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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C09K
管理番号 1328107
審判番号 無効2013-800072  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-04-24 
確定日 2017-04-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4866885号「有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料」の特許無効審判事件についてされた平成25年12月17日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成26年(行ケ)第10027号、平成27年 2月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第4866885号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 本件の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許に対する審判請求は、成り立たない。 本件の請求項2、3、6-9に係る発明についての特許に対する審判請求は、不適法であるから、却下する。 審判費用は、14分し、請求人がその8、被請求人がその6をそれぞれ負担すべきものとする。  
理由 第1 手続の経緯

1(1) 被請求人は、発明の名称を「有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料」とする、特許第4866885号(以下、「本件特許」という。)の特許権者である。
(2) 本件特許は、平成16年12月13日(特許法第41条に規定される特許出願等に基づく優先権主張:平成15年12月19日)にされた特許出願の一部を平成20年 8月21日に新たな特許出願としたものに係るものであって、平成23年11月18日に特許権の設定の登録がされた。

2(1) 請求人は、平成25年 4月24日、本件特許の請求項1ないし14に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求める本件審判を請求したところ、被請求人は、同年 7月16日、答弁書を提出するとともに訂正請求書を提出し、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正(以下、「本件訂正1」という。)を請求した。
(2) 審判長は、平成25年 8月22日付けで両当事者に対し口頭審理の審理事項を通知し、これに対し、請求人は同年 9月10日、被請求人は同月24日、それぞれ口頭審理陳述要領書を提出した。
(3) 平成25年10月 1日、口頭審理が行われた。その後、請求人は同年10月15日、被請求人は同月30日、それぞれ上申書を提出した。
(4) 特許庁は、平成25年12月17日、「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決(以下、「原審決」という。)をし、その謄本は、同月27日、請求人に送達された。

3(1) 請求人は、平成26年 1月24日、原審決を不服として知的財産高等裁判所に訴えを提起した(平成26年(行ケ)第10027号)。同裁判所は、平成27年 2月25日、「特許庁が無効2013-800072号事件について平成25年12月17日にした審決を取り消す。」旨の判決を言い渡した。
(2) 被請求人は、前記判決に対する上告受理の申立てを行ったところ、最高裁判所は、平成28年 4月 8日、前記申立てを不受理とする旨の決定をし、前記判決は確定した。

4(1) 前記判決が確定したことから、特許法第181条第2項の規定により更に審理を行うことになったところ、被請求人は、平成28年 4月15日、同法第134条の3に基づく申立てをしたので、審判長は、被請求人に対し、同月25日付けで同条に規定する訂正請求のための期間を指定する通知をした。
(2) 被請求人は、平成28年 5月 9日、訂正請求書を提出し、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正(以下、「本件訂正2」という。なお、本件訂正1は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなされる。)を請求するとともに、同月17日、手続補正書を、同月30日、上申書を、それぞれ提出した。
(3) 請求人は、平成28年 7月 4日、弁駁書を提出した。
(4) 審判長は、平成28年 9月 1日付けで両当事者に対し口頭審理の審理事項を通知し、これに対し、請求人、被請求人ともに同年10月 7日、口頭審理陳述要領書を提出した。さらに、被請求人は、同年10月21日、上申書を提出した。
(5)平成28年10月21日、口頭審理が行われた。その後、被請求人は同年11月14日、請求人は同月16日、それぞれ上申書を提出した。

第2 平成28年 5月 9日付け訂正請求書による訂正(本件訂正2)の可否について

本件訂正2は、特許法第134条の2第3項及び同法同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項(請求項1-14)ごとに請求されたものであるところ、当審は、本件訂正の請求を認容すべきものと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【化1】

(式中、A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar^(1)及びAr^(2)は、それぞれ独立に、核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基であるか、Ar^(1)及びAr^(2)の一方が水素原子で他方が核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基である。
R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基、炭素数1?50のアルキル基、炭素数3?50のシクロアルキル基である(ただし、A^(1)及び/またはA^(2)が1-ナフチル基または2-ナフチル基の場合、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1?50のアルキル基である)。
R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、水素原子、核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基、炭素数1?50のアルキル基、炭素数3?50のシクロアルキル基であり、いずれもアルケニル基であることはない。
Ar^(1)、Ar^(2)、R^(9)及びR^(10)は、それぞれ複数であってもよい。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」とあるのを、「下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【化1】

(式中、A^(1)は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
A^(2)は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar^(1)は水素原子であり、Ar^(2)は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基である。
R^(1)?R^(10)は、水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」と訂正する。

イ 訂正事項2
請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
請求項3を削除する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「一般式(1)において、前記Ar^(1)及びAr^(2)がそれぞれ独立に、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかであるか、Ar^(1)及びAr^(2)の一方が水素原子で他方がフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。」とあるのを、「一般式(1)において、前記Ar^(1)が水素であり、Ar^(2)がフェニル基である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。」と訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基及び/又は核炭素数12?20の縮合芳香族炭化水素環基を有する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。」とあるのを、「前記非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基を有する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。」と訂正する。

カ 訂正事項6
請求項6を削除する。

キ 訂正事項7
請求項7を削除する。

ク 訂正事項8
請求項8を削除する。

ケ 訂正事項9
請求項9を削除する。

2 訂正の適否に係る判断

(1)特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするか否かについて
ア 訂正事項1
訂正事項1は、A^(1)、A^(2)、Ar^(1)及びR^(1)?R^(10)について、それぞれ、訂正前の請求項1に明示的に記載された選択肢のうちの特定のものに限定するとともに、Ar^(2)について、訂正前の発明における「核炭素数6?50の芳香族炭化水素基」を、実施例に記載のあるフェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基に限定し、これらの限定によって、Ar^(1)、Ar^(2)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ1つの基(単数)になったことに伴い、「Ar^(1)、Ar^(2)、R^(9)及びR^(10)は、それぞれ複数であってもよい」の事項を削除することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。

イ 訂正事項4
訂正事項4は、「Ar^(1)及びAr^(2)がそれぞれ独立に、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかであるか、」との選択肢を削除するとともに、訂正前の「Ar^(1)及びAr^(2)の一方が水素原子で他方がフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかである」との事項を「Ar^(1)が水素であり、Ar^(2)がフェニル基である」に限定することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。

ウ 訂正事項5
訂正事項5は、非対称アントラセン誘導体が有する基について、許容されていた選択肢の中から、「4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基」に限定することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。

エ 訂正事項2、3、6-9
訂正事項2、3、6-9は、請求項を削除することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。
したがって、訂正事項2、3、6-9に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。

(2)特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するか否かについて
ア 訂正事項1
訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0013】、【0014】、【0016】、【0017】、【0028】及び実施例1?5の範囲内でするものであって(特に、実施例1?5で用いられている非対称アントラセン誘導体は、下記のとおりであって、

いずれの化合物も、A^(1)は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基であり、A^(2)は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基であり、Ar^(1)は水素原子であり、Ar^(2)は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基であり、R^(1)?R^(10)は、水素原子である。)、しかも、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前に許容されていた選択肢の中で限定するものであるから、訂正後に許容される選択肢も当然に願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであって、しかも、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項5
訂正事項5は、非対称アントラセン誘導体が有する基について、許容されていた選択肢の中で限定するものであるから、訂正後に許容される選択肢も当然に願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであって、しかも、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項2、3、6-9
訂正事項2、3、6-9は、請求項の削除であり、何ら新規事項を追加するものでなく、しかも、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 訂正に係るまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の各規定に適合するものである。
よって、本件訂正を認める。

第3 本件特許請求の範囲の記載

上記「第2」のとおり、本件訂正の請求は適法なものであるから、本件無効審判の請求の対象となっている請求項1-14の記載は、以下のとおりとなった。
「【請求項1】
下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【化1】

(式中、A^(1)は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
A^(2)は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar^(1)は水素原子であり、Ar^(2)は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基である。
R^(1)?R^(10)は、水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
一般式(1)において、前記Ar^(1)が水素であり、Ar^(2)がフェニル基である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【請求項5】
前記非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基を有する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光帯域が、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記発光層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記有機薄膜層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料をホスト材料として含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記発光層が、さらにアリールアミン化合物を含有する請求項10?12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記発光層が、さらにスチリルアミン化合物を含有する請求項10?12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」
(以下、本件特許の請求項1ないし14に係る発明を、項番に従い、「本件発明1」ないし「本件発明14」という。)

第4 両当事者の主張の概要と証拠方法

1 両当事者の主張

(1) 請求の趣旨

特許第4866885号の請求項1乃至14に記載された各発明について特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める(なお、本件訂正2によって、請求項2、3、6-9が削除されたことから、平成28年7月4日付け弁駁書においては、「請求項1、4、5、10、11、12、13及び14に記載された各発明について特許を無効とする」との審決が求められている。)。

(2) 答弁の趣旨

本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

2 証拠方法

両当事者から提出された証拠方法は以下のとおりである(以下、各証拠につき、甲第1号証を「甲1」などと略して記載する。)。

(1) 請求人から提出された証拠

甲1:国際公開第03/087023号
甲2:特開2000-182776号公報
甲3:特開2001-97897号公報
甲4:特許第3148176号公報
甲5:国際公開第01/021729号
甲6:特開平11-167991号
甲7:特開平11-307255号公報
甲8:R&D Review of Toyota CRDL,Vol.36,No.3(2001.9)p57
甲9:豊田中央研究所R&Dレビュー、Vol.33,No.2(1998.6)p3?22
(以上、審判請求書に添付して提出)
甲10:特開2001-284050号公報
甲11:米国特許第5935721号明細書(部分訳添付)
甲12:特開平6-1973号公報
甲13:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p3?26及びp82?102
(以上、平成25年9月10日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出)

(2) 被請求人から提出された証拠

乙1:森竜雄著「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい有機ELの本」2010年5月20日(初版3刷)、日刊工業新聞社発行、p67?92
(以上、答弁書に添付して提出)
乙2:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p27?39
乙3:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p148?160
乙4:別件の特許無効審判事件(無効2008-800045号)において請求人が提示した2008年9月1日付け実験報告書
乙5:乙第4号証に係る無効審判事件の審決取消訴訟(平成21年(行ケ)10096号)において請求人が提出した第1準備書面
乙6:被請求人従業者西村和樹の陳述書
(以上、平成25年9月24日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出)
乙7:H.Aziz et al,”Degradation in tris(8-hydroxyquioline)aluminum(ALQ3)-based organic light emitting devices(OLEDs)”,Organic Light-Emitting Materials and Devices IV,Proc.SPIE,Vol.4105,(2001),p251?255(部分訳添付)
(以上、平成25年10月30日付け上申書に添付して提出)
乙8:知的財産高等裁判所 平成27年2月25日判決(平成26年(行ケ)第10027号)
乙9:東芝レビュー、Vol.67、No.9(2012)、p56?57
乙10:佐藤佳晴監修「有機EL技術と材料開発」、2010年5月21日、株式会社シーエムシー出版発行、p34?35
乙11:被請求人従業者伊藤裕勝の陳述書
(以上、平成28年5月30日付け上申書に添付して提出)
乙12:高部眞規子著「実務詳説 特許関連訴訟」、2011年1月15日、社団法人金融財政事情研究会発行、p296?299
乙13:判例時報2137号、2012年3月11日、p111?123
乙14:審査ハンドブック 3205及び3206
乙15:判例タイムズ1229号、2007年3月15日、p306?316
乙16:知的財産高等裁判所 平成27年2月26日判決(平成25年(行ケ)第10115号)
乙17:知的財産高等裁判所 平成20年3月27日判決(平成19年(行ケ)第10106号)
乙18:時任静士他著「有機ELディスプレイ」、2004年8月20日、株式会社オーム社発行、p40?45
(以上、平成28年10月7日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出)
乙19:無効2013-800072口頭審理説明資料
(以上、平成28年10月21日付け上申書に添付して提出)
乙20:被請求人従業者伊藤裕勝の陳述書(第2回口頭審理調書の「審判長」の「1」によれば、「平成28年10月21日付けで被請求人が提出した上申書の添付資料を乙第19号証とする」とあることから、乙第19号証として提出された当該陳述書は、項番を一つずらし、「乙第20号証」と読み替える。)
乙21:被請求人従業者伊藤裕勝の陳述書(同様の理由により、当該陳述書を「乙第21号証」に読み替える。)
(以上、平成28年11月14日付け上申書(2)に添付して提出)

