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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1327887
異議申立番号 異議2016-700233  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-18 
確定日 2017-03-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5784970号「液体調味料」の請求項1及び2に係る特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5784970号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。 特許第5784970号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5784970号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成27年7月31日付けでその特許権の設定登録がされ、特許異議申立人成田隆臣より特許異議の申立てがされ、平成28年5月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年7月15日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成28年8月9日に特許異議申立人より意見書の提出がされた。その後、平成28年9月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成28年11月24日に特許権者より意見書及び訂正の請求がされ、平成28年12月21日に特許異議申立人より意見書の提出がなされたものである。
なお、平成28年7月15日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の請求
1 訂正の内容
平成28年11月24日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5784970号の特許請求の範囲を、本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。

(1) 訂正事項1(請求項1に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1に「スクシノグリカンを含有することを特徴とするゴマダレ。」とあるのを、「スクシノグリカンを0.2?0.5質量%含有し、且つゴマ成分を0.1?20質量%含有することを特徴とするゴマダレ。」に訂正する。
(2) 訂正事項2(請求項2に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項2に「スクシノグリカンを含有することを特徴とするゴマダレの保存安定性向上方法。」とあるのを、「スクシノグリカンを0.2?0.5質量%含有することを特徴とする、ゴマ成分を0.1?20質量%含有するゴマダレの保存安定性向上方法。」に訂正する。

2 訂正の適否
(1) 訂正事項1
上記訂正事項1は、訂正前の「スクシノグリカンを含有」するという、含有量を何ら特定しないものを、「スクシノグリカンを0.2?0.5質量%含有」するとして、その含有量を特定するものであり、また、「ゴマダレ」が「スクシノグリカンを含有すること」のみを特定していたものを、更に「ゴマ成分を0.1?20質量%含有する」ことを特定するものであって、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項1は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項1において限定した事項は、本件特許明細書の「スクシノグリカンを用いたゴマだれは、0.2?0.5質量%の添加量(実施例25?27)で最も良い効果が得られていた。添加量が0.1質量%(比較例25)では分離が生じ、添加量0.7質量%(比較例26)ではゲル化した。」(【0051】)との記載及び「ゴマ成分の配合量は、たとえば、調味料の全体量に対して、0.1?30質量%の範囲で用いることが出来る。0.1質量%未満では、胡麻特有の風味に乏しく胡麻含有調味料として物足りなさを感じ、30質量%を超えると胡麻含有調味料の粘度が増大して、乳化液状ドレッシング様を呈さなくなってしまい容器の口から流れ出にくくなる。好ましくは5?20質量%である。」(【0023】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(2) 訂正事項2
上記訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正と実質的に同じ内容の訂正をしようとするものであるから、上記(1)のとおり、上記訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

3 まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項1及び2について訂正を認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
スクシノグリカンを0.2?0.5質量%含有し、且つゴマ成分を0.1?20質量%含有することを特徴とするゴマダレ。
【請求項2】
スクシノグリカンを0.2?0.5質量%含有することを特徴とする、ゴマ成分を0.1?20質量%含有するゴマダレの保存安定性向上方法。」

第4 取消理由の概要
平成28年5月13日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
[理由1]
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開平4-16161号公報(甲第4号証)
引用文献2 特開2010-154818号公報(甲第1号証)

[理由2]
本件特許の請求項1及び2の記載は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるから、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(なお、平成28年5月13日付け取消理由通知において、「理由2」には「本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」と記載されていたが、当該取消理由通知中の「理由2について」における具体的な指摘内容からみて、上記「第2号」は「第1号」の明らかな誤記であり、また、上記理由2に対する特許権者の意見書における応答内容も、実質的に特許法第36条第6項第1号違反に対する主張がされているから、上記のとおり特許法第36条第6項第1号違反の取消理由が通知されたものとして審理を進める。)

