• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1328297
審判番号 不服2016-4889  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-04 
確定日 2017-05-11 
事件の表示 特願2013-518411「シリコン凹部低減のためのエッチングプロセス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月12日国際公開、WO2012/005847、平成25年 7月22日国内公表、特表2013-529858〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年6月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年6月29日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年12月18日 翻訳文の提出
平成26年 2月20日 審査請求
平成27年 5月 8日 拒絶理由通知(起案日)
平成27年 7月 6日 意見書及び手続補正書の提出
平成27年12月24日 拒絶査定(起案日)
平成28年 4月 4日 審判請求、手続補正書の提出


第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年4月4日に提出された手続補正書によりなされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正の概要
平成28年4月4日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、本願の特許請求の範囲の請求項1、2、3、6、11、14、18及び19を補正するものであって、このうち、本件補正前後の請求項1の記載は以下のとおりである。
<本件補正前>
「 【請求項1】
基板を選択的にエッチングするための方法であり、前記方法は:
シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板をプラズマエッチングシステムに導入すること;
プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へパターンを転写することを含み、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及びCO_(2 )を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用し;及び
前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであり、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの偏差が2度未満であるように選択される、方法。」

<本件補正後>
「 【請求項1】
シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板を選択的にエッチングして、前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さを有し、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルは90度から2度未満の角度偏差を有する前記基板を得るための方法であり、前記方法は:
シリコン上に前記シリコン窒化物層を含む前記基板をプラズマエッチングシステムに導入すること;
プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へ前記パターンを転写し、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及びCO_(2 )を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用すること;及び
前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること、を達成するように選択すること、
を含む、方法。」

(2)補正事項
請求項1についての本件補正の補正事項を整理すると、次のとおりである。
ア 補正事項1
本件補正前の「基板を選択的にエッチングするための方法」という記載を、本件補正後は「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板を選択的にエッチングして、前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さを有し、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルは90度から2度未満の角度偏差を有する前記基板を得るための方法」と補正する。

イ 補正事項2
本件補正前の「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板をプラズマエッチングシステムに導入する」という記載を、本件補正後は「シリコン上に前記シリコン窒化物層を含む前記基板をプラズマエッチングシステムに導入する」と補正する。

ウ 補正事項3
本件補正前の「プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へパターンを転写することを含み、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及びCO_(2 )を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用し」という記載を、本件補正後は「 プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へ前記パターンを転写し、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及びCO_(2 )を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用すること」と補正する。

エ 補正事項4
本件補正前の「前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであり、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの偏差が2度未満であるように選択される」という記載を、本件補正後は「前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること、を達成するように選択すること」と補正する。

オ 補正事項5
本件補正前の「方法。」という記載を、本件補正後は「を含む、方法。」と補正する。

2 新規事項の追加の有無、及び、補正の目的等について
以下、各補正事項について、新規事項の追加の有無、及び、補正の目的等を検討する。
(1)補正事項1について
ア 平成23年6月6日付けで提出された翻訳文は、特許法第184条の6第2項の規定により、本願に係る国際出願日における願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされる。
補正事項1は、前記翻訳文における、段落【0008】の「1つの実施態様によると、基板を選択的にエッチングする方法が記載される。前記方法は、シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))を含む基板をプラズマエッチングシステム内に導入し;及びプラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層にパターンを転写することを含み、前記プラズマエッチングプロセスが、初期成分として、C,H,及びFを含むプロセスガス及びCO_(2 )を含む添加ガスとを含むプロセスガス組成物を使用する、方法である。前記方法はさらに:前記プラズマエッチングプロセスでの前記添加ガスの量を:(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が、10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁が、90度からの偏差が2度未満であること、を達成するように選択することを含む。」という記載に基づくものと認められる。
したがって、補正事項2の本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

イ 補正事項1のうち、本件補正前の「基板を選択的にエッチングするための方法」を「基板を選択的にエッチングして、前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さを有し、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルは90度から2度未満の角度偏差を有する前記基板を得るための方法」とする補正は、請求項1に係る「方法」が、「前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さを有し、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルは90度から2度未満の角度偏差を有する前記基板を得るための方法」であることを限定する補正である。
また、本件補正前の「基板」を「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板」とする補正は、補正前の請求項1に既に記載されていた「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板」という記載を補正後の請求項1の先頭に移動して、請求項1の記載を、前記段落【0008】の記載に一致させて、より明確にしたものであると認められる。
以上から、補正事項1の本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とすると認められる。

(2)補正事項2について
ア 補正事項2は、前記段落【0008】の記載に基づくものと認められる。
したがって、補正事項2の本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

イ そして、補正事項2は、本件補正前の「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板」という記載が本件補正1によって既に補正後の請求項1で用いられたことから、「前記シリコン窒化物層」及び「前記基板」とすることで、これらが既に用いた「シリコン窒化物(SiN_(y ))層」及び「基板」と同じものであることを明確にしたものであると認められる。
したがって、補正事項2の本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とすると認められる。

(3)補正事項3について
ア 補正事項3は、前記段落【0008】の記載に基づくものと認められる。
したがって、補正事項3の本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

イ 補正事項3は、段落単位で字下げするとともに、当該段落の末尾に「すること」という記載を付加することで、当該段落の特定事項が補正後の請求項1に係る「方法」における一つのステップを表していることを明確にするとともに、「パターン」という語が補正事項1によって既に補正後の請求項1で用いられたことから「前記パターン」とすることで、補正事項3における「パターン」が既に用いられた補正事項1における「パターン」と同じものであることを明確にしたものであると認められる。
したがって、補正事項3の本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とすると認められる。

