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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 一部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 一部申し立て 5項独立特許用件  C08J
管理番号 1327859
異議申立番号 異議2016-700402  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-09 
確定日 2017-03-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5809019号発明「炭素短繊維、炭素短繊維の製造方法、炭素短繊維強化樹脂組成物、及び炭素短繊維強化セメント組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5809019号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6,16-20〕について訂正することを認める。 特許第5809019号の請求項7に係る特許を維持する。 特許第5809019号の請求項1ないし5に係る特許に対する異議申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第5809019号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2011-232144号、以下「本願」という。)は、平成23年10月21日に出願人財団法人生産開発科学研究所によりされた特許出願であり、平成26年10月14日に承継人ウイスカ株式会社への名義変更がされた後、平成27年9月18日に特許権の設定登録がされたものである。

2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成28年5月9日付けで特許異議申立人松山香代(以下「申立人」という。)により「特許第5809019号の特許請求の範囲の請求項1ないし5及び7に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がなされた。

3.以降の経緯
本件異議申立後の経緯は以下のとおりである。
平成28年 9月13日付け 取消理由通知
平成28年11月16日 意見書(特許権者)・訂正請求書
平成28年11月25日付け 通知書(申立人あて)
平成28年12月27日 意見書(申立人)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第4号証を提示し、概略、以下の取消理由1ないし4が存するとしている。

・取消理由1
本件発明1ないし3は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・取消理由2
本件発明4及び5は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、また、本件発明7は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・取消理由3
本件特許の請求項1ないし5及び7に関して、同各項の記載が不備であり、請求項1ないし5及び7の各記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項1ないし5及び7に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・取消理由4
本件特許の請求項1ないし5及び7に関して、同各項の記載が不備であり、請求項1ないし5及び7の各記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項1ないし5に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:Journal of Hazardous Materials、第173号、2010年、p.211-222
甲第2号証:特開平10-280246号公報
甲第3号証:特開平10-87872号公報
甲第4号証:特開平11-290822号公報
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲4」と略していう。)

第3 平成28年11月16日付け訂正請求の適否

1.訂正請求の内容
上記平成28年11月16日付け訂正請求では、本件特許の特許請求の範囲を、請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6及び16?20について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであり、以下の(ア)ないし(エ)の訂正事項を含むものである。

(ア)請求項1?5に係る訂正事項1?5
特許請求の範囲の請求項1?5をそれぞれ削除する。

(イ)請求項6に係る訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項6について、訂正前の請求項1の発明特定事項を取り込んで、「炭素短繊維表面に、炭素-水素結合、炭素-窒素の3重結合、及び、炭素-酸素の2重結合の内の2種以上の結合が化学修飾により導入されている、重量平均繊維長が30μm?1500μmである炭素短繊維。」という新たな請求項6に訂正するとともに、訂正前の請求項2の発明特定事項を取り込んで、「炭素短繊維表面に、炭素-水素結合、炭素-窒素の3重結合、及び、炭素-酸素の2重結合の3種の結合が化学修飾により導入されている、重量平均繊維長が30μm?1500μmである炭素短繊維。」という新たな請求項18に訂正する。

(ウ)請求項16に係る訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項16を削除し、訂正前の特許請求の範囲の請求項16において「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の炭素短繊維」とある記載を、「請求項6又は18に記載の炭素短繊維」と修正した新たな請求項19を追加する訂正を行う。

(エ)請求項17に係る訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項17を削除し、訂正前の特許請求の範囲の請求項17において「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の炭素短繊維」とある記載を、「請求項6又は18に記載の炭素短繊維」と修正した新たな請求項20を追加する訂正を行う。

2.検討
なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし17を「旧請求項1」ないし「旧請求項17」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし20を「新請求項1」ないし「新請求項20」という。

