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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 一部申し立て 2項進歩性  C23C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C23C
管理番号 1327850
異議申立番号 異議2016-700326  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-19 
確定日 2017-03-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5808513号発明「スパッタリングターゲット材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5808513号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?19〕について訂正することを認める。 特許第5808513号の請求項1?18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5808513号の請求項1?19に係る特許についての出願は、2015年4月2日(優先権主張2014年5月8日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年9月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1?18に係る特許に対して、特許異議申立人佐藤勝彦により特許異議の申立てがなされたものであり、その後の手続は以下のとおりである。
平成28年 6月30日 取消理由通知
平成28年 8月23日 特許権者:意見書、訂正請求書
平成28年 8月26日 手続補正指令
平成28年 9月20日 特許権者:手続補正書
平成28年 9月28日 訂正拒絶理由
平成28年10月25日 特許権者:意見書、手続補正書
平成28年11月 1日 訂正請求があった旨の通知
平成28年12月 8日 特許異議申立人:意見書
平成29年 1月27日 審尋
平成29年 2月28日 特許権者:回答書

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)請求項1に記載された
「銅系金属相と酸化物相との混合組織を有し、
酸素含有量が5原子%?30原子%で、相対密度が85%以上であり、
バルク抵抗値が1.0×10^(-2)Ωcm以下であるスパッタリングターゲット材。」

「銅系金属相と酸化物相との混合組織を有し、
酸素含有量が5原子%?30原子%で、
スパッタリングターゲット材の重量(g)をその体積(cm^(3))で除し、下記理論式(数1)に基づく理論密度ρ(g/cm^(3))に対する百分率として算出される相対密度が85%以上であり、
バルク抵抗値が1.0×10^(-2)Ωcm以下であり、
銅系金属相の平均粒径が0.5μm?10.0μmであるスパッタリングターゲット材。
【数1】

(式中、C(Cu)、C(Cu_(2)O)はそれぞれスパッタリングターゲット材中の銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)であり、ρ(Cu)、ρ(Cu_(2)O)はそれぞれ銅または銅合金の密度、酸化物の密度である。銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)は、実測された焼結体中の酸素が全て酸化銅(I)または銅合金酸化物を形成するものと仮定して算出する。)」
に訂正する(以下、「訂正事項1」という)。

(2)請求項8に記載された
「銅系金属相の平均粒径が0.5μm?10.0μmであり、酸化物相の平均粒径が0.05μm?7.0μmである請求項1?請求項7いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。」

「酸化物相の平均粒径が0.05μm?7.0μmである請求項1?請求項7いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。」
に訂正する(以下、「訂正事項2」という)。

2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1における「相対密度」に関する訂正は、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の「相対密度:スパッタリングターゲット材の重量(g)をその体積(cm^(3))で除し、下記理論式(数1)に基づく理論密度ρ(g/cm^(3))に対する百分率を算出して、相対密度(%)とした。
【数1】

式中、C(Cu)、C(Cu_(2)O)はそれぞれスパッタリングターゲット材中の銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)を示しており、ρ(Cu)、ρ(Cu_(2)O)はそれぞれ銅または銅合金の密度、酸化物の密度を示している。銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)は、実測された焼結体中の酸素が、全て酸化銅(I)または銅合金酸化物を形成するものと仮定して算出した。」(段落【0032】?【0034】)との記載に基づき、「相対密度」の定義を明確にするものであるから、当該訂正は「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
イ 訂正事項1における「銅系金属相の平均粒径が0.5μm?10.0μmである」との訂正は、請求項1に係る発明のスパッタリングターゲット材の「銅系金属相」に関して、その平均粒径を特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、当該訂正に関連する記載として、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「本発明に係るスパッタリングターゲット材は、銅系金属相の平均粒径が0.5μm?10.0μm・・・であることが好ましい。」(段落【0014】)と記載されているから、当該訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
ウ 訂正事項1は、「相対密度」を明瞭とし、「銅系金属相」の平均粒径を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1において、請求項1に「銅系金属相の平均粒径が0.5μm?10.0μmである」ことが特定されたことにより、該請求項1を引用する請求項8において、重複する発明特定事項を削除するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)一群の請求項について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を訂正するものであり、訂正前の請求項2?19は、請求項1を引用するため、請求項1?19は一群の請求項である。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項1?19について請求されたものである。

