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審決分類 審判 全部無効 特123条1項5号  D06H
審判 全部無効 2項進歩性  D06H
管理番号 1328127
審判番号 無効2015-800179  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-09-09 
確定日 2017-05-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第5732174号発明「管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5732174号の請求項1ないし13に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成23年 9月 7日 本件出願(特願2014-529596、パリ条約による優先権主張、2011年9月7日、大韓民国)
平成27年 4月17日 設定登録(特許第5732174号)
平成27年 9月 9日 本件無効審判請求
平成27年12月15日付 請求人あて通知書
平成28年 1月 6日 請求人・上申書
平成28年 1月15日 請求書副本送達
平成28年 6月15日 請求人・上申書
平成28年 6月29日付 審決の予告

本件は、特許管理人がないため、請求書副本を、設定登録時の被請求人住所に送達したところ、転居先不明であるとして、送達できなかった。
そこで、請求人上申書により判明した、被請求人新住所に、特許法第192条第2、3項の規定により、送達したところ、答弁期間内に何らの応答もなかった。
同様に、審決の予告を、被請求人新住所に送達したところ、指定期間内に何らの応答もなかった。
なお、被請求人から、住所変更届の提出がないため、本書における被請求人住所は、旧住所で表示した。

第2.本件発明
本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下「本件発明1ないし13」という。)は、以下のとおりである。なお、A、B等の分説符号は、当審で付した。

「【請求項1】
A.バイアス織物製造装置において、
B.経糸および緯糸の交差角が90度で製織された管状織物を案内する一対のガイドバーを有するガイド手段;
C.前記ガイド手段によって案内される前記管状織物の進行方向に対して斜め方向に前記管状織物の放射状一側を裁断する円板状カッティングブレードを有するカット手段;
D.および前記ガイド手段を介して連続的に前記管状織物を回転させながら案内し、前記カット手段によって裁断された前記バイアス織物を巻く巻取りローラーを有する巻取り手段、を含んでなる構成において、
E.案内される前記管状織物の裁断と裁断された前記バイアス織物の巻き取りが容易になるように前記管状織物間にエアを供給する送風手段をさらに具備し、前記送風手段はエアブロワー;一対の前記ガイドバーの一端の間に配置される送風ノズル;および前記エアブロワーと送風ノズルを接続するフレキシブル接続管;を具備する
F.ことを特徴とする管状織物を使用した継ぎ目のないバイアス織物の製造装置。

【請求項2】
G.請求項1において、前記ガイドバーは棒形状を有して回転可能に配置され、前記巻取り手段の前面から前記巻取り手段の前面上側に、前記巻取りローラーの回転中心軸に対して前記ガイドバーの回転中心軸が斜交をなすように延長されることを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項3】
H.請求項1において、一対の前記ガイドバーには前記管状織物が挿入され、一対の前記ガイドバーに挿入された前記管状織物は断面が「⊂⊃」字状になるように広げられることを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項4】
I.請求項1において、前記管状織物は前記ガイドバーと斜交をなす前記巻取りローラーに前記カット手段によって裁断された前記バイアス織物が前記巻取りローラーの回転方向に沿って巻き取られ、前記管状織物は前記巻取りローラーに対して斜めに案内されることによって一側に回転することを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項5】
J.請求項1において、前記ガイド手段は前記管状織物の進行方向に対して前記カット手段が所定のバイアス角度だけ斜め方向となるように前記ガイドバーを回転させる第1角度調整部をさらに具備し、
前記第1角度調整部は;それぞれの前記ガイドバー一端に配置される平板状の第1固定板;および前記固定板に回転可能に配置される平板状の第1回転板;を具備し、前記第1回転板の上部面上には前記ガイドバーを回転可能に支持する軸受が装着されることを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項6】
K.請求項5において、前記第1回転板の下部面中央には回転突起が突出して形成され、前記第1固定板には前記回転突起が回転可能に挿入される回転孔が貫通するように形成されることを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項7】
L.請求項6において、前記第1回転板の回転角度を制御するために、前記第1回転板および前記第1固定板には、第1角度調整長孔および第1固定孔が形成され、前記第1角度調整長孔は前記回転突起に干渉されないように、前記回転突起を中心とする弧形状に湾曲した曲率で提供され、前記第1固定孔は前記回転孔に干渉されないように、前記第1角度調整長孔と向き合うように貫通して形成され、前記第1角度調整長孔および前記第1固定孔には、前記第1回転板を前記第1固定板に固定させるための第1固定ボルトが前記第1角度調整長孔を経て前記第1固定孔に締結され、前記第1回転板を前記第1固定板側に加圧固定することを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項8】
M.請求項5において、前記ガイド手段は前記第1角度調整部と共に、ガイドバー間の幅の長さを調整する幅調整部をさらに具備し、前記幅調整部は;それぞれの前記第1固定板の下部に配置され、前記巻取りローラーの回転中心軸の長さ方向に沿って延長されるスクリュー軸を具備し、それぞれの前記第1固定板下部には、前記スクリュー軸が貫通締結されるスライドブロックが装着され、それぞれの前記スクリュー軸には動作ハンドルが装着されることを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項9】
N.請求項1において、前記円板状カッティングブレードは案内される前記管状織物の経糸方向に対して斜めに配置されるように、前記円板状カッティングブレードの回転中心軸は前記巻取りローラーの回転水平をなすように配置されることを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項10】
O.請求項9において、前記円板状カッティングブレードは、下部側に前記円板状カッティングブレードの一部分が露出するハウジングによって覆われ、前記ハウジングの一側には、円板状カッティングブレードに接続して前記円板状カッティングブレードを回転させるカッティングブレード駆動モーターが装着されることを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項11】
P.請求項10において、前記カット手段は前記円板状カッティングブレードの裁断位置を調整する裁断位置調整部をさらに具備し、前記裁断位置調整部は、前記ハウジングの上部に離隔して配置され、前記円板状カッティングブレードの回転中心軸方向に沿って水平に延長される一対の裁断位置調整ガイドレールと、前記裁断位置調整ガイドレールにスライド可能に挿入される裁断位置調整ガイドブロック;を具備し、前記裁断位置調整ガイドブロックは、前記ハウジングの上部に一体に形成され、前記裁断位置調整ガイドブロックの上部にはそれぞれの前記裁断位置調整ガイドブロックを上部締結して前記裁断位置調整ガイドレールを加圧固定するストップボルトが締結されることを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項12】
Q.請求項1において、前記送風手段は前記管状織物の進行方向に対して前記送風ノズルが所定の角度となるように前記送風ノズルを回転させる第2角度調整部をさらに具備し、前記第2角度調整部は、一対のガイドバー間に配置される第2固定板;および上部に前記送風ノズルが装着され、前記第2固定板に回転可能に装着される第2回転板を具備することを特徴とする管状織物を使用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。

