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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1328377
審判番号 不服2015-10990  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-10 
確定日 2017-06-12 
事件の表示 特願2013- 35328「音響サイトメータにおける粒子分析」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101153、請求項の数(49)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成20年12月19日(パリ条約による優先権主張 平成19年12月19日 米国、平成20年9月11日 米国、平成20年9月11日 米国)を国際出願日として出願した特願2010-539848号の一部を、平成25年2月26日に新たに外国語出願したものであって、平成26年5月9日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年2月6日付けで拒絶査定されたところ、同年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後当審において平成28年7月4日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年8月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに、当審において平成28年11月30日付けで最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、平成29年3月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の理由の概要

原査定の理由の概要は次のとおりである。

(理由1)
本願の請求項1ないし50に係る発明は、以下の引用例AないしEのいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(理由2)
本願の請求項1ないし53に係る発明は、以下の引用例AないしEのいずれかに記載された発明及び周知事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例等一覧
引用例A:特開平8-266891号公報
引用例B:特開平10-82723号公報
引用例C:特開平7-47259号公報
引用例D:特開平9-122480号公報
引用例E:米国特許出願公開第2007/0119239号明細書
引用例F:特表2007-530924号公報

第3 当審による拒絶理由の概要

1 当審拒絶理由1の概要
当審拒絶理由1の概要は次のとおりである。

(理由1)
本願は、発明の詳細な説明の記載が、下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1ないし53に係る発明において特定された「非軸対称の力場」が、どのようなものであるのか、発明の詳細な説明、及び、図面の記載を参酌しても理解できず、また、「非軸対称の力場」が、何によって、どのように形成されるのか不明である。

(理由2)
本願の下記の請求項に係る発明は、下記の引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし50について
下記引用例1
・請求項51ないし53について
下記引用例1及び2

引用例一覧
引用例1:特開平8-266891号公報(拒絶査定時の引用例A)
引用例2:特表2007-530924号公報(拒絶査定時の引用例F)

2 当審拒絶理由2の概要
当審拒絶理由2の概要は次のとおりである。

本願の下記の請求項に係る発明は、下記の引用例に記載された発明及び本願優先権主張日前周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし50について
下記引用例1及び周知事項
・請求項51ないし53について
下記引用例1、2及び周知事項

引用例等一覧
引用例1:特開平8-266891号公報(拒絶査定時の引用例A)
引用例2:特表2007-530924号公報(拒絶査定時の引用例F)
周知例A:特表昭61-500278号公報
周知例B:国際公開第00/074814号

第4 本願発明

本願の請求項1ないし49に係る発明(以下、「本願発明1」ないし[本願発明49」という。)は、平成29年3月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし49に記載された事項により特定されるものと認められる。
そのうち、本願発明1は、分説して(A)から(E)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である(下線は、平成29年3月31日付けでなされた補正箇所を示す。)。

「【請求項1】
(A) 軸を有するキャピラリであって、該キャピラリは、粒子をその中に含む流体を流動させる、キャピラリと、
(B) ポンプおよび/または1つ以上の弁を含む流動停止デバイスであって、該流動停止デバイスは、収束を乱さずに、または、該キャピラリ内の粒子のフロー流の整列を低下させずに、流動方向を停止させるように構成されている、流動停止デバイスと、
(C) 該粒子を音響的に操作するための単一の圧電セラミックソースであって、粒子位置合わせは、該流動停止デバイスにより、流動構成および停止構成において維持される、単一の圧電セラミックソースと、
を備える装置であって、
(D) 該圧電セラミックソースは、該キャピラリの該軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられており、
(E) 該装置は、大きい方の粒子を該キャピラリの中心軸に輸送し、小さい方の粒子を、影響を受けないままにするように構成されている、装置。」

第5 当審拒絶理由2についての判断

1 引用例の記載事項及び引用発明

(1) 引用例1の記載事項

当審拒絶理由2に引用された引用例1(特開平8-266891号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付した。