(4)独立特許要件
本件訂正請求は、訂正後の請求項1?19に関連するところ、請求項1?18は特許異議の申立てがなされたので、独立特許要件の規定は適用されない。
また、特許異議の申立てがなされていない請求項19に係る発明は、請求項1に係る発明の製造方法に相当するものであり、後述する「第3 特許異議の申立てについて」において、請求項1に係る発明について検討したと同様に、その特許を取り消すべき理由がないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号までに掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?19〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1 本件発明
(1)本件訂正請求により訂正された請求項1?19に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明19」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?19に記載された次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
銅系金属相と酸化物相との混合組織を有し、
酸素含有量が5原子%?30原子%で、
スパッタリングターゲット材の重量(g)をその体積(cm^(3))で除し、下記理論式(数1)に基づく理論密度ρ(g/cm^(3))に対する百分率として算出される相対密度が85%以上であり、
バルク抵抗値が1.0×10^(-2)Ωcm以下であり、
銅系金属相の平均粒径が0.5μm?10.0μmであるスパッタリングターゲット材。
【数1】

(式中、C(Cu)、C(Cu_(2)O)はそれぞれスパッタリングターゲット材中の銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)であり、ρ(Cu)、ρ(Cu_(2)O)はそれぞれ銅または銅合金の密度、酸化物の密度である。銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)は、実測された焼結体中の酸素が全て酸化銅(I)または銅合金酸化物を形成するものと仮定して算出する。)
【請求項2】
銅系金属相が銅相、またはニッケル、チタンのうち少なくとも一つを含む銅合金相である請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項3】
銅系金属相が銅-ニッケル合金相または銅-チタン合金相である請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項4】
酸化物相が酸化銅相または銅合金酸化物相である請求項1?請求項3いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項5】
銅合金酸化物相が、ニッケル、チタンのうち少なくとも一つを含む請求項1?請求項4いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項6】
銅合金酸化物相が、銅-ニッケル合金酸化物相または銅-チタン合金酸化物相である請求項1?請求項4いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項7】
ニッケル含有量が61.0原子%以下であり、チタン含有量が7.50原子%以下である請求項2?請求項6いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項8】
酸化物相の平均粒径が0.05μm?7.0μmである請求項1?請求項7いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項9】
スパッタリングターゲット材の断面観察において、60μm×60μmの範囲における銅系金属相の面積比が0.32以上である請求項1?請求項8いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項10】
直流電源による放電に用いる請求項1?請求項9いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項11】
黒化層を形成するために用いる請求項1?請求項10いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項12】
請求項1?請求項11いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
銅粉および/または銅合金粉、もしくは銅粉および銅合金を形成するための銅以外の金属粉と、酸化物粉とを混合する工程と、
真空雰囲気下で、銅または銅合金の融点よりも450℃?200℃低い温度範囲内の焼結温度で焼結する工程を含むスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項13】
銅合金粉がニッケル、チタンのうち少なくとも一つを含む請求項12に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項14】
銅合金粉が銅-ニッケル合金粉、または銅-チタン合金粉である請求項12または請求項13に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項15】
銅合金を形成するための銅以外の金属粉がニッケル粉、チタン粉のうち少なくとも一つを含む請求項12に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項16】
酸化物粉が酸化銅粉、または銅合金酸化物粉である請求項12?請求項15いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項17】
酸化物粉がニッケル、チタンのうち少なくとも一つを含む銅合金酸化物粉である請求項12?請求項15いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項18】
酸化物粉が銅-ニッケル合金酸化物粉または銅-チタン合金酸化物粉である請求項12?請求項15いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項19】
焼結は通電焼結法による請求項12?請求項18いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?18に係る特許に対して平成28年6月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(特許法第36条第6項第2号)
請求項1に記載された「相対密度」は明確でないため、請求項1?18に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してなされたものである。
(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号及び第2項)
・刊行物1:特開2010-248627号公報(甲第1号証)
・刊行物2:特開2008-277685号公報(甲第2号証)
・刊行物3:特開2000-313905号公報(甲第3号証)
請求項1、2、4に係る発明は、刊行物3の記載を参酌すれば、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものである。また、請求項10に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
また、請求項1、2、4、10に係る発明は、刊行物1及び3の記載を参酌すれば、刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものである。また、請求項1、2、4、10、12、16に係る発明は、刊行物2に記載された発明及び刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3 取消理由に対する当審の判断
(1)取消理由1(特許法第36条第6項第2号)
ア 訂正後の請求項1には、「相対密度が85%以上」との発明特定事項を含む「スパッタリングターゲット材」の発明が記載されている。
そして、「相対密度」といった特性を用いて物を特定しようとする発明が明確であるためには、当該特性の定義及び試験・測定方法が、JIS等の標準的なものにより定められたものであること、当該技術分野において当業者に慣用されているものであること、慣用されていないにしても当業者が当該特性の定義及び試験・測定方法を理解することができること、あるいは、発明の詳細な説明に当該特性の定義及び試験・測定方法が明確に記載されていることのいずれかが必要といえる。
そこで検討すると、請求項1には、「相対密度」に関して、「スパッタリングターゲット材の重量(g)をその体積(cm^(3))で除し、下記理論式(数1)に基づく理論密度ρ(g/cm^(3))に対する百分率として算出される相対密度」であって、理論密度の理論式が、
「【数1】