【請求項13】
R.請求項12において、前記第2回転板の回転角度を制御するために、前記第2回転板および前記第2固定板には、第2角度調整長孔および第2固定孔が形成され、前記第2角度調整長孔は、弧形状に湾曲した曲率で提供され、前記第2固定孔は、前記第2角度調整長孔と向き合うように貫通して形成され、前記第2角度調整長孔および前記第2固定孔には、前記第2回転板を前記第2固定板に固定させるための第2固定ボルトが前記第2角度調整長孔を経て前記第2固定孔に締結され、前記第2回転板を前記第2固定板側に加圧固定することを特徴とする管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置。」

第3.請求人の主張
1.主張の要点
請求人は、以下の理由により、本件発明1ないし13に係る特許は、特許法(以下、特記なきは特許法である。)第123条第1項第2号、第4号、第5号に該当し、無効とするとの審決を求めている。

(1)29条2項
理由1:本件発明1、3ないし13に対し、甲3を主たる証拠とし、進歩性欠如。
(請求書7.(3-1))

(2)36条4項1号
理由2:本件発明1ないし13に対し、本件発明は「エアブロワー;一対の前記ガイドバーの一端の間に配置される送風ノズル;および前記エアブロワーと送風ノズルを接続するフレキシブル接続管;を具備する」については、発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されていない。
(請求書7.(3-2))

(3)36条6項2号
理由3:本件発明1ないし13に対し、エアブロワーとフレキシブル接続管との接続、フレキシブル接続管と送風ノズルとの接続が、いかなる接続なのか明確でなく、特定できない。
(請求書7.(3-3))

(4)原文新規事項
理由4:本件発明2に対し、「前記巻取り手段の前面から前記巻取り手段の前面上側に」については、外国語書面に記載した事項の範囲内にない。
(請求書7.(3-4))

2.証拠
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。平成28年6月15日付け上申書添付の証拠は、番号が付されていないため、甲第16号証とする。
以下、「甲第1号証」を「甲1」のように略記する。

甲1 本件特許公報
甲2の1 2005(平成17)年9月8日付け伝票番号31625番にかかる売上伝票の写し
甲2の2 2005(平成17)年9月8日付け伝票番号31628番にかかる売上伝票の写し
甲2の3 2005(平成17)年10月17日付け支払証明書の写し
甲3の1 BT-303A型バイアス裁断機の外観写真
甲3の2 銘板の写真
甲3の3 管状織物案内状況写真
甲3の4 ガイドバー延長状況写真
甲3の5 カット手段一方側面写真
甲3の6 カット手段他方側面写真
甲3の7 カット手段他方側面拡大写真
甲3の8 カット手段下部写真
甲3の9 管状織物カット状況写真
甲3の10 巻取り手段及びガイドバー付け根部写真
甲3の11 巻取り手段写真
甲3の12 巻取り手段従動側写真
甲3の13 バイアス織物巻取り状況の第1写真
甲3の14 バイアス織物巻取り状況の第2写真
甲3の15 バイアス織物巻取り状況の第3写真
甲3の16 バイアス織物巻取り状況の第4写真
甲3の17 エアーブロア背面側写真
甲3の18 エアーブロア正面側写真
甲3の19 エアー吹込み状況の第1写真
甲3の20 エアー吹込み状況の第2写真
甲3の21 エアー吹込み状況の第3写真
甲3の22 エアー吹込み状況の第4写真
甲3の23 エアー吹込み状況の第5写真
甲3の24 エアー吹込み状況の第6写真
甲3の25 エアー吹込み状況の第7写真
甲3の26 エアー吹込み状況の第8写真
甲3の27 エアー吹込み状況の第9写真
甲3の28 エアー吹込み状況の第10写真
甲3の29 ガイドバー付け根部写真
甲3の30 ガイドバー付け根部平面写真
甲3の31 ガイドバー付け根部第1分解状況の写真
甲3の32 ガイドバー付け根部第2分解状況の写真
甲3の33 ガイドバー幅調整部写真
甲3の34 巻取り駆動チェーンの写真
甲3の35 ガイドバー回転状況第1写真
甲3の36 ガイドバー回転状況第2写真
甲3の37 ガイドバー回転状況第3写真
甲4 実願昭61-34863号(実開昭62-148599号)のマイクロフィルム
甲5 特開昭63-159576号公報
甲6 特開平8-81851号公報
甲7 特開平10-168746号公報
甲8 特開2008-115498号公報
甲9 特開平11-14252号公報
甲10 特開昭49-17590号公報
甲11 特開平7-278931号公報
甲12 特開平9-296359号公報
甲13 国際公開第2013/035898号
甲14 特開平6-184924号公報
甲15 特開平7-236786号公報
甲16 バイヤス裁断機 BT-303型 使用説明書 株式会社エヌシーエー