(引-ア)
「【請求項1】濃縮あるいは排除させたい微粒子を含む流体を通過させる容器と、前記流体に接するように配置された輻射圧による力場の発生手段とを備え、前記力場発生手段によって前記微粒子を所定の方向に向かう力を作用させ、微粒子を濃縮した流体あるいは微粒子を排除した流体を抽出する手段を有することを特徴とする微粒子取扱装置。」

(引-イ)
「【請求項2】力場の発生手段として超音波発生源を備え、超音波発生源より超音波輻射圧による力場を発生させる手段を有する請求項1記載の微粒子取扱装置。」

(引-ウ)
「【請求項5】外力場発生源の強度を調節したり、あるいは、溶液の流れの速度を調節したり、あるいは、抽出する細管の吸引位置、吸引速度を調節したり、前記別の外力の強度を調節する機能を有する請求項1記載の微粒子取扱装置。」

(引-エ)
「【0041】
【実施例】
実施例1
図1(a)に、本発明の第1の実施例の濃縮装置部の横からの断面の摸式図、(b)に濃縮装置部の構成の概略の模式図、および(c)に装置構成の模式図を示す。
【0042】まず本装置の概要を図1(c)を用いて示す。この装置では、まず、微粒子を流す溶媒を溜めている水槽1の溶媒を脱気装置6で脱気する。脱気された溶媒は混合器9で水槽2にある試料を含む溶液と混合され、試料を含む溶液となる。試料を含む溶液は濃縮装置10で濃縮され、濃縮された微粒子を含む溶液は、細管17で吸引され濃縮溶液排出口13を介して濃縮された試料を溜めた水槽200に導かれる。また、残りの溶媒は溶媒排出口14を介して溶液溜めの水槽100に導かれる。溶液の吸引速度はポンプ4によって調節されており、濃縮装置10の溶液中の微粒子の観測装置20から得られた微粒子の状態によって、発生超音波の強度、試料の混合の割合、ポンプの吸引速度、細管17の位置等を制御することができる。
【0043】次に、濃縮装置10において、微粒子を集束させる装置の詳細について図1(a)と(b)を用いて説明する。濃縮装置10では微粒子を含む流体を流す管7と、この管の中に定在波5を発生させる超音波振動子3とからなっており、管7の流体中にある微粒子8等の溶質を超音波によって集めることができる。流体が水である場合、水中の音速は1500m/sであることから、超音波振動子3から発生する超音波の振動数が1MHzの時、波長λは1.5mmとなり管の幅16がλ/2あるいはλ/2の整数倍であれば、微粒子の音速および密度の関係によって定在波の節の部分に集まる微粒子と腹の部分に集まる微粒子に分かれながら、徐々に管中の節あるいは腹の位置に集まってくる。管7の肉圧はλ/2であることが望ましく、管の材質が石英ガラスであるとき、その音速は5400m/sであることから、1MHzの超音波での管の厚さはこのとき2.7mmである。また、管中の流体は静止していても、流れていてもよい。流れている溶液中の微粒子を集めるためには、集める微粒子の大きさに応じて超音波の強度を調節したり、超音波を照射する管の長さを調節したり、流体の流れる速度を調節すればよい。」

(引-オ) 図1




(2) 引用例1より認定できる事項および引用発明

ア (引-エ)には、「微粒子を含む流体を流す管7」との記載があることから、(引-ア)における「微粒子を含む流体を通過させる容器」は「管7」であることは明らかである。また、(引-オ)の図1より、管7が長手方向に伸びたものであることが見て取れる。

イ (引-イ)の記載を参酌すると、(引-ア)より、「力場の発生手段」が、「超音波発生源を備え、超音波発生源より超音波輻射圧による力場を発生させる」ものである点が理解でき、また、(引-エ)には、「この管の中に定在波5を発生させる超音波振動子3」との記載があることから、上記超音波発生源が超音波振動子3であることが理解できる。

