に,更にTi等の金属元素を含むというものであって,Alを含むことを前提としない引用素子発明において引用発明2の金属元素を採用する動機付けは見いだせない。
イ 相違点2について検討する。
アルミニウムおよび銅を含まないイオン源層の体積抵抗率が150mΩ・cm以上12000mΩ・cm以下であることは,引用文献1及び2に記載も示唆もされていない。
引用文献1には,イオン源層として,CuTeGeGd膜を用いた場合に,厚さ20nm,セル面積0.4μm^(2)のCuTeGeGd膜の抵抗値は,100Ω程度以下とすることが可能であることが記載されている(前記第5の1(1)ウ【0034】)が,銅を含まないイオン源層の場合の体積抵抗率に関する開示はない。
また,引用文献2には,イオン源層の中間層のCrTeの体積抵抗率は0.56Ωcmであることが記載されている(前記第5の2(1)エ)が,これは中間層の抵抗を高くすることにより中間層に電界が印加され,Alを主とするイオン種により強い電界がかかることにより,イオンが移動しやすくするためのものであり(同前),アルミニウムを含まないイオン源層の場合にどの程度の体積抵抗率とするのかについての開示はない。
そもそも,引用文献1及び2には,複数の素子間におけるコンダクタンス値のばらつきを低減するという本願発明1の課題(本願明細書段落【0008】)が開示されておらず,この課題を解決するために体積抵抗率を所定の範囲にすることを,当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ そして,本願発明1は,相違点1及び2に係る構成を有することにより,印加電圧の変化によるコンダクタンス値の変化が小さくなり,記憶素子のコンダクタンス値の制御性が向上するという有利な効果(本願明細書段落【0047】)を奏するものである。
(3)まとめ
したがって,本願発明1は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は,本願発明1の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1のとおり,本願発明1が引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上,請求項2ないし10に係る発明についても,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 本願発明11について
(1)本願発明11と引用デバイス発明との対比
ア 引用デバイス発明の「下部電極」,「上部電極」,「高抵抗膜とイオン源層」及び「抵抗変化素子」は,それぞれ本願発明11の「第1電極」,「第2電極」,「イオン源層を含む記憶層」及び「記憶素子」に相当すると認められる。
イ 引用デバイス発明において,「イオン源層には,Ag,Znから選ばれた1種以上の金属元素と,S,Se,Teから選ばれた1種以上のカルコゲナイド元素とを含有する」から,本願発明11における「前記イオン源層は,アルミニウム(Al)および銅(Cu)を含まない」を満たすと認められる。
ウ 引用デバイス発明においては「選択された抵抗変化素子の下部電極に電圧のパルスが印加され」るから,本願発明11の「前記複数の記憶素子に対して選択的に電圧または電流のパルスを印加するパルス印加手段」を備えるものと認められる。
エ 引用デバイス発明の「メモリデバイス」は,下記相違点3及び4を除いて,本願発明11の「記憶装置」に相当すると認められる。
オ すると,本願発明11と引用デバイス発明とは,下記カの点で一致し,下記キの点で相違すると認められる。
カ 一致点
「第1電極,イオン源層を含む記憶層および第2電極をこの順に有する複数の記憶素子と,前記複数の記憶素子に対して選択的に電圧または電流のパルスを印加するパルス印加手段とを備え,
前記イオン源層は,アルミニウム(Al)および銅(Cu)を含まない
記憶装置。」
キ 相違点
(ア)相違点3
本願発明11においては「前記イオン源層は,可動元素として周期律表第4族,5族および6族の元素を1種または2種以上を含有する」のに対し,引用デバイス発明においてはこのことが明示されていない点。
(イ)相違点4
本願発明11においては「前記イオン源層は,体積抵抗率が150mΩ・cm以上12000mΩ・cm以下である」のに対し,引用デバイス発明においてはこのことが明示されていない点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点3について検討する。
引用発明2において「イオン源層はTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,MoおよびWからなる金属元素の群のうちの少なくとも1種を含んでいる」が,これは,引用発明2のイオン源層がAlを含むことを前提に,更にTi等の金属元素を含むというものであって,Alを含むことを前提としない引用デバイス発明の記憶素子に引用発明2の金属元素を採用する動機付けは見いだせない。
イ 相違点4について検討する。
アルミニウムおよび銅を含まないイオン源層の体積抵抗率が150mΩ・cm以上12000mΩ・cm以下であることは,引用文献1及び2に記載も示唆もされていない。
引用文献1には,イオン源層として,CuTeGeGd膜を用いた場合に,厚さ20nm,セル面積0.4μm^(2)のCuTeGeGd膜の抵抗値は,100Ω程度以下とすることが可能であることが記載されている(前記第5の1(1)ウ【0034】)が,銅を含まないイオン源層の場合の体積抵抗率に関する開示はない。
また,引用文献2には,イオン源層の中間層のCrTeの体積抵抗率は0.56Ωcmであることが記載されている(前記第5の2(1)エ)が,これは中間層の抵抗を高くすることにより中間層に電界が印加され,Alを主とするイオン種により強い電界がかかることにより,イオンが移動しやすくするためのものであり(同前),アルミニウムを含まないイオン源層の場合にどの程度の体積抵抗率とするのかについての開示はない。
そもそも,引用文献1及び2には,複数の素子間におけるコンダクタンス値のばらつきを低減するという本願発明11の課題(本願明細書段落【0008】)が開示されておらず,この課題を解決するために体積抵抗率を所定の範囲にすることを,当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ そして,本願発明1は,相違点3及び4に係る構成を有することにより,印加電圧の変化によるコンダクタンス値の変化が小さくなり,記憶素子のコンダクタンス値の制御性が向上するという有利な効果(本願明細書段落【0047】)を奏するものである。
(3)まとめ
したがって,本願発明11は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について
1 理由1について
前記第6の1(1)及び2のとおり,本願発明1ないし10と引用文献1に記載された発明とは,少なくとも相違点1及び2で相違するから,本願発明1ないし10は引用文献1に記載された発明ではない。
また,前記第6の3(1)のとおり,本願発明11と引用文献1に記載された発明とは,相違点3及び4で相違するから,本願発明11は引用文献1に記載された発明ではない。
したがって,原査定の理由1を維持することはできない。
2 理由2について
前記第6の1ないし3のとおり,本願発明1ないし11は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって,原査定の理由2を維持することはできない。

第8 結言
以上のとおりであるから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-09 
出願番号 特願2012-137588(P2012-137588)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 俊哉  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 深沢 正志
小田 浩
発明の名称 記憶素子および記憶装置  
代理人 特許業務法人つばさ国際特許事務所  
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