第4.被請求人の主張
被請求人からは、何ら応答はない。

以下、事案に鑑み、第29条第2項(理由1)、原文新規事項(理由4)の順に検討する。

第5.第29条第2項(理由1)についての判断
1.本件発明
本件発明1、3ないし13は、上記第2.のとおりと認められる。

2.甲3の公然実施
(1)証拠記載事項
甲2の1(伝票番号31625の売上伝票)には、以下の記載がある。
上部中央に「売上伝票」、右側に「株式会社エヌシーエー」、左側に「キャプテン(株)様」
枠囲みされた日付欄に「05.09.08」
枠囲みされた区分欄に「売上」、商品名欄に「(19013033)BT-303A型 バイアス裁断機」、合計欄に「2,887,500」。

甲2の2(伝票番号31628の売上伝票)には、以下の記載がある。
上部中央に「売上伝票」、右側に「株式会社エヌシーエー」、左側に「キャプテン(株)様」
枠囲みされた日付欄に「05.09.08」
枠囲みされた区分欄に「売上」、商品名欄に「(19994032)別注 紙管棒 2605mm」、「(19994033)別注 紙管用内爪 32φ」、「(00000225)値引」、合計欄に「168,000」。

甲2の3(支払証明書)には、以下の記載がある。
上部に「支払証明書」、「17年10月17日」、「キャプテン(株)殿」
枠囲みされた請求金額欄に「3,055,500」

甲3の1?甲3の37は、キャプテン(株)において、平成27年6月17日に撮影された「BT-303A型 バイアス裁断機」の写真である。
甲3の2によれば、銘板に「MODEL BT-303A」、「NCA CO.,LTD」と記載されている。

(2)判断
甲2の1は、株式会社エヌシーエーからキャプテン株式会社に対し、「BT-303A型 バイアス裁断機」が、2005年9月8日に、2,887,500円で、販売されたことを示している。
甲2の2は、株式会社エヌシーエーからキャプテン株式会社に対し、「紙管棒 2605mm」、「紙管用内爪 32φ」が、2005年9月8日に、168,000円で、販売されたことを示している。
甲2の3は、キャプテン株式会社にあてた、平成17(2005)年10月17日付け支払証明書であり、請求金額は3,055,500円である。この金額は、甲2の1の2,887,500円と、甲2の2の168,000円の合計に相当する。
甲3の2によれば、平成27年6月17日時点で、キャプテン株式会社に存在する装置は、銘板に「MODEL BT-303A」、「NCA CO.,LTD」と記載されている。「MODEL BT-303A」は「BT-303A型」を示し、「NCA CO.LTD」は「株式会社エヌシーエー」を示している。

よって、甲3の1?甲3の37の写真に示される「BT-303A型 バイアス裁断機」が、平成17年9月頃に、株式会社エヌシーエーからキャプテン株式会社に対し、販売、すなわち有償で譲渡されたものと認められる。
また、「バイアス裁断機」は、被服の製造に用いられるものであること、被服の製造は国内外を問わず、多くの事業所等で行われていること、本「バイアス裁断機」の販売に際し秘密保持をうかがわせる事情はないこと、を考慮すれば、「BT-303A型 バイアス裁断機」は、本件出願前に公然と実施されたものと認められる。

3.甲3発明
(1)甲3事項
甲3の1?甲3の37は、「BT-303A型 バイアス裁断機」の写真であり、甲16(使用説明書)をも踏まえると、以下が看取できる。

ア.甲3の1、甲3の2(BT-303A型バイアス裁断機の外観)
バイアス裁断機の本体から、2本のバーが略水平に突出している。
2本のバーの間に、中空矩形部材が略水平に突出している。
本体の左下部分に銘板が取り付けられている。
ここで、中空矩形部材は、甲16の2ページの丸13で示される部材であり、「ブロアー送風パイプ」である。

イ.甲3の3(管状織物、ガイドバー)
バイアス裁断機において、青色の布状物は、2本のバーに外挿され、断面が「⊂⊃」字状になるように広げられ、案内されている。
バイアス裁断機から略水平に突出したガイドレールとそこに取り付けられた白色物体とを備える。
ここで、甲16の8ページに、「二本のバーに生地の始を挿入します。」との記載があり、青色の布状物は生地、すなわち「管状織物」である。また、「管状織物」は、2本のバーにより案内されることから、バーは「ガイドバー」である。

