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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1328230
審判番号 不服2016-8846  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-14 
確定日 2017-06-02 
事件の表示 特願2012- 72250「サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 7日出願公開、特開2013-206490、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成24年3月27日の出願であって,平成27年9月10日付けで拒絶理由が通知され,同年11月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成28年3月10日付けで拒絶査定され,同年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要

平成28年3月10日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)は,平成27年9月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶をすべきものであるというものであって,その理由の概要は次のとおりである。

[原査定の概要]
(進歩性)この出願の請求項1から11に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

〈引用文献等一覧〉
1.特開2012-22756号公報
2.特開2003-188677号公報(周知技術を例示する文献)
3.特開昭63-128809号公報(周知技術を例示する文献)
4.特開平10-261849号公報(周知技術を例示する文献)
5.特開2002-171063号公報(周知技術を例示する文献)


第3 本願発明

本願の請求項1から11に係る発明は,平成27年11月16日付け手続補正書における特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
以下においては,請求項に係る発明を,請求項の番号に従って,「本願第1発明」などといい,「本願第1発明」から「本願第11発明」を併せて「本願発明」という。
なお,請求人により附された下線は省略した。

【請求項1】
アクチュエータ素子に導電性粒子を含む導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域を有するサスペンション用基板において、
絶縁層と、
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面に設けられた金属支持層と、
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子とは反対側の面に設けられた配線層であって、複数の配線と、前記接続構造領域に設けられ、対応する前記配線に接続されると共に前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部と、を有する前記配線層と、を備え、
前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、前記導電性接着剤に接合される金めっき層が設けられ、
前記金めっき層は、その外周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された外周縁凹凸部を有し、
前記接続構造領域において、前記金属支持層を貫通する金属支持層貫通孔と、前記絶縁層を貫通する絶縁層貫通孔と、を有し、前記配線層の前記アクチュエータ素子の側の面を露出させ、少なくとも一部に前記導電性接着剤が注入される注入孔が設けられ、
前記接続構造領域における前記金属支持層は、前記配線接続部と電気的に絶縁されていることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記金めっき層は、平面視で前記注入孔を囲むようにリング状に形成され、
前記金めっき層は、その内周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された内周縁凹凸部を有していることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
アクチュエータ素子に導電性粒子を含む導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域を有するサスペンション用基板において、
絶縁層と、
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面に設けられた金属支持層と、
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子とは反対側の面に設けられた配線層であって、複数の配線と、前記接続構造領域に設けられ、対応する前記配線に接続されると共に前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部と、を有する前記配線層と、を備え、
前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、前記導電性接着剤に接合される金めっき層が設けられ、
前記金めっき層は、その外周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された外周縁凹凸部を有し、
前記配線接続部と前記金属支持層とは、前記絶縁層を貫通する導電接続部によって接続され、
前記配線接続部の前記アクチュエータ素子の側の面は、前記絶縁層および前記金属支持層によって覆われ、
前記金めっき層は、平面視でリング状に形成され、
前記金めっき層は、その内周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された内周縁凹凸部を有していることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項4】
アクチュエータ素子に導電性粒子を含む導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域を有するサスペンション用基板において、
絶縁層と、
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面に設けられた金属支持層と、
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子とは反対側の面に設けられた配線層であって、複数の配線と、前記接続構造領域に設けられ、対応する前記配線に接続されると共に前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部と、を有する前記配線層と、を備え、
前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、前記導電性接着剤に接合される金めっき層が設けられ、
前記金めっき層は、その外周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された外周縁凹凸部を有し、