(式中、C(Cu)、C(Cu_(2)O)はそれぞれスパッタリングターゲット材中の銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)であり、ρ(Cu)、ρ(Cu_(2)O)はそれぞれ銅または銅合金の密度、酸化物の密度である。銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)は、実測された焼結体中の酸素が全て酸化銅(I)または銅合金酸化物を形成するものと仮定して算出する。)」であることが記載されている。
また、焼結体中の酸素量の測定に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0031】には、「焼結体の表面を機械加工により削り、得られた切粉から酸素窒素分析装置(EMGA-550/(株)堀場製作所製)を用いて、酸素含有量を測定した。」と記載されている。
さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0042】に「図2に実施例4のスパッタリングターゲット材の断面を観察した結果を示す。図2の黒色に見える部分が銅とニッケルとの合金相(銅系金属相)であり、それ以外の部分が酸化物相である。この酸化物相には、EDSスペクトルとEBSDパターンの結果より、酸化ニッケル相も含まれていると判明した。」と記載されているように、銅合金酸化物相の組成は、EDSスペクトルとEBSDパターンから同定することが記載されている。
そうしてみると、請求項1に記載された「相対密度」は、「下記理論式(数1)に基づく理論密度ρ(g/cm^(3))に対する百分率として算出される相対密度」であるところ、この「理論密度」に関して、スパッタリングターゲット中の金属が銅のみである場合の「理論密度」は、酸素窒素分析装置を用いて実測された焼結体中の酸素が、全て酸化銅(I)を形成するものとして、銅相の含有量であるC(Cu)と酸化銅(I)相の含有量であるC(Cu_(2)O)が算出されると共に、銅の密度ρ(Cu)と酸化銅(I)の密度ρ(Cu_(2)O)を用いて、上記理論式によって算出されることが、本件特許明細書の記載から明らかである。
また、スパッタリングターゲット中の金属が銅合金である場合の「理論密度」は、EDSスペクトルとEBSDパターンから同定された銅合金酸化物相の組成を用いて、さらに、酸素窒素分析装置を用いて実測された焼結体中の酸素が、全て前記銅合金酸化物を形成するものとして、銅合金酸化物相の含有量であるC(Cu_(2)O)が算出され、さらに、銅合金の原料の残部が銅合金相を形成するものとして、銅合金相の含有量であるC(Cu)及び銅合金相の組成が算出されると共に、それぞれの組成に応じた銅合金の密度ρ(Cu)と銅合金酸化物の密度ρ(Cu_(2)O)を用いて、上記理論式によって理論密度ρが算出されることが、本件特許明細書の記載から明らかである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当該特性の定義及び試験・測定方法が明確に記載されているから、「相対密度が85%以上」との発明特定事項を含む本件発明1は明確である。
本件発明1を引用する本件発明2?18についても同様に明確である。
以上のとおり、本件発明1?18は、明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