ウ.甲3の4(ガイドバー、巻取りローラー)
バイアス裁断機のガイドバーが、ローラ部材の前面からローラ部材の前面外側に、ローラ部材の中心軸に対してガイドバーの中心軸が斜交をなすように延長している。
ローラ部材には、管状織物が巻き取られており、ローラ部材は「巻取りローラー」である。
バイアス裁断機のうち、本体から略水平に突出するガイドレールとそこに取り付けられた白色物体とが示され、白色物体には「NCA」と表記されている。

エ.甲3の5(カット手段)
白色物体の「NCA」と表記された側面が示されている。白色物体の底から円板が突出している。

オ.甲3の6、甲3の7(カット手段)
バイアス裁断機から略水平に突出したガイドレールおよびそこに取り付けられた白色物体が示されている。
白色物体が基板に取り付けられており、その基板に円板が取り付けられており、その円板が黄色く透明な板によって覆われている。
円板の回転中心軸が巻取りローラーの回転水平をなしガイドバーが延びる方向に対して斜めに配置されている。
基板は2本のボルトによってガイドレールに固定されている。

カ.甲3の8(カット手段、駆動モーター)
甲3の8は、甲3の4?甲3の7の下部であり、基板に円板を駆動する駆動モーターが取り付けられており、その駆動モーターが円板に接続されている。

キ.甲3の9(カット手段、管状織物、ガイドバー)
甲3の6?甲3の8に示された円板が管状織物をカットしており、円板は「円板状カッティングブレード」である。そうすると、円板が取り付けられる白色物体は「ハウジング」ということができる。
管状織物は、2本のガイドバーに外挿され、断面が「⊂⊃」字状になるように広げられている。

ク.甲3の10(ガイドバーの幅調整部、第1角度調整部)
バイアス裁断機の背面のフレームにローラ部材等が設けられている。
2本のガイドバーの幅の長さを調整する幅調整部が、ガイドレールに沿って移動可能である。
ガイドバーの第1角度調整部が設けられている。

ケ.甲3の11(巻取りローラー)
甲3の10に示されたローラ部材等が示されており、中央のローラは、管状織物が巻き取られており、甲3の4で示した「巻取りローラー」である。
右側ローラは、管状織物を介して巻取りローラーへ接触している。
上側ローラは、管状織物を介して巻取りローラーへ接触している。

コ.甲3の12(巻取りローラー)
甲3の11に示された右側ローラは、一端が軸受で支えられ、ローラ表面にローレット加工が施されている。

サ.甲3の13?甲3の16(管状織物の巻取り状況)
2本のガイドバーに外挿された管状織物が、その軸方向に順次回転しながら移動している。
管状織物が、ガイドバーと斜交をなす、甲3の11でいう中央のローラ(巻取りローラー)に順次巻き取られ、管状織物の継ぎ目が中央のローラ上に次第に露出する。
2本のバーに外挿された管状織物は、断面が「⊂⊃」字状になるように広げられている

シ.甲3の17、甲3の18(ブロアー送風パイプ、ブロアー、接続菅、第2角度調整部)
甲3の1でいう「ブロアー送風パイプ」の端部に管を介して円筒状部材が接続されている。ここで、円筒状部材は、甲16の7ページの丸1で示される部材であり、「風」を送る「ブロアー」である。よって、管は「接続菅」である。
また、接続管の端部には、ブロアー送風パイプの端部が挿入され、ともに円筒状であって、調節ネジがあることから、ブロアー送風パイプの向きを変えられる第2角度調整部を有すると言える。

ス.甲3の19?甲3の28(送風手段)
バイアス裁断機が管状織物の中に空気を吹込んだ結果その管状織物が膨らむ状況が示されている。
これにより、管状織物のねじれが解け、管状織物間の距離が広がり、管状織物の裁断と裁断されたバイアス織物の巻き取りが容易になる。
すなわち、甲3の17?甲3の18に示すブロアー、接続管、ブロアー送風パイプは、案内される管状織物の裁断と裁断されたバイアス織物の巻き取りが容易になるように管状織物間にエアを供給する送風手段であると言える。

セ.甲3の29(ガイドバー付け根部)
甲3の10に示されたガイドレール上を走行可能な車輪に支持された青板。
上記青板の上に載せられている銀色板。
上記銀色板の上面に固定されている筒状の軸受。
上記軸受を貫通するガイドバー。
上記バーの一端に巻回される駆動ベルト。
すなわち、ガイドバーは回転可能である。

ソ.甲3の30(ガイドバー付け根部)
甲3の29に示され、ガイドバー一端に配置され中心領域を囲む角度調整長孔が設けられた、銀色板。
甲3号証の29に示された青板。
甲3号証の29に示された筒状の軸受。
銀色板を青板に固定させるための固定ボルト。