前記配線接続部と前記金属支持層とは、前記絶縁層を貫通する導電接続部によって接続され、
前記接続構造領域において、前記金属支持層を貫通する金属支持層貫通孔と、前記絶縁層を貫通する絶縁層貫通孔と、を有し、前記配線層の前記アクチュエータ素子の側の面を露出させ、少なくとも一部に前記導電性接着剤が注入される注入孔が設けられ、
前記金めっき層は、平面視で前記注入孔を囲むようにリング状に形成され、
前記金めっき層は、その内周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された内周縁凹凸部を有していることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項5】
前記外周縁凹凸部の凹凸高さは、0.0015mm?0.0200mmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサスペンション用基板。
【請求項6】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに、ロードビームを介して取り付けられた請求項1乃至5のいずれかに記載の前記サスペンション用基板と、
前記ベースプレートおよび前記ロードビームの少なくとも一方に接合されると共に、前記サスペンション用基板の前記接続構造領域に前記導電性接着剤を介して接続された前記アクチュエータ素子と、を備えたことを特徴とするサスペンション。
【請求項7】
請求項6に記載の前記サスペンションと、
前記サスペンションに実装されたヘッドスライダと、を備えたことを特徴とするヘッド付サスペンション。
【請求項8】
請求項7に記載の前記ヘッド付サスペンションを備えたことを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項9】
アクチュエータ素子に導電性粒子を含む導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域を有するサスペンション用基板の製造方法において、
絶縁層と、前記絶縁層の一方の面に設けられた金属支持層と、前記絶縁層の他方の面に設けられた配線層と、を有する積層体を準備する工程と、
前記配線層において、複数の配線と、前記接続構造領域に設けられ、対応する前記配線に接続されると共に、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部と、を形成する工程と、
前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、前記導電性接着剤に接合される金めっき層を形成する工程と、を備え、
前記金めっき層を形成する工程において、前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、レジスト開口の周縁が平面視で凹凸状に形成されたレジスト凹凸部を有するレジストを用いて金めっきが施され、このことにより、形成された前記金めっき層の外周縁に、平面視で凹凸状に形成された外周縁凹凸部が形成され、
前記接続構造領域において、前記金属支持層を貫通する金属支持層貫通孔と、前記絶縁層を貫通する絶縁層貫通孔と、を有し、前記配線層の前記アクチュエータ素子の側の面を露出させ、少なくとも一部に前記導電性接着剤が注入される注入孔が設けられ、
前記接続構造領域における前記金属支持層は、前記配線接続部と電気的に絶縁されることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項10】
アクチュエータ素子に導電性粒子を含む導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域を有するサスペンション用基板の製造方法において、
絶縁層と、前記絶縁層の一方の面に設けられた金属支持層と、前記絶縁層の他方の面に設けられた配線層と、を有する積層体を準備する工程と、
前記配線層において、複数の配線と、前記接続構造領域に設けられ、対応する前記配線に接続されると共に、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部と、を形成する工程と、
前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、前記導電性接着剤に接合される金めっき層を形成する工程と、を備え、
前記金めっき層を形成する工程において、前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、レジスト開口の周縁が平面視で凹凸状に形成されたレジスト凹凸部を有するレジストを用いて金めっきが施され、このことにより、形成された前記金めっき層の外周縁に、平面視で凹凸状に形成された外周縁凹凸部が形成され、
前記配線接続部と前記金属支持層とは、前記絶縁層を貫通する導電接続部によって接続され、
前記配線接続部の前記アクチュエータ素子の側の面は、前記絶縁層および前記金属支持層によって覆われ、
前記金めっき層は、平面視でリング状に形成され、
前記金めっき層は、その内周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された内周縁凹凸部を有していることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項11】
アクチュエータ素子に導電性粒子を含む導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域を有するサスペンション用基板の製造方法において、
絶縁層と、前記絶縁層の一方の面に設けられた金属支持層と、前記絶縁層の他方の面に設けられた配線層と、を有する積層体を準備する工程と、
前記配線層において、複数の配線と、前記接続構造領域に設けられ、対応する前記配線に接続されると共に、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部と、を形成する工程と、
前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、前記導電性接着剤に接合される金めっき層を形成する工程と、を備え、
前記金めっき層を形成する工程において、前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に、レジスト開口の周縁が平面視で凹凸状に形成されたレジスト凹凸部を有するレジストを用いて金めっきが施され、このことにより、形成された前記金めっき層の外周縁に、平面視で凹凸状に形成された外周縁凹凸部が形成され、
前記配線接続部と前記金属支持層とは、前記絶縁層を貫通する導電接続部によって接続され、
前記接続構造領域において、前記金属支持層を貫通する金属支持層貫通孔と、前記絶縁層を貫通する絶縁層貫通孔と、を有し、前記配線層の前記アクチュエータ素子の側の面を露出させ、少なくとも一部に前記導電性接着剤が注入される注入孔が設けられ、
前記金めっき層は、平面視で前記注入孔を囲むようにリング状に形成され、
前記金めっき層は、その内周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された内周縁凹凸部を有していることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。