第5 請求人が主張する無効理由

請求人が主張する無効理由は、無効理由1、2であるところ、第2回口頭審理調書の「請求人」の「4」によれば、「審判請求書における無効理由2についての主張を取り下げる」ことが確認されている。したがって、以下では、無効理由1のみについて判断していくところ、無効理由1は、以下のとおりであると認められる。

[無効理由1]
本件特許の請求項1、4、5、10-14に係る発明は、甲1に記載された発明を主たる引用発明とし、甲2ないし甲5の知見を組み合わせること及び必要に応じてさらに甲6ないし甲9の当業者の周知技術並びに甲10ないし甲13の当業者の周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものである。

第6 当審の判断
当審は、
請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許につき、請求人が主張する無効理由について理由がない、
と判断する。以下、詳述する。

(1)甲1に記載の事項
(1a)請求の範囲
「 1 .下記一般式 (A)で表される新規芳香族化合物。
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、 アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?6 0のアリール基である。Aは、下記一般式(1)?(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールァミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。

(式中、Ar_(1)?Αr_(3)は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリール基、Ar_(4)は置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリーレン基、Ar_(5)は置換もしくは無置換の炭素数6?30の3価の芳香族残基である。R_(1)及びR_(2)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、 置換もしくは無置換の炭素数2?40のアルケニル 基、置換もしくは無置換の炭素数5?40のシクロアルキル基、 置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2?40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7?40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6?40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2?30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3?40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Αr_(1) とAr_(2)及びR_(1)とR_(2)は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。) 〕」
「5.有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である請求項1?4のいずれかに記載の新規芳香族化合物。」

(1b)2頁下から7行?3頁1行
「本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、青色系に発光し、さらに高温安定性に優れ長寿命の有機EL素子を提供可能な新規芳香族化合物及びそれを利用した有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、高ガラス転移温度であり、かつ非対称な分子構造を保有する化合物を有機EL素子の有機薄膜層の材料として用いることにより、前記の課題を解決することを見出し本発明を解決するに至った。」

(1c)7頁下から2行?11頁8行
「上記一般式(A)又は(B)において、Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基であり、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリ一ルアミノ基が1置換した炭素数5?60のアリール基であると好ましい。
Bの置換基であるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタンジェニル基、1-メチルビニル基、スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、2,2-ジトリルビニル基、1,2-ジトリルビニル基、1-メチルアリル基、1-ジメチルアリル基、2-メチルアリル基、1-フェニルアリル基、2-フェニルアリル基、3-フェニルアリル基、3,3-ジフェニルアリル基、1,2-ジメチルアリル基、1-フェニル-1-ブテニル基、3-フェニル-1-ブテニル基等が挙げられる。
Bの置換基であるアリールアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アントラニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、ピレニルフェニルアミノ基、ビフェニルアミノ基、ビフェニルナフチルアミノ基等が挙げられる。
Bの置換又は無置換の複素環基としては、例えば、1-ピロリル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、ピラジニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基 、4-ピリジニル基、1-インドリル基、2-インドリル基、3-インドリル基 、4-インドリル基、5-インドリル基、6-インドリル基、7-インドリル基 、1-イソインドリル基、2-イソインドリル基、3-イソインドリル基、4-イソインドリル基、5-イソインドリル基、6-イソインドリル基、7-イソインドリル基、2-フリル基、3-フリル基、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、4-べンゾフラニル基、5-べンゾフラニル基、6-ベンゾフラニル基、7-べンゾフラニル基、1-イソべンゾフラニル基、3-イソベンゾフラニル基、4-イソべンゾフラニル基、5-イソべンゾフラニル基、6-イソベンゾフラニル基、7-イソべンゾフラニル基、2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、6-イソキノリル基、7-イソキノリル基、8-イソキノリル基、2-キノキサリニル基、5-キノキサリニル基、6-キノキサリニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、9-カルバゾリル基、1-フェナンスリジニル基、2-フェナンスリジニル基、3-フェナンスリジニル基、4-フェナンスリジニル基、6-フェナンスリジニル基、7-フェナンスリジニル基、8-フェナンスリジニル基、9-フェナンスリジニル基、10-フェナンスリジニル基、1-アクリジニル基、2-アクリジニル基、3-アクリジニル基、4-アクリジニル基、9-アクリジニル基、1,7-フェナンスロリン-2-イル基、1,7-フェナンスロリン-3-イル基、1,7-フェナンスロリン-4-イル基、1,7-フェナンスロリン-5-イル基、1,7-フェナンスロリン-6-イル基、1,7-フェナンスロリン-8-イル基、1,7-フェナンスロリン-9-イル基、1,7-フェナンスロリン-10-イル基、1,8-フェナンスロリン-2-イル基、1,8-フェナンスロリン-3-イル基、1,8-フェナンスロリン-4-イル基、1,8-フェナンスロリン-5-イル基、1,8-フェナンスロリン-6-イル基、1,8-フェナンスロリン-7-イル基、1,8-フェナンスロリン-9-イル基、1,8-フェナンスロリ ン-10-イル基、1,9-フェナンスロリン-2-イル基、1,9-フェナンスロリン-3-イル基、1,9-フェナンスロリン-4-イル基、1,9-フェナンスロリン-5-イル基、1,9-フェナンスロリン-6-イル基、1,9-フェナンスロリン-7-イル基、1,9-フェナンスロリン-8-イル基、1,9-フェナンスロリン-10-イル基、1,10-フェナンスロリン-2-イル基、1,10-フェナンスロリン-3-イル基、1,10-フェナンスロリン-4-イル基、1,10-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-1-イル基、2,9-フェナンスロリン-3-イル基、2,9-フェナンスロリン-4-イル基、2,9-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-6-イル基、2,9-フェナンスロリン-7-イル基、2,9-フェナンスロリン-8-イル基、2,9-フェナンスロリン-10-イル基、2,8-フェナンスロリン-1-イル基、2,8-フェナンスロリン-3-イル基、2,8-フェナンスロリン-4-イル基、2,8-フェナンスロリン-5-イル基、2,8-フェナンスロリン-6-イル基、2,8-フェナンスロリン-7-イル基、2,8-フェナンスロリン-9-イル基、2,8-フェナンスロリン-10-イル基、2,7-フェナンスロリン-1-イル基、2,7-フェナンスロリン-3-イル基、2,7-フェナンスロリン-4-イル基、2,7-フェナンスロリン-5-イル基、1,7-フェナンスロリン-6-イル基、2,7-フェナンスロリン-8-イ ル基、2,7-フェナンスロリン-9-イル基、2,7-フェナンスロリン-10-イル基、1-フェナジニル基 、2-フェナジニル基、1-フェノチアジニル基、2-フェノチアジニル基、3-フェノチアジニル基、4-フェノチアジニル基、10-フェノチアジニル基、1-フェノキサジニル基、2-フェノキサジニル基、3-フェノキサジニル基、4-フェノキサジニル基、10-フェノキサジニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、2-オキサジアゾリル基、5-オキサジアゾリル基、3-フラザニル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-メチルピロール-1-イル基、2-メチルピロール-3-イル基、2-メチルピロール-4-イル基、2-メチルピロール-5-イル基、3-メチルピロール-1-イル基、3-メチルピロール-2-イル基、3-メチルピロール-4-イル基、3-メチルピロール-5-イル基、2-t-ブチルピロール-4-イル基、3-(2-フェニルプロピル)ピロール-1-イル基、2-メチル-1-インドリル基、4-メチル-1-インドリル基、2-メチル-3-インドリル基、4-メチル-3-インドリル基、2-t-ブチル1-インドリル基、 4-t-ブチル1-インドリル基、2-t-ブチル3-インドリル基、4-t-ブチル3-インドリル基等が挙げられ、前記置換基を含み炭素数2?60のものである。
Bのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、コロニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピローリル基、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、オキサジアゾリル基、ジフェニルアントラニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ベンゾキノリル基、フルオランテニル基、アセナフトフルオランテニル基等が挙げられ、前記置換基を含み炭素数5?60のものである。」

(1d)30頁下から2行?33頁
「本発明の一般式(A)及び(B)で表される新規芳香族化合物の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。



(1e)53頁11行?57頁下から1行
「実施例1
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmのΝ,N’-ビス(N,N,-ジフェニル-4-アミノフェニル)-N,N-β-ナフチル-4,4’-ジアミノ-1 ,1’-ビフェニル膜(TPD232膜)を成膜した。このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。続けて、このTPD232膜上に膜厚20nmのN,N,N‘,N’-テトラキス(4-ビフェニル)-4,4’-ベンジジン膜(BPTPD膜)を成膜した。このBPTPD膜は正孔輸送層として機能する。さらに、BPTPD膜上に膜厚40nmの上記化合物(A1)を蒸着し成膜した。この膜は、発光層として機能する。この膜上に膜厚10nmの下記Alq膜を成膜した。このAlq膜は、電子注入層として機能する。この後還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッタ一社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
この素子は直流電 6Vで発光輝度176cd/m^(2)、発光効率2.2cd/Aの青色発光が得られた。
さらにこの素子を封止後、100℃の恒温槽に500時間放置した後、倍率20倍の実体顕微鏡によつて発光面に輝点又は色の変化が生じているなどで欠陥が生じているかを観察し評価する高温保存試験を行った。以上の結果を表1に示す。

実施例2?10
実施例1において、化合物(A1)の代わりに表1に記載した化合物を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。これらの素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。
比較例1
実施例1において、化合物(A1)の代わりに米国特許第5935721号明細書に記載のアリールアントラセン化合物である下記(C1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。




※高温保存試験結果においては、発光面に輝点又は色の変化が生じているなどにより欠陥が生じていない場合を良好とし、輝点、色の変化が生じている場合を結晶化とした。Tgの欄におけるNDはDSC(示差走査熱量測定)により観測されなかったということである。
表1に示したように、対称性の良いC1を用いた比較例1では、結晶化が生じ発光面に欠陥が生じ、発光色も青緑色であり青色の純度が優れていない。また、比較例2及び3における化合物C2及びC3は分子構造の左右が非対象であるが、結晶化が生じており、Tgが低いためであると考えられる。本発明の化合物は 非対称でありかつTgが比較的高いため、高温保存試験の結果は良好であった。
実施例11
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(旭硝子社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmのTPD232を成膜した。 このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。続けて、このTPD232膜上に膜厚20nm のBPTPD膜を成膜した。このBPTPD膜は正孔輸送層として 機能する。さらに、BPTPD膜上に膜厚40nmの上記化合物(A1) 蒸着し成膜した。この膜は、発光層として機能する。この時同時に下記スチリルアミ ン系の発光分子(D1)を7重量%添加した。この膜上に膜厚20nmのAlq膜を成膜した。このAlq膜は、電子注入層として機能する。この後還元性ド-パ ントであるLi(Li源:サエスゲッタ一社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜を形成した。この膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
この素子は直流電圧5.5Vで発光輝度200cd/m^(2)、発光効率5.5cd/Aの青色発光が得られた。また、初期輝度500cd/m^(2)にて一定電流駆動を行ったところ輝度が半減する時間 (半減寿命)は3000時間であった。

