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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1328256
審判番号 不服2016-4327  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-22 
確定日 2017-05-08 
事件の表示 特願2014-502423「通信装置、及び通信制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 6日国際公開、WO2013/129673〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本願は、2013年3月1日(国内優先権主張2012年3月2日)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月1日付けで拒絶理由が通知され、平成27年12月1日付けで手続補正がなされ、平成27年12月17日付けで拒絶査定がされ、平成28年3月22日に拒絶査定不服審判がされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。


2.平成28年3月22日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成28年3月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]

2-1.本件補正の目的

平成28年3月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項3は、

「【請求項3】
リアクティブの経路構築方式を用いたアドホックネットワークを構成する通信装置が、
経路探索要求フレームの経由した経路全体の品質情報を有する経路探索要求フレームを受信し、
複数の経路を経由して受信された前記経路探索要求フレームの中から、前記品質情報に基づき、他の通信装置に転送する経路探索要求フレームを選択し、
選択された経路探索要求フレームを前記他の通信装置に転送すると共に、前記経路探索要求フレームの前記品質情報の示す品質が、前記通信装置が、受信された経路探索要求フレームを隣接通信装置に再び転送するか、転送することなく自通信装置にて破棄するかの判断基準となる値である所定の基準値未満である場合、当該経路探索要求フレームを破棄し、待ち時間内に自通信装置に到達した経路探索要求フレームが複数存在する場合、前記所定の基準値未満の経路探索要求フレームを破棄した後に、残った経路探索要求フレームの内、経路品質の最も高い経路探索要求フレームのみを転送することにより、前記所定の基準値以上の複数の経路探索要求フレームに対し、経路品質重みの品質情報に基づく絞込みを行う
ことを特徴とする通信制御方法。」(以下「補正前発明」という。)

から

「【請求項3】
リアクティブの経路構築方式を用いたアドホックネットワークを構成する通信装置が、
経路探索要求フレームの経由した経路全体の品質情報を有する経路探索要求フレームを受信し、
複数の経路を経由して受信された前記経路探索要求フレームの中から、前記品質情報に基づき、他の通信装置に転送する経路探索要求フレームを選択し、
選択された経路探索要求フレームを前記他の通信装置に転送すると共に、前記経路探索要求フレームの前記品質情報の示す品質が、前記通信装置が、受信された経路探索要求フレームを隣接通信装置に再び転送するか、転送することなく自通信装置にて破棄するかの判断基準となる値である所定の基準値未満である場合、当該経路探索要求フレームを破棄し、待ち時間内に自通信装置に到達した経路探索要求フレームが複数存在する場合、前記所定の基準値未満の経路探索要求フレームを破棄した後に、残った経路探索要求フレームの内、経路品質の最も高い経路探索要求フレームのみを転送することにより、前記所定の基準値以上の複数の経路探索要求フレームに対し、経路品質重みの品質情報に基づく絞込みを行い、
前記選択では、RREP(Route REPly)の送信先候補となる通信装置の内、経路品質重みが最小値をとり、ルートコストが最低であることが推測される通信装置を、前記RREPの直近の送信先として、選択する
ことを特徴とする通信制御方法。」(以下「本願補正発明」という。)

と補正された。

本件補正は、「前記選択では、RREP(Route REPly)の送信先候補となる通信装置の内、経路品質重みが最小値をとり、ルートコストが最低であることが推測される通信装置を、前記RREPの直近の送信先として、選択する」が追加された補正であるが、補正前発明の「選択」は、「複数の経路を経由して受信された前記経路探索要求フレームの中から、前記品質情報に基づき、他の通信装置に転送する経路探索要求フレームを選択」する選択である。
つまり、補正前発明における「選択」は、「経路探索要求フレーム」を選択するものであるのに対し、本件補正において追加された「選択」は、「RREP(Route REPly)」の送信先として「通信装置」を選択するものであるから、補正前発明における「選択」とは選択する対象が異なっており、補正前発明における「選択」を特定するために必要な事項を限定するものでない。
さらに、補正前発明では、「経路探索要求フレーム」についての処理のみが記載されており、RREPの処理については何も記載されていない。
したがって、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものでない。
よって、特許法第17条の2第5項第2号に該当しない。

また、請求項の削除でなく、明瞭でない記載の釈明でなく、誤記の訂正でないことは明らかである。
したがって、特許法17条の2第5項のいずれの目的にも該当しない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