第4 文献1記載発明

1.文献1及び記載事項
原査定の理由において,「文献1」として引用された「特開2012-22756号公報」(平成24年2月2日公開)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1) 記載事項1
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの導通検査方法に係り、とりわけ、アクチュエータ素子との電気的な接続の信頼性を向上させることができるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの導通検査方法に関する。

(2) 記載事項2
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、サスペンション用基板の端子部と圧電素子とを導電性接着剤を用いて接合する際、液止め部材の内部に注入された導電性接着剤が配線部に達しない場合が考えられる。この場合、配線部が、圧電素子に電気的に接続することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、アクチュエータ素子との電気的な接続の信頼性を向上させることができるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの導通検査方法を提供することを目的とする。

(3) 記載事項3
【0030】
第1の実施の形態
図1乃至図9を用いて、本発明の第1の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブについて説明する。
【0031】
図1に示すように、サスペンション用基板1は、後述の配線13が延びている基板本体領域2と、後述のピエゾ素子(アクチュエータ素子、図3参照)44に接続可能な接続構造領域3とを有している。このうち基板本体領域2には、後述のスライダ52(図7参照)に接続されるヘッド端子5と、図示しない外部機器に接続される外部機器接続端子6とが設けられており、ヘッド端子5と外部機器接続端子6との間には、後述する配線13が接続されている。
【0032】
図1および図2(a)、(b)に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面(一方の面)に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた複数の配線13を有する配線層12とを備えている。このうち、配線層12は、接続構造領域3に配置され、ピエゾ素子44に導電性接着剤(例えば、銀ペースト)を介して電気的に接続される配線接続部16を有している。この配線接続部16は、各配線13と同一材料から形成されている。また、複数の配線13のうち1つの配線13は、外部機器接続端子6から接続構造領域3に延びて、配線接続部16を介してピエゾ素子44に電気的に接続されている。
【0033】
なお、図示しないが、絶縁層10と配線層12との間に、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)からなり、約300nm厚さを有するシード層が介在されている。このことにより、絶縁層10と配線層12との密着性を向上させることができる。
【0034】
図2(b)に示すように、接続構造領域3において、金属支持層11を貫通し、導電性接着剤が注入される金属支持層注入孔32が設けられている。すなわち、金属支持層11は、図2(a)に示すように、接続構造領域3に設けられ、導電性接着剤が注入される金属支持層注入孔32を含む枠体部17を有している。この枠体部17は、リング状に形成されて、枠体部17の外縁17aが、絶縁層10の外縁10aより内方に位置している。なお、この枠体部17は、基板本体領域2における金属支持層11の部分と分離されている。
【0035】
図2(b)に示すように、絶縁層10のうち金属支持層注入孔32に対応する位置に、絶縁層10を貫通する絶縁層注入孔33が設けられている。このようにして、配線層12の配線接続部16が、金属支持層11の側に露出されるようになっている。
【0036】
この絶縁層注入孔33において、配線層12の配線接続部16の露出された部分に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されて、注入孔めっき層15が形成されている。このことにより、配線層12の配線接続部16の露出された部分が腐食することを防止している。この注入孔めっき層15の厚さは、0.1μm?4.0μmであることが好ましい。
【0037】
図2(b)に示すように、絶縁層10上には、配線層12を覆う保護層20が設けられている。なお、図1においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略している。
【0038】
接続構造領域3において、絶縁層10を貫通し、金属支持層11の枠体部17と配線層12の配線接続部16とを接続する導電接続部(ビア)30が設けられている。すなわち、絶縁層10を貫通する絶縁層導電接続孔30aが形成され、配線接続部16を貫通する配線層導電接続孔30bが形成され、保護層20を貫通する保護層導電接続孔30cが形成され、絶縁層導電接続孔30a、配線層導電接続孔30b、および保護層導電接続孔30cに、ニッケルからなる導電接続部30が形成されている。この導電接続部30は、ピエゾ素子44とは反対側の外方、すなわち、保護層20から外方に露出している。導電接続部30と配線接続部16との間には、ビアめっき層18が介在されている。このビアめっき層18は、配線接続部16のうち絶縁層注入孔33において露出された部分に形成された注入孔めっき層15と同様にして形成することができる。