比較例 4
実施例1において、化合物(A1)の代わりに米国特許第05935721号明細書に記載のアリールアントラセン化合物である上記(C1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。
この素子は、直流電圧5.5Vで発光輝度180cd/m^(2)、発光効率5.0cd/Aの青色発光が得られた。また、初期輝度500cd/m^(2)にて一定電流駆動を行ったところ輝度が半減する時間(半減寿命)は1500時間と短かった」

(2)甲1に記載された発明

ア 上記摘示事項(1a)を参照すると、甲1には、「下記一般式(A)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である芳香族化合物。
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。Aは、下記一般式(1)?(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールアミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。

(式中、Ar_(1)?Ar_(3)は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリール基、Ar_(4)は置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリーレン基、Ar_(5)は置換もしくは無置換の炭素数6?30の3価の芳香族残基である。R_(1)及びR_(2)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2?40のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5?40のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2?40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7?40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6?40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2?30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3?40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Ar_(1)とAr_(2)及びR_(1)とR_(2)は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。)」が記載されていると認められる。

イ 上記摘示事項(1b)によれば、甲1の芳香族化合物は、「発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、青色系に発光」するものであり、また、上記摘示事項(1e)によれば、当該化合物は、実際、BPTPD膜(正孔輸送層)上に蒸着し成膜されて、発光層として機能していることからして、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料とは、具体的に、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料であるといえる。

ウ 上記摘示事項(1b)によれば、甲1の芳香族化合物は、「非対称な分子構造を保有する化合物」であるといえる。

上記アないしウの検討事項より、甲1には、
「下記一般式(A)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料である非対称な分子構造を保有する芳香族化合物。
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。Aは、下記一般式(1)?(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールアミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。

(式中、Ar_(1)?Ar_(3)は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリール基、Ar_(4)は置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリーレン基、Ar_(5)は置換もしくは無置換の炭素数6?30の3価の芳香族残基である。R_(1)及びR_(2)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2?40のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5?40のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2?40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7?40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6?40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2?30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3?40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Ar_(1)とAr_(2)及びR_(1)とR_(2)は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。)〕 」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比・判断

(3-1)本件発明1について

本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「下記一般式(A)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料である非対称な分子構造を保有する芳香族化合物。
A-Ar-B (A)」は、Arが、「置換もしくは無置換のアントラセンディール基」であるから、「アントラセン誘導体」であることは自明であり、したがって、本件発明1の「非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料」に相当する。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、「非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
アントラセン誘導体が、本件発明1では、「下記一般式(1)

(式中、A^(1)は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
A^(2)は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar^(1)は水素原子であり、Ar^(2)は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基である。
R^(1)?R^(10)は、水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」で表されるものであるのに対し、甲1発明では、「下記一般式(A)
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2?60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基である。Aは、下記一般式(1)?(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールアミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。

(式中、Ar_(1)?Ar_(3)は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリール基、Ar_(4)は置換もしくは無置換の炭素数6?30のアリーレン基、Ar_(5)は置換もしくは無置換の炭素数6?30の3価の芳香族残基である。R_(1)及びR_(2)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2?40のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5?40のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2?40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7?40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6?40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2?30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3?40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Ar_(1)とAr_(2)及びR_(1)とR_(2)は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。)」で表されるものである点。

<相違点>について
上記相違点について検討すると、上記摘示事項(1d)からして甲1発明の非対称な分子構造を保有する芳香族化合物も、実質的に、アントラセン誘導体の9位及び10位にAとBが置換したものが想定されているといえ、少なくとも、そのような化合物を含むことは明らかであるから、A-Ar-Bとは、実際、「

(ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」と表されるか、少なくとも当該構造を有するものを包含すると認められる。
そして、甲1発明において、Aが

であるとは、Aが無置換の「1-ナフチル基」又は「2-ナフチル基」であることを意味するから、本件発明1において、A^(1)基が2-ナフチル基であり、Ar^(1)基が水素原子であり、R^(9)が水素原子である場合に重複する。
また、甲1発明において、Bは、「置換もしくは無置換の炭素数5?60のアリール基」であり得るところ、上記摘示事項(1c)によれば、アリール基には、ナフチル基(1-ナフチル基又は2-ナフチル基)が含まれることが理解される。さらに、アリール基として、「フェニル基」、「ビフェニル基」、「ターフェニル基」も選択し得るところ、フェニル基とは、無置換のフェニル基であり、ビフェニル基とは、フェニル基が置換したフェニル基であり、ターフェニル基とは、ビフェニル基が置換したフェニル基であることからして、甲1には、炭素数5?60のアリール基に置換し得る官能基の許容範囲が明記されていないが、Bで許容される「置換」には、少なくともフェニル基やビフェニル基が含まれることが推察される。そうであるならば、本件発明1において、A^(2)が1-ナフチル基又は2-ナフチル基であり、Ar^(2)がフェニル基(や2-ビフェニル基)であり、R^(10)が水素原子である場合に、本件発明1と甲1発明は、アントラセン誘導体の10位がフェニル基(や2-ビフェニル基)で置換された1-ナフチル基又は2-ナフチル基である点で重複するといえる。
すなわち、甲1発明で、A-Ar-Bで表される芳香族化合物は、Arが、9位及び10位でA、Bに置換された「無置換のアントラセンディール基」であり、Aが「無置換の2-ナフチル基」であり、Bが「置換のナフチル基(1-ナフチル基又は2-ナフチル基)」であり、かつ、置換基として、フェニル基(や2-ビフェニル基)である態様も許容されていると認められ、また、少なくともこのような置換基を有するアントラセン誘導体が排除されていないと認められる。そして、そのようなアントラセン誘導体は、本件発明1の非対称アントラセン誘導体に相当する。よって、本件発明1のアントラセン誘導体は、その上位概念で表現された甲1発明に包含される下位概念で表現された発明に相当するものといえる。一方、甲1発明には、本件発明1のアントラセン誘導体に関しての具体的な開示はないので、新規性を有しており、本件発明は甲1発明の選択発明に相当するものである。
したがって、本件発明1の効果が甲1発明とは異質のもの又は同質であるが際だって優れたものであり、出願時の技術水準から当業者が予想することができたものでない場合に該当するかについて、以下に検討を行う。

<本件発明1の効果>について
本件発明1の効果は、本件特許明細書の【0011】に記載されているように、「発光効率が高く、長寿命である」点と認められる。一方、甲1発明の効果も、上記摘示事項(1b)にあるように、高発光効率及び長寿命の達成を目指すものであるから、両発明の効果は、同質であるといえるので、本件発明1が甲1発明に対して、有利な効果を有するといえるためには、際だって優れている必要がある。
そこで、被請求人は、本件発明1の効果を甲1発明との比較で示すべく、平成28年10月7日付け口頭審理陳述要領書、及び、平成28年11月13日付け上申書(2)において、本件特許明細書の実施例で用いられいる化合物AN7と、甲1の実施例で用いられている化合物A1及びA3(当該化合物A3は、上記摘示事項(1e)の表1によれば、甲1の実施例で用いられている化合物のうちで最も発光効率が高い化合物の一つである。)を用いて、素子構成が同一の有機EL素子を製造し、電流効率(=発光効率)と、初期輝度1000nitにおける90%寿命を測定し、その結果を開示した。その結果は、

である。そして、被請求人による平成28年10月7日付け口頭審理陳述要領書の21頁下から11?12行によると、「ここでいう電流効率が、本件訂正明細書に記載された発光効率と同じものを指すこと(すなわち、L/Jはcd/Aと同じである)」から、まず、電流効率についてみると、甲1発明の実施例で用いられている化合物A1及びA3は、本件発明1の実施例で用いられている化合物AN7の電流効率の、それぞれ87%、67%を示すことが理解される。よって、再実験等に用いられた共通の素子構成を前提とすれば、化合物AN7が化合物A1やA3よりも電流効率、すなわち、発光効率の面で良好な物性を有することが確認されているといえる。
さらに、本件特許明細書の【0097】【表1】を整理すると、

となり、本件特許明細書の実施例で用いられている化合物AN7以外の他の化合物は、化合物AN7よりも発光効率がやや劣るものの、いずれの化合物を用いた場合であっても、甲1の実施例で用いられている化合物A1を用いた場合に得られた87%を上回る90%以上の水準を維持している。このように、本件発明1の実施例で用いられている化合物を用いた場合、甲1発明の実施例で用いられている化合物を用いた場合と比較して、少なくとも遜色ない発光効率が得られるものと推察される。
次に、寿命についてみると、甲1発明の実施例で用いられている化合物A1及びA3の90%寿命は、本件発明1の実施例で用いられている化合物AN7の、それぞれ49%、5%を示すにすぎず、化合物AN7の寿命が遙かに長いことが見て取れる。また、本件特許明細書の実施例で用いられている他の化合物も、化合物AN7の半減寿命の79?117%を示すことからして、化合物A1及びA3より顕著に長寿命である。そして、甲1において、課題である寿命について化合物A1を用いた実験結果しか示されていないのは、化合物A1が一番長寿命であるか、少なくとも他の化合物に劣るものでないからと解するのが自然である。したがって、本件発明1の実施例で用いられている化合物を用いた場合、甲1発明の実施例で用いられている化合物を用いた場合と比較して、顕著に長寿命である蓋然性が高い。
また、本件発明1には、置換基の組合せの可能性から、具体的に12の化合物を包含すると認められるところ、そのうち、5つの化合物について、実施例で物性の確認がされており、また、それらと他の7つの化合物とは、骨格及び置換基の類似性からして、同程度の物性を示す蓋然性が高いので、実施例で確認されている結果をもって、本件発明1全体にわたり奏される効果を推認することができる。
とするならば、本件発明1の態様の各化合物は、甲1発明の態様の各化合物よりも発光効率で劣るものでなく、かつ、寿命で顕著に優れるものと推認することができる。
このように、本件発明1は、甲1発明と高発光効率、長寿命という同質の効果を有するものの、その効果の程度は際だって優れたものであり、しかも、出願時の技術水準から当業者が予想することができたものであるといえる証拠も見当たらない。
以上からして、本件発明1は、甲1発明と比較し、有利な効果を有すると認められる。

請求人は、平成28年11月16日付け上申書において、下記2点を主張している。
(a)寿命の評価に、本件特許明細書においては半減寿命が用いられているところ、乙第19号証等においては90%寿命が用いられており、評価手法が異なるから、本件発明1の作用効果の裏付けとならない。
(b)本件発明1の甲1発明に対する作用効果の評価は、共通の比較化合物であるジナフチルアントラセンを基準として、作用効果の改善度で評価すべきである。
まず、上記(a)について検討すると、乙20の14頁に示されているように、90%寿命と半減寿命は相間関係を有するといえること、及び、90%寿命の測定に、1271時間(2月弱)も時間がかかることから、半減寿命を求めることは実際的ではないので、90%寿命を用いて作用効果を評価することは妥当である。
次に、上記(b)について検討する。本件特許明細書では比較例1として、対称型のジナフチルアントラセンan1


を用いて、発光効率(cd/A)、及び、初期輝度1000nitにおける半減寿命(時間)を測定し、それぞれ、9.0cd/A、2200時間であったことが示されている。一方、甲1でも比較例1、4として、同一の対称型のジナフチルアントラセンC1

