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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1328209
審判番号 不服2016-4228  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-18 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2012- 48539「固体電解コンデンサアセンブリのためのハウジング構成」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月12日出願公開、特開2012-222345〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年2月16日(パリ条約による優先権主張2011年4月7日 米国(US))の出願であって、同年6月7日付けで翻訳文が提出され、平成27年7月16日付けで拒絶理由通知がなされたのに対して、同年10月22日付けで意見書が提出がされたが、同年11月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年3月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、同年5月6日付けで審判請求の理由が補充されたものである。

第2 平成28年3月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年3月18日付の手続補正を却下する。

[理由]

1.補正後の本願発明
平成28年3月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、請求項1については、
本件補正前(平成24年6月7日付け翻訳文)に、

「【請求項1】
横方向に延びる基部と、該基部の上にある蓋部とを含んでこれらの間に内部キャビティを定めるハウジングを備え、前記蓋部が、外壁と、該外壁から前記基部に向かって縦方向に延びる側壁とを含み、該側壁からは、該側壁の外周を越えて存在する周縁部を有するリップが、前記縦方向に対してある角度をなして延びるとともに前記基部に対して密封され、
陽極酸化した焼結多孔質体から形成された陽極と、該陽極の上にある固体電解質とを含む、前記内部キャビティ内に位置して前記ハウジングの前記基部に接続されたコンデンサ素子と、
前記陽極体に電気的に接続された陽極端子と、
前記固体電解質に電気的に接続された陰極端子と、
をさらに備えることを特徴とするコンデンサアセンブリ。」

とあったところを、

「【請求項1】
横方向に延びる基部と、該基部の上にある蓋部とを含んでこれらの間に内部キャビティを定めるハウジングを備え、前記蓋部が、外壁と、該外壁から前記基部に向かって縦方向に延びる側壁とを含み、該側壁からは、該側壁の外周を越えて存在する周縁部を有するリップが、前記縦方向に対してある角度をなして延びるとともに前記基部に対して密封され、
陽極酸化した焼結多孔質体から形成された陽極と、該陽極の上にある固体電解質とを含む、前記内部キャビティ内に位置して前記ハウジングの前記基部に接続されたコンデンサ素子と、
前記陽極体に電気的に接続された陽極端子と、
前記固体電解質に電気的に接続された陰極端子と、
をさらに備え、
前記リップと前記基部の間に密封部材が配置され、
前記密封部材がガラス対金属シールであり、
前記内部キャビティが、不活性ガスを含む気体雰囲気を有する、
ことを特徴とするコンデンサアセンブリ。」

とするものである。

2.補正の目的要件について
補正された請求項1に係る発明は、補正前の請求項1を
「 前記リップと前記基部の間に密封部材が配置され、
前記密封部材がガラス対金属シールであり、
前記内部キャビティが、不活性ガスを含む気体雰囲気を有する、」
と、 密封について限定したものである。
よって、本件補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である実願昭54-019051号(実開昭55-120150号)のマイクロフィルム(昭和55年8月26日公開、以下、「引用例1」という。)には、「チップ型固体電解コンデンサ」に関して図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

ア.「3.考案の詳細な説明
本考案はチップ型固体電解コンデンサの密封構造に関する。」

イ.「本考案は従来のモールド型チップコンデンサの欠点を改善し、耐湿性が優れた高信頼性チップ型固体電解コンデンサを得ることを目的とする。
本考案の一実施例を図面に基づき説明する。1は焼結型タンタル固体電界コンデンサ素子である。この素子1は、多孔質の焼結タンタルペレットを電解質中で陽極酸化し、その酸化皮膜上に、硝酸マンガン溶液の熱分解により二酸化マンガンを被覆し、さらに陰極としてその上にコロイダルカーボン、銀ペーストを塗布し、最後に半田をコートしたものである。この素子1には、タンタル線を埋め込んだ陽極リード2が導出され、この陽極リード2に半田付可能なニッケル線からなる陽極引出しリード3が溶接4されている。」

