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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H
管理番号 1328222
審判番号 不服2016-9125  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-20 
確定日 2017-05-30 
事件の表示 特願2014-198103「記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 6957、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月15日に出願した特願2011-56419号の一部を平成26年9月29日に新たな特許出願としたものであって、平成26年10月17日付け及び平成27年11月30日付けで手続補正がされ、平成28年3月15日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年3月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その原出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1、4
・引用文献等 1

・請求項 2、3
・引用文献等 1、2

・請求項 5
・引用文献等 1、2、3

<引用文献等一覧>
1.特開2005-224960号公報
2.特開平11-334054号公報
3.特開2010-736号公報


第3 平成28年6月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)から下記(2)へと補正することを含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
媒体に記録を行う記録装置であって、
前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記媒体に、吐出データに基づいてインクを吐出して画像を記録する画像記録部と、
前記記録装置の設置姿勢を示す情報を取得し、取得した前記情報に基づいて前記吐出データを変化させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、複数の設置姿勢の間で、前記画像記録部の、前記媒体の搬送方向における前記インクの吐出位置が異なるように、前記吐出データを変化させるものであり、
前記複数の設置姿勢として、前記インクを水平方向に吐出させる第1姿勢と、前記インクを鉛直方向に吐出させる第2姿勢を含むことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記媒体の種別データに基づいて前記吐出データを変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記媒体の厚みデータに基づいて前記吐出データを変化させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記画像記録部は、前記制御部によって変化させた前記吐出データに基づき、前記インクの吐出のタイミングを変化させる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記画像記録部は、前記制御部によって変化させた前記吐出データに基づき、前記インクを吐出するノズルを変更する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の記録装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
媒体に記録を行う記録装置であって、
前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記媒体に、吐出データに基づいてインクを吐出して画像を記録する画像記録部と、
前記記録装置の設置姿勢を示す情報を取得し、取得した前記情報に基づいて前記吐出データを変化させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、周方向における一の位置に配設された錘部、および周方向における一の位置に配設された検出マークを有すると共に、自由回転自在に配設された回転体と、
前記錘部の重量によって回転した前記回転体の前記検出マークに対峙するように配設され、前記検出マークの有無を検出する検出センサーと、により前記記録装置の設置姿勢を検出し、複数の設置姿勢の間で、前記画像記録部の、前記媒体の搬送方向における前記インクの吐出位置が異なるように、前記吐出データを変化させるものであり、
前記複数の設置姿勢として、前記インクを水平方向に吐出させる第1姿勢と、前記インクを鉛直方向に吐出させる第2姿勢を含むことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記媒体の種別データに基づいて前記吐出データを変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記媒体の厚みデータに基づいて前記吐出データを変化させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記画像記録部は、前記制御部によって変化させた前記吐出データに基づき、前記インクの吐出のタイミングを変化させる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記画像記録部は、前記制御部によって変化させた前記吐出データに基づき、前記インクを吐出するノズルを変更する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の記録装置。」(下線は平成28年6月20日付けの手続補正書のとおり。)

2 補正の適否
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の「制御部」に関して、「周方向における一の位置に配設された錘部、および周方向における一の位置に配設された検出マークを有すると共に、自由回転自在に配設された回転体と、前記錘部の重量によって回転した前記回転体の前記検出マークに対峙するように配設され、前記検出マークの有無を検出する検出センサーと、により前記記録装置の設置姿勢を検出し、複数の設置姿勢の間で、前記画像記録部の、前記媒体の搬送方向における前記インクの吐出位置が異なるように、前記吐出データを変化させるものであり」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項乃至第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

そこで、本件補正後の前記請求項1乃至5に係る発明(以下、本件補正後の前記請求項1に係る発明を「本願補正発明1」といい、同様に、本件補正後の前記請求項2に係る発明乃至本件補正後の前記請求項5に係る発明をそれぞれ「本願補正発明2」乃至「本願補正発明5」といい、これらを総称して「本願補正発明」という。)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