(4)補正事項4について
ア 補正事項4は、前記段落【0008】の記載に基づくものと認められる。
したがって、補正事項4の本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

イ 補正事項4は、本件補正前においても「(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであり、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの偏差が2度未満であるように」、「前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量」が「選択される」ものであったところ、本件補正後は、「前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること、を達成するように選択する」とすることで、請求項1の記載を、前記段落【0008】の記載に一致させて、より明確にしたものであると認められる。
そして、補正事項4において、段落の末尾に「すること」という記載を付加したことは、当該段落の特定事項が補正後の請求項1に係る「方法」の一つのステップを表していることを明確にしたものであると認められる。
以上から、補正事項4の本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とすると認められる。

(5)補正事項5について
ア 補正事項5の本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に適合することは明らかである。

イ そして、補正事項5は、補正後の請求項1に係る「方法」が、「前記基板をプラズマエッチングシステムに導入すること」、「添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用すること」及び「達成するように選択すること」という3つのステップを「含む」ことを明確にしたものであると認められる。
したがって、補正事項5の本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とすると認められる。

(6)発明の特別な技術的特徴について
なお、補正事項1ないし8の補正が請求項1に係る発明の特別な技術的特徴を変更しないことは、明らかである。

(7)検討のまとめ
以上検討したとおりであるから、請求項1についての本件補正の補正事項は、特許法第17条の2第3項ないし第5項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
(1)検討の前提
以上のとおり、請求項1についての本件補正の補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。
そこで、本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、本件補正が、いわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かを、請求項1に係る発明について検討する。

(2)補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、再掲すると次のとおりである。
「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板を選択的にエッチングして、前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さを有し、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルは90度から2度未満の角度偏差を有する前記基板を得るための方法であり、前記方法は:
シリコン上に前記シリコン窒化物層を含む前記基板をプラズマエッチングシステムに導入すること;
プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へ前記パターンを転写し、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及びCO_(2 )を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用すること;及び
前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること、を達成するように選択すること、
を含む、方法。」

(3)引用例の記載事項及び引用発明
ア 引用例1の記載事項
原査定の根拠となった拒絶理由通知において「引用文献1」として引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平11-102896号公報(以下「引用例1」という。)には、「高密度プラズマ中での高アスペクト比フィーチャ用の異方性選択的窒化物エッチング方法」(発明の名称)について、図1?5とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付加したもの。以下、同様である。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】高密度プラズマを形成するためにフルオロカーボン・ガス、水素源、および弱いオキシダントを含むエッチャント・ガスを励起するステップと、
前記多層構造上の前記高密度プラズマの方向性を制御するために前記多層構造に電源を適用するステップと、
窒化ケイ素層をエッチングするために前記高密度プラズマを前記窒化ケイ素層に導入するステップとを含む、多層構造から窒化ケイ素層を異方性エッチングする方法。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般に集積回路および他の電子デバイスを製造する方法に関する。特に、本発明は、半導体ウエハまたは他の多層構造上に窒化ケイ素をエッチングする方法を記述する。」

(ウ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの利点は、0.175μmほどの小さいフィーチャ・サイズ用の酸化ケイ素の高密度プラズマ・エッチングについて実証されている。しかし、現代の半導体デバイス中で使用される多数のレベルは、酸化ケイ素層ならびに窒化ケイ素層、または窒化ケイ素層のみから構成される。ハードマスク用途では、厚い窒化物層は、単独か、または厚い酸化物層とともに存在し、不十分なフォトレジスト選択度およびそれに続く像完全性の損失のために現代の最新技術を使用して高密度プラズマ中でエッチングすることができない。高密度プラズマ反応器中の解離レベルが高いと、しばしばフルオロカーボン・ガス中のフッ素原子によって等方性エッチングが起こる。
……(中略)……
【0008】図1に、酸化物またはフォトレジスト20中のブランケット窒化物層10上で3500Å分-1の窒化物エッチング速度を示す無酸素重合方法(C_(2)F_(6)/CH_(3)F)の使用を示す。ブランケット窒化物層10はシリコン基板15上に形成される。しかしながら、エッチング・プロファイルは等方性であり、窒化物と酸化物または窒化物とフォトレジストとの境界35のところに望ましくないアンダーカット30が生じる。
【0009】窒化ケイ素をエッチングする技術はよく開発されているが、この技術に固有のいくつかの問題がまだ存在する。1つの特定の問題は、高アスペクト比窒化ケイ素レベル用のエッチングである。したがって、フォトレジスト選択度を維持し、かつそれに続く像完全性の損失を回避しながら高いアスペクト比で窒化ケイ素をエッチングする方法が必要である。」