タ.甲3の31(ガイドバー付け根部)
青板の中央部分に貫通した貫通孔。
回転孔に干渉されないように長孔と向き合うよう青板に貫通して形成される孔。

チ.甲3の32(ガイドバー付け根部)
銀色板の中心領域に設けられたネジ穴とそのネジ穴を囲む長孔。
青板の中央部分の穴から突出するネジ。
ここで、長孔は、青板の中央部分の穴から突出するネジに干渉されないように、これを中心とする弧形状に湾曲した曲率であることは明らかである。
青板はガイドバー一端に配置される平板状の固定板であり、銀色板は固定板に回転可能に配置される平板状の回転板であると言える。
固定板の中央部分の穴から突出するネジは、回転板の下部面中央のネジ穴からねじ込まれることにより、回転板の下部面中央から突出して形成されている回転突起となる。
これらの構成と甲3の30とにより、角度調整長孔および固定孔には回転板を固定板に固定させるための固定ボルトが角度調整長孔を経て固定孔に締結されていると言える。
これらによって構成される第1角度調整部は管状織物の進行方向に対してカット手段が所定のバイアス角度だけ斜め方向となるようにガイドバーを回転させることができると言える。

ツ.甲3の33(ガイドバーの幅調整部)
甲3の29に示された固定板の端部が筒状になっておりその筒状部分を丸棒が貫通しておりその筒状の端部に固定用ネジが設けられている
甲3の12において示され表面にローレット加工が施されたローラーの一端にチェーンが設けられている
したがって、甲3の33から、甲3の1に示されたバイアス裁断機がガイドバーの幅調整部を備えており、ローレット加工を施されたローラーがチェーンによって駆動されると言える。

テ.甲3の34(巻取り駆動部)
ローレット加工が施されたローラーの一端にチェーンが接続されている。
したがって、甲3の11、甲3の12、甲3の33、甲3の34とから、ローレット加工を施されたローラー(駆動ローラー)がチェーンにより駆動され、かつ、管状織物を介して巻取りローラーを駆動すると言える。

ト.甲3の35?甲3の37(ガイドバーの回転)
ガイドバー上の白点が移動している状況が示されている。
よって、バーは回転可能だと言える。

(2)甲3発明
甲3の1?甲3の37、甲16によれば、「BT-303A型 バイアス裁断機」は、以下の甲3発明のとおりと認められる。

「a.バイアス裁断機において、
b.管状織物を案内する一対のガイドバーを有するガイド手段;
c.前記ガイド手段によって案内される前記管状織物の進行方向に対して斜め方向に前記管状織物の放射状一側を裁断する円板状カッティングブレードを有するカット手段;
d.および前記ガイド手段を介して連続的に前記管状織物を回転させながら案内し、前記カット手段によって裁断された前記バイアス織物を巻く巻取りローラーを有する巻取り手段、を含んでなる構成において、
e.案内される前記管状織物の裁断と裁断された前記バイアス織物の巻き取りが容易になるように前記管状織物間に風を供給する送風手段をさらに具備し、前記送風手段はブロアー;一対の前記ガイドバーの一端の間に配置されるブロアー送風パイプ;および前記ブロアーとブロアー送風パイプを接続する接続管;を具備し、
h.一対の前記ガイドバーには前記管状織物が挿入され、一対の前記ガイドバーに挿入された前記管状織物は断面が「⊂⊃」字状になるように広げられ、
i.前記管状織物は前記ガイドバーと斜交をなす前記巻取りローラーに前記カット手段によって裁断された前記バイアス織物が前記巻取りローラーの回転方向に沿って巻き取られ、前記管状織物は前記巻取りローラーに対して斜めに案内されることによって一側に回転し、
j.前記ガイド手段は前記管状織物の進行方向に対して前記カット手段が所定のバイアス角度だけ斜め方向となるように前記ガイドバーを回転させる第1角度調整部をさらに具備し、
前記第1角度調整部は;それぞれの前記ガイドバー一端に配置される平板状の固定板;および前記固定板に回転可能に配置される平板状の回転板;を具備し、前記回転板の上部面上には前記ガイドバーを回転可能に支持する軸受が装着され、
k.前記第1回転板の下部面中央には回転突起が突出して形成され、前記固定板には前記回転突起が回転可能に挿入される回転孔が貫通するように形成され、
l.前記第1回転板の回転角度を制御するために、前記回転板および前記固定板には、角度調整長孔および固定孔が形成され、前記角度調整長孔は前記回転突起に干渉されないように、前記回転突起を中心とする弧形状に湾曲した曲率で提供され、前記固定孔は前記回転孔に干渉されないように、前記角度調整長孔と向き合うように貫通して形成され、前記角度調整長孔および前記固定孔には、前記回転板を前記固定板に固定させるための固定ボルトが前記角度調整長孔を経て前記固定孔に締結され、前記回転板を前記固定板側に加圧固定し、
m.前記ガイド手段は前記第1角度調整部と共に、ガイドバー間の幅の長さを調整する幅調整部をさらに具備し、
n.前記円板状カッティングブレードは案内される前記管状織物の経糸方向に対して斜めに配置されるように、前記円板状カッティングブレードの回転中心軸は前記巻取りローラーの回転水平をなすように配置され、
o.前記円板状カッティングブレードは、下部側に前記円板状カッティングブレードの一部分が露出するハウジングによって覆われ、前記ハウジングの一側には、円板状カッティングブレードに接続して前記円板状カッティングブレードを回転させるカッティングブレード駆動モーターが装着され、
p.前記カット手段は前記円板状カッティングブレードの裁断位置を調整する裁断位置調整部をさらに具備し、
q.前記送風手段は前記管状織物の進行方向に対して前記送風ノズルが所定の角度となるように前記送風ノズルを回転させる第2角度調整部をさらに具備する、
管状織物を使用したバイアス織物の製造装置。」