を用いて、発光効率(cd/A)と初期輝度500cd/m^(2)における半減寿命(時間)を測定し、それぞれ、2.1cd/A又は5.5cd/A、3000時間であったことが示されている。そして、500cd/m^(2)=500nitであり、また、被請求人による平成28年5月30日付け上申書の13頁1?3行によると、「寿命は初期輝度に反比例する」ことからして、甲1の比較例4の結果は、ジナフチルアントラセンC1の初期輝度1000nitにおける半減寿命は約1500時間であることと言い換えられると認められる。そうすると、本件特許明細書と甲1で、同一の化合物につき、発光効率と寿命が異なる結果が示されていることとなる。そして、これは、測定条件、具体的には、測定に用いた素子構成の差異に基づくものと推察される(上記摘示事項(1e)によれば、化合物A3の発光効率より化合物A1の発光効率が高くなっており、再実験等の結果と逆になっているが、被請求人による上記口頭審理陳述要領書の22頁7?10行に記載のとおり、「甲1の実施例1と実施例3の数値に逆転が生じているが、これは、甲1で用いられている素子構成と、乙11及び今回の再実験で用いられている素子構成が異なっていることが原因である」と認められる。)。
したがって、本件発明1の実施態様の化合物AN7と甲1発明の実施態様の化合物A1及びA3を素子構成を揃えて実験し直し、その結果(乙11及び今回の再実験)を用いることで、両発明の効果の差異を直接比較する方が、より正確に効果の差異が評価でき、妥当であることは明らかである〔実際、原審決に対する判決(平成26年(行ケ)第10027号)の47頁「ウ(ア)」欄において、乙6に相当する「陳述書(甲21)」の内容を踏まえた効果の有無の検討がされているように、本件において、効果の有無の検討を、追加実験を参照して行うことは許容されるといえる。〕。
したがって、上記主張を参酌しても、本件発明1が甲1発明と比較して有利な効果を有するとの結論を覆すことはできない。

そして、上記相違点及び効果についての検討結果を総合して勘案すれば、本件発明1は甲1発明に基づいて、当業者といえども、容易に発明することができたものであるとは認められない。

(3-2)本件発明4、5、10-14について
本件発明4、5、10は、本件発明1を引用し、また、本件発明11-14は、本件発明10を引用するものであるから、いずれの発明も、本件発明1を限定するものであるといえるところ、本件発明1が甲1発明に基いて容易に想到し得るものでないことは、上記(3-1)で検討済みである。
そして、それと同様の理由により、本件発明4、5、10-14も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(4)当審の判断のまとめ

以上のとおり、本件発明1、4、5、10-14は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではなく、本件訂正後の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許は、同法同条に違反して特許されたものでないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものでない。
よって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許は、請求人主張の理由及び証拠方法により無効とすべきものとすることはできない。
また、現時点において、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許を無効とすべき他の理由が存するものとも認められない。
そして、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2、3、6-9に係る発明についての特許は、その発明を特定する技術事項が訂正により全部削除されたことによって、当該各特許に係る本件無効審判請求が不適法となり、却下すべきものである。