(4) 記載事項4
【0093】
第4の実施の形態
次に、図15および図16により、本発明の第4の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの導通検査方法について説明する。
【0094】
図15および図16に示す第4の実施の形態においては、接続構造領域における金属支持層11に、金めっきが施されている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図15および図16において、図1乃至図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0095】
図15に示すように、金属支持層11の枠体部17に、ニッケルめっき、および金めっきが施されて、接続用めっき層73が形成されている。
【0096】
このようなサスペンション用基板1を製造する場合、絶縁層10において絶縁層導電接続孔30aおよび絶縁層注入孔33が形成された後(図9(d)参照)、配線接続部16の露出された部分にめっきを施す際、金属支持層11に、ニッケルめっきおよび金めっきが施されて、注入孔めっき層15およびビアめっき層18と同様にして、接続用めっき層73が形成される(図16(a)参照)。この場合、接続用めっき層73は、レジスト(図示せず)により、この後外形加工される金属支持層11の枠体部17に対応する位置に形成される。また、絶縁層導電接続孔30aにおいて露出された枠体部17の部分にも、ニッケルめっきおよび金めっきが施される。
【0097】
次に、絶縁層導電接続孔30a、配線層導電接続孔30b、および保護層導電接続孔30cに、導電接続部30が形成される(図16(b)参照)。その後、金属支持層11が外形加工されて、枠体部17が形成される(図16(c)参照)。
【0098】
このように本実施の形態によれば、配線層12の配線接続部16は、導電接続部30を介して金属支持層11の枠体部17に電気的に接続される。また、枠体部17は、第2の導電接着部48を介してピエゾ素子44に電気的に接続される。このことにより、配線接続部16に、導電接続部30および枠体部17を介してピエゾ素子44を電気的に接続することができる。とりわけ、金属支持層注入孔32および絶縁層注入孔33に注入された導電性接着剤が配線接続部16に達しない場合であっても(図6参照)、配線接続部16をピエゾ素子44に、確実に電気的に接続することができる。この結果、サスペンション用基板1とピエゾ素子44との間の電気的な接続の信頼性を向上させることができる。