(1)訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。
上記訂正事項1ないし5は、いずれも旧請求項1ないし5を削除するものであるから、各請求項に係る特許請求の範囲を減縮するものと認められる。
上記訂正事項6は、旧請求項1ないし5を引用する旧請求項6において、それぞれ、旧請求項1を引用する部分を新請求項6とし、旧請求項2を引用する部分を新請求項18とするもの、すなわち、旧請求項6における旧請求項3ないし5を引用する部分が削除されているものと認められるから、特許請求の範囲を減縮するものと認められる。
上記訂正事項7及び8は、いずれも、旧請求項16又は17につき、旧請求項1ないし6を引用していたものを上記訂正事項6により特許請求の範囲が減縮された新請求項6及び18を引用するものとして、新請求項19又は20とした上で、旧請求項16及び17を削除したものであるから、特許請求の範囲を減縮するものと認められる。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものであって、新請求項1ないし6及び16ないし20についても各請求項に係る特許請求の範囲が減縮されているものと認められる。
してみると、上記訂正事項1ないし8による訂正により、新請求項1ないし6及び16ないし20の特許請求の範囲が減縮されていることが明らかであって、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、上記訂正事項1ないし8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし8による訂正により、新請求項1ないし6及び16ないし20の特許請求の範囲が減縮されていることが明らかであるから、上記訂正事項1ないし8による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものであって、新請求項1ないし6及び16ないし20について各請求項に係る特許請求の範囲が減縮されているものと認められる。
してみると、上記訂正事項1ないし8による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件
上記第1の2.に示したとおり、本件異議申立は旧請求項1ないし5及び7につきされたものであるから、本件訂正により訂正された新請求項のうち、異議申立がされていない新請求項は、新請求項6及び16ないし20である。
そして、上記(1)で説示したとおり、新請求項6及び16ないし20に係る訂正事項6ないし8による訂正は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、その発明特定事項の全部が削除されていない新請求項6及び18ないし20に係る各発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであることを要する(特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項)ので以下検討する。

ア.新請求項6に係る発明について
本件異議申立において提示された上記甲1ないし4を検討しても、炭素(短)繊維の重量平均繊維長が30μm?1500μmであること又は炭素(短)繊維の重量平均繊維長が30μm?1500μmであるべきことに係る開示が存するものとは認められない。
また、炭素(短)繊維の重量平均繊維長が30μm?1500μmであること又は炭素(短)繊維の重量平均繊維長が30μm?1500μmであるべきことに係る当業者の技術常識又は技術課題が存するものとも認められない。
してみると、新請求項6に係る発明につき、その新規性又は進歩性が欠如するものと認めることはできない。
さらに、新請求項6の記載及び本件特許に係る明細書の記載を検討しても、特許法第36条第4項第1号の規定又は同法同条第6項の規定を満たしていないとすべき記載不備が存するものとも認められない。
したがって、新請求項6に係る発明につき、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものでないとすべき理由が存するものとは認められない。

イ.新請求項18に係る発明について
新請求項18に係る発明は、上記ア.で検討した新請求項6に係る発明において「2種以上の結合」とされていた事項を「3種の結合」としたものであり、その余の点で一致するものであるから、上記ア.で説示した理由と同一の理由により、新請求項18に係る発明につき、その新規性又は進歩性が欠如するものと認めることはできない。
さらに、新請求項18の記載及び本件特許に係る明細書の記載を検討しても、特許法第36条第4項第1号の規定又は同法同条第6項の規定を満たしていないとすべき記載不備が存するものとも認められない。
したがって、新請求項18に係る発明につき、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものでないとすべき理由が存するものとは認められない。

ウ.新請求項19及び20に係る各発明について
新請求項19に係る発明及び新請求項20に係る発明につき併せて検討すると、各発明は、それぞれ、新請求項6又は18を引用する組成物に係る発明であるところ、上記ア.及びイ.で説示したとおり、新請求項6又は18に係る発明につき、その新規性又は進歩性が欠如するものと認めることはできないのであるから、新請求項19に係る発明及び新請求項20に係る発明についても、その新規性又は進歩性が欠如するものと認めることはできない。
また、新請求項19又は20の記載及び本件特許に係る明細書の記載を検討しても、特許法第36条第4項第1号の規定又は同法同条第6項の規定を満たしていないとすべき記載不備が存するものとも認められない。
したがって、新請求項19又は20に係る各発明につき、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものでないとすべき理由が存するものとは認められない。

エ.小括
以上のとおりであるから、新請求項6及び18ないし20に係る各発明は、いずれも、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものと認められる。

(4)訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において(読み替えて)準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6,16-20〕について訂正を認める。