(エ)「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明では、多層構造から窒化ケイ素層を異方性エッチングする方法は、励起されたエッチャント・ガスを含む高密度プラズマを形成するためにフルオロカーボン・ガス、水素源、および弱いオキシダントを含むエッチャント・ガスを励起するステップと、構造上の高密度プラズマの方向性を制御するために構造に電源を適用するステップと、窒化ケイ素層をエッチングするために高密度プラズマを窒化ケイ素層に導入するステップとを含む。
【0011】本発明では、フルオロカーボン・ガスはCF_(4)、C_(2)F_(6)、およびC_(3)F_(8)からなるグループから選択され、水素源はCH_(2)F_(2)、CH_(3)F、およびH_(2)からなるグループから選択され、また弱いオキシダントはCO、CO_(2)、およびO_(2)からなるグループから選択される。
【0012】本発明の範囲内のエッチャント・ガスの他の実施形態は、約4容積%?20容積%の量のフルオロカーボン・ガスを加えるステップ、約10容積%?30容積%の量の水素源を加えるステップ、および約40容積%?70容積%の量の弱いオキシダントを加えるステップを含む。
【0013】本発明の他の実施形態によれば、RF電源など、プラズマの方向性の制御に使用される電源は、コイルなど、エッチャント・ガスを励起するために使用される電源から分離される。RF電源は、エッチングされる窒化ケイ素層を有する側に対向する側に適用されることが好ましい。
【0014】本発明の他の実施形態によれば、エッチャント・ガスをチャンバに導入する。チャンバの圧力は、1ないし20ミリトルに維持することが好ましい。次いでエッチャント・ガスを第1の電源に当てることによってガスを励起して、高密度プラズマを形成する。この実施形態は、第1の電源から分離された第2の電源を構造に適用することによって構造上のプラズマのバイアスを制御するステップを含む。プラズマを窒化ケイ素層に導入して、窒化ケイ素層中に少なくとも2:1、好ましくは少なくとも6:1のアスペクト比を有するフィーチャをエッチングする。」

(オ)「【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、フォトレジストに対する高い選択度を有し、かつ調節可能な異方性を与える窒化物エッチングを提供する。より効率的な窒化物エッチングを可能にするドライ・エッチング方法について説明する。好ましいエッチャント・ガスは、C_(2)F_(6)、CH_(3)F、およびCOの混合物である。本発明は、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)など半導体デバイス用の高アスペクト比フィーチャの異方性かつ高速のエッチングを可能にする。本発明の混合ガスは、フォトレジストに対する高い選択度を有する。窒化物エッチングのテーパ角度の微妙な制御が達成される。放射源/バイアス電力の独立した制御によって追加の制御が実施される。
【0016】本発明は、パッシベーション層の形成をもたらすフルオロカーボン・ポリマー前駆体種を使用し、したがってエッチングは異方性になる。本発明はまた、酸素含有種を使用して、垂直方向におけるイオン強化エッチングによるパッシベーション層の除去を援助する。フォトレジストは、フィーチャ中の窒化物の場合のようにマイクロローディングを受けないので、酸素を加えるとフォトレジストの選択度が低下する。レジストを保存するためにポリマー含有量を増加させれば、高アスペクト比フィーチャ中でエッチング停止がより起こり易くなる。
【0017】本発明によれば、プラズマの方向性を制御するために使用される電源は、高密度プラズマを形成するエッチャント・ガスを励起するために使用される電源から分離される。したがって、分離された電源は、プラズマ発生機構からのウエハ上のバイアスの独立した制御を組み込む。イオン衝撃エネルギーは主としてウエハに対するバイアスによって制御されるが、イオン・フラックス(および密度)は主として発生構造(例えば、誘導プラズマ放射源中のコイル)に加えられた電力によって制御されるために「分離」なる語を使用する。この構造を図2に示す。エッチャント・ガスは(破線で示される)チャンバ40中に導入され、エッチャント・ガスは、第1の電源45によって励起されて、イオン55を有する高密度プラズマを形成する。RF電源50など第2の電源は、第1の電源45から分離される。チャンバ40の圧力は、チャンバ40に結合された真空ポンプ48を使用して、約1?20ミリトルに維持することが好ましい。
【0018】分離されたプラズマ放射源によって使用されるものなどバイアスされた基板は、ウエハ・プラテンの電位を一般に数千ボルトだけ振動させる。この電位のある部分は、プラズマ電子(シース・キャパシタンス)およびウエハ/チャック・キャパシタンスによって遮蔽されるが、ウエハに当たるイオンの加速度ははるかに大きくなり、一般に50Vから500Vに対応する加速度である。この追加のエネルギーは、ウエハ表面に対して直角な方向におけるエッチングを加速し、本発明における異方性エッチングの原因である。図2に示されるバイアスされた基板中で、RF電源50は、基板60の裏面、すなわち基板60の(窒化ケイ素層など)エッチングされる層に対向する側に適用される。図2において、基板60は、シリコン基板上に形成される窒化ケイ素層を代表することができる。RF電源50は、イオン55を基板60の方に加速し、それによりその方向におけるエッチング速度が速くなる。フォトレジスト65上のパターンは、下地の層に直接転写され、したがってパッキング密度が最大になる。図3に示されるバイアスしていない基板70中で、イオン75は、基板70の方に加速されず、したがってエッチングがあらゆる方向に進行し、フォトレジスト80中にアンダーカットが生じ、デバイスのパッキング密度が制限される。基板70は、シリコン基板上に形成される窒化ケイ素層を代表することができる。
【0019】高密度プラズマは、プラズマ中の荷電粒子密度を示す。通常のまたは代表的な密度のプラズマ中では、イオン密度は一般に約10^(11)cm^(-3)よりも低いが、高密度放射源中では、分別イオン化は10^(11)cm^(-3)よりも大きい。高密度プラズマ放射源はプラズマ電子を反応器境界に対して直角な方向に加速し、したがって電子の平均自由行程はプラズマ寸法と比較して長くなる。このため動作圧力を低くすることができるが、またより高いイオン壁フラックスを有するプラズマを維持するためにより高い程度のイオン化が必要になる。
【0020】本発明の方法は、(所要の選択度によって決定された)100Å秒^(-1)またはそれ以上の速度で、6:1よりも高いアスペクト比の高密度プラズマ中での選択的異方性窒化物エッチングを提供する。従来の容量性結合ツール中での窒化物の同様のエッチングは、上述のように反応性イオン・エッチング(RIE)ラグを示し、約12.5Å秒^(-1)程度の窒化物エッチング速度が得られる。
【0021】本発明の例示的な実施形態では、図1に関して上記で説明した重合システムC_(2)F_(6)/CH_(3)Fに弱いオキシダント、好ましくはCOまたはCO_(2)を加える。本明細書で使用する「弱いオキシダント」とは、フルオロカーボンと容易に反応して、元のフルオロカーボンよりも揮発性の高い(COF_(X)など)生成物を形成する化合物を示す。弱いオキシダントは、200℃よりも低い温度、1?20ミリトルなどの動作条件において元のフルオロカーボンよりも揮発性が高いCOF_(X)生成物を形成する化合物がより好ましい。オキシダントの添加は、パッシベーション層の除去を助け、気相プラズマ・ケミストリのC/F比をより小さい値に切り替え、それによりエッチング速度がさらに速くなり、パッシベーション・ポリマーが減少する。結果を図4に示す。
【0022】図4は、エッチング速度が約100Å秒^(-1)である理想に近いエッチング・プロファイルを示す。窒化物層110は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされ、酸化物またはフォトレジスト上層120はアンダーカットされていない。窒化物層110はシリコン基板105上に形成される。図示のフィーチャは窒化物層と基板との境界までエッチングされているが、このフィーチャは、特定の必要に応じて、この境界のわずかに上または下までエッチングすることができる。CH_(3)Fは、水素源の働きをし、(等方性の増大によって示唆される)窒化物の化学エッチングを増進し、(重合ならびにフッ素除去によって)フォトレジスト選択度を改善する。C_(2)F_(6)は、CF_(X)ポリマー前駆体のダウンホール供給体の役目を果たすためにアンダーカットを少なくし、窒化物のテーパを制御する。図4に示されるプロファイルを得るために使用される好ましいチャンバは、Applied Materials Omega Chamber(ASTC Hex248)であり、好ましい混合ガスはC_(2)F_(6)、CH_(3)F、COである。C_(2)F_(6)、CH_(3)F、COの混合ガスを有する同様のチャンバでも所望の結果が得られることは発明の範囲内に入る。チャンバの圧力は、約1ミリトルから約20ミリトルまでが好ましい。」