(1) 刊行物の記載事項
ア 刊行物1
本願の原出願日前の平成17年8月25日に頒布された特開2005-224960号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0024】
〔変形例2〕
次に、本実施形態に係るプリンタの装置レイアウトの他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
図5は、本変形例2に係る装置レイアウトの概略構成を示す説明図である。
上記実施形態では、記録ヘッド1からの液滴吐出方向が鉛直方向真下となるように構成されているが、その液滴吐出方向が水平方向あるいはそれよりも鉛直方向下方であれば、インクが重力の作用を受けて減速することはない。したがって、図5に示す本変形例2のように、液滴吐出方向が水平方向となるように記録ヘッド1が配置される装置レイアウトを採用する場合であっても、公知の記録ヘッド1と同程度の吐出力で十分にインクの液滴を記録紙Pに付着させることができる。ただし、液滴吐出方向を、鉛直方向真下ではなく、鉛直方向斜め下方又は水平方向にする場合には、吐き出されたインクの液滴が重力の作用を受けて僅かながら重力方向に曲がるので、高品質な画像を得ようとする場合には、その曲がりを考慮したセッティングを行うのが望ましい。
【0025】
また、本変形例2においては、記録ヘッド1の少なくとも一部が、記録紙Pの湾曲部分によって囲まれる領域内に位置するように記録ヘッド1が配置されている。詳しくは、この領域は、記録紙Pの湾曲部分の内周面と、その湾曲部分の搬送方向先端と後端とを結ぶ仮想平面Bと、その湾曲部分の搬送方向に対して直交する方向の記録紙辺どうしを結ぶ図示しない仮想平面と、によって囲まれる領域を指す。この領域は一般にデッドスペースになりやすいため、この領域に記録ヘッド1を設けることで、プリンタ本体を小型化することが可能になる。具体的には、図5に示すように、上記実施形態のプリンタに比べて、給紙トレイ16の記録紙収容部16aを記録領域側に近づけることが可能となる。その結果、本変形例2のプリンタの幅Cは、上記実施形態のプリンタの幅C’に比べて小さくなり、小型化されている。」
(イ)「【0027】
〔変形例4〕
次に、本実施形態に係るプリンタの装置レイアウトの更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例4」という。)について説明する。
本変形例4に係るプリンタは、縦置きと横置きの両方の使用を予定しているものである。しかし、横置き用のプリンタを単に縦置きにして使用したり、縦置き用のプリンタを単に横置きにして使用したりする場合、置き方を変える前と後では、重力方向に対する液滴吐出方向が変わってくる。その結果、記録ヘッド1から吐出したインクに作用する重力方向が変わり、置き方を変える前と同じような画質を得ることは難しい。一方で、上記変形例2のように、液滴吐出方向を鉛直方向真下ではなく鉛直方向斜め下方又は水平方向にしても画像の記録は可能であるが、重力による曲がりを考慮したセッティングを行って高品質な画像を得ることは簡単ではない。したがって、縦置きにしても横置きにしてお、画像記録時には液滴吐出方向が常に鉛直方向真下を向くような構成であることが望まれる。
【0028】
図7(a)及び(b)は、本変形例4に係るプリンタの記録ヘッド101を移動させる記録ヘッド移動手段であるヘッド駆動機構を、プリンタ正面側から見たときの概略構成図である。
本変形例4に係るプリンタを図7(a)に示すように横置きで使用する場合、キャリッジユニット106は、その記録ヘッド101の液滴吐出方向が鉛直方向真下を向くように位置決めされる。この横置きの状態から、図7(b)に示すように縦置きの状態にして本プリンタを使用する場合、主支持ガイドロッド104を中心にして従支持ガイドロッド105が図7(a)中の矢印Dの方向に回動し、キャリッジユニット106は、その記録ヘッド101の液滴吐出方向が鉛直方向真下を向くように位置決めされる。この従支持ガイドロッド105を回動して記録ヘッド101を移動させるヘッド駆動機構としては、例えば、本プリンタの側面にレバー等の操作手段を設け、ユーザーによる操作手段の操作に連動して従支持ガイドロッド105が回動するような機構を採用することができる。また、例えば、本プリンタの操作パネル等の操作手段を介してユーザーが縦置きか横置きかを指示することで、その指示内容が制御部に送られ、制御部によってヘッド駆動機構の回動モータを制御し、その回動モータの回転により従支持ガイドロッド105を回動させるするような構成を採用することもできる。また、例えば、縦置きか横置きかを検知する重力センサ等の検知手段を設け、記録ヘッド101に作用する重力方向に応じてその重力方向と記録ヘッド101の液滴吐出方向との関係が一致するように、制御部によってヘッド駆動機構の回動モータを制御し、その回動モータの回転により従支持ガイドロッド105を回動させるするような構成を採用することもできる。この場合、ユーザー操作が不要となるため、ユーザーの利便性が高まる。
【0029】
以上、本実施形態のインクジェット記録装置であるプリンタは、記録液であるインクの液滴を水平方向あるいはそれよりも鉛直方向下方に向かって吐出する記録ヘッド1を備えている。また、この記録ヘッド1の液滴吐出領域である記録領域を通過するときに記録媒体である記録紙Pの記録面が記録ヘッド1に対向するように記録紙Pを搬送する搬送手段として、レジストローラ23、第1駆動コロ25、第2駆動コロ26等のローラ群及びその駆動モータ並びにガイド面形成部材22などから構成される搬送装置を備えている。そして、この搬送装置は、記録ヘッド1から吐出された液滴が付着した記録面が鉛直方向下方を向くように記録紙Pを湾曲搬送した後、この記録紙Pを機外に排出するように構成されている。しかも、記録紙Pの湾曲部分の外周面に、移動する表面を接触させて摩擦により記録紙Pに搬送力を付与する表面移動部材としての第1駆動コロ25及び第2駆動コロ26を有している。これにより、上述したように、水平方向あるいはそれよりも鉛直方向下方に向かってインクを吐き出す記録ヘッド1を採用したまま、画像が記録された記録紙Pの並び順とプリント順とを一致させることができ、また、画質を劣化させずに安定した搬送性を得ることができる。…」
(ウ)上記(ア)及び図5から、変形例2は、横置き用のプリンタであることが看取できる。