第4 本件特許に係る発明
上記第3で説示したとおり、上記本件訂正は適法であるから、本件特許の請求項1ないし20に係る発明は、訂正された請求項1ないし20にそれぞれ記載された事項で特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
炭素短繊維表面に、炭素-水素結合、炭素-窒素の3重結合、及び、炭素-酸素の2重結合の内の2種以上の結合が化学修飾により導入されている、重量平均繊維長が30μm?1500μmである炭素短繊維。
【請求項7】
炭素繊維強化樹脂複合材料を、常圧過熱水蒸気と接触下、分解ガスが充満する雰囲気で、前記複合材料中のマトリックス樹脂を300℃?600℃で加熱分解する工程を有し、
前記加熱分解工程において、前記複合材料中の炭素繊維の表面から前記マトリックス樹脂を除去し、露出した前記炭素繊維の表面を、前記常圧過熱水蒸気によって活性化させ、水素原子、窒素原子、及び酸素原子の内の1種以上の原子により化学修飾する、炭素短繊維の製造方法。
【請求項8】
前記加熱分解工程において、前記化学修飾により、炭素-水素結合、炭素-窒素結合、及び炭素-酸素結合の内の1種以上の結合を前記炭素繊維の表面に導入する、請求項7に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項9】
前記加熱分解工程において、前記炭素-水素結合、前記炭素-窒素結合、及び、前記炭素-酸素結合の3種の結合を前記炭素繊維の表面に導入する、請求項8に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項10】
前記炭素-窒素結合が3重結合であり、前記炭素-酸素結合が2重結合である、請求項8又は9に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項11】
前記加熱分解工程において、前記マトリックス樹脂の分解物の前記炭素繊維の表面への付着を抑制して、前記炭素繊維の表面の化学修飾を行う、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項12】
前記加熱分解工程において、前記炭素繊維強化樹脂複合材料を粉砕した粉砕物を、前記常圧過熱水蒸気と接触させる、請求項7乃至11のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項13】
前記炭素繊維強化樹脂複合材料が、炭素繊維プリプレグの硬化物である、請求項7乃至12のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項14】
前記炭素繊維強化樹脂複合材料のマトリックス樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項7乃至13のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項15】
前記常圧過熱水蒸気の温度が、200℃?600℃である、請求項7乃至14のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
(削除)
【請求項18】
炭素短繊維表面に、前記炭素-水素結合、前記炭素-窒素の3重結合、及び、前記炭素-酸素の2重結合の3種の結合が化学修飾により導入されている、重量平均繊維長が30μm?1500μmである炭素短繊維。
【請求項19】
請求項6又は18に記載の炭素短繊維と、樹脂と、を含む、炭素短繊維強化樹脂組成物。
【請求項20】
請求項6又は18に記載の炭素短繊維と、無機質セメントと、を含む、炭素短繊維強化セメント組成物。」
(以下、上記請求項6ないし15及び18ないし20に係る各発明につき、項番に従い「本件発明6」ないし「本件発明15」及び「本件発明18」ないし「本件発明20」という。また、併せて「本件発明」ということがある。)

第5 当審の判断

1.請求項1ないし5に係る異議申立について
本件異議申立に係る請求項1ないし5に対する申立は、上記第3及び第4で示したとおり、適法な訂正により請求項1ないし5の全ての内容が削除されたから、不適法なものであり、却下すべきものである。

2.請求項7に係る異議申立について

(1)取消理由2について
申立人が主張する本件発明7に対する取消理由2につき検討すると、上記甲3及び甲4には、いずれも「常圧過熱水蒸気」の存在下で炭素(短)繊維を化学修飾する点に係る開示がない。
したがって、上記甲3及び甲4に基づく取消理由2が成立するものとは認められない。
(なお、この理由につき先の取消理由通知では通知しなかった。)

(2)取消理由3について
申立人が主張する本件発明7(請求項7)に対する取消理由3につき本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明に基づき検討すると、炭素繊維の重量平均繊維長に係る規定がない請求項7に記載された事項を具備する方法の場合に、例えば、炭素繊維の重量平均繊維長により上記化学修飾が不可能となる等の本件発明7では本件発明の解決すべき課題を解決することができないとするような事項が存するものとは認められない。
したがって、請求項7に記載された本件発明7が、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとまでいうことはできない。
(なお、この理由についても先の取消理由通知では通知しなかった。)

(3)取消理由4について
申立人が主張する本件発明7(請求項7)に対する取消理由4につき検討すると、製造する炭素繊維につき「炭素短繊維」とする範囲につき明確でないからといって、本件発明7の「炭素短繊維の製造方法」につき明確でないとすべき事情が存するものとは認められない。
また、請求項6などの他の請求項の記載を参酌すると、本件発明でいう「炭素短繊維」とは、「重量平均繊維長が30μm?1500μm」のものを指すであろうことは、当業者が看取できるものと認められる。
したがって、請求項7の記載では、本件発明7が明確でないとまでいうことはできない。
(なお、この理由についても先の取消理由通知では通知しなかった。)