ウ.「 5はセラミック板であり、このセラミック板5の表面5Aと裏面5Bの適当な箇所に陽極端子6A・6B及び陰極端子7A・7B並びに金属ケース固定部8となる半田付可能なメタライズ被膜層が設けられている。陽極端子6A・6Bと陰極端子7A・7Bはスルーホール9により導通している。
コンデンサ素子1は、陰極端子7Aと半田付け固定され、陽極引出しリード3は、セラミック板5の貫通孔10に差し込み陽極端子6Aに半田付け固着されている。
11は金属ケースで、コンデンサ12を覆いセラミック板5の金属ケース固定部8に半田付け固定すれば、内蔵されたコンデンサ12は密封され、気密が保持される。」

上記アないしウの記載から、引用例1には以下の事項が記載されている。

・上記アによれば、固体電解コンデンサの密封構造に関するものである。

・上記イによれば、多孔質の焼結タンタルペレットを電解質中で陽極酸化し、その酸化皮膜上に、硝酸マンガン溶液の熱分解により二酸化マンガンを被覆し、さらに陰極としてその上にコロイダルカーボン、銀ペーストを塗布し、最後に半田をコートした固体電解コンデンサ素子1である。

・上記ウによれば、表面5Aと裏面5Bに陽極端子6A・6B及び陰極端子7A・7Bが設けられているセラミック板5と、セラミック板5の金属ケース固定部8に半田付け固定される金属ケース11を備え、
セラミック板5と金属ケース11によりコンデンサ12は密封され、
コンデンサ素子1が陰極端子7Aと半田付け固定され、陽極引出しリード3は、セラミック板5の貫通孔10に差し込み陽極端子6Aに半田付け固着されるものである。

以上の点を踏まえて、上記記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「表面5Aと裏面5Bに陽極端子6A・6B及び陰極端子7A・7Bが形成されたセラミック板5と、
セラミック板5の金属ケース固定部8に半田付け固定される金属ケース11を備え、
セラミック板5と金属ケース11によりコンデンサ12は密封され、
多孔質の焼結タンタルペレットを電解質中で陽極酸化し、その酸化皮膜上に、硝酸マンガン溶液の熱分解により二酸化マンガンを被覆し、さらに陰極としてその上にコロイダルカーボン、銀ペーストを塗布し、最後に半田をコートした固体電解コンデンサ素子1を備え、
コンデンサ素子1が陰極端子7Aと半田付け固定され、陽極引出しリード3は、セラミック板5の貫通孔10に差し込み陽極端子6Aに半田付け固着される、
固体電解コンデンサの密封構造」

(2)引用例2
同じく原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2007-201382号公報(平成19年8月9日公開、以下、「引用例2」という。)には、「蓄電デバイス」に関して図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

エ.「【0010】
具体的構成において、前記容器(1)のケース(10)と前記封口板(12)とは、シーム溶接により互いに接合されている。
該具体的構成によれば、容器(1)に高い密閉性が得られる。
【0011】
具体的構成において、前記容器(1)のケース(10)の端部には、前記封口板との接合面に沿って外向きに突出するフランジ部(17)が形成され、該フランジ部(17)と前記封口板(12)の外周部とが互いに溶接されている。
該具体的構成によれば、ケース(10)と前記封口板(12)とをシーム溶接するためのローラー電極をフランジ部(17)に接触させて、シーム溶接を容易に行なうことが出来る。」

オ.「【0032】
(第2実施形態)
本発明に係る電気二重層キャパシタの第2実施形態を図12から図15に示す。図14に示す様に、電極体(2)の構造は上記第1実施形態と同じであり、上記実施形態と同様に容器(1)内に収容されている。又、図12に示す様に、第2実施形態の容器(1)は、上記第1実施形態と同様、金属製のケース(10)とセラミック製の封口板(12)から構成されている。
【0033】
図15に示す様に、封口板(12)の構造は上記第1実施形態と同じである。該封口板(12)のケース(10)側の面の外周縁部には、メタライズ層(64)が形成されており、該メタライズ層(64)は、封口板(12)の第1側面導体(54)と互いに電気的に接続されている。又、封口板(12)のメタライズ層(64)上にはシームリング(6)が配置され、封口板(12)とケース(10)とは、シームリング(6)を介してシーム溶接により互いに接合されている。
【0034】
ケース(10)は、上記第1実施形態と同様の有底筒状を呈しているが、封口板(12)との接合部分にフランジ部(17)が形成されている。該フランジ部(17)は、周壁(13)の先端の全周縁部から封口板(12)に沿って外向きに突出している。封口板(12)の周縁部はケース(10)のフランジ部(17)よりも僅かに外側に突出しており、シーム溶接のための余裕部を構成している。」