そうすると、上記(ア)乃至(ウ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「インクジェット記録装置であるプリンタは、記録液であるインクの液滴を水平方向あるいはそれよりも鉛直方向下方に向かって吐出する記録ヘッドを備え、この記録ヘッドの液滴吐出領域である記録領域を通過するときに記録媒体である記録紙の記録面が記録ヘッドに対向するように記録紙を搬送する搬送手段として、レジストローラ、第1駆動コロ、第2駆動コロ等のローラ群及びその駆動モータ並びにガイド面形成部材などから構成される搬送装置を備えており、
プリンタは、縦置きと横置きの両方の使用を予定しているものであり、
プリンタを横置きで使用する場合、キャリッジユニットは、その記録ヘッドの液滴吐出方向が鉛直方向真下を向くように位置決めされ、この横置きの状態から、縦置きの状態にして本プリンタを使用する場合、主支持ガイドロッドを中心にして従支持ガイドロッドが回動し、キャリッジユニットは、その記録ヘッドの液滴吐出方向が鉛直方向真下を向くように位置決めされ、
縦置きか横置きかを検知する重力センサ等の検知手段を設け、記録ヘッドに作用する重力方向に応じてその重力方向と記録ヘッドの液滴吐出方向との関係が一致するように、制御部によってヘッド駆動機構の回動モータを制御し、その回動モータの回転により従支持ガイドロッドを回動させるするような構成を採用した、インクジェット記録装置。」

(2)対比
そこで、本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「記録紙」、「インクジェット記録装置であるプリンタ」、「記録紙を搬送する搬送手段」、「記録液であるインクの液滴を水平方向あるいはそれよりも鉛直方向下方に向かって吐出する記録ヘッド」、及び「縦置きと横置き」は、それぞれ、前者の「媒体」、「記録装置」、「媒体を搬送する搬送部」、「インクを吐出して画像を記録する画像記録部」、及び「記録装置の設置姿勢」に相当する。
イ 後者の「記録ヘッド」は、「インクジェット記録装置であるプリンタ」に備えられたものであるから、「吐出データに基づいてインクを吐出して画像を記録する」といえる。
ウ 後者の「重力センサ等の検知手段」は、「縦置きか横置きかを検知する」ものであって、後者の「制御部」は、「記録ヘッドに作用する重力方向に応じてその重力方向と記録ヘッドの液滴吐出方向との関係が一致するように」制御するものであるから、「記録装置の設置姿勢を検出する」ものといえる。そうすると、後者の「制御部」は、「記録装置の設置姿勢を示す情報を取得する制御部」であって、「制御部は、記録装置の設置姿勢を検出する」ものといえる。