第5 取消理由についての判断
1 理由1について
上記引用文献1には、「胡麻ペーストおよび安定剤としてキサンタンガムおよび/またはカラギーナンを含有する酸性液状調味料。」という発明(以下「引用発明」という。)が記載されている(【特許請求の範囲】)。
そして、引用発明は、「上記胡麻ペーストと共にキサンタンガムおよび/またはカラギーナンを用いることにより、固形物の分散安定性に富み、過度の増粘を生じることなく流動性が良好な酸性液状調味料とすることができる。」(2頁左下欄6?10行)ものであって、「また、本発明においては、本発明の目的を損なわないかぎり、他の安定剤、例えばトラガントガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム等も単独であるいは2種以上を組み合わせ水相部の1原料として加えても差し支えない。」(2頁右下欄9?14行)ことが示唆されている。
一方、引用文献2には、増粘安定剤を含有する酸性水中油型乳化食品において、「本発明において、増粘安定剤とは参考文献(食品添加物表示の実務 日本食品添加物協会 平成19年5月30 日発行)に記載の増粘安定剤、およびこれに相当する物質のことであり、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、アゾトバクタービネランジーガム、アマシードガム、アーモンドガム、アラビアガム、ウェランガム、カシアガム、ガティガム、カラヤガム、キサンタンガム、グァーガム、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、ジェランガム、スクレロガム、セスバニアガム、タラガム、トラガントガム、トリアカンソスガム、納豆菌ガム、マクロホモプシスガム、ラムザンガムなどのガム質、カラギーナン、アウレオバシジウム培養液、アグロバクテリウムスクシノグリカン、アラビノガラクタン、アルギン酸、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アロエペラ抽出物、エレミ樹脂、オリゴグルコサミン、カードラン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キダチアロエ抽出物、キチン、キトサン、グァーガム酵素分解物、グルコサミン、酵母細胞壁、ダンマル樹脂、デキストラン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、トロロアオイ、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、プルラン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、モモ樹脂、レバンなどが挙げられる。」(【0014】)と記載され、引用発明に用い得る他の安定剤である「トラガントガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム」とともに「アグロバクテリウムスクシノグリカン」が列記され、「スクシノグリカン」は、「トラガントガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム」と同様の周知の増粘安定剤であることが窺える。
よって、引用発明において、その発明の目的を損なわないかぎりに添加し得る他の安定剤として、引用文献2に例示された周知の増粘安定剤の中からスクシノグリカンを選択する程度のことは当業者にとって容易であるといえる。
しかしながら、引用発明における必須の増粘安定剤であるキサンタンガム又はカラギーナンの添加量が、それぞれ0.03?0.25重量%、0.05?0.5重量%程度であり、これらの添加量の上限値重量%を超えると、増粘、ゲル化等により調味料本来の物性を損ない、好ましくないものとなることを考慮すると(引用文献1の2頁左下欄13?右下欄4行参照)、さらに、スクシノグリカンを、0.2?0.5質量%添加することは、引用発明の調味料に過度の粘性やゲル化を生じさせる可能性も否定できない。そうすると、引用発明において、スクシノグリカンを選択すること自体は容易だとしても、その具体的な適用に際して、スクシノグリカンの添加量を0.2?0.5質量%の範囲に調整しようとする動機づけはない。
よって、本件特許の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2記載の周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

同様に、本件特許の請求項2に係る発明も、引用発明及び引用文献2記載の周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2 理由2について
(1) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、上記理由1に示したように、ゴマダレにスクシノグリカンを含有させること自体は容易であるところ、スクシノグリカンを「0.2?0.5質量%」含有し、且つゴマ成分を「0.1?20質量%」含有するゴマダレとすることに特徴のある、いわゆるパラメータ発明に関するものであるといえる。
そうすると、このような発明において、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するためには、発明の詳細な説明は、その数値範囲と得られる効果との関係の技術的意味が、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該数値範囲内であれば、所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載することを要するから、以下、この点について検討する。