・上記エによれば、容器(1)のケース(10)の端部には、前記封口板との接合面に沿って外向きに突出するフランジ部(17)が形成され、該フランジ部(17)と前記封口板(12)の外周部とが互いに溶接されるものである。また、金属製のケース(10)と前記封口板(12)とをシーム溶接するためのローラー電極をフランジ部(17)に接触させ、シーム溶接を容易に行なうことができる。

・上記オによれば、容器(1)は、セラミック製の封口板(12)と金属製のケース(10)から構成され、金属製のケース(10)は、封口板(12)との接合部分にフランジ部(17)が形成され、フランジ部(17)は、周壁(13)の先端の全周縁部から封口板(12)に沿って外向きに突出しており、封口板(12)と金属製のケース(10)とは、シームリング(6)を介してシーム溶接により互いに接合される。

以上の点を踏まえて、上記記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用例2には、次の技術事項が記載されている。

「蓄電デバイスにおいて、容器(1)は、セラミック製の封口板(12)と金属製のケース(10)から構成され、金属製のケース(10)は、封口板(12)との接合部分にフランジ部(17)が形成され、フランジ部(17)は、周壁(13)の先端の全周縁部から封口板(12)に沿って外向きに突出しており、封口板(12)と金属製のケース(10)とは、シームリング(6)を介してシーム溶接により互いに接合される」こと。

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明は、電解コンデンサの密封構造に係る発明であり、本願補正発明と技術分野及び課題が共通する。そして、引用発明の「固体電解コンデンサ」は、本願補正発明の「コンデンサアセンブリ」に相当する。

b.引用発明の「セラミック板5」は、本願補正発明の「横手方向に延びる基部」に相当する。また、引用発明の「金属ケース11」は、コンデンサ12を覆いセラミック板5の上に固定されるものであるから、本願補正発明の「基部の上にある蓋部」に相当する。そして、引用発明の「セラミック板5」と「金属ケース11」で覆われた部分、すなわち、コンデンサ12が内蔵され密封される部分が、本願補正発明の「内部キャビティ」に相当する。さらに、引用発明の「金属ケース11」は、第1図を参照すると、本願補正発明の「外壁」と「側壁」に相当するものを備えているといえる。
したがって、引用発明の「表面5Aと裏面5Bに陽極端子6A・6B及び陰極端子7A・7Bが形成されたセラミック板5と、セラミック板5の金属ケース固定部8に半田付け固定される金属ケース11を備え、セラミック板5と金属ケース11によりコンデンサ12は密封され」ることは、本願補正発明の「横方向に延びる基部と、該基部の上にある蓋部とを含んでこれらの間に内部キャビティを定めるハウジングを備え、前記蓋部が、外壁と、該外壁から前記基部にむかって縦方向に延びる側壁とを含む」ことに相当する。