イ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、実施例4及び5は、ニッケル粉と酸化銅(II)粉を原料としていることから、「実測された焼結体中の酸素が全て酸化銅(I)または銅合金酸化物を形成するものと仮定して算出する」との記載の意味が不明であるし、実施例4及び5にはニッケルが含まれていることから、「銅合金酸化物」には、銅-ニッケル合金の酸化物が含まれていると考えられるが、(数1)には銅合金酸化物を表す項は含まれていないため、「理論密度」が不明確である旨を主張している(意見書第2頁第16行?第4頁第15行)。
しかしながら、上記アで検討したとおり、銅系金属相が銅合金である場合に、「実測された焼結体中の酸素が全て酸化銅(I)または銅合金酸化物を形成するものと仮定して算出する」との記載は、実測された焼結体中の酸素が全て銅合金酸化物を形成するものと仮定して算出することを示していることは明らかであるし、また、【数1】の理論式の付記によれば、C(Cu_(2)O)及びρ(Cu_(2)O)は、それぞれ、銅合金酸化物の含有量及び密度も示していることが明らかであるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)無効理由2(特許法第29条第1項第3号及び第2項)
ア 刊行物に記載された発明
(ア)刊行物1(特開2010-248627号公報)
刊行物1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審が付した。以下、同様。)
「【0016】
ターゲットの製造方法については種々あるが、一般にターゲットに要求される高純度、均一組織、高密度を達成できるものであれば良い。特に、組織の均一性の点から粉末冶金法が適しており、例えば、熱間静水圧プレス(HIP)やホットプレスによる焼結が適用できる。なお、スパッタリングターゲットとして安定して使用可能な相対密度98%以上を得るため、焼結時の加圧圧力は20MPa以上、焼結温度はCu、B、Bと化合物を発現する元素およびB化合物が溶融しない範囲であれば高い程良く、500?1000℃とすることが望ましい。」
「【0019】
・・・また、使用するCu粉末としては、加熱処理による酸素導入において酸素量の制御がしやすいため、粒度分布(d50)が50?150μmのものを用いるのが好ましい。
また、添加元素の粉末としては、Cu中に均一に分散させるためにはCu粉末と同程度の粒度分布の粉末を用いることが好ましく、粒度分布(d50)が5?200μmのものを用いるのが好ましい。」
「【実施例1】
【0021】
純度99.9%、酸素含有量520質量ppm、粒度分布(d50)が100μmのCu粉末を、体積百分率で酸素濃度19%の酸素含有雰囲気中(大気中)で、表1に示す各加熱温度、加熱時間で加熱処理した粉末を作製した。得られた各粉末の酸素含有量を非分散赤外吸引法で測定した結果を表1に示す。また、添加元素粉末として、Si粉末(d50=110μm)、Ti粉末(d50=34μm)、Mo粉末(d50=100μm)、Ni粉末(平均粒径d50=88μm)、B粉末(d50=21μm)を準備した。上記で得られた酸素導入したCu粉末および添加元素粉末を、表2に示す割合で混合して、軟鋼製の加圧容器に充填した後、温度950℃、圧力120MPa、1時間の条件で熱間静水圧プレス(HIP)による加圧焼結を施して酸素含有Cu合金焼結体を作製した。その後、得られた焼結体を機械加工して、直径164mm×厚さ5mmのスパッタリングターゲットを得た。また、スパッタリングターゲット中の酸素含有量を非分散赤外吸引法により測定した。
・・・
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
次に、上記で作製した試料1?12のスパッタリングターゲットを使用して25mm×50mmのガラス基板(コーニング1737)上に、Arガス雰囲気中でスパッタリングし、膜厚200nmの酸素含有Cu合金薄膜およびCu薄膜を形成した。
【0027】
次に、上記で形成した酸素含有Cu合金薄膜およびCu薄膜に関して以下の評価を行った。
(1)比抵抗測定
・・・結果を表3に示す。
(2)密着性試験
・・・結果を表3に示す。
【0028】
【表3】