第7 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許に対する本件無効審判請求は、成り立たない。
また、本件訂正後の請求項2、3、6-9に係る発明についての特許に対する本件無効審判請求は、却下すべきものである。
本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条及び同法第62条の規定により、14分し、請求人がその8、被請求人がその6をそれぞれ負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関し、さらに詳しくは、発光効率が高く長寿命な有機エレクトロルミネッセンス素子、それを実現する有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下エレクトロルミネッセンスをELと略記することがある)は、電界を印加することより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。イーストマン・コダック社のC.W.Tangらによる積層型素子による低電圧駆動有機EL素子の報告(C.W.Tang,S.A.Vanslyke,アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters),51巻、913頁、1987年等)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機EL素子に関する研究が盛んに行われている。Tangらは、トリス(8-ヒドロキシキノリノールアルミニウム)を発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いている。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めること、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めること、発光層内で生成した励起子を閉じ込めること等が挙げられる。この例のように有機EL素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送発光層の2層型、または正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等がよく知られている。こうした積層型構造素子では注入された正孔と電子の再結合効率を高めるため、素子構造や形成方法の工夫がなされている。
また、発光材料としてはトリス(8-キノリノラート)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等の発光材料が知られており、それらからは青色から赤色までの可視領域の発光が得られることが報告されており、カラー表示素子の実現が期待されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等)。
また、発光材料としてフェニルアントラセン誘導体を用いた素子が、特許文献4に開示されている。このようなアントラセン誘導体は青色発光材料として用いられるが、素子寿命を伸ばすことが望まれていた。アントラセンの9,10位にナフチル基を有する材料が特許文献5に、アントラセンの9,10位にフルオランテン基を有する素子材料が特許文献6に開示されている。これらのアントラセン誘導体も青色発光材料として用いられるが、やはり素子寿命の改善が求められていた。さらに、特許文献7に種々のアントラセン誘導体を正孔輸送材料として用いることが開示されている。しかしながら、発光材料としての評価は未だ成されていなかった。
【0003】
【特許文献1】 特開平8-239655号公報
【特許文献2】 特開平7-138561号公報
【特許文献3】 特開平3-200289号公報
【特許文献4】 特開平8-012600号公報
【特許文献5】 特開平11-3782号公報
【特許文献6】 特開2001-257074号公報
【特許文献7】 特開2000-182776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の課題を解決するためなされたもので、発光効率が高く、長寿命な有機EL素子、それを実現する有機EL素子用発光材料及び有機EL素子用材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される非対称型の特定のアントラセン構造を有する化合物を有機EL素子における発光材料として用いると、発光効率が高く、寿命が長い有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機EL素子用材料、並びに陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、前記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有する有機EL素子を提供するものである。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10?20の縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar^(1)及びAr^(2)は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基である。
R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核原子数5?50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3?50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6?50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5?50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。
R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3?50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6?50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5?50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基であり、いずれもアルケニル基であることはない。
Ar^(1)、Ar^(2)、R^(9)及びR^(10)は、それぞれ複数であってもよく、隣接するもの同士で飽和もしくは不飽和の環状構造を形成していてもよい。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)
【0008】
また、本発明は、下記一般式(1’)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機EL素子用材料を提供するものである。
下記一般式(1’)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、A^(1’)及びA^(2’)は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10?20の縮合芳香族炭化水素環基であり、A^(1’)及びA^(2’)の少なくとも一方は、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基又は置換もしくは無置換の核炭素数12?20の縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar^(1)、Ar^(2)、R^(1)?R^(10)は、それぞれ独立に、前記と同じ。
ただし、一般式(1’)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の非対称アントラセン誘導体を有機EL素子用発光材料もしくは有機EL素子用材料として用いた有機EL素子は、発光効率が高く、長寿命である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の有機EL素子用発光材料は、上記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる。
本発明で用いる一般式(1)の非対称アントラセン誘導体は、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。
ここで、X-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合がないとは、好ましくは一般式(1)において以下のような構造となっていることを言う。
(I)A^(1)とA^(2)が異なる。
(II)A^(1)とA^(2)が同じ場合は、
(II-i)Ar^(1)とAr^(2)が異なる。
(II-ii)R^(9)とR^(10)が異なる。
(II-iii)Ar^(1)とAr^(2)が同じかつR^(9)がR^(10)同じ場合、
(II-iii-1)A^(1)におけるアントラセン環9位との結合位置と、A^(2)におけるアントラセン環10位との結合位置が異なる。
(II-iii-2)Ar^(1)及びAr^(2)が共に水素原子でない場合、A^(1)におけるAr^(1)の結合位置と、A^(2)におけるAr^(2)の結合位置が異なる。
(II-iii-3)R^(9)及びR^(10)が共に水素原子でない場合、A^(1)におけるR^(9)の結合位置と、A^(2)におけるR^(10)の結合位置が異なる。
一般式(1)において、A^(1)及びA_(2)は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10?20(好ましくは核炭素数10?16)の縮合芳香族炭化水素環基である。
【0013】
A^(1)及びA^(2)の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環基としては、例えば、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、9-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-アントリル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基である。
【0014】
一般式(1)において、Ar^(1)及びAr^(2)は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の核炭素数6?50(好ましくは核炭素数6?16)の芳香族炭化水素環基である。
Ar^(1)とAr^(2)の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、9-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-ビフェニルイル基、3-ビフェニルイル基、4-ビフェニルイル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-t-ブチルフェニル基、p-(2-フェニルプロピル)フェニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-アントリル基、4’-メチルビフェニルイル基、4”-t-ブチル-p-ターフェニル-4-イル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、9-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-ビフェニルイル基、3-ビフェニルイル基、4-ビフェニルイル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-t-ブチルフェニル基である。
【0015】
一般式(1)において、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核原子数5?50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3?50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6?50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5?50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。
【0016】
R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6?50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3?50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6?50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5?50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5?50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1?50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基であり、いずれもアルケニル基であることはない。
【0017】
R^(1)?R^(10)の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、9-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-ビフェニルイル基、3-ビフェニルイル基、4-ビフェニルイル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-t-ブチルフェニル基、p-(2-フェニルプロピル)フェニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-アントリル基、4’-メチルビフェニルイル基、4”-t-ブチル-p-ターフェニル-4-イル基等が挙げられる。
【0018】
R^(1)?R^(8)の置換もしくは無置換の芳香族複素環基の例としては、1-ピロリル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、ピラジニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピリジニル基、1-インドリル基、2-インドリル基、3-インドリル基、4-インドリル基、5-インドリル基、6-インドリル基、7-インドリル基、1-イソインドリル基、2-イソインドリル基、3-イソインドリル基、4-イソインドリル基、5-イソインドリル基、6-イソインドリル基、7-イソインドリル基、2-フリル基、3-フリル基、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、4-ベンゾフラニル基、5-ベンゾフラニル基、6-ベンゾフラニル基、7-ベンゾフラニル基、1-イソベンゾフラニル基、3-イソベンゾフラニル基、4-イソベンゾフラニル基、5-イソベンゾフラニル基、6-イソベンゾフラニル基、7-イソベンゾフラニル基、キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、6-イソキノリル基、7-イソキノリル基、8-イソキノリル基、2-キノキサリニル基、5-キノキサリニル基、6-キノキサリニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、9-カルバゾリル基、1-フェナンスリジニル基、2-フェナンスリジニル基、3-フェナンスリジニル基、4-フェナンスリジニル基、6-フェナンスリジニル基、7-フェナンスリジニル基、8-フェナンスリジニル基、9-フェナンスリジニル基、10-フェナンスリジニル基、1-アクリジニル基、2-アクリジニル基、3-アクリジニル基、4-アクリジニル基、9-アクリジニル基、1,7-フェナンスロリン-2-イル基、1,7-フェナンスロリン-3-イル基、1,7-フェナンスロリン-4-イル基、1,7-フェナンスロリン-5-イル基、1,7-フェナンスロリン-6-イル基、1,7-フェナンスロリン-8-イル基、1,7-フェナンスロリン-9-イル基、1,7-フェナンスロリン-10-イル基、1,8-フェナンスロリン-2-イル基、1,8-フェナンスロリン-3-イル基、1,8-フェナンスロリン-4-イル基、1,8-フェナンスロリン-5-イル基、1,8-フェナンスロリン-6-イル基、1,8-フェナンスロリン-7-イル基、1,8-フェナンスロリン-9-イル基、1,8-フェナンスロリン-10-イル基、1,9-フェナンスロリン-2-イル基、1,9-フェナンスロリン-3-イル基、1,9-フェナンスロリン-4-イル基、1,9-フェナンスロリン-5-イル基、1,9-フェナンスロリン-6-イル基、1,9-フェナンスロリン-7-イル基、1,9-フェナンスロリン-8-イル基、1,9-フェナンスロリン-10-イル基、1,10-フェナンスロリン-2-イル基、1,10-フェナンスロリン-3-イル基、1,10-フェナンスロリン-4-イル基、1,10-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-1-イル基、2,9-フェナンスロリン-3-イル基、2,9-フェナンスロリン-4-イル基、2,9-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-6-イル基、2,9-フェナンスロリン-7-イル基、2,9-フェナンスロリン-8-イル基、2,9-フェナンスロリン-10-イル基、2,8-フェナンスロリン-1-イル基、2,8-フェナンスロリン-3-イル基、2,8-フェナンスロリン-4-イル基、2,8-フェナンスロリン-5-イル基、2,8-フェナンスロリン-6-イル基、2,8-フェナンスロリン-7-イル基、2,8-フェナンスロリン-9-イル基、2,8-フェナンスロリン-10-イル基、2,7-フェナンスロリン-1-イル基、2,7-フェナンスロリン-3-イル基、2,7-フェナンスロリン-4-イル基、2,7-フェナンスロリン-5-イル基、2,7-フェナンスロリン-6-イル基、2,7-フェナンスロリン-8-イル基、2,7-フェナンスロリン-9-イル基、2,7-フェナンスロリン-10-イル基、1-フェナジニル基、2-フェナジニル基、1-フェノチアジニル基、2-フェノチアジニル基、3-フェノチアジニル基、4-フェノチアジニル基、10-フェノチアジニル基、1-フェノキサジニル基、2-フェノキサジニル基、3-フェノキサジニル基、4-フェノキサジニル基、10-フェノキサジニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、2-オキサジアゾリル基、5-オキサジアゾリル基、3-フラザニル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-メチルピロール-1-イル基、2-メチルピロール-3-イル基、2-メチルピロール-4-イル基、2-メチルピロール-5-イル基、3-メチルピロール-1-イル基、3-メチルピロール-2-イル基、3-メチルピロール-4-イル基、3-メチルピロール-5-イル基、2-t-ブチルピロール-4-イル基、3-(2-フェニルプロピル)ピロール-1-イル基、2-メチル-1-インドリル基、4-メチル-1-インドリル基、2-メチル-3-インドリル基、4-メチル-3-インドリル基、2-t-ブチル1-インドリル基、4-t-ブチル1-インドリル基、2-t-ブチル3-インドリル基、4-t-ブチル3-インドリル基等が挙げられる。
【0019】
R^(1)?R^(10)の置換もしくは無置換のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシイソブチル基、1,2-ジヒドロキシエチル基、1,3-ジヒドロキシイソプロピル基、2,3-ジヒドロキシ-t-ブチル基、1,2,3-トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1-クロロエチル基、2-クロロエチル基、2-クロロイソブチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,3-ジクロロイソプロピル基、2,3-ジクロロ-t-ブチル基、1,2,3-トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1-ブロモエチル基、2-ブロモエチル基、2-ブロモイソブチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,3-ジブロモイソプロピル基、2,3-ジブロモ-t-ブチル基、1,2,3-トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1-ヨードエチル基、2-ヨードエチル基、2-ヨードイソブチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,3-ジヨードイソプロピル基、2,3-ジヨード-t-ブチル基、1,2,3-トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1-アミノエチル基、2-アミノエチル基、2-アミノイソブチル基、1,2-ジアミノエチル基、1,3-ジアミノイソプロピル基、2,3-ジアミノ-t-ブチル基、1,2,3-トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1-シアノエチル基、2-シアノエチル基、2-シアノイソブチル基、1,2-ジシアノエチル基、1,3-ジシアノイソプロピル基、2,3-ジシアノ-t-ブチル基、1,2,3-トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1-ニトロエチル基、2-ニトロエチル基、2-ニトロイソブチル基、1,2-ジニトロエチル基、1,3-ジニトロイソプロピル基、2,3-ジニトロ-t-ブチル基、1,2,3-トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0020】
R^(1)?R^(10)の置換もしくは無置換のシクロアルキル基の例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基等が挙げられる。
【0021】
R^(1)?R^(10)の置換もしくは無置換のアルコキシ基は、-OYで表される基であり、Yの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシイソブチル基、1,2-ジヒドロキシエチル基、1,3-ジヒドロキシイソプロピル基、2,3-ジヒドロキシ-t-ブチル基、1,2,3-トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1-クロロエチル基、2-クロロエチル基、2-クロロイソブチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,3-ジクロロイソプロピル基、2,3-ジクロロ-t-ブチル基、1,2,3-トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1-ブロモエチル基、2-ブロモエチル基、2-ブロモイソブチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,3-ジブロモイソプロピル基、2,3-ジブロモ-t-ブチル基、1,2,3-トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1-ヨードエチル基、2-ヨードエチル基、2-ヨードイソブチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,3-ジヨードイソプロピル基、2,3-ジヨード-t-ブチル基、1,2,3-トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1-アミノエチル基、2-アミノエチル基、2-アミノイソブチル基、1,2-ジアミノエチル基、1,3-ジアミノイソプロピル基、2,3-ジアミノ-t-ブチル基、1,2,3-トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1-シアノエチル基、2-シアノエチル基、2-シアノイソブチル基、1,2-ジシアノエチル基、1,3-ジシアノイソプロピル基、2,3-ジシアノ-t-ブチル基、1,2,3-トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1-ニトロエチル基、2-ニトロエチル基、2-ニトロイソブチル基、1,2-ジニトロエチル基、1,3-ジニトロイソプロピル基、2,3-ジニトロ-t-ブチル基、1,2,3-トリニトロプロピル基等が挙げられる。
R^(1)?R^(10)の置換もしくは無置換のアラルキル基の例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、α-ナフチルメチル基、1-α-ナフチルエチル基、2-α-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルイソプロピル基、2-α-ナフチルイソプロピル基、β-ナフチルメチル基、1-β-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-β-ナフチルイソプロピル基、2-β-ナフチルイソプロピル基、1-ピロリルメチル基、2-(1-ピロリル)エチル基、p-メチルベンジル基、m-メチルベンジル基、o-メチルベンジル基、p-クロロベンジル基、m-クロロベンジル基、o-クロロベンジル基、p-ブロモベンジル基、m-ブロモベンジル基、o-ブロモベンジル基、p-ヨードベンジル基、m-ヨードベンジル基、o-ヨードベンジル基、p-ヒドロキシベンジル基、m-ヒドロキシベンジル基、o-ヒドロキシベンジル基、p-アミノベンジル基、m-アミノベンジル基、o-アミノベンジル基、p-ニトロベンジル基、m-ニトロベンジル基、o-ニトロベンジル基、p-シアノベンジル基、m-シアノベンジル基、o-シアノベンジル基、1-ヒドロキシ-2-フェニルイソプロピル基、1-クロロ-2-フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0022】
R^(1)?R^(10)の置換もしくは無置換のアリールオキシ基は、-OY’と表され、Y’の例としてはフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、9-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-ビフェニルイル基、3-ビフェニルイル基、4-ビフェニルイル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-t-ブチルフェニル基、p-(2-フェニルプロピル)フェニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-アントリル基、4’-メチルビフェニルイル基、4”-t-ブチル-p-ターフェニル-4-イル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、ピラジニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピリジニル基、2-インドリル基、3-インドリル基、4-インドリル基、5-インドリル基、6-インドリル基、7-インドリル基、1-イソインドリル基、3-イソインドリル基、4-イソインドリル基、5-イソインドリル基、6-イソインドリル基、7-イソインドリル基、2-フリル基、3-フリル基、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、4-ベンゾフラニル基、5-ベンゾフラニル基、6-ベンゾフラニル基、7-ベンゾフラニル基、1-イソベンゾフラニル基、3-イソベンゾフラニル基、4-イソベンゾフラニル基、5-イソベンゾフラニル基、6-イソベンゾフラニル基、7-イソベンゾフラニル基、2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、6-イソキノリル基、7-イソキノリル基、8-イソキノリル基、2-キノキサリニル基、5-キノキサリニル基、6-キノキサリニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、1-フェナンスリジニル基、2-フェナンスリジニル基、3-フェナンスリジニル基、4-フェナンスリジニル基、6-フェナンスリジニル基、7-フェナンスリジニル基、8-フェナンスリジニル基、9-フェナンスリジニル基、10-フェナンスリジニル基、1-アクリジニル基、2-アクリジニル基、3-アクリジニル基、4-アクリジニル基、9-アクリジニル基、1,7-フェナンスロリン-2-イル基、1,7-フェナンスロリン-3-イル基、1,7-フェナンスロリン-4-イル基、1,7-フェナンスロリン-5-イル基、1,7-フェナンスロリン-6-イル基、1,7-フェナンスロリン-8-イル基、1,7-フェナンスロリン-9-イル基、1,7-フェナンスロリン-10-イル基、1,8-フェナンスロリン-2-イル基、1,8-フェナンスロリン-3-イル基、1,8-フェナンスロリン-4-イル基、1,8-フェナンスロリン-5-イル基、1,8-フェナンスロリン-6-イル基、1,8-フェナンスロリン-7-イル基、1,8-フェナンスロリン-9-イル基、1,8-フェナンスロリン-10-イル基、1,9-フェナンスロリン-2-イル基、1,9-フェナンスロリン-3-イル基、1,9-フェナンスロリン-4-イル基、1,9-フェナンスロリン-5-イル基、1,9-フェナンスロリン-6-イル基、1,9-フェナンスロリン-7-イル基、1,9-フェナンスロリン-8-イル基、1,9-フェナンスロリン-10-イル基、1,10-フェナンスロリン-2-イル基、1,10-フェナンスロリン-3-イル基、1,10-フェナンスロリン-4-イル基、1,10-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-1-イル基、2,9-フェナンスロリン-3-イル基、2,9-フェナンスロリン-4-イル基、2,9-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-6-イル基、2,9-フェナンスロリン-7-イル基、2,9-フェナンスロリン-8-イル基、2,9-フェナンスロリン-10-イル基、2,8-フェナンスロリン-1-イル基、2,8-フェナンスロリン-3-イル基、2,8-フェナンスロリン-4-イル基、2,8-フェナンスロリン-5-イル基、2,8-フェナンスロリン-6-イル基、2,8-フェナンスロリン-7-イル基、2,8-フェナンスロリン-9-イル基、2,8-フェナンスロリン-10-イル基、2,7-フェナンスロリン-1-イル基、2,7-フェナンスロリン-3-イル基、2,7-フェナンスロリン-4-イル基、2,7-フェナンスロリン-5-イル基、2,7-フェナンスロリン-6-イル基、2,7-フェナンスロリン-8-イル基、2,7-フェナンスロリン-9-イル基、2,7-フェナンスロリン-10-イル基、1-フェナジニル基、2-フェナジニル基、1-フェノチアジニル基、2-フェノチアジニル基、3-フェノチアジニル基、4-フェノチアジニル基、1-フェノキサジニル基、2-フェノキサジニル基、3-フェノキサジニル基、4-フェノキサジニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、2-オキサジアゾリル基、5-オキサジアゾリル基、3-フラザニル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-メチルピロール-1-イル基、2-メチルピロール-3-イル基、2-メチルピロール-4-イル基、2-メチルピロール-5-イル基、3-メチルピロール-1-イル基、3-メチルピロール-2-イル基、3-メチルピロール-4-イル基、3-メチルピロール-5-イル基、2-t-ブチルピロール-4-イル基、3-(2-フェニルプロピル)ピロール-1-イル基、2-メチル-1-インドリル基、4-メチル-1-インドリル基、2-メチル-3-インドリル基、4-メチル-3-インドリル基、2-t-ブチル1-インドリル基、4-t-ブチル1-インドリル基、2-t-ブチル3-インドリル基、4-t-ブチル3-インドリル基等が挙げられる。
【0023】
R^(1)?R^(10)の置換もしくは無置換のアリールチオ基は、-SY”と表され、Y”の例としてはフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、9-ナフタセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-ビフェニルイル基、3-ビフェニルイル基、4-ビフェニルイル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-t-ブチルフェニル基、p-(2-フェニルプロピル)フェニル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-アントリル基、4’-メチルビフェニルイル基、4”-t-ブチル-p-ターフェニル-4-イル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、ピラジニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピリジニル基、2-インドリル基、3-インドリル基、4-インドリル基、5-インドリル基、6-インドリル基、7-インドリル基、1-イソインドリル基、3-イソインドリル基、4-イソインドリル基、5-イソインドリル基、6-イソインドリル基、7-イソインドリル基、2-フリル基、3-フリル基、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、4-ベンゾフラニル基、5-ベンゾフラニル基、6-ベンゾフラニル基、7-ベンゾフラニル基、1-イソベンゾフラニル基、3-イソベンゾフラニル基、4-イソベンゾフラニル基、5-イソベンゾフラニル基、6-イソベンゾフラニル基、7-イソベンゾフラニル基、2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、6-イソキノリル基、7-イソキノリル基、8-イソキノリル基、2-キノキサリニル基、5-キノキサリニル基、6-キノキサリニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、1-フェナンスリジニル基、2-フェナンスリジニル基、3-フェナンスリジニル基、4-フェナンスリジニル基、6-フェナンスリジニル基、7-フェナンスリジニル基、8-フェナンスリジニル基、9-フェナンスリジニル基、10-フェナンスリジニル基、1-アクリジニル基、2-アクリジニル基、3-アクリジニル基、4-アクリジニル基、9-アクリジニル基、1,7-フェナンスロリン-2-イル基、1,7-フェナンスロリン-3-イル基、1,7-フェナンスロリン-4-イル基、1,7-フェナンスロリン-5-イル基、1,7-フェナンスロリン-6-イル基、1,7-フェナンスロリン-8-イル基、1,7-フェナンスロリン-9-イル基、1,7-フェナンスロリン-10-イル基、1,8-フェナンスロリン-2-イル基、1,8-フェナンスロリン-3-イル基、1,8-フェナンスロリン-4-イル基、1,8-フェナンスロリン-5-イル基、1,8-フェナンスロリン-6-イル基、1,8-フェナンスロリン-7-イル基、1,8-フェナンスロリン-9-イル基、1,8-フェナンスロリン-10-イル基、1,9-フェナンスロリン-2-イル基、1,9-フェナンスロリン-3-イル基、1,9-フェナンスロリン-4-イル基、1,9-フェナンスロリン-5-イル基、1,9-フェナンスロリン-6-イル基、1,9-フェナンスロリン-7-イル基、1,9-フェナンスロリン-8-イル基、1,9-フェナンスロリン-10-イル基、1,10-フェナンスロリン-2-イル基、1,10-フェナンスロリン-3-イル基、1,10-フェナンスロリン-4-イル基、1,10-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-1-イル基、2,9-フェナンスロリン-3-イル基、2,9-フェナンスロリン-4-イル基、2,9-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-6-イル基、2,9-フェナンスロリン-7-イル基、2,9-フェナンスロリン-8-イル基、2,9-フェナンスロリン-10-イル基、2,8-フェナンスロリン-1-イル基、2,8-フェナンスロリン-3-イル基、2,8-フェナンスロリン-4-イル基、2,8-フェナンスロリン-5-イル基、2,8-フェナンスロリン-6-イル基、2,8-フェナンスロリン-7-イル基、2,8-フェナンスロリン-9-イル基、2,8-フェナンスロリン-10-イル基、2,7-フェナンスロリン-1-イル基、2,7-フェナンスロリン-3-イル基、2,7-フェナンスロリン-4-イル基、2,7-フェナンスロリン-5-イル基、2,7-フェナンスロリン-6-イル基、2,7-フェナンスロリン-8-イル基、2,7-フェナンスロリン-9-イル基、2,7-フェナンスロリン-10-イル基、1-フェナジニル基、2-フェナジニル基、1-フェノチアジニル基、2-フェノチアジニル基、3-フェノチアジニル基、4-フェノチアジニル基、1-フェノキサジニル基、2-フェノキサジニル基、3-フェノキサジニル基、4-フェノキサジニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、2-オキサジアゾリル基、5-オキサジアゾリル基、3-フラザニル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-メチルピロール-1-イル基、2-メチルピロール-3-イル基、2-メチルピロール-4-イル基、2-メチルピロール-5-イル基、3-メチルピロール-1-イル基、3-メチルピロール-2-イル基、3-メチルピロール-4-イル基、3-メチルピロール-5-イル基、2-t-ブチルピロール-4-イル基、3-(2-フェニルプロピル)ピロール-1-イル基、2-メチル-1-インドリル基、4-メチル-1-インドリル基、2-メチル-3-インドリル基、4-メチル-3-インドリル基、2-t-ブチル1-インドリル基、4-t-ブチル1-インドリル基、2-t-ブチル3-インドリル基、4-t-ブチル3-インドリル基等が挙げられる。
【0024】
R^(1)?R^(10)の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基は-COOZと表され、Zの例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシイソブチル基、1,2-ジヒドロキシエチル基、1,3-ジヒドロキシイソプロピル基、2,3-ジヒドロキシ-t-ブチル基、1,2,3-トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1-クロロエチル基、2-クロロエチル基、2-クロロイソブチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,3-ジクロロイソプロピル基、2,3-ジクロロ-t-ブチル基、1,2,3-トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1-ブロモエチル基、2-ブロモエチル基、2-ブロモイソブチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,3-ジブロモイソプロピル基、2,3-ジブロモ-t-ブチル基、1,2,3-トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1-ヨードエチル基、2-ヨードエチル基、2-ヨードイソブチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,3-ジヨードイソプロピル基、2,3-ジヨード-t-ブチル基、1,2,3-トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1-アミノエチル基、2-アミノエチル基、2-アミノイソブチル基、1,2-ジアミノエチル基、1,3-ジアミノイソプロピル基、2,3-ジアミノ-t-ブチル基、1,2,3-トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1-シアノエチル基、2-シアノエチル基、2-シアノイソブチル基、1,2-ジシアノエチル基、1,3-ジシアノイソプロピル基、2,3-ジシアノ-t-ブチル基、1,2,3-トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1-ニトロエチル基、2-ニトロエチル基、2-ニトロイソブチル基、1,2-ジニトロエチル基、1,3-ジニトロイソプロピル基、2,3-ジニトロ-t-ブチル基、1,2,3-トリニトロプロピル基等が挙げられる。
R^(1)?R^(10)のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0025】
前記Ar^(1)、Ar^(2)及びR^(1)?R^(10)の示す基における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基などが挙げられる。
Ar^(1)、Ar^(2)、R^(9)及びR^(10)は、それぞれ複数であってもよく、隣接するもの同士で飽和もしくは不飽和の環状構造を形成していてもよく、環状構造としては、ベンゼン環等の不飽和6員環の他、飽和もしくは不飽和の5員環又は7員環構造等が挙げられる。
【0026】
また、本発明において、前記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基及び/又は置換もしくは無置換の核炭素数12?20の縮合芳香族炭化水素環基を有すると好ましい。この置換基としては、前記前記Ar^(1)、Ar^(2)及びR^(1)?R^(10)の示す基における置換基と同様のものが挙げられる。
【0027】
本発明の有機EL素子用材料は、上記一般式(1’)で表される非対称アントラセン誘導体からなる。
一般式(1’)は、前記一般式(1)において、A^(1’)及びA^(2’)が、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10?20の縮合芳香族炭化水素環基であり、A^(1’)及びA^(2’)の少なくとも一方は、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基又は置換もしくは無置換の核炭素数12?20の縮合芳香族炭化水素環基であると限定したものであり、Ar^(1)、Ar^(2)、R^(1)?R^(10)は、それぞれ独立に、前記と同じであるため、これら各基の具体例、好ましい基、置換基の例は、前記で説明したものと同じである。また、一般式(1)同様に、一般式(1’)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。
一般式(1’)は一般式(1)に含まれるので、以下単に一般式(1)と言った場合には一般式(1’)も含んでいる。
本発明における一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体の具体例及び参考具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
本発明の一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体は、公知の方法によりハロゲン化アリール化合物とアントラセンボロン酸化合物を出発原料として、鈴木カップリング反応・ハロゲン化反応・ホウ酸化反応を適宜組み合わせて、合成することができる。以下にその合成スキームを示す。
【0032】
【化6】