c.引用発明の「多孔質の焼結タンタルペレット」は電解質中で陽極酸化されることから、本願補正発明の「陽極酸化した焼結多孔質から形成された陽極」に相当する。また、引用発明の「硝酸マンガン溶液の熱分解により二酸化マンガンを被覆」された「被覆」は、本願補正発明の「陽極の上にある固体電解質」に相当する。そして、引用発明の「コンデンサ素子1が陰極端子7Aと半田付け固定され、陽極引出しリード3は、セラミック板5の貫通孔10に差し込み陽極端子6Aに半田付け固着される」ことは、本願補正発明の「ハウジングの前記基部に接続され」ることに相当する。さらに、引用発明の「コンデンサ素子1が、半田付け固定された陰極端子7A」、「陽極引出しリード3が、セラミック板5の貫通孔10に半田付け固着されている差し込み陽極端子6A」は、それぞれ、本願補正発明の「固体電解質に電気的に接続された陰極端子」、「陽極体に電気的に接続された陽極端子」にそれぞれ相当する。なお、上記b.で記載したとおり、引用発明の「コンデンサ素子1」は、本願補正発明の「内部キャビティ内」に相当する位置にある。
したがって、「多孔質の焼結タンタルペレットを電解質中で陽極酸化し、その酸化皮膜上に、硝酸マンガン溶液の熱分解により二酸化マンガンを被覆し、さらに陰極としてその上にコロイダルカーボン、銀ペーストを塗布し、最後に半田をコートした固体電解コンデンサ素子1を備え、コンデンサ素子1が陰極端子7Aと半田付け固定され、陽極引出しリード3は、セラミック板5の貫通孔10に差し込み陽極端子6Aに半田付け固着され」ることは、本願補正発明の「陽極酸化した焼結多孔質体から形成された陽極と、該陽極の上にある固体電解質とを含む、前記内部キャビティ内に位置して前記ハウジングの前記基部に接続されたコンデンサ素子と、前記陽極体に電気的に接続された陽極端子と、前記固体電解質に電気的に接続された陰極端子」を備えることに相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「横方向に延びる基部と、該基部の上にある蓋部とを含んでこれらの間に内部キャビティを定めるハウジングを備え、前記蓋部が、外壁と、該外壁から前記基部に向かって縦方向に延びる側壁とを含み、陽極酸化した焼結多孔質体から形成された陽極と、該陽極の上にある固体電解質とを含む、前記内部キャビティ内に位置して前記ハウジングの前記基部に接続されたコンデンサ素子と、
前記陽極体に電気的に接続された陽極端子と、
前記固体電解質に電気的に接続された陰極端子と、
をさらに備える
ことを特徴とするコンデンサアセンブリ。」

<相違点1>
本願補正発明は、「側壁からは、該側壁の外周を越えて存在する周縁部を有するリップが、縦方向に対してある角度をなして延びるとともに基部に対して密封される」ものであるのに対して、引用発明は、当該構成について特定されていない点。

<相違点2>
本願補正発明は、「リップと前記基部の間に密封部材が配置され、前記密封部材がガラス対金属シール」であるのに対し、引用発明は、当該構成について特定されていない点。

<相違点3>
「内部キャビティ」において、本願補正発明は、「不活性ガスを含む気体雰囲気を有する」ものであるのに対し、引用発明は、その点について特定されていないこと。

5.判断
以下、相違点について検討する。
ア.相違点1について
引用例2に記載された技術事項(上記3.(2)を参照)の「セラミック製の封口板(12)」、「金属製のケース(10)」は、それぞれ、本願補正発明の「横方向に延びる基部」、「蓋部」に相当する。同様に、「周壁(13)」、「周壁(13)の先端の全周縁部」、「フランジ部(17)」は、それぞれ、本願補正発明の「側壁」、「側壁の外周」、「リップ」に相当する。したがって、引用例2に記載された技術事項の「フランジ部(17)は、周壁(13)の先端の全周縁部から封口板(12)に沿って外向きに突出しており、封口板(12)とケース(10)とは、・・・(中略)・・・シーム溶接により互いに接合される」ことは、本願補正発明の「側壁からは、該側壁の外周を越えて存在する周縁部を有するリップが、縦方向に対してある角度をなして延びるとともに基部に対して密封される」ことに相当する。
ここで、引用発明は「セラミック板5」と「金属ケース11」を金属ケース固定部8に半田付け固定して密封し、引用例2は「セラミック製の封口板(12)」と「金属製のケース(10)」をシームリングを介してシーム溶接により接合していることから、引用発明と引用例2とは本願と同様に、コンデンサのハウジングとして用いる「セラミック板」と「金属ケース」の接合という点で共通している。
してみれば、引用発明のセラミック板と金属ケースの接合方法として、引用例2に記載のシーム溶接を採用し、その際、シーム溶接を容易に行なうために、金属ケース(10)の端部に、封口板との接合面に沿って外向きに突出するフランジ部(17)を形成する構成を採用することは当業者であれば容易に想到し得ることであり、引用発明に引用例2の技術事項を適用し相違点1の構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