ウ (引-オ)の図1(a)及び(b)を参照すると、超音波振動子3が、管7の外面に、管7の長手方向に沿って設けられた点が見て取れる。

エ (引-エ)における「溶液の吸引速度はポンプ4によって調節されており、」との記載、及び、(引-オ)の図1の(c)の記載より、「微粒子取扱装置」が「ポンプ4」を有し、溶液の吸引速度がポンプ4によって調節されていることが理解でき、また、(引-エ)に、「管中の流体は静止していても、流れていてもよい。」との記載があることから、前記ポンプ4は、流体を、流動状態および静止状態に調節可能であることが理解できる。

オ (引-エ)には、「管7の流体中にある微粒子8等の溶質を超音波によって集めることができる。」と記載されており、また、(引-オ)の図1(a)より、微粒子8が管7の中央に集められる点が見て取れるから、引用例には、管7の流体中にある微粒子8が超音波によって管7の中央に集められる点が記載されているといえる。

カ (引-エ)には、「流れている溶液中の微粒子を集めるためには、集める微粒子の大きさに応じて超音波の強度を調節したり、超音波を照射する管の長さを調節したり、流体の流れる速度を調節すればよい。」との記載があることから、集める微粒子の大きさに応じて、超音波の調節を行うことが理解できる。

よって、上記記載事項(引-ア)及び上記認定事項アないしカから、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「(a) 濃縮あるいは排除させたい微粒子を含む流体を通過させる長手方向に延びた管7と、
(b) 前記流体に接するように配置された輻射圧による力場の発生手段とを備え、
(c) 前記力場の発生手段によって前記微粒子を所定の方向に向かう力を作用させ、微粒子を濃縮した流体あるいは微粒子を排除した流体を抽出する手段を有する
(d) 微粒子取扱装置であって、
(e) 流体を、流動状態および静止状態に調節可能であるポンプ4を備え、
(f) 力場の発生手段は、超音波発生源を備え、超音波発生源より超音波輻射圧による力場を発生させるものであり、
(g) 超音波発生源は超音波振動子3であり、該超音波振動子3が、管7の外面に、管7の長手方向に沿って設けられ、
(h) 管7の流体中にある微粒子8は超音波によって管7の中央に集められ、
(i) 集める微粒子の大きさに応じて、超音波の調節を行う
微粒子取扱装置。」

(3) 引用例2の記載事項

当審拒絶理由2に引用された引用例2(特表2007-530924号公報)の段落【0041】を参照すると、フローサイトメータを用いる技術において、質量分析等で分析を行う際に、ランタニドにより粒子を標識することが記載されている。

(4) 周知例Aの記載事項

当審拒絶理由2において示した周知例A(特表昭61-500278号公報)には、以下の記載がある。
(周A-1) 第14頁右上欄第14行-左下欄第10行
「1つの具体例として、コンテナ324が液状培地に植物培養細胞を保持するような場合、そこから損傷微生物を除去するのに当該装置が用いられる。・・・定在波特性は、各植物細胞が各節に強力に接触する一方、存在するいづれの微生物も各節に接触せずあるいは単に弱く接触するように選定される。サイズが全く相違しているから植物細胞と種々の微生物のスペクトルの違いを識別できる。したがって、連続液体流に投入された定在波を通過する液体流により運搬される微生物は出口ポート320を介して排出コンテナ326に運ばれる。」

(5) 周知例Bの記載事項

当審拒絶理由2において示した周知例B(国際公開第00/074814号公報)には、以下の記載がある。
(周B-1) 明細書第14頁第21行-第15頁第3行
「最終的に捕獲したい粒子・微生物以外に夾雑物の種類・個数が多くて、一段の分離装置だけでは、夾雑物が排除しきれない場合、図16のように、第1の分離器の排出口と第2の分離器の導入口を配管で繋ぎ、分離装置を直列に設置すれば、夾雑物の粒径の違いあるいは密度の違いにより分離することができる。例えば、直列に設置された分離器の内、一段目では、輻射圧の弱い超音波を照射し、比較的粒径の大きいあるいは密度の高い粒子を捕獲する。一段目の分離器内に捕獲されなかった粒径の小さな粒子は、排出された液体と共に二段目の分離器内に導入される。」