上記【実施例1】の記載事項によれば、刊行物1には、「試料No.7」に注目すると、B0.5原子%、Ni0.5原子%、酸素7.4原子%、残部Cuの「ターゲット組成」からなる「スパッタリングターゲット」であり、「粒度分布(d50)が100μm」の「酸素導入したCu粉末」と「Ni粉末(平均粒径d50=88μm)」と「B粉末(d50=21μm)」を「混合」して「熱間静水圧プレス(HIP)による加圧焼結を施し」た「酸素含有Cu合金焼結体」からなる「スパッタリングターゲット」が記載されているといえる。また、【0016】の上記記載事項によれば、上記「スパッタリングターゲット」は、「相対密度98%以上」といえる。
これら記載を本件発明1の記載ぶりに則して整理すると、刊行物1には、
「酸素導入したCu粉末(平均粒径d50=100μm)とNi粉末(d50=88μm)とB粉末(d50=21μm)を混合して熱間静水圧プレス(HIP)による加圧焼結を施した酸素含有Cu合金焼結体からなり、B0.5原子%、Ni0.5原子%、酸素7.4原子%、残部Cuのターゲット組成からなり、相対密度が98%以上であるスパッタリングターゲット」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

(イ)刊行物2(特開2008-277685号公報)
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
「【0011】
純度:99.99質量%の純Cu粉末、Ni粉末、Co粉末、Zn粉末およびCuO粉末を用意し、これら原料粉末を表1?2に示される配合割合で配合し、ボールミルで混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を温度:700℃、圧力:40トンに保持することによりホットプレスし、得られたホットプレス体を機械加工して直径:152mm、厚さ:12mmの寸法を有し表1?2に示される成分組成を有する本発明銅合金スパッタリングターゲット(以下、本発明ターゲットという)1?24、比較銅合金スパッタリングターゲット(以下、比較ターゲットという)1?6および純銅からなるスパッタリングターゲット(以下、従来ターゲットという)1を作製した。」
「【0013】
・・・
本発明ターゲット1?24、比較ターゲット1?6および従来ターゲット1を無酸素銅製バッキングプレートにはんだ付けして得られたバッキングプレート付きターゲットを、ターゲットとガラス基板およびターゲットとアモルファスSiを成膜したガラス基板との距離が70mmとなるようにスパッタリング装置にセットし、
電源:直流方式、
スパッタパワー:600W、
到達真空度:4×10^(-5)Pa、
雰囲気ガス組成:Ar、
Arガス圧:0.67Pa、
ガラス基板加熱温度:150℃、
の条件で1分間成膜し、ガラス基板およびアモルファスSiを成膜したガラス基板の表面に、厚さ:300nmを有し、表3?4に示される成分組成を有する本発明銅合金膜1?24、比較銅合金膜1?6および従来銅合金膜1を形成した。」
ウ 「【0016】
【表2】



上記記載事項によれば、刊行物2には、「ターゲット24」に注目すると、酸素6.0原子%、Ni0.5原子%、Co0.8原子%、Zn1.5原子%、残部Cu及び不可避不純物の「ターゲット成分組成」からなる「銅合金スパッタリングターゲット」であって、「純Cu粉末、Ni粉末、Co粉末、Zn粉末およびCuO粉末」を「配合」した「混合粉末」を「温度:700℃、圧力:40トン」で「ホットプレス」して作製された「銅合金スパッタリングターゲット」が記載されているといえる。
これら記載を本件発明1の記載ぶりに則して整理すると、刊行物2には、
「純Cu粉末、Ni粉末、Co粉末、Zn粉末およびCuO粉末を配合した混合粉末をホットプレスして作製された銅合金スパッタリングターゲットからなり、酸素6.0原子%、Ni0.5原子%、Co0.8原子%、Zn1.5原子%、残部Cu及び不可避不純物のターゲット成分組成からなる銅合金スパッタリングターゲット」の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているといえる。