(カ)「【0023】上記の条件からCH_(3)FならびにCOを除去した場合、パッシベーション剤(CH_(3)F)の損失が酸化剤(CO)の減少によって補償されるので、同様のプロファイル(図示せず)が得られる。例えば、10標準立方センチメートル(sccm)のC_(2)F_(6)、20sccmのCH_(3)F、および60sccmのCOの混合物から所望の結果が得られる。
【0024】例えば、他の成分を一定にして重合剤(C_(2)F_(6))を10sccmから20sccmに増加させると、図5に示すように、窒化物層130中のテーパ135の程度が増大する。窒化物層130は、酸化物層またはフォトレジスト層140の下に位置する。窒化物層130は、シリコン基板145上に形成される。高アスペクト比窒化物フィーチャ中でテーパ角度を慎重に制御することができるので、後の処理中にホールをより容易に充填することができる。
……(中略)……
【0026】本発明の範囲内の例示的な実施形態は、4%?20%のC_(2)F_(6)、10%?30%のCH_(3)F、および40%?70%のCOの混合ガスを含む。本発明による他の実施形態は、ダウンホール・ポリマーを生成するためのフルオロカーボン・ガス(例えば、CF_(4)、C_(2)F_(6)、C_(3)F_(8))、窒化物エッチング速度およびレジスト選択度を向上させるための水素源(例えば、CH_(2)F_(2)、CH_(3)F、希釈H2混合物)、および垂直表面上のポリマーを除去するための弱いオキシダント(例えば、CO、CO_(2)、希釈O_(2))の適用を含む。」

(キ)図2には、フォトレジスト60が上面に設けられた基板60を、イオン55が垂直下向きに走行するチャンバ40内に配置することが記載されている。

イ 引用発明
上記の(ア)?(キ)から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板をチャンバ内に配置し、フルオロカーボン・ガス、水素源、及び弱いオキシダントを含むエッチャント・ガスを励起して形成した高密度プラズマを用いて前記窒化ケイ素層を異方性エッチングして、高いアスペクト比の選択的異方性窒化物エッチングを提供するドライ・エッチング方法であって、
前記フルオロカーボン・ガスとしてC_(2)F_(6)を選択し、前記水素源としてCH_(3)Fを選択し、また前記弱いオキシダントとしてはCOまたはCO_(2)を選択した前記エッチャント・ガスを励起するステップと、
前記高密度プラズマが有するイオンを前記基板の方に加速して、その方向におけるエッチング速度が速くして前記窒化ケイ素層を異方性エッチングすることで、前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写するステップと、
前記弱いオキシダントの添加の結果、前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示すことを特徴とする、窒化物エッチングのテーパ角度の微妙な制御が達成されるドライ・エッチング方法。」