4.本件発明1と甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「バイアス裁断機」は本件発明1の「バイアス織物製造装置」に相当し、同様に、「風」は「エア」に、「ブロアー」は「エアブロワー」に、「ブロアー送風パイプ」は「送風ノズル」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「バイアス織物製造装置において、
管状織物を案内する一対のガイドバーを有するガイド手段;
前記ガイド手段によって案内される前記管状織物の進行方向に対して斜め方向に前記管状織物の放射状一側を裁断する円板状カッティングブレードを有するカット手段;
および前記ガイド手段を介して連続的に前記管状織物を回転させながら案内し、前記カット手段によって裁断された前記バイアス織物を巻く巻取りローラーを有する巻取り手段、を含んでなる構成において、
案内される前記管状織物の裁断と裁断された前記バイアス織物の巻き取りが容易になるように前記管状織物間にエアを供給する送風手段をさらに具備し、前記送風手段はエアブロワー;一対の前記ガイドバーの一端の間に配置される送風ノズル;および前記エアブロワーと送風ノズルを接続する接続管;を具備する
管状織物を使用したバイアス織物の製造装置。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:管状織物を使用したバイアス織物について、本件発明1は「経糸および緯糸の交差角が90度で製織された」管状織物を使用した「継ぎ目のない」バイアス織物であるが、甲3発明は明らかでない点。
相違点2:接続管について、本件発明1は「フレキシブル」接続菅であるが、甲3発明は明らかでない点。

5.相違点の判断
(1)相違点1
甲4の第3頁第6?10行、第4頁第9行?第5頁第1行、第4図、甲5の特許請求の範囲、甲6の段落0002、0007?0008、0026、図1、甲7の段落0006、0016、図1の記載からみて、バイアス織物を製造するために使用され、経糸と緯糸とが直交する、継ぎ目のない管状織物は周知である。
甲3発明は、「経糸と緯糸とが直交する、継ぎ目のない管状織物」にも適用できることから、相違点1は、製造対象を単に特定したにすぎない。

(2)相違点2
甲8の段落0034、図2、甲9の段落0060、0063、図14、甲10の第2ページ左上欄第2?9行、第2ページ右上欄第9?12行、第1図、甲11の段落0021、図2、甲12の段落0017、0021、図2の記載からみて、空気を供給するためエアブロワーにフレキシブル接続管を接続しそのフレキシブル接続管の先端に送風ノズルを接続することは、周知である。
甲3発明においても、フレキシブル接続菅を利用することで、接続対象の位置の変化に対応できることから、相違点2は、必要に応じて採用しうる設計的事項にすぎない。

(3)小括
また、これらを総合しても、格別の技術的意義が生じるものではない。
よって、本件発明1は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本件発明3
本件発明1と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明1と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに「一対の前記ガイドバーには前記管状織物が挿入され、一対の前記ガイドバーに挿入された前記管状織物は断面が「⊂⊃」字状になるように広げられる」点でも一致する。
相違点1、2については、上記5.で検討したとおりである。
また、これらを総合しても、格別の技術的意義が生じるものではない。
よって、本件発明3は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
以下、同様の相違点については、検討したとおりである旨、相違点を総合しても、格別の技術的意義が生じるものではない旨の記載を省略する。

7.本件発明4
本件発明4と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明1と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに「前記管状織物は前記ガイドバーと斜交をなす前記巻取りローラーに前記カット手段によって裁断された前記バイアス織物が前記巻取りローラーの回転方向に沿って巻き取られ、前記管状織物は前記巻取りローラーに対して斜めに案内されることによって一側に回転する」点でも一致する。
よって、本件発明4は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.本件発明5
本件発明5と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明1と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに「前記ガイド手段は前記管状織物の進行方向に対して前記カット手段が所定のバイアス角度だけ斜め方向となるように前記ガイドバーを回転させる第1角度調整部をさらに具備し、
前記第1角度調整部は;それぞれの前記ガイドバー一端に配置される平板状の固定板;および前記固定板に回転可能に配置される平板状の回転板;を具備し、前記回転板の上部面上には前記ガイドバーを回転可能に支持する軸受が装着される」点でも一致する。
よって、本件発明5は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

9.本件発明6
本件発明6と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明5と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに「前記第1回転板の下部面中央には回転突起が突出して形成され、前記固定板には前記回転突起が回転可能に挿入される回転孔が貫通するように形成される」点でも一致する。
よって、本件発明6は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

10.本件発明7
本件発明7と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明6と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに「前記第1回転板の回転角度を制御するために、前記回転板および前記固定板には、角度調整長孔および固定孔が形成され、前記角度調整長孔は前記回転突起に干渉されないように、前記回転突起を中心とする弧形状に湾曲した曲率で提供され、前記固定孔は前記回転孔に干渉されないように、前記角度調整長孔と向き合うように貫通して形成され、前記角度調整長孔および前記固定孔には、前記回転板を前記固定板に固定させるための固定ボルトが前記角度調整長孔を経て前記固定孔に締結され、前記回転板を前記固定板側に加圧固定する」点でも一致する。
よって、本件発明7は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