(2) 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許の請求項1及び2に係る発明が解決しようとする課題及び効果として、次のように記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、特に本発明は、長期間保存しても下層分離や沈殿、ゴマによるゲル化が発生しない、保存安定性に優れ、かつ低粘度で容器から容易に注ぎ出すことができる液体調味料を提供することを目的とする。」、
「【発明の効果】
【0009】
本発明により、長期間保存しても分離や沈殿、ゲル化が生じず、低粘度であるので容器から容易に注ぎ出すことができ、下層分離を抑制することができ、保存安定性に優れた液体調味料が得られる。さらには、調味料の経時的な粘度の変化(低下)を抑制し、またサラダや具材への付着に優れた調味料が得られる。」

そして、上記課題を解決する手段及びその効果を確認するための「スクシノグリカンを含有するゴマダレ」の実施例に関して以下の記載がされている。
「【0044】
実験例2 ゴマだれの調製
下記の処方に従い、液体調味料としてゴマだれを調製し、実施例1と同様に保存安定性及び粘り感の程度を5点満点で評価した。
<処方> (%)
練りゴマ(油脂含量50%) 10
淡口醤油 20
砂糖 15
食塩 1.4
酢 9.5
調味料
サンライク※シイタケM* 0.75
サンライク※和風だしL* 0.5
各種多糖類 表3及び4参照
清水にて合計 100
【0045】
<調製方法>
水を80℃まで加熱し、各種多糖類と砂糖の粉体混合物を添加後10分間攪拌溶解した。次いで練りゴマ、淡口醤油、食塩、調味料、酢を加え、さらに3分間攪拌し、水にて全量調整後、ホモミキサーにて8000rpm5分間攪拌した。
得られたゴマだれを200ml容透明ガラス容器に充填し、評価に供した。結果を表3及び4に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
<結果>
表3及び4に示したとおり、発酵セルロースを用いたゴマだれでは、発酵セルロースの添加量が0.1?0.3質量%の際(実施例16?18)に保存安定性、粘り感の少ないゴマだれが得られた。発酵セルロースの添加量が0.01質量%の場合(比較例19)では、分離が生じていた。また、添加量が0.4質量%(比較例20)では高粘度となり、ゴマだれの調製が困難であった。
【0049】
サイリウムシードガムを用いたゴマだれでは、サイリウムシードガムの添加量が0.3?0.7質量%の際(実施例19?21)に良い結果が得られたが、添加量が0.1質量%(比較例21)では分離が生じ、添加量を1質量%(比較例22)とするとゲル化した。
【0050】
次いでネイティブジェランガムを用いたゴマだれでは、添加量が0.03?0.15質量%とした場合(実施例22?24)に良い結果が得られた。添加量が0.01質量%(比較例23)では分離が生じ、また添加量が0.2質量%(比較例24)ではゲル化した。
【0051】
スクシノグリカンを用いたゴマだれは、0.2?0.5質量%の添加量(実施例25?27)で最も良い効果が得られていた。添加量が0.1質量%(比較例25)では分離が生じ、添加量0.7質量%(比較例26)ではゲル化した。
【0052】
低ピルビン酸含量キサンタンガムを用いた場合は、添加量が0.02?0.03質量%(実施例28、29)で良い効果が得られたが、添加量0.01質量%(比較例27)では分離が生じ、添加量0.05質量%(比較例28)ではゲル化した。
【0053】
ピルビン酸含量が2.5%以上のキサンタンガムを用いた場合(比較例29、30)では、添加量に係らずゲル化した。
【0054】
比較例として調製した、食品製造に一般的に使用される多糖類を用いたゴマだれ(比較例31?38)では、いずれも分離を抑えきるには至らなかったり、粘りを生じたりしたため、上記実施例には及ばない評価であった。」
「【0036】
・・・
・評価内容
保存安定性 ・・・ 分離の有無を評価。分離の生じないものを5点とし、分離の程度に応じて減点した。1点が最低。
粘り感 ・・・ 粘りの少ないものが好ましいため、最も粘りの少ないものを5点、最も粘りの強いものを1点となるように評価した。」