ウ 引用例2の記載事項
原査定の根拠となった拒絶理由通知において「引用文献2」として引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である、特表2009-526398号公報(以下「引用例2」という。)には、「シリコンに対する誘電材料の選択エッチング方法及びシステム」(発明の名称)について、図1?12とともに次の事項が記載されている。
「【0008】
材料の処理方法においては、ドライプラズマエッチングは、一の材料をエッチングする一方で他の材料を実質的にエッチングしない化学反応物を有するプラズマ化学を利用する。一例では、絶縁(誘電)材料層が、多結晶シリコン(ポリシリコン)の特徴部位を有するゲート積層体にわたって堆積される(図1Aを参照のこと)。たとえば絶縁層には、二酸化シリコン(SiO_(2))、若しくはシリコン窒化物(たとえばSi_(2)N_(3))、又はこれら両方が含まれる。続いて絶縁層にはエッチング処理がなされる。それによりその絶縁層は、ゲート積層体の側壁に沿った部分を除く全ての部分で除去される(図1Bを参照のこと)。残された絶縁材料は半導体素子の作製過程においてスペーサとして機能する。素子の動作及び/又は信頼性にとっては、ポリシリコンゲート材料を実質的に減少させることなく、かつシリコン基板内に形成された凹部(図1B)を最小にして、スペーサが形成されることが重要である。凹部は2.7nm未満にまで減少させることが好ましく、1nm未満にまで減少させることがより好ましい。よってエッチング用化学物質は、ポリシリコンのエッチングを最小限にするだけはなく下地の(単結晶)シリコン基板のエッチングも最小限しながら、絶縁材料をエッチングするものを選択することが好ましい。さらに製造歩留まりにとっては、たとえばスペーサのエッチングプロセスの結果は基板の範囲にわたって均一であることが重要である。」

(4)対比
ア 補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板」は、補正発明の「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板」に相当する。
引用発明において、「高いアスペクト比の選択的異方性窒化物エッチングを提供する」とは、具体的には、「前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示すこと」であると認められる。ここで、「前記窒化ケイ素層」が「前記シリコン基板との境界までエッチングされる」ということは、「前記窒化ケイ素層」をエッチングする際の「前記シリコン基板」のオーバーエッチは無視できるということであり、つまり、「前記シリコン基板」には、エッチングによる凹部が実質的には形成されないことを意味すると認められる。
したがって、引用発明の前記「基板」を「フルオロカーボン・ガス、水素源、及び弱いオキシダントを含むエッチャント・ガスを励起して形成した高密度プラズマを用いて前記窒化ケイ素層を異方性エッチングして、高いアスペクト比の選択的異方性窒化物エッチングを提供するドライ・エッチング方法」と、補正発明の前記「基板を選択的にエッチングして、前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さを有し、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルは90度から2度未満の角度偏差を有する前記基板を得るための方法」とは、「基板を選択的にエッチングして、前記シリコン」には「シリコン凹部」が実質的には形成されず、「前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィル」はほぼ垂直である「前記基板を得るための方法」である点で共通する。

(イ)引用発明の「チャンバ」は、その内部で「フルオロカーボン・ガス、水素源、及び弱いオキシダントを含むエッチャント・ガスを励起して形成した高密度プラズマを用いて前記窒化ケイ素層を異方性エッチング」を行うことができる装置であるから、補正発明の「プラズマエッチングシステム」に相当する。
そして、引用発明は、前記「異方性エッチング」を前記「チャンバ」内で行う。
そうすると、引用発明が、補正発明の「シリコン上に前記シリコン窒化物層を含む前記基板をプラズマエッチングシステムに導入すること」に相当する、「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板をチャンバ内に」導入するステップを有することは自明である。

(ウ)引用発明の「ドライ・エッチング方法」は、補正発明の「プラズマエッチングプロセス」に相当する。引用発明の「前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写するステップ」は、前記「ドライ・エッチング方法」を用いて行われると認められる。
また、引用発明において「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板」の「上面」は「窒化ケイ素層」の面であるから、前記「下地の層」は「窒化ケイ素層」を指すことは明らかである。そして、前記「転写」が「チャンバ内」で行われることも明らかである。
そうすると、引用発明において「チャンバ内」で「前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写する」ことは、補正発明の「プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へ前記パターンを転写」することに相当する。

また、引用発明の「弱いオキシダント」は、前記「エッチャント・ガス」において前記「フルオロカーボン・ガス」と前記「水素源」に「添加」されるガスである。しかし、引用発明の「弱いオキシダント」は、「COまたはCO_(2)」から「選択」されるものであって、補正発明のように「添加ガス」として特に「CO_(2 )を含む」ことが選択されたガスではない。したがって、引用発明の「COまたはCO_(2)を選択」した「弱いオキシダント」と、補正発明の「CO_(2 )を含む添加ガス」とは、酸化炭素を含む「添加ガス」である点で共通する。
そして、引用発明の「エッチャント・ガス」から前記「弱いオキシダント」を除く、「C_(2)F_(6)」が「選択」された「フルオロカーボン・ガス」と、「CH_(3)F」が「選択」された「水素源」とを併せたものは、補正発明の「C、H及びFを含むプロセスガス」に相当する。
そうすると、引用発明の「混合ガス」である「フルオロカーボン・ガス、水素源、及び弱いオキシダントを含むエッチャント・ガス」は、後述する「添加ガス」に関する相違点を除き、補正発明の「プロセスガス組成物」に相当する。

以上から、引用発明の「前記高密度プラズマが有するイオンを前記基板の方に加速して、その方向におけるエッチング速度が速くして前記窒化ケイ素層を異方性エッチングすることで、前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写するステップ」と、補正発明の「プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へ前記パターンを転写し、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及びCO_(2 )を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用すること」とは、「プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へ前記パターンを転写し、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス」及び酸化炭素を含む「添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用すること」である点で共通する。