イ.相違点2について
引用例2に記載された技術事項の「セラミック製の封口板(12)」、「金属製のケース(10)」は、それぞれ、本願補正発明の「横方向に延びる基部」、「蓋部」に相当する。また、引用例2の「シームリング」は、封口板(12)と金属製のケース(10)とが、シームリング(6)を介してシーム溶接により互いに接合されることから、本願補正発明の「密封部材」に相当する。
してみれば、上記「ア.相違点1について」で検討したとおり、引用発明に引用例2に記載の技術を適用し、「金属製のケース(10)」をシームリングを介してシーム溶接により接合することで、相違点2の構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
ここで、引用発明では金属固定部8となる半田付可能なメタライズ被膜層が設けられているが、引用例2に記載の「フランジ部(17)は、周壁(13)の先端の全周縁部から封口板(12)に沿って外向きに突出しており、封口板(12)とケース(10)とは、シームリング(6)を介してシーム溶接により互いに接合」するシーム溶接を引用発明に適用する際には、引用発明の陽極端子6A・6Bと陰極端子7A・7Bはスルーホール9によって導通されており、フランジ部に対向する封口板に半田付可能なメタライズ被膜層を行う必要がないことは明らかであるから、引用発明に引用例2に記載の技術を組み合わせたものは、「金属ケース11」と「セラミック板5」を溶接するシームリング、つまり、本願補正発明の「ガラス対金属シール」が形成されるといえる。
なお、引用例2のシーム溶接において、「シームリング」が「ガラス対金属シール」であることが記載されていないが、金属製の蓋とセラミックの容器をシーム溶接するコバールのシームリングは、例えば、国際公開第2008/041565号(特に、【0005】 参照)、特開2006-59705号公報(特に、【0016】、【0019】、【0020】、【0030】 参照)に記載のように周知であり、また、ガラス対金属シールにコバールが用いられることはよく知られている。


ウ.相違点3について
引用発明は耐湿性を課題にする密封構造に関するものであり、セラミック板と金属ケースで気密封止されているところ、気密封止するアセンブリ内に不活性ガスを封入することは、例えば、特開2009-253278号公報(段落【0032】、【請求項8】参照)、特開2005-39168号公報(段落【0050】参照)に記載されているように周知技術であるから、引用発明のコンデンサの密封構造に対して、周知技術を採用して相違点3の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

なお、審判請求人は、審判請求書の手続補正書において、「本発明のように特徴ある構造を備えるハウジングと特定の密封部材とを併用することについては、何ら開示も示唆もしていません。例えば、引例2(特開2007-201382号公報)は、シームリング(6)を使用することを開示しているものの、このシームリング(6)は、封口板(12)のメタライズ層(64)の上に配置されるものであり(引例2の段落[0033]、図15等)、この点で、本発明が採用する、ハウジングのリップと基部の間に配置される密封部材とは明らかに異なります。また、引例2には、シームリング(6)が、本発明が採用するようなガラス対金属シールであることについても、一切開示も示唆もしていません。
さらに、本発明は、内部キャビティが不活性ガスを含む気体雰囲気を有するものであり、この点で、引例2が取り扱うような、電解液が充填される電気二重層キャパシタとは全く異なる技術に関するものです。」と主張している。

しかしながら、上記「5.判断 イ」に記載したとおり、引用発明に引用例2の技術事項を適用することで、シームリングを介したシーム溶接を行い、ガラス対金属シールを採用することは当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、審判請求人の主張するように引用例2は電気二重層キャパシタであるが、コンデンサとしての機能は違うにしても、引用発明と引用例2を組み合わせる技術は、上記「5.判断 ア」に記載したように、どのコンデンサにも共通し得るハウジングの接合に関する技術であることから、引用発明に引用例2の技術を適用することは容易に想到し得ることであり、審判請求人の主張を採用することはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2および周知の技術事項により当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用例2および周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。


6.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2および周知の技術事項により容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成28年3月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成24年6月7日付けの翻訳文の特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1.補正後の本願発明」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例およびその記載事項は、上記「第2 3.引用例」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明における
「 前記リップと前記基部の間に密封部材が配置され、
前記密封部材がガラス対金属シールであり、
前記内部キャビティが、不活性ガスを含む気体雰囲気を有する、」なる密封についての限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 4.対比」および「第2 5.判断」に記載したとおり、引用例1に記載された発明、引用例2および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明、引用例2および周知の技術事項により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2および周知の技術事項により当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-15 
結審通知日 2016-11-21 
審決日 2016-12-20 
出願番号 特願2012-48539(P2012-48539)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 大介  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 安藤 一道
関谷 隆一
発明の名称 固体電解コンデンサアセンブリのためのハウジング構成  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 近藤 直樹  
代理人 西島 孝喜  
代理人 上杉 浩  
代理人 須田 洋之  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
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