2 対比・判断

2-1 本願発明1について

(1) 対比
本願発明1と引用発明を対比する。

ア 本願発明1の(A)の特定事項について
(ア) 引用発明の「微粒子」、「流体」、「通過させる」、「管7」は、それぞれ、本願発明1の「粒子」、「流体」、「流動させる」、「キャピラリ」に相当する。
(イ) 引用発明の「長手方向に延びた管7」が軸を有するものであることは明らかである。
(ウ) よって、本願発明1と引用発明は、「軸を有するキャピラリであって、該キャピラリは、粒子をその中に含む流体を流動させる、キャピラリ」を備える点で一致する。

イ 本願発明1の(B)の特定事項について
(ア) 引用発明の「ポンプ4」は、「流体を、流動状態および静止状態に調節可能である」ものであり、流動と停止の状態を取り得ることは明らかであるから、「流動停止デバイス」を成すものといえる。
(イ) よって、本願発明1と引用発明は、「ポンプ」「を含む流動停止デバイス」を備える点で共通する。

ウ 本願発明1の(C)の特定事項について
(ア) 引用発明は、「(c)」「力場の発生手段によって」「微粒子を所定の方向に向かう力を作用させ」るものであり、また、「(f)力場の発生手段は、超音波発生源を備え」るものであるから、「粒子を音響的に操作する」ものであり、そのための「超音波発生源」を備えるものである。一方、本願発明1は、「粒子を音響的に操作するための単一の圧電セラミックソース」を備えるものであり、ここにおける単一の圧電セラミックソースは、超音波発生源といえる。
(イ) よって、本願発明1と引用発明は、「粒子を音響的に操作するための超音波発生源」を備える装置である点で共通する。

エ 本願発明1の(D)の特定事項について
(ア) 引用発明は、「(g)超音波発生源は超音波振動子3であり、該超音波振動子3が、管7の外面に、管7の長手方向に沿って設けられ」ものであり、一方、本願発明1は、「圧電セラミックソースは、該キャピラリの該軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」るものである。
(イ) そして、本願発明1の「圧電セラミックソース」と、引用発明の「超音波振動子3」は、「超音波発生源」である点で共通する。
(ウ) よって、本願発明1と引用発明は、超音波発生源が「キャピラリの該軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられて」いる点で共通する。

オ 本願発明1の(E)の特定事項について
(ア) 引用発明は、「(h)管7の流体中にある微粒子8は超音波によって管7の中央に集められ」るものであり、「(i)集める微粒子の大きさに応じて、超音波の調節を行う」ものである。一方、本願発明1は、「大きい方の粒子を該キャピラリの中心軸に輸送し、小さい方の粒子を、影響を受けないままにするように構成されている」ものである。そして、引用発明の「集める微粒子」と本願発明1の「大きい方の粒子」は、「音響的に操作される粒子」である点で共通し、また、引用発明の「管7の中央に集められ」ることは、本願発明1の「キャピラリの中心軸に輸送」することに相当する。
(イ) よって、本願発明1と引用発明は、「音響的に操作される粒子」を「キャピラリの中心軸に輸送」するように構成されている点で共通する。

カ 本願発明1の(F)の特定事項について
引用発明の「微粒子取扱装置」は、本願発明1の「装置」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明とは、

「軸を有するキャピラリであって、該キャピラリは、粒子をその中に含む流体を流動させる、キャピラリと、
ポンプを含む流動停止デバイスと、
粒子を音響的に操作するための超音波発生源と、
を備える装置であって、
超音波発生源がキャピラリの該軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられており、
該装置は、音響的に操作される粒子をキャピラリの中心軸に輸送するように構成されている、
装置。」