2-2.補足

本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものである、と仮定しても、以下のように本願補正発明は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定により準用する特許法第126条第7項の規定により却下すべきものである。

「前記選択では、RREP(Route REPly)の送信先候補となる通信装置の内、経路品質重みが最小値をとり、ルートコストが最低であることが推測される通信装置を、前記RREPの直近の送信先として、選択する」

は、「通信装置を、RREPの直近の送信先として」を選択する処理を記載している一方、「前記選択」が示す「選択」は、

「複数の経路を経由して受信された前記経路探索要求フレームの中から、前記品質情報に基づき、他の通信装置に転送する経路探索要求フレームを選択し、」

であるから、「経路探索要求フレーム」の選択を示している。

すなわち、本願補正発明は、「経路探索要求フレーム」の選択では、「RREP」の送信先としての「通信装置」を選択するという記載であるから、何を選択するのか不明瞭である。

よって、本件補正の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3.本願発明について

3-1.本願発明

平成28年3月22日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年12月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(補正前発明に同じ。)

「【請求項3】
リアクティブの経路構築方式を用いたアドホックネットワークを構成する通信装置が、
経路探索要求フレームの経由した経路全体の品質情報を有する経路探索要求フレームを受信し、
複数の経路を経由して受信された前記経路探索要求フレームの中から、前記品質情報に基づき、他の通信装置に転送する経路探索要求フレームを選択し、
選択された経路探索要求フレームを前記他の通信装置に転送すると共に、前記経路探索要求フレームの前記品質情報の示す品質が、前記通信装置が、受信された経路探索要求フレームを隣接通信装置に再び転送するか、転送することなく自通信装置にて破棄するかの判断基準となる値である所定の基準値未満である場合、当該経路探索要求フレームを破棄し、待ち時間内に自通信装置に到達した経路探索要求フレームが複数存在する場合、前記所定の基準値未満の経路探索要求フレームを破棄した後に、残った経路探索要求フレームの内、経路品質の最も高い経路探索要求フレームのみを転送することにより、前記所定の基準値以上の複数の経路探索要求フレームに対し、経路品質重みの品質情報に基づく絞込みを行う
ことを特徴とする通信制御方法。」

3-2.引用例記載の発明

原査定の拒絶の理由に引用された「針生健、小室信喜、阪田史郎、「モバイルアドホックネットワークにおけるリンク品質を考慮した複数経路データ配信方式」、電子情報通信学会技術研究報告IN2009-161、2010年2月25日、第109巻、第449号、p103-108」(以下「引用例」という。下線は当審が付与。)には、

「1.はじめに
近年,無線LANなどの無線通信を用いて災害などの非常時などでネットワークインフラを迅速に構築する要請が高まっている.そこで,インフラを必要としない,無線通信を用いて各移動端末が自律的にネットワークを構築する手法が望まれる.このような要求を満たすため,モバイルアドホックネットワークの研究が盛んに行われている[1][2].しかし,モバイルアドホックネットワーク内では端末は常に移動するため,端末相互間のリンクが不安定になる.このような環境でいかに効率良く安定した経路を作成できるかが重要になる.
モバイルアドホックネットワークで用いられるルーティングプロトコルの一つとしてAODV[3]がある.AODVでは,RouteRequestパケット(以下,RREQ)とRouteReplyパケット(以下,RREP)のやりとりにより,ホップ数を指標として最小ホップ数の経路を作成し,データ配信を行う.しかし,ネットワークの環境(通信の安定性やノイズ源の存在,ノードの移動特性等)によっては,最小ホップ数の経路では,必ずしも高いスループットが得られない場合があることが実験結果より知られている[4][5].この理由として,パケットロス率が高い経路が選ばれることがあり帯域の多くが再送に消費されることが考えられる.また,上記のように端末相互間のリンクが不安定になって,通信品質が低下する問題がある.
これらの問題を解決するために,高配信率,高スループットなどを目的としてマルチパスルーティングが多く提案されている[6][7].その中の方式の一つに,ルーティングの際に取得したSINRの値からリンク品質を計算することにより,高配信率を狙いとするCM-AODV[8]がある.しかし,CM-AODVにはネットワーク内に制御パケットが氾濫する,負荷や消費電力に偏りが生じる,などの問題がある.
本稿では,CM-AODVを拡張しスループットとネットワークライフタイムを向上させる方式[9]を提案する.提案方式では,リンク品質の関する閾値を設けることにより制御パケット数を削減し,複数経路を切り替えて用いることにより負荷を分散させてデータ配信を行い,性能改善を図る.」