(エ)引用発明において、「前記弱いオキシダントの添加」は「ドライ・エッチング方法」で行われるものであるが、「前記弱いオキシダントの添加の結果、前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示す」ことは、「前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写するステップ」を実行した結果としての「前記窒化ケイ素層」の「エッチング・プロファイル」を示すものである。
これに対して、補正発明の「前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること、を達成するように選択すること」は、「前記プラズマエッチングプロセス」における「添加ガスの量」の「選択」手順を示すものと認められる。
したがって、引用発明の「前記弱いオキシダントの添加の結果、前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示す」ことと、補正発明の「前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること、を達成するように選択すること」とは、「前記プラズマエッチングプロセス」で「前記添加ガス」により「(1)前記シリコン」に「シリコン凹部」が実質的には形成されないこと、及び「(2)前記パターンの側壁プロフィル」がほぼ垂直であること、「を達成するように」「すること」である点で共通する。

イ 一致点と相違点
以上を総合すると、補正発明と引用発明とは、以下の点で一致するとともに、以下の点で相違している。
(一致点)
「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板を選択的にエッチングして、前記シリコンに形成されるシリコン凹部が実質的には形成されず、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルはほぼ垂直である前記基板を得るための方法であり、前記方法は:
シリコン上に前記シリコン窒化物層を含む前記基板をプラズマエッチングシステムに導入すること;
プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へ前記パターンを転写し、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及び酸化炭素を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用すること;及び
前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスにより、(1)前記シリコンにシリコン凹部が実質的には形成されないこと、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルがほぼ垂直であること、を達成するようにすること、
を含む、方法。」

(相違点)
(相違点1)
補正発明の「方法」は「前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さを有し、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルは90度から2度未満の角度偏差を有する前記基板を得るための方法」であるのに対して、引用発明の「ドライ・エッチング方法」は「高いアスペクト比の選択的異方性窒化物エッチングを提供する」方法である点。
(相違点2)
補正発明の「添加ガス」は「CO_(2 )を含む」のに対して、引用発明の「弱いオキシダント」は「COまたはCO_(2)を選択した」ものである点。
(相違点3)
補正発明は「前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること、を達成するように選択する」のに対して、引用発明は「ドライ・エッチング方法」において「前記弱いオキシダントの添加の結果、前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示す」点。

(5)相違点1?3についての当審の判断
ア 第2の3(3)アのとおり、引用例1には、図4に示された、シリコン基板105上に形成された窒化物層110の理想に近いエッチング・プロファイルの説明として、窒化物層110は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされること、及び窒化物層110とシリコン基板105との境界までエッチングされることが、それぞれ記載されており(段落【0022】、第2の3(3)ア(オ))、当該記載より、引用発明は、シリコン基板上に形成された窒化ケイ素層に対して、高いアスペクト比の選択的異方性窒化物エッチングを提供するドライ・エッチング方法であって、前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示すものと認められる。
また、引用例2の記載(段落【0008】、第2の3(3)ウ)より、シリコン基板上に形成されたシリコン窒化物をプラズマエッチングする際、当該エッチングによるシリコン基板のエッチングを最小限とし、当該エッチングにより前記シリコン基板内に形成される凹部の深さを2.7nm未満にまで減少させることが好ましいことは、本願の優先権主張の日前、公知であったと認められる。
してみれば、引用発明において、シリコン基板上に形成された窒化ケイ素層を、その側壁がシリコン基板表面となす角度が可能な限り90度に近づくようにエッチングすることは、引用例1の記載に接した当業者が当業者が当然に行い得るものと認められ、前記角度の90度からの偏差をどの程度に設定するかは、当業者が適宜選択し得るものといえる。
そして、引用発明において、前記窒化ケイ素層をエッチングする際の前記シリコン基板のエッチングを可能な限り小さくすることも、引用例1の記載に接した当業者が当然に行い得るものと認められ、引用例2に記載された事項に鑑みれば、前記窒化ケイ素層をエッチングする際に前記シリコン基板に形成される凹部を、2.7nm未満にまで減少させることは、当業者が普通に行い得るものといえる。

イ 他方、本願明細書には、補正発明の実施例として、「中心凹部」及び「端部凹部」がそれぞれ7,1nmで、且つ「中央プロフィル」及び「端部プロフィル」が、それぞれ89.5度及び89度である、表1及び表2(【0072】及び【0073】)の「プロセス番号3」だけが記載されている。
そして、本願明細書には、補正発明における「前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること」における「シリコン凹部」の上限値、及び「前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること」における「90度からの角度偏差」の上限値、それぞれの臨界的意義に関する説明は記載されていない。
してみれば、本願明細書の記載から、補正発明における前記「シリコン凹部」の上限値、及び前記「90度からの角度偏差」の上限値それぞれの設定によって、格別の作用効果を奏するとは認められず、この点に、格別の技術的意義があるとは認められない。

ウ 前記アのとおり、引用発明において、シリコン基板上に形成された窒化ケイ素層をエッチングする際に、その側壁がシリコン基板表面となす角度の90度からの偏差をどの程度に設定するかは、当業者が適宜選択し得るものと認められ、また、前記窒化ケイ素層をエッチングする際に前記シリコン基板に形成される凹部を、2.7nm未満にまで減少させることは、当業者が普通に行い得るものといえる。
そして、前記イのとおり、補正発明における「前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること」における「シリコン凹部」の上限値、及び「前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること」における「90度からの角度偏差」の上限値に、格別の技術的意義があるとは認められない。
そうすると、引用発明において、前記窒化ケイ素層をエッチングする際に、前記シリコン基板に形成される凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さとなり、前記窒化ケイ素層の側壁がシリコン基板表面となす角度の90度からの偏差が2度未満となるようにすることは、引用例1に記載の前記窒化物層の理想に近いエッチング・プロファイルを得るために、当業者が、適宜なし得たものと認められる。