【0033】
鈴木カップリング反応は、これまでに数多くの報告(Chem.Rev.,Vol.95,No.7,2457(1995)等)がなされており、これらに記載の反応条件で実施することができる。
反応は、通常、常圧下、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下で実施されるが、必要に応じて加圧条件下に実施することも出来る。反応温度は15?300℃の範囲であるが、特に好ましくは30?200℃である。
【0034】
反応溶媒としては、水、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタンなどのハロゲン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類などを単一又は混合して使用することができる。これらの中で、好ましくは、トルエン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン、水である。溶媒の使用量はアリールボロン酸又はその誘導体に対して、通常3?50重量倍、好ましくは4?20重量倍である。
【0035】
反応に用いる塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、ふっ化カリウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、メトキシナトリウム、t-ブトキシカリウム、t-ブトキシナトリウム、t-ブトキシリチウム等が挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウムである。これらの塩基の使用量は、アリールボロン酸又はその誘導体に対して、通常0.7?10モル当量、好ましくは0.9?6モル当量である。
【0036】
反応に用いる触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等のパラジウム触媒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]ニッケル、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル等のニッケル触媒等が挙げられ、好ましくはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムである。これらの触媒の使用量はハロゲン化アリール化合物に対して、通常0.001?1モル当量、好ましくは0.01?0.1モル当量である。
ハロゲン化アリール化合物のハロゲンとしては、例えば、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子等が挙げられ、好ましくはヨウ素原子、臭素原子である。
【0037】
ハロゲン化反応におけるハロゲン化剤は特に限定されるものではないが、例えば、N-ハロゲン化コハク酸イミドが好適に用いられる。ハロゲン化剤の使用量はアリール化合物に対し、通常0.8?10モル当量、好ましくは1?5モル当量である。
反応は、通常、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下、不活性溶媒中で実施される。使用される不活性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、水等が挙げられ、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンである。溶媒の使用量はアリール化合物に対し、通常3?50重量倍、好ましくは5?20重量倍である。反応温度は、通常0℃?200℃で実施され、好ましくは20℃?120℃である。
【0038】
ホウ酸化反応は、既知の方法(日本化学会編・実験化学講座第4版24巻61?90頁やJ.Org.Chem.,Vol.60,7508(1995)等)により実施することが可能である。例えば、ハロゲン化アリール化合物のリチオ化もしくはグリニャール反応を経由する反応の場合、通常、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下で実施され、反応溶媒としては不活性溶媒が用いられる。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素類、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を単一もしくは混合溶媒として用いることができ、好ましくはジエチルエーテル、トルエンである。溶媒の使用量は、ハロゲン化アリール化合物に対し通常3?50重量倍、好ましくは4?20重量倍である。
【0039】
リチオ化剤としては、例えば、n-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、フェニルリチウム、メチルリチウム等のアルキル金属試薬、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビストリメチルシリルアミド等のアミド塩基を用いることができ、好ましくはn-ブチルリチウムである。また、グリニャール試薬は、ハロゲン化アリール化合物と金属マグネシウムの反応により調製することができる。ホウ酸化剤であるホウ酸トリアルキルとしては、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル等を使用することができ、好ましくはホウ酸トリメチル、ホウ酸トリイソプロピルである。
リチオ化剤及び金属マグネシウムの使用量は、それぞれハロゲン化アリール化合物に対し、通常1?10モル当量、好ましくは1?2モル当量であり、ホウ酸トリアルキルの使用量は、ハロゲン化アリール化合物に対し、通常1?10モル当量、好ましくは1?5モル当量である。反応温度は、通常-100?50℃、好ましくは-75?10℃である。
【0040】
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、前記有機EL素子用発光材料又は有機EL素子用材料を単独もしくは混合物の成分として含有する。
前記発光層が、前記有機EL素子用発光材料又は有機EL素子用材料を単独もしくは混合物の成分として含有すると好ましい。
前記有機薄膜層が、前記有機EL素子用発光材料又は有機EL素子用材料をホスト材料として含有すると好ましい。
また、本発明の有機EL素子は、前記発光層が、さらにアリールアミン化合物及び/又はスチリルアミン化合物を含有すると好ましい。
スチリルアミン化合物としては、下記一般式(A)で表されるものが好ましい。
【0041】
【化7】