11.本件発明8
(1)対比
本件発明8と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明5と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに、「前記ガイド手段は前記第1角度調整部と共に、ガイドバー間の幅の長さを調整する幅調整部をさらに具備」する点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3:幅調整部について、本件発明8は「それぞれの前記第1固定板の下部に配置され、前記巻取りローラーの回転中心軸の長さ方向に沿って延長されるスクリュー軸を具備し、それぞれの前記第1固定板下部には、前記スクリュー軸が貫通締結されるスライドブロックが装着され、それぞれの前記スクリュー軸には動作ハンドルが装着される」が、甲3発明は、そのようなものでない点。

(2)判断
甲14には以下の事項が記載されている。

「【0021】この図1,図2及び図3に示すように、布帛切断装置は、走行中の布帛Eを受ける左右一対の筒状受けローラ1,1と、受けローラ1,1上で布帛Eを切断する左右一対の回転刃2,2と、この回転刃2を加熱する加熱手段3と、回転刃2を送り方向へ回転駆動する駆動手段4と、回転刃2を受けローラ1上の布帛Eに対して所定圧力で押付ける押圧手段5と、を備えている。」

「【0048】また、ガイドレール48は移動フレーム7の上枠10に、受けローラ1と平行に固定されており、このガイドレール48に、スライド体49が摺動自在に取付けられ、スライド体49はガイドレール48に沿って移動可能となる。
【0049】スライド体49には、ガイドレール48と平行なスクリューシャフト50が螺合しており、このスクリューシャフト50の基端部は、移動フレーム7に回転自在に枢支される。さらに、スクリューシャフト50の基端には手動ハンドル51が取付けられる。
【0050】この手動ハンドル51にてスクリューシャフト50を回転させると、スライド体49が螺進退し、回転刃2,エアシリンダ43及び電気抵抗発熱体32等が一体ユニットとして、受けローラ1と平行に移動する。
【0051】これにより、布帛Eに対して左右の回転刃2,2の位置決めを行って、容易に切断済布帛E2の幅寸法を調整することができる。」

上記スクリューシャフトは、本件発明8のスクリュー軸に相当し、スライド体は、スライドブロックに相当する。上記スクリューシャフト及びスライド体は切断済布帛の幅を調整するためのものである。
上記手動ハンドルは、本件発明8の動作ハンドルに相当する。
したがって、甲14には、スクリュー軸と、スライドブロックと、動作ハンドルとを備える、相違点3に係る幅調整部が開示されている。

甲14は、布帛の切断に関するもので、本件発明8と同一技術分野のものである。
幅調整部の機構をいかにするかは、既知の機構から適宜選択しうることから、甲3発明において、甲14の機構を適用し、相違点3に係るものとすることに、困難性は認められない。

よって、本件発明8は、甲3発明、甲14記載事項、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

12.本件発明9
本件発明9と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明1と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに「前記円板状カッティングブレードは案内される前記管状織物の経糸方向に対して斜めに配置されるように、前記円板状カッティングブレードの回転中心軸は前記巻取りローラーの回転水平をなすように配置される」点でも一致する。
よって、本件発明9は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

13.本件発明10
本件発明10と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明9と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに「前記円板状カッティングブレードは、下部側に前記円板状カッティングブレードの一部分が露出するハウジングによって覆われ、前記ハウジングの一側には、円板状カッティングブレードに接続して前記円板状カッティングブレードを回転させるカッティングブレード駆動モーターが装着される」点でも一致する。
よって、本件発明10は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

14.本件発明11
(1)対比
本件発明11と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明10と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに、「前記カット手段は前記円板状カッティングブレードの裁断位置を調整する裁断位置調整部をさらに具備」する点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4:裁断位置調整部について、本件発明11は「前記ハウジングの上部に離隔して配置され、前記円板状カッティングブレードの回転中心軸方向に沿って水平に延長される一対の裁断位置調整ガイドレールと、前記裁断位置調整ガイドレールにスライド可能に挿入される裁断位置調整ガイドブロック;を具備し、前記裁断位置調整ガイドブロックは、前記ハウジングの上部に一体に形成され、前記裁断位置調整ガイドブロックの上部にはそれぞれの前記裁断位置調整ガイドブロックを上部締結して前記裁断位置調整ガイドレールを加圧固定するストップボルトが締結される」が、甲3発明は、そのようなものでない点。

(2)判断
甲15には以下の事項が記載されている。

「【0024】図1及び図2の装置の前記シート14上には、前記原反7が裁断された生地17が載せられ、該生地17の上方空間には前後2対の柄合せ板18が設置されている。該柄合せ板18は、前記左右1対の補助梁部材4上に立設された左右1対のガイド軸フレーム19間に架設された1対の主梁部材20にネジ21止め等により固定された摺動部材22の前後方向のフレーム23にネジ24で接続された接続部材25の下端をその上面要所に接着することにより位置が固定され、ネジを緩めない限り同一位置に保持されるようになっている。」