エ ところで、第2の3(3)アのとおり、引用例1には、エッチャント・ガスを構成する、フルオロカーボン・ガスであるC_(2)F_(6)及び水素源であるCH_(3)Fに、弱いオキシダント(補正発明の「添加ガス」に相当。)として、好ましくはCOまたはCO_(2)を添加することにより、パッシベーション層の除去を助け、気相プラズマ・ケミストリのC/F比をより小さい値に切り替え、それによりエッチング速度がさらに速くなり、パッシベーション・ポリマーが減少するので、その結果、図4に示された、窒化物層110は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされ、及び窒化物層110とシリコン基板105との境界までエッチングされる、理想に近いエッチング・プロファイルが得られるとの記載(段落【0021】及び【0022】、第2の(3)ア(オ))があり、当該記載より、引用発明は、シリコン基板上に形成された窒化ケイ素層を、フルオロカーボン・ガスとしてC_(2)F_(6)を、水素源としてCH_(3)Fを、弱いオキシダントとしてはCOまたはCO_(2)を、それぞれ選択したエッチャント・ガスを励起して形成した高密度プラズマを用いて異方性エッチングするドライエッチング方法であって、前記弱いオキシダントの添加の結果、「前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようエッチングされるとともに、前記シリコン基板の境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示す」ものと認められる。
そして、引用発明において、エッチャント・ガスにおける前記弱いオキシダントの添加量により、パッシベーション層の除去が制御されて前記窒化ケイ素層の側壁と前記シリコン基板表面とがなす角度が変化することや、エッチング速度が制御されて前記シリコン基板に形成される凹部の深さが変化することは、引用例1の上記の記載から、当業者には自明と認められる。
そうすると、前記ウのとおり、シリコン基板上に形成された窒化ケイ素層をエッチングする際に、前記シリコン基板に形成される凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さとなり、前記窒化ケイ素層の側壁がシリコン基板表面となす角度の90度からの偏差が2度未満となるようにすることは、引用例1に記載の前記窒化物層の理想に近いエッチング・プロファイルを得るために、当業者が、適宜なし得たものと認められるところ、その際に、前記「シリコン凹部」の深さに関する条件、及び前記「窒化ケイ素層」の側壁の角度に関する条件を満たすように、エッチャント・ガスにおける前記弱いオキシダントの添加量を選択することは、引用例1の記載に接した当業者が、普通に行い得るものといえる。
そして、前記理想に近いエッチング・プロファイルを得るにあたり、前記弱いオキシダントとしてCO_(2)を選択することは、引用例1の記載に接した当業者が当然に行い得るものといえる。

オ 引用発明において、補正発明のように「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y))層を含む基板を選択的にエッチングして、前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さを有し、及び(2)前記シリコン窒化物層へ転写されるパターンの側壁プロフィルは90度から2度未満の角度偏差を有する前記基板を得るための方法」とすること、すなわち、相違点1に係る構成とすることは、前記アないしウの理由により、引用例1及び引用例2にそれぞれ記載された事項に接した当業者が、適宜なし得たものと認められる。
そして、引用発明において、エッチャント・ガスにおける弱いオキシダントとして、補正発明のようにCO_(2)を選択すること、すなわち、相違点2に係る構成とすることは、前記エのとおり、引用例1の記載に接した当業者が当然に行い得るものと認められ、また、前記弱いオキシダントの添加量を、補正発明のように「(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること」を達成するように選択すること、すなわち、相違点3に係る構成とすることも、前記アないしエの理由により、引用例1及び引用例2にそれぞれ記載された事項に接した当業者が、普通に行い得るものと認められる。
以上から、引用発明において、前記相違点1?3に係る構成とすることは、引用例1及び引用例2にそれぞれ記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと認める。

(6)独立特許要件の検討のまとめ
以上から、引用発明を相違点1ないし相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、補正発明の効果も、当業者が引用発明から予期し得たものと認められる。
したがって、補正発明は、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 小括
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年4月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、平成27年7月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものであり、その内の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、再掲すると、次のとおりのものである。

「基板を選択的にエッチングするための方法であり、前記方法は:
シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板をプラズマエッチングシステムに導入すること;
プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へパターンを転写することを含み、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及びCO_(2 )を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用し;及び
前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであり、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの偏差が2度未満であるように選択される、方法。」

2 引用例の記載事項及び引用発明
引用例1及び引用例2の記載事項は、第2の3(3)ア、ウで摘記したとおりである。
また、引用発明は、第2の3(3)イで認定したとおりのものである。

3 対比
ア 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板」は、本願発明の「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板」に相当する。
そして、引用発明の前記「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板」を「チャンバ内に配置し、フルオロカーボン・ガス、水素源、及び弱いオキシダントを含むエッチャント・ガスを励起して形成した高密度プラズマを用いて前記窒化ケイ素層を異方性エッチングして、高いアスペクト比の選択的異方性窒化物エッチングを提供するドライ・エッチング方法」は、本願発明の「基板を選択的にエッチングするための方法」に相当する。

(イ)引用発明の「チャンバ」は、その内部で「フルオロカーボン・ガス、水素源、及び弱いオキシダントを含むエッチャント・ガスを励起して形成した高密度プラズマを用いて前記窒化ケイ素層を異方性エッチング」を行うことができる装置であるから、本願発明の「プラズマエッチングシステム」に相当する。
そして、引用発明は、「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板をチャンバ内に配置し」て前記「異方性エッチング」を行う。
そうすると、引用発明における「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板をチャンバ内に」配置することは、本願発明の「シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板をプラズマエッチングシステムに導入すること」に相当する。