「2.2 CM-AODV
CM-AODVはAODVをマルチパス化し,クロスレイヤ設計を用いた方式である.これは,式(1)より物理層で取得したSINR値をもとに,式(2)を用いてRouteQuality(以下,ルート品質)を求めてルーティングとデータ配信を行う.品質の良い経路を用いるので,AODVに比べて高品質な通信が可能である.」

「2.2.1 ルート品質の導出
LホップのルートR=<n_(o),n_(1),...,n_(L)>が与えられるとすると,
QR=mim{SINR(n_(i),n_(i+1))} (2)
^(0≦i≦L-1)
n_(i),n_(i+1):ルートR内の隣接ノード
SINR(n_(i),n_(i+1)):リンク<n_(i),n_(i+1)>間のSINR(0≦i≦L-1)
として,ルート品質を求める.

2.2.2 ルート品質フィールドの設定
図1に,CM-AODVで用いられるRREQのヘッダを示す.CM-AODVでは,AODVで用いられているRREQのヘッダの最初の4バイトの部分に,新たにルート品質フィールドを8ビット設ける.AODVの予約済みの部分である.ルート品質フィールドには式(2)で求めた値を挿入する.
図2に,CM-AODVで用いられるRREPのヘッダを示す.RREPにも同様にルート品質フィールドを設けて,最終的に計算されたルート品質を挿入して送信元ノードへ送信する.」

「3.1ルート品質の閾値によるルーティング
ルート品質の求め方はCM-AODVと同様である.各ノードに設定するルート品質の閾値は同じ値を用いるが,中間ノードと送信先ノードで動作が異なる.図4は,提案方式の閾値設定による制御パケット処理のプログラムの流れである.図4より,中間ノードではルート品質の閾値を設けることによりルート品質が閾値以下のRREQを転送しないようにする.これにより,経路作成時のRREQのフラッディングを抑えることができる.送信先ノードではルート品質の閾値を設けることによりルート品質が閾値以下のRREPを生成しないようにする.これにより,ルート品質が閾値より高く品質が良い経路を作成することができる.」

「3.4 提案方式の動作例
図5は提案方式のルーティング動作例である.ノード5において,ルート品質が同じ3つの経路<S,1,5>,<S,7,5>,<S,5>がある.この場合は,最も早くRREQが送信される経路(ホップ数が最も少ない経路)のRREQを選択して転送し,それ以外のRREQは破棄する.この場合は,経路<S,5>が選択される.ノード9において,ノード5とノード8からRREQが送信されるがノード8から送信されるRREQを選択して転送する.これは,それぞれのルート品質を比べた場合ノード5よりもノード8のルート品質が高いからである.同様にして,ノード3ではノード2から送信されるRREQを,ノード4ではノード3から送信されるRREQを選択して転送する.送信先ノードにおいて,ノード4,6,9からRREQが送信されるがノード9から送信されたRREQは破棄する.これは,各ノードにおいてRREQやRREPを生成する際に,ルート品質が設定された閾値以下の場合は生成しない処理を行うためである.そして,ノード4,9から送信されたRREQに対しRREPを返送する.最終的に,ルート品質が13dBの経路1<S,1,2,3,4,D>とルート品質が11dBの経路2<S,5,6,D>が作成される.このように作成された経路の中からパケット毎に等確率で一つの経路を選びデータ配信を行う.」


の記載があるから、

「モバイルアドホックネットワークで用いられるルーティングの方法であって、
LホップのルートR=<n_(0),n_(1),...,n_(L)>が与えられるとすると、
mim{SINR(n_(i),n_(i+1))}
^(0≦i≦L-1)
n_(i),n_(i+1):ルートR内の隣接ノード
SINR(n_(i),n_(i+1)):リンク<n_(i),n_(i+1)>間のSINR(0≦i≦L-1)
としてルート品質は求められ、
RouteRequestパケット(以下、「RREQ」という。)のヘッダの最初の4バイトの部分に、新たにルート品質フィールドを8ビット設けて挿入し、
中間ノードではルート品質の閾値を設けることによりルート品質が閾値以下のRREQを転送しないようにし、
ノード5において、ルート品質が同じ3つの経路があり、この場合は、最も早くRREQが送信される経路(ホップ数が最も少ない経路)のRREQを選択して転送し、それ以外のRREQは破棄し、
ノード9において、ノード5とノード8からRREQが送信されるがノード8から送信されるRREQを選択して転送し、これは、それぞれのルート品質を比べた場合ノード5よりもノード8のルート品質が高いからであり、同様にして、ノード3ではノード2から送信されるRREQを選択して転送する、
ルーティングの方法。」(以下「引用発明」という。)