上記の1対の主梁部材は、本件発明11の一対の裁断位置調整ガイドレールに相当し、摺動部材は、裁断位置調整ガイドブロックに相当し、フレームは、ハウジングに相当する。上記の摺動部材は接続部材の位置を調整するためのものである。上記のネジは、本件発明11のストップボルトに相当する。
したがって、甲15には、一対の裁断位置調整ガイドレールと、裁断位置調整ガイドブロックと、ストップボルトとを備える、相違点4に係る位置調整部が開示されている。

甲15は、生地の裁断に関するもので、本件発明11と同一技術分野のものである。
裁断位置調整部の機構をいかにするかは、既知の機構から適宜選択しうることから、甲3発明において、甲15の機構を適用し、相違点4に係るものとすることに、困難性は認められない。

よって、本件発明11は、甲3発明、甲15記載事項、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

15.本件発明12
(1)対比
本件発明12と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明1と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに、「前記送風手段は前記管状織物の進行方向に対して前記送風ノズルが所定の角度となるように前記送風ノズルを回転させる第2角度調整部をさらに具備」する点で一致し、以下の点で相違する。
相違点5:第2角度調整部について、本件発明12は「一対のガイドバー間に配置される第2固定板;および上部に前記送風ノズルが装着され、前記第2固定板に回転可能に装着される第2回転板を具備する」が、甲3発明は、そのようなものでない点。

(2)判断
回転機構として、固定板と回転板によるものは、甲3発明の第1角度調整部にもみられるごとく、周知である。
甲3発明の第2角度調整部の回転機構をいかにするかは、既知の機構から適宜選択しうることから、甲3発明において、周知の機構を適用し、相違点5に係るものとすることに、困難性は認められない。

よって、本件発明12は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

16.本件発明13
(1)対比
本件発明13と甲3発明とを対比する。
両者は、本件発明12と同様の一致点、相違点1、2を有し、さらに、以下の点で相違する。
相違点6:第2角度調整部について、本件発明13は「前記第2回転板の回転角度を制御するために、前記第2回転板および前記第2固定板には、第2角度調整長孔および第2固定孔が形成され、前記第2角度調整長孔は、弧形状に湾曲した曲率で提供され、前記第2固定孔は、前記第2角度調整長孔と向き合うように貫通して形成され、前記第2角度調整長孔および前記第2固定孔には、前記第2回転板を前記第2固定板に固定させるための第2固定ボルトが前記第2角度調整長孔を経て前記第2固定孔に締結され、前記第2回転板を前記第2固定板側に加圧固定する」が、甲3発明は、そのようなものでない点。

(2)判断
回転機構として、固定板と回転板を用い、回転板の回転角度を制御するために、回転板および固定板には、角度調整長孔および固定孔が形成され、角度調整長孔は、弧形状に湾曲した曲率で提供され、固定孔は、角度調整長孔と向き合うように貫通して形成され、角度調整長孔および固定孔には、回転板を固定板に固定させるための固定ボルトが角度調整長孔を経て固定孔に締結され、回転板を固定板側に加圧固定するものは、甲3発明の第1角度調整部にもみられるごとく、周知である。
甲3発明の第2角度調整部の回転機構をいかにするかは、既知の機構から適宜選択しうることから、本件発明12において、周知の機構を適用し、相違点6に係るものとすることに、困難性は認められない。

よって、本件発明13は、甲3発明、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

17.小括
本件発明1、3?13は、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本件発明1、3?13に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきである。

第6.原文新規事項(理由4)についての判断
請求項2に記載の発明特定事項のうち、「前記巻取り手段の前面上側に、前記巻取りローラーの回転中心軸に対して前記ガイドバーの回転中心軸が」は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に、これに対応する記載がない。
国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面においては、「請求項2」において「巻取り手段の前面外側に、前記巻取りローラーの回転中心軸に対して前記ガイドバーの回転中心軸が」(仮訳、原文は韓国語)と記載され、発明の詳細な説明の[0018]において「ガイドバー(122)は棒形状を有し、ガイドバー(122)の回転中心軸を基準に自由に回転可能に配置され、巻取り手段(110)の前面から巻取り手段(110)の前面外側に水平に延長される。」と記載され、[0031]において「巻取り手段(110)の前面から巻取り手段(110)の前面外側に水平に延長される。」と記載されている。
また、図面の[fig.3]においては、ガイドバーが巻取り手段よりも低い位置にある。
しかし、「前記巻取り手段の前面上側に」との記載は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面のいずれにも記載がない。
したがって、請求項2の発明特定事項を「前記巻取り手段の前面上側に」とすることは、新たな技術的事項を導入するものである。
本件発明2は、外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないので、第184条の18第1項により読み替えて適用される第123条第1項第5号の規定により、無効とされるべきである。

第7.むすび
以上、本件発明1ないし13は、無効理由2、3について判断するまでもなく、本件発明1、3ないし13は、無効理由1により、本件発明2は無効理由4により、その特許を無効とすべきものである。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-07 
結審通知日 2016-11-11 
審決日 2016-12-12 
出願番号 特願2014-529596(P2014-529596)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (D06H)
P 1 113・ 54- Z (D06H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮澤 尚之  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 千葉 成就
久保 克彦
登録日 2015-04-17 
登録番号 特許第5732174号(P5732174)
発明の名称 管状織物を利用した継ぎ目のないバイアス織物製造装置  
代理人 吉村 哲郎  
代理人 木村 俊之  
代理人 鈴江 正二  

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