である点で一致し、以下の点で両者は相違する。

<相違点1>
ポンプを含む流動停止デバイスに関して、本願発明1は、収束を乱さずに、または、該キャピラリ内の粒子のフロー流の整列を低下させずに、流動方向を停止させるように構成されているものであるのに対して、引用発明は、その点が不明である点。

<相違点2>
キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた粒子を音響的に操作するための超音波発生源が、本願発明1は、単一の圧電セラミックソースであるのに対して、引用発明は、そのような特定がされていない点。

<相違点3>
粒子位置合わせに関して、本願発明1は、流動停止デバイスにより、流動構成および停止構成において維持されるのに対して、引用発明は、その点が不明である点。

<相違点4>
粒子を音響的に操作するにあたって、本願発明1は、大きい方の粒子をキャピラリの中心軸に輸送し、小さい方の粒子を、影響を受けないままにするように構成されているのに対して、引用発明は、その点が不明である点。

(2) 相違点についての判断

事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた超音波発生源を、単一の圧電セラミックソースとするものは、当審拒絶理由2において引用された、引用例1、2及び周知例A、Bには記載されておらず、本願優先権主張日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2-2 本願発明2ないし6について

本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-3 本願発明7ないし12について

本願発明7も、本願発明1の「単一の圧電セラミックソース」と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明8ないし12は、本願発明7の発明特定事項をすべて含み、本願発明7をさらに限定したものであるので、本願発明7と同様に、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-4 本願発明13ないし18について

本願発明13も、本願発明1の「単一の圧電セラミックソース」と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明14ないし18は、本願発明13の発明特定事項をすべて含み、本願発明13をさらに限定したものであるので、本願発明13と同様に、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-5 本願発明19ないし22について

本願発明19は、「単一の圧電セラミックソース」が「キャピラリの外面に取り付けられており、」「該単一の圧電セラミックソースは、該キャピラリの該軸に平行であ」るものにおいて、「単一の圧電セラミックソースを用いて音響放射圧を該キャピラリ内の」「流体に向ける」という技術的事項を有するものである。そして、上記「2-1 本願発明1について」「(2) 相違点についての判断」において検討したように、キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた超音波発生源を、単一の圧電セラミックソースとしたものは、上記引用例1、2及び周知例A、Bには記載されていないことから、上記の技術的事項を有する本願発明19も、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明20ないし22は、本願発明19の発明特定事項をすべて含み、本願発明19をさらに限定したものであるので、本願発明19と同様に、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-6 本願発明23ないし26について

本願発明23は、「圧電セラミックソースは、」「キャピラリの」「軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」、「音響放射圧を単一の圧電セラミックソースから」「流体に向ける」という技術的事項を有するものである。そして、上記「2-1 本願発明1について」「(2) 相違点についての判断」において検討したように、キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた超音波発生源を、単一の圧電セラミックソースとしたものは、上記引用例1、2及び周知例A、Bには記載されていないことから、上記の技術的事項を有する本願発明23も、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明24ないし26は、本願発明23の発明特定事項をすべて含み、本願発明23をさらに限定したものであるので、本願発明23と同様に、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-7 本願発明27ないし41について

本願発明27は、「圧電セラミックソースは、」「キャピラリの」「軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」、「単一の圧電セラミックソースからの音響放射圧を」「粒子に向ける」という技術的事項を有するものである。そして、上記「2-1 本願発明1について」「(2) 相違点についての判断」において検討したように、キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた超音波発生源を、単一の圧電セラミックソースとしたものは、上記引用例1、2及び周知例A、Bには記載されていないことから、上記の技術的事項を有する本願発明27も、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明28ないし41は、本願発明27の発明特定事項をすべて含み、本願発明27をさらに限定したものであるので、本願発明27と同様に、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-9 本願発明42ないし46について

