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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1328524
審判番号 不服2016-11553  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-02 
確定日 2017-06-14 
事件の表示 特願2014-109668「気密型同軸コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月14日出願公開、特開2015-225766、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成26年5月28日の出願であって、平成28年3月1日付けで拒絶理由が通知され、同年4月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月9日付け(発送日:同年5月18日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年8月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がされ、同年8月18日付けで前置報告がされ、その後、当審において平成29年2月9日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年3月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成29年3月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
同軸ケーブルの外部導体が接続される筒状の外部シェルと、該外部シェルの内側に同心状に配置され、前記同軸ケーブルの複数の線材を撚り合わせた中心導体が接続される中心コンタクトと、前記外部シェルと中心コンタクトとの間に介在させたインシュレータとを備え、前記外部シェルの前記インシュレータで隔てられた軸方向の一方より前記同軸ケーブルが接続され、他方より相手コネクタが接続される同軸コネクタであって、
前記外部シェル内の前記インシュレータより同軸ケーブル接続側に形成された樹脂充填用空隙部と、前記外部シェル内の前記インシュレータより相手コネクタ接続側に開口し、前記樹脂充填用空隙部と連通する樹脂注入口と、該樹脂注入口より前記樹脂充填用空隙部内に充填され、前記中心導体と前記外部シェルとの間及び前記同軸ケーブルの誘導体と前記外部シェルとの間を封止する気密用樹脂とを備え、
前記中心コンタクトは、前記中心導体が挿入される導体挿入孔と、該導体挿入孔と連通し、且つ、前記中心コンタクトの外周面に開口した封鎖孔とを備え、前記導体挿入孔に挿入された中心導体を前記中心コンタクトに半田付けするとともに前記封鎖孔を半田で封止するようにし、
前記樹脂注入口は、針状の注入口が挿入可能なことを特徴とする気密型同軸コネクタ。
【請求項2】
前記外部シェル内の相手コネクタ接続側に開口し、前記樹脂充填用空隙部と連通した空気抜き口を備えた請求項1に記載の気密型同軸コネクタ。
【請求項3】
前記樹脂注入口及び/又は空気抜き口は、前記インシュレータを軸方向に貫通した孔状又は溝状に形成された請求項2に記載の気密型同軸コネクタ。」

第3.刊行物、引用発明等
1.刊行物1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された実願昭56-175821号(実開昭58-79988号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)に掲載された昭和57年8月30日付け手続補正書の明細書及び図面には、「同軸コネクタ」に関し、図面(特に、第3図を参照。)とともに次の事項が記載されている。下線は当審で付した。以下同じ。
ア.「この考案は接栓座と接栓とを具える同軸コネクタに係り、特に接栓座を分岐器、分配器用防水ケースに密封固着した同軸コネクタに関する。」(上記明細書の第2ページ第2ないし4行)

イ.「第3図は、この実施例に係る同軸コネクタの中央縦断面図である。この同軸コネクタは、次のように構成される。分岐回路や分配回路を収納する分岐器、分配器用防水ケース11の外壁に貫通突設した複数個の同筒状受部12に、その受部12の内方内周に段部13、受部12の外方端内周に凹部14、および凹部14の外方面に突出するかしめ部18が、それぞれ形成されている。この各受部12内に挿入固着される円筒状の接栓座23は、その外方外周部に螺部24、接栓座23の内方外周部に鍔部25、および鍔部25の外周面に環状溝25bが、それぞれ形成されている。この接栓座23は、その鍔部25の内方端面25aが受部12の段部13と係合し、一方鍔部25の外方端面25cが受部12のかしめ部18によりかしめられ、受部12内に固着される。さらに、受部12の内壁面と、接栓座23の環状溝25bとの間にはシール用Oリング27が設けられるとともに、受部12の凹部14と、接栓座23の外周との間にも、環状のシールド部材28が設けられる。なお、接栓座23の外方開口部29には中心コンタクト用孔30aを有する蓋部材30が固着され、さらに接栓座23の内部には中心コンタクト用接触子31が設けられている。この接栓座23に螺着される接栓36は、同軸ケーブル37が接続される中心コンタクト38を有する接栓本体39と、その接栓本体39にその軸方向の移動を自在にして取付けられた接続ナット45とを具えている。この接続ナット45の内部にはシール用Oリング46が設けられている。この接栓36を前記接栓座23に取付けるには、接続ナット45を接栓座23の螺部24に螺着してその接続ナット45の先端面45aでシールド部材28を押圧すれば、接続ナット45と受部12との間がシールド部材28で密封されると共に、接栓本体39の内方端面39aと接栓座23の外方開口部29とがOリング46を介して密着し、しかも中心コンタクト38と接触子31とが接続されて、接栓36と接栓座23とが連結される。 」(上記明細書の第4ページ第2行ないし第5ページ第17行)