(ウ)刊行物3(特開2000-313905号公報)
刊行物3には、以下の事項が記載されている。
「【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、等方加圧焼結体にあり、好ましくは第一酸化銅(Cu_(2)O)を5?80体積%含み、残部が銅(Cu)と不可避的不純物からなり、前記Cu_(2)O相及びCu相が分散した組織を有し、室温から300℃における熱膨張係数が5×10^(-6)?17×10^(-6)/℃、熱伝導率が30?375W/m・Kであり、また導電率が10?85%IACSであることを特徴とする銅複合材料にある。
「【0033】原料粉の混合は、Vミキサー,ポットミルあるいはメカニカルアロイング等によって行われるが、原料粉末の粒径は混合時やHIP焼結後のCu_(2)Oの分散性に影響を及ぼすので、Cu粉末は100μm以下、Cu_(2)O及びCuO粉末の粒径は10μm以下、特に1?2μmが好ましい。」
「【0038】本発明において、・・・焼結後のCu_(2)O粒子は不規則な形状であるが、焼結前の粒子が連なっているので、より高倍率で見ることにより、焼結前の粒子径を見ることができる。Cu_(2)O相は10μm以下が好ましい。」
「【0042】
【発明の実施の形態】(実施例1)原料粉として、75μm以下の電解Cu粉末と純度3N,粒径1?2μmのCu_(2)O粉末を用いた。Cu粉末とCu_(2)O粉末を表2(当審注:「表1」の誤記と認められる。)に示す比率で150g調合した後、スチールボールを入れた乾式のポットミル中で10時間以上混合した。混合粉末を直径30mm,高さ50mmの鉄製容器に注入し、400℃で真空脱気・溶接密封後に、HIP焼結した。なお、HIPは加圧力を1000気圧とし、Cu_(2)O含有量に応じて800℃?1000℃の間で変化させ、各温度で3時間保持した。その後、組織観察,密度、熱膨張係数,熱伝導率、導電率及びヴィッカース硬さの測定に供した。熱膨張係数は室温から300℃の温度範囲でTMA(Thermal Mechanical Analysis)装置を用いて行い、熱伝導率はレーザーフラッシュ法、導電率はシグマテスターを用い測定した。その結果を表1に併記した。・・・」
「【0046】
【表1】

【0047】また、密度はいずれの焼結体とも理論密度の95%以上であり、常圧焼結の場合に比べて高密度が得られた。特に、HIPの効果はCu_(2)O量が多いほど顕著であった。」
「【0054】図2にミクロ組織(200倍)を示す。写真から明らかなように、実施例1の図1に比べて、Cu_(2)Oは微細であり、粒径10μm以下のCu_(2)Oが均一分散している。・・・」

上記段落【0012】、【0033】、【0042】、【0046】、【0047】の記載事項によれば、刊行物3には、Cu_(2)Oを5?80体積%含み、残部がCuと不可避的不純物からなり、前記Cu_(2)O相及びCu相が分散した組織を有し、導電率が10?85%IACSである銅複合材料に関して、原料粉末として、粒径100μm以下のCu粉末を用いることは記載されている。

イ 本件発明1について
本件発明1と刊行物1発明あるいは刊行物2発明を対比すると、本件発明1が「銅系金属相の平均粒径が0.5μm?10.0μmである」との事項を有している点で相違する。
ここで、特許異議申立人は、刊行物1の「添加元素の粉末としては、Cu中に均一に分散させるためにはCu粉末と同程度の粒度分布の粉末を用いることが好ましく、粒度分布(d50)が5?200μmのものを用いるのが好ましい。」(段落【0019】)との記載を根拠として、間接的にCu粉末の粒度分布(d50)が5?200μmであることが記載されているから、本件発明1は刊行物1に記載された発明であると主張し、また、刊行物3の「Cu_(2)O相は10μm以下が好ましい。」(段落【0038】)及び「図2にミクロ組織(200倍)を示す。写真から明らかなように、実施例1の図1に比べて、Cu_(2)Oは微細であり、粒径10μm以下のCu_(2)Oが均一分散している。」(段落【0054】)との記載を根拠にして、刊行物1発明において、Cu粉末を同程度の粒径とすることに困難性はないから、本件発明1は、刊行物1及び3に記載された発明から当業者が容易になし得たものであると主張している(意見書第4頁第16行?第6頁第15行)。
しかしながら、刊行物1には、「使用するCu粉末としては、加熱処理による酸素導入において酸素量の制御がしやすいため、粒度分布(d50)が50?150μmのものを用いるのが好ましい。」(段落【0019】)と記載されていることから、添加元素の粉末の粒度分布(d50)を参酌しても、間接的にCu粉末の粒度分布(d50)を5?10μmとすることが記載されているとはいえない。
また、刊行物1に記載された添加元素の粉末の粒度分布や、刊行物3のCu_(2)Oの粒径を参酌したとしても、刊行物1発明及び刊行物2発明において、Cu相の平均粒径を0.5?10.0μmとすることが当業者にとって容易になし得るものともいえない。
さらに、本件発明1は、銅系金属相の平均粒径を0.5μm?10.0μmとすることで、スパッタリングターゲット材を製造する際の焼結を完全とし、スパッタリングターゲット材の酸素含有量の変動を抑え、銅系合金相のネットワークによる導電経路を形成やすくして、スパッタリング中の異常放電を抑制する効果を奏する(本件特許明細書段落【0014】)ものである。
そうしてみると、本件発明1は、刊行物1発明、刊行物2発明、及び、刊行物3に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものでない。