(3) 以上によれば、本件特許の請求項1及び2に係る発明が解決しようとする課題は、長期間保存しても下層分離や沈殿、ゴマによるゲル化が発生しない、保存安定性に優れ、かつ低粘度で容器から容易に注ぎ出すことができる液体調味料を提供することであると認められる。
そして、本件特許の請求項1及び2に係る発明に相当する実施例(実施例25?27)を含め保存安定性、粘り感の少ないゴマだれが得られたとされる実施例(実施例16?24、28及び29)はすべて、保存安定性及び粘り感がともに4点以上であり、他方、分離が生じたり、ゲル化したりする比較例(比較例19?38)は、保存安定性又粘り感の評価のいずれかが3点以下のものである。
そうすると、本件特許の請求項1及び2に係る発明が解決しようとする課題における「長期間保存しても下層分離や沈殿、ゴマによるゲル化が発生しない、保存安定性に優れ、かつ低粘度で容器から容易に注ぎ出すことができる」とは、具体的には、官能評価により「保存安定性及び粘り感がともに4点以上」であることを意味するものと解される。
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る発明の課題が解決できることを認識できるというためには、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、スクシノグリカンを「0.2?0.5質量%」含有し、且つゴマ成分を「0.1?20質量%」含有するゴマダレとすることに特徴のある発明であることを踏まえると、ゴマ成分の含有量が「0.1?20質量%」となる全範囲にわたって、スクシノグリカンを「0.2?0.5質量%」含有させることのみで官能評価の保存安定性及び粘り感の点数が上記値を満たすものと認識できることが必要である。

しかしながら、本件特許の請求項1及び2に係る発明について、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記課題が解決できることを確認したのは、実験例2で調製された、ゴマ成分として練りゴマ(油脂含量50%)を10質量%含有した「ゴマだれ」について、スクシノグリカン0.2?0.5質量%添加した実施例(実施例25?27)のみである。
そして、本件特許の請求項1及び2に係る発明のゴマ成分の含有量「0.1?20質量%」という範囲の下限値0.1質量%は、実施例の10質量%に対して100分の1相当量であり、また、上限値20質量%は実施例の2倍相当量であり、いずれも実施例の10質量%に近接した値とはいえないから、上記実施例(実施例25?27)の開示のみをもって、「0.1?20質量%」の範囲すべてについて上記課題が解決できることを確認したとは到底認められない。
また、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、ゴマ成分は、白胡麻、金胡麻、黒胡麻、茶胡麻などの胡麻種子をミル等で流動性の認められる程度まですり潰したペースト状のものであって(【0023】)、実施例に用いた練りゴマのように油脂を多く含む性状であるところ、ゴマ成分の含有量が「30質量%を超えると胡麻含有調味料の粘度が増大して、乳化液状ドレッシング様を呈さなくなってしまい容器の口から流れ出にくくなる」(【0023】)という記載からも、ゴマ成分の含有量を増やしていくと、粘りが強くなり、また、分離が生じやすいものとなることが理解できる。そうすると、実施例(実施例25?27)からゴマ成分の含有量を増やしていくと、保存安定性及び粘り感の点数はともに低下する傾向にあることは認められるが、発明の詳細な説明にはゴマ成分が10質量%である実施例が記載されるのみであるから、ゴマ成分の含有量の増加に伴う保存安定性及び粘り感の点数の低下度合いは不明であり、ゴマ成分の含有量が実施例の2倍相当量である20質量%まで増やした場合においてもなお、保存安定性及び粘り感がいずれも3点以下に低下せずに(ともに4点以上を保つ)、上記課題が解決できるものと認識できるものであるかは直ちには理解することはできない。そして、発明の詳細な説明中には、これを確認する実施例の記載はないし、当然に保存安定性がよく、粘り感の少ないものであるとする技術常識もない。
よって、技術常識を参酌しても、発明の詳細な説明中の上記実施例(実施例25?27)の開示のみをもって、「ゴマ成分を0.1?20質量%含有する」という本件特許の請求項1及び2に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない。