ウ.上記イ.の「この接栓座23に螺着される接栓36は、同軸ケーブル37が接続される中心コンタクト38を有する接栓本体39と、その接栓本体39にその軸方向の移動を自在にして取付けられた接続ナット45とを具えている。」との記載及び第3図から、中心コンタクト38は、接栓36の内側に同心状に配置され、また、同軸ケーブル37の中心導体が中心コンタクト38に接続されることが分かる。

エ.上記ア.「この考案は接栓座と接栓とを具える同軸コネクタに係り」との記載及び上記イ.の「接栓本体39の内方端面39aと接栓座23の外方開口部29とがOリング46を介して密着し、しかも中心コンタクト38と接触子31とが接続されて、接栓36と接栓座23とが連結される。」との記載並びに第3図から、同軸コネクタは、接詮36の軸方向の一方より同軸ケーブル37が接続され、他方より接触子31が接続されることが分かる。

オ.第3図から、接栓36(接栓本体39)内の同軸ケーブル37接続側に空隙部が形成されていることが窺える。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「接栓36と、該接栓36の内側に同心状に配置され、同軸ケーブル37の中心導体が接続される中心コンタクト38を備え、前記接詮36の軸方向の一方より前記同軸ケーブル37が接続され、他方より接触子31が接続される同軸コネクタであって、
前記接栓36内の前記同軸ケーブル37接続側に形成された空隙部を備えた、同軸コネクタ。」

2.刊行物2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2012-84482号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「コネクタ」に関し、図面(特に、【図4】及び【図6】(c)を参照。)とともに次の事項が記載されている。
「【0035】
その後、図6(c)に示すように、ハウジング12の先端側からハウジング12内へ、エポキシ樹脂等の充填材41を充填する。なお、この充填材41の充填は、ハウジング12の先端側を上方へ向けた状態で行い、インナープレート15が埋まる位置まで充填する。このとき、ハウジング12内におけるシール栓16とインナープレート15との間の空気は、充填材41の充填に伴って、ハウジング12とインナープレート15との隙間から外部へ送り出される。これにより、ハウジング12内におけるシール栓16とインナープレート15との間へ充填材41が円滑に充填される。
【0036】
また、インナープレート15には、キャビティー31以外の部分であるターミナル保持部32における上下のキャビティー31の間に、キャビティー31の配列方向に沿って複数の空気抜き孔34が形成されているので、充填材41の充填時に、ハウジング12内におけるシール栓16とインナープレート15との間の空気が、これらの空気抜き孔34からも円滑に外部へ送り出される。これにより、ハウジング12内には、空気溜まりなどが生じることなく迅速かつ円滑に充填材41が充填される。」

上記記載事項及び図面の図示事項を総合すると、刊行物2には、次の事項(以下、「刊行物2記載の事項」という。)が記載されている。
「ハウジング12内におけるシール栓16とインナープレート15との間へ、充填材41を充填すること。」