ウ 本件発明2、4、10、12、16について
本件発明2、4、10、12、16は、本件発明1をさらに限定するものであるから、上記イで検討したと同様に、刊行物1発明であるとも、刊行物2発明であるともいえないし、刊行物1発明、刊行物2発明、及び、刊行物3に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものでない。

エ まとめ
本件発明1、2、4、10、12、16に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明といえないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、本件発明1、2、4、10、12、16に係る発明は、刊行物1?3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定を違反しているといえない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
(1)特許法第36条第6項第2号
ア 特許異議申立人は、訂正前の請求項1に記載された「混合組織」という用語の意味が明確でないし、「バルク抵抗値」の測定温度が特定されていないため、「バルク抵抗値」という用語も明確でないから、請求項1?18の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件に違反している旨を主張している(特許異議申立書第9頁第19行?第10頁第24行)。
しかしながら、「混合組織」は、「混じりあっている組織」を意味することは明らかであるから、当該用語の意味は明確である。
また、「バルク抵抗値」の測定方法に関して、発明の詳細な説明の段落【0035】には、「バルク抵抗値:低抵抗率計(ロレスタ-HP/(株)三菱化学アナリテック製)と四探針プローブを用いて、加工後のスパッタリングターゲット材の体積抵抗値を測定した。」と記載され、当該測定が室温で行われることは技術常識である(必要であれば、特開2009-132998号公報の段落【0037】、特開2005-72151号公報の段落【0072】参照)から、「バルク抵抗値」という用語も明確である。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)特許法第36条第6項第1号
ア 特許異議申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に具体的に記載された、低いバルク抵抗値を実現できる混合組織は、銅系金属相によるネットワークが形成された場合のみであり、その他の形態については全く記載されていないから、本件発明1?18は、発明の詳細な説明に記載されていない発明を包含するため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に違反している旨を主張している(特許異議申立書第10頁第25行?第11頁第16行)。
また、特許異議申立人は、本件発明1?18は、酸化物相の種類や金属相と酸化物の割合を特定することなく、酸素含有量だけを特定しているため、例えば、酸化銅(I)を使用した酸素含有量が30原子%の材料も含み得るが、発明の詳細な説明には、酸化銅(I)を使用した酸素含有量が30原子%の材料が、「直流電源による放電が可能となる、銅または銅合金と酸化物を含有するスパッタリングターゲット材を提供する」(段落【0008】)との課題を解決できることは記載されていないため、本件発明1?18は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に違反している旨を主張している(特許異議申立書第11頁第17行?第12頁第4行)。
しかしながら、「直流電源による放電が可能となる、銅または銅合金と酸化物を含有するスパッタリングターゲット材を提供する」(段落【0008】)との課題は、本件特許明細書の段落【0010】及び【0013】の記載からみて、本件発明1で特定する、「酸素含有量が5原子%?30原子%」であり、「バルク抵抗値が1.0×10^(-2)Ωcm以下」である「銅系金属相と酸化物相との混合組織」を有することによって達成されるものと認められる。
そうしてみると、本件発明1?18において、具体的な混合組織が特定されていないとしても、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に違反しているとまではいえないし、また、本件発明1?18において、酸化物相の種類や金属相と酸化物の割合を特定することなく、「酸素含有量が5原子%?30原子%」を特定されているとしても、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に違反しているとまではいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