(5) 図面記載事項
図1として次の記載がある。

図2として次の記載がある。

図15として次の記載がある。

図16として次の記載がある。

2.文献1記載発明
以上によれば,文献1には次の発明(以下「文献1記載発明」という。)が記載されているといえる。

サスペンション用基板(1)は,後述の配線(13)が延びている基板本体領域(2)と,ピエゾ素子(アクチュエータ素子)(44)に接続可能な接続構造領域(3)とを有し,
サスペンション用基板(1)は,絶縁層(10)と,絶縁層(10)のピエゾ素子(44)の側の面(一方の面)に設けられた金属支持層(11)と,絶縁層(10)の他方の面に設けられた複数の配線(13)を有する配線層(12)とを備え,このうち,配線層(12)は,接続構造領域(3)に配置され,ピエゾ素子(44)に導電性接着剤(銀ペースト)を介して電気的に接続される配線接続部(16)を有し,この配線接続部(16)は,各配線(13)と同一材料から形成され,また,複数の配線(13)のうち1つの配線(13)は,外部機器接続端子(6)から接続構造領域(3)に延びて,配線接続部(16)を介してピエゾ素子(44)に電気的に接続されており,
接続構造領域(3)において,金属支持層(11)を貫通し,導電性接着剤が注入される金属支持層注入孔(32)が設けられ,すなわち,金属支持層(11)は,接続構造領域(3)に設けられ,導電性接着剤が注入される金属支持層注入孔(32)を含む枠体部(17)を有し,この枠体部(17)は,リング状に形成されて,枠体部(17)の外縁(17a)が,絶縁層(10)の外縁(10a)より内方に位置し,なお,この枠体部(17)は,基板本体領域(2)における金属支持層(11)の部分と分離され,
絶縁層(10)のうち金属支持層注入孔(32)に対応する位置に,絶縁層(10)を貫通する絶縁層注入孔(33)が設けられ,このようにして,配線層(12)の配線接続部(16)が,金属支持層(11)の側に露出されるようになっており,
この絶縁層注入孔(33)において,配線層(12)の配線接続部(16)の露出された部分に,ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されて,注入孔めっき層(15)が形成され,
絶縁層(10)上には,配線層(12)を覆う保護層(20)が設けられ,
接続構造領域(3)において,絶縁層(10)を貫通し,金属支持層(11)の枠体部(17)と配線層(12)の配線接続部(16)とを接続する導電接続部(ビア)(30)が設けられ,すなわち,絶縁層(10)を貫通する絶縁層導電接続孔(30a)が形成され,配線接続部(16)を貫通する配線層導電接続孔(30b)が形成され,保護層(20)を貫通する保護層導電接続孔(30c)が形成され,絶縁層導電接続孔(30a),配線層導電接続孔(30b),および保護層導電接続孔(30c)に,ニッケルからなる導電接続部(30)が形成され,この導電接続部(30)は,ピエゾ素子(44)とは反対側の外方,すなわち,保護層(20)から外方に露出し,導電接続部(30)と配線接続部(16)との間には,ビアめっき層(18)が介在され,このビアめっき層(18)は,配線接続部(16)のうち絶縁層注入孔(33)において露出された部分に形成された注入孔めっき層(15)と同様にして形成することができ,
金属支持層(11)の枠体部(17)に,ニッケルめっき,および金めっきが施されて,接続用めっき層(73)が形成されている
サスペンション用基板。


第5 当審の判断

1.本願第1発明について
(1) 対比
本願第1発明と文献1記載発明を比較すると次のことがいえる。

ア 本願第1発明も文献1記載発明もともに,「サスペンション用基板」に係る発明である点において共通する。
そして,文献1記載発明における「接続構造領域」は,「サスペンション用基板」が有するものであって,「ピエゾ素子」に接続可能なものである。
また,該「ピエゾ素子」は「アクチュエータ素子」ということができるものである。

以上から,文献1記載発明には,「アクチュエータ素子に導電性粒子を含む導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域を有するサスペンション用基板」が開示されているということができる。

イ 文献1記載発明における「サスペンション用基板」は,「絶縁層(10)」,「金属支持層(11)」,「配線層(12)」,「配線接続部(16)」を備える点において,本願第1発明と共通することは明らかである。
そうしてみると,更に,次の(ア)及び(イ)のことがいえる。
(ア) 文献1記載発明における「金属支持層(11)」は,「絶縁層(10)のピエゾ素子(44)の側の面(一方の面)に設けられ」ている。
このことから,文献1記載発明は,本願第1発明と同様,「絶縁層のアクチュエータ素子の側の面に設けられた金属支持層」を備えているということができる。