3.刊行物3について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された実公昭58-25579号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「入出力同軸コネクタを有する高周波用ケースの気密構造」に関し、図面(特に、第2図を参照。)とともに次の事項が記載されている。
「このケースの気密方法は、気密構造を有するガラス封止端子9の内導体10と、気密構造を有しないコネクタの内導体11とをハンダ等で接続する。次に本ガラス封止端子9を気密構造を有するケース12の開孔部に挿入して取付し、ガラス封止端子9の外導体とケース12とをハンダ付け13等で密閉接続し、コネクタの外導体14及び絶縁体15を内導体11にかぶせ、コネクタのフランジ16をケース12に固定する。」(第2ページ第3欄第5ないし14行)

上記記載事項及び図面の図示事項を総合すると、刊行物3には、次の事項(以下、「刊行物3記載の事項」という。)が記載されている。
「ハンダを用いてガラス封止端子9の内導体10とコネクタの内導体11とを接続すること。」

4.刊行物4について
原査定において周知の技術手段を示し、本願の出願前に日本国内において頒布された特許第3437080号公報(以下、「刊行物4」という。)には、「充填材の注入方法及び注入装置」に関し、図面(特に、【図3】ないし【図6】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
「【0014】凹部17Bに充填剤31を注入する場合は、図3および図4に示す充填剤の注入装置(以下、単に注入装置と略称する)21が適用される。注入装置21は、合成樹脂を立方体に形成した注入補助治具21Aと、この注入補助治具21Aに位置決め固定される注入手段(ディスペンサーノズル24に相当)とを備えている。注入補助治具21Aの外形および寸法は、凹部17A内に嵌合するように設定されている。注入補助治具21Aの中央部には、長手方向にこじり防止リブ11を挿通させるリブ挿通孔22が形成され、その両側に外部接続端子12A,12Bを挿通させる端子挿通孔23A,23Bが形成されている。また、注入補助治具21Aの4か所には、後述するディスペンサーノズル24を圧入させるノズル挿通孔25が形成されている。」

上記記載事項及び図面の図示事項を総合すると、刊行物4には、次の事項(以下、「刊行物4記載の事項」という。)が記載されている。
「ディスペンサーノズル24により充填材31を凹部17Bに注入すること。」

5.刊行物5について
前置審査において周知の技術手段を示し、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2011-82042号公報(以下、「刊行物5」という。)には、「同軸ケーブルハーネス」に関し、図面(特に、【図1】(B)を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0013】
図1(A)に示すように、本発明における同軸ケーブル群は、複数本の極細の同軸ケーブル12を束ねた同軸ケーブル束11を小分けして、所定の本数からなる同軸ケーブル群11a?11dとしたものである。同軸ケーブル12は、図1(B)に示すように、内側から中心導体13、絶縁体14、外部導体15、外被16の順で同軸状に配して構成され。なお、中心導体13にAWG46(外径0.048mm)を用いると、外被16の外径(同軸ケーブル外径)は、0.22mm程度となる。各同軸ケーブル群11a?11dの端部先端までの長さは、図4の例で説明したのと同様に、同軸ケーブル群11a?11dごとに長さが異ならせてある。なお、使用する同軸ケーブルは、AWG44,42等でもよく、また、絶縁体に空気層が含まれる低静電容量のものでもよい。」

イ.【図1】(B)から、中心導体13は、複数の線材を撚り合わせたものであることが見て取れる。

上記記載事項及び図面の図示事項を総合すると、刊行物5には、次の事項(以下、「刊行物5記載の事項」という。)が記載されている。
「同軸ケーブル12の中心導体13を複数の線材を撚り合わせたものから構成すること。」

6.刊行物6について
前置審査において周知の技術手段を示し、本願の出願前に外国において頒布された米国特許第5532659号明細書(以下、「刊行物6」という。)には、「Connection device to provide a connection, by coaxial cable, to a printed circuit」(当審仮訳:「同軸ケーブルによってプリント回路に接続するため接続機構」。以下、英文に続く( )内は当審仮訳を示す。)に関し、図面(特に、Fig.1及びFig.2を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア.「The jaw 2 is drilled with two other smooth holes 23 and 24. 」(あご部2は、二つの孔23及び24が穿設される。)(明細書第2欄第44及び45行)