【0042】
(式中、Ar^(3)は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、スチルベン基、ジスチリルアリール基から選ばれる基であり、Ar^(4)及びAr^(5)は、それぞれ水素原子又は炭素数が6?20の芳香族炭化水素環基であり、Ar^(3)、Ar^(4)及びAr^(5)は置換されていてもよい。pは1?4の整数である。さらに好ましくはAr^(4)又はAr^(5)の少なくとも一方はスチリル基で置換されている。)
ここで、炭素数が6?20の芳香族炭化水素環基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ターフェニル基等が挙げられる。
アリールアミン化合物としては、下記一般式(B)で表されるものが好ましい。
【0043】
【化8】

【0044】
(式中、Ar^(6)?Ar^(8)は、置換もしくは無置換の核炭素数5?40のアリール基である。qは1?4の整数である。)
ここで、核炭素数が5?40のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、コロニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピローリル基、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、オキサジアゾリル基、ジフェニルアントラニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ベンゾキノリル基、フルオランテニル基、アセナフトフルオランテニル基、スチルベン基、ペリレニル基、クリセニル基、ピセニル基、トリフェニレニル基、ルビセニル基、ベンゾアントラセニル基、フェニルアントラニル基、ビスアントラセニル基、又は下記一般式(C)、(D)で示されるアリール基等が挙げられる。
【0045】
【化9】

【0046】
(一般式(C)において、rは1?3の整数である。)
なお、前記アリール基の好ましい置換基としては、炭素数1?6のアルキル基(エチル基、メチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1?6のアルコキシ基(エトキシ基、メトキシ基、i-プロポキシ基、n-プロポキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、核原子数5?40のアリール基、核原子数5?40のアリール基で置換されたアミノ基、核原子数5?40のアリール基を有するエステル基、炭素数1?6のアルキル基を有するエステル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Ar^(5)は特に好ましくは、それぞれ置換もしくは無置換の、ナフチル基、アントラニル基、クリセニル基、ピレニル基、又は一般式(D)で示されるアリール基である。
【0047】
以下、本発明の有機EL素子の素子構成について説明する。
本発明の有機EL素子の代表的な素子構成としては、
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(13)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
などの構造を挙げることができる。
【0048】
これらの中で通常(8)の構成が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
この有機EL素子は、通常透光性の基板上に作製する。この透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、その透光性については、400?700nmの可視領域の光の透過率が50%以上であるものが望ましく、さらに平滑な基板を用いるのが好ましい。
このような透光性基板としては、例えば、ガラス板、合成樹脂板などが好適に用いられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などで成形された板が挙げられる。また、合成樹脂板としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂などの板か挙げられる。
【0049】
次に、陽極は、正孔を正孔輸送層または発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、金、銀、白金、銅等が適用できる。また陰極としては、電子輸送層または発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。
【0050】
このように発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくすることが好ましい。また陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm?1μm、好ましくは10?200nmの範囲で選択される。
本発明の有機EL素子においては、発光層は、
(i)注入機能;電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能
(ii)輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
(iii)発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有する。
【0051】
この発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法等の公知の方法を適用することができる。発光層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
また特開昭57-51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光層を形成することができる。
【0052】
本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、発光層に、本発明の発光材料以外の他の公知の発光材料を含有させてもよく、また、本発明の発光材料を含む発光層に、他の公知の発光材料を含む発光層を積層してもよい。
次に、正孔注入・輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。このような正孔注入・輸送層としてはより低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10^(4)?10^(6)V/cmの電界印加時に、少なくとも10^(-6)cm^(2)/V・秒であるものが好ましい。このような材料としては、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0053】
具体例としては、例えば、トリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37-16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45-555号公報、同51-10983号公報、特開昭51-93224号公報、同55-17105号公報、同56-4148号公報、同55-108667号公報、同55-156953号公報、同56-36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55-88064号公報、同55-88065号公報、同49-105537号公報、同55-51086号公報、同56-80051号公報、同56-88141号公報、同57-45545号公報、同54-112637号公報、同55-74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51-10105号公報、同46-3712号公報、同47-25336号公報、特開昭54-53435号公報、同54-110536号公報、同54-119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49-35702号公報、同39-27577号公報、特開昭55-144250号公報、同56-119132号公報、同56-22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56-46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54-110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54-59143号公報、同55-52063号公報、同55-52064号公報、同55-46760号公報、同55-85495号公報、同57-11350号公報、同57-148749号公報、特開平2-311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61-210363号公報、同第61-228451号公報、同61-14642号公報、同61-72255号公報、同62-47646号公報、同62-36674号公報、同62-10652号公報、同62-30255号公報、同60-93455号公報、同60-94462号公報、同60-174749号公報、同60-175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2-204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2-282263号公報)、特開平1-211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができる。
【0054】
正孔注入層の材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物(特開昭63-2956965号公報等に開示のもの)、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53-27033号公報、同54-58445号公報、同54-149634号公報、同54-64299号公報、同55-79450号公報、同55-144250号公報、同56-119132号公報、同61-295558号公報、同61-98353号公報、同63-295695号公報等参照)、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0055】
また米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する、例えば4,4’-ビス(N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ)ビフェニル(以下NPDと略記する)、また特開平4-308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”-トリス(N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(以下MTDATAと略記する)等を挙げることができる。
また、発光層の材料として示した前述の芳香族ジメチリディン系化合物の他、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入層の材料として使用することができる。
【0056】
正孔注入、輸送層は上述した化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化することにより形成することができる。正孔注入、輸送層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm?5μmである。この正孔注入、輸送層は正孔輸送帯域に本発明の化合物を含有していれば、上述した材料の一種または二種以上からなる一層で構成されてもよいし、または前記正孔注入、輸送層とは別種の化合物からなる正孔注入、輸送層を積層したものであってもよい。
【0057】
また、有機半導体層は発光層への正孔注入または電子注入を助ける層であって、10^(-10)S/cm以上の導電率を有するものが好適である。このような有機半導体層の材料としては、含チオフェンオリゴマーや特開平8-193191号公報に開示してある含アリールアミンオリゴマー等の導電性オリゴマー、含アリールアミンデンドリマー等の導電性デンドリマー等を用いることができる。
次に、電子注入層・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きく、また付着改善層は、この電子注入層の中で特に陰極との付着が良い材料からなる層である。電子注入層に用いられる材料としては、8-ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体やオキサジアゾール誘導体が好適である。上記8-ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8-キノリノール又は8-ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8-キノリノール)アルミニウムを電子注入材料として用いることができる。
一方、オキサジアゾール誘導体としては、以下の一般式で表される電子伝達化合物が挙げられる。
【0058】
【化10】

【0059】
(式中Ar^(1’)、Ar^(2’)、Ar^(3’)、Ar^(5’)、Ar^(6’)、Ar^(9’)はそれぞれ置換または無置換のアリール基を示し、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。またAr^(4’)、Ar^(7’)、Ar^(8’)は置換または無置換のアリーレン基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい)
ここでアリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基が挙げられる。またアリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基などが挙げられる。また置換基としては炭素数1?10のアルキル基、炭素数1?10のアルコキシ基またはシアノ基等が挙げられる。この電子伝達化合物は薄膜形成性のものが好ましい。
上記電子伝達性化合物の具体例としては下記のものを挙げることができる。
【0060】
【化11】