本願発明42は、「圧電セラミックソースは、」「キャピラリの」「軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」、「単一の圧電セラミックソースからの半径方向音響放射圧を」「フロー流に向ける」という技術的事項を有するものである。そして、上記「2-1 本願発明1について」「(2) 相違点についての判断」において検討したように、キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた超音波発生源を、単一の圧電セラミックソースとしたものは、上記引用例1、2及び周知例A、Bには記載されていないことから、上記の技術的事項を有する本願発明42も、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明43ないし46は、本願発明42の発明特定事項をすべて含み、本願発明42をさらに限定したものであるので、本願発明42と同様に、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-9 本願発明47ないし49について

本願発明47は、「圧電セラミックソースは、」「キャピラリの」「軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」、「単一の圧電セラミックソースからの半径方向音響放射圧を」「フロー流に向ける」という技術的事項を有するものである。そして、上記「2-1 本願発明1について」「(2) 相違点についての判断」において検討したように、キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた超音波発生源を、単一の圧電セラミックソースとしたものは、上記引用例1、2及び周知例A、Bには記載されていないことから、上記の技術的事項を有する本願発明47も、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明48及び49は、本願発明47の発明特定事項をすべて含み、本願発明47をさらに限定したものであるので、本願発明47と同様に、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-10 小括

以上のことから、本願発明1ないし49は、引用発明、引用例1、2、周知例A、Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、当審拒絶理由2によっては、本願を拒絶することはできない。

第6 当審拒絶理由1についての判断

1 当審拒絶理由1について

(1) 理由1について
平成29年3月31日付け手続補正による補正後の請求項1ないし49には、「非軸対称の力場」の記載が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2) 理由2について
当審拒絶理由1の理由2は、当審拒絶理由2と実質的に同じ理由である。したがって、上記「第5 当審拒絶理由2についての判断」「2 対比・判断」「2-10 小括」において指摘したように、当審拒絶理由1の理由2によっては、本願を拒絶することはできない。

第7 原査定についての判断

平成29年3月31日付け手続補正による補正後の請求項1ないし18に係る発明は、キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた「単一の圧電セラミックソース」を備えるという技術的事項を有し、また、請求項19ないし22に係る発明は、「単一の圧電セラミックソース」が「キャピラリの外面に取り付けられており、」「該単一の圧電セラミックソースは、該キャピラリの該軸に平行であ」るものにおいて、「単一の圧電セラミックソースを用いて音響放射圧を該キャピラリ内の」「流体に向ける」という技術的事項を有し、請求項23ないし26に係る発明は、「圧電セラミックソースは、」「キャピラリの」「軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」、「音響放射圧を単一の圧電セラミックソースから」「流体に向ける」という技術的事項を有し、請求項27ないし41に係る発明は、「圧電セラミックソースは、」「キャピラリの」「軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」、「単一の圧電セラミックソースからの音響放射圧を」「粒子に向ける」という技術的事項を有し、請求項42ないし46に係る発明は、「圧電セラミックソースは、」「キャピラリの」「軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」、「単一の圧電セラミックソースからの半径方向音響放射圧を」「フロー流に向ける」という技術的事項を有し、請求項47ないし49に係る発明は、「圧電セラミックソースは、」「キャピラリの」「軸と平行に、該キャピラリの外面に取り付けられ」、「単一の圧電セラミックソースからの半径方向音響放射圧を」「フロー流に向ける」という技術的事項を有するものとなった。
そして、キャピラリの軸と平行に該キャピラリの外面に取り付けられた超音波発生源として、単一の圧電セラミックソースを採用することは、原査定における引用例AないしEには記載されておらず、本願優先権主張日前における周知事項でもないので、本願発明1ないし49は、引用例AないしEに記載された発明であるとはいえず、また、当業者であっても、原査定における引用例AないしE及び周知事項に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の拒絶理由、及び、当審による拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-31 
出願番号 特願2013-35328(P2013-35328)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G01N)
P 1 8・ 121- WY (G01N)
P 1 8・ 113- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土岐 和雅  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
藤田 年彦
発明の名称 音響サイトメータにおける粒子分析  
代理人 山本 秀策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 山本 健策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 石川 大輔  

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