イ.「This makes it possible to make two electrical links, one link between the jaw and the external conductor 11 by means of solder introduced through the hole 24 and one link, also by soldering, between the internal conductor 10 and the conductor 53.」(このことは、二つの電気的な結合、一つは、孔24を通過して導かれる半田手段による、あご部と外部導体11との間の結合、及び、もう一つは、内部導体10と導体53との間の半田付けによる結合を可能とする。」(明細書第2欄下から3行ないし第3欄第2行)

上記記載事項及び図面の図示事項を総合すると、刊行物6には、次の事項(以下、「刊行物6記載の事項」という。)が記載されている。
「あご部2に半田付けのための孔24を設けること。」

7.刊行物7について
前置審査において周知の技術手段を示し、本願の出願前に外国において頒布された米国特許出願公開第2004/0171301号明細書(以下、「刊行物7」という。)には、「Circuit board connector」(回路基板コネクタ)に関し、図面(特に、Fig.1を参照。)とともに次の事項が記載されている。
「[0019]・・・(前略)・・・Upon assembly, the shield of the cable is electrically connected to the body 2 by soldering into a slot 14 .・・・(後略)・・・」(組立体において、ケーブルのシールドと本体2とは、スロット14を半田付けすることにより本体2と電気的に接続される。)

上記記載事項及び図面の図示事項を総合すると、刊行物7には、次の事項(以下、「刊行物7記載の事項」という。)が記載されている。
「本体2に半田付けのためのスロット14を設けること。」

第4.対比・判断
1.本願発明1に対して
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その機能または構造からみて、引用発明における「同軸ケーブル37」は本願発明1における「同軸ケーブル」に相当し、以下同様に、「中心コンタクト38」は「中心コンタクト」に、「接触子31」は「相手コネクタ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「同軸コネクタ」は、「同軸コネクタ」という限りにおいて、本願発明1の「同軸コネクタ」及び「気密型同軸コネクタ」と共通する。
そして、引用発明における「接詮36」は、中心コンタクト38の外側にあるから、「外部部材」という限りにおいて、本願発明1における「外部シェル」と共通し、引用発明における「接詮36の軸方向の一方」は、「軸方向の一方」という限りにおいて、本願発明1における「外部シェルの前記インシュレータで隔てられた軸方向の一方」と共通する。
また、引用発明における「前記接栓36内の同軸ケーブル37接続側に形成された空隙部」は、「前記外部部材内の同軸ケーブル接続側に形成された空隙部」という限りにおいて、本願発明1における「前記外部シェル内の前記インシュレータより同軸ケーブル接続側に形成された樹脂充填用空隙部」と共通する。
したがって、両者は、次の点で一致する。
[一致点]
「外部部材と、該外部部材の内側に同心状に配置され、同軸ケーブルの中心導体が接続される中心コンタクトを備え、前記外部部材の軸方向の一方より前記同軸ケーブルが接続され、他方より相手コネクタが接続される同軸コネクタであって、
前記外部部材内の前記同軸ケーブル接続側に形成された空隙部を備えた、同軸コネクタ。」

そして、両者は次の各点で相違する。
[相違点1]
本願発明1においては、「同軸ケーブルの外部導体が接続される筒状の外部シェルと」、「該外部シェル」の内側に同心状に配置される中心コンタクトと、「前記外部シェルと中心コンタクトとの間に介在させたインシュレータとを備え」、「前記外部シェルの前記インシュレータで隔てられた」軸方向の一方より前記同軸ケーブルが接続され、他方より相手コネクタが接続されるのに対し、引用発明においては、かかる構成の外部シェル、中心コンタクト及びインシュレータを備えていない点。

[相違点2]
本願発明1においては、空隙部が「樹脂充填用空隙部」であって、「前記外部シェル内の前記インシュレータより同軸ケーブル接続側に形成され」、「前記外部シェル内の前記インシュレータより相手コネクタ接続側に開口し、前記樹脂充填用空隙部と連通する樹脂注入口と、該樹脂注入口より前記樹脂充填用空隙部内に充填され、前記中心導体と前記外部シェルとの間及び前記同軸ケーブルの誘導体と前記外部シェルとの間を封止する気密用樹脂とを備え」、「前記樹脂注入口は、針状の注入口が挿入可能」であるのに対し、引用発明においては、空隙部が「樹脂充填用空隙部」ではない点。