【0061】
本発明の有機EL素子の好ましい形態に、電子を輸送する領域または陰極と有機層の界面領域に、還元性ドーパントを含有する素子がある。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送性化合物を還元ができる物質と定義される。したがって、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物または希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0062】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)およびCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0?2.5eV)、およびBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、RbまたはCsであり、最も好ましのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRbあるいはCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0063】
本発明においては陰極と有機層の間に絶縁体や半導体で構成される電子注入層をさらに設けても良い。この時、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li_(2)O、LiO、Na_(2)S、Na_(2)SeおよびNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、およびCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KClおよびNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF_(2)、BaF_(2)、SrF_(2)、MgF_(2)およびBeF_(2)といったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0064】
また、電子輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子輸送層を構成する無機化合物が、微結晶または非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子輸送層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0065】
次に、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム,ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム,リチウム,マグネシウム・銀合金,アルミニウム/酸化アルミニウム,Al/Li_(2)O,Al/LiO_(2),Al/LiF,アルミニウム・リチウム合金,インジウム,希土類金属などが挙げられる。
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
ここで、発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、さらに、膜厚は通常10nm?1μm、好ましくは50?200nmである。
【0066】
また、一般に、有機EL素子は、超薄膜に電界を印可するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層を挿入しても良い。
絶縁層に用いられる材料としては、例えば、酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられる。これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0067】
次に、本発明の有機EL素子を作製する方法については、例えば上記の材料及び方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入層、及び必要に応じて電子注入層を形成し、最後に陰極を形成すればよい。また、陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【0068】
以下、透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子の作製例について説明する。
まず、適当な透光性基板上に、陽極材料からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10?200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着法あるいはスパッタリング法により形成し、陽極とする。次に、この陽極上に正孔注入層を設ける。正孔注入層の形成は、前述したように真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物(正孔注入層の材料)、目的とする正孔注入層の結晶構造や再結合構造等により異なるが、一般に蒸着源温度50?450℃、真空度10^(-7)?10^(-3)torr、蒸着速度0.01?50nm/秒、基板温度-50?300℃、膜厚5nm?5μmの範囲で適宜選択することが好ましい。
【0069】
次に、この正孔注入層上に発光層を設ける。この発光層の形成も、本発明に係る発光材料を用いて真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により、発光材料を薄膜化することにより形成できるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物により異なるが、一般的に正孔注入層の形成と同様な条件範囲の中から選択することができる。膜厚は10?40nmの範囲が好ましい。
【0070】
次に、この発光層上に電子注入層を設ける。この場合にも正孔注入層、発光層と同様、均質な膜を得る必要から真空蒸着法により形成することが好ましい。蒸着条件は正孔注入層、発光層と同様の条件範囲から選択することができる。
そして、最後に陰極を積層して有機EL素子を得ることができる。陰極は金属から構成されるもので、蒸着法、スパッタリングを用いることができる。しかし、下地の有機物層を製膜時の損傷から守るためには真空蒸着法が好ましい。
以上の有機EL素子の作製は、一回の真空引きで、一貫して陽極から陰極まで作製することが好ましい。
【0071】
本発明の有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等による形成方法を用いることができる。本発明の有機EL素子に用いる、前記一般式(1)で示される化合物を含有する有機薄膜層は、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)あるいは溶媒に解かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0072】
本発明の有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、ピンホール等の欠陥や、効率を良くするため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
なお、有機EL素子に直流電圧を印加する場合、陽極を+、陰極を-の極性にして、5?40Vの電圧を印加すると発光が観測できる。また逆の極性で電圧を印加しても電流は流れず、発光は全く生じない。さらに交流電圧を印加した場合には陽極が+、陰極が-の極性になった時のみ均一な発光が観測される。印加する交流の波形は任意でよい。
【実施例】
【0073】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0074】
合成例1(1-ブロモ-4-フェニルナフタレンの合成)
市販の1,4-ジブロモナフタレン15g、フェニルボロン酸7.7g、及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.8gを混合し、アルゴン置換した。トルエン200ml、及び2M炭酸ナトリウム水溶液90mlを加え、7時間加熱還流した。
放冷後、トルエンで有機層を抽出し、水・飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的の1-ブロモ-4-フェニルナフタレン8.9g(収率60%)を白色結晶として得た。
【0075】
合成例2(1-ブロモ-4-(ナフタレン-2-イル)ナフタレンの合成)
合成例1において、フェニルボロン酸の代わりに2-ナフタレンボロン酸を用いた以外は同様の方法により、目的の1-ブロモ-4-(ナフタレン-2-イル)ナフタレン7.5g(収率43%)を白色結晶として得た。
【0076】
合成例3(2-(ビフェニル-2-イル)-6-ブロモナフタレンの合成)
市販の2,6-ジブロモナフタレン15g、2-ビフェニルボロン酸12.5g、及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.8gを混合し、アルゴン置換した。トルエン250ml、及び2M炭酸ナトリウム水溶液90mlを加え、7時間加熱還流した。
放冷後、トルエンで有機層を抽出し、水・飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的の2-(ビフェニル-2-イル)-6-ブロモナフタレン10.9g(収率58%)を白色結晶として得た。
【0077】
合成例4(9-(ナフタレン-2-イル)アントラセンの合成)
9-ブロモアントラセン22.5g、2-ナフタレンボロン酸15.8g、及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム2.0gを混合し、アルゴン置換した。トルエン150ml、及び2M炭酸ナトリウム水溶液140mlを加え、7時間加熱還流した。
放冷後、析出晶を濾別しエタノール、トルエンにて洗浄した。得られた結晶をトルエンから再結晶、ろ過・乾燥することにより、目的の9-(ナフタレン-2-イル)アントラセン23.1gを得た(収率87%)。
【0078】
合成例5(9-ブロモ-10-(ナフタレン-2-イル)アントラセンの合成)
9-(ナフタレン-2-イル)アントラセン23.1gをDMF(シメチルホルムアミド)250mlに分散し、室温でNBS(N-ブロモスクシンイミド)14.9g DMF溶液(150ml)を滴下した。室温で7時間攪拌した後、一晩放置した。水200mlを加え、析出晶を濾別、エタノールで十分に洗浄、乾燥することにより、目的の9-ブロモ-10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン28.8gをベージュ色結晶として得た(収率99%)。
【0079】
合成例6(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-ボロン酸の合成)
アルゴン雰囲気下、9-ブロモ-10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン28.8gに脱水トルエン150ml、脱水エーテル150mlを加え、-63℃に冷却した。1.58M-ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液58mlを滴下し、-63℃で30分間攪拌後、-10℃まで昇温した。再び-70℃まで冷却し、ボロン酸トリメチルエステル23.4ml脱水エーテル溶液を徐々に滴下した。-70℃にて2時間攪拌した後、徐々に室温まで昇温した。一晩放置後、10%塩酸水溶液で酸性化し、トルエンで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、トルエン/ヘキサンから結晶化、ろ過・乾燥することで目的の10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-ボロン酸17gをベージュ色結晶として得た(収率65%)。
【0080】
合成例7(9-フェナンスレンボロン酸の合成)
9-ブロモフェナンスレン38.6gに脱水トルエン80ml、脱水THF(テトラヒドロフラン)160mlを加え、-40℃に冷却した。1.58Mノルマルブチルリチウムヘキサン溶液106mlを滴下し、-40℃で30分間攪拌後、-10℃まで昇温した。再び-70℃まで冷却し、ボロン酸トリメチルエステル50.0ml脱水THF溶液を徐々に滴下した。-70℃にて2時間攪拌した後、徐々に室温まで昇温した。一晩放置後、10%塩酸水溶液100mlを加えて攪拌し、トルエンで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、トルエン/ヘキサンから結晶化、ろ過・乾燥することで目的の9-フェナンスレンボロン酸21.5gを淡茶色結晶として得た(収率64%)。
【0081】
合成例8(10-(フェナンスレン-9-イル)アントラセン-9-ボロン酸の合成)
合成例4?6において、出発原料として2-ナフタレンボロン酸の代わりに9-フェナンスレンボロン酸を用いた以外は、同様の方法により10-(フェナンスレン-9-イル)アントラセン-9-ボロン酸を合成した。
【0082】
製造例1(化合物AN7の合成)
1-ブロモ-4-フェニルナフタレン5.0g、10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-ボロン酸7.38g、及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.61gを混合し、アルゴン置換した。DME(ジメトキシエタン)100ml及び2M炭酸ナトリウム水溶液30mlを加え、10時間加熱還流した。
放冷後、析出晶を濾別し、水、メタノール、トルエンにて洗浄した。得られた結晶をトルエンから再結晶、ろ過・乾燥することにより、目的の化合物AN7 6.37gをクリーム色結晶として得た(収率71%)。
この化合物のFD‐MS(フィールドディソープションマス分析)は、C_(40)H_(26)=506に対し、m/z(測定値)=506であることから、目的化合物であると確認した。
【0083】
製造例2(化合物AN8の合成)
製造例1において、1-ブロモ-4-フェニルナフタレンの代わりに1-ブロモ-4-(ナフタレン-2-イル)ナフタレンを用いた以外は、同様の方法により目的の化合物AN8をクリーム色結晶として得た(収率63%)。
この化合物のFD‐MSは、C_(44)H_(28)=556に対し、m/z=556であることから、目的化合物であると確認した。
【0084】
製造例3(化合物AN11の合成)
製造例1において、1-ブロモ-4-フェニルナフタレンの代わりに2-ブロモナフタレンを、10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-ボロン酸の代わりに10-(フェナンスレン-9-イル)アントラセン-9-ボロン酸を用いた以外は、同様の方法により目的の化合物AN11をクリーム色結晶として得た(収率67%)。
この化合物のFD‐MSは、C_(38)H_(24)=480に対し、m/z=480を与えた。
【0085】
製造例4(化合物AN13の合成)
製造例1において、1-ブロモ-4-フェニルナフタレンの代わりに2-(ビフェニル-2-イル)-6-ブロモナフタレンを、10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-ボロン酸の代わりに10-(フェナンスレン-9-イル)アントラセン-9-ボロン酸を用いた以外は、同様の方法により目的の化合物AN13をクリーム色結晶として得た(収率67%)。
この化合物のFD‐MSは、C_(50)H_(32)=632に対し、m/z=632を与えた。
【0086】
製造例5(化合物AN44の合成)
製造例1において、1-ブロモ-4-フェニルナフタレンの代わりに1-ブロモナフタレンを用いた以外は、同様の方法により目的の化合物AN44をクリーム色結晶として得た(収率69%)。
この化合物のFD‐MSは、C_(34)H_(22)=430に対し、m/z=430を与えた。
【0087】
製造例6(化合物AN6の合成)
製造例1において、1-ブロモ-4-フェニルナフタレンの代わりに2-ブロモ-6-フェニルナフタレンを用いた以外は、同様の方法により目的の化合物AN6をクリーム色結晶として得た(収率54%)。
この化合物のFD‐MSは、C_(40)H_(26)=506に対し、m/z=506を与えた。
【0088】
製造例7(化合物AN12の合成)
製造例1において、1-ブロモ-4-フェニルナフタレンの代わりに2-ブロモ-6-フェニルナフタレンを、10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-ボロン酸の代わりに10-(フェナンスレン-9-イル)アントラセン-9-ボロン酸用いた以外は、同様の方法により目的の化合物AN13をクリーム色結晶として得た(収率60%)。
この化合物のFD‐MSは、C_(44)H_(28)=556に対し、m/z=556を与えた。
【0089】
実施例1(有機EL素子の製造)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmの下記N,N’-ビス(N,N’-ジフェニル-4-アミノフェニル)-N,N-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル膜(以下「TPD232膜」)を成膜した。このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。次に、このTPD232膜上に膜厚20nmの下記N,N,N’,N’-テトラ(4-ビフェニル)-ジアミノビフェニレン層(以下「TBDB層」)を成膜した。この膜は正孔輸送層として機能する。さらに膜厚40nmの前記化合物AN7を蒸着し成膜した。同時に発光材料として、下記のスチリル基を有するアミン化合物D1をAN7に対し、重量比AN7:D1=40:3で蒸着した。この膜は、発光層として機能する。この膜上に膜厚10nmのAlq膜を成膜した。これは、電子注入層として機能する。この後、還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)と下記Alqを二元蒸着させ、電子注入層(又は陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子について、発光効率を測定し、さらに初期輝度を1000nitとして半減寿命を測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
【化12】

【0091】
【化13】

【0092】
実施例2?5及び参考例1?2(有機EL素子の製造)
実施例1において、発光層の材料として化合物AN7の代わりに表1に記載の化合物を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、実施例1と同様にして発光効率及び半減寿命を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0093】
参考例3(有機EL素子の製造)
実施例1において、発光層の材料として化合物AN7の代わりにAN11を、アミン化合物D1の代わりにアミン化合物D2を用いた以外は同様にして有機EL素子を作成し、実施例1と同様にして発光効率及び半減寿命を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0094】
【化14】

【0095】
比較例1
実施例1において、発光層の材料として化合物AN7の代わりに下記an1を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、実施例1と同様にして発光効率及び半減寿命を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0096】
【化15】

【0097】
【表1】

【0098】
表1に示したように、実施例1?5の有機EL素子は、比較例1の素子に対して、発光効率が高く、長寿命であった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上、詳細に説明したように、一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる本発明の有機EL素子用発光材料又は有機EL素子用材料を用いた有機EL素子は、発光効率が高く、長寿命である。このため、長期間の継続使用が想定される有機EL素子として有用である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【化1】

(式中、A^(1)は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
A^(2)は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar^(1)は、水素原子であり、Ar^(2)は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基である。
R^(1)?R^(10)は、水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
一般式(1)において、前記Ar^(1)が水素原子であり、Ar^(2)がフェニル基である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【請求項5】
前記非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基を有する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光帯域が、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記発光層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記有機薄膜層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料をホスト材料として含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記発光層が、さらにアリールアミン化合物を含有する請求項10?12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記発光層が、さらにスチリルアミン化合物を含有する請求項10?12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-01-31 
結審通知日 2017-02-02 
審決日 2017-02-20 
出願番号 特願2008-212714(P2008-212714)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 宏樹  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 岩田 行剛
豊永 茂弘
登録日 2011-11-18 
登録番号 特許第4866885号(P4866885)
発明の名称 有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料  
代理人 橋口 尚幸  
代理人 大谷 保  
代理人 服部 誠  
代理人 増井 和夫  
代理人 東平 正道  
代理人 加藤 志麻子  
代理人 加藤 志麻子  
代理人 大谷 保  
代理人 服部 誠  
代理人 小林 浩  
代理人 片山 英二  
代理人 片山 英二  
代理人 山下 耕一郎  
代理人 東平 正道  
代理人 山下 耕一郎  
代理人 齋藤 誠二郎  
代理人 石原 俊秀  
代理人 小林 浩  
代理人 石原 俊秀  

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