(4)小括
したがって、請求項7に係る発明につき、申立人が主張する取消理由2ないし4により、取り消すべきものとすることはできない。

3.その他の取消理由について
申立人は、平成28年12月27日付け意見書において、「請求項6の特許法第29条第2項(同法第113条第2号)違反の理由」及び「請求項18の特許法第29条第2項(同法第113条第2号)違反の理由」を主張している。
しかるに、上記「請求項6の特許法第29条第2項(同法第113条第2号)違反の理由」及び「請求項18の特許法第29条第2項(同法第113条第2号)違反の理由」は、当該「請求項6」及び「請求項18」がいずれも本件異議申立書において申し立てられていない旧請求項6に係る「重量平均繊維長が30μm?1500μmである」との事項を発明特定事項とするものであるから、これら2つの理由については、本件異議申立書において主張している取消理由でないことが明らかである。
したがって、上記「請求項6の特許法第29条第2項(同法第113条第2号)違反の理由」及び「請求項18の特許法第29条第2項(同法第113条第2号)違反の理由」については、採用することができない。

第6 むすび
以上のとおり、申立人が主張する取消理由2ないし4によって、本件の請求項7に係る発明についての特許につき、取り消すことはできない。
また、ほかに、本件の請求項7に係る発明についての特許につき、取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許に対する本件異議申立は、不適法なものであり、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
炭素短繊維表面に、炭素-水素結合、炭素-窒素の3重結合、及び、炭素-酸素の2重結合の内の2種以上の結合が化学修飾により導入されている、重量平均繊維長が30μm?1500μmである炭素短繊維。
【請求項7】
炭素繊維強化樹脂複合材料を、常圧過熱水蒸気と接触下、分解ガスが充満する雰囲気で、前記複合材料中のマトリックス樹脂を300℃?600℃で加熱分解する工程を有し、
前記加熱分解工程において、前記複合材料中の炭素繊維の表面から前記マトリックス樹脂を除去し、露出した前記炭素繊維の表面を、前記常圧過熱水蒸気によって活性化させ、水素原子、窒素原子、及び酸素原子の内の1種以上の原子により化学修飾する、炭素短繊維の製造方法。
【請求項8】
前記加熱分解工程において、前記化学修飾により、炭素-水素結合、炭素-窒素結合、及び炭素-酸素結合の内の1種以上の結合を前記炭素繊維の表面に導入する、請求項7に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項9】
前記加熱分解工程において、前記炭素-水素結合、前記炭素-窒素結合、及び、前記炭素-酸素結合の3種の結合を前記炭素繊維の表面に導入する、請求項8に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項10】
前記炭素-窒素結合が3重結合であり、前記炭素-酸素結合が2重結合である、請求項8又は9に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項11】
前記加熱分解工程において、前記マトリックス樹脂の分解物の前記炭素繊維の表面への付着を抑制して、前記炭素繊維の表面の化学修飾を行う、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項12】
前記加熱分解工程において、前記炭素繊維強化樹脂複合材料を粉砕した粉砕物を、前記常圧過熱水蒸気と接触させる、請求項7乃至11のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項13】
前記炭素繊維強化樹脂複合材料が、炭素繊維プリプレグの硬化物である、請求項7乃至12のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項14】
前記炭素繊維強化樹脂複合材料のマトリックス樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項7乃至13のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項15】
前記常圧過熱水蒸気の温度が、200℃?600℃である、請求項7乃至14のいずれか一項に記載の炭素短繊維の製造方法。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
(削除)
【請求項18】
炭素短繊維表面に、炭素-水素結合、炭素-窒素の3重結合、及び、炭素-酸素の2重結合の3種の結合が化学修飾により導入されている、重量平均繊維長が30μm?1500μmである炭素短繊維。
【請求項19】
請求項6又は18に記載の炭素短繊維と、樹脂と、を含む、炭素短繊維強化樹脂組成物。
【請求項20】
請求項6又は18に記載の炭素短繊維と、無機質セメントと、を含む、炭素短繊維強化セメント組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-06 
出願番号 特願2011-232144(P2011-232144)
審決分類 P 1 652・ 536- YAA (C08J)
P 1 652・ 121- YAA (C08J)
P 1 652・ 537- YAA (C08J)
P 1 652・ 113- YAA (C08J)
P 1 652・ 575- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加賀 直人  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 橋本 栄和
守安 智
登録日 2015-09-18 
登録番号 特許第5809019号(P5809019)
権利者 ウイスカ株式会社
発明の名称 炭素短繊維、炭素短繊維の製造方法、炭素短繊維強化樹脂組成物、及び炭素短繊維強化セメント組成物  
代理人 政木 良文  
代理人 政木 良文  

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