(ウ)引用発明の「ドライ・エッチング方法」は、本願発明の「プラズマエッチングプロセス」に相当する。引用発明の「前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写するステップ」は、前記「ドライ・エッチング方法」を用いて行われると認められる。
また、引用発明において「シリコン基板上に窒化ケイ素層が形成された基板」の「上面」は「窒化ケイ素層」の面であるから、前記「下地の層」は「窒化ケイ素層」を指すことは明らかである。そして、前記「転写」が「チャンバ内」で行われることも明らかである。
そうすると、引用発明において「チャンバ内」で「前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写する」ことは、本願発明の「プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へパターンを転写」することに相当する。

また、引用発明の「弱いオキシダント」は、前記「エッチャント・ガス」において前記「フルオロカーボン・ガス」と前記「水素源」に「添加」されるガスである。しかし、引用発明の「弱いオキシダント」は、「COまたはCO_(2)」から「選択」されるものであって、本願発明のように「添加ガス」として特に「CO_(2 )を含む」ことが選択されたガスではない。したがって、引用発明の「COまたはCO_(2)を選択」した「弱いオキシダント」と、本願発明の「CO_(2 )を含む添加ガス」とは、酸化炭素を含む「添加ガス」である点で共通する。
そして、引用発明の「エッチャント・ガス」から前記「弱いオキシダント」を除く、「C_(2)F_(6)」が「選択」された「フルオロカーボン・ガス」と、「CH_(3)F」が「選択」された「水素源」とを併せたものは、後述する「添加ガス」に関する相違点を除き、本願発明の「C、H及びFを含むプロセスガス」に相当する。
そうすると、引用発明の「混合ガス」である「フルオロカーボン・ガス、水素源、及び弱いオキシダントを含むエッチャント・ガス」は、本願発明の「プロセスガス組成物」に相当する。

以上から、引用発明の「前記高密度プラズマが有するイオンを前記基板の方に加速して、その方向におけるエッチング速度が速くして前記窒化ケイ素層を異方性エッチングすることで、前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写するステップ」と、本願発明の「プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へパターンを転写することを含み、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及びCO_(2 )を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用」することとは、「プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へパターンを転写することを含み、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス」及び酸化炭素を含む「添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用」することである点で共通する。

(エ)引用発明において、「前記弱いオキシダントの添加」は「ドライ・エッチング方法」で行われるものであるが、「前記弱いオキシダントの添加の結果、前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示す」ことは、「前記基板の上面に設けられたフォトレジスト上のパターンを下地の層に直接転写するステップ」を実行した結果としての「前記窒化ケイ素層」の「エッチング・プロファイル」を示すものである。
これに対して、本願発明の「前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであること、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であること、を達成するように選択すること」は、「前記プラズマエッチングプロセス」における「添加ガスの量」の「選択」手順を示すものと認められる。
したがって、引用発明の「前記弱いオキシダントの添加の結果、前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示す」ことと、本願発明の「前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであり、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの偏差が2度未満であるように選択される」こととは、「前記プラズマエッチングプロセス」で「前記添加ガス」により「(1)前記シリコン」に「シリコン凹部」が実質的には形成されなく、及び「(2)前記パターンの側壁プロフィル」がほぼ垂直である「ように」「される」点で共通する。

イ 一致点と相違点
以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致するとともに、以下の点で相違している。
(一致点)
「基板を選択的にエッチングするための方法であり、前記方法は:
シリコン上にシリコン窒化物(SiN_(y ))層を含む基板をプラズマエッチングシステムに導入すること;
プラズマエッチングプロセスを用いて前記シリコン窒化物層へパターンを転写することを含み、前記プラズマエッチングプロセスが、C、H及びFを含むプロセスガス、及び酸化炭素を含む添加ガスを含むプロセスガス組成物を使用し;及び
前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスにより、(1)前記シリコンにシリコン凹部が実質的には形成されなく、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルがほぼ垂直であるようにされる、方法。」

(相違点)
(相違点4)
本願発明の「添加ガス」は「CO_(2 )を含む」のに対して、引用発明の「弱いオキシダント」は「COまたはCO_(2)を選択した」ものである点。
(相違点5)
本願発明は「前記プラズマエッチングプロセスで前記添加ガスの量を、(1)前記シリコンに形成されるシリコン凹部が10ナノメートル(nm)未満の深さであり、及び(2)前記パターンの側壁プロフィルが90度からの角度偏差が2度未満であるように選択される」のに対して、引用発明は「ドライ・エッチング方法」において「前記弱いオキシダントの添加の結果、前記窒化ケイ素層は、側壁がほぼ垂直になるようにエッチングされるとともに、前記シリコン基板との境界までエッチングされるというエッチング・プロファイルを示す」点。

4 判断
前記第2の3(4)イのとおり、前記相違点4及び5は、それぞれ、補正発明と引用発明との相違点2及び3と同一のものである。
そうすると、前記第2の3(5)ア?オの理由により、引用発明において相違点4及び5に係る構成とすることは、引用例1及び引用例2にそれぞれ記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、本願発明の効果も、引用発明及び引用例2の記載から当業者が予期し得たものと認められる。
よって、本願発明は、引用例2の記載を参酌すれば、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 結言
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び引用例2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-13 
結審通知日 2017-03-14 
審決日 2017-03-29 
出願番号 特願2013-518411(P2013-518411)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杢 哲次溝本 安展  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 加藤 浩一
鈴木 匡明
発明の名称 シリコン凹部低減のためのエッチングプロセス  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