が記載されている。

3-3.本願発明と引用発明の対比と検討

本願発明における「リアクティブの経路制御構築方式」について、本願明細書【0002】には、
「【0002】
従来、アクセスポイントを介することなく、通信ノード同士が直接無線通信を行うネットワークとして、アドホックネットワークが利用されている。アドホックネットワークには、データ転送用の経路をノード間に構築する際の方式として、プロアクティブ方式とリアクティブ方式という、主に2つの経路構築方式が存在する。プロアクティブ方式では、各ノードは、隣接するノードにハローフレームをブロードキャストすることで、ネットワーク上の各ノードからルートコストを定期的に収集し、データ転送に使用する経路を最適な経路に更新する。リアクティブ方式では、データ送信元のノードが、ルーティングの直前に最適経路の探索を行うことで、経路を構築する。」
の記載があるから、引用発明も「リアクティブの経路制御構築方式」であるといえる。

引用発明は、モバイルアドホックネットワークで用いられるルーティングであるから、引用発明の「ノード」は「モバイルアドホックネットワークを構成する通信装置」といえる。

n_(i)とn_(i+1)がルートR内の隣接ノードである場合のSINR(n_(i),n_(i+1))をリンク<n_(i),n_(i+1)>間のSINR(0≦i≦L-1)として、
mim{SINR(n_(i),n_(i+1))}
^(0≦i≦L-1)
は、ルートR内のリンク<n_(i),n_(i+1)>間のSINRが最小の値を求めているから、引用発明は、ルートR内の隣接ノード間のSINRが最小の値を「ルート品質」として用いている。
つまり、引用発明の「ルート品質」は「経路全体の品質情報」であるといえる。

引用例は、「RouteRequestパケット」であって、RREQの送信によりルートを決定しているから、「経路探索要求パケット」であるといえる。
よって、引用発明の「RREQ」と本願発明の「経路探索要求フレーム」は、どちらも「経路探索要求情報」である点で同じである。

引用発明の「RREQ」には「ルート品質」が挿入されているから、引用発明の「RREQ」は、「経路探索要求情報の経由した経路全体の品質情報を有する経路探索要求情報」であるといえる。

引用発明は、ノード3ではノード2から送信されるRREQを選択して転送しており、その選択基準は明記されていないものの、ノード9ではノード5とノード8からのRREQが送信され、それぞれののルート品質を比べた場合ノード5よりもノード8のルート品質が高いからノード8から送信されるRREQを選択して転送しており、ノード3でも同様であるから、ノード2から送信されるルート品質が高いから選択して転送していると理解される。
そして、転送する相手の「通信装置」は、「自通信装置」ではない装置であることは明らかであるから「他の通信装置」であるといえる。

上記によれば、引用発明は「複数の経路を経由して受信された前記経路探索要求情報の中から、前記品質情報に基づき、他の通信装置に転送する経路探索要求情報を選択」し、「選択された経路探索要求情報を前記他の通信装置に転送」しているといえる。

引用発明では、受信したRREQについて、「ルート品質が閾値以下のRREQを転送しない」ようにするから、引用発明の「閾値」はRREQを「通信装置に再び転送するか、転送しないかの判断基準となる値である所定の基準値」である。
ここで、RREQを転送する通信装置は、「隣接」の通信装置であるから、引用発明の「閾値」は、「経路探索要求情報を隣接通信装置に再び転送するか、転送しないかの判断情報となる値である所定の基準値」であるといえる。