このことは、本件特許の請求項1及び2に係る発明が、ゴマ成分を構成するゴマの品種や油脂分などを何ら特定しないものであるところ、ゴマ成分は、「白胡麻、金胡麻、黒胡麻、茶胡麻などの胡麻種子をミル等で流動性の認められる程度まですり潰したペースト状のもの」(【0023】)であり、ゴマ成分を構成するゴマの品種や油脂分、ペースト状とするためのすり潰し度合いによっては、ゴマダレの粘度やゲル化性向は有意に変化したものとなることが容易に理解されるのであるから、上記実施例(実施例25?27)の開示のみでは、単に「スクシノグリカンを0.2?0.5質量%含有し、且つゴマ成分を0.1?20質量%含有する」とのみ特定する本件特許の請求項1及び2に係る発明の範囲まで、上記課題が解決できることを認識できるものとして、拡張ないし一般化できるとはいえないということからも、明らかである。

(4) 特許権者は、平成28年7月15日付けの意見書において「上記段落0044記載のゴマ成分(練りゴマ)を10%含有するゴマダレを包含し、近似する範囲である、ゴマ成分を0.1?30質量%含有するゴマダレに対しては、前記効果が奏されることは、本件明細書の記載から明らかです。」と主張し、さらに、平成28年11月24日付けの意見書において「特許明細書段落0023の記載:「0.1質量%未満では、胡麻特有の風味に乏しく胡麻含有調味料として物足りなさを感じ、30質量%を超えると胡麻含有調味料の粘度が増大して、乳化液状ドレッシング様を呈さなくなってしまい容器の口から流れ出にくくなる。好ましくは5?20質量%である。」から理解されます通り、当該上限「20質量%」は、審判官殿がご指摘の「容器の口から流れ出にくくなる」という問題に対して好ましい上限(すなわち、容器の口から流れ出やすい範囲)であり、すなわち、審判官殿が「容器の口から流れ出にくくなる」蓋然性が高いとご認定された30質量%からも、かなりかけ離れた数値です。当該数値範囲であれば、粘性に影響を与える「砂糖」を含んでいても、なお、「容器の口から流れ出にくくなる」ことは、通常、考えられません。」と主張する。

しかしながら、発明の詳細な説明の上記【0023】の記載は、ゴマ成分の含有量が30質量%のものや20質量%のものについて、粘り感の評価点数を具体的に示したものではなく、また、保存安定性については言及してもいない。そして、上述のとおり、ゴマ成分の含有量「0.1?20質量%」という範囲の下限値0.1質量%は、実施例の10質量%に対して100分の1相当量であり、また、上限値20質量%は実施例の2倍相当量であり、いずれも実施例の10質量%に近接した値とはいえないから、上記実施例(実施例25?27)の開示のみをもって、「0.1?20質量%」の範囲すべてについて上記課題が解決できることを確認したとは到底認められず、ゴマ成分の含有量が実施例の2倍相当量である20質量%まで増やした場合においてもなお、保存安定性及び粘り感がいずれも3点以下に低下せずに(ともに4点以上を保つ)、上記課題が解決できるものと認識できるものであるかは直ちには理解することはできない。そして、発明の詳細な説明中には、これを確認する実施例の記載はないし、当然に保存安定性がよく、粘り感の少ないものであるとする技術常識もない。
よって、特許権者の上記主張は失当であり、これを採用することはできない。

(5) したがって、本件特許の請求項1及び2に係る発明について、発明の詳細な説明は、その数値範囲と得られる効果との関係の技術的意味が、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該数値範囲内であれば、所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載したものとはいえず、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その発明の課題を解決しない発明を含む蓋然性が高く、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるから、発明の詳細な説明に記載したものでない。
よって、本件特許の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクシノグリカンを0.2?0.5質量%含有し、且つゴマ成分を0.1?20質量%含有することを特徴とするゴマダレ。
【請求項2】
スクシノグリカンを0.2?0.5質量%含有することを特徴とする、ゴマ成分を0.1?20質量%含有するゴマダレの保存安定性向上方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-02-10 
出願番号 特願2011-105550(P2011-105550)
審決分類 P 1 651・ 537- ZAA (A23L)
P 1 651・ 121- ZAA (A23L)
P 1 651・ 536- ZAA (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 上條 肇  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 山崎 勝司
千壽 哲郎
登録日 2015-07-31 
登録番号 特許第5784970号(P5784970)
権利者 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
発明の名称 液体調味料  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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