[相違点3]
本願発明1においては、同軸コネクタが「気密型」であり、同軸ケーブルの中心導体が「複数の線材を撚り合わせた」ものであり、中心コンタクトが、「前記中心導体が挿入される導体挿入孔と、該導体挿入孔と連通し、且つ、前記中心コンタクトの外周面に開口した封鎖孔とを備え、前記導体挿入孔に挿入された中心導体を前記中心コンタクトに半田付けするとともに前記封鎖孔を半田で封止する」のに対し、引用発明においては、同軸コネクタが「気密型」でなく、同軸ケーブルの中心導体が「複数の線材を撚り合わせた」ものでなく、中心コンタクトがかかる構成を有しない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
刊行物1には、同軸ケーブル37の中心導体と中心コンタクト38との接続が半田付けによって行われることについての記載や示唆はない。
また、刊行物3には、ハンダを用いて内導体10と内導体11を接続することが記載され、加えて、第2図には、内導体11の端面に設けた有底孔に内導体10を挿入することが示されているが、内導体11の外周面の形状や、当該ハンダ付けをどのようにして行うかについての記載や示唆はない。
刊行物2、4及び5には、相違点3に係る本願発明1の構成に関する記載はない。
また、刊行物6及び7記載の事項から、当業者であれば、外側の部材(刊行物6のあご部2、刊行物7の本体2)に半田付けのための孔(刊行物6の孔24、刊行物7のスロット14)を設けることを把握することができる。
しかしながら、刊行物1又は3には、刊行物1の中心コンタクト38や刊行物3の内導体11の外周面に半田付けのための孔を設ける動機づけとなる記載や示唆はない。
他方、本願発明1は、中心コンタクトに関しての相違点3に係る本願発明1の構成を有することにより、本願明細書の段落【0050】に「封鎖孔53が半田で封止されるので中心導体1aとインシュレータ12との間の高い気密性が確保され、更には、同軸ケーブル1の中心導体1aが複数の芯線からなる撚り線であっても、半田が各芯線間に浸透するので同軸ケーブル1と中心コンタクト11との気密性を高めることができる。」と記載されるような効果を奏するものである。
そうすると、引用発明に刊行物2ないし7記載の事項を適用しても、相違点3に係る本願発明1の構成を当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって、本願発明1は、相違点1及び2を検討するまでもなく、引用発明及び刊行物2ないし7記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2及び3に対して
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び刊行物2ないし7記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5.原査定の概要及び原査定の判断
原査定は、請求項1ないし5に係る発明が刊行物1ないし3及び周知の技術手段を示す刊行物4に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成28年8月2日付けの手続補正により補正された請求項1は、前記相違点3に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし3は、上記引用発明及び刊行物2ないし7記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6.当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)について
(1)当審では、請求項1における「該導体挿入孔と連通配置に中心コンタクトの外周面に開口した封鎖孔とを備え、」との記載における「連通配置に」とは、どのような事項を特定しているかが明確でないとの拒絶の理由を通知したが、平成29年3月2日付けの手続補正で「該導体挿入孔と連通し、且つ、前記中心コンタクトの外周面に開口した封鎖孔とを備え、」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項3は、請求項1又は2を引用する形式で記載されているが、請求項1には「空気抜き口」が特定されていないため、請求項3における「前記樹脂注入口及び/又は空気抜き口」との記載は、請求項3が請求項1を引用する場合に不明確となるとの拒絶の理由を通知したが、平成29年3月2日付けの手続補正で、請求項3は、請求項2のみを引用する形式で記載するように補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-29 
出願番号 特願2014-109668(P2014-109668)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01R)
P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 気密型同軸コネクタ  
代理人 石井 理太  

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