「ルーティング」は通信制御であるから、引用発明の「ルーティングの方法」は「通信制御方法」であるといえる。

したがって、本願発明と引用発明は、

「リアクティブの経路構築方式を用いたアドホックネットワークを構成する通信装置が、
経路探索要求情報の経由した経路全体の品質情報を有する経路探索要求情報を受信し、
複数の経路を経由して受信された前記経路探索要求情報の中から、前記品質情報に基づき、他の通信装置に転送する経路探索要求情報を選択し、
選択された経路探索要求情報を前記他の通信装置に転送すると共に、前記経路探索要求情報の前記品質情報の示す品質が、前記通信装置が、受信された経路探索要求情報を隣接通信装置に再び転送するか、転送しないかの判断基準となる値である所定の基準値に基づいて処理し、待ち時間内に自通信装置に到達した経路探索要求情報が複数存在する場合、残った経路探索要求情報の内、経路品質の最も高い経路探索要求情報のみを転送することにより、前記所定の基準値以上の複数の経路探索要求情報に対し、経路品質重みの品質情報に基づく絞込みを行う
ことを特徴とする通信制御方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

経路探索要求情報として、本願発明は「経路探索要求フレーム」を用いるのに対し、引用発明は「経路探索要求パケット」である点。

相違点2

RREQを転送しない条件として、本願発明は「基準値未満」であるのに対し、引用発明は「閾値以下」である点。

相違点3

転送しない場合の処理として、本願発明は廃棄するのに対し、引用発明では特定が無い点。

相違点4

経路探索要求情報の転送に際し、引用発明は「より高いルート品質の経路探索要求情報を選択して」転送するのに対し、本願発明は、「経路品質の最も高い経路探索要求フレームのみ」を転送する点。

3-3.相違点の判断

相違点1について

「パケット」が「フレーム」により送信されることは一般的なことであるから、「経路探索要求パケット」も「フレーム」で送信されることは一般的である。
そして「経路探索要求パケット」が含まれる「フレーム」は「経路探索要求パケット」であるといえる。

上記によれば、引用発明において、「経路探索要求パケット」に代えて「経路探索要求フレーム」を送信することは当業者が容易に相当しうることであるといえる。

相違点2について

閾値の「未満」とするか「以下」とするかは、設計事項に過ぎないから、RREQを転送しない条件として、「閾値以下」に代えて「基準値未満」とすることは当業者が容易に想到しうることである。

相違点3について

引用発明のノード5は、選択して転送したRREQ以外のRREQは破棄しているから、その他のノードにおいても、転送しないパケットについて「破棄」するようにすることは当業者が容易に想到しうることである。

相違点4について

引用発明において、ルート品質が各隣接ノードのSINRの最小値で求めることを前提として図5を参照すれば、ノード3では、ルート品質が13dBであるノード2からRREQと、ルート品質が11dBとなるノード5からのRREQを受信することは明らかである。
そして、ノード2からのRREQを選択するのは、ノード2からのRREQのルート品質(13dB)がノード5からのRREQのルート品質(11dB)よりも高いことから選択されていることは引用例に記載されているとおりである。
そうすると、図5によれば閾値は10dBであるから、ノード3では、「2つのRREQ」のルート品質が閾値を越える場合であっても、より高いルート品質の「1つのRREQ」を選択して転送することが記載されており、ノード4でも「2つのRREQ」のルート品質が閾値を越える場合であっても、より高いルート品質の「1つのRREQ」を選択して転送することが記載されている。
一方、ノード5においては、ルート品質が同じRREQが複数存在する場合に、ホップ数が最も少ない経路のRREQを選択して送信しているから、ノード5においては「最も少ない経路」すなわち「1つ」のRREQのみを選択して転送していることが理解される。

上記のとおり、各ノードは、複数のRREQのルート品質が閾値を超える場合であっても「1つのRREQ」を選択して送信していること、ルート品質が同じRREQが複数存在する場合には「最小ホップ数のRREQのみ」を選択して転送していることを考慮すれば、ルート品質に基づいて「1つのRREQのみ」を選択している理由が、ルート品質の最も高いRREQのみを転送するようにしているためであること、ことは当業者が容易に想到しうることである。
これは、経路探索要求フレームの転送に際し、「経路品質の最も高い経路探索要求フレームのみ」を転送するようにすることが、当業者が容易に想到しうることであることを示している。


4.まとめ

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-01 
結審通知日 2017-03-07 
審決日 2017-03-22 
出願番号 特願2014-502423(P2014-502423)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 吉田 隆之
近藤 聡
発明の名称 通信装置、及び通信制御方法  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 酒井 宏明  

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