イ 特許異議申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、通電焼結法によって本件発明のスパッタリングターゲットを製造することが具体的に記載されているのみであり、通電焼結法以外の製造方法が記載されていないため、通電焼結法以外の製造方法を含み得る本件発明12?18は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に違反している旨を主張している(特許異議申立書第11頁第17行?第12頁第4行)。
しかしながら、刊行物3の実施例3に、Cu粉末とCu_(2)O粉末の混合粉末をHIP焼結した密度95%以上の焼結体の導電率が14%IACS(体積抵抗率は約12×10^(-6)Ωcm)であることが記載されているように、通電焼結法以外の製造方法でも、バルク抵抗値が1.0×10^(-2)Ωcm以下の銅系金属相と酸化物相からなる焼結体を製造できることは、本件特許に係る出願時の技術常識であるから、本件発明12?18が通電焼結法以外の製造方法を含んでいるとしても、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に違反しているとまではいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅系金属相と酸化物相との混合組織を有し、
酸素含有量が5原子%?30原子%で、
スパッタリングターゲット材の重量(g)をその体積(cm^(3))で除し,下記理論式(数1)に基づく理論密度ρ(g/cm^(3))に対する百分率として算出される相対密度が85%以上であり、
バルク抵抗値が1.0×10^(-2)Ωcm以下であり、
銅系金属相の平均粒径が0.5μm?10.0μmであるスパッタリングターゲット材。
【数1】

(式中、C(Cu)、C(Cu_(2)O)はそれぞれスパッタリングターゲット材中の銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)であり、ρ(Cu)、ρ(Cu_(2)O)はそれぞれ銅または銅合金の密度、酸化物の密度である。銅系金属相と酸化物相との含有量(重量%)は、実測された焼結体中の酸素が全て酸化銅(I)または銅合金酸化物を形成するものと仮定して算出する。)
【請求項2】
銅系金属相が銅相、またはニッケル、チタンのうち少なくとも一つを含む銅合金相である請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項3】
銅系金属相が銅-ニッケル合金相または銅-チタン合金相である請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項4】
酸化物相が酸化銅相または銅合金酸化物相である請求項1?請求項3いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項5】
銅合金酸化物相が、ニッケル、チタンのうち少なくとも一つを含む請求項1?請求項4いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項6】
銅合金酸化物相が、銅-ニッケル合金酸化物相または銅-チタン合金酸化物相である請求項1?請求項4いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項7】
ニッケル含有量が61.0原子%以下であり、チタン含有量が7.50原子%以下である請求項2?請求項6いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項8】
酸化物相の平均粒径が0.05μm?7.0μmである請求項1?請求項7いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項9】
スパッタリングターゲット材の断面観察において、60μm×60μmの範囲における銅系金属相の面積比が0.32以上である請求項1?請求項8いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項10】
直流電源による放電に用いる請求項1?請求項9いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項11】
黒化層を形成するために用いる請求項1?請求項10いずれかに記載のスパッタリングターゲット材。
【請求項12】
請求項1?請求項11いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
銅粉および/または銅合金粉、もしくは銅粉および銅合金を形成するための銅以外の金属粉と、酸化物粉とを混合する工程と、
真空雰囲気下で、銅または銅合金の融点よりも450℃?200℃低い温度範囲内の焼結温度で焼結する工程を含むスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項13】
銅合金粉がニッケル、チタンのうち少なくとも一つを含む請求項12に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項14】
銅合金粉が銅-ニッケル合金粉、または銅-チタン合金粉である請求項12または請求項13に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項15】
銅合金を形成するための銅以外の金属粉がニッケル粉、チタン粉のうち少なくとも一つを含む請求項12に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項16】
酸化物粉が酸化銅粉、または銅合金酸化物粉である請求項12?請求項15いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項17】
酸化物粉がニッケル、チタンのうち少なくとも一つを含む銅合金酸化物粉である請求項12?請求項15いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項18】
酸化物粉が銅-ニッケル合金酸化物粉または銅-チタン合金酸化物粉である請求項12?請求項15いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
【請求項19】
焼結は通電焼結法による請求項12?請求項18いずれかに記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-13 
出願番号 特願2015-533359(P2015-533359)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C23C)
P 1 652・ 113- YAA (C23C)
P 1 652・ 537- YAA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國方 恭子  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 宮澤 尚之
永田 史泰
登録日 2015-09-18 
登録番号 特許第5808513号(P5808513)
権利者 三井金属鉱業株式会社
発明の名称 スパッタリングターゲット材  
代理人 特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ  
代理人 近藤 惠嗣  
代理人 特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ  

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