したがって、両者は、
「媒体に記録を行う記録装置であって、
前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記媒体に、吐出データに基づいてインクを吐出して画像を記録する画像記録部と、
前記記録装置の設置姿勢を示す情報を取得する制御部を備え、
制御部は、記録装置の設置姿勢を検出する記録装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明1が、記録装置の設置姿勢を示す情報を取得し、「取得した前記情報に基づいて前記吐出データを変化させる」制御部と、を備え、前記制御部は、「周方向における一の位置に配設された錘部、および周方向における一の位置に配設された検出マークを有すると共に、自由回転自在に配設された回転体と、前記錘部の重量によって回転した前記回転体の前記検出マークに対峙するように配設され、前記検出マークの有無を検出する検出センサーと、」により前記記録装置の設置姿勢を検出し、「複数の設置姿勢の間で、前記画像記録部の、前記媒体の搬送方向における前記インクの吐出位置が異なるように、前記吐出データを変化させるものであり、前記複数の設置姿勢として、前記インクを水平方向に吐出させる第1姿勢と、前記インクを鉛直方向に吐出させる第2姿勢を含む」のに対し、引用発明1は、記録ヘッドの液滴吐出方向が鉛直方向真下を向くものである点。

(3)判断
上記相違点について以下検討する。
上記「(1)ア(ア)」には、「液滴吐出方向を、鉛直方向真下ではなく、鉛直方向斜め下方又は水平方向にする場合には、吐き出されたインクの液滴が重力の作用を受けて僅かながら重力方向に曲がるので、高品質な画像を得ようとする場合には、その曲がりを考慮したセッティングを行うのが望ましい。」と記載されている(以下「変形例2の技術事項」という。))ものの、上記「(1)ア(ウ)」より、上記変形例2の技術事項は、横置き用のプリンタを前提とした液滴吐出方向のセッティングである。
他方、引用発明1は、縦置きと横置きの両方の使用を予定しているものの、いずれの場合であっても、記録ヘッドの液滴吐出方向が鉛直方向真下を向くものであり、上記「(1)ア(ア)」の「液滴吐出方向を、鉛直方向真下ではなく、鉛直方向斜め下方又は水平方向にする」ことを前提としないものであることから、上記の「曲がりを考慮したセッティング」を行う必要はないことは明らかであるから、引用発明1に、上記変形例2の技術事項を適用する動機付けは見あたらない。
そして、上記相違点が当業者にとって、設計的事項とする根拠はない。
しかも、本願補正発明1は、上記相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項を具備することにより、「設置姿勢に応じて、設計上の目標送り量(所定の送り量)を補正することにより、設置姿勢による実送り量(実際に送られる量)との差をほぼゼロとすることができる。例えば、縦置き設置にすると実送り量が低下する場合、その低下分だけ、縦置き設置時の目標送り量を高くする補正をすることにより、低下分を相殺することができる。このように、画像記録時の紙送りを正確に行うことができるので、用紙に対し適切な画像記録処理を行うことができる。また、装置姿勢で記録結果が異なってしまうということがない。すなわち、横置き、縦置きに係わらず、印刷品質を良好に維持することができる。なお、縦置き設置時に、上向きに記録媒体を送る構成であっても良いし、縦置き設置時に、下向きに記録媒体を送る構成であっても良い。」(【0007】)という作用効果を奏するものである。

なお、原審で提示された引用文献2及び引用文献3を見ても、上記相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項は記載されていない。

したがって、本願補正発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本願補正発明2乃至本願補正発明5について
本願補正発明2乃至本願補正発明5は、本願補正発明1の発明特定事項に加えて、更なる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「(3)」と同様の理由により、引用発明1、並びに引用文献2及び引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項乃至第6項の規定に適合する。


第4 原査定について
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項乃至第6項の規定に適合するから、本願の請求項1乃至請求項5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願補正発明1は、上記「第3 2 (3)」のとおり、当業者が引用発明1乃至3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

また、本願補正発明2乃至5は、本願補正発明1の発明特定事項に加えて、更なる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「第3 2 (3)」と同様の理由により、引用発明1、並びに引用文献2及び引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-12 
出願番号 特願2014-198103(P2014-198103)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小宮山 文男  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
藤本 義仁
発明の名称 記録装置  
代理人 特許業務法人真菱国際特許事務所  

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