(イ) 文献1記載発明における「配線層」は,「絶縁層(10)の他方の面に設けられた複数の配線(13)を有する」ものであり,更に,「接続構造領域(3)に配置され,ピエゾ素子(44)に導電性接着剤(銀ペースト)を介して電気的に接続される配線接続部(16)」を有するものである。
このことから,文献1記載発明は,本願第1発明と同様,「絶縁層のアクチュエータ素子とは反対側の面に設けられた配線層であって、複数の配線と、接続構造領域に設けられ、対応する前記配線に接続されると共に前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部と、を有する前記配線層」を備えているということができる。

ウ 本願第1発明も文献1記載発明もともに「金めっき」が施された部位を有する点で共通することは明らかである。
そこで,文献1記載発明において,「金めっき」が施される部位についてみると,当該部位は,「絶縁層注入孔(33)において,配線層(12)の配線接続部(16)の露出された部分」及び「金属支持層(11)の枠体部(17)」である。
ここで,上記「イ」の(ア)に述べたとおり,文献1記載発明における「金属支持層」は「絶縁層のアクチュエータ素子の側の面に設けられた」ものであるということできるのであり,そして,該「枠体部(17)」に「金めっき」が施されることにより,「接続用めっき層(73)」が形成される。
このことから,文献1記載発明には,「前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に」,「金めっき層が設けられ」る構成が開示されているといえる。

更に,上記「枠体部(17)」に関しては,「導電性接着剤が注入される金属支持層注入孔(32)を含む」ものである。

以上によれば,「枠体部(17)」に形成された「金めっき層」が「導電性接着剤」に接合されることは当然であるということができる。

したがって,文献1記載発明にには,本願発明と同様,「金属支持層のアクチュエータ素子の側の面に、導電性接着剤に接合される金めっき層」が設けられているといえる。

エ 文献1記載発明における「金属支持層(11)」及び「絶縁層(10)」について,上記アからウに述べたことに加えて,次の(ア)から(ウ)のことがいえる。
(ア) 上記「金属支持層(11)」には,この支持層を貫通する「金属支持層注入孔(32)」が設けられている。
そうすると,該「金属支持層注入孔」と本願第1発明における「金属支持層貫通孔」はともに,「金属支持層」を貫通する点において共通するということができる。

(イ) 上記「絶縁層(10)」には,該「絶縁層」を貫通する「絶縁層注入孔(33)」が設けられている。
そうすると,該「絶縁層注入孔」と本願第1発明における「絶縁層貫通孔」はともに,「絶縁層」を貫通する点において共通するということができる。

(ウ) 更に,上記「絶縁層注入孔」が設けられることにより,文献1記載発明においては,「配線層(12)の配線接続部(16)が,金属支持層(11)の側に露出される」ようになる。
そして,「金属支持層注入孔」に「導電性接着剤」が注入されることに鑑みれば,上記のごとく「露出」された「配線層の配線接続部」の少なくとも一部に,該「導電性接着剤」が当然注入され得る状態になると解することができる。
そうすると,文献1記載発明には,本願第1発明と同様,「配線層のアクチュエータ素子の側の面を露出させ、少なくとも一部に導電性接着剤が注入される注入孔」が設けられているということができる。

オ 上記アからエに述べたことによれば,本願第1発明と文献1記載発明とは,次の点で一致し,相違するということができる。

[一致点]
アクチュエータ素子に導電性粒子を含む導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域を有するサスペンション用基板において,
絶縁層と,
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面に設けられた金属支持層と,
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子とは反対側の面に設けられた配線層であって,複数の配線と,前記接続構造領域に設けられ,対応する前記配線に接続されると共に前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部と,を有する前記配線層と,を備え,
前記金属支持層の前記アクチュエータ素子の側の面に,前記導電性接着剤に接合される金めっき層が設けられ,
前記接続構造領域において,前記金属支持層を貫通する金属支持層貫通孔と,前記絶縁層を貫通する絶縁層貫通孔と,を有し,前記配線層の前記アクチュエータ素子の側の面を露出させ,少なくとも一部に前記導電性接着剤が注入される注入孔が設けられていることを特徴とするサスペンション用基板。

[相違点]
(相違点1)
本願第1発明における「金めっき層」は,「その外周縁に設けられた、平面視で凹凸状に形成された外周縁凹凸部」を有するのに対し,文献1記載発明にはそのような「外周縁凹凸部」を有するとの特定がない点。

(相違点2)
本願第1発明における「金属支持層」は,「接続構造領域」において,「配線接続部と電気的に絶縁されている」。
一方,文献1記載発明における「金属支持層」は,「接続構造領域」において,「絶縁層(10)を貫通し,金属支持層(11)の枠体部(17)と配線層(12)の配線接続部(16)とを接続する導電接続部(ビア)(30)が設けられ,すなわち,絶縁層(10)を貫通する絶縁層導電接続孔(30a)が形成され」ており,本願第1発明のように「配線接続部と電気的に絶縁されている」ものではない点。

(2) 検討
上記相違点1について検討するに,文献1記載発明における「枠体部(17)」は,「リング状に形成され」て,「枠体部(17)の外縁(17a)」が,「絶縁層(10)の外縁(10a)より内方に位置し」との構成によれば,該「枠体部」及び「絶縁層」は,いずれも「外縁」といい得る構成を備えているということができる。
ここで,該「枠体部」は「リング状」に形成されてることから,「枠体部」が備える「外縁」は「外周縁」ということができる。
このことから,文献1記載発明における「枠体部」に形成された「金めっき層」も「外周縁」を形成し得ると解することができる。
しかし,文献1記載発明若しくは文献1における記載からは,上記「外周縁」が「凹凸部」を「設ける」ことが記載されているということはできない。
また,例え,「凹凸状に形成された凹凸部」が周知の形状であったとしても,このような形状を,文献1記載発明に,「金めっき層の外周縁」に設けるように適用する理由を,文献1における記載から導くこともできない。

したがって,文献1記載発明を基に,本願第1発明のように構成することを,当業者が容易に想到し得たということはできない。
また,文献1記載発明から,本願第1発明のような効果を予測し得たということもできない。

(3) 「本願第1発明について」のまとめ
以上のとおりであるから,相違点2について検討するまでもなく,本願第1発明を,文献1記載発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

2.本願第3,4,9から11発明について
(1) 対比及び検討
本願第3,4,9から11発明と文献1記載発明においても,上記「1.(1)対比」に述べたのと同じ相違点1を有しているということができることは明らかである。
そうすると,上記「1.(2)検討」において述べたのと同様であり,文献1記載発明を基に,本願第3,4,9から11発明のように構成することを当業者が容易に想到し得たということはできない。

(2) 「本願第3,4,9から11発明について」のまとめ
以上のとおりであるから,本願第3,4,9から11発明を,文献1記載発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

3.本願第2,5から8発明について
(1) 対比及び検討
本願第2,5から8発明は,本願第1,3及び4発明を直接的若しくは間接的に引用する発明である。
そうすると,本願第2,5から8発明も,本願第1,3及び4発明と同様の相違を有することは当然である。
したがって,上記「1.(2)検討」において述べたのと同様に,文献1記載発明を基に,本願第2,5から8発明のように構成することを当業者が容易に想到し得たということはできない。

(2) 「本願第2,5から8発明について」のまとめ
以上のとおりであるから,本願第2,5から8発明を,文献1記載発明を基に,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。


第6 むすび

以上のとおりであるから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,ほかに本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-23 
出願番号 特願2012-72250(P2012-72250)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 山本 章裕
近藤 聡
発明の名称 サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法  
代理人 永井 浩之  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 山下 和也  
代理人 堀田 幸裕  

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